説明

動力伝達装置

【課題】ケーシングの分割面におけるリード線の噛み込みを防止することができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】2分割の分割部材3,5からなり分割面7を合わせて内部に動力伝達機構9を収容するケーシング11と、このケーシング11内に収容され動力伝達機構9の動力伝達の断続を制御する電磁石13と、この電磁石13に接続されたリード線15が挿通されケーシング11の分割面7に組み付けられてリード線15をケーシング11の外部に引き出すグロメット17とを備えた動力伝達装置1において、グロメット17に、ケーシング11の分割面7での分割部材3,5の組み付けによるリード線15の噛み込みを防止する防止手段19を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力伝達装置としては、分割部材としての第1の支持部材と第2の支持部材とからなり分割面を合わせて内部に動力伝達機構を収容するケーシングと、このケーシング内に収容され動力伝達機構の動力伝達の断続を制御する電磁石と、この電磁石に接続されたリード線が挿通されケーシングの分割面に組み付けられてリード線をケーシングの外部に引き出すグロメットとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この動力伝達装置では、グロメットを介してケーシングの外部に引き出されたリード線が電磁石の通電を制御するコントローラなどの制御手段に接続されており、電磁石への通電を制御することによって動力伝達機構の動力伝達の断続を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−48767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような動力伝達装置では、グロメットが分割部材を組み付けることによってケーシングの分割面に配置されることになるが、分割部材の組み付け前の状態ではグロメットに挿通されたリード線がグロメットに対して固定されておらず、グロメット内をリード線が移動可能となっている。
【0006】
このため、分割部材の組み付け前の状態では、グロメットのケーシング内部側に向けて余分にリード線が引き出されてしまうことがあり、この余分に引き出されたリード線が分割部材の分割面に位置してしまうことがあった。
【0007】
このようにリード線がケーシングの分割面に位置してしまうと、分割部材の組み付けの際にリード線を噛み込んでしまい、リード線が破断してしまう可能性があった。加えて、分割部材を分割面で正常に組み付けることができない恐れもあった。
【0008】
そこで、この発明は、ケーシングの分割面におけるリード線の噛み込みを防止することができる動力伝達装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも2分割の分割部材からなり分割面を合わせて内部に動力伝達機構を収容するケーシングと、このケーシング内に収容され前記動力伝達機構の動力伝達の断続を制御する電磁石と、この電磁石に接続されたリード線が挿通され前記ケーシングの分割面に組み付けられて前記リード線を前記ケーシングの外部に引き出すグロメットとを備えた動力伝達装置であって、前記電磁石と前記グロメットとのうち少なくとも一方には、前記ケーシングの分割面での前記分割部材の組み付けによる前記リード線の噛み込みを防止する防止手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この動力伝達装置では、電磁石とグロメットとのうち少なくとも一方にケーシングの分割面での分割部材の組み付けによるリード線の噛み込みを防止する防止手段が設けられているので、ケーシングの分割面におけるリード線の噛み込みを防止でき、リード線の損傷を防止できると共に、分割部材を分割面で正常に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケーシングの分割面におけるリード線の噛み込みを防止することができる動力伝達装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の防止手段の他例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図4を用いて本発明の実施の形態に係る動力伝達装置について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1,図2を用いて第1実施形態について説明する。
【0015】
本実施の形態に係る動力伝達装置1は、2分割の分割部材3,5からなり分割面7を合わせて内部に動力伝達機構9を収容するケーシング11と、このケーシング11内に収容され動力伝達機構9の動力伝達の断続を制御する電磁石13と、この電磁石13に接続されたリード線15が挿通されケーシング11の分割面7に組み付けられてリード線15をケーシング11の外部に引き出すグロメット17とを備えている。
【0016】
そして、グロメット17には、ケーシング11の分割面7での分割部材3,5の組み付けによるリード線15の噛み込みを防止する防止手段19が設けられている。
【0017】
また、防止手段19は、リード線15をケーシング11の分割面7から遠ざける隔離部21を有する。
【0018】
さらに、隔離部21は、ケーシング11の内面23よりも内部側に突出する突出部25を有する。
【0019】
図1に示すように、ケーシング11は、2つの分割部材3,5からなる。これらの分割部材3,5は、分割面7で組み付けられ、ボルトなどの固定手段(不図示)によって固定される。このケーシング11の内部には、動力伝達機構9が収容されている。
【0020】
動力伝達機構9は、外側回転部材27と、内側回転部材29と、メインクラッチ31と、操作機構33などから構成されている。外側回転部材27は、ベアリング35を介してケーシング11に回転可能に支持され、ハウジング37と、ロータハウジング39とから構成されている。
【0021】
ハウジング37は、有底の筒状に形成されている。また、ハウジング37の底壁部41には、スタッドボルトなどの連結部材(不図示)が固定され、この連結部材を介して入出力部材のうちいずれか一方の回転部材(不図示)が外側回転部材27と一体回転可能に連結される。また、ハウジング37とケーシング11との径方向間にはケーシング11の内部と外部とを区画するシール部材43が設けられると共に、ハウジング37の外周にはシール部材43を飛び石や粉塵などから保護するダストカバー45が設けられている。また、ハウジング37の底壁部41には、外側回転部材27内に潤滑油を流入させる注入孔47が設けられ、潤滑油を注入させた後、蓋部材49によって閉塞される。また、ハウジング37の筒状の内周には、スプライン形状の係合部51が形成され、メインクラッチ31の外側クラッチ板が係合されている。また、係合部51と軸方向に隣り合うハウジング37の端部には、凹凸形状の形状の係合部53が形成され、パイロットクラッチ73の外側プレートが係合されている。このハウジング37の端部側の外周には、スプライン形状の連結部55が設けられ、ロータハウジング39が一体回転可能に連結されている。
【0022】
ロータハウジング39は、磁性材料からなり、連結部55にスプライン連結されると共に、ハウジング37に設けられた凸状部57と端部が当接することによって軸方向位置が位置決めされ、溶接などの固定手段によってハウジング37と一体回転可能に固定される。また、ロータハウジング39とハウジング37との径方向間には、外側回転部材27の内部を外部から区画するシール手段としてのOリング59が設けられている。このロータハウジング39は、電磁石13の周囲を覆うように配置され、電磁石13のコア95との径方向間に微小隙間を持って対向するエアギャップが設けられており、電磁石13のコア95からロータハウジング39への磁束の受け渡しが可能となっている。このような外側回転部材27の回転軸心部には、内側回転部材29が外側回転部材27と相対回転可能に配置されている。
【0023】
内側回転部材29は、中空状に形成され、外周でベアリング61、摺動ブッシュ63、Xリング65を介して外側回転部材27に回転可能に支持されている。なお、Xリング65は、外側回転部材27の内部に潤滑油を封入した後、外部に対して区画するシール手段となっている。また、内側回転部材29の外周には、スプライン形状の係合部67が形成され、メインクラッチ31の内側クラッチ板と、プレッシャリング79とが係合されている。また、内側回転部材29の軸心側の中央部には、区画壁69が内側回転部材29と連続する一部材で設けられ、外側回転部材27の内部と外部とを区画している。この内側回転部材29の内周には、スプライン形状の連結部71が形成され、入出力部材のうち他方の回転部材(不図示)が内側回転部材29と一体回転可能に連結される。このような内側回転部材29と外側回転部材27との間に伝達される駆動トルクは、メインクラッチ31によって断続される。
【0024】
メインクラッチ31は、複数の外側クラッチ板と、複数の内側クラッチ板とを備えている。複数の外側クラッチ板は、ハウジング37の内周に形成された係合部51に軸方向移動可能で外側回転部材27と一体回転可能に係合されている。複数の内側クラッチ板は、複数の外側クラッチ板に対して軸方向に交互に配置され、内側回転部材29の外周に形成された係合部67に軸方向移動可能で内側回転部材29と一体回転可能に係合されている。このメインクラッチ31は、複数の外側クラッチ板と複数の内側クラッチ板とで構成された多板クラッチであり、滑り摩擦を伴い伝達トルクを中間制御可能な制御型の摩擦クラッチとなっている。このメインクラッチ31は、操作機構33によって作動され、外側回転部材27と内側回転部材29との間に伝達される駆動トルクを断続する。
【0025】
操作機構33は、パイロットクラッチ73と、アーマチャ75と、カムリング77と、プレッシャリング79と、カム機構81とから構成されている。パイロットクラッチ73は、外側回転部材27内でロータハウジング39とアーマチャ75との軸方向間に配置され、ハウジング37の係合部53に軸方向移動可能で外側回転部材27と一体回転可能に連結する複数の外側プレートと、カムリング77の外周に複数の外側プレートに対して軸方向間に交互に配置され軸方向移動可能でカムリング77と一体回転可能に連結する複数の内側プレートとで構成されている。このパイロットクラッチ73は、アーマチャ75が電磁石13の励磁によって吸引移動されることにより接続される。
【0026】
アーマチャ75は、磁性材料からなり、外側回転部材27内に軸方向移動可能に軸方向にパイロットクラッチ73を挟んでロータハウジング39と対向配置されている。このアーマチャ75は、電磁石13が励磁されたときに形成される磁束ループによって電磁石13側に吸引移動され、パイロットクラッチ73を接続させる。
【0027】
カムリング77は、内側回転部材29の外周に軸方向移動可能に配置され、パイロットクラッチ73の複数の内側プレートが一体回転可能に連結されている。このカムリング77とロータハウジング39の軸方向間には、カム機構81で生じるスラスト反力を受けるスラストベアリング83が配置されている。
【0028】
プレッシャリング79は、内側回転部材29の係合部67に軸方向移動可能で内側回転部材29と一体回転可能に配置されている。また、プレッシャリング79のメインクラッチ31側に形成された凹部85には、C型ワッシャなどの固定部材87によって軸方向位置が固定され、プレッシャリング79をメインクラッチ31の接続解除方向に付勢するリターンスプリング89が配置されている。このプレッシャリング79は、カム機構81で生じるスラスト力によってリターンスプリング89の付勢力に抗してメインクラッチ31の接続方向に軸方向移動され、メインクラッチ31に押圧力を付与して接続させる。
【0029】
カム機構81は、カムリング77とプレッシャリング79とに周方向に形成されたカム面を対向させ、この間に介在させたカムボール(不図示)を備えている。このカム機構81は、パイロットクラッチ73の接続によってカムリング77とプレッシャリング79との間に差回転が生じることにより、パイロットクラッチ73に生じる摩擦トルクに応じた強さでプレッシャリング79をメインクラッチ31側へ軸方向押圧移動させるカムスラスト力を発生させる。
【0030】
このような動力伝達機構9は、外側回転部材27と内側回転部材29との間の動力伝達がメインクラッチ31によって断続され、このメインクラッチ31が電磁石13によって制御可能に作動される。
【0031】
電磁石13は、ケーシング11内に収容され、ロータハウジング39内でベアリング91を介して外側回転部材27の外部に配置され、電磁コイル93とコア95とを備えている。電磁コイル93は、合成樹脂などの絶縁部材97によってモールド成形され、コア95の内部に配置されている。コア95は、磁性材料からなり、電磁コイル93とロータハウジング39との径方向間に配置されてロータハウジング39と共に磁束を透過して磁束ループを形成させる。このコア95には、絶縁部材97が外側回転部材27の外部に突出するように配置されており、この絶縁部材97を介してリード線15が電磁コイル93に接続されている。このリード線15は、ケーシング11の外部に配置された通電を制御するコントローラ(不図示)に接続されており、コントローラによる制御によってメインクラッチ31で必要な摩擦トルクを生じさせるように電磁コイル93に通電される。なお、図1に示すリード線15は、1本のように記載されているが、実際にはリード線15の裏側に同様のリード線があり、2本で一対のリード線となっている。
【0032】
この電磁石13への通電により、コア95、ロータハウジング39、パイロットクラッチ73、アーマチャ75を介した磁力線が循環されて磁束ループが形成され、アーマチャ75が電磁石13側に吸引移動されてパイロットクラッチ73が締結される。このパイロットクラッチ73の締結トルクは、カムリング77とカム機構81とプレッシャリング79とを介して軸方向推力に変換され、プレッシャリング79がメインクラッチ31を押圧してメインクラッチ31が接続される。このメインクラッチ31の接続により、外側回転部材27と内側回転部材29とが接続されて入出力部材間の駆動トルクの伝達が可能となる。
【0033】
このような電磁石13とコントローラとを接続するリード線15は、グロメット17を介してケーシング11の外部に引き出されている。グロメット17は、ゴム材料などのシール性を有する弾性部材からなり、ケーシング11の分割面7に組み付けられ、挿通部99と固定部101とを備えている。挿通部99は、グロメット17の中央部に厚さ方向に貫通して設けられ、リード線15が挿通されてリード線15に密着される。固定部101は、グロメット17の外周の周方向に凹状に設けられ、分割部材3,5を組み合わせる際に、ケーシング11の分割面7で分割部材3,5に狭持されるように固定される。このような固定部101の固定の際に、リード線15は、グロメット17に対して固定されておらず、挿通部99のケーシング11内部側からケーシング11の内部に向けてリード線15が余分に引き出されてしまうことがある。そこで、グロメット17には、余分に引き出されたリード線15がケーシング11の分割面7で分割部材3,5の組み付けによって噛み込まれることを防止する防止手段19が設けられている。
【0034】
防止手段19は、リード線15をケーシング11の分割面7から遠ざける隔離部21を有する。この隔離部21は、ケーシング11の内面23よりも内部側に突出する突出部25を有する。この突出部25は、グロメット17の挿通部99からケーシング11の内部側に向けてリード線15が余分に引き出されてしまった場合、リード線15と当接してリード線15がケーシング11の分割面7に位置されることを防止する。この防止手段19により、ケーシング11の内部側に余分にリード線15が引き出されてしまったとしても、リード線15がケーシング11の分割面7に位置することがなく、分割部材3,5の組み付けによってリード線15が噛み込まれることがない。
【0035】
なお、リード線15の分割部材3,5の組み付けによる噛み込みを防止する防止手段としては、例えば、図2(a),(b)に示すような防止手段19a,19bとしてもよい。防止手段19aは、隔離部21aが固定部101よりも細く形成され、突出部25aがケーシング11の内面23よりも内部側に突出している。この防止手段19aでは、突出部25aの先端側の側面からリード線15をケーシング11の内部に引き出すことにより、ケーシング11の分割面7にリード線15が位置することを防止している。防止手段19bは、隔離部21bが固定部101側から徐々に細くなるように形成され、突出部25bがケーシング11の内面23よりも内部側に突出されて先端側がリード線15の引き出し方向に屈曲されている。この防止手段19bでは、隔離部21b及び突出部25bによってリード線15の引き出し方向を案内することにより、ケーシング11の分割面7にリード線15が位置することを防止している。
【0036】
このような防止手段19により、ケーシング11の分割面7にリード線15が位置することが防止され、分割部材3,5が組み付けられてグロメット17がケーシング11の分割面7に配置される。このグロメット17の挿通部99からケーシング11の外部側に引き出されたリード線15には、合成樹脂などの絶縁材料からなる蛇腹部材103が挿通され、端部にコントローラ側に接続されるコネクタ105が接続される。なお、蛇腹部材103及びコネクタ105には、車体パネルなどに固定されるクリップ107,109が設けられている。そして、グロメット17と蛇腹部材103との間に、耐熱テープ111を巻くことによってリード線15のグロメット17に対する移動が規制されると共に、グロメット17の挿通部99からケーシング11内部への水などの侵入が防止される。
【0037】
このような動力伝達装置1では、グロメット17にケーシング11の分割面7での分割部材3,5の組み付けによるリード線15の噛み込みを防止する防止手段19が設けられているので、ケーシング11の分割面7におけるリード線15の噛み込みを防止でき、リード線15の損傷を防止できると共に、分割部材3,5を分割面7で正常に組み付けることができる。
【0038】
また、防止手段19は、リード線15をケーシング11の分割面7から遠ざける隔離部21を有するので、リード線15がケーシング11の内部に余分に引き出されたとしても、リード線15がケーシング11の分割面7に近づくことができず、リード線15がケーシング11の分割面7に位置することを防止することができる。
【0039】
さらに、隔離部21は、ケーシング11の内面23よりも内部側に突出する突出部25を有するので、突出部25によってリード線15がケーシング11の内面23に移動することを防止でき、リード線15がケーシング11の分割面7に位置することがない。このため、ケーシング11の分割面7におけるリード線15の噛み込みを確実に防止することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図3を用いて第1実施形態について説明する。
【0041】
本実施の形態に係る動力伝達装置201は、防止手段203は電磁石13に設けられ、隔離部205は、リード線15を挿通する絶縁部材97からなり、ケーシング11の分割面7からグロメット17のリード線15の挿通部99に向けて突出する突出部207を有する。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0042】
図3に示すように、防止手段203は、電磁石13の電磁コイル93をモールドする絶縁部材97に設けられている。この絶縁部材97は、リード線15をケーシング11の分割面7から遠ざける隔離部205を有する。この隔離部205は、ケーシング11の分割面7からグロメット17のリード線15の挿通部99に向けて突出する突出部207を有する。この突出部207は、グロメット17の挿通部99からケーシング11の内部側に向けてリード線15が余分に引き出されてしまった場合、突出部207の先端が分割面7よりも挿通部99側に突出しているので、リード線15がケーシング11の分割面7側に移動することができず、リード線15がケーシング11の分割面7に位置されることを防止する。この防止手段203により、ケーシング11の内部側に余分にリード線15が引き出されてしまったとしても、リード線15がケーシング11の分割面7に位置することがなく、分割部材3,5の組み付けによってリード線15が噛み込まれることがない。
【0043】
このような動力伝達装置201では、防止手段203が電磁石13に設けられ、隔離部205がリード線15を挿通する絶縁部材97からなり、ケーシング11の分割面7からグロメット17のリード線15の挿通部99に向けて突出する突出部207を有するので、突出部207によってリード線15がケーシング11の分割面7側に移動することがなく、リード線15がケーシング11の分割面7に位置することがない。このため、ケーシング11の分割面7におけるリード線15の噛み込みを確実に防止することができる。
【0044】
なお、本発明の実施の形態に係る動力伝達装置では、分割部材3,5の組み付け後にグロメット17と蛇腹部材103との間に耐熱テープ111を巻いてリード線15の移動を規制しているが、例えば、図4に示す動力伝達装置301のように、分割部材3,5を組み付ける前にグロメット17と蛇腹部材103との間に耐熱テープ305を巻くことにより、リード線15のグロメット17に対する移動を規制する。この場合には、耐熱テープ305によってリード線15がケーシング11の分割面7に位置されることがなく、分割部材3,5の組み付けによるリード線15の噛み込みが防止されるので、耐熱テープ305が防止手段303となる。
【0045】
また、ケーシングが2分割の分割部材で構成されているが、これに限らず、3分割以上の分割部材の分割面にグロメットを配置させる構成において、本発明の防止手段を適用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1,201,301…動力伝達装置
3,5…分割部材
7…分割面
9…動力伝達機構
11…ケーシング
13…電磁石
15…リード線
17…グロメット
19,19a,19b,203,303…防止手段
21,21a,21b,205…隔離部
23…ケーシングの内面
25,25a,25b,207…突出部
99…挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2分割の分割部材からなり分割面を合わせて内部に動力伝達機構を収容するケーシングと、このケーシング内に収容され前記動力伝達機構の動力伝達の断続を制御する電磁石と、この電磁石に接続されたリード線が挿通され前記ケーシングの分割面に組み付けられて前記リード線を前記ケーシングの外部に引き出すグロメットとを備えた動力伝達装置であって、
前記電磁石と前記グロメットとのうち少なくとも一方には、前記ケーシングの分割面での前記分割部材の組み付けによる前記リード線の噛み込みを防止する防止手段が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達装置であって、
前記防止手段は、前記リード線を前記ケーシングの分割面から遠ざける隔離部を有することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達装置であって、
前記防止手段は前記グロメットに設けられ、前記隔離部は、前記ケーシングの内面よりも内部側に突出する突出部を有することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項2記載の動力伝達装置であって、
前記防止手段は前記電磁石に設けられ、前記隔離部は、前記リード線を挿通する絶縁部材からなり、前記ケーシングの分割面から前記グロメットのリード線の挿通部に向けて突出する突出部を有することを特徴とする動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172771(P2012−172771A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35804(P2011−35804)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】