説明

包丁収納ユニット

【課題】 包丁保持具を清掃する前や後に行う必要のある包丁保持具の着脱性を改善し、併せて、収納することのできる包丁の数を容易に増減することを可能にする。
【解決手段】 包丁保持具10の複数個と、保持具支持体30と、保持具固定手段50とを備える。保持具支持体30が、パネル121に横並びに取り付けられる複数個の支持台31,32を有して、相隣接する2個の支持台31,32の相互間空間によって保持具取付け区画B1,B2,B3を形成する。支持台31,32の数を増減して保持具取付け区画の数を変更する。保持具固定手段50が、支持台31,32の相互間に亘って配備される支持ロッド51と、包丁保持具10に設けられて支持ロッド51に係脱可能なフック部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流し台の開閉型パネルに取り付けられる包丁収納ユニット、特に、清掃性に優れるだけでなく、収納し得る包丁の数を増減することのできる包丁収納ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
シンクを備える流し台の膜板を開閉型のパネルによって形成し、そのパネルの裏面側に複数本の包丁を対象とする収納ボックスを取り付けることが従来より公知である(たとえば、特許文献1参照)。また、包丁を斜めに保持するための保持部を、収納本体に対して着脱自在にした包丁収納ユニットも従来より公知である(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実登3070747号公報
【特許文献2】特開2002−238785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1によって提案されている包丁の収納ボックスは、樋状の長い本体と、この本体に取り付けられるカバーとを有していて、カバーには、2丁の包丁が抜き差しされる溝が連続して設けられている。また、2つのカバーが装備された1つの本体は、1つのホルダーに嵌め込んで取り付けられるようになっている。
【0004】
特許文献2によって提案されている包丁収納ユニットについても、1つの保持部に2丁の包丁が保持されるようになっている。また、この特許文献2によっては、保持部を収納本体に着脱するための具体的構成は不明である。
【0005】
ところで、流し台の開閉型のパネルに取り付けられる包丁収納ユニットにおいて、包丁を収納する部材(包丁収納部材)の清掃を容易に行うことができるようにすることは、包丁を清潔に保つ上で有益である。しかし、包丁収納部材の清掃には、その包丁収納部材を水洗いしたり洗剤で洗ったりして清潔に保つためには、その包丁収納部材の汚れを布巾で拭き取ったりすることが必要になるために、包丁収納部材が上記パネルに取り付けられているままではユーザが手軽にかつ容易にその清掃を行うことができない。
【0006】
そこで、包丁収納部材をパネルから取り外して清掃するような構成を採用しておくことが要求されるけれども、上掲の特許文献1のものでは、本体とカバーとが包丁収納部材に相当していて、それがホルダーに嵌め込んで取り付けられるようになっているために、包丁収納部材を清掃するのに際しては、本体をホルダーから取り外す作業だけでなく、本体からカバーを取り外す作業も必要になるために、清掃の前に行うことを要する取外し作業が煩雑になって煩わしいという問題がある。同様に、清掃の後の取付け作業も煩雑になって煩わしいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2では、保持部が包丁収納部材に相当していて、その保持部を収納本体に着脱するための具体的構成が不明であるために、この特許文献2によっては、清掃の前や後に行うことを要する包丁収納部材の着脱作業を容易に行うことのできる構成を知ることができない。
【0008】
さらに、特許文献1や同文献2のものでは、1つの包丁収納部材が2丁の包丁を保持し得る長さを有していることにより、1つの包丁収納部材の長さが長く、そのことが包丁収納部材の着脱性を損なっているということが云える。
【0009】
また、特許文献1や特許文献2のものでは、複数の包丁を収納することができるようになっているとしても、収納する包丁の数を変更することが想定されていない。言い換えると、これらの特許文献によって提案されているものは、決まった数の包丁を収納することができるに過ぎず、流し台に設けられる開閉型のパネルのサイズや収納したい包丁の数に応じて、収納することのできる包丁の数を増減することができるような構成を備えていない。
【0010】
本発明は以上の問題や状況に鑑みてなされたものであり、包丁収納部材を清掃する前や清掃の後に行う必要のある包丁収納部材の着脱性を改善した包丁収納ユニットを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、流し台に設けられる開閉型のパネルのサイズや収納したい包丁の数に応じて、収納することのできる包丁の数を増減することのできる包丁収納ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る包丁収納ユニットは、包丁差込み空間及びこの包丁差込み空間の上向きの開口によって形成された包丁抜差し口を有して1丁の包丁だけを収納可能な包丁保持具の複数個と、流し台の開閉型パネルに取り付けられて個々の上記包丁保持具を各別に配置可能な複数の保持具取付け区画を有してその保持具取付け区画の数を変更可能な保持具支持体と、上記保持具取付け区画に配備した上記包丁保持具を上記保持具支持体に固定するための保持具固定手段と、を備えている。
【0013】
この発明では、包丁保持具が上記した包丁収納部材に相当している。そして、この発明では、1つの包丁保持具に1丁の包丁を収納することができるだけであるので、1つの包丁保持具の長さが短くて済み、そのことが、包丁収納部材としての包丁保持具を清掃する前や後に行う必要のある包丁保持具の着脱性を改善することに役立つ。また、保持具固定手段に設けられる複数の保持具取付け区画に包丁保持具が配置されるようになっていて、その保持具取付け区画の数を変更することができるようになっているために、流し台に設けられる開閉型のパネルのサイズや収納したい包丁の数に応じて、収納することのできる包丁の数を適宜増減することが可能にある。
【0014】
本発明では、上記保持具支持体が、上記パネルに間隔を隔てて横並びに取り付けられる複数個の支持台を有して、相隣接して上記パネルに取り付けられた2個の上記支持台の相互間空間によって上記保持具取付け区画が形成されるように構成されていると共に、支持台の数を増減することにより上記保持具取付け区画の数を変更することができるように構成されていることが望ましい。併せて、上記保持具固定手段が、複数個の上記支持台の並び方向両端に位置している一対の当該支持台の相互間に亘って配備される支持ロッドと、上記包丁保持具に設けられて上記支持ロッドに係脱可能なフック部と、を備えていると共に、上記包丁保持具を上記保持具取付け区画に挿入して配置する動作を通じて上記フック部が上記ロッドに係止され、かつ、上記包丁保持具を上記保持具取付け区画から抜き出す動作を通じて上記フック部が上記ロッドから離脱するように構成されていることが望ましい。
【0015】
この構成であれば、使用する支持台の数を増減したり使用する支持ロッドの長さを変更したりすることにより、上記保持具取付け区画の幅を一定に保ったままその保持具取付け区画の数を変更することができる。また、複数の上記保持具取付け区画の幅を個別に変更したりすることができる。併せて、包丁保持具を保持具取付け区画に挿入したり保持具取付け区画から抜き出したりする動作を行うだけで、包丁保持具のフック部がロッドに着脱されるために、包丁保持具の着脱作業を手間をかけずに容易に行うことができるようになる。そのため、パネルから包丁保持具を着脱する作業が面倒でなくなって、包丁保持具をパネルから取り外して清掃する作業を手軽に行うことができるようになる。
【0016】
本発明において、上記包丁保持具は、包丁が抜き差しされる幅狭の上記包丁差込み空間を形作っている偏平なU字形部材に、上記包丁抜差し口の形成箇所に位置して上記包丁差込み空間に差し込まれた包丁の柄を係止する段付部と、上記フック部と、が設けられてなり、その包丁保持具が上記保持具取付け区画に挿入されて上記フック部が上記ロッドに係止されたときに、当該包丁保持具が、上記パネルと上記ロッドとにより挟持されるように構成されていることが望ましい。この構成を採用すると、包丁保持具がパネルとロッドとにより挟持されてぐらつきを生じることなくパネルに取り付けられるので、包丁を包丁保持具の包丁差込み空間に抜き差しするときに包丁保持具がぐらついて包丁を抜き差ししにくくなるという事態が起こらない。
【0017】
本発明では、上記フック部が、上記U字形部材の一方側の外板部から延び出てその外板部との間に上記ロッドの収納空間と上記ロッドの直径よりも幅狭のロッド挿抜口とを形成する弾性変形可能な板片を有している、という構成を採用することが可能である。この構成を採用すると、ロッドに係止されたフック部が容易にそのロッドから離脱することがなくなるために、包丁を包丁保持具の包丁差込み空間に抜き差しするときの安全性が向上する。
【0018】
本発明では、上記U字形部材の包丁抜差し口にカバー体が装備されていて、このカバー体が、上記包丁抜差し口を塞いで上記包丁差込み空間内で引き上げられた包丁に当接してその包丁が当該包丁差込み空間から抜き出されることを阻止する閉位置と、上記包丁抜差し口を開いて上記包丁差込み空間に包丁を抜き差しすることを許す開位置との間でスライド可能であると共に、上記保持具取付け区画に配備された包丁保持具の包丁差込み空間の横向きの開口が上記支持台によって塞がれるように構成されていることが望ましい。この構成であると、カバー体を閉位置にスライドさせておくと、包丁を包丁保持具の包丁差込み空間から抜き出すことができなくなるのに対し、カバー体を開位置にスライドさせておくと、包丁を包丁保持具の包丁差込み空間から抜き出すことができる。そのため、カバー体を閉位置にスライドさせておくことにより、子供が不用意に包丁を抜き出したりする危険性がなくなるだけでなく、不正侵入者が包丁を抜き出して犯罪に及ぶという危険性も少なくなる。
【0019】
本発明では、上記包丁差込み空間の底面の両端部に外上がり勾配を付与することによってその底面に水溜まり凹所を具備させてあることが望ましい。この構成であれば、包丁差込み空間に差し込まれた包丁から落ちた水滴が包丁差込み空間の水溜まり凹所によって受け止められるために、その水滴が床面や流し台の中に落ちてそれらを汚すという事態が起こりにくくなる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係る包丁収納ユニットは、包丁収納部材としての包丁保持具の着脱性を改善したものであって、複数の包丁保持具を個別にパネルから容易に手間をかけずに取り外すことができるだけでなく、1つの包丁保持具は1丁の包丁だけを収納可能なサイズに形成されるものであるので、個々の包丁保持具の上記着脱性が冒頭で説明した特許文献1や同文献2によって提案されているものに比べて改善されている。そのため、手軽に包丁保持具をパネルから取り外して清掃することが可能になる。また、個々の包丁保持具を各別に配置可能な複数の保持具取付け区画の数を変更することができるために、パネルのサイズや収納したい包丁の数を勘案してパネルに装備させることができるという利点がある。
【0021】
そのほか、包丁保持具の包丁差込み空間に差し込まれている包丁が抜き出されることを防ぐカバー体を装備させることによって子供が不用意に包丁を抜き出して怪我をするといった危険性や不正侵入者が包丁を抜き出して犯罪を侵すといった危険性を回避することができるほか、包丁から落ちる水滴を受け止める水溜まり凹所を具備させて床面や流し台が水滴で汚れるといった状況を回避することもできるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明に係る包丁収納具を装備させることのできる流し台を示した概略斜視図である。同図には、各種調理用品や調味料などの収納に使うことのできる複数区画された収納室の開閉扉110やそれらの上側の複数区画された膜板120、さらにはシンク130や図示していないコンロなどが設置されている上側構造部140などを備えている。収納室の開閉扉110の型式には、引出し型や観音開き型などが適宜採用される。
【0023】
この実施形態の包丁収納ユニット(図1には不図示)は、シンク130の手前に設置されている膜板120を開閉型パネル121として構成した上で、その開閉型パネル121の裏側に装備されている。なお、パネル121は、その下端が流し台に開閉可能に連結されていて、そのパネル121に設けた把手122を手前に引張ることによって開くようになっている。
【0024】
図2はパネル121の裏側に装備されている包丁収納ユニットUの概略斜視図、図3は包丁収納ユニットUが装備されているパネル121の開閉動作を示した概略側面図である。
【0025】
図2に示されているように、この包丁収納ユニットUは、複数個(図例では3個)の包丁保持具10と、パネル121の裏面に取り付けられた保持具支持体30と、保持具支持体30に個々の包丁保持具10を固定している保持具固定手段50とを備えていて、包丁保持具10は図示のようにパネル121の長手方向(横方向)に一列に配備されている。そして、図3に示したように、パネル121を矢印Oのように手前に開いた状態で、包丁収納ユニットUの個々の包丁保持具10に対して上方からの動作で包丁を抜き差しすることができるようになっている。また、パネル121を矢印Cのように押し込んで閉じた状態で、包丁収納ユニットUが流し台(図1参照)に格納されるようになっている。
【0026】
図4は包丁収納ユニットUの概略分解斜視図、図5は包丁保持具10の概略斜視図、図6は包丁保持具10の概略正面図であり、同図には包丁保持具10の一部を破断して示した拡大図が含まれている。
【0027】
包丁保持具10は樹脂の一体成形体でなる。図5のように、図例の包丁保持具10では、偏平な樋形ないし溝形を形作っているU字形部材によって幅狭の包丁差込み空間11が形成されている。この包丁差込み空間11は、包丁保持具10の幅方向(上下方向)の上端部で上向きに開口していると共に、包丁保持具10の長手方向(横方向)の一端側や他端側でも横向きに開口していて、その包丁差込み空間11の上向きの開口によって包丁抜差し口12が形成されている。そして、包丁抜差し口12の形成箇所の横方向一端部には、谷形の段付部13が形成されていて、包丁差込み空間11に差し込んだ包丁の柄をその段付部13に係止させることができるようになっている(この点は図11を参照してさらに後述する)。また、包丁抜差し口12の形成箇所にはフック部15が設けられている。このフック部15は、包丁保持具10を形成している上記U字形部材の一方側の外板部14の上端部で上記包丁抜差し口12の形成箇所に位置している。さらに詳しくは、フック部15は、外板部14から下向きに延び出た鉤形の板片16を有していて、その板片16に樹脂に特有の弾性が付与されていると共に、板片16の下端と外板部14との隙間間隔S1が板片16の上端根元と外板部14との隙間間隔S2よりもやゝ狭くなっている。
【0028】
さらに、包丁差込み空間11の一端側及び他端側の横向きの開口の形成箇所には、その包丁差込み空間11の形状に沿って延びるリブによって差込み片17,18がそれぞれ形成されている。また、この実施形態に係る包丁保持具10では、上記U字形部材の内板部19の上端部を始点として、弾性を備えた押圧板部21が下向きに連設されている。
【0029】
そのほか、図例の包丁保持具10では、図6に拡大図で示したように、包丁差込み空間11の底面の両端部に外上がり勾配の付与された傾斜面11a,11aを具備させることにより、その底面に水溜まり凹所22を具備させてある。
【0030】
図7はパネル121の裏面に取り付けられた保持具支持体30の全体正面図である。同図又は図4に示したように、保持具支持体30は、パネル121に一定の間隔を隔てて横並びに取り付けられる複数個(図例では4個)の支持台31,32を有している。図4によって判るように、複数個の支持台31,32のうち、それらの並び方向の両端に位置している2個の支持台31,31は、パネル12に所要数の取付けビス123によってビス止めされていて、その内向きの端面に、縦長の差込み溝部33と、後述する支持ロッド51の差込み孔34とを有している。これに対し、複数個の支持台31,32のうち、それらの並び方向の中間に位置している2個の支持台32,32は、その両側の端面のそれぞれに縦長の差込み溝部35を有していることに加えて、後述する支持ロッド51の挿通孔36を有している。
【0031】
図例の保持具固定手段50は、図4及び図7に示したまっすぐな支持ロッド51と、図4に示した包丁保持具10に備わっているフック部15とにより構成されている。図4又は図7によって判るように、支持ロッド51は、その中間部の2箇所が上記した複数個の支持台31,32のうちの並び方向の中間に位置している2個の支持台32の挿通孔36に挿通されていると共に、その両端部が、上記した複数個の支持台31,32のうちの並び方向の両端に位置している2個の支持台31の差込み孔34に差し込まれていて、パネル121に対して間隔を隔てた位置で平行かつ水平に配備されている。
【0032】
ところで、上記した保持具支持体30において、複数個の支持台31,32のうち相隣接している任意の2個の支持台31,32(又は32,32)の相互間空間は保持具取付け区画B1,B2,B3(図7参照)として形成されていて、それらの保持具取付け区画B1,B2,B3のそれぞれに個別に上記した包丁保持具10を配置することができるようになっている(図4参照)。また、個々の包丁保持具10は、包丁を1丁だけ保持することのできる長さを有している(図11参照)。さらに、支持台31,32は、複数の保持具取付け区画B1,B2,B3に個別に配置された包丁保持具10を横方向でぐらつかないように位置決めする機能を有していると共に、包丁保持具10の包丁差込み空間11の横向きの開口を塞ぐ機能をも有している。
【0033】
図8は包丁保持具10を保持具固定手段50を介してパネル121に着脱する動作を示した側面図、図9は包丁保持具10を保持具固定手段50や保持具支持体30を介してパネル121に着脱する動作を示した正面図である。
【0034】
図8又は図9によって判るように、包丁保持具10をパネル121に装着するときには、包丁保持具10の差込み片17,18をそれらに対応している支持台31,32の差込み溝部33,35に差し込みながら矢印Dのように包丁保持具10をパネル121と支持ロッド51との間に差し込んだ後、フック部15を支持ロッド51に押し込んで係止させる。このような差込み動作を行うと、包丁保持具10が所定の保持具取付け区画(図9ではB3)に挿入されると共に、支持ロッド51によりフック部15が支えられて包丁保持具10がパネル121に装着される。この場合において、差込み片17,18と差込み溝部33,35との嵌合構造によって包丁保持具10がパネル121に対する接離方向で位置決めされ、支持台31,32が包丁保持具10を横方向で位置決めすることに役立つので、包丁保持具10がパネル121にぐらつきなく装着される。
【0035】
この実施形態において、保持具固定手段50を形成している支持ロッド51とフック部15との関係では、フック部15を形成している板片16に樹脂に特有の弾性が付与され、板片16の下端と外板部14との隙間間隔S1が板片16の上端根元と外板部14との隙間間隔S2よりもやゝ狭くなっている(図5参照)。このため、板片16の上端根元と外板部14との隙間間隔S2を支持ロッド51の太さと同程度に定めておくと、フック部15を弾性変形させながら支持ロッド51に押し込んだ状態では、板片16の下端と外板部14との隙間間隔S1が支持ロッド51の太さよりも短くなるので、包丁保持具10がパネル121と支持ロッド51との間から上方に抜け出すことが板片16によって阻止される。そのため、包丁保持具10が不慮にパネル121から脱落するという事態が起こらない。
【0036】
次に、図8又は図9によって判るように、包丁保持具10をパネル121から取り外すときには、包丁保持具10を手で掴んで矢印Pのように引き上げてフック部15を支持ロッド51から引き抜いた後、同図矢印Pのように包丁保持具10をパネル121と支持ロッド51との間から上方に引き抜く。このような引抜き動作を行って包丁保持具10をパネル121から取り外すと、その包丁保持具10をパネル121から取り外した状態で清掃することが可能になる。
【0037】
したがって、実施形態の包丁収納ユニットUでは、複数個の包丁保持具10のうちの任意の包丁保持具10を個別にパネル121から取り外して水洗いしたり、洗剤で洗浄したり、布巾で拭いたりすることが可能である。また、包丁保持具10をパネル121に着脱する動作は、上記したように、包丁保持具10を保持具取付け区画B1,B2,B3に対して押し込んだり上方に抜き出したりするだけで行われるので、パネル121に対して包丁保持具10を手軽にかつ容易に着脱することが可能になる。このことは、包丁保持具10を必要に応じて清掃して清潔に保つ上で有益である。その上、1つの包丁保持具10は、1丁の包丁を保持し得るだけの長さを有しているに過ぎないためにコンパクトであって、そのことも、パネル121に対して包丁保持具10を着脱する動作を手軽にかつ容易に行うことに役立つ。
【0038】
この実施形態では、パネル121に装着されている包丁保持具10がパネル121と支持ロッド51とにより挟持されてぐらつきを生じることなくパネル121に取り付けられている。このため、包丁保持具10がパネル121と支持ロッド51とにより確実に挟持され、包丁を包丁保持具10の包丁差込み空間11に抜き差しするときに包丁保持具10がぐらついて包丁を抜き差ししにくくなるという事態が起こらず、包丁を安全に抜差しすることができるようになるという利点がある。加えて、この実施形態では、包丁保持具10に押圧板部21を具備させ、包丁保持具10をパネル121に装着したときに、その押圧板部21がパネル121の裏面に弾接するように構成している。このため、包丁保持具10がぐらつきを生じることなくパネル121に取り付けられる、という作用がいっそう顕著に発揮されて、包丁を安全に抜き差しすることができるようになるという上記利点が助長される。
【0039】
また、包丁保持具10の包丁差込み空間11に差し込んだ包丁から落ちた水滴は、包丁保持具10の水溜まり凹所22に受け止められる。そのため、包丁から落ちた水滴が床面や流し台の中に落ちることがなくなり、床面や流し台が水滴で汚れるといった状況が回避される。
【0040】
図10は包丁保持具10に保持させた包丁が不慮に抜け落ちて安全性を損ねたりすることを防ぐために用いられるカバー体60の概略斜視図、図11はカバー体60の使用状態を示した概略正面図である。
【0041】
図10のように、カバー体60は、一端側が他端側よりも背低の門形に形成されていて、その下端縁に内向きのリブ61を有している。これに対し、図4〜図6又は図11に示したように、包丁保持具10の包丁抜差し口12の両側にスライド溝23が形成されている。このため、カバー体60を包丁保持具10の包丁抜差し口12を形成している山形突片部24にその後方から被せ、かつ、カバー体60のリブ61を上記スライド溝23にスライダ自在に嵌合させておくと、カバー体60が、包丁抜差し口12を塞ぐ閉位置と、包丁抜差し口12を開く開位置との間でスライド可能となる。
【0042】
したがって、図11のように包丁保持具10の包丁差込み空間11に差し込まれた包丁200の柄210を包丁保持具10の段付部13に係止させて包丁200を収納した場合に、カバー体60を図示のように閉位置にスライドさせて包丁抜差し口12を塞いでおくと、包丁200がたとえば子供によって不用意に引き上げられたとしても、包丁差込み空間11内で引き上げられた包丁200にカバー体60が当接して、その包丁200が不用意に抜け出て怪我をするという事態が回避される。カバー体60を閉位置にスライドさせておくと、包丁保持具10の包丁差込み空間11の横向きの開口は支持台31(又は32)によって塞がれているので、包丁200をその横向きの開口から矢印Aのように引き出そうとしても、包丁200がその支持台31(又は32)に当たるために、引き出すことはできない。また、カバー体60を開位置にスライドさせておくと、包丁抜差し口12が開くので、包丁200をその包丁抜差し口12から容易に抜き出すことが可能になる。
【0043】
上記のようにカバー体60を用いて包丁200を包丁保持具10から容易に抜き出すことができないようにしておくことは、子供が不用意に包丁200を引き出して怪我をするといった事態を防ぐことができるほか、不正侵入者によって包丁200が抜き出されて犯罪に使用されるという事態を防ぐことにも役立つ。
【0044】
以上説明した実施形態では、保持具支持体30を形成している4個の支持台31,32によって3分割された保持具取付け区画B1,B2,B3を形成している。そのため、3個の包丁保持具10を装着して個々の包丁保持具10に1丁ずつの包丁200を収納させることができる。この点に関して、たとえば、3個の支持台を用いると、2分割された保持具取付け区画を形成することが可能である。この事例を図12に正面図で示してある。図12の事例によると、3個の支持台31,32によって2分割された保持具取付け区画B1,B2に個別に包丁保持具10を装着することが可能になるので、2丁の包丁を収納可能な包丁収納ユニットを構成することが可能である。また、図示していないけれども、支持台の数を増減することによって保持具取付け区画の数を変更することができる。このため、収納可能な包丁の数をパネル121のサイズに応じて増減したり、収納したい包丁の数に応じて保持具取付け区画の数を変更したりすることも可能である。
【0045】
なお、図1〜図11において、同一又は相応する要素には同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る包丁収納具を装備させることのできる流し台を示した概略斜視図である。
【図2】パネルに装備されている包丁収納ユニットの概略斜視図である。
【図3】包丁収納ユニットを装備したパネルの開閉動作を示した概略側面図である。
【図4】包丁収納ユニットの概略分解斜視図である。
【図5】包丁保持具の概略斜視図である。
【図6】包丁保持具の概略正面図である。
【図7】パネルに取り付けられた保持具支持体の全体正面図である。
【図8】包丁保持体をパネルに着脱する動作を示した側面図である。
【図9】包丁保持体をパネルに着脱する動作を示した正面図である。
【図10】カバー体の概略斜視図である。
【図11】カバー体の使用状態を示した概略正面図である。
【図12】保持具取付け区画の数を変更した事例を示した正面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 包丁保持具
11 包丁差込み空間
12 包丁抜差し口
13 段付部
15 フック部
22 水溜まり凹所
30 保持具支持体
31,32 支持台
50 保持具固定手段
51 支持ロッド
60 カバー体
121 パネル
200 包丁
210 包丁の柄
B1,B2,B3 保持具取付け区画
U 包丁収納ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包丁差込み空間及びこの包丁差込み空間の上向きの開口によって形成された包丁抜差し口を有して1丁の包丁だけを収納可能な包丁保持具の複数個と、
流し台の開閉型パネルに取り付けられて個々の上記包丁保持具を各別に配置可能な複数の保持具取付け区画を有してその保持具取付け区画の数を変更可能な保持具支持体と、
上記保持具取付け区画に配備した上記包丁保持具を上記保持具支持体に固定するための保持具固定手段と、
を備えていることを特徴とする包丁収納ユニット。
【請求項2】
上記保持具支持体が、上記パネルに間隔を隔てて横並びに取り付けられる複数個の支持台を有して、相隣接して上記パネルに取り付けられた2個の上記支持台の相互間空間によって上記保持具取付け区画が形成されるように構成されていると共に、支持台の数を増減することにより上記保持具取付け区画の数を変更することができるように構成され、
上記保持具固定手段が、複数個の上記支持台の並び方向両端に位置している一対の当該支持台の相互間に亘って配備される支持ロッドと、上記包丁保持具に設けられて上記支持ロッドに係脱可能なフック部と、を備えていると共に、上記包丁保持具を上記保持具取付け区画に挿入して配置する動作を通じて上記フック部が上記ロッドに係止され、かつ、上記包丁保持具を上記保持具取付け区画から抜き出す動作を通じて上記フック部が上記ロッドから離脱するように構成されている請求項1に記載した包丁収納ユニット。
【請求項3】
上記包丁保持具は、包丁が抜き差しされる幅狭の上記包丁差込み空間を形作っている偏平なU字形部材に、上記包丁抜差し口の形成箇所に位置して上記包丁差込み空間に差し込まれた包丁の柄を係止する段付部と、上記フック部と、が設けられてなり、その包丁保持具が上記保持具取付け区画に挿入されて上記フック部が上記ロッドに係止されたときに、当該包丁保持具が、上記パネルと上記ロッドとにより挟持されるように構成されている請求項2に記載した包丁収納ユニット。
【請求項4】
上記フック部が、上記U字形部材の一方側の外板部から延び出てその外板部との間に上記ロッドの収納空間と上記ロッドの直径よりも幅狭のロッド挿抜口とを形成する弾性変形可能な板片を有している請求項2又は請求項3に記載した包丁収納ユニット。
【請求項5】
上記U字形部材の包丁抜差し口にカバー体が装備されていて、このカバー体が、上記包丁抜差し口を塞いで上記包丁差込み空間内で引き上げられた包丁に当接してその包丁が当該包丁差込み空間から抜き出されることを阻止する閉位置と、上記包丁抜差し口を開いて上記包丁差込み空間に包丁を抜き差しすることを許す開位置との間でスライド可能であると共に、上記保持具取付け区画に配備された包丁保持具の包丁差込み空間の横向きの開口が上記支持台によって塞がれるように構成されている請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載した包丁収納ユニット。
【請求項6】
上記包丁差込み空間の底面の両端部に外上がり勾配を付与することによってその底面に水溜まり凹所を具備させてある請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した包丁収納ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−160192(P2009−160192A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341527(P2007−341527)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(599040643)株式会社カワノ (7)
【Fターム(参考)】