説明

動荷重ベンチ

本発明は、制御型再現手段(2)によって供給される径方向荷重および可変トルクをアクチュエータなどの被試験装置(4)の回転シャフト(3)に印加する荷重ベンチに関する。制御型再現手段(2)は、平行に、かつ、試験対象の回転シャフト(3)に対して対称的に配置された2個の同一の再現モジュール(5、6)を含み、個々の再現モジュールは、トルクモータ(8、9)と、トーションロッド(10、11)と、トーションロッドを被試験機構部の回転シャフト(3)に接続する接続ロッド・クランク接続部(12、13、14)とを備える点が有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際の使用状況において、アクチュエータにより出される機械的バイアスまたは制約をできる限り忠実に再現するため、径方向荷重および可変トルクをアクチュエータなどのような被試験装置の回転シャフトに印加することが意図された動荷重ベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
好ましいが限定的ではない用途において、回転ベンチの出力シャフトは、回転中に一体化して、流体媒体中で高速に円運動するミサイルまたは別の装置の操縦面のような航空機の空力表面を支え、そして、その後、操縦面の偏向角度に応じて操縦面に印加された空気力によって発生された旋回的な高い応力(径方向荷重)とヒンジモーメント(トルク)とを受ける。
【0003】
よって、発明の動荷重ベンチの目的は、回転ベンチの出力シャフトによって採用された、操縦面によって実行される偏向を表す回転角度に依存して、径方向荷重と可変トルクとの両方を再現することである。そして、これらの応力およびモーメントの値は、ミサイルの様々な飛行点(遅い速度変動および/または速い速度変動と、軌道及び高度の変化など)を表現し、そして、遭遇する実際の条件、すなわち、後でアクチュエータの設計を最適化するため、アクチュエータが受ける空力運転荷重にできる限り近づくように、時間の関数として調節できることになる。
【0004】
トルクだけの制御型再現手段に基づいているこのようなアクチュエータのための動荷重ベンチは、トーションロッドまたはトルク発生器から既に知られている。
【0005】
第1の場合、ベンチ再現手段のトーションロッドは、一方で、試験対象の回転ベンチのシャフトに直接的に連結され、他方で、アクチュエータが角度的に空いているとき、偏向の回転角度に比例するトルクを発生する。非常に基本的な設計を有しているが、このようなトーションロッド手段は、操縦面の偏向の関数として不安定化および/または旋回的な荷重を発生することを許可しない戻りトルクを印加する。さらに、トーションロッド手段は、非常に限定され、実際の飛行条件にあるアクチュエータの性能を確実に検証することができないため、明瞭かつ正確なデータが不足するので、トーションロッド再現手段は、余裕を確保するために過剰な仕様が定められる。
【0006】
第2の場合、再現手段のトルク発生器は、アクチュエータに直接的に結合され、所要の動的性能の結果として、油圧トルクモータによって画定される。それによって高トルクを試験することができる反面、トルクモータとアクチュエータとの間に起こる相対運動は、これらの慣性および剛体連結の結果として、両方のうちの一方のシャフトが回転するとき、もう一方が対抗するため、衝撃が起こり機器の破壊を招く可能性があるので、問題を発生する。これは、著しく強力である油圧エンジンによって増幅される可能性がある。
【0007】
試験対象の回転シャフトにトルクだけを印加することに加えて(別の特定のベンチが径方向荷重のため必要とされる)、これらの動荷重ベンチは、
− 試験対象のアクチュエータを乱さないように、理想的には、動的な観点で、単なるトルクとして挙動するように、より小さい見かけの慣性を有し、連結の遊びがないこと、
− 著しい遅延を伴うことなく指令されたトルクプロファイルを再現するため、試験対象のアクチュエータの少なくとも2倍のトルク・スレーブ・ループの高通過帯域を利用できることと、
− アクチュエータと比べて十分に高速かつ高加速度飽和を利用できることと、
− 簡単な実施のため、トルクループの高通過帯域と両立しないことがよくある連結のある程度の柔軟性を含んで、アクチュエータとベンチとの間に実質的な位置合わせミスを許容することと、
−特に、アクチュエータに欠陥(電源切断、故障など)がある場合に、損害を与えることが分かっている過荷重、速度超過および偶発的な当接を回避するため、印加されたトルクの効率的な制御を確実にすることと、
といったすべての所望の期待および要件を満たすことは殆どない。
【0008】
当然ながら、米国特許第7080565号から、径方向応力および動的トルクを試験対象のアクチュエータの回転シャフトに印加することを可能にする動荷重ベンチもまた公知である。しかし、径方向応力および動的トルクを再現する制御型手段は、固有のサブアセンブリを含む互いに独立した2個の別個の機器をさらに備える。精巧なカルダン継手、スライド、継手結合などのシステムを用いて径方向応力の印加とトルクの印加とを機械的に切り離すことが特に必要である。さらに、アクチュエータの出力シャフトの回転を測定するエンコーダが設けられるべきである。そして、多数のこれらのサブアセンブリおよび機器は、不利な干渉共振を発生する可能性がある高周波数でのベンチの励起をさらに制限すると共に、扱いにくい実施をもたらす。
【0009】
欧州特許第0239264号から、トルクだけを航空機エンジンの変速機型ギアボックスの同一直線上の入力シャフトおよび出力シャフトに印加する試験装置もまた公知である。このため、この試験装置は、より具体的には、トルクを2個の平行な、かつ、シャフトに対して対称的であるモジュールに印加し、そして、エンジンの高出力に達することができるように回転アクチュエータによって駆動される複数のギア装置を含む装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7080565号明細書
【特許文献2】欧州特許第0239264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決し、制御型再現手段の実施が、回転アクチュエータのような機構部の設計および設定を最適化するため、少なくとも、実際の使用状況で試験対象の機構部が受ける径方向荷重および可変トルクに匹敵する径方向荷重および可変トルクを安全、確実、かつ、危険なしに印加することを可能にする動荷重ベンチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、平行に、かつ、試験対象の上記回転シャフトに対して対称的に配置された2個の同一の再現モジュールを含む制御型再現手段によって供給される径方向荷重および可変トルクをアクチュエータなどのような試験対象の機構部の回転シャフトに印加することが意図された動荷重ベンチは、本発明によれば、各モジュールが、
・ 試験対象の上記シャフトに平行である駆動シャフトをもつトルクモータであって、上記2個のモジュールのトルクモータが同じ方向に回転するトルクモータと、
・ 両端部の一方でトルクモータの上記駆動シャフトと同軸状に一体的であるトーションロッドと、
・ 試験対象の上記シャフトおよび上記駆動シャフトに垂直な平面内で上記トーションロッドのもう一方の端部を試験対象の上記シャフトに接続する接続ロッド・クランク接続部であって、その結果、上記垂直な平面内で、2個のモジュールの上記接続ロッドが平行であり、かつ、試験対象のシャフトと上記クランクを介するそれぞれの駆動シャフトとに対して互いに180°のオフセットで対称的に配置されている接続ロッド・クランク接続部と、
を備える点で注目に値する。
【0013】
このように、2個の異なるベンチ、または1個の同じベンチの中に2個の独立した別個の設備を必要とする従来技術の実施に対して、トルクモータ、トーションロッドおよび接続ロッド・クランク接続部による運動学的構造を用いた、2個の同一であり、かつ、アクチュエータのシャフトに対して対称的なモジュールとしての再現手段のモジュール式実施は、径方向荷重および可変トルクをアクチュエータのシャフトに同時に印加することを可能にする。このような設計では、励起周波数に本質的問題を伴うことなく、機械的に、より簡単で信頼性の高いベンチを達成し、より大きな操作力を生じる。
【0014】
各トルクモータの上記駆動シャフトは中空であり、貫通軸方向通路を有し、この通路の内側で、上記トーションロッドは、上記中空シャフトと一体的である通路の一方の端部と一体化され、もう一方の端部は、上記中空シャフトから外に出て、上記対応する接続ロッド・クランクに接続されている点は有利である。駆動シャフトの内側でトーションロッドの同軸配置を用いると、2個のモジュールは、著しく小型化するので、トーションロッドがエンジンの駆動シャフトの延長部である従来技術の上記実施に対して、ベンチの質量が非常に軽減される。
【0015】
好ましい実施形態では、上記接続ロッドは、一方側で、上記回転シャフトの中心に取り付けられ、正反対に対向する端部で、上記接続ロッドをそれぞれに支える共通ダブルクランクによって試験対象の上記回転シャフトに接続され、もう一方側で、上記トーションロッド上に互いに180°のオフセットで取り付けられた2個の同一のシンプルクランクによって上記それぞれのトーションロッドに接続されている。
【0016】
このように、対称的に、かつ、試験対象の機構部(アクチュエータ)の回転シャフトに垂直に配置された2個の接続ロッドは、重要な空気力が加わるアクチュエータのシャフトの操縦面が受ける上記径方向応力およびヒンジモーメントに対応する望ましい径方向荷重および可変トルクを伝達し(一方が押し、もう一方が引く)、回転シャフトに印加する。
【0017】
2個の対称的なモジュールによって、接続ロッドは、アクチュエータのシャフトに垂直である平面において、アクチュエータのシャフト上で変形可能な平行四辺形の対向するアーム部として機能し、簡単かつ信頼性の高い方法で、実際の使用状況で上記シャフトに印加される応力およびトルクを再現する。
【0018】
上記接続ロッドは、例えば、玉形ひざ継手のようなアンギュラクリアランス継手型連結具を用いて、上記連結系のそれぞれのクランクに取り付けられる点が有利である。よって、このような組立体を用いると、ベンチ全体に自然な平衡を与える膝継手のため試験対象のアクチュエータと2個のモジュールとの間で正確な位置決めを行う必要がなく、そして、様々な機能的な遊びおよびクリアランスを補償する必要がない。
【0019】
特有の実施形態では、各接続ロッドから試験対象の回転シャフトを分離する上記ダブルクランクの軸の間の距離は、上記対応する接続ロッドから上記トーションロッドを分離する各シンプルクランクの軸の間の距離と同一である。よって、上記伝達接続ロッドは、試験対象のアクチュエータの回転シャフトおよびトルクモータの駆動シャフトに直交して配置される。
【0020】
性能と、信頼性と、低慣性と、大容量および質量トルクとの理由のため、モジュールの上記トルクモータは、電気モータであることが好ましく、より具体的には、ブラシレス型電気モータである。さらに、油圧トルクモータを設けるべき複雑な油圧システムおよび高価な施設(コンプレッサ、アキュムレータなど)が回避される。
【0021】
さらに、上記トーションロッドは、ねじれ剛性の大きさが同じであり、トーションロッドは、較正されたトルクメータ(所定の伝達ねじれトルクに対応するロッドの一方の端部からもう一方の端部への角度差)として機能する。
【0022】
別の特性によれば、各モジュールは、トルクモータの上記駆動シャフトの角度位置センサと、上記対応するトーションロッドの角度位置センサとをさらに備え、そして、上記制御型手段は、試験対象の上記機構部の回転シャフトの角度位置の関数として上記トルクモータの各センサによって供給される角度位置のための電子スレーブ化機器と、上記電子スレーブ化機器に接続され、上記トルクモータに給電する電力機器とを備える。
【0023】
個々のモジュールは、各トルクモータのアンギュラクリアランスおよび速度を制限する電子および/または機械手段を備えることが好ましい。このように、アクチュエータに欠陥がある場合、アクチュエータのクリアランスは、トルクモータのクリアランスとトーションロッドの剛性とによって制限されるので、アクチュエータは、従来のベンチと比較して、破損されることがない。
【0024】
添付図面の図により、本発明がどのようにして実施されるかが明確に説明される。これらの図中、同一符号は、同一要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による動荷重ベンチの実施形態の概略部分断面図である。
【図2】図1に示された動荷重ベンチの概略側面図である。
【図3】図1に示された動荷重ベンチの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から図3に示された動荷重ベンチは、径方向荷重および可変トルクを試験対象の回転ベンチ4の回転シャフト3に印加する制御型手段2を備える。上述されたように、目的は、ミサイルの突然の方向変化および速度変化、したがって、操縦面の偏向の結果として、図示されないミサイルの空力操縦面が取り付けられたアクチュエータのシャフトに加えられる制約またはバイアスをできる限り忠実に再現し、それによって、構造的および動作的に安全であり、かつ、信頼できるシャフトアクチュエータを設計することである。
【0027】
このため、制御型手段2は、同一であり、アクチュエータのシャフト3の幾何学的軸に対して対称的に、かつ、平行に配置された径方向荷重および可変トルクを再現する2個のモジュール5および6によって画定される。各モジュール5、6は、より具体的には、アクチュエータ4のシャフト3と共に、トルクモータ8、9と、トーションロッド10、11と、接続ロッド・クランク接続部12、13、14とを含む。
【0028】
構造的に、各トルクモータ8、9は、内部ベアリング8C、9Cを用いて内部に回転自在に取り付けられた駆動シャフト8B、9Bが存在する円筒本体部8A、9Aを備える。本実施例では、トルクモータは、性能、信頼性、低慣性、高トルクなどの理由のため、ブラシレス型の電気モータであることが好ましく、駆動シャフトの回転の制御は、図1の8D、9Dで示され、対応するシャフトの周りで円筒本体部8A、9Aに収容された電気コンポーネント(ステータ、ロータなど)によって行われる。当然ながら、流体(油圧)のようなその他の型のトルクモータが使用されてもよい。さらに、動荷重ベンチ1は、試験対象のアクチュエータ3と、共通ベース部15を介してそれぞれの円筒本体部によって2個のトルクモータ8、9とが配置されている堅固な、安定した機械的支持体7を備える。
【0029】
幾何学的には、図1から図3において分かるように、トルクモータの平行駆動シャフト8B、9Bは、それぞれ、アクチュエータ4の回転シャフト3に対して対称的に配置され、駆動シャフト8B、9Bの幾何学的軸と試験対象のシャフト3の幾何学的軸とが同じ水平面P内に含まれている。
【0030】
各トルクモータ8、9の駆動シャフト8B、9Bは、中空であり、かつ、それぞれのシャフトと同軸状であり、駆動シャフトによって加えられたトルクを、接続ロッド・クランク接続部を介して、アクチュエータのシャフトに伝達するため適合したトーションロッド10、11を内側に受承する点が有利である。このため、各トーションロッドの第1の端部10A、11Aは、ピンなどのような締め付け部材16を用いて中空シャフトの第1の端部8E、9Eに剛性連結され、対応するトーションロッドと一体でシャフトの関節回転を生じる。アクチュエータのシャフトに対向する各トーションロッドの第2の端部10B、11Bは、駆動シャフトと連結せずに、駆動シャフトの第2の端部8F、9Fから軸方向に開き、接続ロッド・クランク接続部12、14と一体である。各トーションロッドの第2の端部10B、11Bは、その結果、円筒本体部に収容されたベアリング17によって支えられる。2個のモジュールの同一のトーションロッドは、当然ながら、ねじれ剛性の大きさが同じである。
【0031】
さらに分かることは、駆動シャフトの第1の端部8E、9E(よって、トーションロッドの端部)は、これらの対応する本体部8A、9Aに対して突出し、上記シャフト8B、9B(ブラシレス・トルクモータのロータ)の角度位置センサ18を支えることである。これは、対応する円筒本体部に収容されている角度位置センサ19が取り付けられているトーションロッド10、11の第2の端部10B、11Bと類似している。使用されるべきセンサ18、19は、広通過帯域スレーブ・ループを持つため正確であるべきであり、例えば、レゾルバ型、エンコーダ型、ポテンショメータ型、または同様のセンサを考えることができる。
【0032】
モジュールのトーションロッド10、11とアクチュエータ4のシャフト3との間の連結に関する限り、これらの連結は、一方側で、それぞれのクランク12B、14Bを介して、トーションロッド10、11に接続され、もう一方側で、共通ダブルクランク13を介して、アクチュエータ4のシャフト3に接続されている2個の個別かつ平行な接続ロッド12A、14Aを備える。2個の接続ロッド12A、14Aは、これにより、モジュール5、6の駆動シャフト8B、9B(そして、トーションロッドのシャフト)およびアクチュエータのシャフトの平行な幾何学的な軸に垂直である平面内に配置され、アクチュエータのシャフト3に対して互いに180°のオフセットで対称的に配置されている。図1において分かるように、接続部12、13、14は、明瞭にするため分解図で示される。
【0033】
特に、個々のシンプルクランク12B、14Bは、これらの端部の付近に、90°に曲げられ、そして、クランクのアーム部または本体部に対向している2個の平行なクランクピン12C、12D、14C、14Dを有し、各クランクの第1の湾曲クランクピン12D、14Dは、対応するトーションロッドの第2の端部8F、9Fと同軸状に一体化され、第2の湾曲クランクピン12C、14Cは、接続ロッド12A、14Aの端部のうちの一方を支える。
【0034】
図2においてより具体的に分かるように、シンプルクランク12B、14Bは、それぞれのトーションロッド10、11に互いに180°のオフセットで取り付けられているので、同図では、クランク12Bは、上向きであり、クランク14Bは、下向きである。
【0035】
さらに、共通ダブルクランク13は、一方側に、アクチュエータのシャフト3に結合された中心クランクピン13Aを有し(例えば、図示されない径方向スタッドは、シャフトの回転中に中心クランクピンと一体化し)、他方側に、中心クランクピン13Aに対して正反対に対向する2個の端クランクピン13B、13Cを有し、端クランクピンには、接続ロッド12A、14Aの第2の端部がそれぞれに取り付けられている。
【0036】
さらに、2個の接続ロッド12A、14Aの端部と、これらに対応するクランク12B、14B、13のクランクピン12C、14C、13B、13Cとの間に、玉形ひざ継手または弾性継手のようなアンギュラクリアランス継手型連結具20が存在することがある。
【0037】
図2に示された図からさらに分かるように、ダブルクランク13の中心クランクピン13Aから個々の対向するクランクピン13B、13Cを分離する距離Raは、シンプルクランク12B、14Bの第2の2個のクランクピン12C、14Cから第1の2個のクランクピン12D、14Dを分離する距離Rmに等しいので、2個の平行な接続ロッド12A、14Aは、図2において水平方向に、かつ、アクチュエータのシャフト3と直角に配置されている。当然ながら、ベンチの動作を損なうことなく、他の比率を選択することができ、2個の平行な接続ロッドは、この場合、水平に対して傾けられるに過ぎない。
【0038】
2個のモジュール5、6による径方向荷重およびトルクのこれらの制御型再現手段2は、電子機器をさらに備える。例えば、図1に示されるように、電子スレーブ機器21は、それぞれの接続部23によってスレーブ機器に接続された2個の角度位置センサ18から、アクチュエータのシャフトの角度位置の関数として、2個の回転トルクモータの1つずつの角度位置を知ることを可能にする。印加されるべきトルクは、このようにして、トルクがトルクモータの角度位置とアクチュエータの角度位置との間の角度差に比例することを知って、調節することができる。電子スレーブ機器21の出力には、例えば、接続部25によってトルクモータ8、9に給電し、供給されるべきトルクおよび最大速度を試験対象のアクチュエータの実現性と両立する値に制限し、試験対象のアクチュエータが破損されることを防止する電力機器24が設けられている。
【0039】
当然ながら、試験エレクトロニクス26は、接続部27によってスレーブ機器21に接続され、より具体的には、用途、役目、制約、寸法などに応じた試験対象のアクチュエータの個々の型のための特定のプログラムを含む。
【0040】
接続ロッド・クランク接続部の膝継手20によって与えられる一部の機能的自由度のため、遊び、軸間の距離およびアンギュラクリアランスのための補償を確実にし、それによって、ベンチを平衡にすると、トルクモータ8、9とアクチュエータ4との間の正確な位置決めが不要である。これに反して、2個のトルクモータの角度位置センサ18は、対応する接続ロッドによって与えられた(そして、ミサイルの操縦面に、したがって、アクチュエータのシャフトに印加された空力荷重の作用を表す)径方向荷重の印加によって導入された偏向(矢印)の存在する場合でも試験対象のアクチュエータ4の回転シャフト3の回転角度を決定することを可能にする。
【0041】
出力シャフトの回転角度θaと、出力シャフトの偏向Yaとは、以下の式(図2):
θa=Rm/Ra・(θ1+θ2)/2
および
Ya=Rm・(θ1−θ2)/2
によって決定され、
式中、
Rm=接続ロッド・トルクモータ・クランクのレバーアーム、
Ra=接続ロッド・アクチュエータ・クランクのレバーアーム、
θ1、θ2=トルクモータの出力シャフトの回転角度である。
【0042】
本発明の再現手段2によって発生された径方向応力およびトルクを制御することは、較正された剛性に応じたトルクのセンサ、または較正されたトルクメータとして機能する各トーションロッド10、11の較正された剛性を用いて達成される(トーションロッドの端部における駆動シャフトとのねじれ角度と、トーションロッドの端部における接続ロッドとのねじれ角度との間の角度差は、所定の剛性に対して、トルクを決定する)。
【0043】
試験対象のアクチュエータのシャフト3に印加されるべき径方向応力FrおよびトルクCを仮定する。その場合、供給された2個のトルクモータ8、9のそれぞれは、トルクC1およびC2を発生し、ロッド10および11を介して接続ロッド12Aおよび14Aに径方向応力F1およびF2を印加する。
【0044】
通常の力学関係を用いると、これは、
F1=C1/Rm および F2=C2/Rm(Rm:上記参照)
C=(F1+F2)・Ra(Ra:上記参照)
Fr=F1+F2
を与え、ここから、2個のトルクモータへの制御されるべき応力およびトルク:
F1=(C/Ra+Fr)/2 および F2=(C/Ra−Fr)/2
C1=Rm・(C/Ra+Fr)/2
C2=Rm・(C/Ra−Fr)/2
が抽出される。
【0045】
ここから、2個のトルクモータ上のトルクC1およびC1が以下の通り与えられる。
【0046】
アクチュエータのシャフトの角度位置θaは、スレーブ機器21において送信された角度センサ18、19からの情報からの計算によってリアルタイムで分かることが知られている(上記θaの計算を参照)。各トルクモータは、このセンサと、電子スレーブ機器21および電力機器24とによって位置がスレーブ化される。
【0047】
当然ながら、スレーブ化の通過帯域は、信号の歪み無しで、無視できる位相変位および減衰をもつ適当な追従をもたらすため、試験対象のアクチュエータ4の通過帯域より高い。このため、少なくとも2倍高い通過帯域が使用される。
【0048】
さらに、各トルクモータの位置のスレーブ化の別の利点は、干渉トルク(ノッチトルク、またはコギングトルク)の変動が、乾燥摩擦および粘性摩擦(ローリングトルク、ヒステリシストルク)と共に拒絶されることである。
【0049】
トルクモータ8、9に命令された角度位置θC0(θ1、θ2)は、望ましいトルクプロファイルC1(またはC2)の関数である。このトルクプロファイルは、アクチュエータのシャフト上で再現することが決定されたこと(角度x°をもつトルク)を実行するため、試行前に決定される。各時点で、このような径方向応力と共にこのようなトルクが達成されることになることが知られている。例えば、Kが空力剛性であるとして、(飛行点、高度、速度などに依存して)C1=Kθa+COという形状でトルクをシミュレートするため、Gaは、アクチュエータのシャフトの角度位置であり、COは、Gaから独立した一定トルクであり、トーションロッドの剛性がKOに一致すると仮定すると、以下の角度θCO:
KO(θ−θa)=Kθa+CO
すなわち、θがθCOに実質的に一致すると仮定すると、
θCO=(K/KO+1)θa+CO/KO
が命令されることになる。
【0050】
すなわち、トルクモータの位置のスレーブ化から得られるθをθCOに接続する伝達関数は、
θ/θCO=1/(1+a・p+b・p2+c・p3)
であり、但し、
b=1/ωO
a=2ξ/ωO
c/b<<1/ωO
p=ラプラス演算子
である。
【0051】
遮断パルスωOは、アクチュエータの遮断パルスの約2倍になるように選択される。
【0052】
ξ=2次近似伝達関数の減衰
【0053】
トルクの制御ダイナミクスを改善するため、θCOに位相進みフィルタを実施することが好ましい。
【0054】
例えば、トルクモータ8、9の角度θ1およびθ2は、約20から25°の角度範囲をカバーすることができる。試行中に、これらの角度θ1およびθ2は、アクチュエータ4の回転シャフト3の角度θaと共に当然ながら互いに非常に接近しているが、接続ロッドから生じる径方向荷重の作用の下で回転シャフトの偏向Yaのためやや異なる。
【0055】
さらに注意を要する点は、各モジュールがアクチュエータを保護し、それに応じて、ベンチを高信頼性かつ安全にするため、トルクモータのアンギュラクリアランスおよび速度を制限する電子機械的手段(図示されず)を備えることである。
【0056】
このようにして、ベンチのモジュール性と上記コンポーネント間の相互作用の欠如のため、ベンチのコンポーネントが迅速に組立分解できることに加えて、このような動的ベンチは、アクチュエータのより簡単な実施と、運転中の要求(トルク/速度、加速度、剛性など)に対する仕様の検証および正当化と、指定された運行プロファイルの信頼できる評価と、アクチュエータのより現実的な認定および認証とを提供する。
【符号の説明】
【0057】
2…制御型再現手段、3…回転シャフト、4…試験対象の機構部、5・6…再現モジュール、8・9…トルクモータ、8B・9B…駆動シャフト、10・11…トーションロッド、12・13・14…接続ロッド・クランク接続部(12A・14A…接続ロッド、13…ダブルクランク、12B・14B…シンプルクランク)、20…アンギュラクリアランス継手型連結部具、21…電子スレーブ化機器、24…電力機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御型再現手段(2)によって供給された径方向荷重および可変トルクをアクチュエータなどのような試験対象の機構部(4)の回転シャフト(3)に印加するため適合し、前記径方向荷重および前記可変トルクの前記制御型再現手段は、平行に、かつ、試験対象の前記回転シャフト(3)に対して対称的に配置された2個の同一の再現モジュール(5、6)を含む、動荷重ベンチであって、
各モジュール(5、6)は、
試験対象の前記シャフトに平行である駆動シャフト(8B、9B)をもつトルクモータであって、前記2個のモジュールのトルクモータが同じ方向に回転するトルクモータ(8、9)と、
両端部の一方でトルクモータの前記駆動シャフトと同軸状に一体的であるトーションロッド(10、11)と、
試験対象の前記シャフトおよび前記駆動シャフトに垂直な平面内で前記トーションロッドのもう一方の端部を試験対象の前記シャフトに接続する接続ロッド・クランク接続部であって、その結果、前記垂直な平面内で、2個のモジュールの前記接続ロッドが平行であり、かつ、試験対象のシャフトと前記クランクを介するそれぞれの駆動シャフトとに対して互いに180°のオフセットで対称的に配置されている接続ロッド・クランク接続部(12、13、14)と、
を備えることを特徴とする、動荷重ベンチ。
【請求項2】
各トルクモータの前記駆動シャフト(8B、9B)は中空であり、かつ、貫通軸方向通路を有し、この通路の内側で、前記トーションロッド(10、11)は、前記中空シャフトと一体的である通路の一方の端部と一体化され、もう一方の端部は、前記中空シャフトから外に出て、前記対応する接続ロッド・クランクに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のベンチ。
【請求項3】
接続部(12、14)の前記接続ロッド(12A、14A)は、一方側で、前記回転シャフト(3)上で前記回転シャフトの中心で取り付けられ、前記回転シャフトの中心に対して正反対に対向する端部で、前記接続ロッドをそれぞれに支える共通ダブルクランク(13)によって、試験対象の前記回転シャフト(3)に接続され、もう一方側で、前記トーションロッド上に互いに180°のオフセットで取り付けられた2個の同一のシンプルクランク(12B、14B)によって前記それぞれのトーションロッド(10、11)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のベンチ。
【請求項4】
前記接続ロッド(12A、14A)は、アンギュラクリアランス継手型連結具(20)を用いて前記接続部のそれぞれのクランク(12B、14B)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のベンチ。
【請求項5】
前記アンギュラクリアランス継手型連結具(20)は、玉形ひざ継手であることを特徴とする、請求項4に記載のベンチ。
【請求項6】
各接続ロッドから試験対象の前記回転シャフトを分離する前記ダブルクランク(13)の軸の間の距離は、前記対応する接続ロッド(12A、14A)から前記トーションロッド(10、11)を分離する各シンプルクランク(12B、14B)の軸の間の距離に一致することを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のベンチ。
【請求項7】
前記モジュール(5、6)の前記トルクモータ(8、9)は、ブラシレス型電気モータであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のベンチ。
【請求項8】
前記トーションロッド(10、11)は、ねじれ剛性が較正されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のベンチ。
【請求項9】
前記制御型手段(2)は、試験対象の前記機構部の前記回転シャフトの角度位置の関数として前記トルクモータの各センサによって供給される角度位置のための電子スレーブ化機器(21)と、前記電子スレーブ化機器に接続され、前記トルクモータに給電する電力機器(24)とを備えることと、
を特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のベンチ。
【請求項10】
個々のモジュール(5、6)は、各トルクモータのアンギュラクリアランスおよび速度を制限する電子および/または機械手段を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のベンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529640(P2012−529640A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514506(P2012−514506)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000416
【国際公開番号】WO2010/142866
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509096533)エムベーデーアー フランス (7)
【氏名又は名称原語表記】MBDA FRANCE
【Fターム(参考)】