説明

動物用健康維持剤およびそれを含有した飼料ならびに飼育方法

【課題】家禽および家畜類、魚類およびペット類等の動物の健康を維持するために給与する動物用の健康維持剤を提供する。
【解決手段】1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドを有効成分とする、動物用健康維持剤、その動物用健康維持剤を添加した動物用飼料を採用すること、およびその動物用飼料によって動物を飼育する方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏、豚、牛等の家禽および家畜類、ハマチ、ブリ、ヒラメ、ウナギ等の魚類、犬、猫、鳥、うさぎ等のペット類の健康を維持するための薬剤、飼料およびこれらを給与する動物の飼育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物の健康を維持する方法としては、種々の合成薬剤、ハーブ等の天然薬剤等が提案されている。例えば、リュウキュウヤナギの葉を飼料中に乾物換算で0.15〜0.30重量%含有してなる、家禽用配合飼料(特許文献1)、25−ヒドロキシビタミンDを含有するエマルション、マイクロカプセル化油組成物及び飼料プレミックス組成物(特許文献2)、リジン対比で、メチオニンが25〜35重量%、トレオニンが65〜75重量%、トリプトファンが15〜21重量%、バリンが83〜93重量%に調整してあるか、又はビタミンAを10000〜12000IU/Kg、ビタミンDを1500〜2500IU/Kg、ビタミンEを40〜100mg/Kg、ビタミンKを1〜3mg/Kg含有させてあるかもしくは可消化エネルギーを3200〜3400Kcal/Kgに調整してなる母豚用配合飼料(特許文献3)。1α−ヒドロキシビタミンDおよび/または1,25−ジヒドロキシビタミンDを家畜哺乳動物に経膣投与することを特徴とする低カルシュウム血症の予防、治療および/または処置するビタミンD誘導体の投与方法(特許文献4)。糟糠類を主原料とし、嵩比重が0.40〜0.56Kg/Lで、かつ、粒度分布において1mm以上の部位が40%以上で、代謝エネルギーを1900〜2400Kcal/Kgに調整してあること、飼料1KgにつきビタミンAを5000IU以上、ビタミンDを1000IU以上、ビタミンEを5IU以上、マンガンを30mg以上、亜鉛を40mg以上、ヨウ素を0.3mg以上それぞれ含有させてあること、飼料1Kgにつき赤色系キサントフィルを1.0mg以上含有させてあること、オリゴ糖又は有機酸を添加した成鶏飼育用配合飼料(特許文献5)等が知られている。
【0003】
特許文献1 特開2001−321088号公報
特許文献2 特公表2005−519894号公報
特許文献3 特開2005−192514号公報
特許文献4 WO2005/077378号公報
特許文献5 特開2005−245205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、特にビタミンDを使用する技術が種々提案されている。しかしながら、ビタミンDは脂溶性ビタミンであることから連続して投与したり、給与すると体内に蓄積され、副作用が生起するようになる。従って、例えば特許文献1に記載のように蓄種によってその給与量を厳格に管理する必要があった。
そこで本発明者は、動物の健康を維持するために、種々の作用効果を有する物質について検討を行い、さらに使用に際しても使用量の管理の容易な物質の検討を行い、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドを有効成分とする動物用健康維持剤、その動物用健康維持剤を添加した動物用飼料およびその動物用飼料によって動物を飼育する方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、肉豚の発育向上、種豚の胎児の発育向上、分娩時間の短縮(カルシュウム保留高め)、ストレス軽減と分娩後の食下量アップによる哺乳子豚の発育向上、母豚のコンディションが良好に保持できる等の効果がある。
レイヤーの場合カルシュウム代謝低下の改善、夏場のストレス時の肝・腎機能低下による卵殻質低下の改善、産卵成績の維持向上等の効果がある。
ブロイラーの場合増体重および飼料要求率を改善し、脛骨軟骨異形成症の発生率の低下等の効果がある。
乳牛の場合乳熱に対する予防効果、分娩後のミルクへのカルシュウム放出と胎児発育の要求されたカルシュウムにより、母体のカルシュウム欠乏となり痙攣を起こす症状の防止等の効果がある。
肉牛の場合発育の向上と同時に肉質が軟らかく、また肉中のカルシュウム含量が保持され、ドリップも少ない等の効果がある。
魚類の場合発育の向上と同時にハマチ、ヒラメ、ウナギ等の骨曲がり症の防止等の効果がある。ペットの場合感染症による肝臓および腎臓の機能低下の防止等の効果がある。
また本発明の1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドは、水溶性であることから、仮に過剰摂取しても体内に蓄積することなく体外に排出されるので、動物の健康を損ねたり、畜産物に蓄積されることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシド(以下、活性型ビタミンDグリコシドと言うことがある)を有効成分とする動物用健康維持剤である。この活性型ビタミンDグリコシドは、合成された1,25−ジヒドロキシビタミンDを原料として、公知の製法によって容易に調製することができる。
また、ナス科ナス属の常緑低木のルリヤナギ(学名:Solanum glaucophyllum)の葉および/または茎を粉砕して水に加えて得られる水抽出物から精製分離して調製することもできる。
【0008】
本発明の有効成分として用いられる1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドは、一般式

(式中nは1〜13の整数を示す)
で表わされる化合物である。これらの化合物としては、例えば1,25−ジヒドロキシビタミンD−1β−グルコピラノシド(1,25−dihydroxyvitaminD−1β−glucopyranoside)等が挙げられる。
【0009】
本発明の動物用健康維持剤等に用いられる活性型ビタミンDグリコシドとしては、前記一般式で表わされる化合物の単一化合物またはこれらの単一化合物の混合物の他、ルリヤナギ等の活性型ビタミンDグリコシドを含有する天然物あるいはそれらの天然物から抽出された活性型ビタミンDグリコシドを含む抽出物がいずれも好適に使用できる。
【0010】
本発明の動物用健康維持剤は、活性型ビタミンDグリコシド、ルリヤナギ、ルリヤナギの水抽出物を、タルク、クレー、グルコースやフスマ等の糟糠類のような粉末を賦形剤として用いて調製することができる。
また、本発明の動物用健康維持飼料は、各動物に給与する飼料に活性型ビタミンDグリコシドを直接添加する以外に、前記動物用健康維持剤を添加したり、ルリヤナギの粉末あるいはルリヤナギの水抽出物を添加することによって調製することができる。特にルリヤナギの粉末や、それから水で抽出した水抽出物が好適に使用することができる。さらにルリヤナギの水抽出物を水に溶解して濃度を調整し、投与することができる。
【0011】
本発明に係る活性型ビタミンDグリコシドの給与量は、動物によってそれぞれ異なるが、一般的には活性型ビタミンDグリコシドとして0.5〜50ppb、好ましくは0.5〜10ppb給与することが最適である。ルリヤナギ粉末(活性型ビタミンDグリコシドとして10ppm含有)の場合飼料に対して外割で0.005質量%〜0.5質量%、好ましくは0.005質量%〜0.1質量%、さらに好ましくは0.005質量%〜0.02質量%の範囲が最適である。特に家禽の場合では0.005質量%〜0.1質量%(外割)の範囲が好適である。
【0012】
次に本発明を実施例を掲げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0013】
実施例1
1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシド(一般式(I)におけるn=1の化合物)とタルクとを混合して1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドの含量が10ppmになるように調整して動物用健康維持剤を調製した。
【0014】
実施例2
ルリヤナギの葉の粉砕物とフスマとを混合して1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドの含量が10ppmになるように調整して動物用健康維持剤を調製した。
【0015】
実施例3
ルリヤナギの葉および茎を細かく粉砕した後水に充分漬した後固形物を除去した後水抽出物から水分を除去して水抽出物粉末を調製した。この水抽出物粉末とグルコースとを混合して1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシド含量が50ppmになるように調整して動物用健康維持剤を調製した。
【0016】
実施例4
トウモロコシ43.7質量%、大豆ミール23質量%、全脂大豆28質量%、大豆油1.5質量%、かき殻1.5質量%およびモノジカルシュウムフォスフェート1.3質量%、ビタミン・ミネラル1.0質量%(ビタミンD1000IU/Kg含有)を均一に混合して鶏用基礎飼料を調製した。
この鶏用基礎飼料に対し、ルリヤナギの葉の粉末[「パンポニス」(PANBONIS)(1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシド10ppm含有)(ローバードエイビ フィード アクティブ テクノロジー社製商品名)]を50ppm添加して鶏用配合飼料を調製した。
【0017】
実施例5
実施例4で調製した鶏用基礎飼料に対し、実施例4で用いた「パンボニス」を100ppm添加して鶏用配合飼料を調製した。
【0018】
実施例6
トウモロコシ63質量%、ふすま5質量%、大豆28質量%、フィッシュミール3質量%およびプレミックス1質量%(ビタミンD1200IU/Kg含有)を均一に混合して豚用基礎飼料を調製した。
この豚用基礎飼料に対し、「パンボニス」を60ppm添加して豚用配合飼料を調製した。
【0019】
実施例7
実施例6で調製した豚用基礎飼料に対し、「パンボニス」を100ppm添加して豚用配合飼料を調製した。
【0020】
実施例8
トウモロコシ68質量%、ふすま12質量%、大豆ミール19質量%およびプレミックス1質量%(ビタミンD2000IU/Kg含有)を均一に混合して母豚用基礎飼料を調製した。
この母豚用基礎飼料に対し、「パンボニス」を60ppm添加して母豚用配合飼料を調製した。
【0021】
実施例9
実施例8で調製した母豚用基礎飼料に対し、「パンボニス」を100ppm添加して母豚用配合飼料を調製した。
【0022】
実施例10
ルリヤナギの葉を粉砕し、水に漬して抽出した。固形分を除去した水抽出物を乾燥して乾燥粉末とした。この粉末状の水抽出物を用いて組成物「ソルボン」(SOLBONE)(1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシド50ppm含有)(ローバード エイビ フィード アクティブ テクノロジー社製商品名)を用いて丸薬を調製した。
【0023】
試験例1
ブロイラー(鶏種:コブ500,オス,開始体重平均51.1g)を1区25羽とし、3区設けた。これらの鶏に実施例4および5で調製した鶏用配合飼料を26日間給与した。
増体重の結果を表1に示し、飼料要求率の結果を表2に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表1および表2の試験結果より本発明の動物用健康維持剤を添加給与することで増体重および飼料要求率が改善されることがわかる。
【0027】
試験例2
ブロイラー(鶏種:コブ500,オス)を供試鶏として鶏用配合飼料を26日間給与し、屠殺後、脛骨の状態を検査した。その試験結果を示せば表3のとおりである。
【0028】
【表3】

【0029】
表3の試験結果より、脛骨の骨密度は本発明の動物用健康維持剤の添加によって高くなっていた。特に骨中のリン含量とカルシュウム含量は、本発明の動物用健康維持剤の添加によって高くなっており、カルシュウムとリンの吸収蓄積が高められたことがわかる。
【0030】
試験例3
豚(品種:LWD三元交雑種)を1区20頭とし、3区設け、実施例6および7で調製した豚用配合飼料を24日間給与した。その試験結果を示せば表4のとおりである。
【0031】
【表4】

【0032】
表4の試験結果より、本発明の動物用健康維持剤を添加給与することで健康に発育し、増体重および飼料要求率が改善されることがわかる。
【0033】
試験例4
妊娠母豚(品種:LW)を1区10頭とし、3区設け、実施例8および9の母豚用配合飼料を妊娠85日目から離乳28日令の57日間給与して飼育した。その試験結果を示せば表5のとおりである。
【0034】
【表5】

【0035】
表5の試験結果から本発明の動物用健康維持剤を母豚用飼料に添加し、妊娠期の後半から離乳時まで給与することで、胎児の発育を促し出生時の斃死も少なく、出生時子豚体重が大きくなる結果であった。また、離乳時の子豚生存率が高く、母豚の脚、足の事故率も低いことから母豚がより健康に維持され、子豚の保育も良くなる結果であることがわかる。
【0036】
試験例5
分娩時期に近い乳牛37頭を用い、19頭は対照区として乳牛用飼料(メイズフレーク45質量%、アルファルファ23質量%、乾草チモシー22質量%、ビートパルプ8質量%およびプレミックス2質量%)を自由摂取させた。また18頭には実施例10で調製した丸薬5gを前記乳牛用飼料に添加して乳牛の分娩1〜3日前から自由摂取させて分娩後の乳熱の予防について試験した。なお、乳牛用飼料の給与の目安は体重の約2%とした。その試験結果を示せば表6のとおりである。
【0037】
【表6】

分娩後の痙攣の発生:分娩後に乳中に多量のカルシュウムが流出され、低カルシュウム血となり、痙攣が発生する。
【0038】
表6の試験結果から本発明の動物用健康維持剤を丸薬として1頭当り1日5グラム給与して分娩後に起こる痙攣(乳熱)が抑えられることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式

(式中nは1〜13の整数を示す)で表される1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドを有効成分とすることを特徴とする動物用健康維持剤。
【請求項2】
一般式(I)で表される1,25−ジヒドロキシビタミンDグリコシドを飼料中に含有することを特徴とする動物用飼料。
【請求項3】
動物に請求項2記載の動物用飼料を給与して動物を飼育する方法。

【公開番号】特開2009−247339(P2009−247339A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120697(P2008−120697)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(508133994)株式会社フォーレスト (1)
【Fターム(参考)】