説明

動画再生装置およびその制御方法

【課題】再生および停止などの操作が不要な動画再生装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】視線または顔が表示装置に向けられておらず(S3:NO)、動画再生中である(S5:YES)ときは、動画再生を停止し(S13)、停止された位置を示す位置情報を記憶し(S15)する。視線または顔が表示装置に向けられていて(S3:YES)、動画再生中でなく(S7:NO)、位置情報を記憶している(S9:YES)ときは、位置情報を読み出し(S17)、その位置情報が示す位置から動画再生を開始する(S19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画再生装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなどを用いた表示装置で動画の再生を行う動画再生装置としては、VTR(Video Tape Recorder)、DVD(Digital Versatile Disk)プレーヤなどが知られている。また、かかる機能を有するパソコンでも動画の再生が行える。
【0003】
このような動画再生装置では、動画の再生と停止にリモートコントローラ、マウス、キーボードなどが使用される。
【非特許文献1】大野健彦、武川直樹、吉川厚:2点補正による簡易キャリブレーションを実現した視線測定システム、情報処理学会論文誌、Vol.44, No.4, pp.1136-1149(2003)
【非特許文献2】Morency, L.-P., Rahimi, A., and Darrell, T.: Adaptive View-based Appearance Model, Proc. IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, pp.803-810(2003)
【非特許文献3】高橋健一、中野倫明、山本新:画像処理による携帯電話による指向集中の検出の検討、第11回画像センシングシンポジウム講演論文集、pp77-80(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リモートコントローラなどは、手で操作しなければならないので、例えば、動画を見ながらの食事のときには不便を感じる。つまり、食卓の料理から食べるものを選んだり、その食事を共にする人との会話のときには、リモートコントローラなどを手で操作して再生を停止し、そのような時間の合間に動画を楽しむときには、リモートコントローラなどを手で操作して動画を再生するといったことが不便に感じられる。しかも、再生の停止を忘れると、見ていないにも関わらず動画が再生され、そのため、停止位置まで戻す操作が必要となるので、不便さは一層のことである。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、再生および停止などの操作が不要な動画再生装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の本発明は、表示装置での動画の再生を行う動画再生装置において、前記動画の観察者を撮像するカメラとともに用いられ、該カメラにより得られた当該観察者の画像を基に当該観察者の視線または顔の向きを検出する検出手段と、前記動画を再生および停止する手段にして、前記検出手段での検出結果を基に、当該観察者の視線または顔が前記表示装置に向けられている否かを判定し、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、記憶した位置から再生する動画再生手段とを備えたことを特徴とする動画再生装置をもって解決手段とする。
【0007】
請求項2の本発明は、前記動画再生手段は、再生を停止した位置を示す位置情報が記憶される位置情報記憶手段を備え、再生を停止した位置を示す位置情報を前記位置情報記憶手段に記憶させ、当該位置情報記憶手段に記憶された位置情報を読み出して当該位置情報が示す位置から動画を再生することを特徴とする請求項1記載の動画再生装置をもって解決手段とする。
【0008】
請求項3の本発明は、表示装置での動画の再生を行う動画再生装置が、前記動画の観察者を撮像するカメラにより得られた当該観察者の画像を基に当該観察者の視線または顔の向きを検出し、前記動画再生装置が、検出結果を基に、当該観察者の視線または顔が前記表示装置に向けられている否かを判定し、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、記憶した位置から再生することを特徴とする動画再生装置の制御方法をもって解決手段とする。
【0009】
請求項4の本発明は、請求項1または2記載の動画再生装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラムをもって解決手段とする。
【0010】
請求項5の本発明は、請求項4記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体をもって解決手段とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、観察者の眼球または顔が撮像されたときに得られた当該眼球または顔の画像を基に、当該観察者の視線または顔の向きを検出する検出手段を設けて、かかる検出を行い、検出手段での検出結果を基に、当該観察者の視線または顔が表示装置に向けられている否かを判定し、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、記憶した位置から動画を再生する動画再生手段を設けて、かかる停止および再生を行うことで、再生中に観察者の視線または顔が表示装置に向けられなくなったときには動画の再生が停止し、停止中に観察者の視線または顔が表示装置に向けられたときには動画が、停止した位置から再生し、よって、再生の操作、停止の操作、停止位置まで戻す操作が不要であり、その結果、不便さを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る動画再生装置を用いたシステムの構成を示す図である。
【0014】
図1に示す動画再生装置1は、VTR、DVDプレーヤ、ビデオCD(Compact Disk)プレーヤあるいはパーソナルコンピュータなどに組み込まれて、CRTや液晶パネルなどを用いた表示装置2での動画の再生を行うものである。動画再生装置1は、この動画の観察者を撮像するステレオカメラ3とともに用いられて、ビデオテープやDVDなどである動画記録媒体4に記録された動画を再生するものである。
【0015】
動画再生装置1は、ステレオカメラ3により観察者の眼球または顔が撮像されたときに得られた当該眼球または顔の画像を基に、当該観察者の視線または顔の向きを検出する検出部11と、動画を再生および停止する動画再生部にして、検出部11での検出結果と予め記憶した表示装置2の位置を基に、観察者の視線または顔が表示装置2に向けられている否かを判定し、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、当該記憶した位置から動画を再生する動画再生部12を備える。動画再生部12は、再生を停止した位置を示す位置情報が記憶される位置情報記憶部121を備え、再生を停止した位置を示す位置情報を位置情報記憶部121に記憶させ、位置情報記憶部121に記憶された位置情報を読み出して当該位置情報が示す位置から動画を再生するようになっている。
【0016】
なお、検出部11は視線の検出を、例えば、大野健彦、武川直樹、吉川厚:2点補正による簡易キャリブレーションを実現した視線測定システム、情報処理学会論文誌、Vol.44, No.4, pp.1136-1149(2003)で、大野らが提案した方法、つまり、角膜反射法に基づき人物の視線の向きを実時間計測できる方法により行う。
【0017】
また、検出部11は顔の向きの検出を、例えば、Morency, L.-P., Rahimi, A., and Darrell, T.: Adaptive View-based Appearance Model, Proc. IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, pp.803-810(2003)で、Morencyらが提案した方法、つまり、ステレオカメラから得られる距離情報と画像処理により得られる顔の特徴点を追跡することにより、人物の顔の向きを実時間計測できる方法により行う。
【0018】
これらの技術は、ヒューマンインタフェース、認知科学または心理学の分析用ツールとして利用されているものである。例えば、高橋健一、中野倫明、山本新:画像処理による携帯電話による指向集中の検出の検討、第11回画像センシングシンポジウム講演論文集、pp77-80(2005)で、高橋らは、安全な運転環境を提供するために、運転中のドライバの視線方向の変化を解析することにより、ドライバが携帯電話により通話に集中しているか否かを判定する方法を提案している。
【0019】
図2は、観察者から見た表示装置2とステレオカメラ3を示す図である。
【0020】
ステレオカメラ3は、カメラ31およびカメラ32を備え、表示装置2と観察者の間以外で、観察者の眼球または顔を撮像できる位置に設ける必要があるので、例えば、図2に示すように、表示装置2上に配置される。
【0021】
図3は、動画記録媒体4に記録された動画の構成を示す図である。
【0022】
本実施の形態での動画の再生では、1秒間あたり例えば、約30個の静止画(フレームという)が連続的に表示されるので、動画記録媒体4に記録される動画は、例えば、該動画を最初から最後まで再生したときにかかる秒数の約30倍の数のフレームで構成される。
【0023】
次に、ステレオカメラ3および動画再生装置1の制御方法を説明する。ここでは、動画が再生されておらず、または動画の最後までの再生が終了しており、これにより、位置情報記憶部121には位置情報が記憶されていないこととする。
【0024】
ステレオカメラ3は、例えば、33ms(ミリ秒)が経過する度に、カメラ31およびカメラ32で観察者の眼球または顔を撮像し、各カメラにより得られた2つの画像(ステレオ画像と称する)を動画再生装置1に送信する。
【0025】
一方、動画再生装置1では検出部11が、ステレオ画像が送信される度に、その画像認識を行い、その結果を基に、当該観察者の視線または顔の向きを検出し、検出結果を動画再生部12に通知する。検出結果は例えば、眼球や顔を始点とするベクトル情報である。ここでは、ステレオ画像による視線または顔の向きの検出を行うが、その代わりに単一の画像による検出を行ってもよい。
【0026】
図4は、かかる検出結果を通知される動画再生部12のフローチャートである。
【0027】
動画再生部12は、検出結果が通知されたか否かを判定し(S1)、NOと判定された場合は、ステップS1に戻る一方、YESと判定された場合は、その検出結果と予め記憶した表示装置2の位置を基に、観察者の視線または顔が表示装置2に向けられている否かを判定する(S3)。ここでNOと判定された場合は、動画再生中か否かを判定する(S5)。まずは、NOと判定されるので、この場合、ステップS1に戻る。
【0028】
ステップS3でYESと判定された場合は、動画再生中か否かを判定する(S7)。まずは、NOと判定されるので、この場合、位置情報記憶部121に位置情報が記憶されているか否かを判定する(S9)。ここでも、まずは、NOと判定されるので、この場合、動画再生部12は動画記録媒体4に記憶された動画の最初のフレームからその後のフレームへと順次にフレームを読み出し、当該フレームをその読み出し順に表示装置2に表示させる動作すなわち動画再生を開始し(S11)、ステップS1に戻る。
【0029】
この動画再生の開始により、ステップS7でYESと判定された場合、ステップS1に戻る。よって、動画再生は継続する。
【0030】
また、この動画再生の開始により、ステップS5でYESと判定された場合、動画再生部12は動画再生を停止し(S13)、停止した位置を示す位置情報として、動画の最初からの再生時間やフレーム数を位置情報記憶部121に記憶させ(S15)、ステップS1に戻る。なお、動画再生を停止している間は、その位置または近傍のフレームを表示してもよいし、何も表示しなくてもよい。
【0031】
この位置情報の記憶により、ステップS9でYESと判定された場合、動画再生部12はまず、位置情報記憶部121から、記憶させた位置情報を読み出し(S17)、その位置情報が示す位置から動画再生を開始し(S19)、ステップS1に戻る。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係る動画再生装置によれば、カメラにより得られた観察者の画像を基に当該観察者の視線または顔の向きを検出する検出手段としての検出部11を設けて、かかる検出を行い、検出手段での検出結果を基に、当該観察者の視線または顔が表示装置に向けられている否かを判定し(ステップS3)、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、記憶した位置から動画を再生する動画再生手段としての動画再生部12を設けて、かかる停止および再生を行うことで、再生中に観察者の視線または顔が表示装置に向けられなくなったときには動画の再生が停止し、停止中に観察者の視線または顔が表示装置に向けられたときには動画が、停止した位置から再生し、よって、再生の操作、停止の操作、停止位置まで戻す操作が不要であり、その結果、不便さを解消することができる。
【0033】
また、動画再生手段は、再生を停止した位置を示す位置情報が記憶される位置情報記憶手段としての位置情報記憶部121を備え、再生を停止した位置を示す位置情報を位置情報記憶手段に記憶させ、当該位置情報記憶手段に記憶された位置情報を読み出して当該位置情報が示す位置から動画を再生することで、動画を、停止した位置から再生することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、観察者の視線または顔の向きを検出し、その検出結果を用いることとしたが、実際には視線だけを検出し、その検出結果を用いてもよいし、逆に観察者の顔の向きだけを検出し、その検出結果を用いてもよい。
【0035】
また、本実施の形態のシステムを複数用いてもよい。例えば、複数のシステムを、一人の観察者を囲むように配置して動作させることで、この観察者の視線または顔が向けられている表示装置だけで動画を再生する一方、他の表示装置では動画を停止することができる。
【0036】
また、本実施の形態では、ステレオカメラを用いたが、これに代えて単眼カメラを用いてもよい。
【0037】
また、本実施の形態の動画再生装置を、コンピュータプログラムで動作するコンピュータを用いて実現してもよい。このコンピュータプログラムは、通信網を介して伝送させてもよいし、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態に係る動画再生装置を用いたシステムの構成を示す図である。
【図2】観察者から見た表示装置2とステレオカメラ3を示す図である。
【図3】動画記録媒体4に記録された動画の構成を示す図である。
【図4】動画再生部12のフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 動画再生装置
2 表示装置
3 ステレオカメラ
4 動画記録媒体
11 検出部
12 動画再生部
121 位置情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置での動画の再生を行う動画再生装置において、
前記動画の観察者を撮像するカメラとともに用いられ、
該カメラにより得られた前記観察者の画像を基に当該観察者の視線または顔の向きを検出する検出手段と、
前記動画を再生および停止する手段にして、前記検出手段での検出結果を基に、当該観察者の視線または顔が前記表示装置に向けられている否かを判定し、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、記憶した位置から再生する動画再生手段と
を備えたことを特徴とする動画再生装置。
【請求項2】
前記動画再生手段は、再生を停止した位置を示す位置情報が記憶される位置情報記憶手段を備え、再生を停止した位置を示す位置情報を前記位置情報記憶手段に記憶させ、当該位置情報記憶手段に記憶された位置情報を読み出して当該位置情報が示す位置から動画を再生する
ことを特徴とする請求項1記載の動画再生装置。
【請求項3】
表示装置での動画の再生を行う動画再生装置が、前記動画の観察者を撮像するカメラにより得られた当該観察者の眼球または顔の画像を基に当該観察者の視線または顔の向きを検出し、
前記動画再生装置が、検出結果を基に、当該観察者の視線または顔が前記表示装置に向けられている否かを判定し、否定的な判定結果が再生中に得られた場合、再生を停止するとともに停止した位置を記憶し、肯定的な判定結果が停止中に得られた場合、記憶した位置から再生する
ことを特徴とする動画再生装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の動画再生装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項4記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−36846(P2007−36846A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219164(P2005−219164)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】