説明

動物用飼料

【課題】家畜等の飼育動物の肥育を促進しつつ肉質の改善を図り、飼育動物の糞臭気や糞尿の堆肥化発酵過程で発生する悪臭を抑制する動物用飼料を提供する。さらに、栄養素に富んだ堆肥(有機肥料)を提供する。
【解決手段】バチルス属に属する微生物およびクロストリジウム属に属する微生物を含む混合微生物、ならびにシラス、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、軽石および植物炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の多孔質担体を含有することを特徴とする動物用飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用飼料およびそれを用いた動物の飼育方法に関する。より詳しくは、本発明は、特定の多孔質担体および特定の微生物混合物を含有することを特徴とする動物用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から畜産業において、生産性の向上のために家畜等の飼育動物の健康状態を維持し、動物の肥育を促進しつつ肉質改善を図ることは大きな課題であった。また家畜等の動物の飼育においては、飼育動物の排泄する糞尿から悪臭が生じ、これが公害のもととなる等の問題があった。さらに、飼育動物の排泄する糞尿から堆肥を製造する際に、堆肥化発酵過程で発生する悪臭を防止することも大きな課題である。
【0003】
これらの課題または問題を解決する試みは以前から行なわれている。例えば、家畜の肉質を向上させ、かつ、家畜の育成を高めるために、乳酸菌と家畜の血液を混合し発酵させて得られる家畜用飼料が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この発明では、十分な家畜血液を確保する必要があり、また、病原性物質による感染の問題があった。
【0004】
マメ類、穀類およびイモ類などの利用残渣に、乳酸菌および酵母を添加し発酵させた生産物を家畜飼料に添加して投与することにより、家畜が排泄する糞尿の臭気が減少することが報告されているが、家畜の肥育や肉質に対する効果は明らかではない(特許文献2参照)。
【0005】
また、放線菌や乳酸菌等の微生物とゼオライトを含む飼料により、家畜の糞臭気が抑制されることが報告されているが、家畜の肥育や肉質に対する効果は明らかではない(特許文献3および4参照)。
【0006】
茶滓を含む動物用飼料により、家畜の腸内環境を改善して、家畜の肥育および糞尿臭の低減を図る提案がされているが、家畜の肉質および糞尿の堆肥化発酵過程で発生する悪臭にいかなる効果があるのかは明らかではない(特許文献5参照)。
【0007】
乳酸菌と酵母菌を含む動物用飼料添加物を用いることにより、動物の肥育率が向上し、また糞臭気の低下が報告されている(特許文献6参照)。しかしながら、どのように肉質が向上し、また糞尿の堆肥化発酵過程で発生する悪臭にいかなる効果があるのかは明らかではない。
【0008】
さらに、梅の実を含む動物用飼料により、家畜の肥育と肉質の向上を図る提案がされているが、糞臭気や糞尿の堆肥化発酵過程で発生する悪臭にいかなる効果があるのかは明らかではない(特許文献7参照)。
【0009】
このように、飼育動物の肥育の促進や肉質の改善、および飼育動物の糞臭気や糞尿の堆肥化発酵過程で発生する悪臭を抑制するために、さまざまな飼料または飼料添加物が提案されている。しかしながら、これらの要請をすべて満たす動物用飼料や動物の飼育方法については、これまでに報告されていない。
【0010】
【特許文献1】特開2005−198536号公報
【特許文献2】特開平11−104222号公報
【特許文献3】特開平9−252728号公報
【特許文献4】特開平11−285348号公報
【特許文献5】特開2006−121942号公報
【特許文献6】特開2001−149023号公報
【特許文献7】特開2003−235467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、家畜等の飼育動物の肥育を促進しつつ肉質の改善を図り、飼育動物の糞臭気や糞尿の堆肥化発酵過程で発生する悪臭を抑制する動物用飼料を提供し、さらに、栄養素に富んだ堆肥(有機肥料)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、前記目的を達成するために、バチルス属に属する微生物およびクロストリジウム属に属する微生物を含む混合微生物、ならびにシラス、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、軽石および植物炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の多孔質担体を含有することを特徴とする動物用飼料を提供する。
【0013】
第2発明は、請求項1記載の動物用飼料において、バチルス属に属する微生物が、バチルス・ズブチルス、バチルス・リケンホルミス、バチルス・サーキュランス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・アゾトフィクサンスおよびバチルス・マセランスからなる群より選ばれた少なくとも1種の微生物であり、前記クロストリジウム属に属する微生物が、クロストリジウム・セルロリィティカム、クロストリジウム・アエロトレランス、クロストリジウム・アセトブチリカムおよびクロストリジウム・パステリアナムからなる群より選ばれた少なくとも1種の微生物であることを特徴とする動物用飼料に関する。
【0014】
第3発明は、請求項1または2記載の飼料を、動物に給餌して飼育する動物の飼育方法に関する。
【0015】
第4発明は、動物が、牛、豚または鶏である請求項3記載の飼育方法に関する。
【0016】
第5発明は、請求項4記載の飼育方法によって飼育した動物から得られる糞尿を、20〜50日間発酵させて得られる有機肥料に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の飼料を飼育動物に給餌することにより、動物の肥育が促進され、かつ、肉質も改善される。さらに飼育動物の糞臭気が抑制されるため、悪臭による公害発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の飼料を飼育動物に給餌することにより、飼育動物の排泄する糞尿から堆肥を製造する際に、堆肥化発酵過程で発生する悪臭を防止することができ、さらに、栄養素に優れた堆肥(有機肥料)が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に用いる混合微生物は、バチルス属に属する微生物およびクロストリジウム属に属する微生物である。
【0020】
バチルス属に属する微生物としては、バチルス・ズブチルス、バチルス・リケンホルミス、バチルス・サーキュランス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・アゾトフィクサンスおよびバチルス・マセランスからなる群より選ばれた少なくとも1種の微生物であることが好ましい。
【0021】
クロストリジウム属に属する微生物としては、クロストリジウム・セルロリィティカム、クロストリジウム・アエロトレランス、クロストリジウム・アセトブチリカムおよびクロストリジウム・パステリアナムからなる群より選ばれた少なくとも1種の微生物であることが好ましい。
【0022】
上記微生物は、一般的に試験研究に使用されている菌であり、市販されているものや、微生物寄託機関および微生物保存機関に寄託されている容易に入手可能なものである。本発明に用いる微生物群には、リポペプタイド産生菌、セルラーゼ産生菌および窒素固定菌が含まれていることが好ましく、具体的には、たとえば、リポペプタイドおよびセルラーゼ産生菌であるバチルス・ズブチルス ATCC No.21332および6051ならびにバチルス・リケンホルミス ATCC No.39307および14580、セルラーゼ産生菌であるバチルス・サーキュランス ATCC No.9500、バチルス・ポリミキサ ATCC No.842、クロストリジウム・セルロリィティカム ATCC No.35319およびクロストリジウム・アエロトレランス ATCC No.43524、窒素を固定する菌であるバチルス・アゾトフィクサンス ATCC No.35681、バチルス・マセランス ATCC No.8244、クロストリジウム・アセトブチリカム ATCC No.824およびクロストリジウム・パステリアナム ATCC No.6013などの菌株を使用することが好ましい。
【0023】
本発明に用いる混合微生物における各微生物の割合は、特に限定されるものではないが、乾燥菌体重量で等量ずつ添加するのが好ましい。
【0024】
本発明の動物用飼料は、培養液に微生物を懸濁した微生物懸濁液を多孔質担体と混合し、多孔質担体に微生物懸濁液を吸収させることにより製造することができる。好ましくは、微生物を培養液にて培養後、微生物が懸濁された培養液を多孔質担体に対して噴霧し、微生物ごと培養液を多孔質担体に吸収させることにより製造することができる。
【0025】
本発明の動物用飼料を製造するにあたり、微生物懸濁液または微生物培養液/多孔質担体(重量比)は0.02〜0.5が好ましく、より好ましくは0.05〜0.3である。
【0026】
微生物の培養液は特に制限されないが、経済的観点から、糖蜜と水を混合した培養液を用いるのが好ましい。培養液における糖蜜濃度は、2〜20重量%が好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。
【0027】
微生物を培養する場合は、各微生物を乾燥重量で等量ずつ混合した乾燥混合微生物を、培養液1Lあたり0.2g〜1.0g添加するのが好ましく、0.5g〜0.7g添加するのがより好ましい。これを10〜40℃で2〜7日間培養するのが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる多孔質担体は、シラス、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、軽石および植物炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の多孔質担体である。多孔質担体の平均粒径は、好ましくは10μm〜1mmであり、より好ましくは20〜800μmである。平均粒径が10μm未満では吸水性が低下し、微生物が吸着、固定される空隙が減少する傾向がある。平均粒径が1mmを超えると、飼育動物に摂食忌避を生じさせる傾向がある。
【0029】
シラスとは、シラス台地を形成し南九州に広く分布する白色、砂状の火山噴出物を呼んだものである。シラスの鉱物組成は、火山ガラスおよび斜長石を主成分とし、輝石、石英、磁鉄鉱などを副成分としている。シラスの真比重は2.3〜2.5の範囲にあり、平均は2.39である。化学組成はケイ酸分約70重量%、アルミナ分約14重量%、アルカリ酸化物約8重量%の順に含まれている。
【0030】
シラスバルーンとは、シラスを800〜1200℃で急速に加熱処理し、発泡させることにより製造される多孔質、球状のものである。比重が軽いため軽量であり、かつ無色無害な耐化学薬品性に優れた環境にやさしい素材である。
【0031】
パーライトとは、黒曜石、真珠岩、松脂岩等の火山ガラスを粉砕して、急速に加熱、膨張させたものである。
【0032】
バーミキュライトとは、蛭石を粉砕して、急速に加熱、膨張させたものである。
【0033】
軽石とは、火山砕屑物の一種であり、多孔質のものである。
【0034】
植物炭化物とは、木炭、活性炭などの、植物を炭化して得られたものである。当該木炭とは、竹材または木材を炭化して得られたものであり、イネ科マダケおよびイネ科モウソウチクの茎またはカバノキ科シラカバ、チョウセンマツ、ブナ科ウバメガシ等の幹枝または種子を、炭化して得られたものである。木炭では白炭が好ましい。白炭とは、日本農林規格で定められた築窯製炭法および窯外消火法のみにより製造した木炭であり、1000℃以上の高温で焼成されたものである。
【0035】
前記活性炭とは、鋸屑、木片、ヤシ殻の植物性繊維質、亜炭または石油等の含炭素物質を炭化後、賦活化を行って得られたものである。
【0036】
本発明の飼料を給餌する飼育動物は、特に制限されないが、食肉としての供給量が多い、牛、豚または鶏が好ましい。
【0037】
本発明の飼料は、通常に給餌される飼料に0.1〜0.5重量%混合して、好ましくは0.2〜0.3重量%混合して飼育動物に与える(全体を100重量%)。
【0038】
本発明の飼料は、飼育動物の全飼育期間にわたって給餌することが好ましい。牛および豚の場合は生後直後から屠殺直前まで、また鶏の場合は孵化直後から屠殺直前まで、給餌することが好ましい。
【0039】
本発明の肥料は、動物から得られた糞尿を堆積し、風雨に直接曝されることのない状態で数十日間放置し、当該放置期間中に少なくとも1回の切り返しを行なうことにより、製造することができる。製造場所はどこでも良く、例えばコンクリート上および土の上で製造することができる。堆積した糞尿が風雨に直接曝されないためには、どのような形でもよいが、糞尿を屋根付き小屋内に保管することでもよく、または表面を水不透性のシート、例えばビニールシートで覆うことでもよい。
【0040】
アンモニアの発生は発芽障害や初期発育の障害を引き起こすため、動物糞尿を使用可能な堆肥とするまでには、通常、数ヵ月から半年の期間を要する。しかしながら本発明の堆肥(有機肥料)は、アンモニアの新たな発生がほとんどないため、新たに得られた動物糞尿をそのまま20〜50日間発酵させることにより、播種・定植しても根を痛めることなく使用可能な有機肥料とすることができる。発酵期間が20日より短いと、アンモニアが多少残留している場合があり、植物の生育を阻害しかねない。50日より長いと窒素、リンおよびカリウムなどの栄養素が減少し、肥料としての効力が低下する傾向にある。
【0041】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
製造例1
表1記載の微生物を乾燥重量で等量ずつ混合し、乾燥混合微生物を調製した。この乾燥混合微生物0.3gを、水500mLに糖蜜55gを含有させた培養液に添加し、18〜23℃で4日間培養した。これを粒径20μm〜1mmのシラス(水分量0%〜5%)10kgに噴霧し吸収させ、飼料Aを製造した。
【0043】
【表1】

【0044】
製造例2
シラスに代えて平均粒径141.92μmのシラスバルーンWB−601((株)アクシーズケミカル製)5kgを用いた以外は実施例1と同様にして飼料Bを製造した。
【0045】
製造例3
表1記載の微生物を乾燥重量で等量ずつ混合し、乾燥混合微生物を調製した。この乾燥混合微生物0.3gを、水500mLに糖蜜55gを含有させた培養液に添加し、18〜23℃で4日間培養した。得られた培養液80gを、木材を炭化して得られた木炭((株)森建設製)の微細粉砕物0.7kgおよび平均粒径141.92μmのシラスバルーンWB−601((株)アクシーズケミカル製)0.4kgの混合物に噴霧し吸収させ、飼料Cを製造した。
【0046】
実施例1
23頭の黒毛和牛(雌)を用いて飼育試験を行なった。飼育期間前期に、一般フスマ(昭和産業(株)製)180kg、増産フスマ(日新製粉(株)製)135kg、トウモロコシ(日新製粉(株)製)45kg、脱脂大豆(日新製粉(株)製)20kg、圧ペン麦(竹之内製粉(株)製)36kgおよびヤマト73(全農製)80kgを配合したものに対して、さらに、製造例3で製造した飼料Cを1.1kg配合した飼料を給餌した。ついで、飼育期間後期には、一般フスマ(昭和産業(株)製)135kg、増産フスマ(日新製粉(株)製)90kg、A飼料(西田精麦(株)製)20kg、大豆粕フレーク(加藤製油(株)製)20kg、圧ペン麦(竹之内製粉(株)製)135kg、コーンミール(福山製粉(株)製)45kgおよびヤマト73(全農製)40kgを配合したものに対して、さらに前記飼料Cを1.1kg配合した飼料を給餌した。全飼育期間は1年9月〜2年であり、飼育試験開始時および肉牛として出荷時の体重を測定した。測定結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
比較例1
27頭の(黒毛和種、雌)を用い、前記飼料Cを配合しない飼料を給餌した以外は、実施例1と同様にして飼育した。全飼育期間は1年9月〜2年であった。飼育試験開始時と肉牛として出荷時の体重を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
表2および表3によると、出荷時の平均体重/飼育試験開始時の平均体重の比は、実施例1では2.86であり、比較例1では2.67であった。これより、本発明の飼料を給餌することにより、肥育成績が向上することがわかる。
【0051】
実施例2、比較例2〜5および参考例1〜3
実施例2は、黒毛和牛(雌)に対して、通常飼料に製造例2で製造した飼料Bを0.25重量%(全体を100重量%)配合した飼料を、肉牛として出荷するまで継続して給餌したものである。比較例2および3は、黒毛和牛(雌)に対して、通常飼料を給餌したものである。参考例は、去勢黒毛和牛を通常飼料で飼育したものである。
【0052】
表4に、同一時期において、屠殺後に得られた枝肉重量および肉質の結果を示す。肉質は、社団法人日本食肉格付協会で定められた基準により格付されたものである。
【0053】
【表4】

【0054】
表4によれば、本発明の飼料を給餌した実施例2では、比較例2および3に対して、明らかに高い枝肉重量が得られることがわかる。また肉質が4等級以上に分類された頭数の割合も、実施例1では、比較例4および5に対して明らかに高いことがわかる。
【0055】
雄牛の去勢は、肥育の促進を目的として行なわれる(参考例1〜3)。表4において実施例2と参考例1〜3を比較すると、実施例2における枝肉重量は、参考例1〜3に匹敵することがわかる。
【0056】
実施例1における飼育期間中の牛糞の臭気は、本発明の飼料を給餌していない群の牛糞と比較して、著しく低下していることが官能試験により明らかであった。
【0057】
製造例4
通常飼料に製造例2で製造した飼料Bを0.25重量%(全体を100重量%)配合した飼料を黒毛和牛(雌)に対して給餌して、飼育した。当該和牛が排泄した糞10tをビニールシートで表面を密閉し、平成17年7月20日から平成17年8月20日まで31日間発酵させ、有機肥料Dを製造した。切り返しは発酵開始後21日目に1回行なった。
【0058】
製造例4では、発酵中に堆肥はヘドロ状態とならず、悪臭の発生も抑制された(飼料B添加群)。一方、前記飼料Dを配合しない飼料を給餌した黒毛和牛(雌)の排泄した糞を、製造例4と同時期に同様にして発酵させた結果、ビニールシート内でヘドロ状となり、ひどい悪臭が生じた(無添加群)。
【0059】
前記の飼料B添加群および無添加群について、発酵中のビニールシート内のアンモニア濃度を、発酵開始後1,10,20および30日目に測定した。測定には、ガステック検知管式気体測定器(目盛範囲:1〜30ppm、(株)ガステック製、品番GV−100S)を用いた。結果を表5に示す。
【0060】
【表5】

【0061】
有機肥料Dの分析結果を表6に示す。分析は(株)鹿児島県環境測定センターで行なった。
【0062】
【表6】

【0063】
農作物に必要な3要素、窒素、リンおよびカリウムの含有率は、牛糞の生ふんでは窒素2.5%、リン4.1%、カリウム0.3%、鶏糞の生ふんでは窒素5.0%、リン4.7%、カリウム2.3%、豚糞の生ふんでは窒素4.3%、リン4.9%、カリウム0.6%(肥料便覧、第四版、社団法人農山漁村文化協会発行)であるが、通常従来の堆肥では、製造に時間がかかり過ぎるため、これら3要素の含有率は非常に低いものとなる。ところが表6によると、本発明の肥料は発酵期間が短いため、3要素の含有率が通常の堆肥より高い非常に優れた肥料を得ることができる。
【0064】
実施例3 オグラ栽培
3月11日に、2tの有機肥料D(製造例4)を300坪の畑に投入し、3月25日にオグラ種子を播種した。播種後7日で発芽し、発芽後の60日間にタチガレン液剤(三共アグロ(株)製)を3回散布した。その後収穫までの間、殺虫剤アファーム乳剤(シンジェンタジャパン(株)製)を1回散布した。オグラの収穫は6月9日より8月22日まで行なった。1日あたりの平均収穫量は、2500〜3000本であった。通常の堆肥を畑に投入した場合と比較すると、有機肥料Dを投入した場合は、タチガレン液剤の使用量は1/2であり、またアファーム乳剤の使用量は1/3であったが、オグラ収穫量は20%増加した。
【0065】
実施例4 レッドキャベツ栽培
9月19日に、4tの有機肥料D(製造例4)を400坪の畑に投入し、9月30日にレッドキャベツの苗を移植した。当該畑は、前年度に栽培した畑であったが、連作障害は発生しなかった。また、農薬を使用しなかったにもかかわらず、病気の発生および害虫被害が発生しなかった。レッドキャベツの発育は良好で、化学肥料を用いることなく、前年度と同程度の収穫ができた。
【0066】
実施例5 ソラマメ栽培
8月19日に、8tの有機肥料D(製造例4)を1000坪の畑に投入し、9月3日にソラマメの苗を移植した。9月20日に芯止めを行い、ソラマメの収穫を11月25日から12月30日まで行なった。この間のソラマメ収穫量は2tであり、例年を大幅に上回る量であった。また、殺虫剤アファーム乳剤を使用することなく、殺菌剤ビスダイセン水和剤(ダウ・ケミカル日本(株)製)を1回散布したのみであったが、連作障害、根腐れ病、アブラムシ等による被害が少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス属に属する微生物およびクロストリジウム属に属する微生物を含む混合微生物、ならびにシラス、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、軽石および植物炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の多孔質担体を含有することを特徴とする動物用飼料。
【請求項2】
前記バチルス属に属する微生物が、バチルス・ズブチルス、バチルス・リケンホルミス、バチルス・サーキュランス、バチルス・ポリミキサ、バチルス・アゾトフィクサンスおよびバチルス・マセランスからなる群より選ばれた少なくとも1種の微生物であり、前記クロストリジウム属に属する微生物が、クロストリジウム・セルロリィティカム、クロストリジウム・アエロトレランス、クロストリジウム・アセトブチリカムおよびクロストリジウム・パステリアナムからなる群より選ばれた少なくとも1種の微生物であることを特徴とする請求項1記載の動物用飼料。
【請求項3】
請求項1または2記載の飼料を、動物に給餌して飼育する動物の飼育方法。
【請求項4】
動物が、牛、豚または鶏である請求項3記載の飼育方法。
【請求項5】
請求項4記載の飼育方法によって飼育した動物から得られる糞尿を、20〜50日間発酵させて得られる有機肥料。

【公開番号】特開2008−253226(P2008−253226A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101801(P2007−101801)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(306033760)
【出願人】(506315985)
【Fターム(参考)】