説明

動物飼料用添加剤

【課題】健康動物体重増加率を改良しえる動物飼料添加用組合せ化合物の提供、コクシジウム症または壊死性腸炎等の細菌感染の予防および/または治療用薬剤の製造への前記化合物の使用の提供、動物体重増加率を低下させるアイメリア感染の危険を防止する、動物飼料用の組合せ添加物の提供を目的とする。
【解決手段】プロテアーゼ及びベタインから成るアイメリア感染動物における体重増加促進用飼料添加物、当該飼料添加物から成る動物飼料および当該飼料添加物から成る動物アイメリア感染治療または予防のための薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物飼料用添加剤に関し、より詳しくは、飼料への添加により、動物体重増加率を改良する添加剤に関する。更に、本発明は、コクシジウム症および/または細菌感染、並びに壊死性腸炎を起こす疾病等の治療および/または予防に有用な添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の異なるタイプの動物の飼育畜産は、ヒト消費用食料生産のため、世界的に重要である。これら動物は、飼育中に、アイメリア(Eimeria)、キャンピロバクター(Campylobacter:グラム陰性桿菌)、クロストリジウム(Clostridium)、サルモネラ、E.coli及びリステリア等の種々の感染性細菌および寄生生物と接触する。
【0003】
コクシジウム症は、集中的に飼育される家畜、特に家禽類における疾病の共通原因となる。コクシジウム症は、アピコンプレサ亜門の原生動物、単細胞寄生生物により起こされる。家畜に疾病を起こす多くの種は、アイメリア属に属する。これら寄生生物は、腸上皮内で増殖する。鶏では、アイメリアの7種が、確認されており、この内5種が、病原性を有すると考えられる。具体的には、E.acervulina、E.maxima、E.tenella及びE.brunettiが含まれる。
【0004】
コクシジウムは、遍在性生物であり、一般に、養鶏地区の風土性を有する。疾病の症状は、重大感染から微感染まで種々存在する。多くの寄生原生動物と同様、アイメリアのライフサイクルは、比較的複雑であり、鶏腸内で有性および無性増殖する。この寄生生物の増殖および発育の工程中に、宿主組織が、破壊され、コクシジウム症発病で観測される種々の疾病に至る。生産および分泌されるオーシスト(接合子嚢)は、宿主の外部で更に発育し、他の鶏に感染する。実際、オーシストは、宿主外で長期間生存し、当初の感染宿主を取除いた後も、他の鳥類に感染可能である。これらオーシストは、ヒト、ペット、昆虫、齧歯類、ダスト及び他の鳥類等の他の要因により群れ間に広がる。
【0005】
胞子形成したオーシストは、4つのスポロシスト(二次嚢胞)を含み、各スポロシストは、2つのスポロゾイトを更に含む。これらスポロゾイトは、鶏の消化管内の機械的および酵素的作用によって放出される。この放出により、スポロゾイトは、アイメリア種に応じて、腸または盲腸内の上皮細胞に侵入しえる。アイメリアの種および菌株間で病原性の差はあるが、感染動物は、血便、高死亡率、一般的傾眠、るい痩(痩せ細り)、飼料消費の顕著な減少、下痢及び産卵減少の1つ以上の症状を示す。おそらく、家禽類の不慮の死亡の約6〜10%は、コクシジウム症が原因と考えられる。更に、準臨床疾病では、飼料転換率(FCR)を増大させ、飼育効率を減少させる。従って、この疾病の経済的影響は、重大であり、最も好ましくないものである。
【0006】
コクシジウム症を克服するため、種々の方法が研究されている。家禽類環境において、高水準の衛生および化学殺菌剤の使用に基づく経営戦略を通じて前記疾病を抑制しようとする試みが行われている。しかしながら、かかる対策により養鶏舎での当初の感染を低下できるものの、この厳密な衛生状態下においても、なお、コクシジウム症の発生が見つかっている。また、生ワクチン及び弱毒化ワクチンの両方が、抑制方法として研究されているが、これらは、比較的高価であるとともに、副作用として、動物の成長率を低下させる傾向がある。
【0007】
現在、家禽類のコクシジウム症は、比較的高価な予防抗コクシジウム剤プログラムの使用により、ルーティン的に抑制されている。かかるプログラムは、コクシジウム感染を規制し、準臨床的疾病発病の抑制を試みるものである。この発病抑制は、通常、群れの生命当初からブロイラー屠殺までの期間において抗コクシジウム剤を飼料に連続混入させることにより、または制御された鶏間引きにより達成されている。当初の開発時、これら抗コクシジウム剤は、個別に使用された。この結果、薬剤耐性を有する寄生株が、次々生み出された。現在は、新薬の連続的導入によって、又は発育期間中(シャトルプログラム)又は頻繁な間隔(ローテーションプログラム)のいずれかで異なる生化学構造の抗コクシジウム剤を合理的に使用することを含む薬剤プログラムの使用によって、コクシジウム症の抑制が試みられている。家禽類における抗コクシジウム剤のルーティン的使用にも拘わらず、準臨床的コクシジウム症は、なお、家禽農場の大部分で見つかっている。
【0008】
第4級アミンカルボン酸の内部塩は、浸透保護剤として機能する。かかる塩は、酵素活性に悪影響を及ぼすことなく細胞の浸透力を増加させ、酵素のイオン性または温度による不活性を防止する(非特許文献1〜5参照)。ある種の生物(及び組織)は、浸透ストレス下に浸透誘導合成によりベタイン等の内部塩を多量に蓄積することができるが、殆どの動物は、この能力を欠き、外からの内部塩摂取に依存する。例えば、単離されたサーモン肝臓ミトコンドリアは、浸透ストレスに晒された際、ベタイン摂取の増加を示すが、合成はできない(非特許文献6参照)。
【0009】
コクシジウム症治療へのベタイン使用が、特許文献1に開示される。同様の目的にベタイン及びコクシジウム抑制薬の組合せ使用が、特許文献2に教示される。特許文献3には、コクシジウム症の治療及び/又は予防にプロテアーゼ及び/又はカルボハイドラーゼ等の酵素を使用することが示唆されている。
【0010】
特許文献4には、動物飼料中に飼料消化促進酵素を含有させることにより、家畜の回腸内の細菌感染を治療することが教示されている。かかる酵素は、飼料の穀物成分中に存在する多糖類を、消化管内に存在する宿主良性微生物により食物源として使用されるオリゴ糖に分解する。この増殖の結果、病原性細菌は、競争排除工程に起因して成長することができない。この方法は、一般に、食物品質が悪い場合により効果がある(非特許文献7〜8参照)。
【0011】
特許文献5及び特許文献6には、動物の消化機能を改良するため、ベタイン及び種々の酵素の組合せ使用が教示されている。しかしながら、上記従来技術のいずれにも、かかる組合せを、コクシジウム症または細菌感染の治療又は予防のため、若しくはコクシジウム症に侵された動物の成長率を保持するために使用するという示唆はない。
【0012】
家畜における最も問題のある疾病の一つは、クロストリジウム・パーフリンゲンズ(Clostridium perfringens)により喚起される壊死性腸炎である。クロストリジウム感染に先立って、通常、コクシジウム症が起こる。コクシジウム症は、動物の免疫反応を弱め、その結果、動物は、以降に細菌感染に晒された場合に感応ができなくなる。しかしながら、ストレス、収容過多または飽和散乱状態等の他の要因も、寄与する。壊死性腸炎は、通常、動物飼料に、水溶性亜鉛バシトラシン、バージナマイシン又はペニシリンを添加することにより治療する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5834473号明細書
【特許文献2】国際公開第94/24886パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第0681787号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第2327345号明細書
【特許文献5】特開平1−238538号公報
【特許文献6】特開平1−132533号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Nash et al., Aust. J. Plant Physiol, 1982, Vol.9, p.47−57
【非特許文献2】Yancey et al., Science, 1982, Vol.224,p.1064−1069
【非特許文献3】Rudolph et al., Archives Biochem. Biophys., 1986, Vol.245, p.134−143
【非特許文献4】McClue and Hanson, Trends in Biotechnology, 1990, Vol.8, p.358−362
【非特許文献5】Papageorgio et al., Curr. Res. In Photosynthesis, 1990, Vol.1, p.957−969
【非特許文献6】Bjorkoy G., サーモン(Salmo salar)及びイガイ中のグリシンベタイン合成,MScthesis,ノルウエーフィシャーズ単科大学、トロムセ大学、94頁
【非特許文献7】Classen et al., Proc. 2nd Eur. Symp. on Feed Enzymes, 1995, p.65
【非特許文献8】Pack and Bedford., Poultry International, 1998, p.43
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第一の目的は、健康動物体重増加率を改良しえる、動物飼料添加用組合せ化合物を提供することにある。本発明の第二の目的は、コクシジウム症または壊死性腸炎等の細菌感染の予防および/または治療用薬剤の製造への前記化合物の使用を提供することにある。本発明の第三の目的は、動物体重増加率を低下させるアイメリア感染の危険を防止する、動物飼料用の組合せ添加物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の要旨は、プロテアーゼ及びベタインから成るアイメリア感染動物における体重増加促進用飼料添加物に存する。
【0017】
本発明の第2の要旨は、第1の要旨に記載の飼料添加物から成る動物飼料に存する。
【0018】
本発明の第3の要旨は、第1の要旨に記載の飼料添加物から成る動物アイメリア感染治療または予防のための薬剤に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の動物飼料用添加剤は、飼料への添加により、動物体重増加率を改良する。更に、コクシジウム症および/または細菌感染、並びに壊死性腸炎を起こす疾病等の治療および/または予防に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】健康ブロイラー鶏の飼料に、ベタイン、プロテアーゼ、及びベタイン及びプロテアーゼの組合せを含有させた場合の効果を示すグラフ。
【図2】アイメリア・マクシマに侵されたブロイラー鶏の飼料に、ベタイン、プロテアーゼ、及びベタイン及びプロテアーゼの組合せを含有させた場合の効果を示すグラフ。
【図3】種々の添加飼料を与えられ、種々の病原体に侵された鶏の回腸内における、ウエルチ菌トキシン遺伝子の存在を示すゲルクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記述および請求の範囲では、プロテアーゼ活性単位、キシラナーゼ活性単位およびα−アミラーゼ活性単位が記載される。これら活性は、混合酵素または液状酵素混合物に関し、以下のように分析する。
【0022】
プロテアーゼ活性分析法
プロテアーゼ活性一単位は、以下の条件下において1分間に基質からフェノール性化合物1マイクログラム(ティロシン規定換算)を遊離する酵素量を示す。
【0023】
<試薬1> 0.6%(w/v)カゼイン基質:
乾燥ハンマーステン・カゼイン(メルク2242)0.6gを、200mlビーカーに秤量し、少量(約5ml)の蒸留水で湿潤させる。カゼインを充分に湿潤させた後、0.2Mリン酸水素ジナトリウム溶液20mlを添加する。得られた混合物を、攪拌下に60℃で加熱し、カゼインを溶解して乳白溶液を得る。次いで、蒸留水60ml及び、必要に応じて、オクチルアルコール(消泡剤:同様の物質を使用してもよい)1〜2滴を添加する。室温まで冷却した後、0.5M水酸化ナトリウム及び1M乳酸により溶液のpH値を7.5に調整する。得られた溶液を、容量測定用フラスコに移し、蒸留水を加えて100mlとする。基質溶液は、低温室に貯蔵すれば、1週間は使用可能である。
【0024】
<試薬2> 0.2MNaHPO溶液:
リン酸水素ジナトリウム二水和物17.80gを蒸留水に溶解し、更に蒸留水を加えて500mlとする。
【0025】
<試薬3> 0.2MNaCl溶液:
塩化ナトリウム1.168gを蒸留水に溶解し、更に蒸留水を加えて1,000mlとする。
【0026】
<試薬4> 沈殿試薬(TCA):
トリクロロ酢酸(CClCOOH)18.80g、無水酢酸ナトリウム(CHCOONa)18.10g及び酢酸(CHCOOH)18.80gを蒸留水に溶解し、更に蒸留水を加えて1,000mlとする。
【0027】
<試薬5> フェノール試薬:
分析直前に、フォリン−チオカルトフェノール試薬1部を、蒸留水1部に混合する。
【0028】
<試薬6> 0.55MNaCO溶液:
炭酸ジナトリウム58.295gを蒸留水に溶解し、更に蒸留水を加えて1,000mlとする。
【0029】
<手順1> 酵素サンプル:
酵素希釈液(0.02MNaCl溶液)1mlを+40℃で(約5分間)平衡状態に保持し、これに平衡カゼイン基質5mlを添加し、攪拌した後、+40℃正確に30分培養する。次いで、沈殿剤5mlを添加し、攪拌する。正確に30分培養した後、即座に濾紙(Whatman−1又はMacherey Nagel640we)を通じて濾過する。
【0030】
次いで、濾液2ml、0.55MNaCO溶液5mlおよびフェノール試薬1mlをピペットにて添加する。得られた溶液を、+40℃で30分攪拌培養する。室温に冷却して、蒸留水に対する660nmにおける吸光度を測定する。
【0031】
<手順2> 酵素ブランク:
酵素希釈液(0.02MNaCl溶液)1mlを+40℃で(約5分間)平衡状態に保持し、沈殿剤5mlを添加し、+40℃で正確に30分攪拌培養する。これにカゼイン基質5mlを添加した後、+40℃で正確に30分攪拌培養する。得られた溶液を、即座に濾紙(Whatman−1又はMacherey Nagel640we)を通じて濾過する。
【0032】
得られた濾液を、酵素ブランクとする。
【0033】
酵素サンプルと酵素ブランクとの吸光度差は、0.2〜0.5の範囲にある必要がある。
【0034】
<手順3> 標準曲線:
L−チロシン10mgを、容積測定用フラスコに秤量して、チロシン株溶液を調製し、0.02MNaCl溶液中に溶解した後、0.02MNaCl溶液を加えて100mlとする。
【0035】
0.02MNaCl溶液を加えて、前記チロシン株溶液から以下の濃度の希釈液を調製する。
【0036】
【表1】

【0037】
各チロシン希釈液2ml、0.55MNaCO溶液5mlおよびフェノール試薬1mlをピペットにて添加する。得られた溶液を、+40℃で30分攪拌培養する。室温に冷却して、蒸留水に対する660nmにおける吸光度を測定する。
吸光度を関数として、チロシン濃度をプロットする。
【0038】
計算法:
サンプルのプロテアーゼ活性を以下の式から計算する。
【0039】
活性(U/g)=[A(X)−A(O)]×k×F×Df/t
【0040】
式中、A(X)は、酵素サンプルの吸光度;A(O)は、酵素ブランクの吸光度;kは、標準曲線の傾き;Fは、反応希釈係数(=11);Dfは、希釈係数;tは、反応時間(30分)をそれぞれ示す。
【0041】
キシラナーゼ活性分析法:
キシラナーゼ活性一単位は、以下の条件下において1分間に基質から還元糖1μモル(キシロース規定換算)を遊離する酵素量を示す。
【0042】
<試薬1> 1%(w/v)キシラン基質:
キシラン(Fluka95590)1.0gに、0.5M水酸化ナトリウム10mlを添加する。得られた液を、マグネチックスターラーにより30分間混合する。pH5.3の0.05M酢酸ナトリウム緩衝液約40mlを添加する。次いで、1M酢酸によりpH値を5.3に調整した後、pH5.3の0.05M酢酸ナトリウム緩衝液を加えて、全量を100mlとする。基質は、使用時に混合して使用する。
【0043】
<試薬2> 1M酢酸:
氷酢酸5.7mlを、容積測定用フラスコにピペットにより添加し、蒸留水を加えて100mlとする。
【0044】
<試薬3> 0.05M酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.3:
A:酢酸ナトリウム4.19gを、蒸留水に溶解し、更に蒸留水を加えて全量を1,000mlとする。B:氷酢酸3.0gを、蒸留水に溶解し、更に蒸留水を加えて全量を1,000mlとする。溶液Bを使用して、溶液AのpHを5.3に調整する。
【0045】
<試薬4> ジニトロサリチル酸(DNS)試薬:
3,5−ジニトロサリチル酸20.0gを、蒸留水約800mlに懸濁する。得られた懸濁液に、水酸化ナトリウム溶液(蒸留水300ml中にNaOH32.0gを溶解した溶液)300mlを攪拌下に連続して徐々に添加する。懸濁液を、水浴(浴温:+48℃以下)中で攪拌下に溶液が透明になるまで、加熱する。次いで、酒石酸カリウムナトリウム600gを徐々に添加する。得られた溶液を、必要に応じて、溶液が透明になるまで、+48℃以下の温度で加熱する。蒸留水で全量を2,000mlとした後、粗焼結ガラスフィルターを通じて濾過する。
【0046】
得られた試薬は、室温下に暗色ボトル内に貯蔵する。この試薬は、最長6ヶ月間安定に保持できる。
【0047】
<手順1> 酵素サンプル:
酵素希釈液(pH5.3の0.05M酢酸ナトリウム緩衝液中)1mlを+50℃で平衡させ、これにキシラン基質1mlを添加し、攪拌した後、+50℃正確に30分培養する。次いで、DNS試薬3mlを添加攪拌し、得られた反応混合物を正確に5分間煮沸する。反応混合物を、冷水浴で室温に冷却した後、蒸留水に対する540nmにおける吸光度を測定する。
【0048】
<手順2> 酵素ブランク:
キシラン基質1mlを、+50℃で30分培養する。次いで、DNS試薬3mlを添加攪拌する。酵素希釈液(pH5.3の0.05M酢酸ナトリウム緩衝液中)1mlを添加攪拌する。得られた混合物を正確に5分間煮沸する。反応混合物を、冷水浴中で室温に冷却した後、蒸留水に対する540nmにおける吸光度を測定する。
【0049】
酵素サンプルと酵素ブランクとの吸光度差は、0.3〜0.5の範囲にある必要がある。
【0050】
<手順3> 標準曲線:
pH5.3の0.05M酢酸ナトリウム緩衝液中に無水キシロースを溶解して標準溶液を調製した。標準溶液中のキシロース濃度は、0.05〜0.5mg/mlの範囲にある必要がある。標準溶液1ml、キシラン基質1ml及びDNS試薬3mlをピペットにて試験管に取り、正確に5分間攪拌煮沸する。得られた反応液を、冷水浴中で室温に冷却した後、標準ブランクに対する540nmにおける吸光度を測定する。標準ブランクは、キシロース溶液を、pH5.3の0.05M酢酸ナトリウム緩衝液1mlで置換して調製する。その他は、標準ブランクは、キシロース標準溶液と同様に処理する。
【0051】
吸光度の関数として、キシロース濃度をプロットする。新たなDNS試薬に対しては、別個の標準曲線を新たに作成する。
【0052】
計算法:
サンプルのキシラナーゼ活性を以下の式から計算する。
【0053】
活性(U/g)=
([A(X)−A(O)]×k×C)×1000×Df/MWxyl×t
【0054】
式中、A(X)は、酵素サンプルの吸光度;A(O)は、酵素ブランクの吸光度;kは、標準曲線の傾き;Cは、キシロース標準曲線の切片;1000は、係数(mmol>μmol);Dfは、希釈係数(ml/g);MWxylは、キシロース分子量(150.13mg/mmol);tは、反応時間(30分)をそれぞれ示す。
【0055】
アミラーゼ活性分析法:
α−アミラーゼ活性一単位とは、以下の条件下において1分間にグリコシド結合1μモルを加水分解する触媒量を示す。
【0056】
<試薬1> 基質:
基質として、生体外診断用フェイドバス(Phadebas)アミラーゼ試験タブレット(pharmacia Dignotics社製)を使用する。前記タブレットは、蒸留水中で、水溶性ブルースターチポリマー、ウシ血清アルブミン及び緩衝液から調製する。
【0057】
<試薬2> 試薬溶液:
塩化ナトリウム9.0g、ウシ血清アルブミン2.0g及び塩化カルシウム2.2gを蒸留水で希釈し、容積測定用フラスコに添加した後、更に蒸留水を加えて全量を1000mlとする。
【0058】
<試薬3> 0.5MNaOH溶液:
水酸化ナトリウム20.0gを蒸留水に溶解し、容積測定用フラスコに添加した後、更に蒸留水を加えて全量を1,000mlとする。
【0059】
<試薬4> 濾紙:
Macherey Nagel 640mn又は等価物
【0060】
<手順1> 酵素サンプル:
試薬溶液中の適当な酵素希釈液200μl及び試薬溶液4.0mlをピペットにて試験管に取り、+37℃で5分間平衡さる。この溶液に、ペンチにより、基質タブレットを添加し、10秒間よく混合する。得られた混合物を+37℃で正確に15分間培養する。反応時間の計測は、タブレットの添加から開始する。次いで、0.5MNaOH溶液1.0mlを添加し、よく攪拌する。得られた反応液を、濾過するか又は3500rpmで10分間遠心分離した後、試薬ブランクに対する620nmにおける吸光度を測定する。
【0061】
<手順2> 試薬ブランク
試薬溶液4.2mlを、+37℃で30分間平衡させる。この溶液に、ペンチにより、基質タブレットを添加し、10秒間よく混合する。得られた混合物を+37℃で正確に15分間培養する。次いで、0.5MNaOH溶液1.0mlを添加し、よく攪拌する。得られた反応液は、濾過するか又は3500rpmで10分間遠心分離する。
【0062】
計算法:
サンプルの吸光度は、α−アミラーゼ活性に比例する。酵素希釈液のα−アミラーゼ活性は、タブレットキットに同封された一覧表から読み取る。各タブレットバッチには、検量表が添付されている。
【0063】
サンプルのα−アミラーゼ活性を以下の式から計算する。
【0064】
活性(U/g)=Act×Df/1000
【0065】
式中、Actは、フェイドバスアミラーゼ試験表から読み取った酵素希釈液のα−アミラーゼ活性値(U/l);Dfは、希釈係数(ml/g);1000は、(リットルをmlに換算するための)係数をそれぞれ示す。
【0066】
以下の記載において、獣医免疫学および免疫病理学、ワクチン、動物薬学及び動物畜産学の当業者の一般的知識を構成する種々の方法論が参照される。かかる公知の方法論を記載した刊行物および他の資料としては以下のものが挙げられる。
【0067】
獣医科学の一般原理は、例えば、「メルク・獣医学マニアル(Merck Veterinary Manual)」第6版、フレザー(Fraser)他編(1986);「食料および薬剤局(FDA)1994、飼料添加剤解説」米国食料および薬剤局、1994;「獣医学研究および開発、パート6:抗コクシジウム」ロイド・エバンス(Lloyd−Evans,L.P.M.)編、PJBパブリケーション社;「家禽類の疾病」カルネック(B.W.Calnek)編、アイオワ州立大学プレス、アメス、アイオワ、1991等に記載される。
【0068】
動物畜産学の一般原理は、例えば、パトリック(H.Patrick)他著「家禽類」;「飼料および栄養摂取」第2版、AVIパブリッシング社、ウエストポート、コネチカット(1980)等に記載される。
【0069】
また、薬剤科学の一般原理は、例えば、「レミントン(Remington’s)薬剤科学」第18版、ジェナロー(A.R.Gennaro)編、マック・パブリッシング社、イーストン、ペンシルバニア(1990)等に記載される。上記したように、本発明によれば、プロテアーゼ及び第4級アミンカルボン酸内部塩の、コクシジウム症、細菌感染または特にウエルチ菌感染から生じる壊死性腸炎の治療および/または予防用薬剤製造への使用が提供される。ベタイン及びプロテアーゼの組合せを含む飼料を使用した場合の利点としては、ルーチン的に飼料に添加されている抗菌剤の含量を減少させることができるか、または場合によっては、完全に省略することができる。かかる抗菌剤の使用が禁止されている地域では、本発明は、細菌症の抑制に新たなアプローチを提供するものである。
【0070】
動物食から抗生物質を除くと、幾つかの更なる利点が得られる。以前は、屠殺前に動物食における抗生物質の使用を中止する必要があった。これによって、かかる薬剤を比較的に非含有である食肉を提供するとともに、当該食肉を、ヒトの消費に適合させていた。これと対照的に、動物食から抗生物質が完全に省略された場合、本発明で達成されたように、動物は、使用中止期間経過後でなくとも、如何なる年齢でも屠殺可能となる。これによって、農業従事者に柔軟性を持たせるとともに、動物が屠殺直前に感染する危険を取除くことができる。更に、確実に、抗生物質を非含有な食肉および鶏卵の生産が保証される。かかる保証の無い製品に比して、上記の食肉および鶏卵は、市場的に有利である。
【0071】
本発明は、また、ヒトの健康に有利である。本発明の使用は、抗生物質を動物飼料から取除くことによって、細菌の耐抗生物質株の淘汰性を低下させることができる。従って、より抗生物質の利きやすい菌株が、動物の消化管に存在するため、同様のヒト条件で抗生物質を使用する場合、細菌致死効果をより確実に得ることができる。
【0072】
本発明の飼料添加剤は、多数の方法で調製できる。前記飼料は、例えば、適当な異なる化合物を混合して簡単に製造することができる。得られる添加剤は、次いで、直接飼料と混合するか、又はより従来的には、製粉コムギ、トウモロコシ又は大豆粉等の穀物系キャリアー物質上に含浸させる。かかる含浸キャリアーは、また、本発明の第4の要旨に従った飼料添加剤を構成する。
【0073】
飼料添加剤は、直接動物飼料と混合されてもよく、または、ビタミン飼料添加剤、ミネラル飼料添加剤またはアミノ酸飼料添加剤等の他の飼料添加剤の1種以上と混合されてもよい。得られた、幾つかの異なるタイプの成分を含む飼料添加剤は、次いで、適当な量で、飼料と混合される。また、上記飼料添加剤は、動物が摂取する第2の(異なる)飼料または飲料水中に添加することにより、動物食中に含有させることができる。従って、本発明の添加剤を、通常の穀物系動物主飼料に含有させることは、特に好ましい実施形態ではあるが、必ずしも必須ではない。
【0074】
本発明により提供される飼料添加剤は、好ましい他の酵素との予備混合物として調合することもできる。前記予備混合物は、飼料製造前、飼料製造中、又は使用に供する前の飼料の最終段階で、原料に添加することができる。また、内部塩およびプロテアーゼの組合せを、ペレット又はマッシュ形状に予備成形された飼料物質に直接添加することができる。
【0075】
本発明の添加剤を動物飼料に含有させた場合、得られた飼料は、穀類を、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも35重量%の割合で含有する。穀類としては、コムギ、トウモロコシ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、トリチケール(triticale)、イネ及びモロコシの1種以上を使用することができる。これらの中で、特に好ましい穀類としては、コムギ又はトウモロコシが挙げられる。穀類が、トウモロコシの場合、添加剤または薬剤は、好ましくは、更にα−アミラーゼを含む。
【0076】
穀物系食餌の穀物成分は、タンパク源を構成するが、通常、食餌内に、魚粉、肉粉または野菜等から誘導される追加のタンパク源を含有させる必要がある。これら追加のタンパク源は、動物飼料に対し50重量%以下の割合で含有される。植物タンパク源としては、脂肪分の豊富なダイズ、アブラナ、キャノーラ、大豆粉、アブラナ粉およびキャノーラ粉の少なくとも1種が含有される。
【0077】
第4級アミンカルボン酸内部塩は、以下の一般構造式を有する。
【0078】
−L−COO
【0079】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、最も好ましくは全てがメチル基であり;結合基−L−は、アルコキシアルキル又はアルキレン等の有機結合基、好ましくはC−Cアルキレン、最も好ましくはメチレンを示す。)第4級アミンカルボン酸内部塩の具体例としては、ベタイン(MeCHCOO)、Me−CHMeCOO、EtCHCOO、MeEtNCHCOO、MeCHCHCOO、MeCHOCHCOO及びMeC(CHMe)HCOOが挙げられる。好ましい内部塩としては、商品名「Betafin(登録商標)」の下にフィンフィーズ社から市販されるベタインが挙げられる。
【0080】
内部塩は、飼料1kg当たり好ましくは0.01〜20g、より好ましくは0.1〜10g/kg、最も好ましくは0.5〜2g/kgの割合で、飼料中に含有される。
【0081】
使用されるプロテアーゼは、如何なる形態でもよいが、40,000U以上の活性を有するバシラス・サブティリス(Bacillus subtilis)から誘導されるサブチリシンの使用が好ましい。かかるサブチリシンは、例えば、米国特許第4,760,025号に記載される。プロテアーゼは、飼料1kg当たり100U〜100,000U、好ましくは500U〜10,000Uに相当するプロテアーゼ活性を示す量で、飼料中に含有される。好適なプロテアーゼとしては、これに限定しないが、Novo NEUTRASE(商標)(Novo Nordisk社)、PURAFECT(商標)(Genencor International社)、SAVINASE(商標)(Novo Nordisk社)、MAXACAL(商標)(Gist−Brocades社)、DURAZYM(商標)(Novo Nordisk社)及びMAXAPEM(商標)(Gist−Brocades社)等の市販プロテアーゼが挙げられる。
【0082】
本発明の好ましい実施形態において、薬剤または添加剤は、更に、キシラナーゼを含む。キシラナーゼは、トリコデルマ(Trichoderma)、アスペルギラス(Aspergillus)、ヒューミコーラ(Humicola)、ネオカリマスチス(Neocallimastix)又はサーモマイセス(Thermomyces)等の菌類から誘導することができる。好ましいキシラナーゼとしては、国際公開公報第WO92/06209号の実施例22に記載されるトリコデルマ・ロンギブラチアタム(Trichoderma longibrachiatum)から得られる低pIキシラナーゼ及び/又は高pIキシラナーゼが、挙げられる。キシラナーゼは、また、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイシス(Streptomyces)、マイクロテトラスポーラ(Microtetraspora)、クロストリジウム(Clostridium)又はルミノコッカス(Ruminococcus)等の細菌類から得ることができる。また、キシラナーゼは、宿主細菌または菌株内の適当な遺伝子の混入等の遺伝子操作を行った宿主から得ることもできる。キシラナーゼ活性は、約3,000Uが好ましい。トリコデルマ・ロンギブラチアタム(Trichoderma longibrachiatum)から得られる3,000U/gの最小活性を有するキシラナーゼは、「AVIZYME(登録商標)」の商品名でフィンフィーズ・インターナショナル社から市販されている。キシラナーゼは、飼料1kg当たり100U〜100,000U、好ましくは200U〜1,000Uに相当するキシラナーゼ活性を示す量で、飼料中に含有される。
【0083】
本発明の別の好ましい実施形態において、トウモロコシ含有飼料に添加される薬剤または添加剤中には、更に、α−アミラーゼが、含有されていてもよい。本発明では如何なる形態のα−アミラーゼも使用できるが、好ましくは、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)から得られる4,000U/gの最小活性を有するα−アミラーゼが使用される。かかるバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)から得られる4,000U/gの最小活性を有するα−アミラーゼは、「AVIZYME(登録商標)」の商品名でフィンフィーズ・インターナショナル社から市販されている。α−アミラーゼは、飼料1kg当たり10U〜100,000U、好ましくは100U〜4,000Uに相当するα−アミラーゼ活性を示す量で、飼料中に含有される。
【0084】
内部塩、プロテアーゼ、並びに任意にキシラナーゼ及びα−アミラーゼは、使用前に混合されても、又飼料に別々に添加されてもよい。プロテアーゼ、キシラナーゼ及びα−アミラーゼの組合せは、「AVIZYME(登録商標)1510」の商品名でフィンフィード・インターナショナル社から市販されている。これら酵素の別の組合せは、「AVIZYME(登録商標)1500」の商品名で乾燥予備混合物の形態のものが市販されている。なお、プロテアーゼを他のタンパクと一緒に長期間保存すると、後者の変質を生じるため、一般には、このような保存は避けるべきである。
【0085】
本発明の飼料添加剤は、広範囲の動物に使用可能であるが、特に、家畜類および放牧家畜に使用するのが好ましい。本発明が特に好ましく適用される動物としては、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ等の家禽類、ウシ、ウマ、ヒツジ等の反芻動物、ブタ等のイノシシ類、ラビット等の齧歯類および魚類が挙げられる。本発明は、特に、ブロイラー鶏に有用である。
【0086】
本発明の添加剤は、その効能レベルが、コクシジウム誘起病原体、特に、アイメリア種、例えば、アイメリア種に属するネカトリクス(necatrix)、ガロパルボニス(galloparvonis)、メラグリミチス(meleagrimitis)、イノキュア(innocua)、メラグリヂス(meleagridis)、サブロチュンダ(subrotunda)、ディスパーサ(dispersa)、トランカタ(truncata)、アセルブリナ(acervulina)、ブルネティ(brunetti)、マクシマ(maxima)、ミチス(mitis)、プラコックス(praecox)及びテネラ(tenella)等の病原体に起因する影響を軽減するように処方することができる。より好ましくは、本添加剤は、アイメリア感染動物の体重回復増加を促進させる。
【0087】
また、本発明の添加剤は、その効能レベルが、アイメリア種、特に、アイメリア種に属するE.アセルブリナ(E.acervulina)、E.ブルネティ(E.brunetti)、E.マクシマ(E.maxima)、E.ミチス(E.mitis)、E.ネカトリクス(E.necatrix)、E.プラコックス(E.praecox)及びE.テネラ(E.tenella)等の感染に起因する家禽類の悪影響を軽減するように処方することができる。
【0088】
更に、本発明の添加剤は、その効能レベルが、アイメリア種に属するズエリニ(zuernii)、ボビス(bovis:スミシィ(smithii))、エリプソイドリス(ellipsoidlis)等に感染したウシに誘起される悪影響を軽減するように処方することができる。
【0089】
本発明の添加剤は、その効能レベルが、アイメリア種のアルロインギ A(arloingi A:オビナ(ovina))、ウェイブリッジエンシス(weybridgensis:アルロンギス B(arlongis B))、クランダリス(crandalis)、アサタ(ahsata)、オビノイダリス(ovinoidalis)、ギルルーシ(gilruthi)等に感染したヒツジに誘起される悪影響を軽減するように処方することができる。
【0090】
本発明の添加剤は、その効能レベルが、アイメリア種に感染した、例えば、アイメリア種に属するアルロインギ(arloingi)、ファウレイ(faurei)、カプロイナ(caproina)、ニナコールヤキモバ(ninakohlyakinovae)、クリステンセニ(christenseni)等によるイミュニゼーション状態のヤギに誘起される悪影響を軽減するように処方することができる。
【0091】
本発明の添加剤は、その効能レベルが、アイメリア種に感染した、例えば、アイメリア種に属するデブリーキ(debliecki)、スカブラ(scabra)、ペニニュータ(penninuta)等によるイミュニゼーション状態のブタに誘起される悪影響、並びにイソスポラ(Isospora)種、例えば、イソスポラ・スイス(Isospora suis)によって誘起される悪影響を軽減するように処方することができる。
【0092】
本発明の添加剤は、その効能レベルが、クロストリジウム(Clostridium)、サルモネラ、キャンピロバクター(Campylobacter:グラム陰性桿菌)、E.coli及びリステリア(listeria)、特に、ウェルチ菌(Clostridium perfringens)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)及びキャンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)等の細菌に感染した家禽類に誘起される悪影響を軽減するように処方することができる。ウェルチ菌(Clostridium perfringens)は、壊死性腸炎の主原因の一つであるため、本発明の栄養添加剤は、従って、壊死性腸炎の治療および/または予防用薬剤調製に使用することができる。
【0093】
更なる薬学的方法を使用することによって、作用期間を制御することもできる。ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プロタミンサルフェート等の適当なマクロ分子を選択し、かつこれらを確かな手順にしたがって組み合わせることによって、薬剤の制御放出が可能となる。また、内部塩およびプロテアーゼの作用期間は、これら薬剤を、ポリエステル、ポリアミノ酸、ハイドロゲル、ポリ乳酸またはエチレン酢酸ビニル共重合体等のポリマー粉末に包含させることによって制御できる。別の方法としては、内部塩およびプロテアーゼを、マイクロカプセル内に封入してもよい。上記マイクロカプセルの製造および使用に関する種々の材料および方法は、「レミントン(Remington’s)薬剤科学」第16版、オスロー(A.Oslow)編、マック・パブリッシング社、イーストン、ペンシルバニア(1980)に記載される。
【0094】
内部塩およびプロテアーゼを動物飼料の形で動物に投与する本発明の上記実施形態に加えて、本発明の更なる実施形態では、内部塩およびプロテアーゼを含有する他の組成物を、ワクチン、栄養分または医薬を含む所望の組成物と共に、投与することもできる。
【実施例】
【0095】
実施例1:
以下の実施例では、本発明の飼料添加剤を、健康動物の飼料に包含させた場合の効果、並びにアイメリア感染の治療用薬剤の製造に適用した場合を示す。
【0096】
(a)一般手順:
96羽の雌ブロイラーひな鳥(ロス(Ross)208)を、24羽ずつ4つのグループに分けた。飼料投与を0日目より開始し、14日目にアイメリア・マクシマ(Eimeria maxima)の投与を行った。かかる投与は、アイメリア・アサービュリナ(E.acervulina)及びアイメリア・マクシマ(E.maxima)のオーシストを水道水2ml中に溶かし込んで、ひな鳥のソノウに接種した。一羽当たりの投与量は、アイメリア・アサービュリナ(E.acervulina)100,000オーシスト及びアイメリア・マクシマ(E.maxima)50,000オーシストであった。これら2種のアイメリア種は、空間的に腸内で分離される。即ち、アイメリア・アサービュリナ(E.acervulina)は、十二指腸及び空腸前部に感染し、一方アイメリア・マクシマ(E.maxima)は、小腸中央部、つまり空腸末端から回腸中央までの部分を好む。被験鳥を、ケージで0〜14日間、木くずを敷いた開放オリで14〜21日間保持した。
【0097】
被験鳥に投与された飼料は、コクシジウム抑制薬非含有のコーン・大豆系飼料であった。飼料は、直径約5mmの脆い小ペレットにコールドプレスした。開始飼料は、0〜14日で使用され、仕上げ飼料は、14〜21日で使用された。添加剤を、飼料ペレットに噴霧した。具体的には、ベタイン水溶液を、飼料1kg当たり1gの投与量で、及びキシラナーゼ300U/g、プロテアーゼ4,000U/g及びα−アミラーゼ400U/gから成る、「AVIZYME(登録商標)1510」(フィンフィード・インターナショナル社製)の水溶液を、飼料1kg当たり1gの投与量で、飼料に添加した。使用した飼料組成を、以下の表に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
これら飼料の栄養組成を、以下の表に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
(b)結果:
被験鳥の体重を、14日目のアイメリア・マクシマ(Eimeria maxima)の投与直前に測定した。表4に示すように、ベタイン及びプロテアーゼの組合せ使用は、これら化合物を個別に飼料に添加した場合に比して、大きな体重増加を示すことが判る。
【0102】
【表4】

【0103】
表4の結果を、図1にグラフで示す。
【0104】
被験鳥の体重を、21日目、即ち、アイメリア投与から7日目に再び測定した。結果を、表5に要約する。グループDでは、ベタイン又はプロテアーゼのいずれかを添加した飼料を使用したグループB及びCに比して、体重の改善が見られた。また、これら2成分の組合せによって、個々の成分の効果の合計よりも大きな向上が見られた。
【0105】
【表5】

【0106】
表5の結果を、図2にグラフで示す。
【0107】
実施例2:
本実施例では、ウェルチ菌感染に対する、実施例1で使用されたベタイン及びプロテアーゼの組合せの活性を検証する。使用飼料は、実施例1に記載の仕上げ飼料と同一である。
【0108】
(a)一般手順:
生後21日の12羽の鶏を、4羽ずつの3つのグループE、F及びGに分けた。グループEには、アイメリア・マクシマ(Eimeria maxima)を投与し、グループFは、ウェルチ菌を投与し、グループGは、アイメリア・マクシマ(Eimeria maxima)とウェルチ菌を同時投与した。ウェルチ菌α−トキシン遺伝子が、以下のように全体微生物DNAから検出された。ウェルチ菌α−トキシン遺伝子の公知のヌクレオシド配列に従って形成されたプライマーを使用して、盲腸の全体微生物DNAを、ポリマラーゼ連鎖反応(PCR)させた。α−トキシンプライマーの配列およびPCR反応の実施条件は、ソンガー(Songer)及びデ・ミーア(de Meer)著「Am.J.Vet.Res.」1997年6月;58(7)、702〜705頁に記載される。
【0109】
(b)結果
図3で示すゲルクロマトグラムのレーン3における強い帯域は、動物内に内因性ウェルチ菌α−トキシン遺伝子が存在することを示す。レーン2及び4における強い帯域の欠如により、アイメリア投与が、ウェルチ菌感染の必須前提条件であることが判る。何かの理論を持ち出すまでもなく、アイメリア投与は、腸内のプロテアーゼの通常レベルを低下させ、腸上部域での栄養分摂取を減少させ、この結果盲腸内でのタンパクレベルを増加(ウェルチ菌に好適な成長条件)させることが分かる。更に重要な点は、宿主動物の免疫系に対するアイメリア投与の効果である。免疫系が、既にアイメリア投与により先に占有されている場合は、ウェルチ菌投与に対する免疫応答が弱まる傾向がある。
【0110】
図3に示すレーン6及び7の比較から、ウェルチ菌α−トキシン遺伝子を示す帯域が、プロテアーゼのみの処理(レーン6)では観測されるが、ベタイン及びプロテアーゼを組合せ使用した場合(レーン7)では観測されないことが分かる。更に、ベタインはウェルチ菌投与に対し有効でないことが、一般共通知識となっている。従って、ベタイン及びプロテアーゼの組合せは、ウェルチ菌感染に対し有効であるが、他方ベタイン又はプロテアーゼのいずれか一方を個別に使用した場合は、ウェルチ菌感染を効果的に抑制できない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の動物飼料用添加剤は、飼料への添加により、動物体重増加率を改良する。更に、コクシジウム症および/または細菌感染、並びに壊死性腸炎を起こす疾病等の治療および/または予防に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ及び第4級アミンカルボン酸内部塩(R−L−COOで示され、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、結合基−L−は有機結合基を示す)から成るアイメリア感染動物における体重増加促進用飼料添加物。
【請求項2】
更にキシラナーゼ及び/又はα−アミラーゼを含む請求項1に記載の飼料添加物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飼料添加物から成る動物飼料。
【請求項4】
動物飼料中の第4級アミンカルボン酸内部塩含有量が、飼料1kg当たり0.01〜20gである請求項3に記載の動物飼料。
【請求項5】
動物飼料中のプロテアーゼ含有量が、飼料1kg当たり100〜100,000Uのプロテアーゼ活性に相当する請求項3又は4に記載の動物飼料。
【請求項6】
キシラーゼを含有し、飼料中のキシラーゼ含有量が、飼料1kg当たり100〜100,000Uのキシラーゼ活性に相当する請求項3〜5の何れかに記載の動物飼料。
【請求項7】
α−アミラーゼを含有し、飼料中のα−アミラーゼ含有量が、飼料1kg当たり10〜100,000Uのα−アミラーゼ活性に相当する請求項3〜6の何れかに記載の動物飼料。
【請求項8】
少なくとも25重量%の穀類を含有する請求項3〜7の何れかに記載の動物飼料。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の飼料添加物から成る動物アイメリア感染治療または予防のための薬剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−41576(P2011−41576A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256263(P2010−256263)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【分割の表示】特願2001−543139(P2001−543139)の分割
【原出願日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願人】(500026522)フィンフィーズ・インターナショナル・エルティーディー (1)
【Fターム(参考)】