説明

勃起不全治療方法

マクロライド化合物(I)を、例えば、疾患、アルコール依存症、加齢、動脈不全、静脈漏洩、ホルモン不全、薬物使用、外科手術、化学療法または放射線によりまたはそれらに続発して誘発される勃起不全を治療または予防するために、特に、哺乳類の勃起不全を予防または治療するために提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勃起不全の治療または予防のためのマクロライド化合物の医療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
WO02/07757は、有効量の血管内皮成長因子(VEGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)等を投与することによる男性勃起不全または女性の性的覚醒障害を治療または予防する方法を示している。
【0003】
WO02/096420は、前立腺手術の結果起こった神経損傷を治療または予防するためにいくつかの化合物の使用を示している。
【0004】
WO96/40140は、タクロリムスのようなFKBP型のイムノフィリン類に親和性を有するあるピペコリン酸誘導体が、傷害を受けた末梢神経の成長を刺激しまたは神経再生を促進することを示している。
【0005】
WO02/053159は、下記に示した化合物(I)の神経栄養活性を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、下記に示した化合物(I)が、例えば、疾患、アルコール依存症、加齢、動脈不全、静脈漏洩、ホルモン不全、薬物使用、外科手術、化学療法または放射線によりまたはそれらに続発して誘発される勃起不全を治療または予防する優れた活性を有していることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、勃起不全の治療または予防のため、化合物(I)の新しい用途を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、勃起不全の予防または治療のための方法を提供する。
【0009】
本発明で用いたマクロライド化合物は、下記の化学式を有している。
【0010】
【化1】

【0011】
それは、すでに、米国特許5,376,663の実施例29で製造されている。
【0012】
本発明で使用した化合物(I)に関して、不斉炭素(類)または二重結合(類)により、コンフォーマ類および光学異性体または幾何学的異性体類のような1個以上の立体異性体類があることがわかるであろうし、このようなコンフォーマ類および異性体類も、本発明の化合物の範囲に含まれる。最も好適な化合物(I)は、下記の式(Ia)である。
【0013】
【化2】

【0014】
さらに、本化合物(I)は、薬学的に許容できる塩、誘導体、溶媒和物またはプロドラッグの形状であることもでき、それは、本発明の範囲に含まれる。前記溶媒和物は、好適には、水和物およびエタノール和物を含む。
【0015】
本発明の化合物(I)は、純粋化合物、または、好適には薬学的ビーヒクルまたは担体中におけるまたは他の化合物との混合物として投与することもできる。
【0016】
本発明の化合物(I)は、例えば固体、半固体または液状のような薬剤調製物の形状で使用でき、それは、外部(局所)、腸内、静脈内、筋肉内、または非経口適用に適した有機または無機担体または賦形物との混合物中における活性成分として、化合物(I)を含んでいる。前記活性成分は、例えば、錠剤用、丸剤用、カプセル用、点眼剤用、坐剤用、溶液(例えば生理食塩水)、乳剤、懸濁剤類(例えば、オリーブオイル)、軟膏、エアゾールスプレイ、クリーム、皮膚貼付剤、パッチ類および使用に適した他のすべての形状のための通常の無毒で、薬学的に許容できる担体類と組成物とすることができる。使用できる前記担体類は、水、グルコース、ラクトース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三シリコン酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイダルシリカ、馬鈴薯でんぷん、尿素および固体、半固体または液状のような薬剤調製物での使用に適した担体類であり、さらに、補助剤、安定化剤、粘ちょう剤、および着色剤類および香料も使用できる。前記活性な目的化合物は、前記疾患の経過または状態に対して所望の効果を持ちうるように十分な有効量で前記薬剤組成物に含ませる。
【0017】
本発明の方法を用いて治療できる哺乳類は、ウシ、ウマ等のような家畜類、イヌ、ネコ、ねずみ等のような愛玩動物類、およびヒトを含む。
【0018】
化合物(I)の治療有効量の投与量は、治療する患者個人の年齢および状態に応じて変化しさらにそれに依存しているが、活性成分約0.0001−1000mg、好適には、0.001−500mg、さらに好適には0.01−100mgの1日投与量が疾患治療に通常投与され、約0.001−0.01mg、0.2−0.5mg、1mg、5mg、10mg、50mg、100mg、250mgおよび500mgの平均1回投与量が、通常投与される。ヒトにおける慢性投与の1日投与量は、約0.1−30mg/kg/日の範囲であろう。
【0019】
さらに、化合物(I)は、勃起不全治療または予防活性を有する他の薬剤と同時に、別々にまたは順番に投与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
下記の実施例は、本発明をさらに詳細に例示する。それらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0021】
実施例1
下記の成分類を含む化合物(Ia)の溶液を、化合物(Ia)およびHCO−60をエチルアルコール中に従来法で溶解させることによって、調製した。
−化合物(Ia) 1mg
−HCO−60 400mg
(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)
−エチルアルコール 1mlとする
【0022】
実施例2
化合物(Ia)の勃起不全に及ぼす効果を、ラットの海綿体神経損傷モデルで確認した。
方法:
(1)海綿体神経損傷後の勃起不全回復を、基本的には、BJU International 92、470−475(2003)のそれと同様にして評価した。
(2)上記の実施例1と同様に調製した溶液状の化合物(Ia)またはそのプラセボを、生理食塩水中適当な量のHCO−60/EtOHで希釈後、術後第1日から採取前第1日にかけて8週間皮下投与した。
【0023】
結果
化合物(Ia)の海面体内圧に及ぼす効果を下記の表1に示した。
【0024】
【表1】

【0025】
上記試験結果は、化合物(Ia)が海面体内圧(cm H2O)に対して顕著な回復効果を有していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
したがって、上記結果は、化合物(I)特に化合物(Ia)が勃起不全の治療または予防に有用であることを示唆している。勃起不全は、疾患、アルコール依存症、加齢、動脈不全、静脈漏洩、ホルモン不全、薬物使用、外科手術、化学療法または放射線によりまたはそれらに続発して誘発されることがある。
【0027】
特に、化合物(I)は、糖尿病によってまたはそれに続発して誘発される勃起不全の治療または予防に有用である。
【0028】
さらに、前立腺手術のような外科手術によってまたはそれに続発して誘発される勃起不全は、特定のものとして例示できる。さらに詳細には、前立腺手術の結果として起こる勃起不全、例えば、哺乳類陰茎海綿体神経の損傷によって起こる勃起不全を例示できる。
【0029】
本発明はさらに、例えば、疾患、アルコール依存症、加齢、動脈不全、静脈漏洩、ホルモン不全、薬物使用、外科手術、化学療法または放射線によりまたはそれらに続発して誘発される勃起不全を治療または予防する方法を提供し、その方法は、前記化合物(I)を有効量、哺乳類に投与することを含む。
【0030】
本発明によれば、化合物(I)を全身投与できる。
【0031】
本発明はさらに、下記のものを提供する。上記で同定した化合物(I)を含む薬剤組成物とそれに関連した書面を含む市販のパッケージで、前記書面が、例えば、疾患、アルコール依存症、加齢、動脈不全、静脈漏洩、ホルモン不全、薬物使用、外科手術、化学療法または放射線によりまたはそれらに続発して誘発される勃起不全を治療または予防するために化合物(I)を使用できることまたはそのために使用すべきであることを述べている。
【0032】
本文に引用した前記特許類、特許出願類および公報類は、参考として引用している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
勃起不全の治療または予防のための医薬製造のための下記式:
【化1】

の化合物の使用。
【請求項2】
勃起不全が、疾患、アルコール依存症、加齢、動脈不全、静脈漏洩、ホルモン不全、薬物使用、外科手術、化学療法または放射線によりまたはそれらに続発して誘発される請求項1記載の使用。
【請求項3】
勃起不全が、糖尿病によってまたはそれに続発して誘発される請求項2記載の使用。
【請求項4】
糖尿病が、糖尿病性ニューロパチーである請求項3記載の使用。
【請求項5】
勃起不全が、外科手術によってまたはそれに続発して誘発される請求項2記載の使用。
【請求項6】
外科手術が、前立腺手術である請求項5記載の使用。
【請求項7】
勃起不全が、陰茎海綿体神経に対する傷害によって起こる請求項2記載の使用。
【請求項8】
化合物(I)が、下記式:
【化2】

を有する化合物(Ia)である請求項1記載の使用。
【請求項9】
請求項1記載の化合物(I)を有効量、哺乳類に投与することを含む勃起不全の予防または治療方法。
【請求項10】
請求項1記載の化合物(I)を活性成分として含む勃起不全予防または治療剤。
【請求項11】
前記化合物(I)が、その薬学的に許容できる塩、誘導体、プロドラッグまたは溶媒和物の形状である請求項1乃至10記載の使用、方法または剤。
【請求項12】
請求項1記載の化合物(I)を含む薬剤組成物およびそれに関連した書面を含む市販パッケージで、前記書面が、前記化合物(I)を勃起不全の治療または予防のために使用できることまたはそのために使用すべきであることを述べている。

【公表番号】特表2007−518692(P2007−518692A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522167(P2006−522167)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000806
【国際公開番号】WO2005/067928
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】