説明

動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる感染症の予防及び処置の為のラクチレート

本発明は、動物におけるグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を予防し又は処置する為に、式(1)R2-COO-[-CH(CH3)-C00]n-R1に従うラクチレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、式(2)R2-C00-(-CH2-C00)n-R1のグリコリレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、式(3)HO-CH(CH3)-C00-R2のラクテートエステル、及び/又は式(4)HO-CH2-COO-R2のグリコール酸エステルから選ばれる抗バクテリア化合物を使用する方法に関し、ここでR1がHから選択され、nは1〜10の値の整数を表し、且つ、R2は分枝した又は分枝していないC1〜C35のアルキル又はアルケニル鎖を表す。該化合物、好ましくはラクチレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、はclostridiaの処置又は予防において特に有用である。感染症を予防し又は処置する為の動物栄養組成物及び方法もまた請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸の感染症を予防し又は処置する為の方法、動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸の感染症を予防し又は処置する為の特定の組成物に、動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸の感染症を予防し又は処置する為の特定の組成物の使用方法に、及び動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸の感染症を予防し又は処置する為に有効な量で特定の化合物を含む動物の為の栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラム陽性バクテリアは、それらの細胞壁内の多量のペプチドグリカンに主に起因して、グラム染色により暗い青又は紫に染められる。該グラム陽性バクテリアのうち、Enterococcus、Clostridium、Listeria、Staphylococcus、種々のBacillus種、及びStreptococcusは病原性バクテリアである。これらの微生物のいくつかは食品汚染物としての主に関心事項である一方で、動物において疾患を引きおこすものもある。
【0003】
例えば、Clostridiaは、動物において腸の多くの広くさまざまな疾患を引きおこすことに関与する。それは、土壌、埃、排泄物、及び食物中に容易に発見されるほとんどどこにでもいるバクテリアであるので、Clostridiaがいない状態に動物を維持することは極めて困難である。
【0004】
Clostridiumに関連する腸疾患は、非常に重度でありうる。例えば、Clostridiaは、鶏において壊死性腸炎を引き起こすことに関与する。ウシにおいて、Clostridia関連腸炎が、「突然死症候群」の形をとることがあり、これは実際に、多数のウシの一晩での死を結果しうる。他の動物においても、Clostridiaに関連する疾患は重度の障害を引き起こしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動物を腸感染症から守る為に動物に抗生物質を投与することが知られている。そのような抗生物質を動物の栄養物中に含めることも知られている。しかしながら、動物の飼料における抗生物質の使用に対する抵抗が増加していており、そして最近多くの国は、動物の飼料における抗生物質の使用を禁ずる法律を有する。さらに、抗生物質は非常に管理された量で与えられる必要がある。
【0006】
従って、それゆえに動物、特には哺乳動物(反芻動物(例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ)及び単胃動物(例えばブタ、ウマ、ウサギ)を含む)における;鳥(例えば家禽、ターキー、キジ、ウズラ)における;魚(海水魚(例えばサーモン、オヒョウ、マグロ)、淡水魚(例えばマス、コイ、ティラピア)を含む)における;軟体動物(例えばカキ、イガイ、クラム、巻貝)における、及び甲殻類(例えばカニ、ロブスター、エビ)における、グラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を処置し又は予防するのに役立つであろう非抗生物質的な方法及び動物飼料のための組成物についてのニーズがある。本発明は、ヒトにおける、及び毛皮動物、例えばミンク、オコジョ、サーベル(sabre)、及びキツネなど、における適用も発見しうる。
【0007】
さらに、動物の成長を増すことを目的として、腸において特定のグラム陽性バクテリアを抑制することが望ましくありうる。これはLactobacillus種についての関心事項でありうると考えられる。本発明は、この適用についても関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を処置し又は予防する為の方法及び動物飼料の為の組成物を提供する。本発明に従い、グラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症の予防又は処置の為に、
式1

に従うラクチレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、
式2

のグリコリレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、
式3

のラクテートエステル、
及び/又は式4

のグリコール酸エステル
から選ばれる抗バクテリア化合物が使用され、
ここで上記式においてR1がHから選択され、nは1〜10の値の整数を表し、且つ、R2は分枝していてよく又は分枝していなくてもよいC1〜C35のアルキル又はアルケニル鎖を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、動物におけるグラム陽性バクテリアによる腸感染症の予防又は処置に関する。本発明は、嫌気性又は通性嫌気性のバクテリア、さらにより特には嫌気性バクテリアによる、腸感染症に対する使用にとって特に魅力的である。嫌気性バクテリアの群内において、芽胞形成バクテリアによる腸感染症の予防又は処置の為の方法を有することが特に望ましい。なぜなら、これらの生物は制御することが難しい傾向にあるからである。本発明は、Clostridiaによる腸感染症の予防及び処置において特に興味深い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一つの実施態様において、本発明は、家禽、特には鶏において、Clostridiumにより、特にはClostridium perfringensにより引き起こされる腸感染症の予防又は処置に関する。
【0011】
他の実施態様において、本発明は、ウシにおいて、Clostridiumにより、特にはClostridiumのtetanii、novyi(B型)、septicum、chauvii、sordelii、hemolyticum、difficile、botulinum、の1以上により引き起こされる腸感染症の予防又は処置に関する。
【0012】
さらなる実施態様において、本発明は、Lactobacillus種の腸内増殖の減少に関する。
【0013】
国際公開第2004/107877号パンフレットが、乳酸又はその誘導体と無機酸との混合物を含む抗微生物性組成物を記載することが注目される。該組成物は、一般に抗微生物剤として記載されている。Salmonella及びEscherichia Coliに対する使用が特定されている。ラクチレートは可能な乳酸誘導体として言及されているが、それらの使用はさらに明らかにされていない。この文献は、ラクチレートの使用が動物においてグラム陽性バクテリアに対して特定の有効性を示すと発見された特定の有効性を教唆も示唆もしていない。
【0014】
さらに、独国特許出願公開第115480号明細書が、アシル化α−ヒドロキシカルボン酸の、バクテリア及び菌類、例えばカビ、白カビ及び酵母など、に対する使用を記載することが注目される。該化合物がヒト又は他の動物による消費又はヒト又は他の動物への施与の為に用いられうることが示されているが、これは明らかにされていない。この文献は、ラクチレートの使用がグラム陽性バクテリアに対して特定の有効性を示すと発見された特定の有効性を教唆も示唆もしていない。
【0015】
本発明において、式1に従うラクチレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、式2のグリコリレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、式3のラクテートエステル、及び/又は式4のグリコール酸エステルの1以上から選ばれる抗バクテリア化合物が使用されうる。
【0016】
式1のラクチレート又はその塩の使用が好ましいと発見された。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、R2は、6〜20の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル鎖である。より特には、R2は、6〜18の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル鎖である。この実施態様において、適当な置換基は、6の炭素原子を有する基(カプロニック)、8の炭素原子を有する基(カプリリック)、10の炭素原子を有する基(カプリン酸)、12の炭素原子を有する基(ラウリル)、14の炭素原子を有する基(ミリスチル)、16の炭素原子を有する基(セチル、パルミチル)、18の炭素原子を有する基(ステアリル)を含む。2以上の化合物の混合物もまた用いられうる。塩が用いられる場合、Na、K、Ca、又はMgの塩の使用が特に好ましい。
【0018】
nについての値は好ましくは1〜5である。より特には、nは1、2、又は3の値を有する。
【0019】
ラウロイルラクチレート、ミリストリルラクチレート、及びそれらのナトリウム塩の使用が特に好ましい。一つの実施態様において、5〜95重量%のラウロイルラクチレート及び95〜5重量%のミリストイルラクチレート、又はこれらの化合物のナトリウム塩を含む混合物が用いられ、より特には、25〜75重量%、より特には40〜60重量%のラウロイルラクチレート及び75〜25重量%、より特には40〜60重量%のミリストイルラクチレート、又はこれらの化合物のナトリウム塩を含む混合物が用いられる。
【0020】
本発明の一つの実施態様において、抗バクテリア化合物、特には該ラクチレート又はその塩が、1以上の静コクシジウム性(coccidostatic)成分と一緒に用いられる。これは、免疫抑制期間(卵内の動物を守る免疫システムが衰退したが動物それ自身の免疫システムは完全には発達していないところの鶏の生存期間内の期間である)の間の家禽において特に興味深い。鶏にとって、これは該動物生存期間の10〜20日目の間である。
【0021】
これは、腸のClostridium感染症に対する鶏の抵抗性を増すことにおいて特に興味深い。より特には、鶏において、Clostridiumにより引き起こされる壊死性腸炎はしばしば、Eimeriaによる感染症によって先行されると考えられる。Eimeriaは、腸の壁を損傷すると考えられ、これは、Clostridiumによる感染症に対して、それをより抵抗性でないものにする。ラクチレートと1以上の静コクシジウム性成分との組み合わせの使用はそれ故に、壊死性腸炎に対する鶏の増加した抵抗性を与えるであろう。
【0022】
適当な静コクシジウム性成分は当技術分野で知られており、それらが与えられるべき量も同様に知られている。適当な成分は、マデュラマイシン、ジクラズリル(diclrzil)、ナラシン、ナイカルバジン、モネンシン、ロベニジン、ラサロシド、ハロフギノン、ナラシン、サリノマイシン、デコキネート、及びセンデュラマイシンを含む。
【0023】
該組成物は、慣用の動物飼料組成物の成分として動物に与えられる。本発明の文脈において、語「動物栄養物」は、固体の飼料及び液体の飼料、例えば飲料水など、を含む。すなわち、該組成物は、慣用の動物飼料組成物の固体又は液体の成分として又はそれらの飲料水中において固体又は液体の成分として、動物に投与されうる。
【0024】
該組成物は、慣用の動物飼料組成物の供給から独立して、別のステップにおいて該動物に投与されてもよい。
【0025】
本発明の一つの実施態様において、該抗バクテリア化合物、特には該ラクチレート又はその塩は、担体に付けられる。これは、固体のパウダー状の形にある該抗微生物性組成物を得る為の簡便な方法を与える。適当な担体は、植物繊維物質、植物炭水化物、例えばセルロースなど、及び無機担体、例えばシリカなど、デンプン、石こう、及び石灰から選ばれる。
【0026】
他の実施態様において、該抗微生物性化合物は、植物油、例えばコーン油、大豆油又はオリーブ油などを有する混合物中に添加される。
【0027】
他の実施態様において、該抗微生物性化合物は、タブレット又は動物への医薬成分の供給の為に知られた他の形をしたものの形でもありうる。
【0028】
該動物に投与される該抗微生物性化合物、特にはラクチレート、の量は、該化合物が投与される該動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を処置し又は予防する為に有効であるようなものである。そのような量は適当には、該動物に与えられるそれぞれの飼料の合計重量に対して0.0001〜5%である。好ましい実施態様において、該量は、該動物に与えられるそれぞれの飼料の合計重量に対して0.001〜2%でありうる。国際公開第2004/107877号パンフレットにおいて記載されるとおりの乳酸の使用と比較して、該有効成分のより低い濃度を使用することが可能でありうることが発見された。国際公開第2004/107877号パンフレットの実施例では1.2重量%の乳酸が用いられるのに対して、本発明に従い例えばラクチレートの使用は、活性成分の減少された量の使用を許す。従って、本発明の一つの実施態様において、該量は、該動物に与えられるそれぞれの飼料の合計重量に対して0.001〜1重量%、より特には0.001〜0.5重量%でありうる。必要な量を決定することは当業者の範囲内である。
【0029】
もしそのように望まれるならば、該量は、該動物においてグラム陽性バクテリアClostridia関連腸炎により引き起こされる感染症を処置し又は予防する為に有効である為に該化合物について要求されるよりも多くてよい。これは、該化合物が、成長を促し、飼料対獲得比(feed to gain ratio)を改善する為に作用もする場合、及び/又は動物飼料において施与されたアミノ酸の消化率を改善する場合にあてはまりうる。
【0030】
上記で言及されたとおり、該抗バクテリア化合物は、動物に、慣用の動物飼料組成物の成分として投与されうる。慣用の動物飼料組成物は、コムギ、デンプン、肉及び骨粉、トウモロコシ、ヒマワリ粉末、コーン、穀草類、オオムギ、大豆粉末、タピオカ、シトラスパルプ、マメ、ビートパルプ等を含みうる。本発明に従い、グラム陽性バクテリアによる腸感染症を処置し又は予防する為の動物への抗バクテリア化合物の供給は、一般に、抗生物質の供給と一緒にされないであろう。
【0031】
国際公開第2004/107877号パンフレットにおいて、乳酸又は乳酸誘導体は、窒素、硫黄、及びリンを含む酸から選択される無機酸と一緒に用いられる。該無機酸は、該動物内の全通過(total passage)の間に糜粥のpHを低下すると考えられ、それにより解離していない乳酸の存在を増加し、これが病原体の外膜を崩壊させると示されている。
【0032】
対照的に、本発明は、解離していない乳酸の存在に依存しない。それ故に、本発明は、糜粥中のpHを低める為の無機酸の存在を要求しない。
【0033】
従って、本発明は、グラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症の予防又は処置において、上記で記載された抗バクテリア化合物、特には式1に従うラクチレートの使用方法にも関し、ここでそのような使用方法は、解離していない乳酸の存在を増加する為の窒素、硫黄及びリン含有酸から選ばれる無機さんの使用を伴わない。
【0034】
本発明はさらに、以下の実施例により説明され、これは、本発明がそこに又はそれにより限定されること無く、この発明の発明に関する利点を示す。
【実施例1】
【0035】
実施例1:鶏における壊死性腸炎に対するナトリウムラウロイルラクチレートおよびナトリウムミリストイルラクチレートの混合物の有効性
【0036】
鶏における壊死性腸炎に対するナトリウムラウロイルラクチレートとナトリウムミリストイルラクチレートとの混合物の有効性が、Schothorst Feed Researchにより、彼らが開発した実験的C.perfringens感染モデル(コクシジウム感染症が、C.perfringensにとって、小腸にコロニー形成し及び壊死性腸炎を引き起こす為のプレトリガー(a pretrigger)として用いられる)において評価された。コクシジウム感染症が、病原体のEimeria maximaにより開始され、そして、コクシジウム感染症のピークで、鳥が、ブロイラー鶏に対して病原性であると判明したC.perfringens株を接種される。E.maximaにより引き起こされるコクシジウム感染症(小腸の中央区域(middle segment)において病変を結果する)及び続くClostridium感染症は、非常に再現性の良いモデルを結果し、そして、壊死性腸炎病変についての簡単且つ正確なスコアリング方法を結果する。なぜなら、E.maxima及びClostridiumの病変は区別するのが容易であり、同時に、両病原体の病変は、同じ小腸区域に発生しないからである。該実験は、Animal Health Service(GD)と協力して実施される。
【0037】
該実験は、1つの処置及び2つの対照処置から構成された。全ての処置は、1ケージ当たり19のブロイラーを有する、6つの複製ケージから構成された。該処置が、表1に与えられる。
【0038】
【表1】

【0039】
動物、管理及び手順
1日齢のオスのRoss 308ブロイラー鶏が、Probroed & Sloot B.V.(オランダ)により供給された。0日目で、ブロイラーが、Animal Health Service(Deventer、オランダ)の研究施設に到着し、そして、個別の計量後に、消化性ケージ(digestibility cages)中に収容された。重量クラスシステムに基づき、19の鳥が30のSchothorstわら床(litter floor)消化性ケージに割り当てられ、1ケージ当たり同様の平均体重を結果した。ブロイラーは、これらのケージ中で、20日目での実験の終わりまで収容された。9日目で、もし死亡が発生しなければ、鶏の数は、17へと標準化され、そして、鳥の体重が再度測定された。第一に、明らかな視覚上の異常を有する鳥は除かれ、そして第二に、鳥は無作為に除かれて17へと数を減少させた。実験期間を通じての照明及び温度のスケジュールは以下の通りであった、0日目〜9日目の第一の期間において、22時間の照明に続き2時間の暗闇、続いて実験の残りを通じて18時間の照明及び6時間の暗闇。環境温度は、開始での32℃から、実験の終わりでの25℃へと徐々に減少された。
【0040】
飼料は、接種(9、14、15及び16日目)及びセクション(sections)(15、16日目及び20日目)の前の5時間を除き、0日目以降は不断給餌で与えられた。水は、実験を通じて不断給餌で利用可能であった。
【0041】
飼料組成物
ブロイラーは、到着の日から9日目までコムギ/大豆粉末に基づくスターター食餌(starter diet)を供給された。9日目以降は、コムギ/オオムギに基づくグローワー食餌(grower diet)が、実験の終わり(20日目)まで与えられた。グローワー飼料は、飼料製造後の試験製品における均一な混合の必要性の故に、粉末として与えられた。食餌は、抗コクシジウム剤を何も含まず、試験製品以外の抗微生物性飼料添加物を何も含まなかった。該実験食餌の栄養組成は、ブロイラーの栄養要求を満たすために、オランダの基準に従った(CVB、2006)。
【0042】
接種
9日目で、ブロイラーは、5時間の飼料離脱期間後に、1mlの生理食塩水又はE.maxima(1ml中に、10.000の胞子形成オーシスト/鶏)のいずれかを接種された。14日目から先は、ブロイラーは、1mlの肝臓ブロス(DIFCO)又はC.perfringensを1日当たり1回、続く3日間、5時間の飼料脱離後に、接種された。種々の処置の詳細な概説は表1に提示されている。
【0043】
病原性C.perfringens株が、Deventer、オランダ、のAnimal Health Serviceから得られた(1ml中に10cfu)。該株は、ヒツジの血液のアガー上で増殖され、そして培養物は、CIDC(LelystadのCentral Institute of Animal Disease Control)により、αタイプ及びβ2タイプの毒素を生成するC.perfringensとして分類される。日ごとに、新鮮に調製された接種材料が用いられた。
【0044】
病変スコアリング
Clostridium perfringens:大きな(gross)及び顕微鏡的な病変が一般に、小腸に発生し、特に近位部(the proximal site)に、発生する。以下のスコアリング方法が用いられた:
0:病変無し
1:1〜5の小さな病変(1mm未満の直径のスポット)
2:5超の小さな病変(1mm未満の直径のスポット)又は1〜5のより大きな病変(1〜2mmの直径のスポット)
3:5超のより大きな病変(1〜2mmの直径)又はびらん性領域
4:死亡した鳥、死亡後に陽性の壊死性腸炎との診断を有する
全ての鳥は、「盲検法(blind)」でスコア化された。すなわち、病変について鳥をスコア化する人は、該鳥の処置の知識を有さなかった。
【0045】
測定
実験の間、以下のパラメーターが測定された:
・到着の日での個別の体重及び、実験の9日目及び20日目でのケージ当たりの平均
・死体解剖の前の鳥の体重
・0〜9日目の期間のケージ当たりの飼料摂取量及び9〜20日齢(from 9-20 days of age)の日ごとの飼料摂取量
・実験の15日目、16日目及び20日目での処置当たりの24の鳥の小腸粘膜におけるコクシジウム症の病変及び壊死性腸炎病変(処置当たり72の鳥の合計)
・0〜20日齢(from 0 to 20 days of age)のケージ当たりの死亡率
全てのルーチンの研究活動、健康異常の日ごとの記録、及び死亡率の日ごとの記録(その最もあり得る原因を伴う)が、維持された。
【0046】
統計的分析
生のデータが、外れ値(outliers)について分析された。有意な外れ値が該統計分析から除外された。NE−病変の発生率(感染した鳥の%)が、フィッシャーの正確確立検定(Fisher Exact Test)により分析され、一方で病変の重症度及び日毎の飼料摂取量測定は、Genstat統計ソフトウェアを用いて、分散分析(ANOVA)により分析された。処置の平均が、最小有意差(LSD)により比較された。P≦0.05が、統計的に有意であるとみなされる一方で、0.05<P≦0.10は有意に近いトレンドであるとみなされた。
【0047】
結果及び考察
【0048】
病変の発生率及び重症度
【0049】
15日目での病変スコアリング(感染後1日)
表2において、陽性とスコア化された鳥(NE病変を有する鳥)のパーセンテージが、すべての陽性とスコア化された鳥の平均病変スコアと同様に与えられる。すべての試験された鳥の平均病変スコア(感染した及び感染していない)が、母集団についてのより代表的な像を与えるので、統計的分析は、これらの結果にわたって実施された(表2の第5カラムを参照されたい)。陽性及び陰性とスコア化された鳥の両方における病変の重症度が、0〜4のスケールで示される(段落「病変スコアリング」を参照されたい)。
【0050】
【表2】

【0051】
有意な処置効果が、NE発生率について観察された。予測されたとおり、最も低い発生率が、感染していない対照処置において観察されたが、結果は、該試験混合物を補われた処置及び補われていない感染した対照の結果と比較可能である。
【0052】
ANOVAに基づき、15日目での壊死性病変の重症度に対する有意な処置効果があること(P<0.001)が結論付けられた。病変重症度について、感染した処置(補われていない及び補われた)において、感染していない対照処置よりも、病変はより重度であることが明白であった。なぜなら、後者において陽性とスコア化された鳥は無かったからである。感染した処置のうちで、統計的差異は観察されなかった。
【0053】
16日目での病変スコアリング(感染後2日)
表3において、陽性とスコア化された鳥のパーセンテージ及び鳥の平均病変スコアが、16日目について与えられる。
【0054】
【表3】

【0055】
16日目についてのNE発生率及び病変重症度の結果と15日目の結果とを比較すると、感染の重症度は、感染後2日でより高いことが明らかである。やはり有意な処置効果がNE発生率について観察されたが、これは、感染していない対照処置及び感染した処置の間の差異に起因することが明らかであり、これは予測されるとおりであり、一方で感染した処置のあいだで、観察された有意な差異は無かった。
【0056】
はっきりした区別が、感染後2日の病変重症度について描かれうる。該試験混合物を補われた処置は、平均病変スコアは感染していない対照よりもなお高かったが、感染した補われていない対照と比較して病変重症度において明白な減少を結果した。
【0057】
20日目での病変スコアリング(感染後6日)
20日目で、有意な差異は、処置の間で観察されなかった。すべての処置が、少なくとも顕微鏡評価に基づき、0%発生率及び病変重症度について明らかに0.0を伴い、NEから回復させた。
【0058】
死亡率
死亡率は、集団におけるClostridiumによる感染症の重症度を測定する為のパラメーターの一つである。この実験において、死亡率は、処置間で比較された。死亡率は、感染した対照処置(処置2)において14.6%であり、そして、感染していない対照において0%であった。試験混合物の補給は、死亡率の減少を結果した(5.1%)。
【0059】
生産パラメーター
病変スコアリングに加えて、体重及び日毎の飼料摂取量のような生産パラメーターが、試験期間中に測定された。
【0060】
1日齢ブロイラーの体重は、全ての処置において約47グラムであった。0日目〜9日目の処置が同様であったので、体重増加及び飼料摂取量における差異はこの期間において観察されなかった。
【0061】
9日目〜20日目までの感染期間において、両方の生産パラメーターは、個々の処置によって有意に影響された。体重増加は、予想されたとおり、感染していない対照において最も高く、一方で、感染した補われていない処置におけるブロイラーは、最低の体重増加を示した。これは、20日目で、30%のより低い最終重量を結果した(523g対749g)。感染した補われた処置は、感染した補われていない対照と比較して、有意により高い飼料摂取量及び体重増加を結果した。生産パフォーマンスにおける減少は10%で減少され、感染していない対照集団と比較したときに、約20%の最終体重における損失を示す(約583g対749g)。試験混合物は、無症状のClostridium感染の間に、生産パフォーマンスを有意に増加した。
【実施例2】
【0062】
実施例2:Clostridiumに対するラクチレートのin vitro試験
【0063】
Clostridium perfringens ATCC 13124の液体培養物が、10mlのブレインハートインフュージョン培地(Oxoid CM225、ベージングストーク、英国)を有するスクリューキャップチューブ(100×16mm)中で、30℃で24時間、増殖された。種々の量のラクチレートを有するブレインハートインフュージョン培地が調製された。該培地のpHは、6.0へと、9Mの硫酸により、Blueline 16 pH(ミクロ)プローブを備えられたHandylab pH12pHメーター(no.285129163)を用いて調整された。全ての培地が、0.45μmセルロースアセテートフィルター(Minisart syringefilter、sterile and non−pyrogenic、no.16555、Sartorius、ゲッティンゲン、ドイツ)を用いたろ過により滅菌された(9)。300μlの夫々の培地が、滅菌されたBioscreen honeycombe 100 ウェルプレート(Thermo electron Oy、Vantaa、フィンランド)のパネルへ移された。完成したウェルプレートは、さらなる使用まで、−30℃で貯蔵された。
【0064】
ウェルプレートは、3μlの培養物を、滅菌Hamiltonリピーティングディスペンサー(Hamilton、Bonaduz、スイス)を用いて接種された。試験生物の増殖速度が、Bioscreen C培養システム(Oy Growth Curves AB Ltd、ヘルシンキ、フィンランド)により、30℃で決定された。低い酸素条件を確保する為に、該Baioscreenは、タイプM−12酸素センサーを備えられた嫌気的キャビネット(In Vivo 400 低酸素ワークステーション、Biotrace International Plc、Bridgend、英国)の内側に置かれた。酸素圧は、Ruskinnガスミキサーモジュール(Biotrace International Plc)を用いて0%酸素に制御された。該Bioscreen Cは、濁度の発達を、垂直フォトメトリーにより、最大で200ウェルにおいて同時に動力学的に測定する。該培養物の光学密度は、ワイドバンドフィルターを用いて、420〜580nmで一定の時間間隔で自動的に測定された。
【0065】
表4は、ブレインハートインフュージョン培地中で、Clostridium perfringens ATCC 13124について試験された種々のラクチレートについてのMIC値を示す。丸括弧内に、繰り返しの数が与えられている。MICは、最小発育阻止濃度(Minimal Inhibitory Concentration)を表し、これは培養物の吸光度の増加が閾値(これはブランクの球光度値における平均増加プラス3掛ける標準偏差として定義された)を越えなかったところの最低濃度である。
【0066】
非常に低い濃度のラクチレートでさえ、Clostridium perfringensの増殖を抑制することができることが明らかである。
【0067】
【表4】

【実施例3】
【0068】
実施例3:鶏における壊死性腸炎に対するナトリウムラウロイルラクチレート及びナトリウムミリストイルラクチレートの混合物の用量応答研究及び予防研究
【0069】
実施例1と同様に、該化合物の用量の影響が研究された。さらに、Emeria及びClostridiumによって先に感染されていない鶏についての該混合物の使用が研究された。
【0070】
実施された処置が表5に要約される。
【0071】
【表5】

【0072】
結果は以下の通りに要約されうる。
【0073】
この実験において、E.maxima及びC.perfringensによる続く感染は、感染後最初の2日の間で、56%の壊死性腸炎の発生率を結果し及び1.6の平均病変スコアを結果した。試験混合物により鳥の食餌を補うことは、感染した鳥の数の減少させ、そして、用量応答効果が観察され、0.6%及び0.3%処置において最高の有効性を示した。病変重症度は、試験混合物補充に起因して、有意に減少され、そして、用量応答効果も、このパラメーターについて強く存在もした。病変は、試験混合物の最高用量による処置においてより重度でなかった。純粋な形で補給された試験混合物は、シリカ担体を介して補給された試験混合物よりも、いくぶんより良い応答を結果した。0.6%での試験混合物の補給は、死亡率における有意な減少を結果し(4.6%)、そして、感染していない対照処置よりも、有意により高くなかった。0.3%試験混合物による結果は、該病変スコアリングにおいて観察された結果を支持した。
【0074】
生産パフォーマンスに関して、効果が、試験混合物補給を有する又は有さない健康な鳥を互いに比較したときに、観察された。試験混合物の供給は、スターターフェーズ(starter phase)及びグローワーフェーズ(grower phase)において体重を増加する傾向にあった。感染した鳥をより高い用量の試験混合物により補うことは、全く感染していなかった鳥と同様の最終体重(37日目)を有する鳥を結果した。
【0075】
試験混合物、特には0.3重量%以上の用量における試験混合物が、ブロイラーにおける壊死性腸炎発達を予防することにおいて、より低い発生率及びより重度でない病変を示すことにより、有効であることが結論付けられうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を処置し又は予防する為に、
式1

に従うラクチレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、
式2

のグリコリレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩、
式3

のラクテートエステル、
及び/又は
式4

のグリコール酸エステル
から選ばれる抗バクテリア化合物を使用する方法、
ここで上記式においてR1がHから選択され、nは1〜10の値の整数を表し、且つ、R2は分枝していてもよく又は分枝していなくてもよいC1〜C35のアルキル又はアルケニル鎖を表す。
【請求項2】
該抗バクテリア化合物が、式1のラクチレート又はそのNa、K、Ca、Mg、Fe(II)、Zn、NH、若しくはCu(II)の塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R2がC6〜C18のアルキル又はアルケニル鎖である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
nが1、2、又は3である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を予防し又は処置する為の、請求項1〜4のいずれか1項に定義された抗バクテリア化合物。
【請求項6】
動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を予防し又は処置する為の組成物の製造の為に、請求項1〜4のいずれか1項に定義された抗微生物性化合物を使用する方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に定義された抗微生物性化合物を含む、動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を予防し又は処置する為の動物栄養組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に定義された抗微生物性化合物の有効量を動物に与えることを含む、動物においてグラム陽性バクテリアにより引き起こされる腸感染症を予防し又は処置する為の方法。
【請求項9】
該グラム陽性バクテリアがClostridia属のものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載された使用方法、化合物、動物栄養組成物、又は方法。
【請求項10】
該動物がウシ又は家禽から選ばれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用方法、化合物、動物栄養組成物、又は方法。

【公表番号】特表2011−510045(P2011−510045A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543505(P2010−543505)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050770
【国際公開番号】WO2009/092787
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)
【Fターム(参考)】