説明

動物の食欲またはフード摂取を調節することによって動物の体重を調節する食物非必須アミノ酸であるチロシン

本発明は、チロシンを所望の量で投与して、動物の体重を変化させ、維持することを含む体重管理系を開発する。動物が過体重である場合、動物は、低レベルチロシンフード組成物を供給されると思われる。動物が体重不足である場合、動物は、高レベルチロシンフード組成物を供給されると思われる。本発明はまた、乾物ベースで:(a)約0.01%〜約0.4%未満のチロシン、(b)約0.42%〜約3%のフェニルアラニン、(c)約7%〜約70%のタンパク質、(d)約1%〜約60%の脂肪、(e)0〜90%の炭水化物、(f)0〜約40%の食物繊維、及び(g)0〜約15%の栄養バランス剤を含む低チロシンの動物用のフードに関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国における成人人口の半分超が過体重または肥満体であると報告されている(Pi-Sunyer, F. X. NHLBI Obesity Education Initiative Expert Panel on the identification, evaluation, and treatment of overweight and obesity in adults-The evidence report. Obese. Res., 1998; 6:51S-209S ; Must A., Spadano, J., Coakley, E. H., et al., The disease burden associated with overweight and obesity. JAMA 1999; 282: 1523- 9)。米国において、成人における肥満症の蔓延は、1960年から1994年の間にほぼ2倍になった(Flegal, K., Carrol, M., Kuczmarski, R., Johnson, C. Overweight and obesity in the United States: prevalence and trends, 1960-1994. Int. J. Obes. 1998; 22: 39-47)。
【0002】
獣医に提示された飼い猫の調査において、25%の猫は過体重または肥満体である(Scarlett, J.M., Donoghue, S., Saidla, J., Wills, Overweight cats: prevalence and risk factors, J. Int J Obes Relat Metab Disord. 1994, 8 Suppl 1:S22-8)。同様のパーセントの肥満体の犬が英国において報告された(Edney, A.T.B., Smith, P. M., Study of obesity in dogs visiting veterinary practices in the United Kingdom. Vet Rec. 1986; 118: 391-396)。肥満症は、ヒト並びにコンパニオン動物における多くの慢性疾患の例えば高血圧、心臓血管疾患、及び糖尿病の一因となる。
【0003】
チロシンは、フェニルアラニンヒドロキシル化により猫によって生成することができるので、飼い猫のための非必須アミノ酸である。フェニルアラニンの場合の成体維持のためのAAFCOキャットフード栄養素プロフィル(AAFCO Cat Food Nutrient Profiles for Adult Maintenance for phenylalanine)は、0.42%乾物ベース(DM)であり、フェニルアラニン及びチロシンの場合は0.88%(DM)である(Official Publication 2003, Association of American Feed Control Officials, Inc.)。AAFCOの助言は、最大の成長のための、成長中の子猫における研究に基づいている。最近の研究は、チロシン及びフェニルアラニンの場合のAAFCOの助言は、成長中の子猫における最大の体毛の色の生成を支援しないことを見い出した(Yu, S., Rogers, QR, Morris, J. G. Effect of low levels of dietary tyrosine on the hair color of cats. J. Small Anim. Prac. 2001, 42:176-180 and Anderson, PJB et. al. Cats require more dietary phenylalanine or tyrosine for melanin deposition in hair than for maximal growth. J. Nutr. 2002, 132:2037-2042)。体毛の色の沈着のための最小食物フェニルアラニン及びチロシン濃度は、成長中の子猫において1.8%であると助言された。また、1.6%未満のチロシン及びフェニルアラニンの組合せを有する食餌を供給された子猫において、多活動及び運動失調が認められると報告された(Anderson, PJB et. al. Cats require more dietary phenylalanine or tyrosine for melanin deposition in hair than for maximal growth. J. Nutr. 2002,132:2037-2042)。現在のところ、成長した猫または成猫の場合のフェニルアラニン及びチロシンの最小必要量は、実験的に決定されていない。多くの栄養素必要量が、成長中の動物及び成長したかまたは成熟した動物の間で異なることは周知である。
【0004】
チロシン注射は、マウスにおける活動食欲不振症(activity anorexia)において食欲、認知、及び運動耐性(exercise tolerance)を改良する(Avraham, Y., et al. (2001) Tyrosine Improves Appetite, Cognition, And Exercise Tolerance In Activity Anorexia. Med. Sci. Sports Exerc., 33: 2104-2110)。
【発明の開示】
【0005】
本願発明者らは、動物用のフード、好ましくは本発明の配合プロセスを使用したペットフードにおけるチロシン濃度を変化させることは、フード摂取を低減するかまたは満腹を増大させることによって、動物における体重減少を誘起することを見い出した。本発明は、先に報告したマイナスの影響無しに適切な濃度のチロシンを可能にする。
【0006】
本出願において説明する動物は、任意の哺乳類または鳥とすることができる。動物は、ヒト、家庭用ペット、家畜及び鳥とすることができるが、これらに限定されるものではない。鳥としては、飼いならされた鳥、カナリヤ、オウム、または商業用の鳥の例えば限定するものではないが鶏、アヒル、七面鳥等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ペットとしては、犬、猫、及びげっ歯類動物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。家畜としては、馬、豚、雌牛、羊、山羊等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。げっ歯類動物としては、ハムスター、マウス、ラット、モルモット、アレチネズミ、ウサギ、ハリネズミ、フェレット、チンチラ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
本願発明者らは、フード中のチロシン含量を低減することは、体重の低減を引き起こすだろうが、一方、フード中のチロシンレベルを増大させることは、体重を一定のままにするかまたはチロシンの増大の量に依存して増大させるだろうということを見い出した。
【0008】
本発明の目的は、チロシンを所望の量で投与して、動物の体重を変化させ、維持することを含む体重管理系を開発することである。動物が過体重である場合、動物は、低レベルチロシンフード組成物を供給されると思われる。動物が体重不足である場合、動物は、高レベルチロシンフード組成物を供給されると思われる。
【0009】
従って、本発明は、一日チロシンまたはチロシン及び/またはフェニルアラニン摂取を制御して、フード摂取及びエネルギー摂取を制御し、体重を制御する際に有用な動物用のフード製品を提供する。こうしたものとしては、動物における自発的なフード摂取及び体重に影響するフード、トリート、栄養補助剤及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明の別の目的は、0.4重量%DM未満の量でチロシンを含む動物用の栄養補助剤、動物用のスナックまたは動物用のトリートである。
【0011】
さらなる目的は、DMで最高約0.4重量%までの量でチロシンを含む、動物の体重を低減するための食用組成物である。
【0012】
本発明はまた、乾物ベースで
(a)約0.01〜約0.4重量%未満のチロシン、
(b)約0.1%〜最高有毒レベルまでのフェニルアラニン、
(c)約7〜約70重量%のタンパク質、
(d)約1〜約60重量%の脂肪、
(e)0〜90重量%の炭水化物、
(f)0〜約40重量%の食物繊維、及び
(g)0〜約15重量%の栄養バランス剤、
を含む組成物に関する。
【0013】
本発明は、DMで:
(a)約0.01重量%〜有毒レベルの直ぐ下のチロシン、
(b)約0.1重量%〜有毒レベルの直ぐ下のフェニルアラニン、
(c)約7〜約70重量%のタンパク質、
(d)約1〜約60重量%の脂肪、
(e)0〜90重量%の炭水化物、
(f)0〜約40重量%の食物繊維、及び
(g)0〜約15重量%の栄養バランス剤、
を含む体重管理系において使用される動物用のフードに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明者らは、食物チロシン濃度、非必須アミノ酸を変化させることによって動物の体重を制御し、調節できることを証明した。本願発明者らは、作用の機構は、中枢神経系(CNS)の報酬領域(reward area)内部にあると考えており、こうしたCNS領域は、多くの種の間で同様なので、本願発明者らは、この技術はまた、犬及び他の哺乳類において有効であろうと考えている。加えて、フェニルアラニンは必須アミノ酸であり、代謝経路においてチロシンに酸化されるので、食物フェニルアラニンレベルの修正はまた、食物チロシン濃度の修正と同じ体重への影響を生じることができる。
【0015】
本発明のフードは、特定のチロシン濃度のために選択された成分の配合によるチロシン濃度の変化を有する。選択された低チロシン成分の例は、ゼラチン、肺、ホエー及び穀物である。チロシン濃度を増大させるために、選択された成分の例えば筋肉タンパク質、カゼインまたはチロシン自体を使用することができる。
【0016】
チロシンを、フード、トリート、栄養補助剤またはそれらの組合せにおいて投与する。フード摂取及び体重を低減するためには、低レベルのチロシンは、乾物ベースで好ましくは約0.01〜約0.4重量%未満、より好ましくは約0.08〜約0.38重量%、最も好ましくは約0.2〜約0.36重量%の量である。
【0017】
フードはドライまたはウエットとすることができる。栄養的に適切なフード組成物の場合の最小必要量は次の通りである。
栄養素含量%
栄養素 (乾物ベース)
炭水化物(可溶性無窒素物) 0〜約90%、好ましくは10〜50重量%、
タンパク質 約7〜約70%、好ましくは30〜50重量%、
脂肪 約1〜約60%、好ましくは20〜50重量%、
総食物繊維 0〜約40%、好ましくは5〜25重量%、
栄養バランス剤 0〜約15%、0.1〜4重量%
例えばビタミン及びミネラル。
本出願において使用される全てのパーセントは、特に断らない限り、乾物ベースでの重量である。
【0018】
フードに必要な成分は、タンパク質、脂肪、チロシン、及びフェニルアラニンのみである。ある動物は加えて、炭水化物及び繊維を必要とする。好ましい組成物は、下記に検討するように動物によって変化しよう。
【0019】
栄養バランス剤は、ビタミン及びミネラルを含む。栄養バランス剤は、欠乏を避けるのに必要な量含まれるべきである。米国学術研究会議(NRC)は、Nutrient Requirements of Swine, 10th Revised Edition 1998; Nutrient Requirements of poultry, Ninth Revised Edition 1994; Nutrient Requirements of Horses, Fifth Revised Edition, 1989及び他の種のためのもの等、National Academy Press, 2101 Constitution Avenue, NW, Washington, DC 20418において、家畜用に助言している。AAFCOは、犬及び猫用に助言している(American Feed Control Officials, Inc. Official Publication (2003), at pp. 138-140)。一般に、栄養バランス剤は、乾物ベースで0〜約15%、好ましくは約0.1〜約4%の量で存在する。
【0020】
トリートまたは動物用のスナックは通常、動物に与えられて、動物が通常非食事時間に食するように誘う製品と定義される。例えば、骨状物(bone)は、犬のためのトリートとみなされると思われる。栄養トリートは、フードと同じ要件を有する。非栄養トリートは、無毒の任意の組成物である。トリートまたは動物用のスナックのための唯一必要な成分は、乾物ベースで少なくとも0.01重量%の量のチロシンである。
【0021】
American Feed Control Officials, Inc. Official Publication 2003 at page 220において定義されている栄養補助剤は、全体の栄養バランスまたは性能を改良するために、別の供給物と共に使用される供給物であり、以下のように意図されている:
(1)栄養補助剤として他の供給物に未希釈で供給されるか;または
(2)別個に入手可能な飼料の他の部分と共に自由に選択できるか;または
(3)さらに希釈され、混合されて完全な供給物を製造する。栄養補助剤のための唯一必要な成分は、乾物ベースで少なくとも0.01重量%の量のチロシンである。
【0022】
低レベルのチロシンを含む新たなフード組成物の場合、チロシンは、乾物ベースで重量で約0.01%〜約0.4%、より好ましくは約0.08%〜約0.38%、より好ましくは乾物ベースで含量%を基準として約0.2%〜約0.36%の量で存在する。フェニルアラニンは、猫及び他の動物のための必須アミノ酸である。従って、個々の一生の段階で動物によって必要とされる最小量のフェニルアラニンが食餌中に必要である。好ましくはフェニルアラニンは、乾物ベースで含量%を基準として、0.1重量%〜最高有毒レベルの直ぐ下までのフェニルアラニン、好ましくは約0.2〜約10重量%、より好ましくは約0.42〜約3重量%、最も好ましくは約0.5〜約0.9重量%の量で存在する。
【0023】
最適の体重を有する猫のエネルギー収支を維持するための維持組成物の場合、チロシンは、乾燥量基準でフード中に約0.4〜約1.2重量%、好ましくは約0.45〜約1.0重量%の量存在する。フード組成物は、チロシンレベルを除いて低チロシン組成物と本質的に同じであると思われる。加えられたチロシンは、任意の非必須栄養素の例えばグリシン及び繊維に取って代わることができる。実施例1においては、グリシンは、追加のチロシンで置き換えられる。
【0024】
体重不足の動物のために使用される高チロシンフード組成物の場合、チロシンは乾燥量基準でフード中に少なくとも約1.2重量%、好ましくは約1.2重量%〜有毒レベルの直ぐ下のチロシン、より好ましくは約1.2重量%〜約8%、さらに好ましくは約1.5重量%〜約3.5重量%、最も好ましくは約1.9重量%〜約3重量%の量存在する。フード組成物は、チロシンレベルを除いて低チロシン組成物と本質的に同じであると思われる。加えられたチロシンは、任意の非必須栄養素の例えばグリシン及び繊維に取って代わることができる。実施例1においては、グリシンは、追加のチロシンで置き換えられる。
【0025】
本発明の動物用のフード組成物は、フード源としての肉、肉副産物、他の動物性タンパク質源及び穀物のような成分を含んでよい。肉とは、牛、豚、羊、山羊、及び他の哺乳類並びに家禽及び魚の肉を意味する。肉副産物としては、肺、腎臓、脳、肝臓、並びにその内容物を取り除いた胃及び腸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。加えて、肉、肉副産物、及び他の動物性及び/または植物性タンパク質源混合物は、本発明の動物用のフードにおいて使用するのに適している。栄養素成分はまた、ある量の穀物の例えば小麦、トウモロコシ、大麦、米、及び植物繊維源の例えばセルロース、ビートパルプ、落花生殻、または大豆繊維を含んでよい。
【0026】
本発明による動物用のフード製品は、体重管理にとって有益な機能を提供する食品添加物のうちの1つを含むことができる。例は、非発酵性繊維、カルニチン、クロム、ピコリネート及びその他同様なものを含む。
【0027】
本発明の動物用のフード製品は、一般に当分野において周知の添加剤を、本発明によって提供される目的及び効果を損なわない量でさらに含んでよい。このような添加剤の例は、安定化効果を有する物質及び加工助剤である。
【0028】
本発明に従い貯蔵寿命を増大させるために使用する物理的方法の効果を補うかまたは強化することによって本発明の製品の貯蔵寿命を増大させるために、安定化効果を有する物質を加えてよい。所望により本発明の動物用のフード製品中に含まれる安定化効果を有する物質の例は、保存剤、抗酸化剤、協力剤及び金属イオン封鎖剤、パッケージングガス、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、及び湿潤剤である。乳化剤及び/または増粘剤の例は、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、及び加工デンプンである。
【0029】
チロシンの濃度は、本発明の動物用のフード製品中に、乾物ベースで含量%を基準として約0.01%〜最高0.4%未満まで、好ましくは約0.08〜約0.38%、より好ましくは0.2〜0.36%の濃度で存在するように、低チロシン含量を有する本発明の動物用のフード製品の製造において栄養素組成を調節する。
【0030】
本発明の動物用のフード製品は、従来のペットフード加工を使用して、缶入りまたはウエット形態で製造できる。1具体例は、挽いた動物及び家禽タンパク性組織と、魚油、穀物、及び他の栄養バランス成分、及び特殊目的の添加剤の例えばビタミン及びミネラル混合物、無機塩、セルロース及びビートパルプ充填剤及びその他同様なものを含む残りの成分とを混合することによって始める。加工に十分な水も加える。成分をブレンドしながら加熱するのに適した容器を使用する。
【0031】
成分混合物の加熱を、任意の適切な仕方で、例えば、直接蒸気インジェクションによってかまたは熱交換器を備えた容器を使用することによって達成してよい。最後の成分を加えることに続いて、混合物を一般に当分野において使用される温度に加熱する。適切な温度に加熱したら、加熱された混合物を缶に充填する。蓋をし、容器を気密封止する。次に、封止した缶を、内容物を滅菌するように設計された従来の装置中に置く。
【0032】
本発明の動物用のフード製品を、従来のペットフード加工を使用して乾燥形態で製造できる。動物性及び/または植物性タンパク質源、穀物、及び他の乾燥成分を含む乾燥成分を挽き、一緒に混合する。脂肪、油、動物性タンパク質源、及び水を含む湿ったまたは液体の成分を乾燥混合物に加え、これと混合し、その後キブルまたは同様の乾燥部片に加工する。最も一般的に、キブルは、乾燥及び湿潤成分の混合物に高圧及び高温で機械仕事を施し、小さな開口部を通して押し、回転ナイフによって切り取ってキブルにする押し出し法を使用して形成される。キブルは次に乾燥され、香味料、脂肪、油、粉末、及びその他同様なものを含んでよい1つ以上の局所コーティングを受け入れることができる。
【0033】
キブルはまた、押し出しではなくベーキング法を使用して生地から製造でき、ここで乾熱処理の前に生地をある種の型に入れる。
【0034】
本発明の動物用のトリートを、市販のペットフードに一般的なように、ドライフードと同様の押し出しまたはベーキングによって製造できる。他の方法も使用して、チロシンを既存のトリート形態の外面にコーティングするか、またはトリート内部に注入してよい。
【0035】
過体重の動物は好ましくは、過体重の動物が所望の体重に達するまでの期間、低チロシン組成物を供給される。期間は好ましくは少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも6週間、最も好ましくは少なくとも8週間である。再度、この期間は、動物の最初の体重及び実現しようとする所望の最適体重に依存する。
【0036】
体重不足の動物は好ましくは、体重不足の動物が所望の体重に達するまでの期間、高チロシン組成物を供給される。期間は好ましくは少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも6週間、最も好ましくは少なくとも8週間である。再度、この期間は、動物の最初の体重及び実現しようとする所望の最適体重に依存する。加えて、表1に示すように、過体重の動物がかなりの量の体重を減少させた後に高チロシン組成物を供給することができる。
【0037】
一旦動物が所望の体重を実現したら、動物に維持組成物を供給することができる。維持組成物は、動物の一生の残りのために使用できる。
【0038】
本発明の完全な理解のために、動物用のフード組成物という用語は、一般に動物のための単独のフード摂取を提供する市販の栄養的に完全でバランスのとれた動物用のフードに当てはまることを意図されていると認識されるはずである。
【0039】
以下の実施例及び研究は、本発明の具体的であるが非限定の具体例を説明することを意図されている。
【0040】
研究1:6匹の成猫(1才を超える)は、AAFCOの助言に従った維持のための栄養的に完全でバランスのとれた缶入りキャットフードを不断に(ad libitum)供給された。フードは以下の手順によって製造された:
1.全ての乾燥成分を十分に混合する。
2.混合しながら、肉成分をミキサーに加える。
3.混合しながら、混合した乾燥成分をミキサーに加える。
4.混合しながら、水をミキサーに加える。
5.全バッチを十分に混合し、形成されたいかなる塊も加熱する前に破壊する。
6.混合物を180°Fに加熱調理する。
7.加熱調理した混合物を缶に充填する。
8.缶を巻締めし、缶入りキャットフードのための典型的なレトルト殺菌条件を使用して殺菌装置中で加熱調理する。
成分 飼料の%
乾燥穀物混合物 25.438
肉混合物 18.238
グリシン 0.700
ビタミン予備混合物 0.250
ミネラル予備混合物 0.050
タウリン 0.100
水 55.224
合計 100.000
【0041】
この缶入りフードは、供給時ベース(AS)で0.08%のチロシンまたは乾物ベース(DM)で0.3%のチロシンを含んだ。猫はこの飼料を供給され、その後グリシンを犠牲にしてチロシンを0.5%(AS、1.93%DM)補充した同じ食餌を3週間与えられた。その後、猫は、市販のドライ維持キャットフード(チロシン:0.93%AS)を6週間提供された。
【0042】
結果:この食餌を続けた場合、猫は10週間の期間の間中、4.9kgから3.95kgまで平均して0.95kg体重を減少させた(表1)。供給時ベースでチロシンを0.5%補充した同じ食餌を猫が与えられた場合(表1)、猫は不断に供給されたが、平均体重は約3.9kgで3週間維持された。猫が市販のドライキャットフードを供給された後に、平均体重は連続的に6週間増大し、体重を維持するために必要なものよりも多くの代謝されたエネルギー(ME)が提供されたことが明らかに示唆される。グリシンを犠牲にして供給時ベースでチロシンを0.5%(または乾物ベースで1.93%)補充した同じ飼料を猫が供給された場合、猫は体重を減少させるのを止め、体重は、3週間の補充飼料の供給期間の間中維持された。チロシン補充無しの缶入り飼料と比較した場合、チロシン補充飼料はフード及びエネルギー摂取を有意に増大させた(表1)。臨床観察及び血液の化学の測定によると、19週間の研究期間の間中他の異常は観察されなかった。こうした結果は、食物チロシン濃度は、食欲またはフード若しくはエネルギー摂取を調節することによって猫の体重を調節できることを証明する。
【0043】
食物チロシン及びフェニルアラニン濃度並びにフード摂取に対応して、低チロシン飼料を供給された場合、両方のアミノ酸の摂取は低かった(表1)。
【表1】

【0044】
低食物チロシンはまた、血清チロシン濃度に反映された(表2)。
【表2】

【0045】
猫が5週間低チロシン飼料を5週間供給された後に、血清チロシン濃度は有意により低かった。5週及び13週の間で血清フェニルアラニン濃度に有意な差はなかった。
【0046】
猫は不断に供給されたが、低チロシン飼料を供給された猫における体重減少は不十分なME摂取が原因だった。週平均ME摂取は約130kcal/日であり(表1)、これは次の式から計算された必要量未満だった:一日エネルギー必要量(kcal/日)=70×体重(kg)0.75×1.2。この公式化に基づいて、4.9kgの去勢した成猫の場合の一日エネルギー必要量は277kcal/日である。猫にチロシン補充飼料を与えた場合、週平均ME摂取は約160kcal/日に増大し(表1)、これは依然として計算された一日エネルギー必要量(体重3.9kgの場合233kcal/日)未満だったが、体重は安定し、ME必要量を満たしたことを示唆する(表1)。猫が市販のドライキャットフードを供給された場合、週平均ME摂取は280kcal/日であり(表1)、計算された一日エネルギー必要量(体重3.9kgの場合233kcal/日)を超えた。従って、体重の増大を認めたのは驚くべきことではない。
【0047】
チロシンは、エネルギー摂取の調節に関与するようである。食物チロシンが0.08%(0.3%DM)だった場合、これは、猫が体重を維持するための十分なエネルギーを摂取するのに十分ではなかった。食物チロシンが0.5%(1.93%DM)に増大した場合、猫は体重を維持するための十分なエネルギーを消費することができた。
【0048】
チロシンは可欠アミノ酸であり、哺乳類においてフェニルアラニンヒドロキシル化によって生成することができる。チロシンは、神経伝達物質の例えばカテコールアミンの前駆体であり、色素の例えばユーメラニン及びフェオメラニン(pheomelanin)の前駆体である。食物チロシン及び/またはフェニルアラニンを制御することは、中枢神経系(CNS)におけるカテコールアミンレベルを変更することができ、フードまたはエネルギー摂取を制御することができる。従って、食物チロシン及び/またはフェニルアラニン濃度を制御することを、過体重及び肥満体の対象におけるフード摂取調節及び体重制御において使用できる。
【0049】
低チロシン飼料を供給された猫において、体重減少を除いて臨床上の異常は観察されなかった。
【0050】
猫が10週間低チロシン飼料を供給された後に正常な範囲の最大を超えた平均赤血球血色素濃度(MCHC)(33.7%)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(94.2u/l)を除いて、全血球計算(CBC)及び血清の化学のパラメータは正常な範囲内だった。0週(低チロシン飼料を供給する前)、10週(低チロシン飼料を10週間供給した後)、及び13週(チロシン補充飼料を3週間供給した後)に測定して、ALTに差はなかった(p>0.05)。
【0051】
研究2:20匹の成猫(1才を超える)は、AAFCOの助言に従って4週間、維持のための栄養的に完全でバランスのとれた2つの缶入りキャットフードのうちの1つを不断に供給された。この缶入りフードは、乾物ベースで0.35%のチロシン及び0.82%のフェニルアラニンを含んだ。この飼料を続けた場合、猫は平均してその初期体重の7.2%または0.42kgを減少させた(図1)。チロシン補充フード(2.7%のチロシン及び0.96%のフェニルアラニン)を供給された猫は、その初期体重の平均1%を減少させたのみだった(例えば0.06kg)。低チロシンフードを供給された猫は、チロシン補充対照フードを供給された猫(162.2g/日)よりも有意により低いフード摂取(平均151.5g/日)を有した(図2)。4週間の期間の間中、他の異常は観察されなかった。こうした結果はさらに、食物チロシン濃度は、食欲またはフード摂取を調節することによって猫の体重を調節できることを証明する。
【0052】
研究3:20匹の成猫(1才を超える)は、AAFCOの助言に従って2週間、維持のための栄養的に完全でバランスのとれた2つの缶入りキャットフードのうちの1つを不断に供給された。こうしたフードは、研究2において試験したフードよりも高いタンパク質レベルを有するように配合された(乾物ベースでのタンパク質レベル:研究2=33.21%&研究3=34.91%)。この缶入りフードは、乾物ベースで0.34%のチロシン及び0.89%のフェニルアラニンを含んだ。この飼料を続けた場合、猫は平均してその初期体重の6.7%または0.31kgを減少させた(図3)。チロシン補充フード(乾物ベースで1.95%のチロシン及び0.80%のフェニルアラニン)を供給された猫は、その初期体重の平均4.3%を減少させたのみだった(例えば0.21kg)。低チロシンフードを供給された猫は、チロシン補充対照フードを供給された猫よりも低いフード摂取を有した(図4)。こうした結果はさらに、食物チロシン濃度は、食欲またはフード摂取を調節することによって猫の体重を調節できるという概念を証明する。
【0053】
研究4:乾物ベースで26.8%のタンパク質、0.36%のチロシン、及び0.64%のフェニルアラニンを含むドライの猫用のフードを配合した。このフードを10匹の猫に4週間連続して不断に供給し、一方、10匹の異なる猫は同じ期間市販のライトキャットフード(対照フード)を供給された。体重を毎週記録し、フード消費を毎日記録した。低チロシンフードを供給された猫は体重を毎週減少させたが、対照フードを供給されたものは体重を増大させた(表3)。同様に、低チロシンフードを供給された猫は、対照フードを供給された猫よりも有意により少ないフードを消費した(表4)。こうした結果は、先の研究の結果を裏付け、また、概念は、ドライの配合物において有効であることを示す。
【表3】

【表4】

【表5】

【0054】
上記に説明した全ての参考文献は、全ての有用な目的で参考のためにその全体を引用される。
【0055】
本発明を具体化する特定の具体的な構造を示し、説明してきたが、根底にある本発明の概念の精神及び範囲から逸脱することなく部分の様々な修正及び再配列を行ってよく、これは、本明細書において示し、説明した特定の形態に限定されないことは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】研究2による猫の体重変化を示す。
【図2】研究2による猫のフード摂取変化を示す。
【図3】研究3による猫の体重変化を示す。
【図4】研究3による猫のフード摂取変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾物ベースで約0.4重量%を超えない量のチロシンを含む食用組成物。
【請求項2】
前記チロシンは、乾物ベースで約0.08〜約0.38重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記チロシンは、乾物ベースで約0.2〜約0.36重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記チロシンは、ゼラチン、肺、ホエーまたは穀物から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
乾物ベースで
(a)約0.01〜約0.4重量%未満のチロシン、
(b)約0.1%〜最高有毒レベルの直ぐ下までのフェニルアラニン、
(c)約7〜約70重量%のタンパク質、
(d)約1〜約60重量%の脂肪、
(e)0〜90重量%の炭水化物、
(f)0〜約40重量%の食物繊維、及び
(g)0〜約15重量%の栄養バランス剤、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭水化物は、乾物ベースで約10〜約50重量%の量である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記食物繊維は、乾物ベースで約5〜約25重量%の量である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記栄養バランス剤は、乾物ベースで約0.1〜約4重量%の量である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
乾物ベースで前記チロシンは約0.2〜約0.36重量%の量であり、
前記フェニルアラニンは約0.42〜3重量%の量であり、
前記炭水化物は約10〜約50重量%の量であり、
前記タンパク質は約30〜約50重量%の量であり、
前記脂肪は約20〜約50重量%の量であり、
前記食物繊維は約5〜約25重量%の量であり、及び
前記栄養バランス剤は約0.1〜約4重量%の量である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物はトリート、動物用のフードまたは栄養補助剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は犬用のフードである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は猫用のフードである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は家畜用のフードである、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は豚用のフードである、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
動物の体重を制御する方法であって、
(1)前記動物が体重を増大、減少または維持する必要があるかどうか決定することと、
(2)過体重の動物に、該動物が所望の体重に達するまでの期間、低チロシン含量を有する請求項5に記載の組成物を含む動物用のフードを供給するか、または、体重不足の動物に、該動物が所望の体重に達するまでの期間、乾物ベースに基づいて少なくとも約1.2重量%の高チロシン含量を有する動物用のフードを供給することと、を含む方法。
【請求項16】
前記動物は過体重であり、少なくとも4週間の期間前記フードを供給される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記動物は体重不足であり、少なくとも4週間の期間前記高チロシン含量を有する前記動物用のフードを供給される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記動物が所望の体重を実現した後に、維持飼料を前記動物に供給することをさらに必要とし、前記維持飼料は、前記過体重の動物の場合の前記低チロシン含量及び前記体重不足の動物の場合の前記高チロシン含量のレベルの間の量のチロシンを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記動物が所望の体重を実現した後に、維持飼料を前記動物に供給することをさらに必要とし、前記維持飼料は、前記過体重の動物の場合の前記低チロシン含量及び前記体重不足の動物の場合の前記高チロシン含量のレベルの間の量のチロシンを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記動物が所望の体重を実現した後に、維持飼料を前記動物に供給することをさらに必要とし、前記維持飼料は、前記過体重の動物の場合の前記低チロシン含量及び前記体重不足の動物の場合の前記高チロシン含量のレベルの間の量のチロシンを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記維持飼料は、少なくとも4週間1日に1回供給される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記動物は猫である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記動物は犬である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記動物は家畜である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記動物は豚である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
過体重及び肥満体の動物のフード摂取及び体重を低減する方法であって、前記過体重の動物が体重を減少させるような期間、請求項1に記載の組成物を含む動物用のフードを前記過体重の動物に供給することを含む方法。
【請求項27】
過体重及び肥満体の動物のフード摂取及び体重を低減する方法であって、前記過体重の動物が体重を減少させるような期間、請求項5に記載の組成物を含む動物用のフードを前記過体重の動物に供給することを含む方法。
【請求項28】
前記期間は少なくとも4週間である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記期間は少なくとも8週間である、請求項26に記載の方法
【請求項30】
前記動物が所望の体重を実現した後に、維持飼料を前記動物に供給することをさらに必要とし、前記維持飼料は、前記過体重の動物の場合の前記低チロシン含量のレベルを超える量のチロシンを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記維持飼料は、前記飼料における乾物ベースで0.4〜約1.2重量%の量のチロシンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記維持飼料は、前記飼料における乾物ベースで0.45〜約1.0重量%の量のチロシンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
動物の体重を維持する方法であって、動物用のフードにおける乾物ベースで約0.4〜約1.2重量%の量のチロシンを含む前記動物用のフードを少なくとも4週間前記動物に供給することを含む方法。
【請求項34】
前記フードにおける乾物ベースで前記チロシンは前記フード中に約0.45〜約1.0重量%の量で存在し、前記フードは少なくとも8週間供給される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
体重不足の動物のフード摂取及び体重を増大させる方法であって、動物用のフードにおける乾物ベースで最小量少なくとも約1.2重量%〜最高チロシンの有毒レベルの直ぐ下までのチロシンを含む前記動物用のフードを前記体重不足の動物に供給することを含む方法。
【請求項36】
前記チロシンは、前記フード中に乾物ベースで約1.9〜約3重量%の量で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
乾物ベースで0.4重量%未満の量のチロシンを含む、動物用の栄養補助剤、動物用のスナックまたは動物用のトリート。
【請求項38】
動物の体重を低減するための食用組成物において、改良は、乾物ベースで約0.4重量%を超えない量のチロシンを含む、食用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−512848(P2007−512848A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542852(P2006−542852)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040770
【国際公開番号】WO2005/055738
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】