説明

動物組織構成成分の収集方法

【課題】水蒸気分解作用を利用して動物の肉、骨を分解し、その構成成分を生成する。
【解決手段】動物組織成を閉じた空間内で前処理と分解処理とを行う動物組織成分の収集方法である。前処理は、水蒸気の膨張圧によって動物組織を爆砕して物理的に自壊させる処理であり、分解処理は、飽和水蒸気圧曲線に沿った温度・圧力域で水蒸気圧を動物組織に作用させて動物組織を水蒸気分解し、自壊した動物組織の構成成分を生成する処理である。分解処理によって生成した分解生成物を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物組織を分解して動物組織に含まれる有用な構成成分を収集する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有害鳥獣とりわけ鹿は国内の至る所でその頭数が急激に増加し、農業や林業に及ぼす被害は甚大でもはや放置できなくなってきたため、各県は急遽駆除期間を延ばし大量に駆除することとした。
しかしながら、これら有害鳥獣を駆除した後に生じる動物の組織は一部精肉や飼料、肥料等に利用されている例は見られるものの、駆除された有害鳥獣の数が増大するに従って焼却処理や埋め立て処理に頼るしかなくなっているのが実情である。しかし、焼却や埋め立て処理も限度を越えると、処理費用の増大のみにとどまらず汚水の問題、匂いの問題などが発生し、現実に多くの社会問題が起き、そのまま続けることが困難になってきた。
【0003】
発明者は、先に、植物原料を直接加熱し、飽和水蒸気圧の下で植物原料自身の有する水分を蒸発させ、その水蒸気の雰囲気中に植物原料を一定時間曝すことによって、植物の細胞組織を破壊し、細胞組織成分を水蒸気中に取り込ませることによって抽出する方法を開発した。
【0004】
この方法は、要するに、植物組織の分解処理として、水蒸気の有する加水分解作用を利用しようという考え方に基づいていており、水蒸気と溶質が反応して起こる分解反応も加水分解の範疇に含まれることには違いないが、「水蒸気を用いた加水分解作用」が、一般に理解されている加水分解の意味、例えば「塩と水とが反応して酸と塩基に分解すること」(丸善、科学大辞典参照)ことから、一般的な「加水分解」とは、区別するために、この作用を「水蒸気分解作用」と定義した。そして、水蒸気分解作用は、植物組織の分解に限らず、動物組織の分解にも適用できることがわかってきた。
【特許文献1】特開2006−328304
【特許文献2】特開2006−340623
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、動物組織の分解に、上記水蒸気分解作用を利用した分解処理を適用して肉、骨を分解し、その構成成分を利活用する新しい方法を開発する点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基本的構想は、前処理と、分解処理とを組み合わせたものである。前処理は、水蒸気の膨張圧によって動物組織を物理的に自壊させる処理であり、分解処理は、飽和水蒸気圧曲線に沿って水蒸気圧を上げ、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を動物組織に作用させて動物組織を水蒸気分解し、動物組織の構成成分を収集する処理である。この結果、動物組織の筋肉や骨を接続しているスジ(コラーゲン)を分離し、骨と肉とを完全に切り離し、肉や骨の構成成分であるたんぱく質、リン酸カルシウムを取り出し、さらに筋肉や骨から分離したコラーゲン、脂質、髄質などの動物組織の構成成分を分離生成することを最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明による動物組織の分解方法によれば、水蒸気エネルギーを動物組織に有効に作用させて肉と骨とを完全に分離してたんぱく質とリン酸カルシウムを生成するだけにとどまらず、さらには筋肉や骨から分離したコラーゲン、脂質、髄質などの動物の体内組織の構成成分を取り出し、それぞれが利用可能な有用成分として種々の用途に活用できる。例えば分解生成物は、畜産飼料やペットフードに、また脂質からは幾種類もの有用脂肪酸に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
動物組織は大きく分けて筋肉組織、骨組織、靭帯・腱組織で構成され、それらの組織が緻密に接続されて運動(物理的動作)を可能にしている。
これらの動物組織はそれぞれがコラーゲンと呼ばれる特殊なたんぱく質によって固められ、強固に接続されている。これらのコラーゲンは、物理的強さは誇ってはいるものの、(動物種によって異なるが)ある程度の温度をかけると、分解しゼラチン質に変性する。このような状態になると、まず骨と筋肉は接続が解かれて分離し、さらに骨自身も脆くリン酸カルシュウムを固めていたコラーゲンが分解してしまうため、最終的にはリン酸カルシウムの粉末になっていく。
【0009】
コラーゲンは通常総たんぱく質の30%前後といわれており、これが分解した後に残るものの10%がヒドロキシプロリンで、コラーゲンを形成するたんぱく質の接続用パーツとして体内各部に必要なさまざまなコラーゲンを形成する源となっている。
【0010】
実際には圧力容器の中に対象物をいれ、100℃を超える温度をかけて、飽和水蒸気圧に一定時間保つとコラーゲンは分解して骨と肉とが分離するため、ここで一気に圧力を開放すると、骨や肉の中の水分が瞬時に蒸発し、急激な体積膨張を引きおこすため、組織は自壊して完全に骨と肉が分離する。
【0011】
近年ペットフードや畜産用飼料の価格が高騰し、さらに肥料においてもリンが世界的不足をきたしている折、駆除後の有害鳥獣の処理としてこのような加工は非常に有用である。さらに脂肪分からはオレイン酸、リノール酸など有用な脂肪酸が何種類も採取できるため、単に焼却したり埋め立てたりするよりも資源としての活用範囲が一気に広がる。
【0012】
加水分解は元来微生物が動植物を分解していく方法であり、水蒸気分解もエネルギーと反応時間の違いを除けば全く同じ結果となって、自然にとって最も受け入れやすい方法である。さらに、この時使用されるエネルギーは対象物によって多少の変動はあるものの、一定空間を一定温度で一定時間保つのみであるために、ひとたび温度が目標値に達してしまうと、それからは殆ど必要がなくなる。本発明方法によれば、焼却よりも少ないエネルギー(1/20以下)で分解し、埋め立てよりも短時間(3〜5時間)で分解して、飼料や肥料原料となり得る。
【0013】
本発明において、分解処理は、飽和水蒸気圧曲線に沿って水蒸気圧を上げ、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を動物組織に作用させて動物組織を水蒸気分解し、動物組織の構成成分を収集する処理である。特に温度を上昇させる際や下降していく時点では、動物組織を収容した容器内温度及び圧力を水蒸気圧曲線に沿って精密に制御する必要がある。この制御を行わないと容器内温度、圧力は飽和水蒸気圧曲線から大きく外れ、熱水状態か、過熱水蒸気状態となるため、内部に未反応部分が残ったり、表面部分の反応のみが過剰に進み、炭化や二次反応による、酢酸類などの生成物が多くできたりする。(図6参照)
【0014】
水蒸気分解は強酸や強アルカリでも、また熱水でも行うことは可能であるが、精密制御が可能であるのは水蒸気しかない。この発明は水蒸気を使った加水分解の方法を提案するもので、大型化に適した、最も安価で、最も実用化に適した方法である。
【0015】
本発明による動物の組織成分の収集方法は、前処理として行う動物組織の爆砕処理と、水蒸気の有するエネルギーによる動物組織の水蒸気分解処理との組み合わせによって、肉や骨を自壊させ、これらの構成成分に分解して動物組織の構成成分を分離生成することができる。
【実施例1】
【0016】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は、水蒸気の有するエネルギー(エンタルピー)による分解作用を利用した分解処理と、その前処理として行う爆砕処理との組み合わせによって、動物の体内組織の分解による組織構成成分の分離生成実行した。 以下に本発明の実施例を示す。本発明は、水蒸気の有するエネルギーによる分解作用を利用した分解処理と、その前処理として行う爆砕処理との組み合わせにより、動物組織の分解を進め、効率よく分離生成した分解生成物を収集するものである。
【0017】
前処理として行う爆砕処理は、水蒸気の膨張圧によって動物組織を自壊させる処理である。動物組織には、飽和水蒸気圧曲線に沿って空間内の水蒸気圧を1気圧(温度100℃)〜4.6気圧(温度150℃)に上昇させた後一気に密閉空間内の圧力を開放すると、動物組織内体積が急膨張し、この結果、組織は自壊する。本発明において、爆砕処理は、密閉空間内の圧力を開放後、再び飽和水蒸気圧曲線に沿い急速に加温、加圧して水蒸気圧を高め、その後圧力を開放する処理を数度繰り返す。
分解処理は、爆砕処理後の動物組織から、蛋白質(アミノ酸)、燐酸カルシウム、コラーゲン(ヒドロキシプロリン・ゼラチン)、脂質、髄質などの動物組織の構成成分を分離生成する処理である。
【0018】
爆砕処理後、飽和水蒸気圧曲線に沿って立ち上げ、空間内の水蒸気圧を1気圧(温度100℃)〜4.6気圧(温度150℃)の飽和水蒸気圧に動物組織を一定時間保つと、筋肉や骨が分解して蛋白質(アミノ酸)、燐酸カルシウム、を分離生成し、さらに筋肉や骨から分離したコラーゲン、脂質、髄質などの動物組織の構成成分が取り出される。
【0019】
図1に、動物の体内組織の分解に用いる処理装置の一例を示す。図1において、処理装置は、缶本体1と、ボイラ2と、水槽3との組合せから構成されているものである。缶本体1は、原料である動物の体内組織の処理チャンバーであって、その内部には冷却コイル4が配管されている。処理すべき原料は、処理物かご5に収容してトレイ6に搭載し、缶本体1のハッチを開いて缶本体1内に搬入される。
【0020】
ボイラ2は、原料の分解処理及び爆砕処理に必要な温度に加熱された水蒸気を缶本体1内に送り込むためのものである。さらに、分解処理後、冷却水ポンプ7の運転によって、水槽3内の冷却水を缶本体1の冷却コイル4に送り込んで水蒸気分解処理によって動物の体内組織の分離生成物を冷却するためのものである。図1中、3aは缶本体1の冷却コイル4を経て水槽3に戻された冷却水を冷やすためのクーリングタワー、8は水蒸気分解作用によって缶本体1内に生成された水蒸気を含む蒸発気体を凝結して回収するためのクーラである。さらに、缶本体1には、爆砕処理によって生じる爆発音を消音するサイレンサー9を備えている。10は、冷却コイル4へ安定して冷却水を送り込むためのサーフェイスコンデンサー、11は缶本体内に生成された液体成分を回収するドレンタンクを示している。
【0021】
図2に、缶本体内で進行する爆砕処理並びに分解反応の進行を監視するためのシステムの構成を示す。中央監視室12には、水蒸気分解ならびに爆砕処理制御装置13としてコンピュータが設置され、コンピュータからは、ボイラの電源投入,処理時間の設定,配管のバルブの開閉制御、冷却水ポンプの運転の制御などを含めて、缶本体1内で進行させる前処理としての爆砕処理E1〜En、分解処理T、分解生成物回収処理Cに必要な一切の制御並びに設定情報の管理を行う機能、分解反応の進行状況の監視および生成物を回収する機能、生成された分解生成物の状態は、モニター14によって監視するほか、コンピュータは、更にこれらのサンプリング検査を行う機能等を有している。
【0022】
本発明は、上記装置を用いて、前処理と、分解処理T、分解処理によって生成した分解生成物の回収処理Cを順次行う。その手順を図3〜図6に従って説明する。図3は、前処理と分解処理を順次行うに際しての時間経過と圧力変化との関係を示す図、図4、図5は、前処理と、分解処理を実行する手順を示すフロー図である。本発明は、図4、5のフローにしたがって処理を行う。図4において、まず、水蒸気の給・排用バルブ、冷却水の給水・排水用のバルブ、ドレインのバルブを含めて缶本体に通じる全てのバルブを閉じる(ステップS1)。この状態で缶本体のハッチを開き(ステップS2)、その中に動物の肉片、骨、臓器を含めた動物組織を収容した処理物カゴを搬入し(ステップS3)、缶本体のハッチを閉じる(ステップS4)。缶本体内の圧力および水蒸気分解温度を図6に示す飽和水蒸気圧曲線上の圧力と温度を1気圧(温度100℃)〜4.6気圧(温度150℃)、好ましくは、温度の上限を140℃、圧力の上限を3.6気圧に設定し、1時間にセットする(ステップS5)。次いでボイラ5に発生させた水蒸気を缶本体内に圧入し、図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿って、温度・圧力域で水蒸気圧を上げ、140℃、3.6気圧に加熱、加圧する(ステップS6)。この温度・圧力域を一定時間保てば、その間、缶本体内の動物組織には水蒸気加水分解が進行し、動物組織の自壊が促される。
【0023】
図5において、140℃、3.6気圧に加熱、加圧後、一定時間を置いて、あるいは加熱、加圧後ただちに、缶本体の外部に通じる排気バルブを開いて缶本体内を急激に減圧する。これによって、原料である動物組織に対する最初の爆砕処理E1が実行される(ステップS7)。最初の爆砕処理E1の実行後、排気バルブを閉じ、送気バルブを開いてボイラに発生させた水蒸気を缶本体内に急速に圧入し、缶本体1内の温度と圧力を中央監視室のコンピュータで制御しつつ飽和水蒸気圧曲線に沿って立ち上げて缶本体内を140℃、3.6気圧に戻し(ステップS8)、その後缶本体の外部に通じる排気バルブを開いて缶本体内を急激に減圧して第2回の爆砕処理E2を実行する(ステップS9)。以下同様に飽和水蒸気圧曲線に沿って立ち上げて缶内の温度を140℃、圧力を4気圧に戻すステップと、缶本体内を急激に減圧するステップを繰り返して5〜7回の爆砕処理E1〜En(この実施例ではn=7)を実行する(ステップS10)。その後再び、缶内の温度を140℃、圧力を3.6気圧に戻し、約3〜5時間、温度140℃、圧力3.6気圧を保持して分解処理Tを実行する(ステップS11)。
【0024】
缶本体1内の温度と圧力を制御するに際しては、図6に示す飽和水蒸気圧曲線に沿って、温度・圧力域で水蒸気圧を上げ、また分解処理T後の冷却に際しても図6に示す水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って、温度・圧力域で水蒸気圧を下げてゆくことが分解成分の純度を確保する上に最も重要なことである。
【0025】
ちなみに、ある温度・圧力下で1成分系の気液両相が共存するとき、その気相をなす蒸気が飽和に達している状態を飽和蒸気といい、そのときの圧力が飽和蒸気圧である。ある物質の液体の周囲で、その物質の分圧が液体の蒸気圧に等しいとき、その液体は気液平衡の状態にある。温度を下げると蒸気は凝結して液体になる。逆に温度を上げると液体は気化する(蒸気になる)。また、固相と気相の間でも同様の平衡状態が保たれ、この転移を昇華という。
【0026】
前処理における缶内の加熱ならびに加圧時、分解処理Tの終了後の冷却モードにおいては、缶内の降温、降圧時に缶本体1内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿って制御することが重要である。動物の体内組織成分を含む蒸気の温度・圧力域では、飽和水蒸気圧より少しでも温度が高いと炭化し、低いと不完全分解による未反応部分が生ずる。そこで、缶本体内の雰囲気の温度と、圧力とをコンピュータ制御によって、微妙な反応領域を通過させることができる。
【0027】
分解処理Tの実行によって、動物組織成分は分解され、処理物かご5内には固形成分が残り、液体成分は、かごの細かい網目から落下してトレイ6内に溜められる。分解処理Tの終了後、冷却モードとして缶本体内の水蒸気を排気しつつ缶本体内の冷却コイル内に送り込み、缶本体内の気圧、温度を図6に示す水蒸気圧曲線に沿って低下させ(ステップS11)、冷却完了後、缶本体内から、処理かご5を搬出し、分解生成物を回収する。
【0028】
処理かご5の中には、肉片、骨片、臓器の分解生成物であるたんぱく質、アミノ酸、骨の分解生成物である燐酸カルシウムその他の固形成分が回収され、トレイ6内には、網目を通してかごから落下したアミノ酸類、脂肪酸類ならびにコラーゲンの分解生成物であるヒドロキシプロリン、ゼラチンなどの液状成分が回収れ、さらにドレンタンク内には、肉汁、油などの蒸発成分がためられる。本発明において、分解処理は、空間内の水蒸気圧が水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線上の1気圧(温度100℃)〜4.6気圧(温度150℃)の元で行うことが出来るが、実験の結果、圧力を圧力3.6気圧(温度140℃)の元で最も有効に水蒸気分解が進行することがわかった。そのため、この実施例においては、分解処理の条件として140℃、3.6気圧に設定した。
【0029】
なお、近年国際間で問題になっているBSEの原因物質(異常プリオン蛋白質)について、はその不活性化において、国際獣疫事務局(OIE)では、133℃。3気圧。20分のオートクレーブによる熱処理が必要であるとの国際基準を設けている。通常異常プリオン蛋白質は脳や脊髄などの骨の組織に強固に守られた内部にあるため、焼却による以外、安全な処理は保障できないと考えられていたが、本発明方法によれば骨は完全に破砕されて内部の神経組織や隋液は露出されるため、その後の分解処理によってOIEが定める基準、133℃、3気圧・20分のオートクレー部による熱処理条件は、水蒸気分解処理によって、完全にクリアされ、本発明方法によって、異常プリオン蛋白質を不活性化することが可能である。
【0030】
(実験例)
本発明による処理効果を確認するため、有害獣として駆除された鹿の肉骨の飼料化を主たる目的に、生成した肉汁、脂肪などの組織成分の分析を行った。
【0031】
(実験サンプル)鹿:メス 3歳
A:皮無し胴体、皮無しモモ、皮無し肩 17.68Kg
B:皮付き頭、皮付きモモ、皮付き足 18.44Kg
C:内臓 5.40Kg
(実験方法) 試験機トレーにサンプルをセットし、以下の条件で爆砕処理と、水蒸気処理を行った。
前真空:6.7kPa 10秒間
(1)爆砕処理
爆砕温度:140℃、保持時間:X時間
繰り返し回数:7回、繰返し保持時間:7分
(2)水蒸気分解処理
水蒸気分解:140℃、2.5時間
冷却:缶内圧力:0.00Mpa
後真空:27.3kPa 保持時間:3分間
(実験機) (株)ヤスジマ製 爆砕加水分解試験機
(実験結果)
1)水蒸気分解処理後、ドレンタンク内にたまった肉汁及び油について、ドレンタンク内の液は、上層の白い油脂部分と、下層のこげ茶色の肉汁とに分かれた。上層の白い油脂部分と、下層のこげ茶色の肉汁について、それぞれ脂肪酸の含有量と、ヒドロキシプロリンの含有量を測定した。
(分析結果) 財団法人日本食品分析センターによる分析結果を図7、8に示す。また、十勝農業協同組合連合会が行った、飼料としての分析結果を図9に示す。
(結果の考察)
1)肉及び骨は、水蒸気分解後コラーゲンの分解によって分離し、もろくなっていることがわかった。
2)爆砕処理によって、脆くなった骨や皮が破壊されるため、後に粉砕処理が容易になることがわかった。
3)分析結果により、肉汁と脂肪には、有用な成分が含まれていることがわかった。
4)さらに、十勝農業協同組合連合会の分析結果からは、日本鹿生体の血液と第1胃内容物および腸管を除外した単体1頭丸ごと処理のため、粗蛋白はもとより、カルシュウムやミネラルなど飼料としてのバランスが理想的な状態で保たれ、新たに成分を追加する必要が無いことが明らかになった。さらに、これらの飼料は豚、ニワトリ、ペットのみならず、養魚用としても十分適用できることが確認された。また、通常食肉処理と比較して、発生する汚水の処理や残滓等、産業廃棄物としての処理が飛躍的に改善されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、駆除された有害鳥獣の焼却処理に比べて極めて少ないエネルギーの使用によって動物組織を分解して各種有用成分に変換でき、また、埋め立て処理に比べて短時間で分解してその分解生成物を飼料や肥料の原料に活用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による動物組織の分解に用いる分解処理装置の構成を示す図である。
【図2】本発明方法を実施するシステムの構成図である。
【図3】本発明による前処理と分解処理を順次行うに際しての時間経過と圧力変化との関係を示す図である。
【図4】本発明方法のフローを示す図である。
【図5】本発明方法のフローを示す図である。
【図6】飽和水蒸気圧曲線を示すグラフである。
【図7】財団法人日本食品分析センターによる分析結果を示す図である。
【図8】財団法人日本食品分析センターによる分析結果を示す図である。
【図9】十勝農業協同組合連合会が行った、飼料としての分析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 缶本体
2 ボイラ
3 水槽
3a クーリングタワー
4 冷却コイル
5 処理用かご
6 トレイ
7 ポンプ
8 クーラー
9 サイレンサー
10 サーフェイスコンデンサー
11 ドレインタンク
12 中央監視室
13 加水分解制御装置
14 モニター
T 分解処理
E1〜En 爆砕処理
C 分解生成物回収処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物組織を閉じた空間内で前処理と分解処理とを行う動物組織成分の収集方法であって、
前処理は、水蒸気の膨張圧によって動物組織を爆砕して物理的に自壊させる処理であり、
分解処理は、飽和水蒸気圧曲線上の温度・圧力域で水蒸気圧を動物組織に作用させて動物組織を水蒸気分解し、自壊した動物組織の構成成分を分離生成する処理であることを特徴とする動物組織構成成分の収集方法。
【請求項2】
前記前処理は、飽和水蒸気圧曲線に沿って分解処理に必要な温度、圧力域に立ち上げてから一気に圧力を開放し、圧力を開放後、再び飽和水蒸気圧曲線に沿って元の温度、圧力域にまで急速に高めて一気に圧力を開放する処理を少なくとも2度以上繰り返して行う処理であることを特徴とする請求項1に記載の動物組織構成成分の収集方法。
【請求項3】
前記分解処理は、前記前処理後、密閉空間の圧力と温度を飽和水蒸気圧曲線に沿って一旦水蒸気分解処理に必要な圧力と温度にまで上げたのち、飽和水蒸気圧曲線に沿って温度及び圧力を制御しつつ温度及び圧力を下降させる処理であることを特徴とする請求項1に記載の動物組織構成成分の収集方法。
【請求項4】
前記分解処理は、飽和水蒸気圧曲線に沿って水蒸気圧を1気圧(温度100℃)〜4.6気圧(温度150℃)の条件のもとに行う処理であることを特徴とする請求項3に記載の動物組織構成成分の収集方法。
【請求項5】
前記前処理は、密閉空間において動物組織を飽和水蒸気圧曲線に沿って、水蒸気圧を1気圧(温度100℃)〜4.6気圧(温度150℃)に加圧、加熱した後、一気に圧力を開放する処理であり、動物組織を加熱、加圧後、圧力開放までの間に動物組織の水蒸気分解を進行させて、動物組織の自壊を促すことを特徴とする請求項2に記載の動物組織構成成分の収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94056(P2010−94056A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266123(P2008−266123)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【特許番号】特許第4367864号(P4367864)
【特許公報発行日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(592068510)
【出願人】(391057395)株式会社ヤスジマ (8)
【出願人】(500195301)上伊那農業協同組合 (2)
【Fターム(参考)】