説明

動翼及び回転機械

【課題】動翼及び回転機械において、翼の振動を効果的に減衰可能とすると共に高コスト化を抑制可能とする。
【解決手段】翼部23の基端部がロータに支持されると共に翼部23の先端部にシュラウド24が固定され、ロータの周方向に複数並設されることで、シュラウド24が環状をなすように互いに接触して組み付けられるように構成され、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンなどに適用される動翼、この動翼が適用される回転機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な蒸気タービンは、ケーシングに回転軸であるロータが回転自在に支持され、このロータの外周部に動翼が設けられると共に、ケーシングに静翼が設けられ、蒸気通路にこの動翼と静翼が交互に複数配設されて構成されている。従って、この動翼及び静翼を流れる蒸気により、動翼を介してロータが回転駆動することができる。
【0003】
このような蒸気タービンにて、動翼は、ロータディスクに固定される翼根部と、この翼根部に一体に形成されるプラットホームと、基端部がこのプラットホームに接合されて先端部側に延出する翼部と、この翼部の先端部に連結されるシュラウド(インテグラルシュラウド)とから構成されており、翼部は捩られている。そして、この動翼は、基端部がロータ(ロータディスク)の外周部に周方向に沿って複数並設されるように固定され、先端部のシュラウド同士が接触するように環状に組み付けられている。
【0004】
蒸気タービンでは、運転が開始されて回転数が増加すると、各動翼に遠心力が作用し、翼部に予め形成されている捩れをなくす方向の捩りモーメントが作用することから、隣接するシュラウドが回動して互いに押圧し、この押圧面にシュラウド反力が生じる。一方、蒸気タービンの運転中は、各動翼に流体からの励振力が作用するため、この動翼は振動することとなり、シュラウドの接触面に摩擦力が発生する。この摩擦力は、動翼の励振力を減衰させる作用があることから、従来は、この摩擦力により動翼の振動を減衰させていた。このような構成の動翼として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−013401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の動翼は、回転時に遠心力が作用して捩れがなくなる方向の捩りモーメントが作用するため、隣接するシュラウド同士の接触面に摩擦力が発生し、動翼の励振力を減衰させることができる。この場合、動翼の励振力を減衰させるためには、シュラウド同士を面接触させる必要があり、動翼、特にシュラウドにおける接触面の加工精度や公差管理が重要なものとなり、高コスト化を招いてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、翼の振動を効果的に減衰可能とすると共に高コスト化を抑制可能とする動翼及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の動翼は、翼部の基端部が回転軸に支持可能であると共に前記翼部の先端部に連結部が固定され、前記回転軸の周方向に複数並設されることで、前記連結部が環状をなすように接触して組み付けられる動翼において、前記連結部は、隣接する連結部との接触部に対して前記翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部を有する、ことを特徴とするものである。
【0009】
従って、動翼が回転して遠心力が作用すると、この動翼の捩れがなくなる方向の捩りモーメントが作用し、隣接する連結部同士の接触部に摩擦力が発生し、動翼の励振力を減衰させることができる。この場合、回動部が隣接する連結部の接触部に対して翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在であることから、連結部側の接触部に対して回動部が回動してこの隣接する連結部に対して常時適正に接触することが可能となることから、発生する摩擦力により動翼の励振力を常時減衰させることができる。その結果、動翼の振動を効果的に減衰することができる一方で、動翼における接触面の加工精度や公差管理を不要して高コスト化を抑制することができる。
【0010】
本発明の動翼では、前記回動部は、前記翼部の長手方向に交差すると共に前記複数の連結部における環状の組付方向に沿う軸線をもって回動自在であることを特徴としている。
【0011】
従って、連結部の接触部に対して回動部が常時適正に回動することで、接触部同士が自動的に適正な接触状態に調整されることとなり、回動部と隣接する連結部との間に常時適正な摩擦力を発生させることとなり、動翼の励振力を適正に減衰させることができる。
【0012】
本発明の動翼では、前記回動部と隣接する連結部との接触面は、同一形状をなす平面または同一曲率をなす凹凸湾曲面であることを特徴としている。
【0013】
従って、連結部の接触部に対して回動部が追従して回動するとき、互いの接触面が適正に面接触状態を維持したままとなり、適正な摩擦力を発生して動翼の励振力を確実に減衰させることができる。
【0014】
本発明の動翼では、前記連結部は、前記翼部の先端部に固定される連結部本体と、該連結部本体に回動軸により回動自在に支持される前記回動部を有することを特徴としている。
【0015】
従って、連結部の一部に回動自在な回動部を設けることで、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0016】
本発明の動翼では、前記回動部は、前記回動軸が前記連結部本体に形成された支持孔に回動自在に支持されると共に前記翼部の長手方向に移動自在に支持され、前記支持孔は、前記翼部の先端部側の内面に前記回動軸の回動を抑制する回動抑制部が設けられることを特徴としている。
【0017】
従って、動翼に大きな遠心力が作用すると、回動部が動翼の先端部側に移動するモーメントが作用し、回動軸が支持孔を同方向に移動して回動抑制部に支持され、回動部の回動が抑制されることとなり、このときの回動部のがたつきを防止し、動翼の適正な回転を維持することができる。
【0018】
また、本発明の回転機械は、ケーシングと、該ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、翼部の基端部が前記ロータに支持されると共に前記翼部の先端部側に連結部が固定されて前記ロータの周方向に複数並設されることで前記連結部が環状をなすように接触して組み付けられる複数段の動翼と、基端部が前記ケーシングに固定されると共に先端部が前記ロータ側に延出して前記動翼と交互に配設される複数段の静翼と、を備える蒸気タービンにおいて、前記連結部は、隣接する連結部との接触部に対して前記翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部を有する、ことを特徴とするものである。
【0019】
従って、動翼が回転して遠心力が作用すると、この動翼の捩れがなくなる方向の捩りモーメントが作用し、隣接する連結部同士の接触面に摩擦力が発生し、動翼の励振力を減衰させることができる。この場合、回動部が隣接する連結部の接触部に対して翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在であることから、連結部側の接触部に対して回動部が回動してこの隣接する連結部に対して常時適正に接触することが可能となることから、発生する摩擦力により動翼の励振力を常時減衰させることができる。その結果、動翼の振動を効果的に減衰することができる一方で、動翼における接触面の加工精度や公差管理を不要して高コスト化を抑制することができ、回転機械の効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の動翼及び回転機械によれば、隣接する連結部との接触部に対して翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部を設けるので、動翼の振動を効果的に減衰することができる一方で、動翼における接触面の加工精度や公差管理を不要して高コスト化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る動翼のシュラウドを表す概略図である。
【図2】図2は、実施例1の動翼におけるシュラウドの分解概略図である。
【図3】図3は、実施例1の動翼におけるシュラウド回動部の作用を表す概略図である。
【図4】図4は、実施例1の動翼におけるシュラウド回動部の変形例を表す概略図である。
【図5】図5は、実施例1の動翼が適用された蒸気タービンの概略構成図である。
【図6】図6は、実施例1の動翼を表す概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施例2に係る動翼の要部を表す概略図である。
【図8】図8は、実施例2の動翼における作用を表す概略図である。
【図9】図9は、本発明の実施例3に係る動翼の要部を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る動翼及び回転機械の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る動翼のシュラウドを表す概略図、図2は、実施例1の動翼におけるシュラウドの分解概略図、図3は、実施例1の動翼におけるシュラウド回動部の作用を表す概略図、図4は、実施例1の動翼におけるシュラウド回動部の変形例を表す概略図、図5は、実施例1の動翼が適用された蒸気タービンの概略構成図、図6は、実施例1の動翼を表す概略図である。
【0024】
実施例1では、本発明の回転機械としての蒸気タービンを例に挙げて説明する。この実施例1の蒸気タービンにおいて、図5に示すように、ケーシング11は、中空形状をなし、回転軸としてのロータ12が複数の軸受13により回転自在に支持されている。このロータ12は、ケーシング11の内部にて、外周部にロータディスク14を介して動翼15が固定されている。この場合、動翼15は、ロータ12における軸方向に所定間隔で複数段にわたって設けられている。また、ケーシング11は、この複数段の動翼15の間に位置して、複数段の静翼16が固定されている。そして、ケーシング11は、この動翼15及び静翼16が配設される通路に蒸気通路17が形成されており、蒸気供給口18と蒸気排出口19が設けられ、蒸気通路17に連通している。
【0025】
従って、蒸気がこの蒸気供給口18から蒸気通路17に供給されると、この蒸気が複数の動翼15と静翼16を通過することで、各動翼15を介してロータ12が駆動回転し、このロータ12に連結された図示しない発電機を駆動する一方、動翼15を駆動した蒸気は、排気ディフューザ(図示略)で静圧に変換されてから蒸気排出口19から大気に放出される。
【0026】
このように構成された蒸気タービンにて、動翼15は、図6に示すように、翼根部21と、プラットホーム22と、翼部23と、本発明の連結部としてのシュラウド(インテグラルシュラウド)24とから構成されている。翼根部21は、ロータディスク14(図5参照)に板厚方向から嵌合して固定可能となっている。プラットホーム22は、翼根部21と一体となる湾曲したプレート形状をなしている。翼部23は、基端部がこのプラットホーム22に固定されて先端部がケーシング11(図5参照)のない壁面側に延出しており、所定角度(例えば、90度程度)捩じられている。シュラウド24は、この翼部23の先端部に固定されている。
【0027】
そして、この動翼15は、図5及び図6に示すように、ロータ12の外周部に周方向に沿って一定間隔で複数並設され、基端部がロータディスク14に固定されることで、各シュラウド24同士が接触することで環状に組み付けられている。
【0028】
このように構成された本実施例の動翼15にあっては、図1及び図2、図6に示すように、翼部23の基端部がロータ12(図5参照)に支持される共にこの翼部23の先端部にシュラウド24が固定され、ロータ12の周方向に複数並設されることで、シュラウド24が環状をなすように接触して組み付けられて構成され、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31を設けている。
【0029】
この回動部31は、翼部23の長手方向に交差すると共に複数のシュラウド24における環状の組付方向に沿う軸線をもって回動自在となっている。そして、回動部31と隣接するシュラウド24との接触面は、同一形状をなす平面または同一曲率をなす凹凸湾曲面となっている。
【0030】
具体的に説明すると、シュラウド24は、翼部23の先端部に所定の厚さを有する板形状をなすようにシュラウド本体32が一体に形成されている。このシュラウド本体32は、シュラウド24同士が組み付けられる環状方向に長く、この長手方向における端部が二股形状をなしている。そして、シュラウド本体32は、長手方向の一方側に第1、第2突起部32a,32bが形成され、他方側に第3突起部32cが形成されると共に第4突起部として機能する回動部31が回動軸33により回動自在に支持されている。
【0031】
この回動部31は、基端部側の取付面31aが、シュラウド本体32の他方側における第3突起部32cに隣接して形成された端面32dに隙間なく面接触すると共に、所定の位置で周囲の面が段差なく連続するように配置されている。そして、シュラウド本体32の端面32dに支持孔32eが形成される一方、回動部31の取付面31aに回動軸33が一体(または、別体)に形成されており、回動部31の回動軸33がシュラウド本体32の支持孔32eに回動自在に嵌合している。
【0032】
この場合、回動部31は、回動軸33がシュラウド本体32の支持孔32eに回動自在に嵌合した状態で、図示しない抜け止め手段により支持されている。この抜け止め手段は、例えば、ねじ部材であり、シュラウド本体32の支持孔32eを貫通孔とし、この貫通孔の一方側から回動部31の回動軸33を挿入し、他方側からねじ部材を挿入して回動軸33に螺合することで、ねじ部材がシュラウド本体32に係止することで、回動部31が脱落しないようにすればよい。なお、この抜け止め手段は、ねじ部材に限らず、クリップなどを用いてもよい。
【0033】
動翼15は、前述したように、ロータ12の周方向に複数並設されることで、シュラウド24が環状をなすように接触可能となっており、具体的には、シュラウド24を構成する回動部31の第1接触面34が、隣接するシュラウド24を構成するシュラウド本体32における第1突起部32aの第2接触面35に接触可能となっている。この場合、回動軸33を上述したねじ部材などで係止した場合、初期組付時に第2接触面35に対する第1接触面34の角度を適正角度に調整することができる。そして、動翼15は、翼部23が所定角度だけ捩じられており、回転時に遠心力が作用し、この捩れが戻る方向に捩りモーメントが作用することから、隣接するシュラウド24間で、回動部31の第1接触面34とシュラウド本体32の第2接触面35とが互いに押圧し、この押圧面にシュラウド反力が生じることでの摩擦力が発生し、この摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0034】
この場合、隣接するシュラウド24間で、回動部31の第1接触面34とシュラウド本体32の第2接触面35との間で発生する摩擦力により動翼15の励振力を減衰させるためには、回動部31の第1接触面34とシュラウド本体32の第2接触面35とを、所定の面積以上の領域で常時面接触させる必要がある。しかし、動翼15の加工精度、特に、シュラウド24における第2接触面35の加工精度が十分でないとき、回動部31の第1接触面34とシュラウド本体32の第2接触面35とを常時面接触させることが困難となる。
【0035】
そこで、本実施例では、シュラウド本体32に対して回動部31が、翼部23の長手方向に交差すると共に複数のシュラウド24における環状の組付方向に沿う軸線を支点として回動自在となっている。そのため、動翼15、特に、シュラウド24における第2接触面35の加工精度が十分でなくても、隣接するシュラウド24間で、回動部31の第1接触面34がシュラウド本体32における第2接触面35に応じて回動する。そのため、回動部31の第1接触面34とシュラウド本体32の第2接触面35とが、常時、所定の面積以上の領域で面接触させることが可能となる。
【0036】
ここで、実施例1の動翼15における作用について説明する。
【0037】
図1に示すように、ロータ12と共に動翼15が回転すると、この動翼15に遠心力が作用し、翼部23の捩れがなくなる方向(捩れが戻る方向)の捩りモーメントが作用する。すると、隣接するシュラウド24同士の接触面34,35に摩擦力が発生し、動翼15の励振力が減衰される。即ち、隣接するシュラウド24間で、一方(図1にて、右側)のシュラウド24の回動部31における第1接触面34と、他方(図1にて、左側)のシュラウド24のシュラウド本体32における第2接触面35とが互いに押圧し、この接触面34,35に図1にて左右方向の摩擦力が発生する。そのため、この摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0038】
動翼15は、その加工精度により回動部31における第1接触面34、シュラウド本体32における第2接触面35などが適正に加工されていないことがある。また、動翼15は、翼部23の捩れ方向だけでなく、例えば、動翼15の長手方向に交差する方向に沿うと共に複数のシュラウド24における環状の組付方向に沿う軸線をもった方向に変形することがある。この場合、図3に示すように、隣接するシュラウド24間で、他方(図3にて、左側)のシュラウド24が図3に二点鎖線で表すように変形すると、一方(図3にて、右側)のシュラウド24の回動部31は、第1接触面34が他方のシュラウド24の第2接触面35に接触したままで、他方のシュラウド24に追従するように回動し、この接触面34,35同士は、常時、面接触状態が維持される。即ち、隣接するシュラウド24間で、第2接触面35の形状や角度に応じて回動部31が回動することで、第1接触面34がこの第2接触面35に対して適正に接触するように自動調整されることとなり、接触面34,35が接触することで発生する摩擦力により動翼15の励振力を確実に減衰させることができる。また、回動部31が回動するとき、回動軸33の外周面とシュラウド本体32の支持孔32eの内周面との間で摩擦力が発生することから、この摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0039】
なお、図3の表す動翼15は、隣接するシュラウド24間で、一方のシュラウド24の回動部31における第1接触面34と、他方のシュラウド24のシュラウド本体32における第2接触面35とは、平坦面(平面)であり、この接触面34,35が上下方向にずれることで、面接触状態が維持される。この接触面34,35は、平坦面に限るものではない。例えば、図4に示すように、隣接するシュラウド24間で、一方のシュラウド24の回動部31における第1接触面34aを湾曲した凸面形状とし、他方のシュラウド24のシュラウド本体32における第2接触面35aを湾曲した凹面形状とし、この接触面34a,35aが回動軸33を支点とする円弧方向にずれることで、面接触状態を維持するようにしてもよい。なお、接触面34a,35aを円弧形状とした場合、同一の曲率半径とすることが望ましい。また、接触面34a,35aを球面形状としてもよい。
【0040】
ところで、シュラウド24の接触面に生じる摩擦力と流体から動翼15の翼部23に加わる励振力との比、即ち、摩擦力比(摩擦力/励振力)に対する動翼15の減衰率が設定される。摩擦力を利用してこの減衰率を大きくするには、所定の大きさの摩擦力比を設定すればよい。上述したように、隣接シュラウド24間で、一方のシュラウド24の回動部31における第1接触面34aと、他方のシュラウド24のシュラウド本体32における第2接触面35aとを湾曲した凹凸球面形状とした場合、翼部23に加わる励振力が大きくなって振幅が大きくなると、第1接触面34aと第2接触面35aとが球面方向にずれて面接触状態を維持することから、この位置での押圧力(摩擦力)が大きくなる。そのため、動翼15の回転状態にかかわらず、摩擦力比を適正に維持することができ、常時、動翼15の減衰率を大きいものに設定することができる。
【0041】
このように実施例1の動翼15にあっては、翼部23の基端部がロータ12に支持されると共に翼部23の先端部にシュラウド24が固定され、ロータ12の周方向に複数並設されることで、シュラウド24が環状をなすように互いに接触して組み付けられるように構成され、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31を設けている。
【0042】
従って、動翼15が回転して遠心力が作用すると、この動翼15の捩れがなくなる方向の捩りモーメントが作用し、隣接するシュラウド24同士の接触面34,35に摩擦力が発生し、動翼15の励振力を減衰させることができる。この場合、回動部31が隣接するシュラウド24の接触面35に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在であることから、シュラウド24側の接触面35に対して回動部31が回動し、接触面34がこの隣接するシュラウド24の接触面35に対して常時適正に面接触することが可能となり、発生する摩擦力により動翼15の励振力を常時減衰させることができる。その結果、動翼15の振動を効果的に減衰することができる一方で、動翼15における接触面34,35の加工精度や公差管理を不要して高コスト化を抑制することができる。
【0043】
また、実施例1の動翼15では、回動部31を、翼部23の長手方向に交差すると共に複数のシュラウド24における環状の組付方向に沿う軸線をもって回動自在としている。従って、シュラウド24の接触面34,35に対して回動部31が常時適正に回動することで、接触面34,35同士が自動的に適正な接触状態に調整されることとなり、回動部31と隣接するシュラウド24との間に常時適正な摩擦力を発生させることとなり、動翼15の励振力を適正に減衰させることができる。
【0044】
また、実施例1の動翼15では、回動部31と隣接するシュラウド24との接触面34,35(34a,35a)を、同一形状をなす平面または同一曲率をなす凹凸湾曲面としている。従って、シュラウド24の接触面34(34a)に対して回動部31が追従して回動するとき、互いの接触面34,35(34a,35a)が適正に面接触状態を維持したままとなり、適正な摩擦力を発生して動翼15の励振力を確実に減衰させることができる。
【0045】
また、実施例1の動翼15では、シュラウド24を、翼部23の先端部に固定されるシュラウド本体32と、このシュラウド本体32に回動軸33により回動自在に支持される回動部31とにより構成している。従って、シュラウド24の一部に回動自在な回動部31を設けることで、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0046】
また、実施例1の蒸気タービンにあっては、ケーシング11と、ケーシング11内に回転自在に支持されたロータ12と、翼部23の基端部がロータ12に支持されると共に翼部23の先端部にシュラウド24が固定されてロータ12の周方向に複数並設されることでシュラウド24が環状をなすように接触して組み付けられる複数段の動翼15と、基端部がケーシング11に固定されると共に先端部がロータ12側に延出して動翼と交互に配設される複数段の静翼16とにより構成し、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31を設けている。
【0047】
従って、回動部31が隣接するシュラウド24の接触面35に対して回動することから、回動部31の接触面34がこの隣接するシュラウド24の接触面35に常時適正に面接触することが可能となり、適正に発生する摩擦力により動翼15の励振力を常時減衰させることができる。その結果、動翼15の振動を効果的に減衰することができる一方で、動翼15における接触面34,35の加工精度や公差管理を不要して高コスト化を抑制することができ、蒸気タービンの効率を向上することができる。
【実施例2】
【0048】
図7は、本発明の実施例2に係る動翼の要部を表す概略図、図8は、実施例2の動翼における作用を表す概略図である。なお、本実施例の動翼の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様の構成であり、図1を用いて説明すると共に、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
実施例2において、図1及び図7に示すように、翼部23の基端部がロータ12(図5参照)に支持されて先端部にシュラウド24が固定され、ロータ12の周方向に複数並設されることで、シュラウド24が環状をなすように接触して組み付けられて動翼15が構成され、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31を設けている。
【0050】
詳細に説明すると、シュラウド24にて、シュラウド本体32の端面32dに支持孔41が形成される一方、回動部31の取付面31aに回動軸33が一体に固定されており、回動部31の回動軸33がシュラウド本体32の支持孔41に回動自在に支持されている。この場合、回動部31は、回動軸33がシュラウド本体32に形成された支持孔41に回動自在に支持されると共に、翼部23の長手方向に移動自在に支持され、支持孔41は、翼部23の先端部側の内面に回動軸33の回動を抑制する回動抑制部が設けられている。
【0051】
即ち、支持孔41は、翼部23の長手方向に沿った長孔形状をなしている。即ち、支持孔41は、翼部23の基端部側(図7にて下側)に回動軸33より若干大径に形成される内径を有する第1支持孔41aと、この第1支持孔41aから翼部23の先端部側に向ってその幅(翼部23の幅方向における内径)が狭くなる第2支持孔41bとから構成されている。この場合、第2支持孔41bが上述した回動抑制部として機能する。
【0052】
従って、図7に示すように、回動部31の回動軸33が支持孔41における第1支持孔41a側に支持された状態では、回動軸33の外周面が第1支持孔41aの内周面に接触しているものの摩擦抵抗が小さいことから、回動部31がシュラウド本体32に対して回動可能となっている。一方、回動部31の回動軸33が支持孔41における第2支持孔41b側に支持された状態では、回動軸33の外周面が第2支持孔41bの内周面に挟持されるように接触して大きな摩擦抵抗が発生することから、回動部31がシュラウド本体32に対して回動不能となっている。
【0053】
そのため、図1及び図7に示すように、ロータ12と共に動翼15が回転すると、この動翼15に遠心力が作用し、翼部23の捩れがなくなる方向(捩れが戻る方向)の捩りモーメントが作用する。すると、隣接するシュラウド24同士の接触面に摩擦力が発生し、動翼15の励振力が減衰される。即ち、隣接するシュラウド24間で、一方(図1にて、右側)のシュラウド24の回動部31における第1接触面34と、他方(図1にて、左側)のシュラウド24のシュラウド本体32における第2接触面35とが互いに押圧し、この接触面34,35に図1にて左右方向の摩擦力が発生する。そのため、この摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0054】
そして、動翼15におけるシュラウド24の各接触面34,35が適正に加工されていない場合、隣接するシュラウド24間で、他方のシュラウド24が変形すると、一方のシュラウド24の回動部31は、第1接触面34が他方のシュラウド24の第2接触面35に接触したままで、他方のシュラウド24に追従するように回動し、この接触面34,35同士は、常時、面接触状態が維持される。そのため、上述した摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0055】
また、動翼15が高回転状態になると、図1及び図8に示すように、この動翼15、つまり、回動部31に遠心力が作用し、回動部31の回動軸33が支持孔41における第2支持孔41b側に移動して押し付けられる。すると、回動軸33の外周面が第2支持孔41bの内周面に押し付けられることで大きな摩擦抵抗が発生し、回動部31の回動が規制されて回動不能となる。そのため、動翼15の高回転時における回動部31のがたつきが防止される。
【0056】
このように実施例2の動翼15にあっては、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31を設け、この回動部31の回動軸33をシュラウド本体32に形成された支持孔41に回動自在に支持すると共に翼部23の長手方向に移動自在に支持し、この支持孔41における翼部23の先端部側の内面に回動軸33の回動を抑制する回動抑制部を設けている。
【0057】
従って、動翼15が回転して遠心力が作用すると、この動翼15の捩れがなくなる方向の捩りモーメントが作用し、隣接するシュラウド24同士の接触面34,35に摩擦力が発生し、動翼15の励振力を減衰させることができる。この場合、動翼15に小さな遠心力が作用しているとき、回動軸33が支持孔41における第1支持孔41a側に支持されることから、回動部31がシュラウド本体32に対して回動可能である。そのため、シュラウド24側の接触面35に対して回動部31が回動し、接触面34がこの隣接するシュラウド24の接触面35に対して常時適正に面接触することが可能となり、発生する摩擦力により動翼15の励振力を常時減衰させることができる。一方、動翼15に大きな遠心力が作用したとき、回動軸33が支持孔41における第2支持孔41b側に支持されることから、回動部31がシュラウド本体32に対して拘束されて回動不能である。そのため、回動部31のがたつきを防止し、動翼15の適正な回転を維持することができる。
【実施例3】
【0058】
図9は、本発明の実施例3に係る動翼の要部を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
実施例3において、図9に示すように、翼部23の基端部がロータ12(図5参照)に支持されて先端部にシュラウド24が固定され、ロータ12の周方向に複数並設されることで、シュラウド24が環状をなすように接触して組み付けられて動翼15が構成されている。そして、本実施例では、シュラウド24に、隣接するシュラウド24との接触部に対して翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31,51を設けている。
【0060】
詳細に説明すると、シュラウド24は、翼部23の先端部にシュラウド本体32が一体に形成されており、このシュラウド本体32は、長手方向の一方側に第1突起部として機能する回動部51が回動軸53により回動自在に支持されると共に第2突起部32bが形成され、他方側に第3突起部32cが形成されると共に第4突起部として機能する回動部31が回動軸33により回動自在に支持されている。
【0061】
この回動部31は、回動軸33がシュラウド本体32に形成された支持孔32eに回動自在に支持される一方、回動部51は、回動軸53がシュラウド本体32に形成された支持孔(図示略)に回動自在に支持されている。なお、回動部51(回動軸53)の構成並びにシュラウド本体32への支持構造は、回動部31(回動軸33)とほぼ同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0062】
そのため、ロータ12と共に動翼15が回転すると、この動翼15に遠心力が作用し、翼部23の捩れがなくなる方向(捩れが戻る方向)の捩りモーメントが作用する。すると、隣接するシュラウド24同士の接触面34,35に摩擦力が発生し、動翼15の励振力が減衰される。即ち、隣接するシュラウド24間で、回動部31と回動部51の各接触面34,35とが互いに押圧し、この接触面34,35に図9にて左右方向の摩擦力が発生する。そのため、この摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0063】
そして、動翼15におけるシュラウド24の各接触面34,35が適正に加工されていない場合、隣接するシュラウド24間で、各回動部31,51は、各接触面34,35同士が接触したままで回動し、この接触面34,35同士は、常時、面接触状態が維持される。そのため、上述した摩擦力により動翼15の励振力を減衰させることができる。
【0064】
このように実施例3の動翼15にあっては、シュラウド24における長手方向における各端部に、隣接するシュラウド24同士の接触部にて、翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部31,51を設けている。
【0065】
従って、動翼15が回転して遠心力が作用すると、この動翼15の捩れがなくなる方向の捩りモーメントが作用し、隣接するシュラウド24同士の接触面34,35に摩擦力が発生し、動翼15の励振力を減衰させることができる。この場合、回動部31,51が翼部23の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在であることから、回動部31,51が回動し、接触面34,35同士が常時適正に面接触することが可能となり、発生する摩擦力により動翼15の励振力を常時減衰させることができる。その結果、動翼15の振動を効果的に減衰することができる一方で、動翼15における接触面の加工精度や公差管理を不要して高コスト化を抑制することができる。
【0066】
なお、上述した各実施例にて、動翼15を構成する翼根部21、プラットホーム22、翼部23、シュラウド24を説明したが、本発明は、その形状や製造方法(一体構造または別体構造)などについて限定されるものではない。また、上述した各実施例では、本発明の連結部を翼根部21の先端部に固定されたシュラウド(インテグラルシュラウド)24として説明したが、翼根部21の先端部側、つまり、中間部に固定されたスタブとしてもよく、この場合であっても上述したものと同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
また、上述した各実施例では、本発明の動翼を蒸気タービンに適用して説明したが、ガスタービンや圧縮機などのいずれの回転機械にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る動翼及び回転機械は、隣接する連結部同士の接触部に対して翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部を設けることで、翼の振動を効果的に減衰可能とすると共に高コスト化を抑制可能とするものであり、いずれの種類の動翼にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
11 ケーシング
12 ロータ(回転軸)
15 動翼
16 静翼
21 翼根部
22 プラットホーム
23 翼部
24 シュラウド(連結部)
31,51 回動部
32 シュラウド本体
33,53 回動軸
41 支持孔(回動抑制部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼部の基端部が回転軸に支持可能であると共に前記翼部の先端部側に連結部が固定され、前記回転軸の周方向に複数並設されることで、前記連結部が環状をなすように接触して組み付けられる動翼において、
前記連結部は、隣接する連結部との接触部に対して前記翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部を有する、
ことを特徴とする動翼。
【請求項2】
前記回動部は、前記翼部の長手方向に交差すると共に前記複数の連結部における環状の組付方向に沿う軸線をもって回動自在であることを特徴とする請求項1に記載の動翼。
【請求項3】
前記回動部と隣接する連結部との接触面は、同一形状をなす平面または同一曲率をなす凹凸湾曲面であることを特徴とする請求項1または2に記載の動翼。
【請求項4】
前記連結部は、前記翼部の先端部に固定される連結部本体と、該連結部本体に回動軸により回動自在に支持される前記回動部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の動翼。
【請求項5】
前記回動部は、前記回動軸が前記連結部本体に形成された支持孔に回動自在に支持されると共に前記翼部の長手方向に移動自在に支持され、前記支持孔は、前記翼部の先端部側の内面に前記回動軸の回動を抑制する回動抑制部が設けられることを特徴とする請求項4に記載の動翼。
【請求項6】
ケーシングと、
該ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、
翼部の基端部が前記ロータに支持されると共に前記翼部の先端部側に連結部が固定されて前記ロータの周方向に複数並設されることで前記連結部が環状をなすように接触して組み付けられる複数段の動翼と、
基端部が前記ケーシングに固定されると共に先端部が前記ロータ側に延出して前記動翼と交互に配設される複数段の静翼と、
を備える蒸気タービンにおいて、
前記連結部は、隣接する連結部との接触部に対して前記翼部の長手方向に交差する方向に沿う軸線をもって回動自在な回動部を有する、
ことを特徴とする回転機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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