説明

包装シート

【課題】本発明の課題は、PTPシート等の包装シートから内容物が取り出される前は、包装シートから内容物が押出しにくく、かつ、包装シートから内容物が取り出されるときは、包装シートから内容物が押出しやすくなるCRSF機能を有する包装シートを提供することである。
【解決手段】本発明に係る包装シート100は、底材200と、蓋材300とを備える。底材200は、凹部230を有する。蓋材300は、凹部230の開口を覆うように底材200にシールされる。また、底材200は、基材210と、押出し抵抗層220とを有する。押出し抵抗層220は、基材210の蓋材300に対向する面と反対側の面に配置される。また、押出し抵抗層220は、基材210から剥離可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
主に医薬品などの内容物を包装するプレス・スルー・パックシート(以下、「PTPシート」という)において、従来から、子供の誤飲の問題、お年寄り又は手先の不自由な患者の開封性の問題などがあった。誤飲の問題とは、子供がPTPシートを開封し、PTPシートの内容物を誤って飲み込んでしまう問題である。開封性の問題とは、お年寄り又は手先の不自由な患者が、力不足によってPTPシートを開封できない問題である。
【0003】
これらの問題を解決するために、CRSF(child resistance senior friendly)機能を有するPTPシートが求められている。そこで、PTPシートを収納する2次包装体である包装体ケースを用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。PTPシートが収納された包装体ケースは、子供がPTPシートを開封することを抑制する。
【0004】
また、蓋材に剥離層が設けられたPTPシートを用いることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。ユーザは、蓋材の剥離層を剥離した後、PTPシートから内容物を押出す。剥離層が剥離されていない状態では、剥離層によって蓋材は良好な剛性を有する。このため、蓋材は破れにくいので、子供はPTPシートを開封しにくい。また、剥離層が剥離されている状態では、剥離層が剥離されていない状態と比べて、蓋材の剛性は低くなる。このため、蓋材は破れやすくなるので、お年寄り又は手先の不自由な患者はPTPシートを開封しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−321075号公報
【特許文献2】特開2005−82179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の包装体ケースを用いても、PTPシートの剛性に変化がないので、開封性の問題は解決しない。さらに、包装体ケースを用いることで、製造コストが高くなるという問題が発生する。
【0007】
また、上記の剥離層を有するPTPシートでは、底材の剛性が変化しない。このため、お年寄り又は手先の不自由な患者は、剛性の高い底材を押して、PTPシートから内容物を押出すことになる。したがって、PTPシートの開封性の問題は、解決するには至っていない。
【0008】
本発明の目的は、PTPシート等の包装シートから医薬品などの内容物が取り出される前は、包装シートから内容物が押出しにくく、かつ、包装シートから内容物が取り出されるときは、包装シートから内容物が押出しやすくなるCRSF機能を有する包装シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
本発明に係る包装シートは、底材と、蓋材とを備える。底材は、凹部を有する。蓋材は、凹部の開口を覆うように底材にシールされる。また、底材は、基材と、押出し抵抗層とを有する。押出し抵抗層は、基材の蓋材に対向する面と反対側の面に配置される。また、押出し抵抗層は、基材から剥離可能である。
【0010】
包装シートから内容物が取り出される前は、押出し抵抗層は基材から剥離されていない状態である。このため、押出し抵抗層によって底材は良好な剛性を有する。よって、ユーザは包装シートから内容物を押出しにくい。したがって、この包装シートは、子供が誤って内容物を取り出しにくくなり、子供の誤飲を抑制する。さらに、底材が良好な剛性を有することで、包装シートは破損しにくい。
【0011】
また、包装シートから内容物が取り出されるときは、押出し抵抗層は基材から剥離された状態となる。この状態では、押出し抵抗層が剥離されていない状態と比べて、底材の剛性は低くなる。このため、ユーザは包装シートから内容物を押出しやすくなる。よって、この包装シートでは、お年寄り又は手先の不自由な患者は、内容物を取り出しやすくなる。したがって、この包装シートはCRSF機能を有する。
【0012】
また、剥離可能な押出し抵抗層によって、押出し抵抗層を剥離後の底材の剛性を任意に調整することができる。このため、この包装シートは、底材の凹部の形状を任意の形状に形成することができる。よって、包装シートは、内容物の種類に応じて凹部の形状の種類を変えることで、内容物の識別性を向上させることができる。
【0013】
(2)
上述(1)の包装シートでは、押出し抵抗層を剥離する前の底材は、オルゼン曲げ剛性値が30000N/cm以上200000N/cm以下であることが好ましい。
【0014】
押出し抵抗層を剥離する前の底材の剛性は上記範囲内の値である。このため、ユーザは包装シートから内容物を押出しにくい。よって、この包装シートは、子供が誤って内容物を取り出しにくくなり、子供の誤飲を抑制する。さらに、底材が良好な剛性を有することで、包装シートは破損しにくい。
【0015】
(3)
上述(1)または(2)の包装シートでは、押出し抵抗層を剥離する前の底材の平均厚みは、250μm以上1200μm以下であることが好ましい。
【0016】
押出し抵抗層を剥離する前の底材の平均厚みは上記範囲内の値である。このため、ユーザは包装シートから内容物を押出しにくい。よって、この包装シートは、子供が誤って内容物を取り出しにくくなり、子供の誤飲を抑制する。さらに、底材が良好な剛性を有することで、包装シートは破損しにくい。
【0017】
(4)
上述(1)〜(3)のいずれかの包装シートでは、押出し抵抗層を剥離した後の底材の平均厚みは、10μm以上250μm未満であることが好ましい。
【0018】
押出し抵抗層を剥離した後の底材の平均厚みは上記範囲内の値である。このため、ユーザは包装シートから内容物を押出しやすい。よって、この包装シートは、お年寄り又は手先の不自由な患者が内容物を取り出しやすい。さらに、この包装シートは、凹部の形状に影響されて内容物が取り出しにくくならない。このため、凹部は任意の形状に形成することができる。
【0019】
(5)
上述(1)〜(4)のいずれかの包装シートでは、押出し抵抗層は、特定気体および光の少なくとも一方に対するバリア性を有することが好ましい。
【0020】
バリア性を有する押出し抵抗層は、包装シートの外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限または吸収する。このため、この包装シートは、内容物を長期間保管することができる。なお、特定気体とは、包装シートの内容物に悪影響を及ぼす気体、具体的に水蒸気および酸素などである。光は、具体的に紫外線などである。
【0021】
(6)
上述(1)〜(5)のいずれかの包装シートでは、底材は、特定気体および光の少なくとも一方に対するバリア層をさらに有することが好ましい。
【0022】
バリア層は、包装シートの外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限または吸収する。このため、この包装シートは、内容物を長期間保管することができる。なお、特定気体とは、包装シートの内容物に悪影響を及ぼす気体、具体的に水蒸気および酸素などである。光は、具体的に紫外線などである。
【0023】
(7)
上述(1)〜(6)のいずれかの包装シートでは、押出し抵抗層は、多層部を含むことが好ましい。多層部は、複数の機能層を有する。
【0024】
多層部は、複数の機能層、例えば、水蒸気バリアのための機能層、酸素バリアのための機能層、紫外線カットのための機能層などを有する。このため、この包装シートは、CRSF機能だけでなく、目的に応じた様々な機能を有する。また、多層部を含む押出し抵抗層は、従来の複数の機能層が設けられたシートに比べて厚さを薄くすることができる。よって、押出し抵抗層は、基材から剥離しやすい。
【0025】
(8)
上述(7)のいずれかの包装シートでは、複数の機能層は、複数の剥離層を含むことが好ましい。複数の剥離層は、基材に遠い側から順に剥離強度が弱くなるように形成される。
【0026】
複数の剥離層は、基材に遠い側から順に、すなわち剥離強度が弱い順に、1層ずつ剥離される。よって、内容物を包装シートから取り出すためには、複数回の剥離が必要となる。したがって、この包装シートは、子供が誤って包装シートから内容物を取り出しにくくなり、子供の誤飲をより抑制する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る包装シートは、PTPシート等の包装シートから医薬品などの内容物が取り出される前は、包装シートから内容物が押出しにくく、かつ、包装シートから内容物が取り出されるときは、包装シートから内容物が押出しやすくなるCRSF機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装シートの平面図である。
【図2】図1に示した包装シートのA−A線断面図である。
【図3】図1に示した包装シートのB−B線断面図である。
【図4】基材から押出し抵抗層を剥離している状態を示した包装シートの断面図である。
【図5】底材の厚みを測定する際の測定点を示した包装シートの斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態の変形例(A)に係る包装シートの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の変形例(B)に係る包装シートの断面図である。
【図8】図7に示した包装シートのC部分の拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態の変形例(C)に係る包装シートの断面図である。
【図10】図9に示した包装シートのD部分の拡大図である。
【図11】本発明の一実施形態の変形例(D)に係る包装シートの断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の変形例(E)に係る包装シートの断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の変形例(F)に係る包装シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜3に示されるように、本発明の一実施形態に係る包装シートであるプレス・スルー・パックシート100(以下「PTPシート」という)は、主に、底材200および蓋材300から構成され、医薬品などの内容物Tを収容する。以下、底材200および蓋材300について、それぞれ詳しく説明する。
【0030】
<底材>
底材200は、主に、基材210および押出し抵抗層220から構成される。そして、この底材200には、凹部230と第1スリット部240と第2スリット部250とめくり部260とが形成されている(図2、3参照)。
【0031】
基材210は、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの透明樹脂から形成される。なお、この基材210の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm以上250μm未満である。
【0032】
押出し抵抗層220は、基材210の蓋材300に対向する面と反対側の面に、密着して設置される。この押出し抵抗層220は、易剥離性を有し、基材210から容易に剥離可能である。さらに、押出し抵抗層220は、特定気体および光の少なくとも一方に対するバリア性を有する。特定気体とは、PTPシート100の内容物Tに悪影響を及ぼす気体、例えば、水蒸気および酸素などである。特定気体に対するバリア性により、押出し抵抗層220は、特定気体を吸収または遮蔽する。光は、PTPシート100の内容物Tに悪影響を及ぼす光、具体的には紫外線などである。光に対するバリア性により、押出し抵抗層220は、紫外線などの光を吸収または遮蔽する。
【0033】
押出し抵抗層220は、良好な剛性を有する。このため、押出し抵抗層220は、内容物TをPTPシート100から押出しにくくする。押出し抵抗層220の材料として、例えば、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、環状ポリオレフィン、高密度ポリエチレン等が用いられる。
【0034】
凹部230は、内容物Tを収容する箇所であり、基材210および押出し抵抗層220に形成される凹み部分である。めくり部260は、押出し抵抗層220を基材210から剥離する際にユーザが掴む箇所である。このめくり部260は、押出し抵抗層220の端部であり、基材210と接していない。なお、押出し抵抗層220の端部であるめくり部260は、ヒートシールされていない状態で基材210と接するものであってもよい。
【0035】
第1スリット部240は、PTPシート100の横方向Wに沿って、凹部230同士の各間に、一定の間隔で形成された切り込みである(図1参照)。この第1スリット部240は、押出し抵抗層220を貫通し、基材210の一部が切り込まれて形成される(図2参照)。第1スリット部240近傍に外力が加えられたとき、基材210の一部が切り込まれていることにより、PTPシート100は第1スリット部240で割れる。よって、ユーザは、PTPシート100の一部を切り離すことができる。また、押出し抵抗層220を基材210から剥離させるとき、ユーザは、第1スリット部240に沿って押出し抵抗層220を剥離させることができる。
【0036】
第2スリット部250は、PTPシート100の縦方向Hに沿って、凹部230同士の間に形成された切り込みである(図1参照)。この第2スリット部250は、押出し抵抗層220を貫通させて形成される(図3参照)。押出し抵抗層220を基材210から剥離させるとき、ユーザは、第2スリット部250に沿って押出し抵抗層220を剥離させることができる。したがって、PTPシート100は、第1スリット部240および第2スリット部250により、任意の凹部230に対応する押出し抵抗層220のみを剥離させることができる。なお、第2スリット部250は、基材210の一部に切り込みが形成されていない。このため、第2スリット部250近傍に外力が加えられても、PTPシート100は第2スリット部250で割れにくい。
【0037】
<蓋材>
蓋材300は、凹部230の開口を覆うように底材200にヒートシールされる。蓋材300の材料として、例えば、金属薄膜、ならびにポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂さらにはこれらに蒸着膜を積層したもの等が用いられる。金属薄膜として、例えば、硬質アルミニウム等が用いられる。蓋材300の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば10μm以上50μm以下である。
【0038】
<PTPシートの製造方法>
本実施の形態に係るPTPシート100は、公知のPTPシート製造方法を利用して製造することができる。具体的には、押出法やカレンダー法などで基材210を形成した後、その基材210上に、押出ラミネート法で押出し抵抗層220の原料を流し出し、押出し抵抗層220を形成する。なお、共押出法やインフレーション法で基材210および押出し抵抗層220を形成することもできる。このようにして得られた積層シートを加熱プレスする。加熱プレスにより積層シートに凹部230を形成し、底材200を得る。
【0039】
次に、底材200の凹部230に内容物Tを収容した後、蓋材300を底材200に熱融着させ、内容物Tを凹部230内に密閉する。最後に、スリッタ装置で第1スリット部240および第2スリット部250を形成し、PTPシート100を得る。
【0040】
<PTPシートの使用方法>
図3に示されるように、工場において医薬品などの内容物Tが収容されたPTPシート100は、押出し抵抗層220が基材210から剥離していない状態で、工場から搬送され、病院、薬局、または患者の家などで保管される。内容物TをPTPシート100から取り出すとき、患者、医師または看護師などのユーザは、押出し抵抗層220を基材210から剥離させる。
【0041】
図4に示されるように、ユーザは、押出し抵抗層220を剥離する際、めくり部260を指Fでつまみ、押出し抵抗層220を白抜き矢印方向に引っ張って、押出し抵抗層220を基材210から剥離させる。ユーザは、押出し抵抗層220を剥離させた後、凹部230を押して蓋材300を破りつつ内容物TをPTPシート100から押出す。これにより、ユーザは、内容物TをPTPシート100から取り出すことができる。
【0042】
<底材の平均厚み>
押出し抵抗層220を剥離する前の底材200の平均厚みは、250μm以上1200μm以下であることが好ましく、300μm以上800μm以下であることがより好ましく、350μm以上500μm以下であることがさらに好ましい。押出し抵抗層220剥離前の底材200の平均厚みが250μm以上であるとき、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しにくい。また、押出し抵抗層220剥離前の底材200の平均厚みが300μm以上、特に350μm以上であるとき、ユーザはPTPシート100から内容物Tをより押出しにくい。このため、PTPシート100は、子供が誤って内容物Tを取り出しにくくなり、子供の誤飲を抑制する。押出し抵抗層220剥離前の底材200の平均厚みが1200μm以下であるとき、ユーザは基材210から押出し抵抗層220を剥離させやすい。また、押出し抵抗層220剥離前の底材200の平均厚みが800μm以下、特に500μm以下であるとき、ユーザは基材210から押出し抵抗層220をより剥離させやすい。
【0043】
押出し抵抗層220を剥離した後の底材200の平均厚みは、10μm以上250μm未満であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、30μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。押出し抵抗層220剥離後の底材200の平均厚みが10μm以上であるとき、押出し抵抗層220の剥離の際に基材210が破れにくい。また、押出し抵抗層220剥離後の底材200の平均厚みが20μm以上、特に30μm以上であるとき、押出し抵抗層220の剥離の際に基材210がより破れにくい。押出し抵抗層220剥離後の底材200の平均厚みが250μm未満であるとき、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しやすくなる。また、押出し抵抗層220剥離後の底材200の平均厚みが200μm以下、特に150μm以下であるとき、ユーザはPTPシート100から内容物Tをより押出しやすくなる。よって、PTPシート100では、お年寄り又は手先の不自由な患者は、内容物Tを取り出しやすくなる。
【0044】
底材200の平均厚みの測定方法は、凹部230の厚みをダイヤルゲージで複数箇所測定し、測定した値の平均値を算出する。
【0045】
図5に示されるように、底材200の厚みは、例えば、凹部230の天面の測定点230a、230b、230c、230d、230eと、凹部230のコーナーの測定点230f、230g、230h、230iと、凹部230の側面の測定点230j、230k、230l、230mとでそれぞれ測定される。このため、底材200の厚みの測定点は合計13箇所となる。
【0046】
<PTPシートの剛性>
底材200の剛性は、JIS K7106に準拠して、オルゼン曲げ剛性値として測定される。押出し抵抗層220を剥離する前の底材200のオルゼン曲げ剛性値は、30000N/cm以上200000N/cm以下であることが好ましく、40000N/cm以上180000N/cm以下であることがより好ましく、50000N/cm以上150000N/cm以下であることがさらに好ましい。底材200のオルゼン曲げ剛性値が30000N/cm以上であるとき、PTPシート100のカールが抑制される。また、底材200のオルゼン曲げ剛性値が40000N/cm以上、特に50000N/cm以上であるとき、PTPシート100のカールがより抑制される。底材200のオルゼン曲げ剛性値が200000N/cm以下であるとき、ユーザは押出し抵抗層220剥離後のPTPシート100から内容物Tを押出しやすくなる。また、底材200のオルゼン曲げ剛性値が180000N/cm以下、特に150000N/cm以下であるとき、ユーザは押出し抵抗層220剥離後のPTPシート100から内容物Tをより押出しやすくなる。
【0047】
<本実施形態における効果>
PTPシート100から内容物Tが取り出される前は、押出し抵抗層220は基材210から剥離されていない状態である。このため、押出し抵抗層220によって底材200は良好な剛性を有する。よって、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しにくい。したがって、PTPシート100は、子供が誤って内容物Tを取り出すことを抑制する。さらに、底材200が良好な剛性を有することで、PTPシート100は破損しにくい。
【0048】
また、PTPシート100から内容物Tが取り出されるときは、押出し抵抗層220は基材210から剥離された状態となる。この状態では、押出し抵抗層220が剥離されていない状態と比べて、底材200の剛性は低くなる。このため、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しやすくなる。よって、PTPシート100では、お年寄り又は手先の不自由な患者は、内容物Tを取り出しやすくなる。したがって、PTPシート100はCRSF機能を有する。
【0049】
また、剥離可能な押出し抵抗層220によって、押出し抵抗層220を剥離後の底材200の剛性を任意に調整することができる。このため、PTPシート100は、底材200の凹部230の形状を任意の形状に形成することができる。よって、PTPシート100は、PTPシート100の内容物Tの種類に応じて凹部230の形状の種類を変えることで、内容物Tの識別性を向上させることができる。
【0050】
押出し抵抗層220を剥離する前の底材200の剛性が上記範囲内の値である。このため、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しにくい。よって、PTPシート100は、子供が誤って内容物Tを取り出しにくくなり、子供の誤飲を抑制する。さらに、底材200が良好な剛性を有することで、PTPシート100は破損しにくい。
【0051】
押出し抵抗層220を剥離する前の底材200の平均厚みが上記範囲内の値である。このため、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しにくい。よって、PTPシート100は、子供が誤って内容物Tを取り出しにくくなり、子供の誤飲を抑制する。さらに、底材200が良好な剛性を有することで、PTPシート100は破損しにくい。
【0052】
押出し抵抗層220を剥離した後の底材200の剛性が上記範囲内の値である。このため、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しやすい。よって、PTPシート100は、お年寄り又は手先の不自由な患者が内容物Tを取り出しやすい。さらに、PTPシート100は、凹部230の形状に影響されて内容物Tが取り出しにくくならない。このため、凹部230は、任意の形状に形成することができる。
【0053】
押出し抵抗層220を剥離した後の底材200の平均厚みが上記範囲内の値である。このため、ユーザはPTPシート100から内容物Tを押出しやすい。よって、PTPシート100は、お年寄り又は手先の不自由な患者が内容物Tを取り出しやすい。さらに、PTPシート100は、凹部230の形状に影響されて内容物Tが取り出しにくくならない。このため、凹部230は、任意の形状に形成することができる。
【0054】
バリア性を有する押出し抵抗層220は、PTPシート100の外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限または吸収する。このため、PTPシート100は、内容物Tを長期間保管することができる。
【0055】
<変形例>
(A)
図6に示されるように、PTPシート100aの底材200aは、基材210、押出し抵抗層220およびバリア層221から構成されてもよい。バリア層221は、押出し抵抗層220の基材210に対向する面と反対側の面に配置され、押出し抵抗層220が剥離するときに一緒に剥離する。
【0056】
バリア層221は、PTPシート100aの外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限または吸収する。このため、PTPシート100aは、内容物Tを長期間保管することができる。さらに、バリア層221は、PTPシート100aの底材200aの剛性を向上させる。特定気体である水蒸気をバリアするバリア層221の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂が用いられる。特定気体である酸素をバリアするバリア層221の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン−ポリビニルアルコール共重合体)等が用いられる。紫外線をバリアするバリア層221の材料として、例えば、紫外線吸収剤や顔料を含有する樹脂薄膜などが用いられる。水蒸気、酸素、および光をバリアするバリア層221の材料として、例えば、透明樹脂フィルムに、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物等の無機酸化物からなる蒸着薄膜層が形成されたものが用いられる。なお、必要に応じて、透明樹脂フィルム上に透明プライマー層が形成されてもよいし、または蒸着薄膜層上にガスバリア被膜層が形成されてもよい。
【0057】
(B)
図7、8に示されるように、PTPシート100bの底材200bでは、押出し抵抗層220bは、主に、易剥離層222および多層部223から構成されてもよい。底材200bは、基材210、易剥離層222、多層部223の順で配置される。易剥離層222は、基材210から容易に剥離する。多層部223は、易剥離層222が剥離するときに一緒に剥離する。
【0058】
多層部223は、複数の機能層を有する。複数の機能層は、酸素を遮断または吸収するための酸素バリア層224、水蒸気を遮断または吸収するための水蒸気バリア層225、および紫外線を遮断または吸収するための紫外線カット層226から構成される(図8参照)。このため、PTPシート100bは、CRSF機能だけでなく、目的に応じた様々な機能を有する。また、多層部223を含む押出し抵抗層220bは、従来の複数の機能層が設けられたシートに比べて厚さを薄くすることができる。よって、押出し抵抗層220bは、基材210から剥離しやすい。なお、多層部223は、酸素バリア層224、水蒸気バリア層225、および紫外線カット層226以外の機能層をさらに有してもよい。また、多層部223は、2層以上の機能層を備えていればよい。
【0059】
多層部223の機能層は、基材210に近い側から、酸素バリア層224、水蒸気バリア層225、紫外線カット層226の順に配置される。なお、これら機能層の配置の順は、上記以外の順であってもよい。
【0060】
(C)
図9、10に示されるように、PTPシート100cの底材200cでは、押出し抵抗層220cが多層部223cから構成されてもよい。この多層部223cの複数の機能層は、第1剥離層271、第2剥離層272、第3剥離層273、および第4剥離層274から構成され、基材210に近い側から、第1剥離層271、第2剥離層272、第3剥離層273、第4剥離層274の順に配置される(図10参照)。
【0061】
この剥離層271〜274は、基材210に遠い側から順に剥離強度が弱くなるように形成される。このため、多層部223cは、剥離強度が弱い順に、すなわち第4剥離層274、第3剥離層273、第2剥離層272、第1剥離層271の順に1層ずつ剥離される。よって、内容物TをPTPシート100cから取り出すためには、複数回の剥離が必要となる。したがって、このPTPシート100cは、子供が誤ってPTPシート100cから内容物Tを取り出しにくくなり、子供の誤飲をより抑制する。なお、多層部223cは、酸素バリア層224、水蒸気バリア層225、および紫外線カット層226等の機能層をさらに有してもよい。また、多層部223cは、剥離層を2層または3層有してもよいし、剥離層を5層以上有してもよい。
【0062】
(D)
図11に示されるように、PTPシート100dでは、凹部231の形状が星の形状であってもよい。
【0063】
(E)
また、図12に示されるように、PTPシート100eでは、凹部232の形状が魚の形状であってもよい。
【0064】
(F)
また、図13に示されるように、PTPシート100fは、2種類の形状の凹部、具体的に、星の形状の凹部231、および魚の形状の凹部232を有していてもよい。なお、PTPシート100fは、3種類以上の形状の凹部を有してもよい。
【0065】
(G)
PTPシート100は、ユーザに対して内容物Tの消費期限や賞味期限を知らせる役目を担う経時色変化層をさらに備えていてもよい。この経時色変化層は、例えば、基材210と押出し抵抗層220との間に配置され、押出し抵抗層220が剥離するときに一緒に剥離する。経時色変化層の材料として、ゲル状の可変色色素組成物が用いられる。この経時色変化層は、可変色色素組成物中の可変色色素が大気中の酸素と反応するに従って、その色彩および色調の少なくとも一方が次第に変化することで、ユーザに対して内容物Tの消費期限または賞味期限を知らせることができる。
【0066】
(H)
押出し抵抗層220の材料として、バリア材に代えて汎用樹脂を用いてもよい。この汎用樹脂として、ポリプロピレンやポリエチレン等が用いられる。汎用樹脂を用いた押出し抵抗層220は、厚さを厚くすることで、押出し性を損なわずバリア性を有することができる。このため、汎用樹脂を用いた押出し抵抗層220は、一般的に剛性の高いバリア材を用いた場合に比べて、開封性とバリア性との両方を容易に満足する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る包装シートは剛性の調整が可能である。よって、この包装シートは、CRSF機能を有する医薬品包装用のプレス・スルー・パックシートとして、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
100、100a、100b、100c、100d、100e、100f PTPシート(包装シート)
200、200a、200b、200c 底材
210 基材
220、220b、220c 押出し抵抗層
221 バリア層
222 易剥離層
223、223c 多層部
224 酸素バリア層(機能層)
225 水蒸気バリア層(機能層)
226 紫外線カット層(機能層)
230、231、232 凹部
271 第1剥離層(剥離層)
272 第2剥離層(剥離層)
273 第3剥離層(剥離層)
274 第4剥離層(剥離層)
300 蓋材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する底材と、
前記凹部の開口を覆うように前記底材にシールされる蓋材とを備え、
前記底材は、基材と、前記基材の前記蓋材に対向する面と反対側の面に配置される押出し抵抗層とを有し、
前記押出し抵抗層は、前記基材から剥離可能である包装シート。
【請求項2】
前記押出し抵抗層を剥離する前の前記底材は、オルゼン曲げ剛性値が30000N/cm以上200000N/cm以下である請求項1に記載の包装シート。
【請求項3】
前記押出し抵抗層を剥離する前の前記底材の平均厚みは、250μm以上1200μm以下である請求項1または2に記載の包装シート。
【請求項4】
前記押出し抵抗層を剥離した後の前記底材の平均厚みは、10μm以上250μm未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装シート。
【請求項5】
前記押出し抵抗層は、特定気体および光の少なくとも一方に対するバリア性を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装シート。
【請求項6】
前記底材は、特定気体および光の少なくとも一方に対するバリア層をさらに有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装シート。
【請求項7】
前記押出し抵抗層は、複数の機能層を有する多層部を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装シート。
【請求項8】
前記複数の機能層は、複数の剥離層を含み、
前記複数の剥離層は、前記基材に遠い側から順に剥離強度が弱くなるように形成される請求項7に記載の包装シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−106771(P2012−106771A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257795(P2010−257795)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】