加速度センサ及び歩数計
【課題】計測値の正確性の維持ないし向上、携帯容易性、姿勢自由性、構造簡易化等を実現しうる歩数計を提供する。
【解決手段】 歩数計は、プリント基板PS、このプリント基板と接続され、前記歩数計全体が歩行動作に起因して受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる円盤部13、及び、前記変位により生じる、円盤部及びプリント基板間のビーム11a〜11cにおける歪を検出する歪ゲージ12a〜12c、という3つの要素を少なくとも含む加速度センサ1を備える。図では更に、円盤部13の中心に、当該加速度センサの錘としての電池ホルダ20H及び電池20が設置されている様子が示されている。
【解決手段】 歩数計は、プリント基板PS、このプリント基板と接続され、前記歩数計全体が歩行動作に起因して受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる円盤部13、及び、前記変位により生じる、円盤部及びプリント基板間のビーム11a〜11cにおける歪を検出する歪ゲージ12a〜12c、という3つの要素を少なくとも含む加速度センサ1を備える。図では更に、円盤部13の中心に、当該加速度センサの錘としての電池ホルダ20H及び電池20が設置されている様子が示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサ及び歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の歩数を計測する歩数計が提供されている。この歩数計によれば、例えば一日あたりに要求される運動量が、具体的数値の裏付けをもって確認され得ることから、健康管理が適切に行えるという便宜が、ユーザに供与される。かかる歩数計は、人の歩行動作に応じた振動を検知するため、加速度センサを備える。
このような歩数計、ないしは加速度センサとしては、例えば以下に掲げる各特許文献に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開平9−223214号公報
【特許文献2】特開2001−227980号公報
【特許文献3】特開2001−255169号公報
【特許文献4】特開平11−242050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述の歩数計は、その性質上、人の外出時に利用されてこそ意義がある。このような観点からは、歩数計には、その携帯が容易であること、あるいは、携帯しても邪魔にならないこと、等の性質が備わっていることが要求される。また、これと同時に、当然ながら、歩数の計測の正確性が要求されることは言うまでもない。
しかしながら、この両者の要求を満たすことは、一般に容易とは言えない。というのも、前述の加速度センサは、例えば、ある変位方向については比較的高感度に検知可能であるが、他の変位方向についてはそうでもない、といった特性を備えている場合があり、これを考慮すると、当該加速度センサを組み込んだ歩数計は、携帯時、そのとり得る姿勢の範囲につき制約を受けるということがあり得るからである。
しかし、このような事態は、ユーザにとっては明らかに煩わしい。しかも、歩数計は、常に歩行動作に応じた振動にさらされる宿命にあるのだから、携帯中にあっても、時々刻々その姿勢が変化していく場合が普通に考えられる。使用時の姿勢に制約を設けることは、そのような意味においても不適切である。
【0004】
そこで従来、上述したような2つの要求を満たすべく、様々な工夫がなされている。前記の各特許文献はそのような工夫の現われである。
例えば特許文献1は、「複数のセンサ」と「角度検出センサ」とを備え、後者の「検出信号に基づいて、前記複数のセンサの出力信号の内の1つを選択する」技術を開示する(以上、「」内は特許文献1の〔請求項1〕より)。これによれば、角度検出センサによる歩数計の現時の姿勢の認識とそれが反映された上での歩数計測がなされていくことになるから、たしかに、前述した不具合は一定程度解消される可能性がある。
【0005】
また、特許文献2は、「歩数検出センサは…ハウジングが回転してもその位置が水平に保たれるように構成され」る技術を開示し(以上、「」内は特許文献2の〔請求項1〕より)、特許文献3は、「回転可能に軸支され」た「回転板」、この回転板に「回転可能に設けられ」る「歩数検出センサ」を備え、当該「歩数検出センサは歩数計の向きが変わってもその位置が水平に保たれるように構成され」る技術を開示する(以上、「」内は特許文献3の〔請求項1〕より)。このうち前者は、その特許請求の範囲における開示内容に関する限り、単にありうべき状態を希望的に表明しているに過ぎず、それが如何に実現されるかに関する何らの手がかりをも読み取ることができない表現になっているともいえるが、当該特許文献2にいう「水平」維持の具体的手段は要するに、ハウジングに設けられた「軸21によって、重心より上方を軸支」された「歩数計モジュールを11」を備えるというにある(以上、「」内は特許文献2の〔0008〕より。なお、同文献の〔図2〕等参照)。
これら特許文献2及び3によっても、たしかに、前述した不具合の一定程度の解消が可能ではあろう。
【0006】
しかしながら、これら特許文献1乃至3においては次のような問題がある。すなわち、特許文献1では「『複数』のセンサ」に加えて「角度検出センサ」を備える必要があること、特許文献2では、「軸」と回転可能な空間を確保する必要があること、特許文献3では特許文献2に関する要請に加えて更に「回転板」とその回転を許容する空間を備える必要があること、等々、結局、これらの文献が開示する技術では、その構造の複雑化、構成要素数の増大化、ひいてはそれに伴う歩数計全体の大型化を招来するおそれが極めて高いことである。このうち前二者は歩数計の製造コストの増大をもたらすことになるし、最後者に係る問題の発生は、そもそも前述した携帯容易性の実現と適合性をもつのかという根本的問題まで生じさせる。
【0007】
一方、前述の特許文献4は、歩数計と直接的に関連する技術としての開示をなしているわけではないが、いわゆる「3軸加速度センサ」に係る技術を開示しており、前述の姿勢自由性を確保する上では参考になる技術を提示するものということができる。しかしながら、一般に、「3軸加速度センサ」と呼ばれるものは、通常、半導体プロセスの一環として製造され、極めて微細なサイズをもつ構成部品として提供されているものである(即ち、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical System)の一種である。)。そのため、この「3軸加速度センサ」は、極めて微細な加速度変化をも検知対象とするのが通常であるが、このような検知精度は、当該「3軸加速度センサ」を歩数計に適用することを考える場合、無益であるか、むしろ余計なコストの消費が要求されるという意味において有害ですらあり得る。というのも、人間の歩行動作を検知するためには、そのような微細な加速度変化までをも知る必要はなく、また、仮にそのような高精度の振動波形を受け入れたとしても、そこから“歩数”を検出するためには、別途特別な波形処理を行うことが不可欠となり得るからである。
また、「3軸加速度センサ」には、一般に、消費電力が大きく、高価であるという、その他の問題もある。
このようにして、巷間知られている「3軸加速度センサ」を、そのままのかたちで歩数計に適用することは一般に好ましい結果を生まないのである。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、前述した各種の課題(計測値の正確性の維持ないし向上、携帯容易性、姿勢自由性、構造簡易化、構成要素数低減化、装置サイズ大型化の回避、コスト低廉化、簡易な処理による歩数検出実現、等)の全部又は一部を解決可能な加速度センサ及び歩数計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加速度センサは、上述した課題を解決するため、加速度の変化を検知する加速度センサであって、プリント基板と、前記プリント基板と接続され、前記加速度センサ全体が受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部と、前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージと、を備える。
【0010】
本発明によれば、加速度センサ全体が変位を受けると、それに応じて力により可動部の位置が変じ、これにより、可動部及びプリント基板間の接続部における歪が歪ゲージによって検出され、その結果、加速度の変化が検出されることになる。なお、ここで「歪ゲージ」とは、後述する半導体歪ゲージのほか、一般に、その内部応力の変化に応じて電気抵抗の変化が生じる様々な物質、等を含む。
このような本発明においては特に、当該加速度センサが、その構成要素たるプリント基板と、いわば一体的な関係をもって構成されていることに特徴がある。これによると、例えば前記の歪ゲージから出力される信号を伝達するための配線は、従来よく知られているプリント基板上の配線形成技術をそのまま利用することで作られ得ることになる。あるいはまた、当該加速度センサに付随し得る各種の回路素子等についてもまた、従来よく知られているプリント基板上の回路素子形成技術をそのまま利用することができる。この場合、本発明に係る加速度センサを製造する場面において、前記MEMSで予定されているような半導体プロセスのような、精妙、複雑、高度な製造工程が殊更要求されているわけではなく、むしろそのような工程を意識的に回避することも可能である。
したがって、本発明によれば、極めて低廉なコストで加速度センサが提供され得ることになるのである。
【0011】
また、本発明に係る加速度センサは、必要以上の高精度でもって加速度変化を検出するということはない。なぜなら、この加速度センサは、プリント基板と一体的に構成されることが前提とされているのであり、また、その構成要素たる「可動部」は、当該「加速度センサ全体が受ける変位に応じて発生する力」に呼応して変位することで、該可動部及びプリント基板間の接続部を歪ませ得る、形状、大きさ、質量等を備えることが前提されているからである。
このようなことから、本発明に係る加速度センサは、基本的には、前述した「3軸加速度センサ」のような過敏な反応を行うことがなく、またしたがって、事後的に特別な信号波形処理等が実行されることも特に要求しない。
つまり、本発明によれば、歪ゲージから得られた生データに対して比較的簡単な事後処理を行うだけでも、分析上必要な、あるいは有意義なデータの抽出が可能なのである。このことも、コスト低廉化を促進する。
【0012】
この発明の加速度センサでは、前記プリント基板は、その平面内に開口部を有し、前記可動部は、前記開口部内に収まるように配置され、前記接続部は、前記可動部及び前記開口部の縁間を繋ぐビームを含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、可動部が、開口部の中に浮いているかのような状態が作り出されることになるから、加速度検出機能がよりよく発揮される。また、本態様では、前記歪ゲージが、比較的歪みの生じ易いビーム上に備えられ得る。このことも、加速度検出機能のよりよい発揮に貢献する。
【0013】
また、本発明の加速度センサでは、前記可動部及び前記接続部は、前記プリント基板と一体として形成されている、ように構成してもよい。
このような構成によれば、前述した「一体的な関係」がより進められた形になる。つまり、本発明一般においては、プリント基板は、加速度センサの一部を構成する要素なのではあるが、本態様においてはもはや、プリント基板たる加速度センサ、あるいは加速度センサたるプリント基板、とも言い得るような、緊密な一体性が現出されることになる。
これによると、前述した本発明に係る効果が、更に実効的に奏されることになる。
なお、「一体として形成されている」の好適な具体例については、後の実施形態において、図4、あるいは図5(更には図11や図12)等が参照されながら、詳細に説明される。
【0014】
あるいは、本発明の加速度センサでは、前記可動部は、錘を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、錘の質量等を適当に調整すれば、可動部の応答特性を、過敏でもなく、といって緩慢でもないものにすることが可能となる。したがって、本態様によれば、加速度検出機能がよりよく発揮される。
【0015】
この態様では、前記錘は、前記歪ゲージに電圧を供給するための電池を含む、ように構成してもよい。
このような構成によれば、歪ゲージがセンサとして機能するために必要不可欠的要素たる電池が、前記の錘の機能を兼ねることになる。換言すると、本構成では、錘は錘として、電池は電池として、別々に準備する必要がないのである。
したがって、本構成によれば、構成部品点数が減少するとともに、構造が極めて合理的・効率的になり、しかも2つの機能を1つの部品が兼ねるのであるから、その設置スペースの狭小化、即ち装置サイズの小型化もまた達成されることになる。また、このことは、殆ど必然的に、コストの低廉化をももたらし得る。
【0016】
あるいは、前述の「錘」を備える態様では、その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、ように構成してもよい。
この態様では、可動部の表面に平行な方向に沿った変位をも実効的に検出することが可能となる。つまり、前記隙間が存在すれば、前記方向に沿った力が錘にかかる場合、当該錘は、いわば斜めに傾ぐようにして比較的大きく変位し得ることになるので、当該方向に沿った加速度変化をも実効的に検出することが可能となるのである。
このようにして、本態様によれば、前述にも増して加速度検出機能がよりよく発揮される。
より具体的には、本態様によれば、前述の可動部の表面に平行な方向について2成分、及び、前記可動部の表面に垂直な方向に沿った変位に係る1成分を含む、3軸についての加速度変化を極めて実効的に検出することが可能になる。このことは、当該加速度センサが組み込まれる歩数計その他の各種の装置の姿勢がどのような状態に置かれたとしても、当該装置が経験する加速度変化を適切に検出する可能性をきわめて高める。
なお、前述した、錘が電池を含む態様に対して、本態様に係る「錘保持軸」を適用する場合には、例えば、前記錘は前記電池に加えて当該電池を保持する電池ホルダを更に含み、前記錘保持軸の一端は当該電池ホルダに接続される、ように構成すると好適である。これによれば、電池ホルダの質量も“錘”として利用することができるし、また、電池の交換が容易になる、という利点が得られる。
【0017】
あるいは、本発明の加速度センサでは、前記歪ゲージは、半導体歪ゲージを含む、ように構成してもよい。
この態様では、比較的高出力特性をもつ半導体歪ゲージが利用されるので、前述にも増して加速度検出機能がよりよく発揮される。
【0018】
この態様では、前記半導体歪ゲージは、前記接続部に接着剤でもって接着されている、ように構成してもよい。
このような構成によれば、加速度センサの製造が極めて容易になされ得る。なお、半導体歪ゲージは、前述したMEMSの一部として利用されることが通常であることを考えると、本構成における「接着剤」を用いた接着という利用態様は極めて特徴的ということができる。
【0019】
一方、本発明に係る歩数計は、上述した課題を解決するため、歩数を計測する歩数計であって、第1にプリント基板、第2に、前記プリント基板と接続され、前記歩数計全体が歩行動作に起因して受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部、及び、第3に、前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージ、という3つの要素を少なくとも含む加速度センサと、前記加速度センサからの出力信号に応じて歩数をカウントする歩数計測手段と、前記歩数計測手段による計測結果を表示する表示手段と、を備える。
【0020】
本発明によれば、先に述べた「加速度センサ」と実質的に同一の加速度センサを備えているので、当該「加速度センサ」によって奏された効果を殆どそのまま享受することが可能である。
特に、本発明が「歩数計」に係ることに鑑みると、「加速度センサ」が必要以上の高精度でもって加速度変化を検出しないという前述した事情は、極めて有利に作用する。なぜなら、そのような加速度センサは、歩行動作という比較的大きな振動を検出するための「歩数計」に適用されて好適であるし、特別な信号波形処理等を実行する必要がないという点は、「歩数計」の製造コストないしは提供コストの低廉化を推進する上で極めて有力な要素たりうるからである。
また、加速度センサがプリント基板と一体的に構成されるという事情は、本発明に係る「歩数計」における、携帯容易性、構造簡易化、構成要素数低減化、装置サイズの小型化、コスト低廉化、といった様々な効果を引き出す基礎となる。
【0021】
この本発明の歩数計では、前記歩数計測手段及び前記表示手段の少なくとも一方は、前記プリント基板上に搭載されている、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した本発明に係る構造簡易化、構成要素数低減化、等々の効果が、より実効的に奏される。なぜなら、この態様では、加速度センサを構成するプリント基板上に、必要な信号処理等を行うための回路素子等を含み得る歩数計測手段や、ユーザインターフェイスたる表示手段が備えられることで、当該歩数計の構造が極めて合理的・効率的になるからである。
本態様は、加速度センサがプリント基板を含んでいることの意義が、極めて明瞭に把握される態様の1つである。
【0022】
また、本発明の歩数計では、前記可動部は、錘を含み、前記錘は、当該歩数計の電力源として機能する電池を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、先に述べた、加速度センサを構成する錘が電池を含む態様と実質的に同一の効果が享受される。
加えて、本発明における「電池」は、単に歪ゲージに電圧を供給するという役割を担うにとどまらず、「当該歩数計の電力源として機能する」、即ち例えば、前記歩数計測手段に対する電力供給源としても機能するのである。このようなことは、前記同一の効果を更に実効的なものとする。なぜなら、例えば加速度センサ用の錘兼電池が備えられはするが、それとは別に歩数計全体の電力をまかなう電池を別途設けるという態様もあり得るところ、本態様では、1個の電池がいわば多重の機能を担うことになるからである(当該電池は、加速度センサ用の錘、歪ゲージの電圧供給源、及び装置全体の電力供給源という、いわば多重の機能を担っているということができる。)。
【0023】
この態様では、その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、ように構成してもよい。
これによれば、先に述べた、加速度センサを構成する錘と可動部との間に隙間が形成される態様と実質的に同一の効果が享受される。
特に、その効果であった、3軸についての加速度変化を極めて実効的に検出することが可能となるという事情は、本態様に係る「歩数計」において極めて有利に作用する。具体的には、このことは、当該歩数計の携帯容易性、あるいは姿勢自由性、等を非常に高める意義を持つ。
【0024】
なお、本発明に係る「歩数計」に関して、上述では、(1)プリント基板上に歩数計測手段等が搭載されること、(2)可動部が錘を含み且つこの錘が電池を含むこと、(3)錘保持軸が備えられること、の3つの変形態様についてのみ記載し、上述した本発明に係る「加速度センサ」の変形態様として記載した、(i)開口部及びビームを備える態様、(ii)可動部等がプリント基板と一体として形成される態様、(iii)可動部が錘(電池を含まず)を含む態様、(iv)歪ゲージが半導体歪ゲージを含む態様、(v)半導体歪ゲージが接着剤でもって接着される態様、の5つについては記載していないが、本発明に係る「歩数計」が、これら(i)〜(v)の変形態様の適用を拒絶しているわけでは勿論ない。
前記の(1)〜(3)の変形態様が、あたかも、上述した本発明に係る「加速度センサ」の変形態様の中から抜書きされるかのように特記されているのは、「歩数計」としての効果に特筆すべきものがあるからである。本発明に係る歩数計を構成する「加速度センサ」に対して、前記(i)〜(v)の変形態様、更に言えば上述した「加速度センサ」に係るすべて変形態様(例えば、電池が「歩数計の電力減として機能」するのではなく、「歪ゲージに電圧を供給する」という要件を満たすだけである場合等)を適用することは当然可能なのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態において参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0026】
本実施形態に係る歩数計100は、図1に示すように、筐体100A、操作ボタン群101、表示部105、及び歩数カウント部10を備えている。
このうち操作ボタン群101は、電源ボタンや、メニューキー、アップキー及びダウンキー等を含む。歩数計100のユーザは、このような操作ボタン群101を用いて、当該歩数計100に対して様々な指令を発し得る。ここで指令とは、例えば電源の投入又は遮断、これまでカウントした歩数のリセット設定、身長・年齢・性別等の個人データの入力設定、等を含む。あるいは、歩数計100が適当な数種の動作モードを設定可能に構成されているのであれば、当該動作モードの設定、等々をも含む。
表示部105は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置であり、歩数計100によって測定された歩数データ、あるいは前記個人データ、前記動作モードの状態、等々を表示する。
【0027】
歩数カウント部10は、図1乃至図3に示すように、筐体100Aの内部に収納されている。この歩数カウント部10は、適当な箇所(図1でいえば、当該歩数カウント部10の四隅)において、適当な固持手段により、筐体100Aの内部に固着されている。ここで固持手段とは、簡単には接着剤等でよいし、あるいはこれに加えて又は代えて、図1乃至図3に示すように係合部10STを備えるのであってもよい。
このような歩数カウント部10は加速度センサ1を備えており、これにより当該歩数計100のユーザの歩数をカウントすることが可能である。この歩数カウント部10の詳細については、後に改めて説明する。
【0028】
筐体100Aは、当該歩数計100の外形を形作る。本実施形態において、この筐体1は、図1に示すように、比較的厚さの小さい略直方体形状をもつ。当該歩数計100の全体的な大きさは、持ち運びの便等を考慮して、概ね腕時計サイズから掌サイズ程度であることが好ましい。
この筐体100Aの内部は空洞となっており、この内部には、前述の歩数カウント部10の他、必要な内部要素が備えられている。この内部要素としては、具体的には例えば、前記操作ボタン群101からの電気信号を歩数カウント部10へ供給するためのリード線等々が含まれる。
【0029】
また、この筐体100Aの外表面には、前述の操作ボタン群101及び表示部105が、所定の位置に配置されているほか、特に図2に示すように、電池交換用の開口部100M及び蓋100Lが備えられている。開口部100Mは、同図に示すように、概ね四辺形状をもち筐体100Aの裏面側(即ち、表示部105が備えられていない側)の所定箇所に形成されている。蓋100Lは、この開口部100Mの形状及び大きさに対応する大きさ及び形状をもち、同図に示すように当該開口部100Mに着脱可能である。これら開口部100M及び蓋100Lにより、ユーザは、電池20を交換することができる。なお、この電池20は、本実施形態において極めて重要な役割を担っているが、この点については後に説明する。
なお、筐体100Aの外表面には、ユーザのベルト等に懸架可能なクリップ等が適宜設けられうる。
【0030】
次に、歩数カウント部10の詳細について説明する。
歩数カウント部10は、図4に示すように、プリント基板PSを備えるとともに、このプリント基板PS上に、既述した表示部105のほか、加速度センサ1、制御部31、増幅部32、抵抗素子33、及び容量素子34を備えている。このうち制御部31、増幅部32、抵抗素子33、及び容量素子34の詳細については、後に図7を参照して説明する。
【0031】
プリント基板PSは、その表面に各種の回路素子を備え得る板状又はフィルム状の部品である。プリント基板PSは、典型的には、基材と、この基材に含浸される絶縁性樹脂とを含む。本実施形態に係るプリント基板PSとしては、前記基材として比較的柔軟性の大きい材料(例えば、フィルム状のポリイミド、ポリエステル等)を含むフレキシブル基板が好適に利用可能である。これによれば、後の説明からも明らかなように、加速度センサ1の感度を一定程度以上、好適に維持することが可能である(ただし、一定の剛性は必要である。)。
【0032】
ただし、本発明にいう「プリント基板」としては、前述したフレキシブル基板(基材が前述のように比較的大きい柔軟性をもつことから、曲げ、捻り、撓み等の変形に追随可能なプリント基板)の他、基本的に、現時点及び将来において利用可能な、あらゆるプリント基板を利用可能である。
具体的には例えば、前記基材として比較的柔軟性の小さい材料を含むリジッド基板を使用することも、あるいは、リジッド基板及びフレキシブル基板が混在する基板を使用することも可能である。また、前記絶縁性樹脂も基本的に自由に選択可能であり、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、テフロン(商標登録)、等々が利用可能である。更に具体的には、本発明にいう「プリント基板」には、紙フェノール樹脂、紙エポキシ樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン基板、アルミナ基板、コンポジット基板、等々が該当し得る。
【0033】
加速度センサ1は、図4、あるいは図5に示すように、ビーム11a,11b,11c、半導体歪ゲージ12a,12b,12c、及び円盤部13、並びに電池保持手段から構成される。なお、このうちの円盤部13は、本発明にいう「可動部」概念への該当性を有する。
【0034】
円盤部13は、前記のプリント基板PSの一部に形成された円形状の開口部14の中心に位置づけられる。また、ビーム11a,11b,11cは、そのそれぞれが略長方形状をもち、このような円盤部13の周囲から放射状に延びる。そして、これらビーム11a,11b,11cの一端は、前記開口部14の縁と接合されている。これにより、ビーム11a,11b,11cは、開口部14の縁と円盤部13との間に架けられた梁に見立てられうる。なお、これらビーム11a,11b,11cは、図4、あるいは図5に示すように、円盤部13の外周に沿って、120度の間隔をあけて並ぶ(即ち、これらビーム11a,11b,11cは等間隔に並ぶ。)。
このような円盤部13及びビーム11a,11b,11cは、基本的に、プリント基板PSと全く同じ材料で作られて好適である。なお、この点に関しては、後に述べる製造方法の説明に関連して改めて触れる。
【0035】
一方、半導体歪ゲージ12a,12b,12cの各々は、前述のビーム11a,11b,11cのそれぞれの上に配置されている。本実施形態において、これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、ビーム11a,11b,11cの外形形状(即ち、前述のように長方形状)に即した形状をもつ。本実施形態においては、たまたま、当該即した形状とは、いわば針状と呼び得る形状(以下、単に「針形状」という。)である。当該針形状の一端は、図5に示すように、プリント基板PS上に形成された配線18a,18b,18c(それぞれ、半導体歪ゲージ12a,12b,12cに対応する。)に接続されている。これら配線18a,18b,18cは、後に参照する図7からもわかるように、増幅部32に接続される。他方、当該梁形状の他端は、接地線18dに接続されている。この接地線18dは、後述する保持軸20HA及びナット20HNに接続されてグランド電位を維持する。
このような半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、例えば所定の絶縁層と半導体層との積層構造をもつ。これら各層は、例えばシリコン基板上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法等による成膜処理を実行することによって製造され得る。本実施形態に係る半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、その成膜後のシリコン基板に研磨、切断、エッチング等々の加工を施すことによって、前記針形状等の所定の形状を形作ることにより得られる。
また、本実施形態において、このような半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、基本的に、ビーム11a,11b,11cの上に接着剤でもって接着されている。このように、極めて簡易な手段によって、半導体歪ゲージ12a,12b,12cが加速度センサ1の構成要素の一部となることは、本実施形態における特徴の一つである。
このような半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、その内部に応力変化が生じると、その抵抗値を変化させる性質をもつ。
なお、上では「接着剤」に言及したが、本発明に関して言えば、半導体歪ゲージ12a,12b,12cが、ビーム11a,11b,11cの歪に応じて変形可能なように装着されるのであれば、必ずしも「接着剤」を利用する必要はない。本発明において、その他の接着手法を当然利用可能である。
【0036】
電池保持手段は、図6に比較的よく示されているように、電池ホルダ20H、及びこの電池ホルダ20Hを円盤部13に締結するためのナット20HNからなる。
電池ホルダ20Hは、平面視して略円形状であって、その周囲に一定の高さをもつ縁部を備える受け皿部をもつ。受け皿部は、図6等に示すように、ボタン型の電池20を保持可能である。ちなみに、この電池20は、本実施形態に係る歩数計100の動作のために必要となる電力の供給源である。また、前記の電池ホルダ20Hは、図6等に示すように、前記受け皿部の中心に接合される保持軸20HAをもつ。この保持軸20HAは、前述した円盤部13の中心に開けられた穴130(図4参照)を貫通する。なお、この保持軸20HAによって、円盤部13の表面と電池ホルダ20Hの底面との間には、隙間が形成される。
ナット20HNは、当該穴を貫通した保持軸20HAの先端部に締結される。保持軸20HAの当該先端部には、当該ナット20HNを螺着可能なように、ねじが切られている(不図示)。
【0037】
このような構成となる電池保持手段は、そこに備えられた電池20とともに、歩数計100の変位に応じて変化する加速度を読み取るための錘としての役割を担う。つまり、かかる電池保持手段は、単に歩数計100の電力源たる電池20を保持するという役割を担うだけでなく、加速度センサ1の加速度検知機能に係る本質的役割をも担うのである。この点については、後に述べる作用効果の説明の際、より明瞭に把握される。
【0038】
以上述べた構造から明らかなように、本実施形態に係る加速度センサ1は、いわば前述のプリント基板PSと一体的なものとして備えられている(このような本実施形態の構成は、本発明にいう「可動部及び…接続部は、…プリント基板と一体として形成されている」の好適な一例を提供するものである。)。
【0039】
これに関連して、このような加速度センサ1は、様々な方法で製造され得る。
例えば、第1に、プリント基板PSの一部に円形状の開口部14を形成した後、第2に、当該プリント基板PSと同じ材料で別途作られた円盤部13及び(半導体歪ゲージ12a,12b,12cを接着済みの)ビーム11a,11b,11cの一体物を、当該開口部14内に収めるように、かつ、ビーム11a,11b,11cの一端が当該開口部14の縁に当接可能なように配置し、第3に、当該ビーム11a,11b,11cの一端と当該縁とを接着する、(前述の第2において、ビーム11a,11b,11cが半導体歪ゲージ12a,12b,12cを接着済みでなければ、第4に、当該半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれをビーム11a,11b,11cに接着する)、等という方法で製造することが可能である。
【0040】
あるいは、より好適には例えば、プリント基板PSの平面内に、最終的に、図4あるいは図5に示すような、円盤部13及びビーム11a,11b,11cの輪郭形状が残存するように、当該プリント基板PSの一部につき3つの略扇形形状の開口部(図5参照)を形成する、(半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、当該開口部形成後に接着されてもよく、あるいは、当該開口部形成前、最終的にビーム11a,11b,11cとなるべき場所に予め接着されてもよい)、等という方法が採用されてもよい。
かかる製造方法によれば、先に述べた方法と比べても、極めて容易かつ確実に、加速度センサ1を製造することができる。また、この場合においては、円盤部13及びビーム11a,11b,11cとプリント基板PSとが同一材料から作られているということは、いわば当然の事態となる。加速度センサ1がこのような製造方法をもって作られるとき、当該加速度センサ1とプリント基板PSとが「一体」であるということを満たす最良の形態例の1つが提供される。
【0041】
次に、本実施形態に係る歩数計100の回路構成について説明する。
歩数計100は、図7に示すように、既に構造的説明においても登場した、加速度センサ1、制御部31、増幅部32、表示部105、及び電池20のほか、分圧抵抗Ra,Rb,Rc等を備えている。
【0042】
このうち加速度センサ1を構成する前記半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、図7において、抵抗要素として示されている。これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、それぞれ、分圧抵抗Ra,Rb,Rcと直列に接続されている。また、分圧抵抗Ra,Rb,Rcは、電池20との関係においてそれぞれ並列に接続されている。
これにより、例えば添え字aに着目してみれば、電池20によって惹起された起電電圧は、抵抗Ra及び半導体歪ゲージ12aによって分圧される。この分圧された電圧は、図7に示すように、すぐ後に述べる増幅回路32aを構成するオペアンプOAaの非反転入力端子に供給される。ここで重要なのは、半導体歪ゲージ12aの抵抗値が変化し得、よって前述の分圧された電圧の値が変化し得ることである。
なお、いま、たまたま符号aについて述べたが、同じことは符号b及びcについても全く同様にあてはまる。
【0043】
増幅部32は、図7に示すように、前述の半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれに対応する増幅回路32a,32b,32cを備えている。
このうち増幅回路32aは、オペアンプOAa、抵抗素子R1a及びR1b、及び容量素子Caから構成されている。抵抗素子R1aは、オペアンプOAaの出力端及び反転入力端子間に接続された負帰還抵抗である。抵抗素子R2aは、オペアンプOAaの反転入力端子に接続され、更にこの抵抗素子R2aと直列に容量素子Caが接続されている。容量素子Caの一方の電極は接地されている。一方、オペアンプOAaの非反転入力端子は、分圧抵抗Ra及び半導体歪ゲージ12a間から延びる配線に接続されており、前述のように、これらによって分圧された電圧の供給を受ける。
これにより、増幅回路32aは、その分圧された電圧の変動を増幅して出力する(増幅率は、概ね(R1a+R2a)/R2a)。この際、コンデンサCaで生じる電位差は、一種のバイアスとして機能し、具体的には、前記変動のうち比較的小さなものについて、これを無視する作用を発揮する。
以上の説明は、増幅回路32b及び32cについても全く同様にあてはまる。
【0044】
制御部31は、前述の増幅部32からの出力信号を受けるとともに、その出力信号に基づいて、“歩数”のカウント処理を行う。制御部31は、これを実現するため、当該出力信号をデジタル信号に変換するADコンバータ、あるいはCPU(Central Process Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、等その他必要な要素を備える(いずれも不図示)。
また、この制御部31は、前述した操作ボタン群101からの出力信号Sを受けるとともに、それに関する処理もまた実行する。その他、本実施形態に係る制御部31は、歩数計100全体を調和的に動作させるため、当該歩数計100に係る全般的な制御を行う。
なお、表示部105は、図7に示すように、この制御部31のコントロールの下に置かれる。表示部105は、当該制御部31自身がカウントした“歩数”の出力を受けて、それをユーザが読み取り可能な数字として表示する(図1、あるいは図4参照)。
【0045】
なお、前述した、分圧抵抗Ra,Rb,Rc、増幅回路32中の各種の抵抗素子(R1a,R2a,R1b,R2b,R1c,R2c)、図4に示した抵抗素子33に該当し得、また、増幅回路32中の容量素子Ca,Cb,Ccは、図4に示した容量素子34に該当し得る。ただし、抵抗素子33及び容量素子34は、それぞれ、いま述べた以外に必要なものとして備えられる抵抗及びコンデンサであってもよい。
【0046】
以下では、以上のような構成を備える歩数計100の作用効果について、既に参照した図1乃至図7に加えて、図8乃至図10をも参照しながら説明する。
まず、歩数計100は、ユーザによって携帯される。この場合、ユーザは、当該歩数計100を基本的に身体のどこに位置付けてもよい。その姿勢も自由である。本実施形態に係る歩数計100は、前述のように、好適には掌サイズ程度であるので、実際、これを握持することも可能であるし、胸ポケットに収納したり、あるいは(クリップ等を備えれば)ベルトにひっかけることも可能であって、しかも邪魔になることがない。
【0047】
このような状態でユーザが歩行を開始すると、歩数計100は、この歩行動作に応じた振動(加速度の変化)を受ける。この場合、当該ユーザの歩き方の如何、あるいは歩数計100の身体上の位置付けの相違、等々の種々の要因により、歩数計100は様々な振動を経験し得るが、本実施形態では、どのような振動であっても、その中から適切に“歩数”を検出していく。
【0048】
まず、前述の要因によって、歩数計100は、図8に示すように振動し得る。図8では、図1に示す歩数計100の正面に対して垂直な変位が、当該歩数計100に加えられる場合、加速度センサ1がどのように反応するかが示されている。
【0049】
図8において、歩数計100が図中Δd1を付した矢印のような変位を受けると、加速度センサ1を構成する円盤部13は、図中下に沈み込まされるかのような力F1を受ける。この場合、円盤部13だけが図示するような変動を行うのには、以下の理由がある。
(1) 第1に、歩数カウント部10の全体は、図1乃至図3に示した係合部10STによって筐体100Aの内部に固着されているので、プリント基板PSにビーム11a,11b,11cを介して接続されているだけの円盤部13が、前記の力F1を、いわば一身に受けるようなかたちになるからである。
(2) 第2に、いま述べた(1)の事情があるのに加えて、円盤部13は、前述のように電池ホルダ20H及び電池20を保持し、かつ、それらの重量を担っていることにより、前記の変位Δd1の影響、即ちこれら電池ホルダ20H及び電池20に働く慣性の影響を直接的に受けることになるからである。つまり、これら電池ホルダ20H及び電池20は、変位Δd1に抗して元の位置に留まろうとするが、円盤部13は、その影響を受けるのである。
【0050】
いずれにせよ、このような円盤部13の変動によって、当該円盤部13に繋がるビーム11a,11b,11cは図8に示すように変形し、これによって当該ビーム11a,11b,11c上に接着されている半導体歪ゲージ12a、12b、12cの内部には応力変化が生じる(図中符号12b及び12c付近の矢印参照。なお、この矢印は、当該応力変化を視覚的に表現する目的をもつだけで、厳密な意味における応力の方向やその変化の様子等を表現しているわけではない。ただし、1組の矢印が相互に反対方向に向いている場合、当該の半導体歪ゲージは引張応力を主に受け、対向している場合(すぐ後に参照する図9の符号12c付近の矢印参照)、圧縮応力を主に受けている、ということはできる。)。
このような結果、これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cの抵抗値は変化する。
ちなみに、図8の場合、図から明らかなように、これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれが経験する応力変化は、それらに関してほぼ共通であり、したがって、これらの抵抗値の変化もほぼ同じになる可能性がある。
【0051】
あるいは、前述した種々の要因によって、歩数計100は、図9に示すようにも振動し得る。図9では、図1に示す歩数計100の正面と平行な変位が当該歩数計100に加えられる場合、加速度センサ1がどのように反応するかが示されている。
【0052】
図9において、歩数計100が図中Δd2を付した矢印のような変位を受けると、加速度センサ1を構成する円盤部13は、図中右側に傾けられるかのような力F2を受ける。この場合においても、円盤部13だけが図示するような変動を行うのは、上述した(1)及び(2)の理由があるからである(つまり、これらの理由(1)及び(2)は、図9の場合においても、あてはまる。)。
【0053】
ただ、図9に示すような変動が可能となっているのは、保持軸20HAの存在が大きく貢献している。すなわち、保持軸20HAは、一定の高さをもつことにより、円盤部13の表面と電池ホルダ20Hとの底面との間に当該高さに対応する大きさの隙間を形成することに寄与する。これにより、いわば電池ホルダ20Hはいわば宙に浮くかの如き状態に置かれることになるが、かかる状態が、水平方向の変位Δd2に対しても、円盤部13、ないしはビーム11a,11b,11cが好適に反応し得る要因となっているのである。
また、図9の場合においては、ビーム11a,11b,11cそれぞれが経験する変形、即ち半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれが経験する応力変化は、図8の場合のように、対称的ではない。すなわち、図9からも明らかなように、変位Δd2に対しては、主に、ビーム11b及び11cが比較的大きな変形を受けることになるのに対して、図9では陰となっているビーム11aは、然程大きな変形を受けることはない。当該ビーム11aが変形するとしても、その変形は、当該ビーム11aの軸を中心として回転するような(あるいは、捩れるような)ものに過ぎないからである(図9と図5とを対比参照すれば、かかる事情は読み取れる。)。
【0054】
いずれにせよ、このようなことにより、図9によっても、半導体歪ゲージ12a,12b,12cの抵抗値は変化することになる。そして、図9では、図8に比べて、半導体歪ゲージ12b及び12cの抵抗値の変化の方が、半導体歪ゲージ12aのそれよりも、大きくなる可能性がある。
【0055】
なお、図8及び図9に示した力F1及びF2の根源は、本実施形態においては、重力にあるに他ならない。
【0056】
以上、図8及び図9に示したような動作によって生じた半導体歪ゲージ12a,12b,12cの抵抗値の変化は、図7を参照して説明したように、増幅回路32a,32b,32cそれぞれを構成するオペアンプOAa,OAb,OAcの非反転入力端子に供給される電圧の変動をもたらす。
増幅回路32a,32b,32cは、その電圧の変動に応じた増幅を実行し、その出力信号を制御部31に出力する。このような増幅された出力信号は、制御部31において、例えば図10に示すような波形例として観測され得ることになる。
【0057】
制御部31は、このような波形例に基づいて、例えば次のような処理に基づき“歩数”を検出する。
すなわち、制御部31は、第1に、時々刻々変化する3つの入力信号を、一定時間(図10では、0.5s)ごとにサンプリングする、第2に、これらのサンプリング値を比較して、そのうち最大のものを確定する、第3に、この最大値が所定の閾値を超えているかどうかを判断し、超えていれば“歩数”としてカウントし、超えていなければカウントしない、というようである。
【0058】
このような処理に従うと、図10の例では次のようになる。
すなわち、図10では、半導体歪ゲージ12a及び12bの抵抗値が比較的活発に変動し、半導体歪ゲージ12cのそれはそうでもない。このような状況下、まず、第1回目のサンプリングが実施されると、その最大値は、半導体歪ゲージ12aに基づく信号であることがわかる。そして、当該最大値は、図10に示す閾値Vthを超えているので、制御部31は、これを歩数“1”としてカウントする。同じ状況は、第2回目のサンプリングにおいてもあてはまることが明白であるので、制御部31は、歩数“2”をカウントする。
続いて、第3回目のサンプリングが実施されると、その最大値は、半導体歪ゲージ12aではなく、半導体歪ゲージ12bに基づく信号であることがわかる。そして、当該最大値は、図10に示す閾値Vthを超えているので、制御部31は、これを歩数“3”としてカウントする。同じ状況は、第4回目のサンプリングにおいて繰り返されるので、制御部31は、歩数“4”をカウントする。
ちなみに、最大値が観測される信号が、上述のように半導体歪ゲージ12aに基づくものから、半導体歪ゲージ12bに基づくものへと変化する理由は、例えば、ユーザの身体上における歩数計100の姿勢が変じた、等といったことが考えられる(そのような姿勢の変更によって、例えば、主変位方向が図8のようなもの(Δd1の方向)から図9のようなもの(Δd2の方向)へと変化する、等といったことは生じ得ることである。)。どのような理由にせよ、本実施形態に係る歩数計100は、そのような場合であっても、適切に歩数をカウントしていくのである。
【0059】
このような場合において、本実施形態において特筆されるべきは、上述のような比較的簡易な処理が実行されるだけで、歩数がきちんとカウントされていくことである。これが可能となっていることの背景には、次のような事情がある。
すなわち、本実施形態では、前述のように、比較的大重量の電池ホルダ20H及び電池20が加速度検知用の錘として機能するため、あまりに微細な振動までをも検出してしまうようなことがない。つまり、観測される波形例は比較的単純なものとなり、例えば波形整形処理とか特定波形抽出処理等といった特別複雑な処理を実施する必要がないのである。
なお、このような観測され得る波形の単純化という点に関しては、前述し、及び、図7に示した、容量素子Ca,Cb,Ccも一定の役割を担っている。
また、上記の例では、サンプリング間隔が“0.5s”と定められている。これは人間の歩行動作における、ある1歩から次の1歩までの標準的な時間を勘案してのことであるが、これによっても、上述した、あまりに微細な振動までをも検出してしまうようなことがない、という利点が享受される。例えば、サンプリング間隔をより短く設定してしまえば、歩行動作以外の振動を検出してしまう可能性が高くなるが、本実施形態では、そのような懸念がないのである。
【0060】
以下述べたように、本実施形態に係る歩数計100によれば、様々な効果が奏されるが、それらをまとめると、概ね次のようになる。
(1) 本実施形態に係る歩数計100は、ユーザがどのような姿勢でこれを携帯しても、あるいは更に、携帯中に当初の位置から次第にずれていくなどといったことが生じたとしても、歩数が的確に検出されていく。このようなことが可能であるのは、加速度センサ1の構成、特に円盤部13、ビーム11a,11b,11c、及び錘としての電池ホルダ20H及び電池20の配置態様が、図4、図5、あるいは図6に示すように極めて好適に設定されているからである。特に、3本のビーム11a,11b,11cが、円盤部13の外周に沿って等間隔に並べられているという態様は、最も好適な態様の1つを提供しているということができる(図8及び図9参照)。
なお、このことを逆に捉えれば、本実施形態に係る歩数計100は、ユーザに対し、携帯時にとられるべき姿勢なるものを特に要求することがないということである。このようにして、当該歩数計100は、携帯容易性、姿勢自由性を保持し、ユーザに煩わしさを感じさせることがないのである。
【0061】
(2) 本実施形態に係る歩数計100は、極めて安価に提供され得る。これは、本実施形態に係る加速度センサ1が、その構成要素としてプリント基板PSを含んでいること、あるいは、加速度センサ1とプリント基板PSとが一体化されていることによる。また、かかる効果には、当該加速度センサ1の構成要素として、歩数計100を動作させるための殆ど必要不可欠的要素たる電池20が活用されていることも大きく貢献している。このようなことから、本実施形態に係る歩数計100は、その構造が簡易化され、あるいは構成要素数が低減化される結果、極めて安価に提供され得ることになるのである。また、同じ理由により、装置サイズの小型化もまた達成される。さらに、本実施形態では、図10を参照して説明したような、比較的簡易な歩数カウント処理が行われることも、コストの低減化に大きく資していることは言うまでもない。
【0062】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る歩数計は、上述した形態に限定されることはなく、以下に述べる各種の変形が可能である。
(1) 上記実施形態では、加速度センサ1が、円形状の円盤部13、その外周から120度間隔で突出するビーム11a,11b,11c等を備える形態について説明しているが、本発明は、そのような形態に限定されるわけではない。
【0063】
例えば、加速度センサは図11に示すようにも構成され得る。
この図11において、加速度センサ1’は、電池ホルダ20Hを保持するための部位として、平面視して四辺形状の保持部131を備える。また、ビーム111a,111b,111c,111dは、その保持部131の四隅角部から突出するように延びている。これらのビーム111a,111b,111c,111dは、開口部141の縁と保持部131との間に架けられた梁に見立てうる。そして、これらビーム111a,111b,111c,111dの上には、半導体歪ゲージ121a,121b,121c,121dが接着されている。
【0064】
あるいは、加速度センサは図12に示すようにも構成され得る。
この図12において、加速度センサ1”は、電池ホルダ20Hを保持するための部位として、平面視して円形状の円盤部PSF(図中ハッチング部分)を備えている。この意味では上記実施形態と変わりはないといえるが、この円盤部PSFは、プリント基板PSRとの間で隙間なく接続されている点が、上記実施形態と大きく異なっている。つまり、この場合において、「ビーム」は存在しないのである。また、この加速度センサ1”を構成する円盤部PSF及びプリント基板PSRは、前者がフレキシブル基板、後者がリジッド基板であることも、上記実施形態とは大きく異なる。この場合、半導体歪ゲージ122a,122b,122c,122dは、これらプリント基板PSRと円盤部PSFとの境界を跨ぐように接着されている。
このような構成では、円盤部PSFは、いわばダイアフラム(diaphragm;隔壁)のように動作し得る。そして、半導体歪ゲージ122a,122b,122c,122dは、このような円盤部PSFと、それに比べれば極めて剛性の大きいリジッド基板たるプリント基板PSRとの間の接続部における歪を検出するのである。
【0065】
これら図11及び図12に示すような形態であっても、上述した実施形態におけるのと本質的に相違のない作用効果が奏されることは明白である。
その他、これ以外にも様々な態様が考えられ得るが、それらを一々図示することは不可能である。いずれにせよ、そのような変形態様のすべてが、本発明の範囲内にある。
【0066】
(2) 上記実施形態では、加速度を検知するために、半導体歪ゲージを備える形態について説明しているが、場合によっては、「半導体」である必要は必ずしもない。もちろん、半導体歪ゲージのもつ高出力特性等を勘案すると、その利用が本発明の最適な実施形態の1つを提供することは間違いないが、本発明は、加速度センサが「プリント基板」と一体的な関係をもつことをも1つの特徴として主張するから、かかる要件が具備される限り、「歪ゲージ」に用いられる具体的材料が何であるかということには拘泥しないという側面をもつ。
【0067】
(3) 上記実施形態では、表示部105、制御部31、増幅部32、抵抗素子33及び容量素子34(以下、まとめて「表示部105等」ということがある。)が搭載されているプリント基板PSの面(以下、「搭載面」という。)と同一の面に、半導体歪ゲージ12a,12b,12cが接着されているが(図4、図8及び図9参照)、本発明は、かかる形態にも限定されない。
例えば、半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、搭載面とは反対側のプリント基板PS面に接着されてもよい。あるいは、図4において、電池ホルダ20Hは同図中紙面向こう側に向かって立ち上がる(即ち、搭載面とは反対側の面から立ち上がる)ようになっているが、これとは反対に、同図中紙面こちら側に向かって立ち上がる(即ち、搭載面から立ち上がる)ようになっていてもよい。あるいは更に、場合によっては、前述の表示部105等について、そのうちの表示部105はプリント基板PSの一方の面に搭載され、制御部31は他方の面に搭載される、などという振り分けがなされてもよい。
このように、本発明は、プリント基板PS上における表示部105等、あるいは半導体歪ゲージ12a,12b,12c、電池ホルダ20H、等々の具体的な配置態様について基本的に限定を加えない。「プリント基板」が存在する限り、本発明にいう「歪ゲージ」、「錘」、「電池」、「歩数計測手段」、あるいは「表示手段」等は、当該「プリント基板」上に、基本的に、自由に配置され得るのである。
【0068】
(4) 上記実施形態では、制御部31に入力される信号波形を0.5sごとにサンプリングする態様について説明しているが(図10参照)、本発明は、かかる形態にも限定されない。ここで、“0.5s”という数字が選ばれているのは、既に述べたように、人間の歩行動作における、ある1歩から次の1歩までの標準的な時間を勘案してのことであるが、厳密に言えば、当該歩数計100のユーザは、子どもから成人、更には老齢者まで考えられ、また、身長差や股下の長さ等につき個人差があるのであるから、1歩1歩の時間間隔は異なってくるはずである。したがって、図10に示すサンプリング間隔は、そのような事情に対する配慮に基づいて定められてよい。あるいは、この際、図1に示した操作ボタン群101から入力され得る前記個人データに基づいて、自動的にサンプリング間隔が決定されるような手法が採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る歩数計の概観を示す正面図である。
【図2】図1の歩数計の概観を示す背面図である。
【図3】図1の歩数計の概観を示す側面図である。
【図4】図1の歩数計を構成する歩数カウント部の詳細を示す平面図である。
【図5】図4の歩数カウント部を構成する加速度センサの詳細を示す平面図である。
【図6】図5のXX矢視側面図である。
【図7】図4の歩数カウント部における歩数カウントを可能とする回路の図である。
【図8】加速度センサの動作状態例(その1)を示す説明図である。
【図9】加速度センサの動作状態例(その2)を示す説明図である。
【図10】図7あるいは図4の制御部で観測され得る信号波形例を示す説明図である。
【図11】加速度センサの変形例(その1)の詳細を示す平面図である。
【図12】加速度センサの変形例(その2)の詳細を示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
100……歩数計、100A……筐体、100M……開口部、100L……蓋、101……操作ボタン群、105……表示部、10……歩数カウント部、
1,1’,1”……加速度センサ、11a,11b,11c……ビーム、12a,12b,12c……半導体歪ゲージ、13……円盤部、14……(プリント基板PSの)開口部、18a,18b,18c……配線、20……電池、20H……電池ホルダ、20HA……保持軸、20HN……(電池ホルダ締結用の)ナット、
31……制御部、32(=32a,32b,32c)……増幅部、OAa,OAb,OAc……オペアンプ、33……抵抗素子、34……容量素子、PS……プリント基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサ及び歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の歩数を計測する歩数計が提供されている。この歩数計によれば、例えば一日あたりに要求される運動量が、具体的数値の裏付けをもって確認され得ることから、健康管理が適切に行えるという便宜が、ユーザに供与される。かかる歩数計は、人の歩行動作に応じた振動を検知するため、加速度センサを備える。
このような歩数計、ないしは加速度センサとしては、例えば以下に掲げる各特許文献に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開平9−223214号公報
【特許文献2】特開2001−227980号公報
【特許文献3】特開2001−255169号公報
【特許文献4】特開平11−242050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述の歩数計は、その性質上、人の外出時に利用されてこそ意義がある。このような観点からは、歩数計には、その携帯が容易であること、あるいは、携帯しても邪魔にならないこと、等の性質が備わっていることが要求される。また、これと同時に、当然ながら、歩数の計測の正確性が要求されることは言うまでもない。
しかしながら、この両者の要求を満たすことは、一般に容易とは言えない。というのも、前述の加速度センサは、例えば、ある変位方向については比較的高感度に検知可能であるが、他の変位方向についてはそうでもない、といった特性を備えている場合があり、これを考慮すると、当該加速度センサを組み込んだ歩数計は、携帯時、そのとり得る姿勢の範囲につき制約を受けるということがあり得るからである。
しかし、このような事態は、ユーザにとっては明らかに煩わしい。しかも、歩数計は、常に歩行動作に応じた振動にさらされる宿命にあるのだから、携帯中にあっても、時々刻々その姿勢が変化していく場合が普通に考えられる。使用時の姿勢に制約を設けることは、そのような意味においても不適切である。
【0004】
そこで従来、上述したような2つの要求を満たすべく、様々な工夫がなされている。前記の各特許文献はそのような工夫の現われである。
例えば特許文献1は、「複数のセンサ」と「角度検出センサ」とを備え、後者の「検出信号に基づいて、前記複数のセンサの出力信号の内の1つを選択する」技術を開示する(以上、「」内は特許文献1の〔請求項1〕より)。これによれば、角度検出センサによる歩数計の現時の姿勢の認識とそれが反映された上での歩数計測がなされていくことになるから、たしかに、前述した不具合は一定程度解消される可能性がある。
【0005】
また、特許文献2は、「歩数検出センサは…ハウジングが回転してもその位置が水平に保たれるように構成され」る技術を開示し(以上、「」内は特許文献2の〔請求項1〕より)、特許文献3は、「回転可能に軸支され」た「回転板」、この回転板に「回転可能に設けられ」る「歩数検出センサ」を備え、当該「歩数検出センサは歩数計の向きが変わってもその位置が水平に保たれるように構成され」る技術を開示する(以上、「」内は特許文献3の〔請求項1〕より)。このうち前者は、その特許請求の範囲における開示内容に関する限り、単にありうべき状態を希望的に表明しているに過ぎず、それが如何に実現されるかに関する何らの手がかりをも読み取ることができない表現になっているともいえるが、当該特許文献2にいう「水平」維持の具体的手段は要するに、ハウジングに設けられた「軸21によって、重心より上方を軸支」された「歩数計モジュールを11」を備えるというにある(以上、「」内は特許文献2の〔0008〕より。なお、同文献の〔図2〕等参照)。
これら特許文献2及び3によっても、たしかに、前述した不具合の一定程度の解消が可能ではあろう。
【0006】
しかしながら、これら特許文献1乃至3においては次のような問題がある。すなわち、特許文献1では「『複数』のセンサ」に加えて「角度検出センサ」を備える必要があること、特許文献2では、「軸」と回転可能な空間を確保する必要があること、特許文献3では特許文献2に関する要請に加えて更に「回転板」とその回転を許容する空間を備える必要があること、等々、結局、これらの文献が開示する技術では、その構造の複雑化、構成要素数の増大化、ひいてはそれに伴う歩数計全体の大型化を招来するおそれが極めて高いことである。このうち前二者は歩数計の製造コストの増大をもたらすことになるし、最後者に係る問題の発生は、そもそも前述した携帯容易性の実現と適合性をもつのかという根本的問題まで生じさせる。
【0007】
一方、前述の特許文献4は、歩数計と直接的に関連する技術としての開示をなしているわけではないが、いわゆる「3軸加速度センサ」に係る技術を開示しており、前述の姿勢自由性を確保する上では参考になる技術を提示するものということができる。しかしながら、一般に、「3軸加速度センサ」と呼ばれるものは、通常、半導体プロセスの一環として製造され、極めて微細なサイズをもつ構成部品として提供されているものである(即ち、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical System)の一種である。)。そのため、この「3軸加速度センサ」は、極めて微細な加速度変化をも検知対象とするのが通常であるが、このような検知精度は、当該「3軸加速度センサ」を歩数計に適用することを考える場合、無益であるか、むしろ余計なコストの消費が要求されるという意味において有害ですらあり得る。というのも、人間の歩行動作を検知するためには、そのような微細な加速度変化までをも知る必要はなく、また、仮にそのような高精度の振動波形を受け入れたとしても、そこから“歩数”を検出するためには、別途特別な波形処理を行うことが不可欠となり得るからである。
また、「3軸加速度センサ」には、一般に、消費電力が大きく、高価であるという、その他の問題もある。
このようにして、巷間知られている「3軸加速度センサ」を、そのままのかたちで歩数計に適用することは一般に好ましい結果を生まないのである。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、前述した各種の課題(計測値の正確性の維持ないし向上、携帯容易性、姿勢自由性、構造簡易化、構成要素数低減化、装置サイズ大型化の回避、コスト低廉化、簡易な処理による歩数検出実現、等)の全部又は一部を解決可能な加速度センサ及び歩数計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加速度センサは、上述した課題を解決するため、加速度の変化を検知する加速度センサであって、プリント基板と、前記プリント基板と接続され、前記加速度センサ全体が受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部と、前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージと、を備える。
【0010】
本発明によれば、加速度センサ全体が変位を受けると、それに応じて力により可動部の位置が変じ、これにより、可動部及びプリント基板間の接続部における歪が歪ゲージによって検出され、その結果、加速度の変化が検出されることになる。なお、ここで「歪ゲージ」とは、後述する半導体歪ゲージのほか、一般に、その内部応力の変化に応じて電気抵抗の変化が生じる様々な物質、等を含む。
このような本発明においては特に、当該加速度センサが、その構成要素たるプリント基板と、いわば一体的な関係をもって構成されていることに特徴がある。これによると、例えば前記の歪ゲージから出力される信号を伝達するための配線は、従来よく知られているプリント基板上の配線形成技術をそのまま利用することで作られ得ることになる。あるいはまた、当該加速度センサに付随し得る各種の回路素子等についてもまた、従来よく知られているプリント基板上の回路素子形成技術をそのまま利用することができる。この場合、本発明に係る加速度センサを製造する場面において、前記MEMSで予定されているような半導体プロセスのような、精妙、複雑、高度な製造工程が殊更要求されているわけではなく、むしろそのような工程を意識的に回避することも可能である。
したがって、本発明によれば、極めて低廉なコストで加速度センサが提供され得ることになるのである。
【0011】
また、本発明に係る加速度センサは、必要以上の高精度でもって加速度変化を検出するということはない。なぜなら、この加速度センサは、プリント基板と一体的に構成されることが前提とされているのであり、また、その構成要素たる「可動部」は、当該「加速度センサ全体が受ける変位に応じて発生する力」に呼応して変位することで、該可動部及びプリント基板間の接続部を歪ませ得る、形状、大きさ、質量等を備えることが前提されているからである。
このようなことから、本発明に係る加速度センサは、基本的には、前述した「3軸加速度センサ」のような過敏な反応を行うことがなく、またしたがって、事後的に特別な信号波形処理等が実行されることも特に要求しない。
つまり、本発明によれば、歪ゲージから得られた生データに対して比較的簡単な事後処理を行うだけでも、分析上必要な、あるいは有意義なデータの抽出が可能なのである。このことも、コスト低廉化を促進する。
【0012】
この発明の加速度センサでは、前記プリント基板は、その平面内に開口部を有し、前記可動部は、前記開口部内に収まるように配置され、前記接続部は、前記可動部及び前記開口部の縁間を繋ぐビームを含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、可動部が、開口部の中に浮いているかのような状態が作り出されることになるから、加速度検出機能がよりよく発揮される。また、本態様では、前記歪ゲージが、比較的歪みの生じ易いビーム上に備えられ得る。このことも、加速度検出機能のよりよい発揮に貢献する。
【0013】
また、本発明の加速度センサでは、前記可動部及び前記接続部は、前記プリント基板と一体として形成されている、ように構成してもよい。
このような構成によれば、前述した「一体的な関係」がより進められた形になる。つまり、本発明一般においては、プリント基板は、加速度センサの一部を構成する要素なのではあるが、本態様においてはもはや、プリント基板たる加速度センサ、あるいは加速度センサたるプリント基板、とも言い得るような、緊密な一体性が現出されることになる。
これによると、前述した本発明に係る効果が、更に実効的に奏されることになる。
なお、「一体として形成されている」の好適な具体例については、後の実施形態において、図4、あるいは図5(更には図11や図12)等が参照されながら、詳細に説明される。
【0014】
あるいは、本発明の加速度センサでは、前記可動部は、錘を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、錘の質量等を適当に調整すれば、可動部の応答特性を、過敏でもなく、といって緩慢でもないものにすることが可能となる。したがって、本態様によれば、加速度検出機能がよりよく発揮される。
【0015】
この態様では、前記錘は、前記歪ゲージに電圧を供給するための電池を含む、ように構成してもよい。
このような構成によれば、歪ゲージがセンサとして機能するために必要不可欠的要素たる電池が、前記の錘の機能を兼ねることになる。換言すると、本構成では、錘は錘として、電池は電池として、別々に準備する必要がないのである。
したがって、本構成によれば、構成部品点数が減少するとともに、構造が極めて合理的・効率的になり、しかも2つの機能を1つの部品が兼ねるのであるから、その設置スペースの狭小化、即ち装置サイズの小型化もまた達成されることになる。また、このことは、殆ど必然的に、コストの低廉化をももたらし得る。
【0016】
あるいは、前述の「錘」を備える態様では、その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、ように構成してもよい。
この態様では、可動部の表面に平行な方向に沿った変位をも実効的に検出することが可能となる。つまり、前記隙間が存在すれば、前記方向に沿った力が錘にかかる場合、当該錘は、いわば斜めに傾ぐようにして比較的大きく変位し得ることになるので、当該方向に沿った加速度変化をも実効的に検出することが可能となるのである。
このようにして、本態様によれば、前述にも増して加速度検出機能がよりよく発揮される。
より具体的には、本態様によれば、前述の可動部の表面に平行な方向について2成分、及び、前記可動部の表面に垂直な方向に沿った変位に係る1成分を含む、3軸についての加速度変化を極めて実効的に検出することが可能になる。このことは、当該加速度センサが組み込まれる歩数計その他の各種の装置の姿勢がどのような状態に置かれたとしても、当該装置が経験する加速度変化を適切に検出する可能性をきわめて高める。
なお、前述した、錘が電池を含む態様に対して、本態様に係る「錘保持軸」を適用する場合には、例えば、前記錘は前記電池に加えて当該電池を保持する電池ホルダを更に含み、前記錘保持軸の一端は当該電池ホルダに接続される、ように構成すると好適である。これによれば、電池ホルダの質量も“錘”として利用することができるし、また、電池の交換が容易になる、という利点が得られる。
【0017】
あるいは、本発明の加速度センサでは、前記歪ゲージは、半導体歪ゲージを含む、ように構成してもよい。
この態様では、比較的高出力特性をもつ半導体歪ゲージが利用されるので、前述にも増して加速度検出機能がよりよく発揮される。
【0018】
この態様では、前記半導体歪ゲージは、前記接続部に接着剤でもって接着されている、ように構成してもよい。
このような構成によれば、加速度センサの製造が極めて容易になされ得る。なお、半導体歪ゲージは、前述したMEMSの一部として利用されることが通常であることを考えると、本構成における「接着剤」を用いた接着という利用態様は極めて特徴的ということができる。
【0019】
一方、本発明に係る歩数計は、上述した課題を解決するため、歩数を計測する歩数計であって、第1にプリント基板、第2に、前記プリント基板と接続され、前記歩数計全体が歩行動作に起因して受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部、及び、第3に、前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージ、という3つの要素を少なくとも含む加速度センサと、前記加速度センサからの出力信号に応じて歩数をカウントする歩数計測手段と、前記歩数計測手段による計測結果を表示する表示手段と、を備える。
【0020】
本発明によれば、先に述べた「加速度センサ」と実質的に同一の加速度センサを備えているので、当該「加速度センサ」によって奏された効果を殆どそのまま享受することが可能である。
特に、本発明が「歩数計」に係ることに鑑みると、「加速度センサ」が必要以上の高精度でもって加速度変化を検出しないという前述した事情は、極めて有利に作用する。なぜなら、そのような加速度センサは、歩行動作という比較的大きな振動を検出するための「歩数計」に適用されて好適であるし、特別な信号波形処理等を実行する必要がないという点は、「歩数計」の製造コストないしは提供コストの低廉化を推進する上で極めて有力な要素たりうるからである。
また、加速度センサがプリント基板と一体的に構成されるという事情は、本発明に係る「歩数計」における、携帯容易性、構造簡易化、構成要素数低減化、装置サイズの小型化、コスト低廉化、といった様々な効果を引き出す基礎となる。
【0021】
この本発明の歩数計では、前記歩数計測手段及び前記表示手段の少なくとも一方は、前記プリント基板上に搭載されている、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した本発明に係る構造簡易化、構成要素数低減化、等々の効果が、より実効的に奏される。なぜなら、この態様では、加速度センサを構成するプリント基板上に、必要な信号処理等を行うための回路素子等を含み得る歩数計測手段や、ユーザインターフェイスたる表示手段が備えられることで、当該歩数計の構造が極めて合理的・効率的になるからである。
本態様は、加速度センサがプリント基板を含んでいることの意義が、極めて明瞭に把握される態様の1つである。
【0022】
また、本発明の歩数計では、前記可動部は、錘を含み、前記錘は、当該歩数計の電力源として機能する電池を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、先に述べた、加速度センサを構成する錘が電池を含む態様と実質的に同一の効果が享受される。
加えて、本発明における「電池」は、単に歪ゲージに電圧を供給するという役割を担うにとどまらず、「当該歩数計の電力源として機能する」、即ち例えば、前記歩数計測手段に対する電力供給源としても機能するのである。このようなことは、前記同一の効果を更に実効的なものとする。なぜなら、例えば加速度センサ用の錘兼電池が備えられはするが、それとは別に歩数計全体の電力をまかなう電池を別途設けるという態様もあり得るところ、本態様では、1個の電池がいわば多重の機能を担うことになるからである(当該電池は、加速度センサ用の錘、歪ゲージの電圧供給源、及び装置全体の電力供給源という、いわば多重の機能を担っているということができる。)。
【0023】
この態様では、その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、ように構成してもよい。
これによれば、先に述べた、加速度センサを構成する錘と可動部との間に隙間が形成される態様と実質的に同一の効果が享受される。
特に、その効果であった、3軸についての加速度変化を極めて実効的に検出することが可能となるという事情は、本態様に係る「歩数計」において極めて有利に作用する。具体的には、このことは、当該歩数計の携帯容易性、あるいは姿勢自由性、等を非常に高める意義を持つ。
【0024】
なお、本発明に係る「歩数計」に関して、上述では、(1)プリント基板上に歩数計測手段等が搭載されること、(2)可動部が錘を含み且つこの錘が電池を含むこと、(3)錘保持軸が備えられること、の3つの変形態様についてのみ記載し、上述した本発明に係る「加速度センサ」の変形態様として記載した、(i)開口部及びビームを備える態様、(ii)可動部等がプリント基板と一体として形成される態様、(iii)可動部が錘(電池を含まず)を含む態様、(iv)歪ゲージが半導体歪ゲージを含む態様、(v)半導体歪ゲージが接着剤でもって接着される態様、の5つについては記載していないが、本発明に係る「歩数計」が、これら(i)〜(v)の変形態様の適用を拒絶しているわけでは勿論ない。
前記の(1)〜(3)の変形態様が、あたかも、上述した本発明に係る「加速度センサ」の変形態様の中から抜書きされるかのように特記されているのは、「歩数計」としての効果に特筆すべきものがあるからである。本発明に係る歩数計を構成する「加速度センサ」に対して、前記(i)〜(v)の変形態様、更に言えば上述した「加速度センサ」に係るすべて変形態様(例えば、電池が「歩数計の電力減として機能」するのではなく、「歪ゲージに電圧を供給する」という要件を満たすだけである場合等)を適用することは当然可能なのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態において参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0026】
本実施形態に係る歩数計100は、図1に示すように、筐体100A、操作ボタン群101、表示部105、及び歩数カウント部10を備えている。
このうち操作ボタン群101は、電源ボタンや、メニューキー、アップキー及びダウンキー等を含む。歩数計100のユーザは、このような操作ボタン群101を用いて、当該歩数計100に対して様々な指令を発し得る。ここで指令とは、例えば電源の投入又は遮断、これまでカウントした歩数のリセット設定、身長・年齢・性別等の個人データの入力設定、等を含む。あるいは、歩数計100が適当な数種の動作モードを設定可能に構成されているのであれば、当該動作モードの設定、等々をも含む。
表示部105は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置であり、歩数計100によって測定された歩数データ、あるいは前記個人データ、前記動作モードの状態、等々を表示する。
【0027】
歩数カウント部10は、図1乃至図3に示すように、筐体100Aの内部に収納されている。この歩数カウント部10は、適当な箇所(図1でいえば、当該歩数カウント部10の四隅)において、適当な固持手段により、筐体100Aの内部に固着されている。ここで固持手段とは、簡単には接着剤等でよいし、あるいはこれに加えて又は代えて、図1乃至図3に示すように係合部10STを備えるのであってもよい。
このような歩数カウント部10は加速度センサ1を備えており、これにより当該歩数計100のユーザの歩数をカウントすることが可能である。この歩数カウント部10の詳細については、後に改めて説明する。
【0028】
筐体100Aは、当該歩数計100の外形を形作る。本実施形態において、この筐体1は、図1に示すように、比較的厚さの小さい略直方体形状をもつ。当該歩数計100の全体的な大きさは、持ち運びの便等を考慮して、概ね腕時計サイズから掌サイズ程度であることが好ましい。
この筐体100Aの内部は空洞となっており、この内部には、前述の歩数カウント部10の他、必要な内部要素が備えられている。この内部要素としては、具体的には例えば、前記操作ボタン群101からの電気信号を歩数カウント部10へ供給するためのリード線等々が含まれる。
【0029】
また、この筐体100Aの外表面には、前述の操作ボタン群101及び表示部105が、所定の位置に配置されているほか、特に図2に示すように、電池交換用の開口部100M及び蓋100Lが備えられている。開口部100Mは、同図に示すように、概ね四辺形状をもち筐体100Aの裏面側(即ち、表示部105が備えられていない側)の所定箇所に形成されている。蓋100Lは、この開口部100Mの形状及び大きさに対応する大きさ及び形状をもち、同図に示すように当該開口部100Mに着脱可能である。これら開口部100M及び蓋100Lにより、ユーザは、電池20を交換することができる。なお、この電池20は、本実施形態において極めて重要な役割を担っているが、この点については後に説明する。
なお、筐体100Aの外表面には、ユーザのベルト等に懸架可能なクリップ等が適宜設けられうる。
【0030】
次に、歩数カウント部10の詳細について説明する。
歩数カウント部10は、図4に示すように、プリント基板PSを備えるとともに、このプリント基板PS上に、既述した表示部105のほか、加速度センサ1、制御部31、増幅部32、抵抗素子33、及び容量素子34を備えている。このうち制御部31、増幅部32、抵抗素子33、及び容量素子34の詳細については、後に図7を参照して説明する。
【0031】
プリント基板PSは、その表面に各種の回路素子を備え得る板状又はフィルム状の部品である。プリント基板PSは、典型的には、基材と、この基材に含浸される絶縁性樹脂とを含む。本実施形態に係るプリント基板PSとしては、前記基材として比較的柔軟性の大きい材料(例えば、フィルム状のポリイミド、ポリエステル等)を含むフレキシブル基板が好適に利用可能である。これによれば、後の説明からも明らかなように、加速度センサ1の感度を一定程度以上、好適に維持することが可能である(ただし、一定の剛性は必要である。)。
【0032】
ただし、本発明にいう「プリント基板」としては、前述したフレキシブル基板(基材が前述のように比較的大きい柔軟性をもつことから、曲げ、捻り、撓み等の変形に追随可能なプリント基板)の他、基本的に、現時点及び将来において利用可能な、あらゆるプリント基板を利用可能である。
具体的には例えば、前記基材として比較的柔軟性の小さい材料を含むリジッド基板を使用することも、あるいは、リジッド基板及びフレキシブル基板が混在する基板を使用することも可能である。また、前記絶縁性樹脂も基本的に自由に選択可能であり、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、テフロン(商標登録)、等々が利用可能である。更に具体的には、本発明にいう「プリント基板」には、紙フェノール樹脂、紙エポキシ樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン基板、アルミナ基板、コンポジット基板、等々が該当し得る。
【0033】
加速度センサ1は、図4、あるいは図5に示すように、ビーム11a,11b,11c、半導体歪ゲージ12a,12b,12c、及び円盤部13、並びに電池保持手段から構成される。なお、このうちの円盤部13は、本発明にいう「可動部」概念への該当性を有する。
【0034】
円盤部13は、前記のプリント基板PSの一部に形成された円形状の開口部14の中心に位置づけられる。また、ビーム11a,11b,11cは、そのそれぞれが略長方形状をもち、このような円盤部13の周囲から放射状に延びる。そして、これらビーム11a,11b,11cの一端は、前記開口部14の縁と接合されている。これにより、ビーム11a,11b,11cは、開口部14の縁と円盤部13との間に架けられた梁に見立てられうる。なお、これらビーム11a,11b,11cは、図4、あるいは図5に示すように、円盤部13の外周に沿って、120度の間隔をあけて並ぶ(即ち、これらビーム11a,11b,11cは等間隔に並ぶ。)。
このような円盤部13及びビーム11a,11b,11cは、基本的に、プリント基板PSと全く同じ材料で作られて好適である。なお、この点に関しては、後に述べる製造方法の説明に関連して改めて触れる。
【0035】
一方、半導体歪ゲージ12a,12b,12cの各々は、前述のビーム11a,11b,11cのそれぞれの上に配置されている。本実施形態において、これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、ビーム11a,11b,11cの外形形状(即ち、前述のように長方形状)に即した形状をもつ。本実施形態においては、たまたま、当該即した形状とは、いわば針状と呼び得る形状(以下、単に「針形状」という。)である。当該針形状の一端は、図5に示すように、プリント基板PS上に形成された配線18a,18b,18c(それぞれ、半導体歪ゲージ12a,12b,12cに対応する。)に接続されている。これら配線18a,18b,18cは、後に参照する図7からもわかるように、増幅部32に接続される。他方、当該梁形状の他端は、接地線18dに接続されている。この接地線18dは、後述する保持軸20HA及びナット20HNに接続されてグランド電位を維持する。
このような半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、例えば所定の絶縁層と半導体層との積層構造をもつ。これら各層は、例えばシリコン基板上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法等による成膜処理を実行することによって製造され得る。本実施形態に係る半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、その成膜後のシリコン基板に研磨、切断、エッチング等々の加工を施すことによって、前記針形状等の所定の形状を形作ることにより得られる。
また、本実施形態において、このような半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、基本的に、ビーム11a,11b,11cの上に接着剤でもって接着されている。このように、極めて簡易な手段によって、半導体歪ゲージ12a,12b,12cが加速度センサ1の構成要素の一部となることは、本実施形態における特徴の一つである。
このような半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、その内部に応力変化が生じると、その抵抗値を変化させる性質をもつ。
なお、上では「接着剤」に言及したが、本発明に関して言えば、半導体歪ゲージ12a,12b,12cが、ビーム11a,11b,11cの歪に応じて変形可能なように装着されるのであれば、必ずしも「接着剤」を利用する必要はない。本発明において、その他の接着手法を当然利用可能である。
【0036】
電池保持手段は、図6に比較的よく示されているように、電池ホルダ20H、及びこの電池ホルダ20Hを円盤部13に締結するためのナット20HNからなる。
電池ホルダ20Hは、平面視して略円形状であって、その周囲に一定の高さをもつ縁部を備える受け皿部をもつ。受け皿部は、図6等に示すように、ボタン型の電池20を保持可能である。ちなみに、この電池20は、本実施形態に係る歩数計100の動作のために必要となる電力の供給源である。また、前記の電池ホルダ20Hは、図6等に示すように、前記受け皿部の中心に接合される保持軸20HAをもつ。この保持軸20HAは、前述した円盤部13の中心に開けられた穴130(図4参照)を貫通する。なお、この保持軸20HAによって、円盤部13の表面と電池ホルダ20Hの底面との間には、隙間が形成される。
ナット20HNは、当該穴を貫通した保持軸20HAの先端部に締結される。保持軸20HAの当該先端部には、当該ナット20HNを螺着可能なように、ねじが切られている(不図示)。
【0037】
このような構成となる電池保持手段は、そこに備えられた電池20とともに、歩数計100の変位に応じて変化する加速度を読み取るための錘としての役割を担う。つまり、かかる電池保持手段は、単に歩数計100の電力源たる電池20を保持するという役割を担うだけでなく、加速度センサ1の加速度検知機能に係る本質的役割をも担うのである。この点については、後に述べる作用効果の説明の際、より明瞭に把握される。
【0038】
以上述べた構造から明らかなように、本実施形態に係る加速度センサ1は、いわば前述のプリント基板PSと一体的なものとして備えられている(このような本実施形態の構成は、本発明にいう「可動部及び…接続部は、…プリント基板と一体として形成されている」の好適な一例を提供するものである。)。
【0039】
これに関連して、このような加速度センサ1は、様々な方法で製造され得る。
例えば、第1に、プリント基板PSの一部に円形状の開口部14を形成した後、第2に、当該プリント基板PSと同じ材料で別途作られた円盤部13及び(半導体歪ゲージ12a,12b,12cを接着済みの)ビーム11a,11b,11cの一体物を、当該開口部14内に収めるように、かつ、ビーム11a,11b,11cの一端が当該開口部14の縁に当接可能なように配置し、第3に、当該ビーム11a,11b,11cの一端と当該縁とを接着する、(前述の第2において、ビーム11a,11b,11cが半導体歪ゲージ12a,12b,12cを接着済みでなければ、第4に、当該半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれをビーム11a,11b,11cに接着する)、等という方法で製造することが可能である。
【0040】
あるいは、より好適には例えば、プリント基板PSの平面内に、最終的に、図4あるいは図5に示すような、円盤部13及びビーム11a,11b,11cの輪郭形状が残存するように、当該プリント基板PSの一部につき3つの略扇形形状の開口部(図5参照)を形成する、(半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、当該開口部形成後に接着されてもよく、あるいは、当該開口部形成前、最終的にビーム11a,11b,11cとなるべき場所に予め接着されてもよい)、等という方法が採用されてもよい。
かかる製造方法によれば、先に述べた方法と比べても、極めて容易かつ確実に、加速度センサ1を製造することができる。また、この場合においては、円盤部13及びビーム11a,11b,11cとプリント基板PSとが同一材料から作られているということは、いわば当然の事態となる。加速度センサ1がこのような製造方法をもって作られるとき、当該加速度センサ1とプリント基板PSとが「一体」であるということを満たす最良の形態例の1つが提供される。
【0041】
次に、本実施形態に係る歩数計100の回路構成について説明する。
歩数計100は、図7に示すように、既に構造的説明においても登場した、加速度センサ1、制御部31、増幅部32、表示部105、及び電池20のほか、分圧抵抗Ra,Rb,Rc等を備えている。
【0042】
このうち加速度センサ1を構成する前記半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、図7において、抵抗要素として示されている。これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、それぞれ、分圧抵抗Ra,Rb,Rcと直列に接続されている。また、分圧抵抗Ra,Rb,Rcは、電池20との関係においてそれぞれ並列に接続されている。
これにより、例えば添え字aに着目してみれば、電池20によって惹起された起電電圧は、抵抗Ra及び半導体歪ゲージ12aによって分圧される。この分圧された電圧は、図7に示すように、すぐ後に述べる増幅回路32aを構成するオペアンプOAaの非反転入力端子に供給される。ここで重要なのは、半導体歪ゲージ12aの抵抗値が変化し得、よって前述の分圧された電圧の値が変化し得ることである。
なお、いま、たまたま符号aについて述べたが、同じことは符号b及びcについても全く同様にあてはまる。
【0043】
増幅部32は、図7に示すように、前述の半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれに対応する増幅回路32a,32b,32cを備えている。
このうち増幅回路32aは、オペアンプOAa、抵抗素子R1a及びR1b、及び容量素子Caから構成されている。抵抗素子R1aは、オペアンプOAaの出力端及び反転入力端子間に接続された負帰還抵抗である。抵抗素子R2aは、オペアンプOAaの反転入力端子に接続され、更にこの抵抗素子R2aと直列に容量素子Caが接続されている。容量素子Caの一方の電極は接地されている。一方、オペアンプOAaの非反転入力端子は、分圧抵抗Ra及び半導体歪ゲージ12a間から延びる配線に接続されており、前述のように、これらによって分圧された電圧の供給を受ける。
これにより、増幅回路32aは、その分圧された電圧の変動を増幅して出力する(増幅率は、概ね(R1a+R2a)/R2a)。この際、コンデンサCaで生じる電位差は、一種のバイアスとして機能し、具体的には、前記変動のうち比較的小さなものについて、これを無視する作用を発揮する。
以上の説明は、増幅回路32b及び32cについても全く同様にあてはまる。
【0044】
制御部31は、前述の増幅部32からの出力信号を受けるとともに、その出力信号に基づいて、“歩数”のカウント処理を行う。制御部31は、これを実現するため、当該出力信号をデジタル信号に変換するADコンバータ、あるいはCPU(Central Process Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、等その他必要な要素を備える(いずれも不図示)。
また、この制御部31は、前述した操作ボタン群101からの出力信号Sを受けるとともに、それに関する処理もまた実行する。その他、本実施形態に係る制御部31は、歩数計100全体を調和的に動作させるため、当該歩数計100に係る全般的な制御を行う。
なお、表示部105は、図7に示すように、この制御部31のコントロールの下に置かれる。表示部105は、当該制御部31自身がカウントした“歩数”の出力を受けて、それをユーザが読み取り可能な数字として表示する(図1、あるいは図4参照)。
【0045】
なお、前述した、分圧抵抗Ra,Rb,Rc、増幅回路32中の各種の抵抗素子(R1a,R2a,R1b,R2b,R1c,R2c)、図4に示した抵抗素子33に該当し得、また、増幅回路32中の容量素子Ca,Cb,Ccは、図4に示した容量素子34に該当し得る。ただし、抵抗素子33及び容量素子34は、それぞれ、いま述べた以外に必要なものとして備えられる抵抗及びコンデンサであってもよい。
【0046】
以下では、以上のような構成を備える歩数計100の作用効果について、既に参照した図1乃至図7に加えて、図8乃至図10をも参照しながら説明する。
まず、歩数計100は、ユーザによって携帯される。この場合、ユーザは、当該歩数計100を基本的に身体のどこに位置付けてもよい。その姿勢も自由である。本実施形態に係る歩数計100は、前述のように、好適には掌サイズ程度であるので、実際、これを握持することも可能であるし、胸ポケットに収納したり、あるいは(クリップ等を備えれば)ベルトにひっかけることも可能であって、しかも邪魔になることがない。
【0047】
このような状態でユーザが歩行を開始すると、歩数計100は、この歩行動作に応じた振動(加速度の変化)を受ける。この場合、当該ユーザの歩き方の如何、あるいは歩数計100の身体上の位置付けの相違、等々の種々の要因により、歩数計100は様々な振動を経験し得るが、本実施形態では、どのような振動であっても、その中から適切に“歩数”を検出していく。
【0048】
まず、前述の要因によって、歩数計100は、図8に示すように振動し得る。図8では、図1に示す歩数計100の正面に対して垂直な変位が、当該歩数計100に加えられる場合、加速度センサ1がどのように反応するかが示されている。
【0049】
図8において、歩数計100が図中Δd1を付した矢印のような変位を受けると、加速度センサ1を構成する円盤部13は、図中下に沈み込まされるかのような力F1を受ける。この場合、円盤部13だけが図示するような変動を行うのには、以下の理由がある。
(1) 第1に、歩数カウント部10の全体は、図1乃至図3に示した係合部10STによって筐体100Aの内部に固着されているので、プリント基板PSにビーム11a,11b,11cを介して接続されているだけの円盤部13が、前記の力F1を、いわば一身に受けるようなかたちになるからである。
(2) 第2に、いま述べた(1)の事情があるのに加えて、円盤部13は、前述のように電池ホルダ20H及び電池20を保持し、かつ、それらの重量を担っていることにより、前記の変位Δd1の影響、即ちこれら電池ホルダ20H及び電池20に働く慣性の影響を直接的に受けることになるからである。つまり、これら電池ホルダ20H及び電池20は、変位Δd1に抗して元の位置に留まろうとするが、円盤部13は、その影響を受けるのである。
【0050】
いずれにせよ、このような円盤部13の変動によって、当該円盤部13に繋がるビーム11a,11b,11cは図8に示すように変形し、これによって当該ビーム11a,11b,11c上に接着されている半導体歪ゲージ12a、12b、12cの内部には応力変化が生じる(図中符号12b及び12c付近の矢印参照。なお、この矢印は、当該応力変化を視覚的に表現する目的をもつだけで、厳密な意味における応力の方向やその変化の様子等を表現しているわけではない。ただし、1組の矢印が相互に反対方向に向いている場合、当該の半導体歪ゲージは引張応力を主に受け、対向している場合(すぐ後に参照する図9の符号12c付近の矢印参照)、圧縮応力を主に受けている、ということはできる。)。
このような結果、これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cの抵抗値は変化する。
ちなみに、図8の場合、図から明らかなように、これら半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれが経験する応力変化は、それらに関してほぼ共通であり、したがって、これらの抵抗値の変化もほぼ同じになる可能性がある。
【0051】
あるいは、前述した種々の要因によって、歩数計100は、図9に示すようにも振動し得る。図9では、図1に示す歩数計100の正面と平行な変位が当該歩数計100に加えられる場合、加速度センサ1がどのように反応するかが示されている。
【0052】
図9において、歩数計100が図中Δd2を付した矢印のような変位を受けると、加速度センサ1を構成する円盤部13は、図中右側に傾けられるかのような力F2を受ける。この場合においても、円盤部13だけが図示するような変動を行うのは、上述した(1)及び(2)の理由があるからである(つまり、これらの理由(1)及び(2)は、図9の場合においても、あてはまる。)。
【0053】
ただ、図9に示すような変動が可能となっているのは、保持軸20HAの存在が大きく貢献している。すなわち、保持軸20HAは、一定の高さをもつことにより、円盤部13の表面と電池ホルダ20Hとの底面との間に当該高さに対応する大きさの隙間を形成することに寄与する。これにより、いわば電池ホルダ20Hはいわば宙に浮くかの如き状態に置かれることになるが、かかる状態が、水平方向の変位Δd2に対しても、円盤部13、ないしはビーム11a,11b,11cが好適に反応し得る要因となっているのである。
また、図9の場合においては、ビーム11a,11b,11cそれぞれが経験する変形、即ち半導体歪ゲージ12a,12b,12cそれぞれが経験する応力変化は、図8の場合のように、対称的ではない。すなわち、図9からも明らかなように、変位Δd2に対しては、主に、ビーム11b及び11cが比較的大きな変形を受けることになるのに対して、図9では陰となっているビーム11aは、然程大きな変形を受けることはない。当該ビーム11aが変形するとしても、その変形は、当該ビーム11aの軸を中心として回転するような(あるいは、捩れるような)ものに過ぎないからである(図9と図5とを対比参照すれば、かかる事情は読み取れる。)。
【0054】
いずれにせよ、このようなことにより、図9によっても、半導体歪ゲージ12a,12b,12cの抵抗値は変化することになる。そして、図9では、図8に比べて、半導体歪ゲージ12b及び12cの抵抗値の変化の方が、半導体歪ゲージ12aのそれよりも、大きくなる可能性がある。
【0055】
なお、図8及び図9に示した力F1及びF2の根源は、本実施形態においては、重力にあるに他ならない。
【0056】
以上、図8及び図9に示したような動作によって生じた半導体歪ゲージ12a,12b,12cの抵抗値の変化は、図7を参照して説明したように、増幅回路32a,32b,32cそれぞれを構成するオペアンプOAa,OAb,OAcの非反転入力端子に供給される電圧の変動をもたらす。
増幅回路32a,32b,32cは、その電圧の変動に応じた増幅を実行し、その出力信号を制御部31に出力する。このような増幅された出力信号は、制御部31において、例えば図10に示すような波形例として観測され得ることになる。
【0057】
制御部31は、このような波形例に基づいて、例えば次のような処理に基づき“歩数”を検出する。
すなわち、制御部31は、第1に、時々刻々変化する3つの入力信号を、一定時間(図10では、0.5s)ごとにサンプリングする、第2に、これらのサンプリング値を比較して、そのうち最大のものを確定する、第3に、この最大値が所定の閾値を超えているかどうかを判断し、超えていれば“歩数”としてカウントし、超えていなければカウントしない、というようである。
【0058】
このような処理に従うと、図10の例では次のようになる。
すなわち、図10では、半導体歪ゲージ12a及び12bの抵抗値が比較的活発に変動し、半導体歪ゲージ12cのそれはそうでもない。このような状況下、まず、第1回目のサンプリングが実施されると、その最大値は、半導体歪ゲージ12aに基づく信号であることがわかる。そして、当該最大値は、図10に示す閾値Vthを超えているので、制御部31は、これを歩数“1”としてカウントする。同じ状況は、第2回目のサンプリングにおいてもあてはまることが明白であるので、制御部31は、歩数“2”をカウントする。
続いて、第3回目のサンプリングが実施されると、その最大値は、半導体歪ゲージ12aではなく、半導体歪ゲージ12bに基づく信号であることがわかる。そして、当該最大値は、図10に示す閾値Vthを超えているので、制御部31は、これを歩数“3”としてカウントする。同じ状況は、第4回目のサンプリングにおいて繰り返されるので、制御部31は、歩数“4”をカウントする。
ちなみに、最大値が観測される信号が、上述のように半導体歪ゲージ12aに基づくものから、半導体歪ゲージ12bに基づくものへと変化する理由は、例えば、ユーザの身体上における歩数計100の姿勢が変じた、等といったことが考えられる(そのような姿勢の変更によって、例えば、主変位方向が図8のようなもの(Δd1の方向)から図9のようなもの(Δd2の方向)へと変化する、等といったことは生じ得ることである。)。どのような理由にせよ、本実施形態に係る歩数計100は、そのような場合であっても、適切に歩数をカウントしていくのである。
【0059】
このような場合において、本実施形態において特筆されるべきは、上述のような比較的簡易な処理が実行されるだけで、歩数がきちんとカウントされていくことである。これが可能となっていることの背景には、次のような事情がある。
すなわち、本実施形態では、前述のように、比較的大重量の電池ホルダ20H及び電池20が加速度検知用の錘として機能するため、あまりに微細な振動までをも検出してしまうようなことがない。つまり、観測される波形例は比較的単純なものとなり、例えば波形整形処理とか特定波形抽出処理等といった特別複雑な処理を実施する必要がないのである。
なお、このような観測され得る波形の単純化という点に関しては、前述し、及び、図7に示した、容量素子Ca,Cb,Ccも一定の役割を担っている。
また、上記の例では、サンプリング間隔が“0.5s”と定められている。これは人間の歩行動作における、ある1歩から次の1歩までの標準的な時間を勘案してのことであるが、これによっても、上述した、あまりに微細な振動までをも検出してしまうようなことがない、という利点が享受される。例えば、サンプリング間隔をより短く設定してしまえば、歩行動作以外の振動を検出してしまう可能性が高くなるが、本実施形態では、そのような懸念がないのである。
【0060】
以下述べたように、本実施形態に係る歩数計100によれば、様々な効果が奏されるが、それらをまとめると、概ね次のようになる。
(1) 本実施形態に係る歩数計100は、ユーザがどのような姿勢でこれを携帯しても、あるいは更に、携帯中に当初の位置から次第にずれていくなどといったことが生じたとしても、歩数が的確に検出されていく。このようなことが可能であるのは、加速度センサ1の構成、特に円盤部13、ビーム11a,11b,11c、及び錘としての電池ホルダ20H及び電池20の配置態様が、図4、図5、あるいは図6に示すように極めて好適に設定されているからである。特に、3本のビーム11a,11b,11cが、円盤部13の外周に沿って等間隔に並べられているという態様は、最も好適な態様の1つを提供しているということができる(図8及び図9参照)。
なお、このことを逆に捉えれば、本実施形態に係る歩数計100は、ユーザに対し、携帯時にとられるべき姿勢なるものを特に要求することがないということである。このようにして、当該歩数計100は、携帯容易性、姿勢自由性を保持し、ユーザに煩わしさを感じさせることがないのである。
【0061】
(2) 本実施形態に係る歩数計100は、極めて安価に提供され得る。これは、本実施形態に係る加速度センサ1が、その構成要素としてプリント基板PSを含んでいること、あるいは、加速度センサ1とプリント基板PSとが一体化されていることによる。また、かかる効果には、当該加速度センサ1の構成要素として、歩数計100を動作させるための殆ど必要不可欠的要素たる電池20が活用されていることも大きく貢献している。このようなことから、本実施形態に係る歩数計100は、その構造が簡易化され、あるいは構成要素数が低減化される結果、極めて安価に提供され得ることになるのである。また、同じ理由により、装置サイズの小型化もまた達成される。さらに、本実施形態では、図10を参照して説明したような、比較的簡易な歩数カウント処理が行われることも、コストの低減化に大きく資していることは言うまでもない。
【0062】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る歩数計は、上述した形態に限定されることはなく、以下に述べる各種の変形が可能である。
(1) 上記実施形態では、加速度センサ1が、円形状の円盤部13、その外周から120度間隔で突出するビーム11a,11b,11c等を備える形態について説明しているが、本発明は、そのような形態に限定されるわけではない。
【0063】
例えば、加速度センサは図11に示すようにも構成され得る。
この図11において、加速度センサ1’は、電池ホルダ20Hを保持するための部位として、平面視して四辺形状の保持部131を備える。また、ビーム111a,111b,111c,111dは、その保持部131の四隅角部から突出するように延びている。これらのビーム111a,111b,111c,111dは、開口部141の縁と保持部131との間に架けられた梁に見立てうる。そして、これらビーム111a,111b,111c,111dの上には、半導体歪ゲージ121a,121b,121c,121dが接着されている。
【0064】
あるいは、加速度センサは図12に示すようにも構成され得る。
この図12において、加速度センサ1”は、電池ホルダ20Hを保持するための部位として、平面視して円形状の円盤部PSF(図中ハッチング部分)を備えている。この意味では上記実施形態と変わりはないといえるが、この円盤部PSFは、プリント基板PSRとの間で隙間なく接続されている点が、上記実施形態と大きく異なっている。つまり、この場合において、「ビーム」は存在しないのである。また、この加速度センサ1”を構成する円盤部PSF及びプリント基板PSRは、前者がフレキシブル基板、後者がリジッド基板であることも、上記実施形態とは大きく異なる。この場合、半導体歪ゲージ122a,122b,122c,122dは、これらプリント基板PSRと円盤部PSFとの境界を跨ぐように接着されている。
このような構成では、円盤部PSFは、いわばダイアフラム(diaphragm;隔壁)のように動作し得る。そして、半導体歪ゲージ122a,122b,122c,122dは、このような円盤部PSFと、それに比べれば極めて剛性の大きいリジッド基板たるプリント基板PSRとの間の接続部における歪を検出するのである。
【0065】
これら図11及び図12に示すような形態であっても、上述した実施形態におけるのと本質的に相違のない作用効果が奏されることは明白である。
その他、これ以外にも様々な態様が考えられ得るが、それらを一々図示することは不可能である。いずれにせよ、そのような変形態様のすべてが、本発明の範囲内にある。
【0066】
(2) 上記実施形態では、加速度を検知するために、半導体歪ゲージを備える形態について説明しているが、場合によっては、「半導体」である必要は必ずしもない。もちろん、半導体歪ゲージのもつ高出力特性等を勘案すると、その利用が本発明の最適な実施形態の1つを提供することは間違いないが、本発明は、加速度センサが「プリント基板」と一体的な関係をもつことをも1つの特徴として主張するから、かかる要件が具備される限り、「歪ゲージ」に用いられる具体的材料が何であるかということには拘泥しないという側面をもつ。
【0067】
(3) 上記実施形態では、表示部105、制御部31、増幅部32、抵抗素子33及び容量素子34(以下、まとめて「表示部105等」ということがある。)が搭載されているプリント基板PSの面(以下、「搭載面」という。)と同一の面に、半導体歪ゲージ12a,12b,12cが接着されているが(図4、図8及び図9参照)、本発明は、かかる形態にも限定されない。
例えば、半導体歪ゲージ12a,12b,12cは、搭載面とは反対側のプリント基板PS面に接着されてもよい。あるいは、図4において、電池ホルダ20Hは同図中紙面向こう側に向かって立ち上がる(即ち、搭載面とは反対側の面から立ち上がる)ようになっているが、これとは反対に、同図中紙面こちら側に向かって立ち上がる(即ち、搭載面から立ち上がる)ようになっていてもよい。あるいは更に、場合によっては、前述の表示部105等について、そのうちの表示部105はプリント基板PSの一方の面に搭載され、制御部31は他方の面に搭載される、などという振り分けがなされてもよい。
このように、本発明は、プリント基板PS上における表示部105等、あるいは半導体歪ゲージ12a,12b,12c、電池ホルダ20H、等々の具体的な配置態様について基本的に限定を加えない。「プリント基板」が存在する限り、本発明にいう「歪ゲージ」、「錘」、「電池」、「歩数計測手段」、あるいは「表示手段」等は、当該「プリント基板」上に、基本的に、自由に配置され得るのである。
【0068】
(4) 上記実施形態では、制御部31に入力される信号波形を0.5sごとにサンプリングする態様について説明しているが(図10参照)、本発明は、かかる形態にも限定されない。ここで、“0.5s”という数字が選ばれているのは、既に述べたように、人間の歩行動作における、ある1歩から次の1歩までの標準的な時間を勘案してのことであるが、厳密に言えば、当該歩数計100のユーザは、子どもから成人、更には老齢者まで考えられ、また、身長差や股下の長さ等につき個人差があるのであるから、1歩1歩の時間間隔は異なってくるはずである。したがって、図10に示すサンプリング間隔は、そのような事情に対する配慮に基づいて定められてよい。あるいは、この際、図1に示した操作ボタン群101から入力され得る前記個人データに基づいて、自動的にサンプリング間隔が決定されるような手法が採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る歩数計の概観を示す正面図である。
【図2】図1の歩数計の概観を示す背面図である。
【図3】図1の歩数計の概観を示す側面図である。
【図4】図1の歩数計を構成する歩数カウント部の詳細を示す平面図である。
【図5】図4の歩数カウント部を構成する加速度センサの詳細を示す平面図である。
【図6】図5のXX矢視側面図である。
【図7】図4の歩数カウント部における歩数カウントを可能とする回路の図である。
【図8】加速度センサの動作状態例(その1)を示す説明図である。
【図9】加速度センサの動作状態例(その2)を示す説明図である。
【図10】図7あるいは図4の制御部で観測され得る信号波形例を示す説明図である。
【図11】加速度センサの変形例(その1)の詳細を示す平面図である。
【図12】加速度センサの変形例(その2)の詳細を示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
100……歩数計、100A……筐体、100M……開口部、100L……蓋、101……操作ボタン群、105……表示部、10……歩数カウント部、
1,1’,1”……加速度センサ、11a,11b,11c……ビーム、12a,12b,12c……半導体歪ゲージ、13……円盤部、14……(プリント基板PSの)開口部、18a,18b,18c……配線、20……電池、20H……電池ホルダ、20HA……保持軸、20HN……(電池ホルダ締結用の)ナット、
31……制御部、32(=32a,32b,32c)……増幅部、OAa,OAb,OAc……オペアンプ、33……抵抗素子、34……容量素子、PS……プリント基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度の変化を検知する加速度センサであって、
プリント基板と、
前記プリント基板と接続され、前記加速度センサ全体が受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部と、
前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージと、
を備えることを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
前記プリント基板は、その平面内に開口部を有し、
前記可動部は、前記開口部内に収まるように配置され、
前記接続部は、前記可動部及び前記開口部の縁間を繋ぐビームを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記可動部及び前記接続部は、前記プリント基板と一体として形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記可動部は、錘を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記錘は、前記歪ゲージに電圧を供給するための電池を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の加速度センサ。
【請求項6】
その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、
前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記歪ゲージは、半導体歪ゲージを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項8】
前記半導体歪ゲージは、前記接続部に接着剤でもって接着されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の加速度センサ。
【請求項9】
歩数を計測する歩数計であって、
第1にプリント基板、
第2に、前記プリント基板と接続され、前記歩数計全体が歩行動作に起因して受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部、及び、
第3に、前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージ、
という3つの要素を少なくとも含む加速度センサと、
前記加速度センサからの出力信号に応じて歩数をカウントする歩数計測手段と、
前記歩数計測手段による計測結果を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする歩数計。
【請求項10】
前記歩数計測手段及び前記表示手段の少なくとも一方は、前記プリント基板上に搭載されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の歩数計。
【請求項11】
前記可動部は、錘を含み、
前記錘は、当該歩数計の電力源として機能する電池を含む、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の歩数計。
【請求項12】
その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、
前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の歩数計。
【請求項1】
加速度の変化を検知する加速度センサであって、
プリント基板と、
前記プリント基板と接続され、前記加速度センサ全体が受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部と、
前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージと、
を備えることを特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
前記プリント基板は、その平面内に開口部を有し、
前記可動部は、前記開口部内に収まるように配置され、
前記接続部は、前記可動部及び前記開口部の縁間を繋ぐビームを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記可動部及び前記接続部は、前記プリント基板と一体として形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記可動部は、錘を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記錘は、前記歪ゲージに電圧を供給するための電池を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の加速度センサ。
【請求項6】
その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、
前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記歪ゲージは、半導体歪ゲージを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項8】
前記半導体歪ゲージは、前記接続部に接着剤でもって接着されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の加速度センサ。
【請求項9】
歩数を計測する歩数計であって、
第1にプリント基板、
第2に、前記プリント基板と接続され、前記歩数計全体が歩行動作に起因して受ける変位に応じて発生する力により、当該プリント基板に対する自身の位置を相対的に変じる可動部、及び、
第3に、前記変位により生じる、前記可動部及び前記プリント基板間の接続部における歪を検出する歪ゲージ、
という3つの要素を少なくとも含む加速度センサと、
前記加速度センサからの出力信号に応じて歩数をカウントする歩数計測手段と、
前記歩数計測手段による計測結果を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする歩数計。
【請求項10】
前記歩数計測手段及び前記表示手段の少なくとも一方は、前記プリント基板上に搭載されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の歩数計。
【請求項11】
前記可動部は、錘を含み、
前記錘は、当該歩数計の電力源として機能する電池を含む、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の歩数計。
【請求項12】
その一端が前記錘に接続され、かつ、その他端が前記可動部の表面に接続される錘保持軸を更に備え、
前記錘保持軸により、前記可動部の表面と当該表面に対向する前記錘の面との間には隙間が形成されている、
ことを特徴とする請求項11に記載の歩数計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−133653(P2009−133653A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308225(P2007−308225)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
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