説明

動圧軸受モータを備えたスピンスタンドおよびヘッド/ディスク試験装置

本発明は、小型軽量化され低価格なヘッド/ディスク試験装置を提供するためになされたものである。本発明のスピンスタンドは、磁気ヘッドを着脱可能に支持するスピンスタンドであって、前記磁気ヘッドの着脱時においても回転を継続する動圧軸受モータを備えることを特徴とするものである。また、本発明のスピンスタンドは、動圧軸受モータと、該動圧軸受モータの回転により生じる逆起電力の変化または磁束密度の変化を検出しインデックス信号を生成する手段とを備えることを特徴とするものである。さらに、本発明のスピンスタンドは、動圧軸受モータを備えるスピンスタンドであって、前記動圧軸受モータの軸受には導電性流体が封入され、前記軸受が接地されることを特徴とするものである。またさらに、本発明のヘッド/ディスク試験装置は、上記のいずれかのスピンスタンドを備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヘッド/ディスク試験装置に係り、特に小型軽量で安価なヘッド/ディスク試験装置に関する。
【背景技術】
ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive;HDD)の主要部品である磁気ヘッドや磁気ディスクは、ヘッド/ディスク試験装置などにより検査される。なお、磁気ヘッドとは、ヘッド・ジンバル・アセンブリ(Head Gimbals Assembly;HGA)がその先端部分で支持するヘッドスライダに具備される磁気再生素子と磁気記録素子を総称したものである。以降、磁気ヘッドおよび磁気ディスクは、単にヘッドおよびディスクと称する。ヘッド/ディスク試験装置は、HGA、または、複数のHGAを備えるヘッド・スタック・アセンブリ(Head Stack Assembly;HSA)を被測定対象物とし、ヘッドの特性を試験する装置である。
ヘッド/ディスク試験装置は、主にスピンスタンドと電気信号測定装置とそれらを制御する制御装置とを備える。スピンスタンドは、ディスク回転装置とヘッド位置決め装置とを備え、高速回転するディスク上にヘッドを位置決めする。このようなスピンスタンドの基本原理については、例えば、特開平6−150269号公報(図2B)、および、特開2000−187821号公報(図1,図12)により開示されている。代表的なスピンスタンドは、Agilent Technologies社のE5013B、キヤノン社のRS−5220U、および、Guzik Technical Enterprises社のS1701Bなどである。これらの製品は、ディスク回転装置にエアーベアリング・スピンドルモータを、ヘッド位置決め装置にボールネジ、リニアモータ、サーボモータまたはピエゾ素子などの駆動源を用いている。さらに、これらの製品は、エアーベアリング等のために空気圧回路を備えている。このようなスピンスタンドの基本構造については、特表2002−518777号公報(図1)、および、「アジレントテクノロジーズ E5022A/BおよびE5023Aハードディスク・リード/ライト・テストシステム オペレーション・マニュアル 第18版(Agilent Technologies E5022A/B and E5023A Hard Disk Read/Write Test System Operation Manual 18th Edition)」,アジレントテクノロジーズ・インク,2001年6月,p.17−33、などにより開示されている。
例えば、E5013Bの物理的寸法は、空気圧回路を含む時、幅60cm奥行き78cm高さ102cmである。また、その重さは150kgである。他のスピンスタンドの物理的仕様も、E5013Aとほぼ同程度である。例えば、ヘッドの製造試験は、工場内に多数設置されたヘッド/ディスク試験装置を使用して行われる。従って、ヘッドの製造工場には、ヘッド/ディスク試験装置を設置するための堅牢で広い床が必要とされる。また、スピンスタンド単体だけでも、その価格は数百万円にも及ぶ。記憶容量の増大およびシークタイムの短縮などHDDの性能は向上し続けており、ヘッド/ディスク試験装置に要求される性能も向上し続けている。このため、ヘッド/ディスク試験装置の更新費用も高くなっている。一方、被測定物であるヘッドの市場価格は、極めて安い。従って、ヘッド試験に伴う費用の低減は、ヘッド製造会社にとって極めて重要な課題となっている。
【発明の開示】
本発明は、上記の課題を解決するために、スピンスタンドおよびヘッド/ディスク試験装置を飛躍的に小型化・軽量化し、低価格化することを目的とするものである。
本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであり、以下の通りである。
すなわち、本第一の発明は、スピンスタンドであって、磁気ディスクを回転させるディスク回転手段と、磁気ヘッドを着脱可能に支持し前記磁気ヘッドを少なくとも前記ディスクのトラック幅方向に移動させるヘッド移動手段とを備え、該ヘッド移動手段は、微小可動範囲内で高精度の位置決めが可能な微細位置決め手段と、該微細位置決め手段の微小可動範囲を所定の離散位置に設定する離散位置決め手段とを具備することを特徴とするものである。
また、本第二の発明は、本第一の発明のスピンスタンドにおいて、前記離散位置決め手段が、1つの回転機構を有し、前記磁気ディスク面上と前記磁気ディスク外との間の磁気ヘッドの移動と、前記ディスク面上における前記ヘッドに所定のスキュー角を与えることとを、ともに実現できるようにしたことを特徴とするものである。
さらに、本第三の発明は、本第一の発明または本第二の発明のスピンスタンドにおいて、前記離散位置が、前記磁気ヘッドを着脱するための、前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクから離れた位置を含むことを特徴とするものである。
またさらに、本第四の発明は、本第一の発明乃至本第三の発明のいずれかのスピンスタンドにおいて、前記離散位置決め手段が、駆動手段と、前記駆動手段により駆動される可動台を前記離散位置で制動または固定する手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本第五の発明は、本第一の発明乃至本第三の発明のいずれかのスピンスタンドにおいて、前記離散位置決め手段が、駆動手段と、前記駆動手段により駆動される可動台を前記離散位置に導き固定する手段とを備えることを特徴とするものである。
さらに、本第六の発明は、本第一の発明乃至本第五の発明のいずれかのスピンスタンドにおいて、前記ディスク回転手段が前記磁気ディスクの一面側にあり、前記位置決め手段が前記磁気ディスクの他面側にあり、前記磁気ヘッドが前記磁気ディスクの他面側に位置決めされることを特徴とするものである。
またさらに、本第七の発明は、本第六の発明のスピンスタンドにおいて、前記磁気ヘッドが前記位置決め手段の真上で支持されることを特徴とするものである。
また、本第八の発明は、本第一の発明乃至本第七の発明のいずれかのスピンスタンドにおいて、前記微細位置決め手段はピエゾステージを備え、前記磁気ヘッドのギャップ中心が前記ピエゾステージの中心軸に近接するように、前記磁気ヘッドが前記ピエゾステージに支持されることを特徴とするものである。
さらに、本第九の発明は、本第一の発明乃至本第八の発明のいずれかのスピンスタンドにおいて、前記微細位置決め手段はピエゾステージを備え、前記ヘッドを含む前記ピエゾステージの位置決め対象物の重心が前記ピエゾステージの支持中心点に近接するように、前記位置決め対象物が前記ピエゾステージに支持されることを特徴とするものである。
またさらに、本第十の発明は、本第一の発明乃至本第九の発明のいずれかのスピンスタンドにおいて、前記微細位置決め手段がピエゾステージを備え、トラックを書き込む時における前記ピエゾステージのステージの位置は、該ステージの可動範囲の中心からオフセットした位置であることを特徴とするものである。
また、本第十一の発明は、磁気ヘッドを着脱可能に支持するスピンスタンドであって、前記磁気ヘッドの着脱時においても回転を継続する動圧軸受モータを備えることを特徴とするものである。
さらに、本第十二の発明は、スピンスタンドであって、動圧軸受モータと、該動圧軸受モータの回転により生じる逆起電力の変化または磁束密度の変化を検出しインデックス信号を生成する手段とを備えることを特徴とするものである。
またさらに、本第十三の発明は、動圧軸受モータを備えるスピンスタンドであって、前記動圧軸受モータの軸受には導電性流体が封入され、前記軸受が接地されることを特徴とするものである。
また、本第十四の発明は、本第一の発明乃至本第十三の発明のいずれかのスピンスタンドが、防振用ゲルを備えた弦巻バネによって支持されることを特徴とするものである。
さらに、本第十五の発明は、ヘッド/ディスク試験装置であって、本第一の発明乃至本第十四の発明のいずれかのスピンスタンドを備えることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
図1(Fig.1)は、本発明の実施形態であるヘッド/ディスク試験装置10の斜視図である。
図2(Fig.2)は、カセット800の斜視図である。
図3(Fig.3)は、ピエゾステージ610とヘッドスライダ510の上面図である。
図4(Fig.4)は、ディスク550上のトラックTとヘッドスライダ510の磁気再生素子RDおよび磁気記録素子WRとの位置関係を示す図である。
図5(Fig.5)は、ディスク550上のトラックTとヘッドスライダ510およびヘッドスライダ511との位置関係を示す図である。
図6(Fig.6)は、ピエゾステージ610とヘッドスライダ510の上面図である。
図7(Fig.7)は、離散位置決め装置700を示す図である。
図8(Fig.8)は、離散位置決め装置700の一部を拡大した図である。
図9(Fig.9)は、離散位置決め装置700を簡略表示した上面図である。
図10(Fig.10)は、離散位置決め装置700を簡略表示した上面図である。
図11(Fig.11)は、離散位置決め装置700を簡略表示した上面図である。
図12(Fig.12)は、離散位置決め装置700を簡略表示した上面図である。
図13(Fig.13)は、離散位置決め装置700を簡略表示した上面図である。
図14(Fig.14)は、離散位置決め装置800を簡略表示した上面図である。
図15(Fig.15)は、離散位置決め装置800を簡略表示した上面図である。
図16(Fig.16)は、離散位置決め装置800を簡略表示した上面図である。
図17(Fig.17)は、離散位置決め装置800を簡略表示した上面図である。
図18(Fig.18)は、離散位置決め装置800を簡略表示した上面図である。
図19(Fig.19)は、スピンスタンド1000の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明を、添付の図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。本発明の実施形態は、ヘッドおよびディスクの少なくとも一方を試験するヘッド/ディスク試験装置である。図1において、本実施形態のヘッド/ディスク試験装置10は、スピンスタンド100と、電気信号測定装置110と、制御装置120とを備える。電気信号測定装置110は、HGA500と電気的に接続され、HGA500に具備されるヘッド(不図示)の特性を測定する装置である。制御装置120は、スピンスタンド100および電気信号測定装置110の動作を制御する装置である。スピンスタンド100は、ベース200とディスク回転装置300と位置決め装置400とを備える。
ベース200は、鋳造されたアルミニウム台であって、平面部210とブリッジ部220とを有する。ブリッジ部220は、ディスク回転装置300をぶら下げて支持するスピンドルプレート221と、平面部210から直立しスピンドルプレート221を支えるプレートポスト222とを備える。スピンドルプレート221は、プレートポスト222と着脱可能なようにネジ止めされている。また、ベース200は底面の四隅にベース200を支える足230を有している。足230は、両端に円盤形の金属板を具備する弦巻バネであって、さらに弦巻バネの内側空間に防振用ゲルを備えている。防振用ゲルは、円柱または角柱の形をなす。防振用ゲルの両端は、弦巻バネと同様に円盤形の金属板に接続されている。防振用ゲルは、例えばシリコンゴムやソフトエストラマなどであって、共振周波数の遮断周波数を低くする効果を奏する。その結果、足230は、工場内の機器等からの外来振動を広い周波数範囲で吸収する。防振用ゲルは、耐荷重が小さい。後述の通りスピンスタンド100全体の質量を従来に比べて極めて軽くするので、そのような防振用ゲルをスピンスタンド100に適用できるようになる。
ディスク回転装置300は、流体動圧軸受モータ310とインデックス信号発生器IDX(図示せず)とを備え、ディスク550を固定された一方向に回転させる。また、ディスク回転装置300は、ディスク550を4200rpm、5400rpm、および、7200rpmで回転させる事ができる。さらに、これらの中間的な速度も25rpmの分解能で実現可能である。なお、これらの回転速度や分解能は例示的に列挙するものであって、ディスク回転装置300の回転速度や分解能を限定するものではない。流体動圧軸受モータ310は、従来使用していた空気静圧軸受モータに比べて、同一剛性を実現しながら小型軽量化する事ができる。その結果、モータの体積および重量は約1/40になる。なお、ディスク回転装置300は、流体動圧軸受モータ310を使用するために、一旦ディスク550を回転させた後は、その回転を停止しない。従来のヘッド/ディスク試験装置は、ヘッドを交換する毎、すなわち、HGAを交換する毎にディスクの回転を止めていた。一方、ディスク回転装置300は、HGA500を着脱する場合であっても、ディスク550の回転を継続する。HGA500の着脱は、HGA500の交換はもちろんのこと、HGA500の付け直しなども含む。流体動圧軸受モータ310は、約10万回の起動および停止が保証されている。しかし、ヘッド/ディスク試験装置10は、1年間に少なくとも100万個以上のHGA500を検査できることが要求される。例えば、HGA500を交換する毎に流体動圧軸受モータ310を起動および停止すると、ヘッド/ディスク試験装置10の寿命は1ヶ月程度となる。そのようなヘッド/ディスク試験装置は、試験装置として不適当である。そこで、ヘッド/ディスク試験装置10は、HGA500の着脱に関わらずディスク550の回転を継続する。これにより、流体動圧軸受モータ310の軸接触が回避され、流体動圧軸受モータ310の寿命が長くなる。その結果、流体動圧軸受モータ310をディスク回転装置300に適用できるようになった。また、HGA500の着脱に関わらずディスク550の回転を継続するので、流体動圧軸受モータ310が所望の回転速度に至るまでに要する時間を気にする必要がなくなる。従って、流体動圧軸受モータ310に要求される起動トルクを小さく抑える事ができ、流体動圧軸受モータ310が小型化される。また、流体動圧軸受モータ310の軸受に封入する流体を導電性流体とし、さらに流体動圧軸受モータ310の軸受を接地するので、回転軸を接地するためのグランドコンタクト装置が不要になり、ディスク回転装置300を小型軽量化する事ができる。グランドコンタクト装置から発生する振動がなくなるので、試験時に発生する機械的ノイズも小さくなる。
ところで、流体動圧軸受モータ310は、従来使用していた空気静圧軸受モータと異なり、その回転軸が片方向にしか突出していない。図1において、流体動圧軸受モータ310の回転軸(不図示)は下方を向き、その突出部分でディスク550を支持している。また、その突出する回転軸の長さは、軸剛性を低下させないように極僅かしかない。従って、従来、インデックス信号を生成するために使用していたロータリーエンコーダは、流体動圧軸受モータ310に取り付ける事ができない。ヘッド/ディスク試験装置10で用いるインデックス信号は、HDDやフロピティカルディスクドライブ等のようにモータの回転軸の絶対角度に対応している必要はなく、モータの回転軸の1回転(1周期)を正確に知らせるものであれば良い。そこで、インデックス信号発生器IDXは、流体動圧軸受モータ310の電機子(図示せず)に生じる逆起電力を検出してパルス信号を生成する。さらに、インデックス信号発生器IDXは、そのパルス信号を分周する事により流体動圧軸受モータ310の回転軸の1回転毎に1パルスが発生するようなインデックス信号を生成する。パルス信号は、流体動圧軸受モータ310の電機子(図示せず)に生じる逆起電力信号と流体動圧軸受モータ310の電機子(図示せず)のある1相の信号とを比較器(不図示)で比較して2値化すると得られる。流体動圧軸受モータの制御回路からFG信号が出力されていれば、その信号をパルス信号の生成に利用しても良い。もちろん、ディスクと共に従来のエンコーダをモータの外部に取り付けることは可能である。しかし、付加的な構成要素を要するので、スピンスタンドの大きさが増す可能性が高い。
位置決め装置400は、HGA500に具備されるヘッドスライダ510を所定の位置へ位置決めする装置である。位置決め装置400は、微細位置決め装置600と離散位置決め装置700とを備える。HGA500は、カセット800に取り付けられている。カセット800は、微細位置決め装置600と着脱可能な構造を有する。ここで、カセット800の拡大図を図2に示す。カセット800は、カセットプレート810と、HGA500を支持するためのマウンティングブロック820とを備えている。HGA500は、マウンティングブロック820に着脱可能に支持される。
図1において、微細位置決め装置600は、HGA500を微小可動範囲内で高精度に位置決めする装置であって、ピエゾステージ610を備える。微細位置決め装置600は、ディスク550の面上においてヘッドスライダ510をディスク550のトラック幅方向(ディスク550の放射方向に同じ)、または、ディスク550のトラック幅方向を含む方向に位置決めすることができる。ここで、ピエゾステージ610およびHGA500の上面図を図3に示す。図3において、HGA500に具備されるヘッドスライダ510は、磁気再生素子RDおよび磁気記録素子WRを備える。ピエゾステージ610は、ステージ611と、ピエゾ素子612と、キャパシタンスセンサ613と、バネ614とを備える。ステージ611は、可動台であって、カセット800などの位置決め対象物が連結される。ステージ611は、図示しない支持手段を介してHGA500を支持する。図示しない支持手段には、図2に示したカセット800が含まれる。ステージ611の可動方向は、ピエゾステージ610の位置決め方向である。キャパシタンスセンサ613は、ステージ611の移動量を検知するセンサである。ピエゾ素子612は、印加電圧によって伸長する素子であって、ステージ611を動かす駆動源である。ピエゾ素子612は、キャパシタンスセンサ613により検知される実際の伸長量に基づきフィードバック制御される。
ここで、ディスク400上のトラックと、磁気再生素子RDおよび磁気記録素子WRとの位置関係を、図4に示す。磁気再生素子RDのギャップ中心点Grは、磁気記録素子WRがディスク550上に書き込んだトラックTの中央線Lc上に位置決めされ、さらに、その位置から内周方向および外周方向にそれぞれ2トラック以上移動できる事が要求される。従来のヘッド/ディスク試験装置は、トラックをディスクに書き込む時に、ピエゾステージのステージをステージの可動範囲の中心に位置決めする。この場合、ピエゾステージのステージの可動量は、試験において要求される可動量の2倍以上である必要があった。一方、ヘッド/ディスク試験装置10は、トラックTを書き込む時に、必要とされる可動量及び可動方向に応じて、ピエゾステージ610のステージ611をステージ611の可動範囲の中心位置からオフセントした位置に位置決めする。これにより、ヘッド/ディスク試験装置10は、ステージ611に要求される可動量を必要最小限にしている。その結果、ピエゾ素子612は小型のものが使用でき、微細位置決め装置600は小型化される。
例えば、トラックプロファイル測定は、そのような効果が顕著に現れる測定項目の1つである。トラックプロファイル測定は、ディスク550にヘッドスライダ510の磁気記録素子でトラックを書き込み、その後、書き込んだトラックの磁気強度分布をヘッドスライダ510の磁気再生素子で測定する。ここで、ヘッドスライダ510のリード・ライト・オフセット量をf、ヘッドスライダ510のリード・ライト・セパレーション量をs、ヘッドスライダ510のスキュー角をθ、トラック・ピッチをpとする。また、磁気強度分布の測定範囲は、内周方向および外周方向にそれぞれnトラックであるとする。この時、ステージ611に要求される可動量mは、m=m1=(f・cosθ+s・sinθ+n・p/cosθ)、または、m=m2=(2・n・p/cosθ)、である。なお、(f・cosθ+s・sinθ)>(n・p/cosθ)である時、m=m1である。また、(f・cosθ+s・sinθ)≦(n・p/cosθ)である時、m=m2である。上式からも明らかであるが、ギャップ中心点Grと磁気記録素子WRのギャップ中心点Gwが同じである場合、可動量mは、m=(2・n・p/cosθ)である。
ここで、トラックプロファイル測定におけるヘッドスライダ510の動きを示した図を図5に示す。磁気強度分布の測定範囲は、内周方向および外周方向にそれぞれ2トラックであるとする。また、スキュー角θは0°とする。図5に示すヘッドスライダ510とヘッドスライダ511は、互いに鏡像となる構造を有する。ヘッドスライダ510およびヘッドスライダ511の一方はアップタイプのスライダヘッドであり、他方はダウンタイプのスライダヘッドである。ヘッドスライダ511は、ヘッドスライダ510と同様に、ピエゾステージ610の作用により位置決めされる。ヘッドスライダ510は、それぞれ異なる位置A,B,Cに位置決めされている。ヘッドスライダ510は、内部に四角形として示される磁気記録素子WRと円形として示される磁気再生素子RDとを備える。ヘッドスライダ511は、それぞれ異なる位置D、E、Fに位置決めされている。ヘッドスライダ511は、同様に内部に四角形として示される磁気記録素子WRと円形として示される磁気再生素子RDとを備える。ただし、ヘッドスライダ511は、磁気記録素子WRと磁気再生素子RDの配置がヘッドスライダ510と異なる。ヘッドスライダ510およびヘッドスライダ511において、磁気記録素子WRと磁気再生素子RDとの間隔、すなわち、リード・ライト・オフセット量をfとする。また、トラック・ピッチをpとする。ヘッドスライダ510は、位置Aにおいて磁気記録素子WRによりトラックTを書き込む。その後、ヘッドスライダ510は、磁気再生素子RDにより位置Bから位置Cまでの間を掃引しながらトラックTの磁気強度を測定する。線Lc1および線Lc2は、トラックTの中心線Lcから内周方向および外周方向にそれぞれ2トラック(2・p)ずつ離れた位置にある。また、ヘッドスライダ511は、位置Dにおいて磁気記録素子WRによりトラックTを書き込む。その後、ヘッドスライダ511は、磁気再生素子RDにより位置Eから位置Fまでの間を掃引しながらトラックTの磁気強度を測定する。従って、従来のようにトラックTを書き込む時に、ステージ611をステージ611の可動範囲の中心に位置決めすると、ステージ611の可動範囲Mは2m以上が必要である。しかし、上述のようにトラックTを書き込む時にステージ611をステージ611の可動範囲の中心位置からオフセットした位置に位置決めすれば、ステージ611の可動範囲Mはmあれば良いようになる。
ところで、ステージ611は、ピエゾ素子612に駆動される時、その姿勢が傾き、かつ、斜めの方向へ移動する。そのため、位置決め誤差が生じる。その位置決め誤差は、HGA500とピエゾステージ610とが離れているほど大きくなる。ここで、ピエゾステージ610の位置決め誤差について説明するために図6を参照する。図6は、ピエゾステージ610により理想的な方向へΔだけ移動した時のHGA500およびヘッドスライダ510と、ピエゾステージ610により斜めにΔだけ移動したヘッドスライダ510s(破線で図示)を示す図である。図6において、ステージ611は、図示しない支持手段を介してHGA500を支持する。図示しない支持手段には、図2に示したカセット800が含まれる。図6において、ヘッドスライダ510sは、その姿勢がヘッドスライダ510に比べて傾いている。点Grは、ヘッドスライダ510のギャップ中心である。点Grsは、ヘッドスライダ510sのギャップ中心である。点Cは、ステージ611の支持中心点である。なお、点Grおよび点Grsは、ヘッドのギャップ中心点、すなわち、ヘッドスライダ510の磁気記憶素子のギャップ中心点、または、ヘッドスライダ510の磁気記録素子のギャップ中心点のいずれかである。点Grおよび点Grsがいずれのギャップ中心点であるかは、試験仕様によって定められる。また、支持中心点とは、理想的な移動方向の力をステージ611に加えた場合に、そのステージ611が偏向を生じず理想的な方向へ移動できるような点である。直線αは、点Cを通り、ピエゾステージ610の理想的な位置決め方向に伸びる直線である。直線αは、ピエゾステージ610の中心軸とも称される。直線αsは、点Cを通り、ピエゾステージ610の実際の位置決め方向に伸びる直線である。直線αは、ギャップ中心点Grを通るギャップ中心線γに直交する。直線αsは、ギャップ中心点Grsを通るギャップ中心線γsに直交する。この時、ピエゾステージ610の位置決め誤差εは、ε=[(L+Δ)・(1−cosφ)+d・sinφ]、として得られる。なお、φは、直線αに対する直線αsの偏角である。Lは、支持中心点Cとギャップ中心線γとの距離である。Lは、支持中心点Cとギャップ中心線γsとの距離でもある。dは、ギャップ中心点Grと直線αとの距離である。dは、ギャップ中心点Grsと直線αsとの距離でもある。Δは、ステージの移動距離である。偏角φおよび移動量Δは微小であるので、位置決め誤差εは、ε=(d・sinφ)、として近似される。従って、ピエゾステージ610の位置決め誤差を低減するためには、dを小さくすればよい。
また、HGA500は、通常、図3や図6に示すように、ピエゾステージ610から離れた位置で支持される。そのため、ピエゾステージ610には、位置決め方向とは異なる方向の力が加わる場合がある。そして、ピエゾ素子612のフィードバック制御系に不要振動が生じる可能性がある。この不要振動は、微細位置決め装置600の位置決め精度に悪影響を及ぼす要因となる。従って、ピエゾステージ610の位置決め対象物は、その重心がピエゾステージ610の支持中心点にできるだけ近接していることが望ましい。
そこで、本実施形態のスピンスタンド100は、HGA500をピエゾステージ610にできるだけ近接させて支持している。さらに詳しく言えば、スピンスタンド100は、距離dを小さくするために、ヘッドスライダ510のギャップ中心点Grがピエゾステージ610の中心軸(直線α)に近接するようにHGA500を支持している。また、スピンスタンド100は、不要振動を小さくするために、HGA500を備えたカセット800の重心が点Cに近接するようにHGA500を支持している。
また、従来のスピンスタンドには、回転するディスクに対して、両面方向からアクセスできるものがある。この様なスピンスタンドは2つのHGAを1つの位置決め装置で位置決めしている。この場合、位置決め装置はディスク縁端よりも外側に位置し、HGAは位置決め装置から離れた位置で支持されている。位置決め装置とHGAとの距離が長いと、ヘッドの位置決め誤差が生じ易い。一方、図1において、スピンスタンド100は、1つのHGA500を回転するディスク550の下面に位置決めするようにし、HGA500を微細位置決め装置600の真上で支持しているので、その位置決め性能が高い。
さて、図1に示す離散位置決め装置700は、微細位置決め装置600を予め決められた離散的な位置に位置決めする装置である。これにより、離散位置決め装置700は、ヘッドスライダ510にディスク550の面上とディスク550外との間の移動を可能にさせ、また、ディスク550面上におけるヘッドスライダ510に試験仕様で定められたスキュー角θを与えることができる。ここで、離散位置決め装置700のみを図7に示す。また、離散位置決め装置700の一部を拡大した図を図8に示す。以下、離散位置決め装置700に関する説明は、図7および図8を参照する。離散位置決め装置700は、予め決められた角度に位置決めする回転位置決め装置である。本実施形態において、離散位置決め装置700は、予め決められた3つの角度に位置決めすることにより、微細位置決め装置600を予め決められた3つの位置に位置決めする。予め決められた3つの位置とは、HGA500を交換するためにHGA500がディスク550から離れているような位置、ヘッドスライダ510がディスク550面上の内周部付近にあるような位置、および、ヘッドスライダ510がディスク550面上の外周部付近にあるような位置である。なお、これらの位置は、試験仕様により定められ、上記に限定されるわけではない。離散位置決め装置700は、略円筒形の位置決めピン固定ブロック710と、位置決めピン固定ブロック710を回転させるDCモータ720と、位置決めピン固定ブロック710に固定されて水平方向に突出する位置決めピン730と、逆L字形の位置決めブロック740と、位置決めブロック740を水平移動させる電磁ソレノイド式のアクチュエータ750とを備える。
位置決めピン固定ブロック710は、複数の歯車760を介してDCモータ720に回転駆動され、その回転数は10rpm程度である。なお、位置決めピン固定ブロック710は、微細位置決め装置600を支持する可動台であって、時計回りにも反時計回りにも回転する。位置決めブロック740は、リンク770を介してアクチュエータ750と結合されている。リンク770は、リンクシャフト771によって支持され、リンクシャフト771を中心にして回転する。また、位置決めブロック740は、バネ772の力で位置決めピン固定ブロック710方向に引っ張られている。従って、位置決めブロック740は、通常、バネ772の力によって位置決めピン固定ブロック710方向に引き寄せられている。また、アクチュエータ750がリンク770を押すと、位置決めブロック740は位置決めピン固定ブロック710から離れる。位置決めピン730は、位置決めピン固定ブロック710にネジ止めされている。位置決めピン固定ブロック710には位置決めピン730の固定位置を精密に変えられるように多くのネジ穴711が設けられている。位置決めピン730は円柱形のピンであって、その先端部は半球形である。
離散位置決め装置700は、位置決めピン固定ブロック710の回転位置を制御するために、位置決めピン固定ブロック710に固定されるセンサプレート781と、フォトセンサ782とを備える。フォトセンサ782は、光透過型のフォトインタラプタであって、発光部と受光部との間を遮光する物体が存在するか否かを検知するセンサである。センサプレート781は、遮光板であって、位置決めピン730と位置決めブロック740が対向する時に、フォトセンサ782の発光部と受光部との間を遮光するように位置決めピン固定ブロック710に固定される。この遮光状態は、位置決めピン固定ブロック710と共に回転するセンサプレート781の位置に応じて、有効になったり無効になったりする。
離散位置決め装置700の位置決めは次の様に行われる。図9から図13は、離散位置決め装置700を簡略表示した上面図であって、その位置決め動作を示した図である。以下の説明は、図7および図8を併せて参照する。図9は、磁気再生素子または磁気記録素子がディスク550の内周部に位置決めされている時の離散位置決め装置700を示した図である。図9から図13において、針D(時計の針状のもの)は磁気再生素子または磁気記録素子の位置決め方向を示している。また、針Dの先端部分が磁気再生素子または磁気記録素子のギャップ中心の位置を表す。位置決めピン730は位置決めブロック740の壁面に接触して静止している。この時、フォトセンサ782はセンサプレート781により遮光されている。磁気再生素子または磁気記録素子がディスク550の内周部から外周部に位置決めされる時、まず、位置決めブロック740は、アクチュエータ750で駆動されて位置決めピン固定ブロック710から離れ、位置決めピン730を解放する(図10)。次に、位置決めブロック740を位置決めピン固定ブロック710から離したままDCモータ720を作動させると、位置決めピン固定ブロック710は回転移動する(図11)。すると、フォトセンサ782の遮光状態は解除される。この時、位置決めピン730は、位置決めブロック740の正面からずれた位置にある。ここで、アクチュエータ750の駆動を止めると、位置決めブロック740は位置決めピン固定ブロック710へ接近する(図12)。さらに、位置決めピン固定ブロック710を回転移動させると、位置決めピン730は位置決めブロック740の壁面に衝突し制動される(図13)。位置決めピン730が位置決めブロック740に衝突している時、フォトセンサ782は遮光状態にある。ここで、センサに応答してDCモータ720を停止する。この時、位置決めピン730は、DCモータ720の慣性により暫くの間、位置決めブロック740へ衝突し続ける。ここで、電磁力や楔などにより、位置決めピン固定ブロック710の位置を固定する。離散位置決め装置700は、位置決めピン730や位置決めブロック740の剛性を十分に高くすれば、高価な高精度の駆動手段やセンサ手段を用いる事なく、それらと同等の高精度な位置決め性能を実現する事ができる。また、位置決めピン730を制動するための位置決めブロック740は、水平方向に移動する逆L字形ブロックに代えて、他の手段も使用することができる。例えば、図1において、ベース200の平面部210より然るべき時に出入りする角柱や円柱などであっても良い。
なお、位置決めピン730は離散的な位置に固定されれば良いので、位置決めブロック740は位置決めピン730を挟むように固定する形状でも良い。例えば、離散位置決め装置800は、位置決めブロック740に代えて、V字形溝791を有する位置決めブロック790を用いることができる。位置決めブロック790を用いた離散位置決め装置800の位置決めは、次の様に行われる。図14から図18は、離散位置決め装置800を簡略表示した上面図であって、その位置決め動作を示した図である。以下の説明は、図1、図7および図8を併せて参照する。図14は、磁気再生素子または磁気記録素子がディスク550外に位置決めされている時の離散位置決め装置800を示した図である。図14から図18において、針D(時計の針状のもの)は磁気再生素子または磁気記録素子の位置決め方向を示している。また、針Dの先端部分が磁気再生素子または磁気記録素子のギャップ中心の位置を表す。位置決めブロック790は、位置決めピン730の先端を押しつけるようにして位置決めピン730を固定している。この時、フォトセンサ782はセンサプレート781により遮光されている。磁気再生素子または磁気記録素子がディスク550外からディスクの外周部に位置決めされる時、まず、位置決めブロック790は、アクチュエータ750で駆動されて位置決めピン固定ブロック710から離れ、位置決めピン730を解放する(図15)。次に、位置決めブロック790を位置決めピン固定ブロック710から離したままDCモータ720を作動させると、位置決めピン固定ブロック710は回転移動する(図16)。すると、フォトセンサ782の遮光状態は解除される。この時、位置決めピン730は、位置決めブロック790の正面からずれた位置にある。再び、フォトセンサ782が遮光状態になった時、次の位置決めピン730が位置決めブロック790のほぼ正面に位置している。ここで、DCモータ720を停止して位置決めピン固定ブロック710の回転移動を止める。さらに、アクチュエータ750の駆動を止めると、位置決めブロック790は位置決めピン固定ブロック710へ接近する(図17)。離散位置決め装置800は、ロータリーエンコーダなど高精度な回転位置検出手段を用いていないので、位置決めピン730の位置は位置決めブロック790の真正面にあるとは限らない。位置決めブロック790の真正面からずれた位置にある位置決めピン730の先端は、位置決めピン固定ブロック710へ接近する位置決めブロック790のV字形溝791の斜面に導かれて、V字形溝791の中心に位置決めされ固定される(図18)。ここで、さらに電磁力や楔などにより、位置決めピン固定ブロック710の位置を固定する。前述同様に離散位置決め装置800は、位置決めピン730や位置決めブロック790の剛性を十分に高くすれば、高価な高精度の駆動手段やセンサ手段を用いる事なく、それらと同等の高精度な位置決め性能を実現する事ができる。
ヘッドスライダ510の試験において、スピンスタンドで位置決めしたヘッドスライダ510のスキュー角θは、一般に、そのヘッドスライダ510が実際のHDD内で位置決めされた時のスキュー角と実質的に同じでなければならない。そのために、スピンスタンド100は、ディスク回転装置300の回転軸心と離散位置決め装置700の回転軸心との間の距離、および、離散位置決め装置700の回転軸心とHGA500のヘッドスライダ510との間の距離を、試験対象であるヘッドスライダ510が実際のHDD内に取り付けられた時のそれらの距離と同じにする必要がある。正確に言えば、離散位置決め装置700の回転軸心とHGA500のヘッドスライダ510との間の距離は、離散位置決め装置700の回転軸心とヘッドスライダ510の磁気記録素子のギャップ中心点との間の距離、または、離散位置決め装置700の回転軸心とヘッドスライダ510の磁気再生素子のギャップ中心点との間の距離である。従来のスピンスタンドは、これら2つの距離をリニアモータなどにより駆動される位置決め手段を用いて位置決めする事により、随時、様々な仕様のヘッドに柔軟に対応する事ができる。量産試験されるヘッドは、その種類が頻繁に変わらないので、上記の様に随時位置決めする必要はない。その代わりに、スピンドルプレート221は、プレートポスト222への固定位置が変更可能である。また、微細位置決め装置600は、離散位置決め装置800への固定位置が変更可能である。さらに、マウンティングブロック820は、カセットプレート810への固定位置が変更可能である。またさらに、カセット800は、微細位置決め装置600への固定位置が変更可能である。試験者は、これらの変更の全てを行うことができる。スピンドルプレート221の固定位置の変更により、ディスク回転装置300の回転軸心と離散位置決め装置700の回転軸心との間の距離を実際のHDD内での距離と同じにする事ができる。また、微細位置決め装置600およびカセット800およびマウンティングブロック820の固定位置の変更により、離散位置決め装置700の回転軸心とHGA500のヘッドスライダ510との間の距離を実際のHDD内での距離と同じにする事ができる。
ところで、ヘッドスライダは、アップタイプとダウンタイプの2種類がある。アップタイプのヘッドスライダ、または、そのヘッドスライダを備えるHGAは、アップ・ヘッドと称される。ダウンタイプのヘッドスライダ、または、そのヘッドスライダを備えるHGAは、ダウン・ヘッドと称される。アップ・ヘッドは回転するディスクの下面にアクセスするものであり、ダウン・ヘッドは回転する同ディスクの上面にアクセスするものである。従来のスピンスタンドは、アップ・ヘッドおよびダウン・ヘッドを1台のスピンスタンドで試験する構造を有する。例えば、あるスピンスタンドは、ディスクの上面と下面の両方にアクセスできるようなデュアルアーム構造を有する。他のあるスピンスタンドは、ディスクを正逆両方向に回転させることができ、さらに、ヘッドスライダまたはHGAをディスクの上下両面にアクセスさせることができる。本実施形態のスピンスタンド100は、ディスクの回転方向とHGAがアクセスするディスク面がそれぞれ1つに固定されている。従って、アップ・ヘッドとダウン・ヘッドの両方を試験するために、アップ・ヘッドとダウン・ヘッドのそれぞれに特化したスピンスタンドを使用する。ここで、図1と図19を参照する。図19において、スピンスタンド1000は、スピンスタンド100と同一の構成要素と有し、それらの構成要素はスピンスタンド100と鏡像になるように配置される。図1と図19において、同一の構成要素は、それぞれの参照番号の下3桁が同じである。図1において、スピンスタンド100は、ディスク550の回転方向が反時計回りであり、HGA500はディスクの下面に対して右側からアクセスする。一方、図19において、スピンスタンド1000は、ディスク550の回転方向が時計回りであり、HGA500はディスクの下面に対して左側からアクセスする。例えば、アップ・ヘッドはスピンスタンド100で試験され、ダウン・ヘッドはスピンスタンド1000で試験される。スピンスタンド100およびスピンスタンド1000は、それぞれ必要な数だけ組み合わせることができる。最適に組み合わされたスピンスタンド100およびスピンスタンド1000は、量産試験に最適であろう。
上記に説示したスピンスタンドおよびヘッド/ディスク試験装置は、例えば、以下のような変形が可能である。
インデックス信号発生器IDXは、流体動圧軸受モータの回転軸に追加の装置または機構を設ける事なく流体動圧軸受モータの回転軸の1回転(1周期)を正確に知らせるものであれば良い。従って、インデックス信号発生器IDXは、流体動圧軸受モータ310の内部で回転する永久磁石によって生じる磁束密度の変化をホール素子等で検出し、磁束密度の変動からパルス信号を得て、そのパルス信号を分周する事によりインデックス信号を生成するようにしても良い。また、インデックス信号は、パルス信号を分周せずに、流体動圧軸受モータの回転軸が1回転する間に出現する複数個のパルスから特定位置のパルスを抽出したものでも良い。
また、ディスク回転装置300の回転速度は、実際のHDDで採用される回転速度を少なくとも1つ実現できれば良い。また、ディスク回転装置300の回転速度は、さらに速くして10000rpmや15000rpmを実現できるようにしても良い。また、それらの中間速度を実現できるようにしても良い。なお、回転速度を単一にすることが、スピンスタンド100のコスト削減に最も貢献することはいうまでもない。スピンスタンド100のコストが下がれば、ヘッド/ディスク試験装置10のコストも下がる。
さらに、ディスク回転装置300に用いるモータは、動圧軸受を用いたモータであれば良いので、空気動圧軸受モータを使用する事も可能である。その場合、上記の文章は、流体動圧軸受モータ310を空気動圧軸受モータに替えて読むことができる。
またさらに、離散位置決め装置700は、微細位置決め装置600の可動範囲を離散位置に位置決めできれば良く、上述のように回転軸心が固定された回転位置決め手段に限定されない。例えば、離散位置決め装置700は、回転軸心が固定されない回転位置決め手段であっても良い。
以上詳細に説明したように、木発明のスピンスタンドは、磁気ディスクを回転させるディスク回転手段と、磁気ヘッドを着脱可能に支持し、前記磁気ヘッドを少なくとも前記ディスクのトラック幅方向に移動させるヘッド移動手段とを備え、該ヘッド移動手段は、微小可動範囲内で高精度の位置決めが可能な微細位置決め手段と、該微細位置決め手段の微小可動範囲を所定の離散位置に設定する離散位置決め手段とを具備し、前記離散位置近傍のみに前記磁気ヘッドを配置できるようにしたので、従来のスピンスタンドに比べて小型軽量化する事ができた。
また、本発明のスピンスタンドは、磁気ヘッドの着脱時においても動圧軸受モータの回転が継続するようにしたので、従来のスピンスタンドに比べて、小型軽量化する事ができた。
またさらに、本発明のスピンスタンドは、動圧軸受モータの回転により生じる逆起電力の変化または磁束密度の変化を検出しインデックス信号を生成する手段を備えるようにしたので、従来のスピンスタンドに比べて、小型軽量化する事ができた。
さらに、本発明のスピンスタンドは、スピンスタンドの軽量化に伴い、スピンスタンドを支持する足に防振用ゲルを内装したバネを備えるようにしたので、スピンスタンドの小型軽量化に伴い影響を受けやすくなる外部振動を、従来のスピンスタンドよりも小さくする事ができた。
結果として、本発明のスピンスタンドは、従来のスピンスタンドに比べて、その体積および重量が1/40以下になった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図13】

【図18】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドを着脱可能に支持するスピンスタンドであって、前記磁気ヘッドの着脱時においても回転を継続する動圧軸受モータを備えることを特徴とするスピンスタンド。
【請求項2】
動圧軸受モータと、該動圧軸受モータの回転により生じる逆起電力の変化または磁束密度の変化を検出しインデックス信号を生成する手段とを備えることを特徴とするスピンスタンド。
【請求項3】
動圧軸受モータを備えるスピンスタンドであって、前記動圧軸受モータの軸受には導電性流体が封入され、前記軸受が接地されることを特徴とするスピンスタンド。
【請求項4】
防振用ゲルを備えた弦巻バネによって支持されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスピンスタンド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスピンスタンドを備えることを特徴とするヘッド/ディスク試験装置。

【国際公開番号】WO2004/027761
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537568(P2004−537568)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011763
【国際出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願人】(000121914)アジレント・テクノロジー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】