動力伝達系の試験装置およびその制御方法
【課題】ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることが可能な動力伝達系の試験装置を提供する。
【解決手段】第2指令トルク算出部30は、第1指令トルクT1(第1指令トルクT1:指令速度と実速度ω0の速度偏差から算出されるトルク)から推定される推定速度ω1と実速度ωとの速度偏差から第2指令トルクT2を推定し、この第2指令トルクT2と第1指令トルクT1とを加算して得たトルクを指令トルクTをしてダイナモメータ3に出力する。この第2指令トルクT2は、ダイナモメータ3に加わる外力、つまり供試体モータ2から発生するトルクおよび慣性力を推定したトルクとなり、外力等の影響がうち消されたトルクとなる。
【解決手段】第2指令トルク算出部30は、第1指令トルクT1(第1指令トルクT1:指令速度と実速度ω0の速度偏差から算出されるトルク)から推定される推定速度ω1と実速度ωとの速度偏差から第2指令トルクT2を推定し、この第2指令トルクT2と第1指令トルクT1とを加算して得たトルクを指令トルクTをしてダイナモメータ3に出力する。この第2指令トルクT2は、ダイナモメータ3に加わる外力、つまり供試体モータ2から発生するトルクおよび慣性力を推定したトルクとなり、外力等の影響がうち消されたトルクとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体に接続されるダイナモメータに対して適正なトルクを与えることが可能な動力伝達系の試験装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力伝達系の試験装置には、車両の性能試験や耐久試験を室内で行うため、動力伝達系に動力吸収手段として接続されるダイナモメータを備えられる。試験装置は、このダイナモメータの発生トルクを制御することにより、動力伝達系に対し、実際の車両と等価な慣性を負荷して、実車走行を模擬した試験を可能にするものである。
例えば、例えば特許文献1〜3に示すように、試験装置にトルクオブザーバを用いたものもある。トルクオブザーバが、ダイナモメータのトルクが変動したときのダイナモメータの速度を推定し、該推定速度とダイナモメータの実速度との速度偏差に比例ゲインを積算することにより、動力源の発生トルクを推定し、該動力源の発生トルクに基づいてダイナモメータの発生トルクを制御することにより、動力伝達系に、実際の車両と等価な慣性を負荷する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−344224号公報
【特許文献2】特開2005−180956号公報
【特許文献3】特開2006−242592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した特許文献1〜3では、トルクオブザーバを用いてダイナモメータの発生トルクを制御するようになっているものの、供試体モータから加わる外力や慣性力の影響を受け、高周波の速度変動に対して追随できないのが実情である。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、高周波の速度変動に対してもダイナモメータが追従可能な動力伝達系の試験装置およびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明が採用する動力伝達系の試験装置の構成は、指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出手段と、供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力手段と、前記トルク算出手段が出力したトルクと前記トルク入力手段で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
上記構成により、トルク算出手段は、指令速度と実速度の速度偏差から実トルクを算出(推定)し、トルク入力手段は、この実トルクから推定される推定速度と実速度との速度偏差から推定トルクを算出し、出力手段は、実トルクと推定トルクを加算した値を指示値としてダイナモメータに出力する。
これにより、動力伝達系の試験装置は、供試体がダイナモメータに加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータに与えることになり、ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることが可能となる。
【0008】
上記構成において、前記トルク入力手段は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定手段、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクを実測するトルク実測手段の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
【0009】
上記構成において、前記トルク推定手段は、対象の慣性量から得られる疑似トルクであることが好ましい。
【0010】
上記構成において、前記トルク推定手段は、前記トルク算出手段から出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出手段と、前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出手段と、を具備することが好ましい。
【0011】
上記構成において、前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定されることが好ましい。
【0012】
上記構成において、前記対象の慣性量は、変化可能とすることが好ましい。
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明が採用する試験装置の制御方法は、供試体となる動力伝達系に対する試験装置の制御方法であって、指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出過程と、前記供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力過程と、前記トルク算出過程で出力したトルクと前記トルク入力過程で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力過程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、トルク算出過程においては、指令速度と実速度の速度偏差から実トルクを算出(推定)し、トルク入力過程においては、この実トルクから推定される推定速度と実速度との速度偏差から推定トルクを算出し、出力過程においては、実トルクと推定トルクを加算した値を指示値としてダイナモメータに出力する。
これにより、試験装置の制御方法にあっては、供試体がダイナモメータに加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータに与えることになり、ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることが可能となる。
【0015】
上記構成において、前記トルク入力過程は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定過程、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクの実測するトルク実測過程の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
【0016】
上記構成において、前記トルク推定過程は、前記トルク算出過程で出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出過程と、前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出過程と、を備えることが好ましい。
【0017】
上記構成において、前記トルク推定過程は、対象の慣性を疑似する疑似トルクを推定することが好ましい。
【0018】
上記構成において、前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定されることが好ましい。
【0019】
上記構成において、前記対象の慣性量は、変化可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による動力伝達系の試験装置は、トルク入力手段にて検出されたトルクと、トルク算出手段で算出された指令速度に対応したトルクとを、出力手段にて加算してダイナモメータに付与することにより、常に指令速度(指令トルク)に対するダイナモメータにおけるトルクの変動を監視して、実トルクの変動分を抑えるように制御できる。これにより、動力伝達系の試験装置は、ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る動力伝達系の試験装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
ここで、図1を参照しつつ、動力伝達系の試験装置の構成について説明する。
図1は、動力伝達系の試験装置の回路構成を示した図である。本発明の第1実施形態に係る動力伝達系の試験装置は、例えば、車両用エンジンの試験装置であって、同図に示されるように、供試体モータ2の軸(図示せず)に接続されるダイナモメータ3と、ダイナモメータ3の軸角度θを検出する角度検出器4と、供試体モータ2とダイナモメータ3とを連結する軸に設けられたトルク計5と、前記ダイナモメータ3の発生トルクを制御する制御装置10とを備えている。供試体モータ2は、エンジン+トランスミッションからなる動力伝達系となる。
この試験装置においては、外部から入力される指令速度に応じて、ダイナモメータ3に指令トルクTを与えるようになっている。
【0023】
トルク計5は、例えば歪みゲージ式、位相差検出式、磁気式の他、ロードセルを利用した計器等からなる。角度検出器4は、例えばエンコーダ、慣性センサ、表面弾性波センサ、ジャイロセンサ、レゾルバ等からなる。
【0024】
上記ダイナモメータ3は発電機/電動機からなり、その発生トルクが制御装置10によって制御される。これにより、ダイナモメータ3は、供試体モータ2に加える負荷を調整する。そして、試験装置は、実際に走行する車両の走行抵抗負荷と加減速時の車重相当の慣性負荷をトルク負荷として、供試体モータ2に模擬的に与えるものである。
【0025】
制御装置10は、角度θからダイナモメータ3の実速度ω0を算出する微分器11と、指令速度に対応した第1指令トルクT1を算出する第1指令トルク算出部20と、前記実速度ω0を加味した第2指令トルクT2を算出する第2指令トルク算出部30と、第1指令トルクT1と第2指令トルクT2とを加算した指令トルクTをダイナモメータ3に出力する加算器40と、を具備する。
【0026】
ここで、第1指令トルク算出部20が請求項1に記載の「トルク算出手段」に該当し、第2指令トルク算出部30が請求項1に記載の「トルク入力手段」に該当し、加算器40が請求項1に記載の「出力手段」に該当する。
【0027】
この第1指令トルク算出部20は、トルク換算部21と、増幅部22と、PI制御部23と、減算器24と、加算器25とを備えている。減算器24は、指令速度と実速度ω0との速度偏差を算出する。トルク換算部21と増幅部22でフィードフォワード制御部を構成する。
【0028】
トルク換算部21は、供試体モータ2、ダイナモメータ3およびトルク計5からなる全体の慣性量Jが微分定数として設定されており、指令速度に対して慣性量Jを微分定数とした微分を施して得たトルクを出力する。増幅部22は、比例要素のみからなるフォワードゲインFにより構成され、トルク換算部21から出力されるトルクを増幅して換算トルクT3を出力する。
【0029】
PI制御部23は、指令速度と実速度ω0との速度偏差に、比例・積分の2つの要素による演算を加えることで偏差トルクT4を算出する。加算器25は、換算トルクT3と偏差トルクT4とを加算して得た第1指令トルクT1を出力する。
【0030】
この第1指令トルク算出部20は、指令速度と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から第1指令トルクT1を算出する。
【0031】
次に、第2指令トルク算出部30は、速度推定部31と、ローパスフィルタ32と、トルク推定部33と、減算器34とを備えている。
【0032】
速度推定部31は、ダイナモメータ3を一質点系モデルと見なし、第1指令トルクT1に応じた推定速度ω1を推定する。具体的には、供試体モータ2、ダイナモメータ3およびトルク計5からなる全体の慣性量Jを積分定数として設定し、第1指令トルクT1に対して慣性量Jを積分定数とした積分を施して推定速度ω1を得る。
【0033】
減算器34は、速度推定部31、ローパスフィルタ32および微分器11との間に接続され、推定速度ω1から実速度ω0を減算した速度偏差をローパスフィルタ32に出力する。ローパスフィルタ32は、π型或いはL型のローパスフィルタ32によって積分回路として構成され、速度偏差の脈動分をカットする。トルク推定部33は、比例要素のみからなるオブザーバゲインGにより構成される増幅回路となり、速度偏差に対応した第2指令トルクT2を生成する。
【0034】
この第2指令トルク算出部30は、速度推定部31から出力される推定速度ω1と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から第2指令トルクT2を算出する。
【0035】
なお、トルク換算部21および速度推定部31に定数として用いられる慣性量Jは、供試体モータ2の定格、およびダイナモメータ3の定格から設定されるものである。また、この定数の設定は、この試験装置を業者が設置した際に行っても良いし、ユーザが試験に先立って適宜設定してもよい。このため、図示しないが、制御装置10には、これらをパラメータとして設定するためのメモリを備えたマイクロコンピュータや入力手段が別途設けられている。
【0036】
ここで、実車における供試体モータ2の発生トルクTe、供試体モータ2の慣性量(エンジン軸換算)Jcとすれば、供試体モータ軸での加速度αcは、次式(1)となる。
αc=Te/Jc・・・(1)
【0037】
一方、ダイナモメータ3の発生トルクTm、ダイナモメータ3の慣性量Jmとすれば、ダイナモメータ3の加速度αmは、次式(2)となる。
αm=(Te−Tm)/Jm・・・(2)
【0038】
ダイナモメータ3によって車両の慣性を模擬する場合には、αc=αmの条件が成り立てば良いから、αc=αmを条件として、上記式(1),(2)から加速度を消去すると、次式に示すようになる。
Tm=((Jc−Jm)/Jc)×Te・・・(3)
この式(3)から、供試体モータ2の発生トルクTeを知ることができれば、ダイナモメータ3の発生トルクTmが制御可能になることが分かる。
【0039】
しかしながら、供試体モータ2の発生トルクを遅れなく正確に検出することは、実質困難である。そこで、本実施形態における試験装置では、第2指令トルク算出部30を用いて、第1指令トルクT1(第1指令トルクT1:指令速度と実速度ω0の速度偏差から算出されるトルク)から推定される推定速度ω1と実速度ωとの速度偏差から第2指令トルクT2を推定し、この第2指令トルクT2と第1指令トルクT1とを加算して得たトルクを指令トルクTとしてダイナモメータ3に出力する。
【0040】
この第2指令トルクT2は、ダイナモメータ3に加わる外力、つまり供試体モータ2から発生するトルクおよび慣性力を推定したトルクとなっている。このため、指令速度に対応した第1指令トルクT1にこの第2指令トルクT2を加算して得た指令トルクTは、外力の影響をうち消した指令トルクとなる。
【0041】
この結果、本実施形態による試験装置は、供試体モータ2がダイナモメータ3に加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータ3に与えることが可能となる。これにより、試験装置は、供試体モータ2に高周波の速度変動が発生した場合であっても、ダイナモメータ3に対して追従可能となる指令トルクTを供給することができる。
【0042】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態による変形例を以下に示す。
(1−1)
この変形例(1−1)は、図2に示すように、速度推定部31´およびトルク換算部21´の定数をダイナモメータ3の慣性量J1に設定している。
この制御装置10は、ダイナモメータ3の持つ慣性量J1を吸収した指令トルクTをダイナモメータ3に出力するから、供試体モータ2とダイナモメータ3とを接続する軸における軸トルクの速度制御を確実に行うことが可能となる。
【0043】
(1−2)
この変形例(1−2)は、図3に示すように、トルク換算部21と増幅部22とからなるフィードフォワード制御部をなくした第1指令トルク算出部20´とした。
この制御装置10は、供試体モータ2を一定速度に上げる場合のダイナモメータ3の負荷変動を抑えることができる。
【0044】
(1−3)
この変形例(1−3)は、図4に示すように、トルク推定部33に並列に積分器35を接続した第2指令トルク算出部30´とした。トルク推定部33は、比例算に限らず、積分、微分であっても、それらの組み合わせであってもよく。要は、第2指令トルク算出部30´から出力される第2指令トルクT2が、ダイナモメータ3に加わる外力、つまり供試体モータ2から発生するトルクおよび慣性力を推定したトルクとなればよい。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明による第2実施形態について説明する。
本実施形態の特徴は、第2指令トルク算出部30から出力される第2指令トルクT2の代わりに、トルク計5で検出される軸トルクTBを用いたことにある。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
この実施形態の制御装置10Aでは、通常試験時におけるデータ収集に用いられるトルク計5で検出される軸トルクTBを、ダイナモメータ3に与える指令トルクTの生成に用いたことにある。
【0047】
この実施形態の制御装置10Aは、図5に示すように、実際に供試体モータ2とダイナモメータ3との間に発生する軸トルクと、第1指令トルク算出部20から出力される第1指令トルクT1とを、加算器40で加算してダイナモメータ3に出力する。この試験装置においては、供試体モータ2がダイナモメータ3に加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータ3に与えることが可能となる。
【0048】
<第3実施形態>
次に、本発明による第3実施形態について説明する。
本実施形態の特徴は、第2指令トルク算出部30から出力される第2指令トルクT2に、トルク計5で検出される軸トルクTBを加算したことにある。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
この実施形態の制御装置10Bでは、図6に示すように、トルク推定部33の出力側にトルク計5の出力とを加算する加算器36を設ける。これにより、第2指令トルク算出部30から出力される第2指令トルクT2は、速度推定部31から出力される推定速度ω1と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から得られた疑似トルクと、トルク計5から検出される実トルクとを加算した値となる。この試験装置においては、供試体モータ2がダイナモメータ3に加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータ3に与えることが可能となる。
【0050】
<第3実施形態の変形例>
前述した第3実施形態では、トルク計5から検出される軸トルクTBを第2指令トルク算出部30のトルク推定部33の出力側で加算するようにしたが、本発明はこれに限らず、第1指令トルク算出部20から出力される第1指令トルクT1に、トルク計5で検出される軸トルクTBを加算してもよい。
具体的には、図7に示すように、第1指令トルク算出部20の加算器25の出力側に加算器26を設ける。これにより、第1指令トルク算出部20から出力される第1指令トルクT1は、指令速度と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から得られた疑似トルクに、トルク計5から検出される実トルクとを加算した値となる。
【0051】
<変形例>
本発明は前述した実施形態に限るものではなく、種々の対応が可能である。
例えば、図8に示すように、ローパスフィルタ32を接続する位置は、減算器34とトルク推定部33との間に限るものではなく、微分器11と第2指令トルク算出部30との間、或いは速度推定部31と減算器34との間等、脈動が発生し易い位置に接続すればよい。
また、図8は、第1実施形態に対応させた場合を例示したが、これに限らず、図2〜図7に対しても対応可能である。
さらに、ローパスフィルタ32の時定数は、応答速度が遅くならないように各素子の値を設定する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態による動力伝達系の試験装置を示す構成図である。
【図2】第1実施形態による変形例(1−1)を示す構成図である。
【図3】第1実施形態による変形例(1−2)を示す構成図である。
【図4】第1実施形態による変形例(1−3)を示す構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態による動力伝達系の試験装置を示す構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態による動力伝達系の試験装置を示す構成図である。
【図7】第3実施形態による変形例を示す構成図である。
【図8】本発明による変形例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0053】
10…制御装置、11…微分器、20,20´…第1指令トルク算出部、21…トルク換算部、22…増幅部、23…PI制御部、24,34…減算器、25,36,40…加算器、30,30´…第2指令トルク算出部、31…速度推定部、32…ローパスフィルタ、33…トルク推定部、35…積分器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体に接続されるダイナモメータに対して適正なトルクを与えることが可能な動力伝達系の試験装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力伝達系の試験装置には、車両の性能試験や耐久試験を室内で行うため、動力伝達系に動力吸収手段として接続されるダイナモメータを備えられる。試験装置は、このダイナモメータの発生トルクを制御することにより、動力伝達系に対し、実際の車両と等価な慣性を負荷して、実車走行を模擬した試験を可能にするものである。
例えば、例えば特許文献1〜3に示すように、試験装置にトルクオブザーバを用いたものもある。トルクオブザーバが、ダイナモメータのトルクが変動したときのダイナモメータの速度を推定し、該推定速度とダイナモメータの実速度との速度偏差に比例ゲインを積算することにより、動力源の発生トルクを推定し、該動力源の発生トルクに基づいてダイナモメータの発生トルクを制御することにより、動力伝達系に、実際の車両と等価な慣性を負荷する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−344224号公報
【特許文献2】特開2005−180956号公報
【特許文献3】特開2006−242592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した特許文献1〜3では、トルクオブザーバを用いてダイナモメータの発生トルクを制御するようになっているものの、供試体モータから加わる外力や慣性力の影響を受け、高周波の速度変動に対して追随できないのが実情である。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、高周波の速度変動に対してもダイナモメータが追従可能な動力伝達系の試験装置およびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明が採用する動力伝達系の試験装置の構成は、指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出手段と、供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力手段と、前記トルク算出手段が出力したトルクと前記トルク入力手段で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
上記構成により、トルク算出手段は、指令速度と実速度の速度偏差から実トルクを算出(推定)し、トルク入力手段は、この実トルクから推定される推定速度と実速度との速度偏差から推定トルクを算出し、出力手段は、実トルクと推定トルクを加算した値を指示値としてダイナモメータに出力する。
これにより、動力伝達系の試験装置は、供試体がダイナモメータに加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータに与えることになり、ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることが可能となる。
【0008】
上記構成において、前記トルク入力手段は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定手段、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクを実測するトルク実測手段の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
【0009】
上記構成において、前記トルク推定手段は、対象の慣性量から得られる疑似トルクであることが好ましい。
【0010】
上記構成において、前記トルク推定手段は、前記トルク算出手段から出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出手段と、前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出手段と、を具備することが好ましい。
【0011】
上記構成において、前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定されることが好ましい。
【0012】
上記構成において、前記対象の慣性量は、変化可能とすることが好ましい。
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明が採用する試験装置の制御方法は、供試体となる動力伝達系に対する試験装置の制御方法であって、指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出過程と、前記供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力過程と、前記トルク算出過程で出力したトルクと前記トルク入力過程で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力過程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、トルク算出過程においては、指令速度と実速度の速度偏差から実トルクを算出(推定)し、トルク入力過程においては、この実トルクから推定される推定速度と実速度との速度偏差から推定トルクを算出し、出力過程においては、実トルクと推定トルクを加算した値を指示値としてダイナモメータに出力する。
これにより、試験装置の制御方法にあっては、供試体がダイナモメータに加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータに与えることになり、ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることが可能となる。
【0015】
上記構成において、前記トルク入力過程は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定過程、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクの実測するトルク実測過程の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
【0016】
上記構成において、前記トルク推定過程は、前記トルク算出過程で出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出過程と、前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出過程と、を備えることが好ましい。
【0017】
上記構成において、前記トルク推定過程は、対象の慣性を疑似する疑似トルクを推定することが好ましい。
【0018】
上記構成において、前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定されることが好ましい。
【0019】
上記構成において、前記対象の慣性量は、変化可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による動力伝達系の試験装置は、トルク入力手段にて検出されたトルクと、トルク算出手段で算出された指令速度に対応したトルクとを、出力手段にて加算してダイナモメータに付与することにより、常に指令速度(指令トルク)に対するダイナモメータにおけるトルクの変動を監視して、実トルクの変動分を抑えるように制御できる。これにより、動力伝達系の試験装置は、ダイナモメータの高周波の速度変動に対しても十分に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る動力伝達系の試験装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
ここで、図1を参照しつつ、動力伝達系の試験装置の構成について説明する。
図1は、動力伝達系の試験装置の回路構成を示した図である。本発明の第1実施形態に係る動力伝達系の試験装置は、例えば、車両用エンジンの試験装置であって、同図に示されるように、供試体モータ2の軸(図示せず)に接続されるダイナモメータ3と、ダイナモメータ3の軸角度θを検出する角度検出器4と、供試体モータ2とダイナモメータ3とを連結する軸に設けられたトルク計5と、前記ダイナモメータ3の発生トルクを制御する制御装置10とを備えている。供試体モータ2は、エンジン+トランスミッションからなる動力伝達系となる。
この試験装置においては、外部から入力される指令速度に応じて、ダイナモメータ3に指令トルクTを与えるようになっている。
【0023】
トルク計5は、例えば歪みゲージ式、位相差検出式、磁気式の他、ロードセルを利用した計器等からなる。角度検出器4は、例えばエンコーダ、慣性センサ、表面弾性波センサ、ジャイロセンサ、レゾルバ等からなる。
【0024】
上記ダイナモメータ3は発電機/電動機からなり、その発生トルクが制御装置10によって制御される。これにより、ダイナモメータ3は、供試体モータ2に加える負荷を調整する。そして、試験装置は、実際に走行する車両の走行抵抗負荷と加減速時の車重相当の慣性負荷をトルク負荷として、供試体モータ2に模擬的に与えるものである。
【0025】
制御装置10は、角度θからダイナモメータ3の実速度ω0を算出する微分器11と、指令速度に対応した第1指令トルクT1を算出する第1指令トルク算出部20と、前記実速度ω0を加味した第2指令トルクT2を算出する第2指令トルク算出部30と、第1指令トルクT1と第2指令トルクT2とを加算した指令トルクTをダイナモメータ3に出力する加算器40と、を具備する。
【0026】
ここで、第1指令トルク算出部20が請求項1に記載の「トルク算出手段」に該当し、第2指令トルク算出部30が請求項1に記載の「トルク入力手段」に該当し、加算器40が請求項1に記載の「出力手段」に該当する。
【0027】
この第1指令トルク算出部20は、トルク換算部21と、増幅部22と、PI制御部23と、減算器24と、加算器25とを備えている。減算器24は、指令速度と実速度ω0との速度偏差を算出する。トルク換算部21と増幅部22でフィードフォワード制御部を構成する。
【0028】
トルク換算部21は、供試体モータ2、ダイナモメータ3およびトルク計5からなる全体の慣性量Jが微分定数として設定されており、指令速度に対して慣性量Jを微分定数とした微分を施して得たトルクを出力する。増幅部22は、比例要素のみからなるフォワードゲインFにより構成され、トルク換算部21から出力されるトルクを増幅して換算トルクT3を出力する。
【0029】
PI制御部23は、指令速度と実速度ω0との速度偏差に、比例・積分の2つの要素による演算を加えることで偏差トルクT4を算出する。加算器25は、換算トルクT3と偏差トルクT4とを加算して得た第1指令トルクT1を出力する。
【0030】
この第1指令トルク算出部20は、指令速度と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から第1指令トルクT1を算出する。
【0031】
次に、第2指令トルク算出部30は、速度推定部31と、ローパスフィルタ32と、トルク推定部33と、減算器34とを備えている。
【0032】
速度推定部31は、ダイナモメータ3を一質点系モデルと見なし、第1指令トルクT1に応じた推定速度ω1を推定する。具体的には、供試体モータ2、ダイナモメータ3およびトルク計5からなる全体の慣性量Jを積分定数として設定し、第1指令トルクT1に対して慣性量Jを積分定数とした積分を施して推定速度ω1を得る。
【0033】
減算器34は、速度推定部31、ローパスフィルタ32および微分器11との間に接続され、推定速度ω1から実速度ω0を減算した速度偏差をローパスフィルタ32に出力する。ローパスフィルタ32は、π型或いはL型のローパスフィルタ32によって積分回路として構成され、速度偏差の脈動分をカットする。トルク推定部33は、比例要素のみからなるオブザーバゲインGにより構成される増幅回路となり、速度偏差に対応した第2指令トルクT2を生成する。
【0034】
この第2指令トルク算出部30は、速度推定部31から出力される推定速度ω1と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から第2指令トルクT2を算出する。
【0035】
なお、トルク換算部21および速度推定部31に定数として用いられる慣性量Jは、供試体モータ2の定格、およびダイナモメータ3の定格から設定されるものである。また、この定数の設定は、この試験装置を業者が設置した際に行っても良いし、ユーザが試験に先立って適宜設定してもよい。このため、図示しないが、制御装置10には、これらをパラメータとして設定するためのメモリを備えたマイクロコンピュータや入力手段が別途設けられている。
【0036】
ここで、実車における供試体モータ2の発生トルクTe、供試体モータ2の慣性量(エンジン軸換算)Jcとすれば、供試体モータ軸での加速度αcは、次式(1)となる。
αc=Te/Jc・・・(1)
【0037】
一方、ダイナモメータ3の発生トルクTm、ダイナモメータ3の慣性量Jmとすれば、ダイナモメータ3の加速度αmは、次式(2)となる。
αm=(Te−Tm)/Jm・・・(2)
【0038】
ダイナモメータ3によって車両の慣性を模擬する場合には、αc=αmの条件が成り立てば良いから、αc=αmを条件として、上記式(1),(2)から加速度を消去すると、次式に示すようになる。
Tm=((Jc−Jm)/Jc)×Te・・・(3)
この式(3)から、供試体モータ2の発生トルクTeを知ることができれば、ダイナモメータ3の発生トルクTmが制御可能になることが分かる。
【0039】
しかしながら、供試体モータ2の発生トルクを遅れなく正確に検出することは、実質困難である。そこで、本実施形態における試験装置では、第2指令トルク算出部30を用いて、第1指令トルクT1(第1指令トルクT1:指令速度と実速度ω0の速度偏差から算出されるトルク)から推定される推定速度ω1と実速度ωとの速度偏差から第2指令トルクT2を推定し、この第2指令トルクT2と第1指令トルクT1とを加算して得たトルクを指令トルクTとしてダイナモメータ3に出力する。
【0040】
この第2指令トルクT2は、ダイナモメータ3に加わる外力、つまり供試体モータ2から発生するトルクおよび慣性力を推定したトルクとなっている。このため、指令速度に対応した第1指令トルクT1にこの第2指令トルクT2を加算して得た指令トルクTは、外力の影響をうち消した指令トルクとなる。
【0041】
この結果、本実施形態による試験装置は、供試体モータ2がダイナモメータ3に加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータ3に与えることが可能となる。これにより、試験装置は、供試体モータ2に高周波の速度変動が発生した場合であっても、ダイナモメータ3に対して追従可能となる指令トルクTを供給することができる。
【0042】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態による変形例を以下に示す。
(1−1)
この変形例(1−1)は、図2に示すように、速度推定部31´およびトルク換算部21´の定数をダイナモメータ3の慣性量J1に設定している。
この制御装置10は、ダイナモメータ3の持つ慣性量J1を吸収した指令トルクTをダイナモメータ3に出力するから、供試体モータ2とダイナモメータ3とを接続する軸における軸トルクの速度制御を確実に行うことが可能となる。
【0043】
(1−2)
この変形例(1−2)は、図3に示すように、トルク換算部21と増幅部22とからなるフィードフォワード制御部をなくした第1指令トルク算出部20´とした。
この制御装置10は、供試体モータ2を一定速度に上げる場合のダイナモメータ3の負荷変動を抑えることができる。
【0044】
(1−3)
この変形例(1−3)は、図4に示すように、トルク推定部33に並列に積分器35を接続した第2指令トルク算出部30´とした。トルク推定部33は、比例算に限らず、積分、微分であっても、それらの組み合わせであってもよく。要は、第2指令トルク算出部30´から出力される第2指令トルクT2が、ダイナモメータ3に加わる外力、つまり供試体モータ2から発生するトルクおよび慣性力を推定したトルクとなればよい。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明による第2実施形態について説明する。
本実施形態の特徴は、第2指令トルク算出部30から出力される第2指令トルクT2の代わりに、トルク計5で検出される軸トルクTBを用いたことにある。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
この実施形態の制御装置10Aでは、通常試験時におけるデータ収集に用いられるトルク計5で検出される軸トルクTBを、ダイナモメータ3に与える指令トルクTの生成に用いたことにある。
【0047】
この実施形態の制御装置10Aは、図5に示すように、実際に供試体モータ2とダイナモメータ3との間に発生する軸トルクと、第1指令トルク算出部20から出力される第1指令トルクT1とを、加算器40で加算してダイナモメータ3に出力する。この試験装置においては、供試体モータ2がダイナモメータ3に加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータ3に与えることが可能となる。
【0048】
<第3実施形態>
次に、本発明による第3実施形態について説明する。
本実施形態の特徴は、第2指令トルク算出部30から出力される第2指令トルクT2に、トルク計5で検出される軸トルクTBを加算したことにある。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
この実施形態の制御装置10Bでは、図6に示すように、トルク推定部33の出力側にトルク計5の出力とを加算する加算器36を設ける。これにより、第2指令トルク算出部30から出力される第2指令トルクT2は、速度推定部31から出力される推定速度ω1と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から得られた疑似トルクと、トルク計5から検出される実トルクとを加算した値となる。この試験装置においては、供試体モータ2がダイナモメータ3に加えてくるトルク変動を吸収して指令速度による負荷をダイナモメータ3に与えることが可能となる。
【0050】
<第3実施形態の変形例>
前述した第3実施形態では、トルク計5から検出される軸トルクTBを第2指令トルク算出部30のトルク推定部33の出力側で加算するようにしたが、本発明はこれに限らず、第1指令トルク算出部20から出力される第1指令トルクT1に、トルク計5で検出される軸トルクTBを加算してもよい。
具体的には、図7に示すように、第1指令トルク算出部20の加算器25の出力側に加算器26を設ける。これにより、第1指令トルク算出部20から出力される第1指令トルクT1は、指令速度と微分器11から出力される実速度ω0との速度偏差から得られた疑似トルクに、トルク計5から検出される実トルクとを加算した値となる。
【0051】
<変形例>
本発明は前述した実施形態に限るものではなく、種々の対応が可能である。
例えば、図8に示すように、ローパスフィルタ32を接続する位置は、減算器34とトルク推定部33との間に限るものではなく、微分器11と第2指令トルク算出部30との間、或いは速度推定部31と減算器34との間等、脈動が発生し易い位置に接続すればよい。
また、図8は、第1実施形態に対応させた場合を例示したが、これに限らず、図2〜図7に対しても対応可能である。
さらに、ローパスフィルタ32の時定数は、応答速度が遅くならないように各素子の値を設定する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態による動力伝達系の試験装置を示す構成図である。
【図2】第1実施形態による変形例(1−1)を示す構成図である。
【図3】第1実施形態による変形例(1−2)を示す構成図である。
【図4】第1実施形態による変形例(1−3)を示す構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態による動力伝達系の試験装置を示す構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態による動力伝達系の試験装置を示す構成図である。
【図7】第3実施形態による変形例を示す構成図である。
【図8】本発明による変形例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0053】
10…制御装置、11…微分器、20,20´…第1指令トルク算出部、21…トルク換算部、22…増幅部、23…PI制御部、24,34…減算器、25,36,40…加算器、30,30´…第2指令トルク算出部、31…速度推定部、32…ローパスフィルタ、33…トルク推定部、35…積分器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出手段と、
供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力手段と、
前記トルク算出手段が出力したトルクと前記トルク入力手段で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力手段と、を具備する
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達系の試験装置において、
前記トルク入力手段は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定手段、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクを実測するトルク実測手段の少なくともいずれか一方を含む
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達系の試験装置において、
前記トルク推定手段は、対象の慣性量から得られる疑似トルクである
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項4】
請求項3記載の動力伝達系の試験装置において、
前記トルク推定手段は、前記トルク算出手段から出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出手段と、
前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出手段と、を具備する
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項5】
請求項3記載の動力伝達系の試験装置において、
前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定される
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項6】
請求項4記載の動力伝達系の試験装置において、
前記対象の慣性量は、変化可能とする
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項7】
供試体となる動力伝達系に対する試験装置の制御方法であって、
指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出過程と、
前記供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力過程と、
前記トルク算出過程で出力したトルクと前記トルク入力過程で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力過程と、を備える
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の試験装置の制御方法において、
前記トルク入力過程は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定過程、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクの実測するトルク実測過程の少なくともいずれか一方を含む
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の試験装置の制御方法において、
前記トルク推定過程は、前記トルク算出過程で出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出過程と、
前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出過程と、を備える
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8記載の試験装置の制御方法において、
前記トルク推定過程は、対象の慣性を疑似する疑似トルクを推定する
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9記載の試験装置の制御方法において、
前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定される
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項12】
請求項9記載の試験装置の制御方法において、
前記対象の慣性量は、変化可能とする
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項1】
指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出手段と、
供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力手段と、
前記トルク算出手段が出力したトルクと前記トルク入力手段で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力手段と、を具備する
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達系の試験装置において、
前記トルク入力手段は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定手段、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクを実測するトルク実測手段の少なくともいずれか一方を含む
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達系の試験装置において、
前記トルク推定手段は、対象の慣性量から得られる疑似トルクである
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項4】
請求項3記載の動力伝達系の試験装置において、
前記トルク推定手段は、前記トルク算出手段から出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出手段と、
前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出手段と、を具備する
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項5】
請求項3記載の動力伝達系の試験装置において、
前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定される
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項6】
請求項4記載の動力伝達系の試験装置において、
前記対象の慣性量は、変化可能とする
ことを特徴とする動力伝達系の試験装置。
【請求項7】
供試体となる動力伝達系に対する試験装置の制御方法であって、
指令速度に対応したトルクを算出するトルク算出過程と、
前記供試体とダイナモメータを含む系の特定部位について検出されたトルクを受け取るトルク入力過程と、
前記トルク算出過程で出力したトルクと前記トルク入力過程で受け取ったトルクとを加算して前記ダイナモメータに指示値として与える出力過程と、を備える
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の試験装置の制御方法において、
前記トルク入力過程は、供試体とダイナモメータを含む系からトルクを推定するトルク推定過程、または供試体とダイナモメータを含む系からのトルクの実測するトルク実測過程の少なくともいずれか一方を含む
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の試験装置の制御方法において、
前記トルク推定過程は、前記トルク算出過程で出力されるトルクに対し、前記対象の慣性量を積分定数とした積分処理を施して前記ダイナモメータの推定速度を算出する推定速度算出過程と、
前記推定速度と前記ダイナモメータの実速度の速度偏差から出力するトルクを算出するトルク偏差算出過程と、を備える
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8記載の試験装置の制御方法において、
前記トルク推定過程は、対象の慣性を疑似する疑似トルクを推定する
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9記載の試験装置の制御方法において、
前記疑似トルクは、供試体とダイナモメータを含む系の定格、或いはダイナモメータの定格によって推定される
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【請求項12】
請求項9記載の試験装置の制御方法において、
前記対象の慣性量は、変化可能とする
ことを特徴とする試験装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−43940(P2010−43940A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208066(P2008−208066)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
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