説明

動物の末梢部分への血液供給の評価

四肢の動脈の開通性をモニタするための術後の動脈開通性モニタシステムが、四肢の第1の組織領域に隣接して位置する、第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を生成するための第1のプローブと、四肢の第2の異なる組織領域に隣接して位置する、第2の組織領域への第2の動脈血液供給に依存する第2の異なる出力信号を生成するための第2のプローブと、第1の出力信号を処理して、第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを生成するための手段と、第2の出力信号を処理して、第2の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第2の動脈血液供給に関する第2の動脈血液供給メトリックとを生成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第1の血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、第2の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと比較するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、動物の末梢部分への血液供給の評価に関する。より具体的には、ヒトの足などの動物の末梢部分への血液供給の機能障害の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢動脈疾患(PAD)は、四肢への動脈血流が減少することを特徴とする末梢血管疾患の一部である。最も共通する初期症状として、運動時の脚の筋肉の疼痛、刺痛又は筋痙攣が挙げられる。後期の重篤な症状としては、創傷を治癒する能力が低下する場合があり、この結果、足の感染症、壊疽又は組織の死滅(壊死)が起きる可能性がある。
【0003】
一般にABP又はABPI手順と呼ばれる簡単な血圧測定方法を用いて疾患の重症度を判定することができ、この方法では全身的な上半身の収縮期血圧が足の動脈から測定された収縮期血圧と比較される。足の収縮期血圧が全身の収縮期血圧の半分未満又は40/50mmHg未満である場合、重篤な閉鎖性動脈疾患が存在する可能性が高く、患者は、感染及び組織壊死の危険がある。
【0004】
このような状況では外科的介入が必要となる。従来は、この外科的介入とは動脈のバイパスグラフトのことであったが、皮膚透過的な血管内での血管形成術が一般的になりつつあり、これにより、手術を行わずに動脈の内部から閉塞が除去されることになる。
【0005】
典型的な末梢動脈のバイパスグラフト手順は、閉塞した動脈の位置、通常は膝周りの膝窩動脈を確認するステップと、人工バイパスグラフト又は患者から採った静脈のいずれかで閉塞部に架橋するステップとから成る。
【0006】
手術後、バイパスグラフトが閉塞せず開いたままであるか、即ち血液が自由に通れるかどうかを検査することが重要である。従来は、この検査は、看護士が脈をとるか手持ち型の血管ドップラーワンド(Doppler wand)を用いて定間隔で手動で行われていた。しかし、それが主観性に頼ったものであるということ及び手配上の問題により、閉塞物が大きなものになるか動脈が完全に塞がれるまで、劣化しつつあるバイパスグラフトが検出されない可能性がある。劣化したグラフトが存在すれば、閉塞したグラフトを交換するために追加の外科的再介入が必要となり、手順を行うための費用は少なくとも2倍になる。
【0007】
劣化しつつあるバイパスグラフトを早期に検出することにより、経口及び血管内注入の両方による薬物療法を介して治療ができるようになる。
【0008】
動脈の開通性についての術後モニタを行うことが望ましいであろう。
【0009】
動脈の血液供給をモニタしてグラフトの開通性を示し、動脈の血液供給が停止するか所定のしきい値を下回ると警報で知らせる自動装置は、手術直後の末梢バイパスグラフトをモニタするのに有用な臨床ツールとなり得る。
【0010】
また、手術に際して末梢動脈の血液供給を示す装置は、バイパスグラフトを設置中の外科医にとって回復した動脈の血液供給レベルを評価するのにも有用なものとなり得る。経皮的血管内血管形成術の最中にこの方法を用いて、閉塞又は狭窄がうまく取り除かれたかどうか、及びさらなる狭窄に対して末梢まで適切な循環を回復させるための治療が必要であるかどうを判断することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、四肢の動脈の開通性をモニタするための動脈開通性モニタシステムが提供され、このシステムは、四肢の第1の組織領域に隣接して位置する、第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を生成するための第1のプローブと、四肢の第2の異なる組織領域に隣接して位置する、第2の組織領域への第2の動脈血液供給に依存する第2の異なる出力信号を生成するための第2のプローブと、第1の出力信号を処理して、第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを生成するための手段と、第2の出力信号を処理して、第2の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第2の動脈血液供給に関する第2の動脈血液供給メトリックとを生成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第1の血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、第2の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと比較するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段とを備える。この動脈開通性モニタシステムは、手術後の動脈開通性システムであってもよい。この動脈開通性モニタシステムは、手術中の動脈開通性システムであってもよい。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、四肢の動脈の開通性をモニタするための動脈開通性モニタシステムの信号処理ユニットが提供され、このユニットは、四肢の第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1のプローブからの第1の入力信号を受け取るための第1の入力部と、第1の出力信号を処理して、第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いて、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成する所定の関数を使用するための手段と、四肢の第2の組織領域への第2の動脈血液供給に依存する第2のプローブからの第2の入力信号を受け取るための第2の入力部と、第2の出力信号を処理して、第2の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第2の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、第2の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用い、第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成する所定の関数を使用するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと比較するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段とを備える。この動脈開通性モニタシステムは、手術後又は手術中のものであってもよい。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、四肢の動脈の開通性をモニタするための動脈開通性モニタ方法が提供され、この方法は、第1の動脈血液供給が行われる四肢の第1の組織領域に隣接して第1のプローブを位置決めすることにより、該第1のプローブが、第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を生成するようにするステップと、第2の動脈血液供給が行われる四肢の第2の組織領域に隣接して第2のプローブを位置決めすることにより、該第2のプローブが、第1の組織領域への第2の動脈血液供給に依存する第2の出力信号を生成するようにするステップと、第1の出力信号を処理して、第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを生成するステップと、第1の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第1の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを組み合わせ、第1の血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するステップと、第2の出力信号を処理して、第2の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第2の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを生成するステップと、第2の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第2の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを組み合わせ、第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するステップと、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと比較するステップと、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するステップとを含む。この動脈開通性のモニタは、手術後及び/又は手術中のものであってもよい。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、四肢の動脈の開通性をモニタするための動脈開通性モニタシステムが提供され、このシステムは、四肢の第1の組織領域に隣接して位置する、第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を生成するための第1のプローブと、第1の出力信号を処理して、第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを生成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを用いて、第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段とを備える。この動脈の開通性のモニタは、手術後及び/又は手術中のものであってもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、四肢の組織領域に取り付けるための基板内部に組み込まれた内蔵型動脈開通性モニタシステムが提供され、このシステムは、基板が取り付けられる四肢の組織領域への動脈の血液供給に依存する出力信号を生成するための第1のプローブと、出力信号を処理して、第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを生成するための手段と、第1及び第2の動脈血液供給メトリックに依存して駆動するようにした、組織領域の動脈潅流を示す視覚表示手段とを備える。この動脈開通性モニタシステムは、手術後動脈開通性システムであってもよい。この動脈開通性モニタシステムは、手術中の動脈開通性システムであってもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、動物の末梢部分への血液供給を評価するためのシステムが提供され、このシステムは、末梢部分の第1の組織領域に隣接して位置し、第1の組織領域への血液供給に依存するそれぞれ異なる第1の出力信号を生成するための複数の異なるセンサを備えた第1のプローブと、第1の出力信号を処理して、第1の組織領域に関する血液供給メトリックを作成するための処理装置とを備える。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、プローブの位置決め装置が提供され、この装置は、3次元基板と、装置の使用時に、基板を被験者の身体の所定の末梢部分に隣接して正確に方向付け及び位置決めするための手段と、装置の使用時に、第1の動脈から血液が主に供給される末梢部分の第1の領域に隣接するようにされた、基板上の所定の第1の位置にプローブを位置決めするための第1のプローブ位置決め手段と、装置の使用時に、第2の動脈から血液が主に供給される末梢部分の第2の領域に隣接するようにされた、基板上の所定の第2の位置にプローブを位置決めするための第2のプローブ位置決め手段とを備える。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、動脈プローブ位置決め装置が提供され、この装置は、第1の側と第2の側とを有する反転3次元基板と、装置を左足に使用する場合、被験者の身体の足に第1の側が隣接するように基板を正確に方向付け及び位置決めし、装置を右足に使用する場合、被験者の身体の足に第2の側が隣接するように基板を正確に方向付け及び位置決めするための手段と、装置の使用時に、左足に使用するか右足に使用するかに関係なく、第1の位置が足の同じ第1の領域に隣接するように基板上の所定の第1の位置にプローブを位置決めするための第1の動脈プローブ位置決め手段とを備える。
【0019】
本発明をより良く理解するために、次に単なる例示として添付図面を参照することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、末梢動脈開通性モニタ(PAPM)システム10を概略的に示す図である。この末梢動脈開通性モニタは、パルス酸素濃度計などの全身性モニタとは全く異なる可能性のある特定の問題を解決する必要がある。この末梢動脈開通性モニタは、遠位部の末梢位置、典型的には足への動脈の血液供給レベルは評価するが、生命維持又は生命に係わる機能については評価しない。
【0021】
モニタ10は、1又はそれ以上のプローブ2と、(単複の)プローブ2からの(単複の)入力を受け取り、この(単複の)プローブ2に(単複の)制御出力を与えるように構成されたベースステーションユニット12とを含む。
【0022】
図2には、プローブ位置決め装置40を示している。これは、足などの被験者の遠位末梢部50の所望の動脈に(単複の)プローブ4を正確に位置決めするために使用される。
【0023】
この例では、プローブ2は、末梢動脈の血液供給に関する1又は複数の生理的依存パラメータを測定するための単複のセンサ4を含む。これらのパラメータは、例えば、動脈の血液供給力、動脈の血液供給径、末梢脈拍数、皮膚の赤み、及び皮膚温度のうちの1又はそれ以上を含むことができる。
【0024】
センサ4のうちの1つは、末梢動脈の血液供給を測定するプレスチモグラフセンサである。その他のセンサ4は温度センサであってもよい。
【0025】
ひずみゲージプレスチモグラフ又はインピーダンスプレスチモグラフをプレスチモグラフセンサ4として使用して、末梢動脈の血液供給を評価することができる。このようなプレスチモグラフから出力される信号は、ベースユニット12により処理されて、動脈の血液供給力、動脈の血液供給径及び末梢脈拍数を示すことができる。
【0026】
インピーダンスプレスチモグラフ法は、通常、プローブの干渉を避けるために複数のプローブを時分割多重方式又は周波数分割多重方式で利用することができる。足の両側に2点式の大面積プローブを使用して、足への平均的な動脈供給量に相当する統合信号を出力することができる。(必要に応じて)皮膚の赤みを評価するためには、追加で光学センサ4が必要となる。
【0027】
また、光学プレスチモグラフをプレスチモグラフセンサ4として使用して、末梢動脈の血液供給を評価することもできる。このようなプレスチモグラフから出力される信号はまた、ベースユニット12により処理されて、動脈の血液供給力、動脈の血液供給径及び末梢脈拍数を示すこともできる。光学プレスチモグラフをセンサ4として使用して、皮膚の赤みを評価することもできる。
【0028】
光学プレスチモグラフセンサでは、光学検出装置とともに光源を使用して、(センサを指に使用する場合)組織を通過する光を、或いは(プローブを皮膚表面に使用する場合)組織層から反射される光をモニタする。光源は、組織内での吸収は弱いが、血液には強く吸収され、適切な波長は850nm付近の近赤外線となる。また、これらの波長における光吸収を登録するための適切な検出装置回路を有する異なる波長の複数の光源を使用して動脈及び静脈の血液飽和率に関する追加情報を提供することもできる。
【0029】
各々のプローブ2はまた、皮膚表面温度センサ4を含むこともできる。温度センサ4は、熱電対センサ、抵抗式センサ、半導体接合センサ等であってもよく、プローブの配置部位における局所的な皮膚温度をモニタする。
【0030】
各々のプローブ2はまた、測定済みのパラメータをベースユニット12へ送信できるようにするための回路6も含む。この送信は、無線又は有線接続を介したアナログ形式又はデジタル形式のものであってもよい。
【0031】
無線プローブの場合、各々のプローブ2は、ベースユニットから回路に遠隔的に電力を与えるための電源、通常は充電池を含むこともできるが、有線プローブは、例えばUSB接続を介してベースユニットから電力を受け取ることができる。
【0032】
ベースユニット12は、マイクロプロセッサ14と、ネットワークアダプタ19と、ディスプレイ18と、メモリ16と、信号処理回路20とを含む。
【0033】
ベースユニットは、電池又はコンセントから電力を得ることができる。
【0034】
ネットワークアダプタ19により、遠隔テレメトリを介して結果を通信できるようになる。これにより、例えば、外科医が無線インターネット携帯電話を使用することにより、末梢バイパスグラフトの開通性を遠隔モニタできるようになる。
【0035】
各センサ専用の信号処理回路20が存在することもあり、或いは、プローブの異なるセンサからの信号が処理回路への入力部で多重化された状態の各プローブ専用の信号処理回路が存在することもあり、或いは、異なるプローブの同じセンサからの信号が処理回路への入力部で多重化された状態の各センサタイプ専用の信号処理回路が存在することもあり、或いは、異なるプローブの異なるセンサからの信号が処理回路への入力部で多重化された状態の単一の信号処理回路のみが存在することもある。
【0036】
信号処理回路20はフロントエンド回路21を含み、この回路を使用して高域信号経路及び低域信号経路が提供される。
【0037】
フロントエンド回路21は、センサとインタフェース接続される。(図1に示すような)複数のプローブの複数のセンサを同時に連続モニタすることが意図される複数のフロントエンドが存在する場合もあり、或いは適当なマルチプレクサスイッチ(図示せず)を備えた単一のフロントエンドが存在する場合もある。
【0038】
インピーダンスプレスチモグラフセンサ用のフロントエンド回路21は、通常、センサに電流を供給する高周波数定電流発電機と、インピーダンスを検出及び測定するための制御システムとを含むことになる。
【0039】
光学プレスチモグラフセンサ用のフロントエンド回路21は、通常、光源のLEDを制御するための制御装置と、光センサトランスインピーダンス増幅器と、周辺光の干渉を補償する方法とを含むことになる。光源が照明を受けない期間が存在する時分割多重の実施構成を使用して上記を実現することができる。これにより、光源が照明を受けるときに干渉となる周辺光をモニタできるようになる。或いは、光源が変調され、検出システムがその変調に同期する周波数分割多重の実施構成を使用することにより上記を実現することもできる。
【0040】
フロントエンド回路21は、フィルタリングサブシステム22、23に入力を行う。このサブシステムは、低域フィルタ23と並列接続された高域フィルタ22を含む。高域フィルタ22は、高域信号経路における第1の要素であり、低域フィルタ23は、低域信号経路における第1の要素である。
【0041】
プレスチモグラフセンサの出力は、通常、大きな準静的な信号成分と小さな準周期的な時変信号の成分とを含む。準静的な成分は、主に組織の静的構造及び徐々に変化する静脈循環によって生じ、小さな準周期的な信号成分は、動脈の血液供給を行う弾性動脈を満たし、その後排出する心臓系によって生じる。
【0042】
高域フィルタは、周波数がほぼ0.5Hzよりも大きな信号を通すことができる。このフィルタは、動脈の血液供給を示す分化した準周期的な信号を生成する。
【0043】
低域フィルタは、周波数がほぼ0.5Hz未満の信号を通すことができる。このフィルタは、統合された準静的な信号を生成する。
【0044】
プローブから出力される準静的な信号と準周期的な信号の両方の振幅は、(皮膚脂肪などの)被験者の生体構造、プローブの形状及び種類、プローブ結合の効率などの多くの事項に依存する。写真光学プレスチモグラフ法の場合は皮膚の色が、インピーダンスプレスチモグラフ法の場合は組織の含水量が信号の大きさに影響を与える。結果として得られる信号振幅を被験者間で直接比較することはできないため、被験者間で動脈の血液信号をスケーリングすることが望ましい。
【0045】
プローブの配置後、フロントエンド回路21は、準静的な信号成分の中間目盛の値を示すように自身を構成することにより初期化を行う。インピーダンスプレスチモグラフ法の場合、電流が増加して、許容可能な上限と下限との中間の1のような準静的なインピーダンス信号を生成することになる。写真光学プレスチモグラフでは、通常、LED強度が増加することになるため、結果として得られる準静的な信号は、所望の範囲の中間の、この場合も例えば1となることになる。
【0046】
高域フィルタ22には、準静的な信号を増幅する自動利得システム(AGS)24が後続する。このAGSは、結果として得られる動脈の血液供給信号が所望の範囲の中間、例えば1になるように準静的な信号の利得を設定する。任意の血液供給の増加又は減少を信号の範囲内に調整して、信号飽和又は信号減衰の可能性を減少させることになる。
【0047】
高域信号経路では、AGS24の出力は、次にアナログデジタル変換装置25によりアナログ形式からデジタル形式に変換される。結果として得られるデジタル信号27が処理装置14に供給される。
【0048】
低域信号経路では、低域フィルタ23の出力は、次にアナログデジタル変換装置26によりアナログ形式からデジタル形式に変換される。結果として得られるデジタル信号28が処理装置14に供給される。
【0049】
これらのADCは別個のものであってもよいし、或いはマイクロプロセッサ14に含まれるものであってもよい。ADCは、所望の帯域幅の少なくとも2倍のナイキストサンプリング基準を少なくとも満たすサンプリング、例えば帯域幅0〜4Hzの場合8サンプル/秒を使用する。
【0050】
マイクロプロセッサは、高域フィルタリングされた信号(分化した準周期的な信号)27を低域フィルタリングされた信号(統合された準静的な信号)28で除算し、静脈供給からの影響が殆ど無い動脈の血液供給を示す動脈の血液供給信号を実現させる。
【0051】
マイクロプロセッサ14は、次に、メモリ16に記憶されたプログラム17を実行する。メモリは、読み取り専用の1回のみプログラム可能な(製造時にプログラムされる)メモリであってもよく、或いは再プログラム可能なFLASHメモリ及び適当なネットワークインタフェースを使用してインターネットを介してアップグレードが可能なメモリであってもよい。
【0052】
プログラムされたマイクロプロセッサ14は、末梢動脈のバイパスグラフトの開通性を評価する計算を行う。周波数領域又は時間領域においてこの処理を行うことができる。
【0053】
次の処理のために、動脈の血液供給信号は、上記アルゴリズムによって測定期(epochs)に分割される。この測定期は比較的長く、例えば複数の心周期の継続時間であってもよく、10秒又は15秒であってもよい。
【0054】
周波数領域の信号処理−信号強度及び径
図3に典型的な動脈の血液供給信号を示す。5つの動脈の脈拍を示している。
【0055】
マイクロプロセッサ14は、動脈の血液供給信号の周波数領域処理を行って、図4に示すようなゼロを平均としたパワースペクトル密度(PSD)関数を生成する。図示したPSDは、動脈の血液供給信号から30秒の測定期のものであり、均等目盛り、100サンプル/秒、2048ポイントのFFT、及びハミング窓で図4に示されている。
【0056】
図4では、4番目までの高調波とともに基本波がはっきりと見える。パワースペクトル密度関数(PSD)の基本波のピークは、マイクロプロセッサ14により識別される。
【0057】
動脈の供給信号強度は、動脈の血液供給の基本波が存在する範囲に一致するため、0〜4Hz範囲におけるピーク値であると考えられ、この場合24付近となる。
【0058】
動脈の供給信号径は、帯域外成分に対する帯域内成分の比率であると考えられ、ここでは0〜4HzのPSDの積分値を4〜8HzのPSDの積分値で除算したものとして示される。
【0059】
被験者が、ある程度の心不整脈を有する高齢患者である場合もあるため、使用する測定期は短すぎないことが重要である。測定期は10秒よりも長く、通常は20秒よりも長い。測定期が短すぎると、信号径の測定が誤って変動し、心不整脈を追跡してしまうことになる。測定期が長ければ、信号品質の測定が長期間にわたって行われ、信号強度の信頼性がより高まることになる。
【0060】
また、基本波のピーク周波数により、末梢における心臓脈動の周波数であり、心拍数に密接に関係する末梢脈拍数(PPR)も測定できるようになる。
【0061】
PPRをECGなどの中央モニタから導き出される心拍数値と比較すると、末梢動脈のバイパスグラフトの開通性に関する追加情報が得られることになる。2つの値が同じか又は類似したものあれば、動脈の脈動が心臓と同期していることが確実となる。2つの値が大きく異なれば、末梢にあまり動脈血液が供給されていないことが確実となる。
【0062】
時間領域信号処理−信号強度及び径
ベースユニット12に大規模なフーリエ変換を行うことができない安価なマイクロプロセッサ14を使用する場合、時間領域アルゴリズムが有利な場合がある。処理能力が低いことは、一般に電力消費が少ないことを意味し、従って再充電又は交換までの間電池ユニットが長持ちすることになる。
【0063】
図5に示すように、時間領域における動脈の血液供給信号のエンベロープをとり、測定期にわたって平均すると、簡単で確実に動脈の血液供給信号の強度に関する情報が得られることになる。単純なダイオードエンベロープ検出装置を使用してもよいが、最初にスプリアスノイズスパイクを除去するアルゴリズムを使用することが望ましい。
【0064】
次に、測定期全体のエンベロープが積分されて、測定期にわたる動脈の血液供給力に関するメトリックが得られる。
【0065】
時間領域分析を使用する実施形態では、相関技術を用いて動脈の血液供給径を求めることができる。
【0066】
自己相関関数のゼロ以外の最大ピークの大きさが、適切な動脈の血液供給径のメトリックとなる。しかしながら、これは絶対値であり、被験者間で比較することはできない。
【0067】
改良した実施構成として、相互相関によって現在の測定期に関する信号を前回の測定期に関する信号と比較することが挙げられる。この前回の測定期は、例えば、初期化後の最初の測定期であってもよく、或いは直前の測定期であってもよい。
【0068】
この2つの測定期は、マイクロプロセッサメモリ内の、各測定期の3倍の長さを有する1次元データアレイ(ベクトル)に記憶される。一方の測定期はアレイの最初に配置され(記憶された測定期)、他方の測定期はアレイの中心に配置される(現在の測定期)。残りのアレイの場所はゼロで満たされる。
【0069】
2つのアレイに関するピアソンの相関係数は単純な計算で得られ、これも結果のアレイに配置される。次に、記憶したアレイの値を1つのサンプルポイントとともにシフトし、アレイの空の部分をゼロで満たす。次に、シフト済みの記憶した測定期とアレイの中心にある現在の測定期との間でピアソンの相関係数が再び計算される。
【0070】
これは、記憶した測定期が現在の測定期全体にわたって移動するまで続けられ、1以内の正の値と負の値との間で振動するピアソン相関の結果のアレイが作成される。動脈の血液供給径のメトリックとして、ピアソン相関のアレイの最大値を使用することができ、また、ピアソン相関のアレイの最大値と最小値との間のサンプルにおける間隔を使用して、現在の測定期に関する平均末梢脈拍数を計算することができる。動脈メトリックが常に+1と−1の間で変動することがこの技術の利点である。
【0071】
皮膚の赤み
写真光プレスチモグラフ法を使用する実施形態ではまた、各々のプローブ位置の皮膚の赤みを任意にモニタすることもできる。皮膚の赤みをモニタすることにより、プローブ位置の領域における動脈の血液供給及び静脈排出路により影響を受ける静脈の血液色に関する情報を得ることができる。多波長写真電気プローブを使用して、酸化ヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンに反応する波長、典型的には640nm(赤)及び840nm(赤外)で皮膚の赤み(SCR)を測定することができる。各プローブに対して、Redセンサ及びIRセンサから出力される準静的な信号28の関数、例えば、以下の関数を使用して皮膚の赤みの指標を計算することができる。
SCR=2*Semi−Static_Red/(Semi−Static_Red+Semi−StaticJR)
この例では、準静的な信号28及び準周期的な信号27はAGS24を使用して1に初期化されるため、初期化の際にSCR値は1となる。皮膚の赤みにおける偏差値が1よりも大きくなって、静脈酸素飽和率が増加したことを示すこともあり、ゼロ未満となって、酸素飽和率が減少したことを示すこともある。
【0072】
皮膚温度
また、各々のプローブ位置における皮膚温度を任意にモニタすることもできる。周囲温度に対して皮膚温度をモニタすることにより、プローブ位置の領域における動脈の血液供給により影響を受ける血液潅流に関する情報を得ることができる。
【0073】
例えば、温度センサからの準静的な信号28を使用して、時間の経過に伴う皮膚温度と周囲温度との間の差分の変化率を各々のプローブにおいてモニタすることができる。周囲の温度変化に対して皮膚が反応する時間が短くなるか、或いは皮膚温度と周囲温度との間の差分が減少することにより、動脈の血液供給が減少していることが示される場合がある。
【0074】
処理
マイクロプロセッサ14が、動脈の血液供給力、動脈の血液供給径、皮膚の赤み、皮膚温度、及び末梢脈拍数のうちの複数を含む様々な動脈の血液供給メトリックを計算した後、これらをベースユニット12のディスプレイ18に個々に表示することができる。
【0075】
マイクロプロセッサ14が使用する所定の関数は、引数としてこれら動脈の血液供給メトリックのうちのいくつかを使用して複合動脈開通性メトリックを決定する。この関数は、非線形処理をスケーリングするか、或いはこれを使用して、様々な入力された動脈血液メトリックを重み付けすることができる。
【0076】
動脈の血液供給メトリックをm1,m2,...,mNとし、動脈の血液供給メトリックを組み合わせ、所定の関数Fを使用して複合動脈開通性メトリックPを作成すると、この場合P=F(m1,m2,...,mN)となる。
【0077】
動脈の血液供給メトリックを独立メトリック(これは必ずしも真でなくてもよい)として処理する場合、dF/Пdmi=g(mj)となり、この場合i=1,2,...,Nとなるがi≠jとなる。この方程式の解は、F=Пmiとなり、この場合i=1,2,...,Nとなる。
【0078】
例えば、上述の値を使用することにより、動脈の血液供給力に動脈の血液供給信号径を乗算し、皮膚の赤みを乗算して開通性指標を生成することができる。これらの構成要素のうちのいずれかが低い値であれば、グラフトの開通性の低下を示すことになるため、複合メトリックは、任意の単独のパラメータの低下に敏感なものとなる。
【0079】
正常化されて1となったメトリック値を使用することが望ましい。これは、現在時刻のメトリック値を初期化時のメトリック値で乗算することにより実現することができる。
【0080】
例えば、足の3個所のプローブ位置で複合動脈開通性メトリックを比較することにより、腓骨などの単一の動脈がいつ開通性を失うかが示されるようになる。マイクロプロセッサ14は、第1の組織領域における第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと、第2の組織領域における少なくとも第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックとの間の差分を計算する。
【0081】
動脈が開通していなければ、この動脈に対応するプローブ位置に関する複合動脈開通性メトリックが、その他の動脈に関するその他のプローブ位置に対して減少することになる。従って、第2の位置における複合動脈開通性メトリックと同じ時刻に比較した第1の位置における複合動脈開通性メトリックの相対値を使用して、第1の位置に血液を供給する動脈の開通性を評価できることになる。
【0082】
第1及び第2の位置は、第1及び第2の動脈に対応する。第1及び第2の動脈は、足の(第1及び第2の位置)動脈などの別の動脈と並列分岐したものであってもよい。第1及び第2の動脈は連なった動脈であってもよく、この場合、第1の動脈が、膝の裏側(第2の位置)を通る第2の動脈から分岐した足(第1の位置)の動脈となる。
【0083】
複合動脈開通性メトリックの変化率を使用して、同様の情報を提供することができる。従って、前回の同じ位置における複合動脈開通性メトリックと比較した第1の位置における複合動脈開通性メトリックの相対値を使用して、第1の位置に血液を供給する動脈の開通性を評価できることになる。
【0084】
ディスプレイ18上で、或いはネットワークアダプタ19を介してアラームを起動して、メトリックが特定のしきい値をいつ超えたかを示すようにマイクロプロセッサ14を構成することができる。これは、上側のしきい値又は下側のしきい値であってもよく、モニタしたパラメータのうちの任意のパラメータ、或いは動脈の血液供給メトリック又は複合動脈開通性メトリックであってもよい。
【0085】
インターネット接続を使用する実施形態では、アラームの日時を示す電子メールを臨床医へ送信し、この臨床医が移動インターネット携帯電話を使用して電子メールをチェックするときに警告を発するようにすることもできる。この概念を拡張すると、電子メール又は(SMS、MMSなどの)移動電話メッセージを送信することにより、状況に対して警告を発するメッセージが臨床医へ送信されるようにすることもできる。
【0086】
プローブ位置決め装置
図2は、プローブ位置決め装置40の例を示す図である。装置40は、プローブ2を固定するか、或いは数多くの所定位置に取り外し可能に固定することができるホルスタ、サンダル又はソックスのような構成であってもよく、図にはホルスタを示している。装置の使用時には、特定の動脈が主に血液を供給する組織層の上に各々の所定位置が重なるようになる。動脈の例として、足背動脈となる前脛骨動脈、後前脛骨動脈、足底動脈、及び腓骨動脈がある。
【0087】
足背動脈からの血液供給を評価するのに適した位置は、長母指伸筋と第2中足骨との間、通常、足背に向かう部分である。図2では、プローブ2Bがこの位置に配置されている。
【0088】
後脛骨動脈からの血液供給を評価するのに適した位置は、内果と踵骨の内側結節との間(足首の下の足の内側)である。図2では、プローブ2Aがこの位置に配置されている。
【0089】
足底動脈からの血液供給をサンプリングするのに適した位置は、足指の根元付近の領域である。
【0090】
腓骨動脈からの血液供給をサンプリングするのに適した位置は、外果と踵骨(踵)の間の足の外側面である。図2では、プローブ2Cがこの位置に配置されている。
【0091】
通常、装置40に備えられる基板42は被験者の足に接触し、プローブ4を取り付けることができる所定位置44を有する。例えば、基板をソックスと一体化するか、サンダル又はホルスタのように基板を形成するか、接着剤を使用して基板を取り付けるか、又はストラップで基板を適所に固定することにより、基板42は使用者の足の適所に保持される。基板42は、1度使用した後にはプローブ4の一部又は全部を取外した後に廃棄される使い捨てであることが好ましく、この場合、使用とは、例えばバイパス手術後数時間の間末梢動脈血液供給をモニタすることに相当する。
【0092】
基板が腓の下端部の周りで回転しないようにすることが重要である。図示の例では、上記は、基板が踵をまたぐようにするか、取り囲むようにするか、或いは包み込むようにすることにより実現される。
【0093】
図2では、装置40はホルスタである。ホルスタは大まかに調節できるため、反対側の足にもこの設計を使用することができる。プローブを正確に配置するのではなく大まかに配置できるようになるため、図2の設計に(後述する)マトリクスプローブを使用するのは好適である。この設計は、足指の生体構造に基づく位置を要求することがなく、末梢動脈バイパスを受けた患者サブグループにおいては、すでに患者の足指が切除されている場合もあるため、このことは重要な配慮となっている。
【0094】
図6、図7及び図8には、別のホルスタの設計を示している。図6に示す1つの実施形態では、ホルスタ40の基板42は、足の母指とその隣の指との間を通る「足指固定具」60を使用すると共に、踝を基準とする切り欠き80を使用することにより位置決め及び方向付けされる。切り欠き80は、距骨の周りで基板42が回転するのを防ぐ。足指固定具は、足の母指とその隣の指との間の足の裏面に位置するフランジ61を有する。足指固定具61は、中足骨及び背面を超え、その後ループ62の形で足首の周りに延びる基板42に接続される。足指固定具と足首ループ62との間には張力調整機構63が設けられる。図示の例では、基板を強く固く引き下ろし、「1回のみ使用可能な」接着剤を使用して基板に固定することができる。足首ループ62もまた、同様の接着剤を使用して固定することができる。基板は、プローブ2A及び2Bをそれぞれ取り外し可能に受け入れるための開口部65A及び65Bを有する。開口部65Aは足底動脈の上に配置され、開口部65Bは後脛骨動脈の上に配置される。足の背面64上の基板にセンサ用のさらなる開口部を設けて、足背動脈をサンプリングすることができる。一方の面を左足の1番上にし、他方の面を右足の一番上にして使用する可逆的な(反転可能な)平坦なチップとして基板を設けることができる。この実施形態では、踵に切り欠きがあり、患者の足指はソックスの場合のように包囲されない。基板材料は、僅かに弾性変形可能であることが好ましく、開口部63は、それぞれのプローブ2の収容部にぴったり合う大きさとなる。各々の開口部には、障壁膜を設けることができる。
【0095】
足の母指固定具61と相まって、切り欠き80及び調節タブ63は共に、使用時に基板42及びプローブ2の移動を防ぐ。この設計により、皮膚温度などの従来の評価、又は看護士の触診による評価のために今まで通り足に接近できるようになり、これは、足指を包囲するソックスのような設計では不可能となることである。また、調節タブ63及び62により、1つの設計で多くの足のサイズにフィットできるようになり、可逆性(反転性)があることにより、この設計は左右両足に適合できるようになる。また、この設計は、足指が特定の形状であることに依拠せず(老齢者の足指は、正常な足指と大幅に異なるかぎ形又はかぎ爪形であることがある)、隣り合う2本の足指が存在するだけでよい。
【0096】
図7に示す別の実施形態では、ホルスタ40の基板42は、足の母指とそれに隣接する足指との間を通る「足指固定具」60を使用することにより位置決め及び方向付けされる。足指固定具は、足の母指の外部足背面の周りのみの覆い71を形成する基板42に接続される。基板42は、中足骨及び背面を覆い、その後ループ62の形で足首の周りに延びる。足指固定具と足首ループ62との間には、張力調整機構63が設けられる。図示の例では、基板を強く固く引き下ろし、「1回のみ使用可能な」接着剤を使用して基板に固定することができる。足首ループ62もまた、同様の接着剤を使用して固定することができる。基板は、プローブ2A及び2Bをそれぞれ取り外し可能に受け入れるための開口部65A及び65Bを有する。開口部65Aは足底動脈の上に配置され、開口部65Bは後脛骨動脈の上に配置される。足の背面上の基板にセンサ用のさらなる開口部を設けて、足背動脈をサンプリングすることができる。一方の面を左足の1番上にし、他方の面を右足の一番上にして使用する2つの部分からなる可逆的な(反転可能な)平坦なチップとして基板42を設けることができる。この実施形態では、踵に切り欠きがあり、患者の足指はソックスの場合のようには包囲されない。基板材料は、僅かに弾性的に変形可能であることが好ましく、開口部63は、それぞれのプローブ2の収容部にぴったり合う大きさとなる。各々の開口部には、障壁膜を設けることができる。
【0097】
組立体は、踝に位置する切り欠き穴80により距骨の周りで回転しないようにされる。後脛骨(足の内部)、腓骨、足背、足底に対して開口部を設けることができ、足指が包囲されることにより、開口部を足の母指の中足骨動脈に接近させることができる。光学的な技術では、これは全く反対側にあるセンサを使用した反射又は透過であってもよい。この設計により、皮膚温度などの従来の評価、又は看護士の触診による評価のために今まで通り足指に接近できるようになり、これは、足指を包囲するソックスのような設計では不可能となることである。
【0098】
図8に示す別の実施形態では、基板42は2つの部分からなる基板である。第1の部分80は、足の母指とその隣の足指の間を通り、足の母指の外側を包む「足の母指包囲部」72を使用することにより位置決め及び方向付けされる。基板42は中足骨を覆って延び、足裏の下でループを形成する。第2の部分80は、足首のループ及び足の背面及び足裏周りのループを使用することにより位置決め及び方向付けされる。「1回のみ使用可能な」接着剤を基板に使用して、足首及び足裏の各ループに張力調整機構63を設ける。基板は、プローブ2A及び2Bをそれぞれ取り外し可能に受け入れるための開口部65A及び65Bを有する。開口部65Aは足底動脈の上に配置され、開口部65Bは後脛骨動脈の上に配置される。足の背面上の基板にセンサ用のさらなる開口部を設けて、足背動脈をサンプリングすることができる。一方の面を左足の1番上にし、他方の面を右足の一番上にして使用する発泡体の可逆的な(反転可能な)平坦なチップとして基板の各部分の基板を設けることができる。この実施形態では、踵に切り欠きがあり、患者の足指はソックスの場合のようには包囲されない。基板材料は、僅かに弾性的に変形可能であることが好ましく、開口部63は、それぞれのプローブ2の収容部にぴったり合う大きさとなる。各々の開口部には、障壁膜を設けることができる。
【0099】
ホルスタが着用される可能性がある長期間の間、皮膚が呼吸できるようにする多孔性の使い捨てスポンジによって、この設計を開発することができる。この特徴は、基本的には図7と同じであるが、異なる材料及び数の部品を使用している。発泡体を使用して材料の自然弾性を利用し、成形穴を使用してプローブを装着することができる。発泡体はまた、半硬質基板の機能も果たしてプローブ移動の問題の減少も促進し(この設計では特に足指センサに適する)、光バリアの機能も果たし、そして、再び可逆的(反転可能)になることができる。この設計により、皮膚温度などの従来の評価、又は看護士の触診による評価のために今まで通り足指に接近できるようになり、これは、足指を包囲するソックスのような設計では不可能となることである。
【0100】
足に複数のプローブを使用し、足の特定の動脈をモニタして、個々の動脈の分岐、すなわち動脈の血液供給経路をモニタすることができるため、膝下のバイパスグラフトを行う場合、プローブ2の位置は特に重要となる。
【0101】
上述のことから理解されるように、動脈センサは被験者の動脈に対して正確に位置決めされることが重要である。これは、センサを保持するプローブを正確かつ安定的に位置決めするか、或いは以下に説明するような自動処理により実現することができる。
【0102】
図9は、同一の光学センサ4と対応する光源5との配列を含むプローブ2を示す図である。この例では、センサ4は、3×3グリッドのアレイとして配列され、光源5は、3×3のアレイから弱められた2×2グリッドのアレイとして配列される。センサの列は、センサの隣接する列から5mm〜10mm隔てられ、センサの行は、センサの隣接する行から5mm〜10mm隔てられる。光源5の行及び列も同様に隔てられる。
【0103】
プローブ2は、単一のセンサと光源との組の何倍もの検知面積を有する。ベースユニット12の初期化段階中、ベースユニット12はセンサ4を走査して、最も強力な動脈の供給信号強度を有するセンサ4を識別する。ベースユニット12は、この識別したセンサ4を使用し、残りの観察セッションに関しては、その特定のプローブの残りのセンサを無視する。
【0104】
ベースユニット12は、多重センサプローブ2の各センサに対して、可能性のある動脈の血液供給信号を求め、「最良」の可能性のある1又は複数の動脈の血液供給信号を判断し、結果的に1又は複数の最良のセンサを決定する。次に、ベースユニット12は、さらなる処理のためだけにこの1又は複数の最良のセンサの出力を使用する。
【0105】
上述したように、個々のセンサ4の出力は、低域フィルタ23及び高域フィルタ22を通して同時にフィルタリングされる。マイクロプロセッサ14は、高域フィルタ処理された信号(分化した準周期的な信号)27を低域フィルタ処理された信号(統合された準静的信号)28で除算して、動脈の血液供給を示すことができる可能性のある動脈の血液供給信号を完成させる。
【0106】
高域フィルタ処理された信号の振幅、可能性のある動脈の血液供給信号の振幅、又は可能性のある動脈の血液供給信号のパワースペクトル密度(PSD)の振幅のうちの任意の1つ又は任意の組み合わせから、この「最良」の信号を選択することができる。
【0107】
1又は複数の最良のセンサから得られる出力のみを使用することは、プローブ2に1又は複数の最良のセンサ4のみを動作させるように命令するか、或いはプローブ2のセンサ4全てからの入力を処理して、さらなる処理、すなわち動脈の血液供給信号の計算のために(単複の)最良のセンサから得られた(単複の)出力のみを選択することのいずれかにより実現することができる。
【0108】
ベースユニット12については、プローブ2とは別個の、おそらくは離れた場所にあるユニットとして説明してきたが、このユニットは、図2に示すように装置に組み込むこともでき、この場合足の背面に装着されることになる。
【0109】
また、図10に示すようにベースユニットを基板に一体化して、コンパクトPAPMシステム10を形成することもできる。図10では、ベースステーション及びプローブ2Aは基板7の内部に組み込まれて、例えば、貼り付け式のハイドロゲル、粘着テープ、包帯又は腕輪を使用して被験者の四肢に取り付けられる。基板は、1又は場合によってはそれ以上のセンサを使用して、一カ所で潅流を測定する小型で(<16cm2)軽量な内蔵型の低価格PAPMシステム10を形成する。PAPMシステム10は使い捨てであってもよい。LEDのような視覚インジケータを使用して、動脈の開通性又は動脈の開通性の変化を明示することができる。
【0110】
図2に関して説明したように、PAPMシステム10は、プローブ2、処理回路20を含む。PAPMシステム10はまた、視覚インジケータ3も有するが、ネットワークインタフェース19及びディスプレイ18は有していない。実施構成によって、マイクロプロセッサ14及びメモリ16を有する場合も、有さない場合もある。
【0111】
図10に示すコンパクトな「ピル状の」実施形態では、PAPMシステム10は、直径25mm高さ15mmの円筒状管の形状となる。1又はそれ以上のセンサを備えるプローブ2が第1の平坦面9に配置され、1又はそれ以上の視覚インジケータ3が他方の第2の平坦面に配置される。コンパクトモニタ10の第1の平坦面9は、腓腹又は足などの患者の皮膚の肉付きのよい灌流の良好な領域に固定されることになる。
【0112】
1つの実施形態では、第1の面9におけるプローブ2の光源は、第1の面9に隣接する真皮及び皮下組織の脈動する動脈血管を照射し、第1の平坦面9におけるプローブ2の1又はそれ以上の光センサは、動脈血管から反射された光を検出する。
【0113】
組織には強く吸収されず、血液全体に強く吸収されるが、ヘモグロビン酸素が飽和した状態で吸収が殆ど変化しない810nmなどの波長の光が使用される。照射を受けた動脈層により反射される光の変調は、心臓血管の脈波によって引き起こされる動脈直径の変化と同期し、図1に関して上述したように、光センサ及び処理回路20によるその後のフィルタリング及び増幅で検出することができる。
【0114】
測定された末梢脈拍数を使用して、コンパクトモニタ10の第2の側11における視覚インジケータ3を駆動することができる。視覚インジケータは、点滅周波数がPPRに一致するように制御されるLEDであってもよい。
【0115】
視覚インジケータ3の色(又は点滅するインジケータの個数)は、測定された動脈の血液供給力又は同様のメトリックにより様々であってもよい。潅流強度の範囲を以下の3つのゾーンに分け、信号強度アルゴリズムを使用して単純な信号機の方法を実行することができる。
1.高い潅流強度を緑色とする
2.中間の潅流強度を黄色とする
3.低い潅流強度を赤色とする
【0116】
PPRの正常値及び動脈の血液供給力又は径の正常値などの動脈の血液供給メトリックを掛け合わせることにより複合動脈開通性メトリックを作成することができる。次に、この複合動脈開通性メトリックを使用して、視覚インジケータ3の信号の色(又はインジケータが使用LEDの個数)を制御することができる。複合動脈開通性メトリックがしきい値より低下すると圧電性の警報機を鳴らすようにすることができる。
【0117】
複数の光源を使用する場合、動脈の血液供給メトリックとして皮膚の赤みも取り入れることができる。ここで、光源は脈動していない表皮の毛細血管を照射する。次に、前述したように所定の関数を用いて潅流強度及び皮膚色のメトリックを組み合わせ、複合開通性メトリックを作成することができる。
【0118】
開通性メトリックを作成するために組み合わされるさらなる動脈の血液供給メトリックとして皮膚温度を使用することができる。
【0119】
動脈の血液供給メトリックは、装置を最初に皮膚に取り付けるときに初期値をとって記録し、次に、その後の値を初期値で除算することにより正常化される。これにより、皮膚の厚み、皮膚の色調及び血管系における固有の偏差が補正される。
【0120】
プローブの光源は単パルスの照射を行う。低い電力消費で動脈の脈波を評価するために、光パルスは、通常50usの幅とされることになる。最大末梢脈拍数を3.5心拍/秒と仮定すると、光センサは10回/秒サンプリングされることになる。皮膚の赤み及び/又は皮膚温度を評価するために、光パルス及びその後のサンプリング頻度を1回/秒のように少なくすることができる。
【0121】
装置の感度を上げるために、プローブ2の光センサ及び光源を、光拡散器を加えて設計することができる。拡散器は、プローブ2の動作域を効果的に増加させ、位置及び位置合わせに対する過敏度を減少させる。
【0122】
本発明の消耗品の実施構成では、電源として亜鉛空気電池を使用することができる。亜鉛空気電池には、未使用時の自己放電率が極めて低いという利点がある。
【0123】
代替の実施形態では、電源としてリチウムマイクロ電池を使用することになる。これらの電池は、長寿命ではあるがエネルギー密度が低く、再充電ができない。小型リチウム電池は内部インピーダンスが高く、光源の点滅に必要とされるような高い電流パルスを送達することができないため、この方法は過渡電流緩衝システムを必要とする場合がある。
【0124】
再使用可能な内蔵型モニタ10は再充電可能な電池を有する。この小型モニタ10は、外側ハウジングにワイヤコイルを含んで、電池を充電するために無線エネルギー転移装置の機能を果たすようにすることができる。このコイルはまた、光源に必要な強力な電流過渡に電力を与え、さらに視覚インジケータの光源を点滅させるための静止エネルギー貯蔵庫の機能を果たすことができる。
【0125】
モニタ10の第1の側9に多くの熱電対を組み込むことにより、それらが患者の皮膚と熱接触して熱電堆電源を形成するようにすることができる。熱電対はまた、皮膚温度の基準も提供し、これを動脈の血液供給メトリックとして使用し、その他の血液供給メトリックと組み合わせて動脈の開通性メトリックを形成することができる。このようなマイクロ電源は、装置の過渡電力要求に対応する手段を必要とする。マイクロ電力エネルギーを使用してインダクタ又はコンデンサにエネルギーが与えられ、必要時に、状態機械のタイミングシステムが、光センサを介した貯蔵エネルギーの放出と視覚インジケータとを制御する。
【0126】
アラームのしきい値などの装置のパラメータの修正が必要となる場合がある。小型モニタ10は、すでにプローブ2に光センサ及び光源を含んでいるため、これらを再使用して、設定ユーティリティーを実行するコンピュータに赤外線データリンクを提供することができる。統合されたアナログ及びデジタルサブシステムを備えた再構成可能なマイクロプロセッサ14は、オンザフライでアーキテクチャの改造を行うことができる。装置にメモリ16及びクロックを装備することにより、特定のイベント及び間隔の時間刻印が可能となり、記憶したメトリックの問合せが可能となる。例えば、動脈の血液供給力が夜間に設定値よりも下がった期間をイベントとしてメモリに記録し、朝に問合せしてダウンロードすることができる。
【0127】
様々な例を参照しながら本発明の実施形態について前段落において説明してきたが、主張する本発明の範囲から逸脱することなく、所与の例に修正を行うことができると理解すべきである。
【0128】
上述の明細書では、特に重要であると思われる本発明の特徴に留意するよう努めたが、特に重点を置いているかどうかに関係なく、上記言及した及び/又は図示した任意の特許可能な特徴又は特徴の組合せに対して、出願者が保護を主張することを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】末梢動脈開通性モニタ(PAPM)の略図である。
【図2】プローブ位置決め装置の例を示す図である。
【図3】典型的な動脈の血液供給信号を示す図である。
【図4】図4に示す動脈の血液供給信号のパワースペクトル密度(PSD)を示す図である。
【図5】図3に示す動脈の血液供給信号のエンベロープを示す図である。
【図6】異なるプローブ位置決め装置を示す図である。
【図7】異なるプローブ位置決め装置を示す図である。
【図8】異なるプローブ位置決め装置を示す図である。
【図9】光学センサ及び対応する光源の配列を含むプローブを示す図である。
【図10A】異なる視点による同じ小型PAPMの略図である。
【図10B】異なる視点による同じ小型PAPMの略図である。
【符号の説明】
【0130】
2A プローブ
2B プローブ
4a センサ
4b センサ
6 回路
10 末梢動脈開通性モニタ(PAPM)システム
12 ベースステーションユニット
14 マイクロプロセッサ(処理装置)
16 メモリ
18 ディスプレイ
19 ネットワークアダプタ(ネットワークインタフェース)
20 信号処理回路
21 フロントエンド回路
22 高域フィルタ
23 低域フィルタ
24 自動利得システム(AGS)
25 アナログデジタル変換装置
26 アナログデジタル変換装置
27 高域フィルタリングされた信号(分化した準周期的な信号)
28 低域フィルタリングされた信号(統合された準静的な信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢の動脈の開通性をモニタするための術後の動脈開通性モニタシステムであって、
四肢の第1の組織領域に隣接して位置する、前記第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を生成するための第1のプローブと、
前記四肢の第2の異なる組織領域に隣接して位置する、前記第2の組織領域への第2の動脈血液供給に依存する第2の異なる出力信号を作成するための第2のプローブと、
前記第1の出力信号を処理して、前記第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、
前記第2の出力信号を処理して、前記第2の動脈血液供給に関する前記第1の動脈血液供給メトリックと、前記第2の動脈血液供給に関する前記第2の動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、前記第1の血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、
前記第2の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる前記所定の関数を使用して、前記第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックを前記第2の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックと比較するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックと前記第2の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、前記第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記所定の関数は、少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを掛け合わせて複合動脈開通性メトリックを作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の動脈血液供給メトリック及び前記第2の動脈血液供給メトリックは乗算を行う前に正常化される、
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の動脈血液供給メトリック及び前記第2の動脈血液供給メトリックは、動脈の血液供給信号の強度、動脈の血液供給信号径、末梢脈拍数、皮膚の赤み及び皮膚温度のうちの異なるいずれかである、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
個々のプローブは、少なくとも第1のセンサと第2のセンサとを含み、前記第1のセンサは、前記第1の動脈血液供給メトリックを作成するために使用する第1の出力信号を出力し、前記第2のセンサは、前記第2の動脈血液供給メトリックを作成するために使用する第1の出力信号を出力し、前記第1及び第2のセンサは、プレスチモグラフセンサ、皮膚の温度センサ及び皮膚の色センサのうちの異なるいずれかである、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
センサの出力を処理して高周波数信号と低周波数信号とに変えるための信号処理回路をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記高周波数信号の前記低周波数信号に対する比率を生成するための手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2のプローブの少なくとも一方は複数のセンサを有し、前記システムは、前記複数のセンサからの出力を処理して、前記複数のセンサから得られる出力のac成分に応じて前記複数のセンサのサブセットを選択し、次に、前記選択したセンサのサブセットのみの出力を処理して血流を評価すべく作動可能な手段をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記サブセットに含まれるセンサを選択するステップは、個々のセンサに関してac成分のdc成分に対する比率を計算するステップを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
プローブ位置決め装置をさらに含み、該プローブ位置決め装置は、
足に適合する形状にされた3次元基板と、
前記装置の使用時に、前記基板を足の所定の部分に隣接して正確に方向付け及び位置決めするための手段と、
前記基板の所定の第1の位置にプローブを位置決めすることにより、前記装置の使用時に、前記第1の位置が前記第1の組織領域と前記第1の動脈とに隣接するようにする第1のプローブ位置決め手段と、
前記基板の所定の第2の位置にプローブを位置決めすることにより、前記装置の使用時に、前記第2の位置が前記第2の組織領域と前記第2の動脈とに隣接するようにする第2のプローブ位置決め手段と、
を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記3次元基板は反転可能であることにより、第1の構成では前記基板は左足に適合するように成形され、前記第1の構成とは逆の第2の構成では、前記基板は右足に適合するように成形され、前記基板を正確に方向付け及び位置決めするための手段は、前記第1の構成及び前記第2の構成において動作可能であり、前記第1のプローブ位置決め手段の前記第1の位置は、前記プローブ位置決め装置の使用時に、前記第1の構成で左足に使用されるか前記第2の構成で右足に使用されるかに関係なく、前記第1の位置が前記足の同じ第1の組織領域に隣接するようにされ、前記第2のプローブ位置決め手段の前記第2の位置は、前記プローブ位置決め装置の使用時に、前記第1の構成で左足に使用されるか前記第2の構成で右足に使用されるかに関係なく、前記第2の位置が前記足の同じ第2の組織領域に隣接するようにされる、
ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1及び第2の動脈は、同じ足の足背、後脛骨、足底及び腓骨から成るグループから選択される、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1及び第2の組織領域は、前記足の背面の脛骨側部、前記足首の下の足の内側、前記第1と第2の中足骨の間、前記足の母指及び前記足の踵から成るグループから選択される、
ことを特徴とする請求項10、11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
第2の動脈が前記第2の動脈血液供給を行い、前記第1及び第2の動脈は、第3の動脈から並列分岐した動脈である、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
第2の動脈が前記第2の動脈血液供給を行い、前記第1の動脈は、前記第2の動脈の下流の分岐である、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の組織領域は足の一部であり、前記第2の組織領域は同じ足の膝の裏側である、
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
四肢の動脈の開通性をモニタするための術後の動脈開通性モニタシステムの信号処理ユニットであって、
四肢の第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1のプローブからの第1の入力信号を受け取るための第1の入力部と、
前記第1の出力信号を処理して、前記第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いて、前記第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成する所定の関数を使用するための手段と、
前記四肢の第2の組織領域への第2の動脈血液供給に依存する第2のプローブからの第2の入力信号を受け取るための第2の入力部と、
前記第2の出力信号を処理して、前記第2の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第2の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、
前記第2の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用い、前記第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成する所定の前記関数を使用するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックを前記第2の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックと比較するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックと前記第2の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、前記第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段と、
を備えることを特徴とするユニット。
【請求項18】
センサの前記出力を処理し、高周波数信号と低周波数信号とに変えるための信号処理回路をさらに含む、
ことを特徴とする請求項17に記載のユニット。
【請求項19】
術後の四肢の動脈の開通性をモニタするための動脈開通性モニタ方法であって、
第1の動脈血液供給が行われる四肢の第1の組織領域に隣接して第1のプローブを位置決めすることにより、該第1のプローブが、前記第1の組織領域への前記第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を作成するようにするステップと、
第2の動脈血液供給が行われる前記四肢の第2の組織領域に隣接して第2のプローブを位置決めすることにより、該第2のプローブが、前記第1の組織領域への前記第2の動脈血液供給に依存する第2の出力信号を作成するようにするステップと、
前記第1の出力信号を処理して、前記第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するステップと、
前記第1の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、前記第1の動脈血液供給に関する前記少なくとも第1及び第2の動脈血液供給メトリックを組み合わせ、前記第1の血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するステップと、
前記第2の出力信号を処理して、前記第2の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第2の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するステップと、
前記第2の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる前記所定の関数を使用して、前記第2の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを組み合わせ、前記第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するステップと、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックを前記第2の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックと比較するステップと、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックと前記第2の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックとの間の差分を用いて、前記第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するステップとを含む。
【請求項20】
四肢の動脈の開通性をモニタするための術後の動脈開通性モニタシステムであって、
四肢の第1の組織領域に隣接して位置する、前記第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を作成するための第1のプローブと、
前記第1の出力信号を処理して、前記第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、前記第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するための手段と、
前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックを用いて、前記第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するための手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項21】
四肢に取り付けるための基板内部に組み込まれ、前記第1の動脈の開通性に関する視覚インジケータをさらに含む、
ことを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記四肢からの熱を前記システムに動力を与えるための電気エネルギーに変換するための手段をさらに含む、
ことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記所定の関数は、少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを掛け合わせて複合動脈開通性メトリックを作成する、
ことを特徴とする請求項20、21又は22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の動脈血液供給メトリック及び前記第2の動脈血液供給メトリックは乗算前に正常化される、
ことを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の動脈の開通性の変化を判定するための手段は、前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックの時間に伴う変化を判定する、
ことを特徴とする請求項20から24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の動脈の開通性の変化を判定するための手段は、第2の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックと比較した前記第1の動脈血液供給に関する前記複合動脈開通性メトリックの変化を判定する、
ことを特徴とする特徴とする請求項20から24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の動脈血液供給メトリック及び前記第2の動脈血液供給メトリックは、動脈の血液供給信号の強度、動脈の血液供給信号径、末梢脈拍数、皮膚の赤み及び皮膚温度のうちの異なるいずれかである、
ことを特徴とする請求項20から26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
センサの前記出力を処理して高周波数信号と低周波数信号とに変えるための信号処理回路をさらに含む、
ことを特徴とする請求項20から27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
術後の動脈の開通性をモニタする方法であって、
第1のプローブを四肢の第1の組織領域に隣接して配置することにより、前記第1の組織領域への第1の動脈血液供給に依存する第1の出力信号を作成するようにするステップと、
前記第1の出力信号を処理して、前記第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するステップと、
前記第1の動脈血液供給に関する少なくとも前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを引数として用いる所定の関数を使用して、前記第1の動脈血液供給に関する前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックを組み合わせ、前記第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを作成するステップと、
前記第1の動脈血液供給に関する複合動脈開通性メトリックを用いて、前記第1の動脈血液供給を行う第1の動脈の開通性を判定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
四肢の組織領域に取り付けるための基板内部に組み込まれた、内蔵型の術後の動脈開通性モニタシステムであって、
前記基板が取り付けられる前記四肢の組織領域への動脈血液供給に依存する出力信号を作成するための第1のプローブと、
前記出力信号を処理して、前記第1の動脈血液供給に関する第1の動脈血液供給メトリックと、前記第1の動脈血液供給に関する第2の異なる動脈血液供給メトリックとを作成するための手段と、
前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックに依存して駆動するように配列された、前記組織領域の動脈潅流を示す視覚インジケータ手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項31】
前記第1の動脈血液供給メトリックは末梢脈拍数であり、前記視覚インジケータ手段の照明頻度は前記末梢脈拍数に依存する、
ことを特徴とする請求項30に記載の内蔵型システム。
【請求項32】
前記第2の動脈血液供給メトリックは、動脈の血液供給力、動脈の血液供給径、皮膚の赤み及び皮膚温度のうちの1つであり、前記視覚表示手段の照明の強度は、前記第2の動脈血液供給メトリックに依存する、
ことを特徴とする請求項30又は31に記載の内蔵型システム。
【請求項33】
前記視覚表示手段は、前記第1及び第2の動脈血液供給メトリックの組合せから作成される動脈開通性メトリックに依存して駆動するように配列される、
ことを特徴とする請求項30、31又は32に記載の内蔵型システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2009−526590(P2009−526590A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554844(P2008−554844)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000535
【国際公開番号】WO2007/093804
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508247028)ダイアログ デヴァイシーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】