説明

効率的なガリウム薄膜電気めっき方法及び化学

本発明は、均一で、欠陥がなく、滑らかなGa膜を、高いめっき効率及び繰り返し精度で析出させるための、ガリウム(Ga)電気めっき方法及び化学に関する。このような層は、薄膜太陽電池などの電子デバイスの作製に使用され得る。ある実施形態では、本発明は、Ga塩と、錯化剤と、溶媒とを含んだ、導体に適用するための溶液を提供し、サブミクロン厚を有したGa膜は、この溶液を導体に電着させることによって、作製される。この溶液は、Cu塩およびIn塩のうちの一方又は双方を更に含み得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、"Efficient Gallium Thin Film Electroplating Methods and Chemistries"と題され、2007年9月27日に出願された米国特許出願第11/535,927号の優先権を主張するものであり、これを参照によりここに組み込んでいる。
【0002】
発明の分野
本発明は、均一で、欠陥がなく、滑らかなGa膜を、高いめっき効率及び繰り返し精度で析出させるための、ガリウム(Ga)電気めっき方法及び化学に関する。このような層は、薄膜太陽電池などの電子デバイスの作製に使用され得る。
【0003】
背景
ガリウムは、半導体及び電子工学産業において使用される元素である。ガリウムは、一般には、アルミン酸ナトリウムを含有したバイヤー法液からの副生成物として回収される(例えば、米国特許第2,793,179号及び米国特許第2,582,377号を参照のこと)。電着は、塩基性又は酸性溶液から大量のGaを回収するための(例えば、米国特許第3,904,497号を参照のこと)又は大量のGaを精製するための一般的な方法であるが、薄膜が、制御された均一性、形態及び厚さで析出される、この材料に関する用途は多くなかった。それ故に、Ga薄膜を電子工学的用途のための基板上に析出させることに関しては、ほんの僅かな電気めっき浴の化学及びプロセスしか、開発も報告もされていなかった。例えば、S.Sundararajan及びT. Bhat (J. Less Common Metals, vol.11, p. 360, 1966年)によって、0乃至5にあるpH値を有したGa塩化物溶液が、Ga膜の電気めっきについて検討された。他の研究者は、水及び/又はグリセロールを含んだ高pH溶液からのGaの析出を検討した。Bockris及びEnyoは、例えば、Ga塩化物及びNaOHを含有したアルカリ性電解質を使用し(J. Electrochemical Society, vol. 109, p. 48, 1962年)、一方、P. Andreoliら(Journal of Electroanalytical Chemistry, vol. 385, page.265, 1995年)は、KOH及びGa塩化物を含んだ電解質を研究した。
【0004】
上述した従来技術の方法及びめっき浴は、伝えられるところによると、全て、Ga膜の析出を達成したとのことである。しかしながら、従来技術の電気化学的な析出プロセスに関連した幾つかの共通の問題が存在する。これらの問題としては、過剰な水素発生を原因とする低い陰極析出効率と、先の乏しい陰極効率を部分的に原因とするこのプロセスの乏しい繰り返し精度と、高い表面粗さ及び乏しい形態などの析出膜の乏しい品質とが挙げられる。これらの問題は、バルクなGa電気めっきにとっても、析出メカニズムなどの科学的なトピックを検討する目的で析出されるGa膜にとっても、重要ではないであろう。乏しい膜の形態も、不適切な厚さ制御も、例えば減摩コーティングとしての使用などのGa層の電機的に不活性な用途(electrically inactive application)にとっては、重要ではないであろう。しかしながら、Ga膜が太陽電池などの電子デバイスの能動部分を形成する役割を担う或る新たな電子工学的用途にとっては、Ga膜の性質が重要となる。
【0005】
酸性又は塩基性のpH値の下で効果を発揮する単純電解質を利用する従来技術のGa電気めっき技術は、乏しいめっき効率と粗い形態(典型的には、膜厚の約20%を超える表面粗さ)を有する膜とを結果としてもたらすことを含んだ様々な理由により、上述した電子工学的用途に適していない。ガリウムは、Gaめっき電位が高いので、陰極で過剰な水素を発生させずに析出させるのが難しい金属である。析出電流の一部は、基板又は陰極上にGa膜を形成するよりも、水素ガスを形成するのに使用されるので、陰極での水素発生は、析出効率を100%未満にする。また、小さな水素の泡が、析出した膜の表面上に取り付き、それらの下にある微小領域をマスクし、それによりこの微小な領域上への析出を妨げるせいで、水素の発生及び放出は、乏しい形態と、析出膜における微小な欠陥とをもたらす。これは、積層膜中に最適量未満のGaを有した微細領域をもたらす。水素発生現象自体が、電解液中の不純物、析出電流密度、基板表面の形態又は化学についての小さな変化、温度、物質移動などを含んだ多くの要因に強く依存するので、乏しいめっき効率は、本質的に、電着プロセスの繰り返し精度を低減させる。これら要因のうちの少なくとも1つが実施毎(from run to run)に変化し得るので、水素発生速度も変化して、析出効率を変化させ得る。
【0006】
低pHの水性電解質又は溶液からのGaの電着は、このような電解質における高濃度のH+種の存在に起因する低陰極効率に悩まされ得る。それ故に、水素ガスの発生は、より高いpHでは減少することが予想され得る。しかしながら、この溶液中のpHが増加すると、Gaは、酸化物及び水酸化物を形成し、これらは、文献において報告されているように沈殿し得る。極端にアルカリ性のpH値の場合にのみ、これら酸化物/水酸化物は、可溶性Ga種として溶解する。それ故に、高濃度のKOH及びNaOHを浴の配合に使用する従来技術において為されていたのと同じように、Ga塩を含有したpH>14の浴中でGaを電着させることが可能となる。しかしながら、高濃度のアルカリ種は、装置だけでなく陰極材料に対しても腐食の問題をもたらす。また、Gaが沈殿を開始するまでに、このような溶液中に酸性のGa塩(GaCl3、Ga(NO33など)の形態で溶解させられ得るGaの量には、限界がある。それ故に、このpHは、NaOH及びKOHなどのアルカリ種の更なる添加によって、再度調節される必要がある。上で指摘したように、高モル量の腐食剤を含んだ溶液は、扱いが難しく、更に、高い粘度を有している。高粘性は、陰極上で形成された水素の泡をより多くこの陰極に付着させ、攪拌又は他の物質移動手段によってそれらを取り除くのを困難にさせる。上で説明したように、陰極表面上のこのような気体の泡は、析出されるGa層の欠陥を増加させる。
【0007】
上述の議論からわかり得るように、薄膜太陽電池の加工などの電子工学的用途において使用され得る高品質の電着Ga層を提供できる、新たな電解めっき化学及び方法を開発する必要がある。
【0008】
発明の概要
本発明は、均一で、欠陥がなく、滑らかなGa膜を、高いめっき効率及び繰り返し精度で析出させるためのガリウム(Ga)電気めっきの方法及び化学に関する。このような層は、薄膜太陽電池などの電子デバイスの作製に使用され得る
或る実施形態において、本発明は、導体への適用のための溶液を提供する。この溶液は、Ga塩と、錯化剤と、溶媒とを含んでおり、この溶液は、電着により、サブミクロン厚のGa含有膜を前記導体上に提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態では、この溶液は、Cu塩及びIn塩の一方又は双方を更に含んでおり、この溶液のpHは、実質的に7以上である。
【0010】
本発明の他の実施形態では、サブミクロン厚を有したGa含有膜を導体表面上に得る方法が提供される。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、高い析出効率及び繰り返し精度で、Ga膜を導体表面上に電気めっきする方法を提供する。本発明で使用される2つの導体表面は、Cu及びIn表面である。効率的な方法でGaをCu及びIn表面上に電気めっきすることにより、本発明は、CIGS(S)タイプの太陽電池吸収体の加工に用いられ得る、Cu/In/Ga、Cu/Ga/In、In/Ga/Cu及び他の金属積層体を製造するのに使用され得る。
【0012】
これに関して、発明者を含んだ本発明の譲受人により、薄膜太陽電池技術に著しい進歩があった。銅−インジウム−セレニド−(硫化物)、即ちCIGS(S)と、IB IIIA VIA族の黄銅鉱半導体で用いられる同様の材料とが、薄膜多結晶太陽電池用途のための重要な化合物となって現れた。CIGS(S)薄膜を成長させるための近年開発された「二段階」加工方法では、例えば、制御された量のCu、In及びGaが、導電性接触層がコーティングされた基板などの基部(base)上に、例えばCu/In/Ga、Cu/Ga/In、In/Cu/Ga、Ga/In/Cu、Ga/Cu/In、Cu/Ga/Cu/In、Cu/In/Cu/Gaなどの積層体のCu、In及びInを含有した薄膜積層体の形態で電着される。次に、これらの積層体は、Se及び/又はSと反応して、CIGS(S)化合物の薄膜を接触層上に形成する。このような処理アプローチに関する詳細は、以下の特許出願から分かり得るものであり、各々は、参照によりここに明確に組み込まれている。
【0013】
“Precursor Copper Indium and Gallium for Selenide (Sulfide) Compound Formation”と題され、2006年1月6日に出願された米国仮出願第60/756,750号、
Method and Apparatus for Converting Precursor Layers Into Photovoltaic Absorbers”と題され、2006年3月14日に出願された米国仮出願第60/782,373号、
“Method and Apparatus for Converting Precursor Layers Into Photovoltaic Absorbers”と題され、2006年3月14日に出願された米国仮出願第60/782,373号、
“Technique for Doping Compound Layers Used In Solar Cell Fabrication”と題され、2006年7月26日に出願された米国仮出願第60/820,479号、
“Technique and Apparatus for Depositing Thin Layers of Semiconductors For Solar Cell Fabrication”と題され、2005年3月15日に出願された米国特許出願第11/081,308号、
“Technique and Apparatus For Depositing Layers of Semiconductors For Solar Cell and Module Fabrication”と題され、2005年11月2日に出願された米国特許出願第11/266,013号、及び
“Technique For Preparing Precursor Films and Compound Layers for Thin Film Solar Cell Fabrication and Apparatus Corresponding Theretoと題され、2006年8月4日に出願された米国特許出願第11/462,685号。
【0014】
当然のことながら、この加工技術では、Cu、In及びGa層などの析出層についての厚さの制御が極めて重要である。この積層体におけるGa層の厚さは、典型的にはサブミクロンであり、より典型的には50−200nmの範囲にある。CIGS(S)などの化合物半導体の光学的及び電気的特性は、材料の化学量論比又は組成に非常に敏感である。詳細には、これらの特性は、このフィルム全体のCu/(In+Ga)及びGa/(Ga+In)のモル比に強く依存する。そして、この化合物半導体層上に作製される太陽電池の効率は、この層の光学的及び電気的特性に依存する。それ故に、2段階加工と、Cu層、In層及びGa層のうちの少なくとも1種の電着とを利用する太陽電池製造プロセスの高い歩留まり及び繰り返し精度は、実施毎の電気めっき層の析出厚の繰り返し精度に極めて強く依存する。更には、マイクロスケールの組成上の均一性は、サブミクロンの厚さを持つこれら電着された膜が、典型的には膜厚さの10%未満の表面粗さと、望ましい及び制御可能な微小構造、典型的にはサブミクロンサイズの粒子を持つ小さな粒状の微小構造とを持った滑らかな形態を有することを必要とする。粗い表面形態を持ったGaを利用する積層体は、例えば、フィルム全体を平均したマイクロスケールではGa含有量が許容可能範囲内にあり得るとしても、このGa含有量を局所的に変化させるであろう。注目すべきは、典型的に許容可能なCIGS(S)膜の組成は、0.8−1.0の範囲内にあるCu/(In+Ga)モル比を有する一方、Ga/(Ga+In)モル比は、0.1−0.3の範囲内にあり得ることである。
【0015】
これら薄膜積層体では、Mo層及び/又はRu含有層などの導体接触膜を表面上に有し得る基板を含んだ基部上に、銅層(又はIn層)が、電気めっき又はスパッタ堆積され得る。この基板は、金属箔でも、ガラス若しくは高分子のシートでも、織布でも良い。基板表面上のRu含有層は、Ru層でも、Ru−合金層でも、Ru化合物層でも、又はMo/Ru積層体若しくは、より一般的には、M/Ru積層体,ここで、Mは、導体又は半導体である,などのRuを含有した積層体でも良い。Cu表面(又はIn表面)上でのガリウムの電気めっきは、本発明の電解質を使用し、5、10、20、30、40及び50mA/cm2などの様々な電流密度で行われ得る。DC及び/又は可変(パルス型又は傾斜型(ramped))電圧/電流波形の双方が、Ga層を電気めっきするのに使用され得る。
【0016】
特には、本発明は、錯化剤を含有したある種類のGaめっき浴を提供する。錯化剤は、浴中のGaを錯化して、Gak+(Lm-nで一般的に表わされ得る錯体を形成する。めっき中、Gak+(Lm-n+ke-=Ga+nLm-の陰極反応が起こって、陰極表面にGaを析出させ、錯体種を放出させ得る。"k"の値は、3であり得る。錯化剤は、複数の目的を果たし得る。これらとしては、i)浴中の自由Gaイオン濃度の減少と、ii)Ga塩の沈殿の減少と、iii)適切なpHの維持が挙げられる。錯化剤の補助により、Ga塩は、塩基性溶液中に、0.1−1.0Mという適度に高い濃度で、沈殿を起こさずに溶解し得る。それにより、水素発生が低減され、析出効率が高められる。本発明の浴組成物に関する利点の一部としては、i)pHが典型的には7より高い、好ましくは9より高いので、水素の発生が低減されることと、ii)pHが好ましくは14未満なので、過剰な腐食問題が避けられることと、iii)錯化したGa種が、反復可能な方法で、小さな粒状のGa析出物を形成することとが挙げられる。
【0017】
ここで、幾つかの例を示して、本発明を説明する。これら例における電気めっき実験は、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(EG&G Model 263 A)を使用して行われた。めっき中、溶液が攪拌された。めっき試験用の基板は、ステンレス鋼及びソーダ石灰ガラスを含んでおり、双方とも、500nm厚のMo層と、次いで、5−100nmの範囲にある厚さを有したRu層とによってコーティングされていた。まず、50−200nmのCu層がRu表面上に電気めっきされた。次に、ガリウムがCu表面上に電気めっきされて、こうして得られたものが調べられた。基板の表面積は、数cm2から、大規模製造に対するこの方法の適正を確かめるために、数百cm2まで幅があった。Ga析出後、このフィルムの可変な部分を溶解させ、原子吸光分析を使用してこの溶解したサンプル中のガリウム量を測定することによって、均一性及びめっき効率を調べた。
【0018】
例1(錯化剤としてのシトレート)
0.2−0.5MのGaCl3及び0.5−0.8Mのクエン酸ナトリウム(Na3657)を含有した1組の例示的なめっき浴水溶液(aqueous plating baths)が調製された。pHは、10乃至13の範囲に調節された。ガリウムが、銅表面上に、30−50mA/cm2の電流密度で電着された。100nmの厚さに対して<10nmの表面粗さを有する高接着性のGa膜が得られた。めっき効率が測定されて、85−100%の範囲内にあることがわかり、電流密度が高いほど、より効率的な析出プロセスが得られた。ガリウムは、更に、シトレート含有錯化浴を使用することによって、他の金属表面にもめっきされた。Ru表面上での析出により、75−90%のめっき効率が直接得られた。Inの表面上では、Ga析出効率は100%に達した。50時間持続した加速試験は、酸化物/水酸化物の沈殿がなく、浴の化学が安定であったことと、析出効率は繰り返し精度を有していたこととを示した。
【0019】
例2(錯化剤としてのEDTA)
0.2MのGaCl3と0.4モル濃度のEDTAとを有しためっき浴水溶液が配合された。pHは、NaOHを使用して、12−14の範囲に調節された。めっき試験は、電気めっきされた銅表面に対して、10−50mA/cm2の電流密度で行われた。全てのGa膜は、輝いており、滑らかな形態を有していた。表面粗さは、100nm厚の膜に対して、<10nmであった。この場合、析出効率は、20−30mA/cm2のとき、それよりも低い又は高い電流密度値と比べて高いことがわかった。これらの効率値は、75−95%の範囲内にあった。
【0020】
例3(錯化剤としてのグリシン)
0.2MのGaCl2と0.5モルのグリシンとを有しためっき浴水溶液が配合された。pHは、NaOHを使用して、11−13の範囲に調節された。めっき試験は、電気めっきされた銅の表面に対して、10−50mA/cm2の電流密度で行われた。全てのGa膜は、輝いており、滑らかな表面を有していた。表面粗さは、100nm厚の層に対して、<10nmであった。この場合、析出効率は、20−30mA/cm2で、75−90%の範囲内であったことがわかった。この値よりも低い及び高い電流密度値では、効率が低下した。
【0021】
上述の例では、3種の特定の錯化剤、即ち、シトレート、EDTA及びグリシンが、浴の配合のために使用されていたが、列挙されたものに加えて又はそれに替えて、カルボキシル/アンミンキレート基を有した他の錯化剤を用いることもできる。使用されるシトレートは、トリエチルシトレート及びトリブチルシトレートのように、有機的に改質されたものでも良い。他の錯化剤としては、タータラート(酒石酸ナトリウム、酒石酸リチウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、ジエチルタータラート、ジメチルタータラート、ジブチルタータラート、ジイソプロピルタータラート及び酒石酸アンモニウムなど)、オキサレート(ナトリウム、カリウム及びリチウムのシュウ酸塩など)、アンモニア及びアンモニウム塩、エチレンジアミン、ニトリロトリ酢酸及びその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びその塩、アミノ酪酸及びそれらの塩、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プラリーヌ(praline)、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパルテート、グルタメート、セリン、トレオミン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンを含んだアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
注目すべきは、これら錯化剤の幾つかは、酸性溶液中でも良好に機能し得るが、本発明の好ましいGaめっき浴の組成が、7より高い、好ましくは9より高い、最も好ましくは9乃至14の範囲内にあるpH値を有することである。上述の例は、水を溶媒として用いた単純な水溶液化学を用いた。水は好ましい発明のGaめっき浴の配合における好ましい溶媒ではあるが、当然ながら、部分的に又は全体的に水と替えて、有機溶媒がこの配合に添加されても良い。このような有機溶媒としては、グリセリン、アルコール、エチレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、スルホランなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
上の例は、Ga電着プロセス中、DC電圧/電流を利用した。注目すべきは、本発明のGaめっき浴を用いて高いめっき効率及び高品質のGa堆積物を得るのに、パルス式又は他の可変な電圧/電流ソースが利用されても良いことである。Ga電気めっき浴の温度は、溶媒の性質に応じて、5−150℃の範囲内にあり得る。この温度を溶媒の沸点を下回るように維持するのが好ましい。水性配合物に好ましい浴の温度は、10−60℃の範囲にある。最も好ましい範囲は、15−30℃である。
【0024】
本発明の電気めっき浴は、追加の成分を含んでいても良い。これらとしては、結晶微細化剤、界面活性剤、ドーパント、他の金属又は非金属元素などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、界面活性剤、抑制剤、レべラー(levelers)、促進剤などの有機添加剤が配合物中に含ませて、その粒子構造及び表面粗さを洗練させても良い。この分野において一般的に使用される数多くのこのような添加物が存在する。有機添加剤として、ポリアルキレングリコールタイプのポリマー、プロパンスルフォン酸、クマリン、サッカリン、フルフラール、アクリロニトリル、マゼンタ染料、にかわ、SPS、澱粉、ブドウ糖などが挙げられるが、これらに限定されない。注目されるべきは、Ga合金又はGaの他の材料との混合物の薄膜を析出するために、他の材料がこの浴配合物中に含まれても良いことである。例えば、浴配合物中へのCu種(例えばCu硫酸塩、Cu塩化物など)の添加は、Cu−Ga合金及び/又はCu及びGaの混合物を含んだ薄膜の析出を可能にする。同様に、Ga−In合金及び/又はGa及びInの混合物を含んだ膜を得るために、Inがこの配合物に添加されても良い。In及びCuの双方の添加により、制御された量で、Cu、In及びGaを含んだ析出物が得られ得る。また、ドーパントが、「ドープトGa」膜の析出物を与える量で添加されても良い。ドープトGa膜は、典型的には1原子パーセント未満、好ましくは0.1原子パーセント未満の量で、ドーパントを含む。このようなドーパントとしては、Na、Li、K、S、Se、Sb、Pなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の浴組成物を使用して製造されたGa層は、Mo/Ru又はRu層のみでコーティングされたステンレス鋼基板を含んだ基部上に、全てが電気めっきされた金属からなる例示的な積層体を作製するのに用いられた。これらの積層体は、基部/Cu/Ga/In、基部/Cu/Ga/Cu/In、基部/Cu/In/Cu/Ga及び基部/Cu/In/Ga構造体をもたらす様々な析出順序を有していた。Indium Corporation of Americaによって市販されているスルファミン酸インジウム系のめっき浴が、In膜析出物のために利用された。この積層体は、環状炉内において、500℃で、50分間に亘り、Ar+H2Seガス混合物と反応させられ、Cu(In、Ga)Se2吸収体を形成した。Cu/(In+Ga)のモル比は、0.88−0.94の範囲内に維持され、一方で、Ga/(Ga/In)のモル比は、これらのサンプルにおいて、名目上は30%であった。この反応工程後、100nm圧のCdS層が吸収体表面上に形成され、基部/Cu(In、Ga)Se2/CdS構造体が得られた。Cd硫酸塩と、チオレア(Thiorea)、トリエチレンアミン(TEA)と、アンモニアとを含んだ溶液からCdSを析出させるため、周知の化学的浸漬方法が使用された。次に、ZnO/ITO透明導電膜が、スパッタリング技術によって、CdS膜上に堆積された。ITO膜上にNiフィンガーコンタクトを蒸着させて、太陽電池を完成させた。これらのデバイスから、11%程度の太陽電池効率が記録され、本発明のGa層を含んだ電着堆積物の品質を証明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブミクロン厚のGa含有膜を導体に適用するための溶液であって、
Ga塩と、
錯化剤と、
溶媒と
を含み、
前記溶液は、前記導体上での前記サブミクロン厚のGa含有膜の電着を提供する溶液。
【請求項2】
請求項1記載の溶液であって、前記Ga含有膜は、実質的に純粋なGa膜である溶液。
【請求項3】
請求項1記載の溶液であって、前記溶液のpHは7.0よりも高い溶液。
【請求項4】
請求項3記載の溶液であって、前記Ga塩は、Ga塩化物、Ga硫酸塩、Ga酢酸塩及びGa硝酸塩からなる群より選択される溶液。
【請求項5】
請求項3記載の溶液であって、前記錯化剤は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される溶液。
【請求項6】
請求項5記載の溶液であって、前記錯化剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム及び有機的に改質したシトレートのうちの少なくとも1種である溶液。
【請求項7】
請求項4記載の溶液であって、前記錯化剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム及び有機的に改質したシトレートのうちの少なくとも1種であり、前記溶媒は水であり、前記溶液のpH値は、9−14の範囲内にある溶液。
【請求項8】
請求項3記載の溶液であって、前記溶媒は水である溶液。
【請求項9】
請求項1記載の溶液であって、前記Ga塩は、Ga塩化物、Ga硫酸塩、Ga酢酸塩及びGa硝酸塩からなる群より選択される溶液。
【請求項10】
請求項1記載の溶液であって、前記錯化剤は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される溶液。
【請求項11】
請求項10記載の溶液であって、前記錯化剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム及び有機的に改質したシトレートのうちの少なくとも1種である溶液。
【請求項12】
請求項11記載の溶液であって、前記溶媒は水である溶液。
【請求項13】
請求項1記載の溶液であって、前記溶媒は水である溶液。
【請求項14】
請求項1記載の溶液であって、有機添加剤を更に含んだ溶液。
【請求項15】
請求項1記載の溶液であって、Cu塩及びIn塩のうちの少なくとも1種を更に含み、前記溶液のpHは7以上である溶液。
【請求項16】
請求項15記載の溶液であって、前記溶液のpHは9−14の範囲内にある溶液。
【請求項17】
請求項15記載の溶液であって、前記溶液は、VIA族、VIIA族及びVIIIA族の元素並びにこれらの化合物を本質的に含んでいない溶液。
【請求項18】
請求項17記載の溶液であって、前記錯化剤は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される溶液。
【請求項19】
請求項1記載の溶液であって、Cu塩及びIn塩の双方を更に含み、前記溶液のpHは7以上である溶液。
【請求項20】
請求項19記載の溶液であって、前記溶液のpHは9−14の範囲内にある溶液。
【請求項21】
請求項19記載の溶液であって、前記溶液は、VIA族、VIIA族及びVIIIA族の元素並びにこれらの化合物を本質的に含んでいない溶液。
【請求項22】
請求項21記載の溶液であって、前記錯化剤は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される溶液。
【請求項23】
サブミクロン厚を有したGa含有膜を導体の表面上に得る方法であって、
Ga塩と、錯化剤と、溶媒とを含んだ溶液を得る工程と、
前記溶液を陽極と前記導体の前記表面上とに適用する工程と、
前記陽極と前記導体との間に電位差を与える工程と、
前記Ga含有膜を、前記導体の前記表面上に、前記サブミクロン厚まで電着させる工程と
を含んだ方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、前記Ga含有膜は、実質的に純粋なGa膜である方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法であって、前記導体は銅である方法。
【請求項26】
請求項23記載の方法であって、前記導体はインジウムである方法。
【請求項27】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる溶液は、7.0より高いpHを有する方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、前記溶液のpHは9−14の範囲内にある方法。
【請求項29】
請求項27記載の方法であって、前記得る工程おいて得られる前記溶液は、Ga塩化物、Ga硫酸塩、Ga酢酸塩及びGa硝酸塩からなる群より選択されるGa塩を含んでいる方法。
【請求項30】
請求項27記載の方法であって、前記得る工程において得られる溶液は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される錯化剤を含んでいる方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、前記錯化剤として、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム及び有機的に改質されたシトレートのうちの少なくとも1種を含んでいる方法。
【請求項32】
請求項29記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、前記錯化剤として、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム及び有機的に改質されたシトレートのうちの少なくとも1種を含んでおり、前記溶媒は水であり、前記溶液のpH値は9−14の範囲内にある方法。
【請求項33】
請求項27記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、前記溶媒として水を含んでいる方法。
【請求項34】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、Ga塩化物、Ga硫酸塩、Ga酢酸塩及びGa硝酸塩からなる群より選択されるGa塩を含んでいる方法。
【請求項35】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される錯化剤を含んでいる方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、前記錯化剤として、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム及び有機的に改質されたシトレートのうちの少なくとも1種を含んでいる方法。
【請求項37】
請求項36記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、前記溶媒として水を含んでいる方法。
【請求項38】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、前記溶媒として水を含んでいる方法。
【請求項39】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、有機添加剤を更に含んでいる方法。
【請求項40】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、Cu塩及びIn塩のうちの少なくとも1種を更に含んでおり、前記溶液のpHは7以上である方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法であって、前記溶液のpHは9−14の範囲内にある方法。
【請求項42】
請求項41記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、VIA族、VIIA族及びVIIIA族の元素並びにこれらの化合物を本質的に含んでいない方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される錯化剤を含んでいる方法。
【請求項44】
請求項23記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、Cu塩及びIn塩の双方を更に含んでおり、前記溶液のpHは7以上である方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法であって、前記溶液のpHは9−14の範囲内にある方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、VIA族、VIIA族及びVIIIA族の元素並びにこれらの化合物を本質的に含んでいない方法。
【請求項47】
請求項46記載の方法であって、前記得る工程において得られる前記溶液は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される錯化剤を含んでいる方法。
【請求項48】
サブミクロン厚のGa含有膜を導体に適用するための溶液であって、
溶媒中に溶解したGaソースと、
錯化剤と、
前記溶液のpHを7よりも高い値へと調節するpH調節剤と
を含んだ溶液。
【請求項49】
請求項48記載の溶液であって、前記pH値は10より高い溶液。
【請求項50】
請求項49記載の溶液であって、前記Gaソースは、Ga塩化物、Ga硫酸塩、Ga酢酸塩及びGa硝酸塩からなる群より選択される溶液。
【請求項51】
請求項50記載の溶液であって、前記錯化剤は、シトレート、EDTA及びグリシンからなる群より選択される溶液。
【請求項52】
請求項51記載の溶液であって、前記溶媒は水である溶液。
【請求項53】
請求項52記載の溶液であって、前記pH調節剤は、NaOH及びKOHのうちの少なくとも1種である溶液。

【公表番号】特表2010−505045(P2010−505045A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530550(P2009−530550)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/079356
【国際公開番号】WO2008/039736
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(506313741)ソロパワー、インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】