説明

加硫用ゴム組成物

【課題】エピハロヒドリン系ゴムの優れた諸特性を低下させずに、エピハロヒドリン系ゴム加硫物の比重を低減せしめる方法を提供する。
【解決手段】本発明による加硫用ゴム組成物は、(a)エピハロヒドリン系ゴムの100重量部に対し、(b)結晶の融点が120℃〜210℃の範囲内にある結晶性低融点ポリエステル樹脂10〜100重量部を含有し、(c)受酸剤、および(d)加硫剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化されたエピハロヒドリン系ゴムをベ−スとする加硫用ゴム組成物および同組成物を加硫してなる加硫ゴム材料に係わり、更に詳しくはエピハロヒドリン系ゴムが有する優れた耐熱性、耐潤滑油性、耐燃料油性を損なうことなく、比重を低減せしめた加硫用ゴム組成物および同組成物を加硫してなる加硫ゴム材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エピハロヒドリン系ゴム材料はその耐熱性、耐油性、耐オゾン性等を活かして、自動車用途では燃料ホースやエアー系ホース、チューブ材料として幅広く使用されている。しかしながら、エピハロヒドリン系ゴムはハロゲン含有ゴムであるが故に元来比重が大きく、また、補強剤であるカーボンブラックやシリカを配合することにより更に高比重となる。近年の省エネルギー対策の実施における自動車の軽量化は、金属部品のみならず、ゴム材料に対する軽量化の要求へと及びつつあるため、エピハロヒドリン系ゴム加硫物の低比重化が求められている。
【0003】
ゴム材料の比重を低減する方法としては、一般的にはバルーン状充填剤やコルク粉、木紛、樹脂粉末などを添加する方法が採用されているが、このような添加剤をゴム中へ多量に混入させるとゴムの機械的強度が著しく低下することが知られているため、自動車用ホースやチューブ、特に重要保安部品である燃料系ホースなどへは上記のような方法は適用されていない。
【0004】
また、比較的比重の軽い熱可塑性樹脂とゴムを溶融混合した後に、同ブレンド物を加硫する方法により比重の軽いゴム状加硫物を作ることも可能ではある。しかしながら、エピハロヒドリン系ゴムとエピハロヒドリンゴムより比重の軽い熱可塑性樹脂をブレンドしたゴム状加硫物ではエピハロヒドリン系ゴムが持つ優れた特性を維持することが困難である。
【0005】
なお、エピハロヒドリン系ゴムとポリエステル樹脂のブレンドとしては、例えば特許文献1および2などの方法が知られているが、これらはいずれも動的架橋方法により熱可塑性エラストマーを提供するものであって、本発明の目的とは明らかに異なるものである。さらにこれらの方法で得られたブレンド物ではエピハロヒドリン系ゴムが元来持つ優れた諸特性を維持することは困難である。
【特許文献1】特開平11−172047号公報
【特許文献2】特開平11−292990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先述の通り、エピハロヒドリン系ゴムより比重の軽い熱可塑性樹脂をブレンドして加硫したゴム状加硫物では、エピハロヒドリン系ゴムが持つ優れた耐熱性、耐油性、耐オゾン性などの諸特性が低下するため、更なる改良が求められている。
【0007】
本発明の目的は、上記実情に鑑み、エピハロヒドリン系ゴムの優れた諸特性を低下させずに、エピハロヒドリン系ゴム加硫物の比重を低減せしめる方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねたところ、エピハロヒドリン系ゴムにエピハロヒドリン系ゴムより比重の軽い熱可塑性樹脂を溶融混合して組成物の低比重化を図る場合においては、特定温度範囲内に融点を持つ結晶性ポリエステル樹脂を選択した場合においてのみ、エピハロヒドリン系ゴムが持つ優れた諸特性を低下させることなく加硫物の比重を小さくせしめ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明はすなわち、(a)エピハロヒドリン系ゴムの100重量部に対し、(b)結晶の融点が120℃〜210℃、好ましくは140〜180℃の範囲内にある結晶性低融点ポリエステル樹脂10〜100重量部、好ましくは15〜50重量部を含有し、(c)受酸剤、および(d)加硫剤を含有することを特徴とする加硫用ゴム組成物。該組成物を加硫してなる加硫物、ならびに該加硫ゴム物よりなる自動車用ゴム部品に関する。
【0010】
以下、本発明につき詳細に説明する。本発明におけるエピハロヒドリン系ゴム(a)とは、エピハロヒドリン単独重合体またはエピハロヒドリンと共重合可能な他のエポキシド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等との共重合体をいう。これらを例示すれば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピブロムヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピブロムヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等を挙げることができる。好ましくはエピクロルヒドリンゴムであり、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が挙げられ、さらに好ましくはエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体である。
【0011】
共重合体の場合、エピハロヒドリンと共重合可能な他のエポキシドとの割合は、例えば、エピクロルヒドリン5mol〜95mol%、好ましくは10mol%〜75mol%、さらに好ましくは10〜65mol%、エチレンオキサイド5mol%〜95mol%、好ましくは25mol%〜90mol%、さらに好ましくは35mol%〜90mol%、アリルグリシジルエーテル0mol%〜10mol%、好ましくは1mol%〜8mol%、さらに好ましくは1mol%〜7mol%である。
【0012】
単独重合体または共重合体の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML1+4(100℃)=30〜150程度である。
【0013】
本発明に用いられる結晶性低融点ポリエステル樹脂(b)とは、示差走査型熱量計(DSC)で測定した結晶の融点が120℃〜210℃の範囲内にあるポリエステル樹脂である。このようなポリエステル樹脂は、通常ハード成分とソフト成分からなるブロック共重合体となっており、ハード成分は芳香族ポリエステル、ソフト成分は脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルで構成されている。
【0014】
芳香族ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどを挙げることができる。脂肪族ポリエーテルとしてはポリアルキレングリコール、脂肪族ポリエステルとしては脂肪族エステルオリゴマーで構成されている。なお、このような結晶性低融点ポリエステル樹脂は、一般的にポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)と呼ばれており、実際には市販品、例えば東洋紡製品ペルプレンシリーズ、東レ・デュポン製品ハイトレルシリーズのものなどを使用することができる。
【0015】
これら結晶性低融点ポリエステル樹脂の配合割合は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは15〜50重量部である。この配合量がこの範囲未満であると比重の低下効果が少なく、また、多すぎると物性の低下が著しくなる。
【0016】
本発明で用いられる受酸剤(c)としては、公知の受酸剤を使用できるが、好ましくは金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルである。金属化合物の例としては、周期表第II族(2族および12族)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第III族(3族および13族)金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0017】
前記金属化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができる。但し、昨今の環境問題から毒性が懸念される化合物を用いないという観点からは、炭酸ナトリウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、生石灰、消石灰、ケイ酸カルシウム、亜鉛華などが好ましい。
【0018】
さらにポリチオール系加硫剤を本発明の組成物に適用した場合の好ましい受酸剤として、無機マイクロポーラス・クリスタルが挙げられる。無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を言い、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、Li-Al系包接化合物、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0019】
ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0020】
合成ハイドロタルサイトは下記一般式(I)
【化1】

【0021】
[式中、xとyは0〜10の実数、但しx+yは1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数をそれぞれ示す]で表わされる。一般式(I)で表されるハイドロタルサイト類の例として、
【化2】

【0022】
等を挙げることができる。
【0023】
またLi-Al系包接化合物は下記一般式(II)で表される。
【化3】

【0024】
(式中Xは無機または有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の整数)
受酸剤の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.2〜50重量部、例えば0.5〜50重量部、特に1〜20重量部である。この範囲未満の配合量では架橋が不十分となり、一方この範囲を超える配合量では加硫物が剛直になりすぎてエピハロヒドリン系ゴム加硫物として通常期待される物性が得られなくなる。また、前記マイクロポーラス・クリスタルと前記金属酸化物を組み合わせて使用することは任意である。
【0025】
本発明で用いられる加硫剤は、エピハロヒドリン系ゴムを加硫せしめ得るものであればいかなるものでも良く、例えばアミン系加硫剤、チオウレア系加硫剤、ポリチオール系加硫剤、ポリオール系加硫剤、有機過酸化物系加硫剤、硫黄系加硫剤などを挙げることができる。なお、ポリチオール系加硫剤とは、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物、または加熱により2個以上のチオール基を生成する化合物である。好ましい加硫剤の例としては、チオウレア系加硫剤、トリアジン系加硫剤、キノキサリン系加硫剤を挙げることができる。以下にこれらの加硫剤を例示する。
【0026】
チオウレア系加硫剤としては、エチレンチオウレア、ジブチルチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなどを挙げることができ、好ましくはエチレンチオウレアである。
【0027】
トリアジン系加硫剤としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン等を挙げることができ、好ましくは2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンである。
【0028】
キノキサリン系加硫剤としては、例えば2,3−ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチカーボネート等を挙げることができ、好ましくは6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートである。
【0029】
これらの加硫剤の配合量はエピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。この範囲未満の配合量では架橋が不十分となり、一方この範囲を超える配合量では加硫物が剛直になりすぎてエピハロヒドリン系ゴム加硫物として通常期待される物性が得られなくなる。加硫剤は一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
また、通常これらの加硫剤と共に用いられる公知の促進剤(即ち、加硫促進剤)、遅延剤等を本発明の加硫用ゴム組成物にも用いることができる。促進剤の例としては、硫黄、モルホリンスルフィド類、アミン類、アミンの弱酸塩類、塩基性シリカ、四級アンモニウム塩類、四級ホスホニウム塩類、脂肪酸のアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0031】
遅延剤の例としてはN−シクロヘキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、有機亜鉛化合物、酸性シリカ等を挙げることができ、遅延剤の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して0〜10重量部、例えば0.1〜5重量部である。
【0032】
本発明の加硫用ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の公知の配合剤、例えば、滑剤、充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、加工助剤、難燃剤、発泡剤等を任意に配合できる。
【0033】
本発明による加硫用ゴム組成物を製造するには、従来ポリマー加工の分野において用いられている任意の混合手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。本発明の加硫物すなわち加硫ゴム材料は、本発明の加硫用ゴム組成物を通常100〜200℃に加熱することで得られる。加硫時間は温度により異なるが、通常0.5〜300分の間である。加硫成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線或いはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
本発明の加硫物は、通常エピハロヒドリン系ゴムが使用される分野に広く応用することができる。例えば、自動車用途などの各種燃料系積層ホース、エアー系積層ホース、チューブ、ベルト、ダイヤフラム、シール類等ゴム材料や、一般産業用機器・装置等のゴム材料として有用である。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、エピハロヒドリン系ゴムの優れた特性を失うことなくエピハロヒドリン系ゴムをベースとした低比重化された加硫用ゴム組成物およびその加硫ゴム材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例で使用した配合剤は下記の通りである。
【0037】
・エピハロヒドリン系ゴム:エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体、ダイソー社製「エピクロマーD」、比重1.25
・カーボンブラック:東海カーボン社製「シースト3」、比重1.8
・TPEE−1:東洋紡社製ポリエステル系熱可塑性エラストマー「ペルプレンP-30B」、結晶融点160℃、比重1.05、ハード成分:芳香族ポリエステル、ソフト成分:脂肪族ポリエーテル
・TPEE−2:東洋紡社製ポリエステル系熱可塑性エラストマー「ペルプレンP-70B」、結晶融点200℃、比重1.17、ハード成分:芳香族ポリエステル、ソフト成分:脂肪族ポリエーテル
・TPEE−3:東洋紡社製ポリエステル系熱可塑性エラストマー「ペルプレンS1001」、結晶融点200℃、比重1.21、ハード成分:芳香族ポリエステル、ソフト成分:脂肪族ポリエステル
・PET(ポリエチレンテレフタレート):クラレ社製「クラペット」、結晶融点270℃、比重0.91
・ PMMA(ポリメタクリル酸メチル):住友化学社製「スミペックスLG35」、結晶融点170℃、比重1.19
・ ナイロン12:ダイセル・ヒュルス社製「ダイアミドL1801」、結晶融点175℃、比重1.01
・可塑剤:DIC社製「DOP」
・滑剤:花王社製「スプレンダーR−300」
・老化防止剤、NBC:「ノクラックNBC」、大内新興化学株式会社製
・受酸剤 マグネシア:酸化マグネシウム、協和化学工業社製「キョーワマグ150」
・受酸剤 ハイドロタルサイト:合成ハイドロタルサイト、協和化学工業社製「DHT−4A」
・受酸剤 炭酸カルシウムト:白石工業社製「炭酸カルシウム赤玉印」
・促進剤 DBU塩:DBUのフェノール樹脂塩、ダイソー社製「P−152」
・促進剤 DPG:1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
・遅延剤 PVI:N−シクロヘキシルチオフタルイミド
大内新興化学工業社製「リターダーCTP」
・遅延剤 CZ:大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ」
・エチレンチオウレア系加硫剤 ETU: 川口化学工業社製「アクセル22S」
・キノキサリン系加硫剤:6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、ダイソー社製「ダイソネットXL−21S」
・トリアジン系加硫剤:トリメルカプト-S-トリアジン ダイソー社製「OF−100」
実施例1〜7、比較例1〜5および参考例
表1および3の上段に示す材料を表1に示す割合で配合し、120〜200℃に温度設定した容量1Lニーダーを用いて全体を混練し、次いで表1および3の下段に示す材料を表1および3に示す割合で配合し、表面温度70℃に設定した7インチオープンロールで全体を混練した。こうして未加硫ゴムシートを作製した。この未加硫ゴムシートを170℃で15分プレス加硫し、2mm厚の一次加硫物を得た。さらにこれをエア・オーブン中150℃で2時間加熱し、二次加硫物を得た。この二次加硫物を用い、引張試験(初期物性及び耐熱後物性)をJIS K 6251、硬度試験をJIS K 6253、耐熱性試験をJIS K 6257、浸漬試験(耐油性)をJIS K 6258に記載の方法に準じて行った。
【0038】
各試験方法より得られた実施例、比較例および参考例の試験結果を表2および4に示す。各表中、M100はJIS K6251の引張試験に定める100%伸び時の引張応力、TBはJIS K6251の引張試験に定める引張強さ、EBはJIS K6251の引張試験に定める破断時伸び、HSはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さを意味する。
【0039】
本発明において、低比重とは加硫物の比重が1.3以下であることを意味する。
【0040】
またエピハロヒドリン系ゴムが持つ優れた諸特性を維持した状態とは、ここでは以下のように定義する。
【0041】

初期物性
比重( g/cc ) 1.3以下
M100 ( MPa ) 2以上
TB ( MPa ) 9以上
EB ( % ) 250以上
Hs ( JISA ) 60〜80
耐熱性
100℃、72時間熱老化後
TB変化率( % ) -20以下
EB変化率( % ) -50以下
耐油性
100℃、72時間浸漬後
ASTM No.1オイル 体積変化率( % ) +20以下
IRM903オイル 体積変化率( % ) +40以下

【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0042】
表2中、実施例1〜7の組成物はエピハロヒドリン系ゴムが持つ優れた諸特性を維持した状態で、いずれも低比重を示していることが判る。
【0043】
これに対し、比較例1の組成物は結晶性低融点ポリエステル樹脂を使用することなく比重の大きいカーボンブラックを減量することで低比重化を図っているため、初期物性が明らかに低下している。また、結晶性低融点ポリエステル樹脂の配合量が本発明の範囲を超える比較例2の組成物は低比重を示しているものの、耐油性が明らかに悪化している。結晶性ポリエステル樹脂の結晶の融点が本発明の範囲を超える比較例3の組成物は混錬工程での混合温度が高すぎるため、エピハロヒドリン系ゴムの劣化が起こり、溶融混合が出来なかった。比較例4および比較例5の組成物はいずれも低比重は示しているものの、初期物性が明らかに低下している。
【0044】
以上、実施例と比較例との比較より明らかなように、本発明の組成物を用いた加硫物はエピハロヒドリン系ゴムが持つ優れた諸特性を維持した状態で、低比重を示していることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エピハロヒドリン系ゴムの100重量部に対し、(b)結晶の融点が120℃〜210℃の範囲内にある結晶性低融点ポリエステル樹脂10〜100重量部を含有し、(c)受酸剤、および(d)加硫剤を含有することを特徴とする加硫用ゴム組成物。
【請求項2】
(b)結晶性低融点ポリエステル樹脂がハード成分とソフト成分からなるブロック共重合体であり、ハード成分が芳香族ポリエステル、ソフト成分が脂肪族ポリエーテルで構成されている請求項1に記載の加硫用ゴム組成物。
【請求項3】
(b)結晶性低融点ポリエステル樹脂の結晶の融点が140℃〜180℃の範囲内にある請求項1または2に記載の加硫用ゴム組成物。
【請求項4】
(a)エピハロヒドリン系ゴムの100重量部に対し、(b)結晶性低融点ポリエステル樹脂の含有量が15〜50重量部の範囲内にある請求項1〜3のいずれかに記載の加硫用ゴム組成物。
【請求項5】
(d)加硫剤がチオウレア系加硫剤、トリアジン系加硫剤およびキノキサリン系加硫剤から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の加硫用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の加硫用ゴム組成物を加硫してなる加硫物。
【請求項7】
請求項6に記載の加硫物からなる自動車用ゴム部品。

【公開番号】特開2009−1663(P2009−1663A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163556(P2007−163556)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】