説明

動体検知システム

【課題】回路構成が簡単でかつ比較的安価に制作可能であり、人の素早い動作についても検出が可能である動体検知システムに関する技術を提供する。
【解決手段】電波のドップラー効果を利用して動体を検知する電波センサ1と、電波センサ1で検知して出力されたセンサ出力信号2を処理する信号処理装置21と、信号処理装置21から出力された警報出力信号8を受け警報を出力する外部機器9と、により構成される動体検知システム20であって、信号処理装置21が、電波センサ1から出力されたセンサ出力信号2を増幅する増幅部5と、増幅部5から出力された増幅信号6から判定までの遅延時間15を記憶する不揮発性メモリ10と、増幅信号6と前記遅延時間15経過までの状態監視を行い、信号変化の有無等の状態により警報出力信号8を出力する出力部13と、により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や機械式駐車場において、電波を用い人体や動体の存在の有無を検知する動体検知システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波等を利用して侵入物を検知する装置として、特許文献1および特許文献2に記載の如く、送信部と受信部を分離して具備し、電波が障害物の影響を受けるとその前後で位相差が生じることを利用し、送信部から発せられた電波を受信部で受信し、位相差の有無を検出することで侵入物を検知する技術が公知となっている。
また、マイクロ波等のドップラー効果を利用して室内における動体の存在有無を検知する装置においては、特許文献3に記載の如く、蛍光灯などの外乱ノイズの影響をローパスフィルター等により一定周波数以上の信号を除去する技術や一般的な電気回路としてノッチフィルターのように特定周波数の信号を除去する技術が公知となっている。
【特許文献1】特開2004−286567号公報
【特許文献2】特開2001−99917号公報
【特許文献3】特開2004−124362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の先行技術における動体検知システムでは、動体の検知精度は高いが、送信機と受信機を別に具備する必要がある等の点で回路構成が複雑となり、製作費用が高価になるという問題がある。
また、人体を検知する技術において、蛍光灯等の外乱ノイズの除去は、ローパスフィルター等で一定周波数以上の信号を除去する方法で行われているため、外乱の影響は除去できるものの、人の素早い動作等は検出できないという問題がある。
以上のような状況を鑑み、本発明は、回路構成が簡単でかつ比較的安価に制作可能であり、人の素早い動作についても検出が可能である動体検知システムに関する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、電波のドップラー効果を利用して動体を検知するセンサ部と、該センサ部から出力された信号を処理する信号処理装置と、該信号処理装置から出力された信号を受け警報を出力する外部機器と、により構成される動体検知システムであって、前記信号処理装置が、前記センサ部から出力された信号を増幅する増幅部と、該増幅部から出力された増幅信号から判定までの遅延時間を記憶するメモリと、前記信号と前記遅延時間経過までの状態監視を行い、信号変化の有無等の状態により信号を出力する出力部と、により構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0007】
請求項1においては、動体検知システムを前述した構成とすることにより、回路構成の簡略化ができるとともに、動体検知システムの製作費用低減にも寄与する。
また、増幅信号を信号処理装置で処理することにより、周期ノイズ信号に対して、ソフトウェアによる動的なノイズ除去が行えるため、動体検知を精度よく行うことができるとともに、遅延時間の調整により、単発外乱ノイズの除去を容易に行うことができ、人等の素早い動作が検知可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る電波センサを用いた動体検知システムを示したブロック図、図2は信号処理装置内のマイコン制御フローを示したフロー図である。
【0009】
以下の説明は、電波のドップラー効果を利用して動体を検知する電波センサ1と、電波センサ1で検知して出力されたセンサ出力信号2を処理する信号処理装置21と、信号処理装置21から出力された警報出力信号8を受け警報を出力する外部機器9と、により構成される動体検知システム20であって、信号処理装置21が、電波センサ1から出力されたセンサ出力信号2を増幅する増幅部5と、増幅部5から出力された増幅信号6から判定までの遅延時間15を記憶する不揮発性メモリ10と、増幅信号6と前記遅延時間15経過までの状態監視を行い、信号変化の有無等の状態により警報出力信号8を出力する出力部13と、により構成されることを特徴とする動体検知システム20を示すものである。
【0010】
図1に示す如く、動体検知システム20は、電波の発信と受信を行う電波センサ1と、電波センサ1から出力されるセンサ出力信号2を処理する信号処理装置21と、信号処理装置21から出力される警報出力信号8の入力を受け警報を発報する外部機器9により構成されている。
【0011】
電波センサ1は、動体14を検知する原理として電波のドップラー効果を利用している。ここでいう電波のドップラー効果とは、送信手段11から発せられた電波が動体14により反射されると、電波が持つ周波数(位相や振幅)が変化することであり、発信した電波の周波数と受信手段12で受信した電波の周波数を比較し、周波数変化を捉えることにより動体14の有無を検知するものである。電波センサ1はマイクロ波帯の電波を用いたセンサであり、赤外線や超音波を利用したセンサに比べ検知範囲が広いという性質があり、空間内の動体検知によく適合するものである。
【0012】
また、このドップラー効果を利用した電波センサ1は、送信手段11と受信手段12の距離を離す必要性が無く一体化することが可能であるため、先行技術で知られている送信手段11と受信手段12を別途設けて構成したシステムに比べ、回路設計および配線が簡略化できるというメリットがある。
【0013】
図1に示す如く、送信手段11から発せられた反射波を受信手段12で受信して電波センサ1から出力されるセンサ出力信号2はフィルタ回路3に入力される。フィルタ回路3では、回路上の電気的ノイズの除去を行っている。電源系統等から予期せず回路に侵入した電気的ノイズを除去することにより、誤検知を防止し、検知精度を向上させることができる。そしてフィルタ回路3からはノイズ除去後の信号4が出力される。
【0014】
フィルタ回路3を経たノイズ除去後の信号4は、増幅部5に入力される。増幅部5では信号の増幅を行っている。信号を増幅することにより、後述するマイコン7による信号処理が可能となる。そして増幅部5からは増幅信号6が出力される。
【0015】
増幅部5を経た増幅信号6は出力部13に入力される。出力部13では、入力された信号(すなわち増幅信号6)にみられる信号変化が、外乱ノイズの影響によるものなのか、もしくは動体14を検知したことによるものなのかを判定し、動体14を検知したことによると判定したときには警報出力信号8が出力される。
【0016】
図1および図2に示す如く、出力部13はマイコン(CPU)7と不揮発性メモリ(EEPROM)10により構成され、信号監視(A)、動体検知判定(B−1・B−2)、検出信号出力(C)の四段階に分けて動体14の検知判定を行っている。
【0017】
図2に示す如く、第一段階の信号監視(A)では、入力される増幅信号6に関して、信号変化が無いかどうかをマイコン7の機能により常時監視している。具体的には電波センサ1からの出力信号と反射後の入力信号の位相差や振幅の変化を監視している。変化が確認されないときは、信号が検出レベル以上であっても動体検知判定はしないものとしている。
これにより、降雨などの影響による緩やかな信号変化を誤検知することを防止している。
そして、信号変化が確認されたときには第二段階の判定へ進む。
【0018】
第二段階の動体検知判定(B−1)では、信号変化における周期性の有無をマイコン7の機能で判定し、周期性があると判定されたときには、蛍光灯や携帯電話から発せられる周期的外乱ノイズの影響であると判定し無視する。これにより周期的外乱ノイズの影響による誤検知を防止している。
そして、信号変化に周期性がないと判定されたときには第三段階の判定へ進む。
【0019】
第三段階の動体検知判定(B−2)においては、前記変化のあった増幅信号6から不揮発性メモリ10に記憶されている遅延時間15のみを監視し、現状の入力信号が信号変化しているかマイコン7により比較し、遅延時間15経過後に信号変化の兆候がないと、単発ノイズの影響によるものと判定し無視する。遅延時間15経過後も信号変化に継続性があると、電波の周波数を変化させる事象が(すなわち電波センサ1の検知範囲内に動体14が)存在しているものと判定する。
【0020】
不揮発性メモリ10を利用した回路構成によるノイズ除去方法においては、先行技術で知られているローパスフィルターやノッチフィルターによるノイズ除去方法とは異なり、遅延時間15を用いて無視する方法は採用していない。
そのため、先行技術ではノイズの周波数帯と混同するために検出が難しかった人等の素早い動作の検知にも対応が可能になっている。
そして、次の第四段階の判定へ進む。
【0021】
第四段階の検出信号出力(C)では、第三段階の動体検知判定B(B−2)からの入力を受けて、信号処理装置21における判定結果として、警報出力信号8を出力する。
また、動体検知判定(B−2)からの入力が無いときには信号の出力は行わない。
【0022】
外部機器9は、信号処理装置21からの警報出力信号8の入力を受けて外部に警報を出力する。警報は外部機器9の種類により、表示灯・回転灯等の点灯、サイレン・ブザー等の鳴動、通信機器の利用による移報等の方法により動体14の検知を管理者に報知する。
【0023】
上述のように、動体検知システム20を構成することに4より、回路構成の簡略化ができるとともに、動体検知システム20の製作費用低減にも寄与することができるのである。また、増幅信号6を信号処理装置21で処理することにより、周期ノイズ信号に対して、ソフトウェアによる動的なノイズ除去が行えるため、動体検知を精度よく行うことができるとともに、遅延時間15の調整により、単発外乱ノイズの除去を容易に行うことができ、人等の素早い動作が検知可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係る電波センサを用いた動体検知システムを示したブロック図。
【図2】信号処理装置内のマイコン制御フローを示したフロー図。
【符号の説明】
【0025】
1 電波センサ
2 センサ出力信号
5 増幅部
6 増幅信号
8 警報出力信号
9 外部機器
10 不揮発性メモリ
11 送信手段
12 受信手段
13 出力部
15 遅延時間
20 動体検知システム
21 信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波のドップラー効果を利用して動体を検知するセンサ部と、
該センサ部から出力された信号を処理する信号処理装置と、
該信号処理装置から出力された信号を受け警報を出力する外部機器と、
により構成される動体検知システムであって、
前記信号処理装置が、
前記センサ部から出力された信号を増幅する増幅部と、該増幅部から出力された増幅信号から判定までの遅延時間を記憶するメモリと、前記信号と前記遅延時間経過までの状態監視を行い、信号変化の有無等の状態により信号を出力する出力部と、
により構成されることを特徴とする動体検知システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−71658(P2007−71658A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258259(P2005−258259)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000198330)石川島芝浦機械株式会社 (74)
【Fターム(参考)】