包装体
【課題】衛生用紙の取出しや取出口の再封着が容易であって、衛生用紙が取出口に引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することができる包装体を提供する。
【解決手段】衛生用紙2Aの折り畳み体が積層された衛生用紙束と、衛生用紙束を被包する包装フィルム4Aと、を備え、包装フィルム4Aのうち、衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、衛生用紙2Aの取出口8Aを形成する取出口形成用切込線6Aが形成され、取出口形成用切込線6Aは、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、起点P1及び終点P2が、包装体の縁部E1から離隔して配置されている包装体1A。
【解決手段】衛生用紙2Aの折り畳み体が積層された衛生用紙束と、衛生用紙束を被包する包装フィルム4Aと、を備え、包装フィルム4Aのうち、衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、衛生用紙2Aの取出口8Aを形成する取出口形成用切込線6Aが形成され、取出口形成用切込線6Aは、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、起点P1及び終点P2が、包装体の縁部E1から離隔して配置されている包装体1A。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ポケットティシュのような、衛生用紙束と、衛生用紙束を被包する包装フィルムとを備え、包装フィルムに衛生用紙の取出口を形成する取出口形成用切込線が形成された包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ティシュペーパー等の家庭用衛生用紙の包装体として、図2A及び図2Bに示すように、衛生用紙2Bの折り畳み体が積層された衛生用紙束と、その衛生用紙束を被包する包装フィルム4Bとを備え、その包装フィルム4Bに衛生用紙の取出口8Bを形成する取出口形成用切込線6Bが形成された包装体100Aが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
包装体100Aは、包装体全体が扁平形状に構成されており、取出口形成用切込線6Bは、包装フィルム4Bのうち包装体100Aの一つの面(図中、上側の面)の中央に相当する部分に、包装体100Aの長手方向に向かって形成されている。そして、この取出口形成用切込線6Bを破断すると、直線状の取出口8Bを形成することができ、図2Bに示すように、その取出口8Bから衛生用紙2Bを取出すことが可能なように構成されている。
【0004】
また、包装フィルムのうち包装体の一つの面に相当する部分に、包装体の長辺に対して一定の角度で傾斜するように、直線状の取出口形成用切込線が形成された包装体も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
更に、図3A及び図3Bに示すように、包装体の縁部E1に向かう、起点P1と終点P2の間を繋ぐ凸状の軌跡で取出口形成用切込線6Cが形成された包装体100Bも提案されている(例えば、特許文献3〜6参照)。この包装体100Bは、取出口形成用切込線6Cを破断した後も、固定用シール12Bによって、取出口8Cを再度封着することが可能なように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−313393号公報
【特許文献2】特開2005−185332号公報
【特許文献3】特開平2−296686号公報
【特許文献4】特開平6−115575号公報
【特許文献5】特開昭56−95864号公報
【特許文献6】特開平10−59441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の包装体は、図2Bに示す包装体100Aのように、衛生用紙2Bが狭いスリット状の取出口8Bから引き出されるため、包装フィルム4Bとの摩擦によって衛生用紙2Bが破断されてしまう場合があるという課題があった。
【0008】
また、特許文献1及び2に記載の包装体は、図2Bに示す包装体100Aのように、取出口8Bの開口面積が殆どなく、包装体100A内部の衛生用紙2Bの表面が露出し難いため、スリット状の取出口8Bに指を差し込んで衛生用紙2Bを引き出す必要がある。従って、衛生用紙2Bの取出しが困難であるという課題があった。特に、ポケットティシュ等の携帯用の衛生用紙の場合、そのサイズが小さいことに起因して、衛生用紙束を形成する際に、所謂ポップアップ方式の折り畳み構造を採用し難い。即ち、一枚の衛生用紙を引き出しても、その直下の衛生用紙が連続的に引き出される構造ではないため、上記の課題はより顕著なものとなる。
【0009】
これに対し、特許文献3〜6に記載の包装体は、図3A及び図3Bに示す包装体100Bのように、取出口8Cが大きく開口することに加え、衛生用紙2Cを包装体の縁部E1側に引き抜くことが可能である。従って、衛生用紙2Cの取出しは比較的容易になるという利点がある。
【0010】
しかし、衛生用紙2Cを取り出す際に、二枚以上の衛生用紙2Cが一緒に引き出されてしまう場合があった。このため、余分に引き出された衛生用紙2Cを包装体100B内部に押し込まなければ、取出口8Cの再封着ができない場合があるという課題があった。
【0011】
また、図3A及び図3Bに示す包装体100Bと同様の構成で、包装体上面の短手方向の縁部ではなく、長手方向の縁部を起点として取出口形成用切込線を形成することも考えられる(特許文献3第9図参照)。この場合、図3A及び図3Bに示す包装体100Bと比較して、取出口の開口面積は大きくとることができ、衛生用紙の取出しは容易になるものの、二枚以上の衛生用紙が一緒に引き出されてしまう可能性は、より大きくなってしまう。
【0012】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、衛生用紙の取出しや取出口の再封着が容易であって、衛生用紙が取出口に引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することができる包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、取出口形成用切込線を形成する際に、起点と終点の間を、円弧状等の凸状の軌跡で繋ぎ、かつ、起点及び終点を包装体の縁部から離れた位置に配置することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の包装体が提供される。
【0014】
[1] 衛生用紙の折り畳み体が積層された衛生用紙束と、前記衛生用紙束を被包する包装フィルムと、を備え、前記包装フィルムのうち、前記衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、前記衛生用紙の取出口を形成する取出口形成用切込線が形成され、前記取出口形成用切込線は、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、前記起点P1及び前記終点P2が、包装体の縁部から離隔して配置されている包装体。
【0015】
[2] 前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されている前記[1]に記載の包装体。
【0016】
[3] 前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2が、前記上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、前記軌跡が、前記上面領域A1のうち、前記長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されている前記[1]又は[2]に記載の包装体。
【0017】
[4] 前記折り畳み体は、その長手方向に沿って、幅方向中央部に、前記衛生用紙の縁部又は折り目が位置するように、前記衛生用紙が折り畳まれたものであり、前記取出口形成用切込線は、破断した際に、前記衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目が、前記取出口から露出するように形成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の包装体。
【0018】
[5] 前記取出口形成用切込線と、前記起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、前記上面領域A1の面積S1に対して15〜60%の比率を占めている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の包装体。
【0019】
[6] 前記上面領域A1の長手方向中心線L1と前記取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、前記フラップ領域A4の面積S2に対して20〜70%の比率を占めている前記[5]に記載の包装体。
【0020】
[7] 前記包装フィルムには、前記取出口形成用切込線で分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シールが付設されている前記[1]〜[6]のいずれかに記載の包装体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の包装体は、衛生用紙の取出しや取出口の再封着が容易であって、衛生用紙が取出し口に引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の包装体を実施するための最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える包装体を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[1]本発明の包装体の特徴部分の構成:
本発明の包装体は、図1A及び図1Bに示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aが、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、起点P1及び終点P2が、包装体の縁部E1から離隔して配置されているものである。
【0024】
このような構成では、取出口形成用切込線6を破断すると、取出口形成用切込線6Aと、その起点P1と終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲される領域A1の部分を全て開口させることができる(この部分を「フラップ」と称することにする。図中符号:10A)。
【0025】
従って、開口面積が大きい取出口8Aが形成されるとともに、包装体内部の衛生用紙2Aの表面の一部が面状に露出する。従って、取出しの際に、衛生用紙2Aにかかる摩擦力が小さく、衛生用紙2Aが取出口8Aに引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することができる。また、包装体1A内部の衛生用紙2Aを摘み易くなり、衛生用紙2Aの取出しが容易となる。
【0026】
更に、衛生用紙2Aの折り畳み体は、その四辺が包装フィルム4Aによって押さえられているため、二枚以上の衛生用紙2Aが一緒に引き出されてしまうことが少ない。従って、余分に引き出された衛生用紙2Aを包装体1A内部に押し込まなくても、取出口8Aを再封着することができ、取出口8Aの再封着が容易である。
【0027】
[1−1]取出口形成用切込線:
「取出口形成用切込線」とは、衛生用紙束を被包する包装フィルムに形成される、衛生用紙の取出口を形成するための切込線である。本発明の包装体は、取出口形成用切込線が、(a)起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されている点、及び(b)起点P1及び終点P2が、包装体の縁部から離隔して配置されている点、に特徴がある。
【0028】
「凸状の軌跡」とは、起点P1から始まって、起点P1と終点P2を最短距離で結ぶ直線L1上に存在しない点PXを経由し、終点P2に至る軌跡を意味する。この「軌跡」は、曲線状であってもよいし、折れ線状であってもよい。具体的には、図4Aに示す円弧状、図4Bに示す「コ」の字状、図4Cに示す「く」の字状、図4Dに示す端部側が広がった「コ」の字状等を挙げることができる。中でも、取出口の開口面積を大きくとることができ、再封時にフラップ部全体を引き寄せやすいため再封がし易く、再封した場合にフラップ部が角部から捲れて内部の衛生用紙が露出することが少ないという理由から、円弧状が好ましい。即ち、本発明の包装体は、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aが、起点P1と終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されていることが好ましい。
【0029】
また、本発明の包装体は、図5に示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2が、上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、軌跡が、上面領域A1のうち、長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されていることが好ましい。
【0030】
このような構成では、取出口8Aが長手方向中心線L1を含む、上面領域A1の中央部に形成されているので、取出口8Aの開口面積が大きく、衛生用紙2Aの取出しも容易である。
【0031】
更に、本発明の包装体は、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aの起点P1及び終点P2が、包装体1Aの縁部E1から離隔して配置されている。このような構成により、図6A及び図6Bに示すように、衛生用紙束20を構成する複数の折り畳み体22(即ち、衛生用紙2A)のうち、最上位の折り畳み体24を引き出す際に、その直下の折り畳み体26の四つの縁部が包装フィルム4Aによって押さえられることになる。従って、最上位の折り畳み体24を引き出す際に、その直下の折り畳み体26が一緒に引き出されてしまう事態を回避できる。
【0032】
一方、図3A及び図3Bに示す包装体100Bのように、取出口形成用切込線6Cの起点P1及び終点P2が、包装体1Aの縁部E2に配置されていると、最上位の折り畳み体(即ち、衛生用紙2C)を引き出す際に、その直下の折り畳み体の三つの縁部のみが包装フィルム4Cによって押さえられ、一つの縁部E2側は開放されることになる。従って、開放されている縁部E2側から、最上位の折り畳み体を引き出そうとすると、最上位の折り畳み体と、その直下の折り畳み体が重なった状態で一緒に引き出されてしまうおそれがある。
【0033】
更に、本発明の包装体は、図6A及び図6Bに示す包装体1Aのように、折り畳み体22は、その長手方向中央部に、衛生用紙2Aの縁部又は折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれたものであり、取出口形成用切込線6Aが、破断した際に、衛生用紙束20の最上位の折り畳み体24の縁部又は折り目28が、取出口8Aから露出するように形成されていることが好ましい。
【0034】
このような構成では、最上位の折り畳み体24の縁部又は折り目28を摘んで引き出すことができ、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2の間を凸状の軌跡で繋ぐように形成した構成と相俟って、一層、衛生用紙2Aの取出しが容易になるという利点がある。
【0035】
特に、図6A及び図6Bに示す包装体1Aの折り畳み体22のように、長手方向中央部に、衛生用紙2Aの折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれていると、衛生用紙2Aが少なくとも2枚重ねとなっている部分を指で摘むことになる。従って、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2の間を凸状の軌跡で繋ぐように形成した構成と相俟って、より一層、取出し時における衛生用紙2Aの破れを防止する効果が向上する。
【0036】
本発明の包装体は、取出口形成用切込線と、起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、上面領域A1の面積S1に対して15〜60%の比率を占めていることが好ましい。
【0037】
面積S1に対する面積S2の占める比率を15%以上とすることにより、十分な開口面積の開口部が形成され、衛生用紙の取出しが容易になるという効果を得ることができる。また、面積S1に対する面積S2の占める比率を60%以下とすることにより、開口部が大きくなりすぎないため、最上位の折り畳み体を引き出す際に、その直下の折り畳み体の四つの縁部が包装フィルムによって押さえられる、という本発明の効果が減殺されることを回避できる。
【0038】
また、本発明の包装体は、上面領域A1の長手方向中心線L1と取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、フラップ領域A4の面積S2に対して20〜70%の比率を占めていることが好ましい。
【0039】
面積S2に対する面積S3の占める比率を20〜70%とすることにより、包装体の上面領域A1の中央部が十分に開口する。従って、衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目が取出口の中央に位置し易くなり、衛生用紙の取出しが容易となる。また、面積S2に対する面積S3の占める比率が20%未満又は70%を超えると、包装体の上面領域A1の中央部が十分に開口しない。従って、衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目は取出口の中央から外れ易くなるため(或いは、取出口から露出しなくなるため)、衛生用紙が取り出し難くなる。
【0040】
本明細書に言う「取出口形成用切込線」は、複数の切れ目がその間の不連続部を介して全体として連続するように配置されたものを意味する。従って、複数の切れ目が破線状に配置されてミシン目となっているものの他、比較的長い切れ目の間を点状ないし短い直線状の不連続部分で連結させたような構成のものも含まれる。この場合、切れ目部分の長さを2〜5mm、不連続部分の長さを0.5〜1.5mmとすることが好ましい。
【0041】
[1−2]固定用シール:
本発明の包装体は、固定用シールが付設されていることが好ましい。「固定用シール」とは、取出口形成用切込線の破断によって形成されるフラップを包装体本体に固定するためのシールである。
【0042】
本発明の包装体は、取出口の開口面積を大きくとれるという利点がある一方で、一旦、取出口形成用切込線を破断してしまうと、内部の衛生用紙が露出し易くなり、汚れや破れが発生し易くなるおそれもある。しかし、固定用シールを付設することによって、衛生用紙の取出し時のみ、固定用シールを剥がして取出口を開口させることが可能となり、衛生用紙の表面に塵や埃が付着したり、汚れや破れが発生したりする不具合を効果的に防止することができる。取出口が意図せず開口することを防止できる。
【0043】
また、衛生用紙を取り出した後は、取出口を閉じておくことができるため、グリセリン、流動パラフィンといった液体を染み込ませたローションティシュ等を包装する場合でも、その薬剤の揮発を抑制することができ、ローションティシュを長期間にわたって使用することが可能となる。
【0044】
固定用シールの形態は特に制限されないが、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aのように、包装フィルム4Aには、取出口形成用切込線6Aで分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シール12Bが付設されていることが好ましい。
【0045】
このような構成によれば、比較的簡易な構造で、取出口8Aの意図せぬ開口を防止することができる。そして、ローションティシュを包装した場合でも、十分に薬剤の揮発を抑制することができる。なお、「フラップ外領域」とは、図5の例で説明すれば、包装体1Aの上面領域A1のうち、フラップ領域A4以外の領域を意味する。
【0046】
ポケットティシュ等は複数枚(2プライ1組で2〜20組程度)の衛生用紙が包装されることから、固定用シールは、取出口を繰り返し開閉することが可能な構造とすることが好ましい。例えば、シール剤として、再剥離性粘着剤を塗布しておき、これにより取出口を固定できるようにしたものが好ましい。
【0047】
再剥離性粘着剤は、一旦貼着した後に再度剥離させることが可能な粘着剤であり、貼着と剥離を繰り返し行う用途で用いられるものである。このような性質を有するものである限り、粘着剤の種類は特に限定されないが、本発明においてはアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
【0048】
[2]本発明の包装体の他の部分の構成:
本発明の包装体は、図1A及び図1Bに示すように、衛生用紙2Aの折り畳み体が積層された衛生用紙束20と、衛生用紙束20を被包する包装フィルム4Aと、を備え、包装フィルム4Aのうち、衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、衛生用紙2Aの取出口8Aを形成する取出口形成用切込線6Aが形成されたものである。
[2−1]包装フィルム:
包装フィルムは、一般に樹脂製のフィルム材からなる。包装用途に用いることから、可撓性に優れたフィルム材であることが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなるフィルム材を用いることができる。
【0049】
包装フィルムの厚みは、10〜40μmであることが好ましい。10μm以上とすることにより、包装材として必要とされる強度を維持することができる。また、包装フィルムを熱融着して包装体を形成する際に、融着部が割ける等の不具合を防止することができる。また、40μm以下とすることにより、前記熱融着の加工性が良好となり、生産性が向上する。
【0050】
[2−2]衛生用紙、衛生用紙束:
衛生用紙としては、家庭用衛生用紙、例えば、ティシュペーパー、ペーパーナプキン、ペーパータオル等を挙げることができる。衛生用紙は、JIS P8124で規定される1枚当たりの坪量が10〜30g/m2のものを用いることが好ましく、11〜20g/m2のものを用いることが更に好ましく、12.5g/m2のものを用いることが特に好ましい。
【0051】
衛生用紙はクレープ紙であってもよい。「クレープ紙」とは、ちりめん状の皺が形成された紙である。例えば、抄紙機のドライヤーシェルやプレスロール等の表面に湿紙を付着させて乾燥させ、乾燥された紙をドクターブレードで掻き取る際に、弛みを生じさせ、ちりめん状の皺を形成する。
【0052】
本発明においては、クレープ率が10〜30%のクレープ紙を衛生用紙として用いることが好ましい。クレープ率を10%以上とすることで、原紙(ひいてはプライ)に柔らかさを付与することができる。一方、30%以下とすることで、生産効率の向上という効果を得ることができる。
【0053】
なお、クレープ率は、抄紙機のドライヤーシェルやプレスロールの周速及び巻き取りロールの周速の値から、下記式(1)により算出することができる。
Rc={(Va−Vb)/Vb}×100:(1)
(但し、Rc:クレープ率(%)、Va:ドライヤーシェル周速(単位:m/分)、Vb:巻き取りロール周速(単位:m/分))
【0054】
家庭用衛生用紙等では、2枚の原紙を重ね合わせた2プライのものが多く用いられるが、3プライ、4プライ、或いはそれ以上の枚数の原紙を重ね合わせたプライであってもよい。この場合、プライにエンボス加工を施すと、衛生用紙の引き出しが容易となる。エンボス加工としては、例えば、マッチドスチール、ネステッド、ピロー等を挙げることができる。
【0055】
衛生用紙は揮発性が低い液体を含浸させたローションティシュであってもよい。液体の種類は特に限定されないが、例えば、保湿剤、消毒剤、その他の薬効成分等を含む薬液の他、香料や着色剤等を含む液体(着色液等)を挙げることができる。
【0056】
より具体的には、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類;グルコール酸系薬剤及びその誘導体;セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;流動パラフィン等の中の一種又は二種以上の成分を含む液体(溶液であってもよい。)が含浸されたものを用いることができる。
【0057】
また、前記成分に加えて、或いは単独で、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチン、システイン等のアミノ酸;アロエエキス、アマチャエキス、アシタバエキス、カリンエキス、キュウリエキス、スギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキス等の植物抽出エキス;オリーブ油、ホホバ油、ローズヒップ油、アーモンド油、ユーカリ油、アボカド油、ツバキ油、大豆油、サフラワー油、ゴマ油、月見草油等の植物油;ビタミン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、キトサン、尿素、ハチミツ、ローヤルゼリー、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、スクワラン、ワセリン等の中の一種又は二種以上の成分を含む液体(溶液であってもよい。)が含浸されたものであってもよい。
【0058】
液体の含浸比率は、ローションティシュ全体の質量のうち含浸された液体の量が、2〜30質量%であることが好ましく、4〜25質量%であることが更に好ましい。2質量%以上とすることで、しっとり感やぬめり感を確実に発現させることが可能となる。一方、30質量%以下とすることで、液体の量が多すぎて紙力が弱くなり、以後の工程で紙切れが起こるという不具合を効果的に防止することができる。
【0059】
衛生用紙は折り畳み体の状態で包装される。一般に、カートン入りティシュ等は、所謂ポップアップ方式の折り畳み構造が採用されている。「ポップアップ方式の折り畳み構造」とは、折り畳まれた衛生用紙の折り返し部分に他の折り畳まれた衛生用紙の一部を挟み込むようにして、複数枚の衛生用紙を連続的に積層する折り畳み構造である。このような折り畳み構造とすると、最上位の衛生用紙を取り出すと、これに挟み込まれていた直下の衛生用紙の一部が引き出され、連続的な取出しが容易となるものである。
【0060】
しかし、ポケットティシュ等の携帯用衛生用紙は、サイズ上の問題から、ポップアップ方式の折り畳み構造を採用することが困難である。従って、衛生用紙を一枚ずつ折り畳んで折り畳み体とし、その折り畳み体を積層して衛生用紙束を形成することが多い。
【0061】
図7は、衛生用紙の折り畳み工程を示す工程図である。衛生用紙の折り畳みは、例えば、(a)図に示すように、一枚(2プライ)の衛生用紙2Aを山折りF1、谷折りF2、山折りF3、谷折りF4の順で折り畳んで、(b)図に示す五つ折りの状態とし、最後に(c)図に示すように、更に長手方向に二つ折りF5して、折り畳む。
【0062】
図8は、衛生用紙の折り畳み工程を衛生用紙の断面で示した工程図である。(a)図は、図7(a)図に示す衛生用紙2のA−A’断面を示す模式図であり、(b)図及び(c)図は、図7(a)図の状態から、図7(b)図の状態に至るまでの衛生用紙2の断面を示す模式図であり、(d)図は、図7の(b)図に示す衛生用紙2のB−B’断面を示す模式図である。
【0063】
図7及び図8に示す折り畳み方によれば、長手方向に沿って、幅方向中央部に、衛生用紙の折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれた折り畳み体20を得ることができる。
【0064】
衛生用紙束は、上記のような折り畳み体が複数積層されたものである。衛生用紙の厚さ、折り畳み状態等により異なるが、通常のポケットティシュの場合であれば、2プライ1組で2〜20組程度、ローションティシュの場合であれば、2プライ1組で8〜15組程度を積層して衛生用紙束とする。但し、3プライ、4プライ、或いはそれ以上を1組としたものであってもよい。
【0065】
[2−3]包装体:
包装の形態は、衛生用紙の形状や枚数により適宜選択すればよい。包装する衛生用紙の枚数が少ない場合(2プライ1組で2〜14組程度)には、2辺シール包装(「ピロー包装」とも称される。)で包装することが好ましい。この場合、包装体は、縦40〜100mm、横50〜150mm、厚さ5〜30mmのサイズに構成することが一般的である。
【0066】
[3]製造方法:
本発明の包装体は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0067】
[3−1]ピロー包装:
図1A及び図1Bに示す包装体1Aの例で説明する。まず、図7に示すように、衛生用紙2Aを折り畳んで折り畳み体20とした後、複数積層して衛生用紙束を形成する。一方、予め所定形状の取出口形成用切込線6Aが形成された包装フィルム4Aを用意しておく。包装フィルム4Aを筒状とするように、衛生用紙束を包みこみ、その状態で包装フィルム4Aの端部同士を熱融着させて筒状に固定する。筒状となった包装フィルム4Aの両開口端部を帯状に熱融着して接合部16,18を形成し、扁平な包装体1Aとする。
【0068】
[3−2]キャラメル包装:
まず、図7に示すように、衛生用紙2Aを折り畳んで折り畳み体20とした後、複数積層して衛生用紙束を形成する。一方、予め所定形状の取出口形成用切込線が形成された包装フィルムを用意しておく。包装フィルムを筒状とするように、衛生用紙束を包みこみ、その状態で包装フィルムの端部同士を熱融着させて筒状に固定する。筒状となった包装フィルムの両開口端部を折り込んで熱融着して接合部を形成し、直方体状の包装体とする。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の包装体について、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の包装体は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aは、衛生用紙2Aの折り畳み体が積層された衛生用紙束20と、衛生用紙束20を被包する包装フィルム4Aと、を備え、包装フィルム4Aのうち、衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、衛生用紙2Aの取出口8Aを形成する取出口形成用切込線6Aが形成されたものである。
【0071】
包装フィルム4Aとしては、ポリエチレン樹脂製の厚さ30μmのフィルム材を用いた。衛生用紙2Aとしては、197mm×210mmのポケットティシュ用衛生用紙を用いた。この衛生用紙は、JIS P8124で規定される1枚当たりの坪量が11.0g/m2のものである。また、この衛生用紙2Aは、2プライのものである。
【0072】
衛生用紙2Aは、図7に示すような方法で、非ポップアップ方式の折り畳み体20とした。まず、(a)図に示すように、一枚(2プライ)の衛生用紙2Aを山折りF1、谷折りF2、山折りF3、谷折りF4の順で折り畳んで、(b)図に示す五つ折りの状態とし、最後に(c)図に示すように、更に長手方向に二つ折りF5して、折り畳んだ。この折り畳み体20は、長手方向に沿って、幅方向中央部に、衛生用紙の折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれている。この折り目28は、折り畳み体20の長手方向中心線から2mmずれた位置に折り目28が形成されている。
【0073】
また、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aは、取出口形成用切込線6Aが、起点P1と終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、起点P1及び終点P2は包装体の縁部E1から25mm離隔して配置されている。起点P1と終点P2との間隔は85mmである。取出口形成用切込線6Aの最凸部(図5中、点P3の位置)は、起点P1と終点P2とを結ぶ直線L2から30mmの位置に配置されている。取出口形成用切込線6Aは、ミシン目によって形成されている。
【0074】
包装体1Aは、図5に示すように、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2が、上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、軌跡が、上面領域A1のうち、長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されている。
【0075】
包装体は、取出口形成用切込線と、起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、上面領域A1の面積S1に対して21%の比率を占めている。
【0076】
また、包装体は、上面領域A1の長手方向中心線L1と取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、フラップ領域A4の面積S2に対して34%の比率を占めている。
【0077】
また、包装体1Aは、図6A及び図6Bに示すように、折り畳み体22が、その長手方向中央部に、折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれたものである。そして、取出口形成用切込線6Aは、破断した際に、衛生用紙束20の最上位の折り畳み体24の折り目28が、取出口8Aから露出するように形成されている。
【0078】
包装体1Aには、固定用シール12Aが付設されている。この固定用シール12Aは、ポリエチレン樹脂製の厚さ80μmのシート材によって構成されている。サイズは幅20mm、長さ24mmの略長方形であり、先端部がRカットされている。裏面には、再剥離性粘着剤であるアクリル系粘着剤が塗布されているが、先端部については剥離を容易とするため、長さ8mmだけ粘着剤を塗布していない。
【0079】
そして、固定用シール12Aは、包装フィルム4Aに、取出口形成用切込線6Aで分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シール12Bが付設されている。固定用シール12Aはラベラーによって貼付されたものである。
【0080】
包装の形態は、所謂ピロー包装とした。まず、上記折り畳み体を10組(2プライ)積層して衛生用紙束を形成した。一方、予め所定形状の取出口形成用切込線6Aが形成された包装フィルム4Aも用意した。次いで、包装フィルム4Aを筒状とするように、衛生用紙束を包みこみ、その状態で包装フィルム4Aの端部同士を熱融着させて筒状に固定した。その後、筒状となった包装フィルム4Aの両開口端部を帯状に熱融着して接合部16,18を形成し、扁平な包装体1Aとした。最後に、ラベラーで固定用シール12を貼着し、扁平状の包装体1Aとした。この包装体のサイズは、縦80mm、横115mm、厚さ12mmである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の包装体は、ティシュペーパー、ペーパーナプキン、ペーパータオル等の家庭用衛生用紙を包装する包装体として好適に用いることができる。中でも、保湿剤等の比較的揮発性が低い液体が含浸されたローションティシュを包装する包装体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】本発明の包装体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図1B】図1Aに示す包装体の使用状態を示す斜視図である。
【図2A】従来の包装体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2B】図2Aに示す包装体の使用状態を示す斜視図である。
【図3A】従来の包装体の別の実施形態を示す斜視図である。
【図3B】図3Aに示す包装体の使用状態を示す斜視図である。
【図4A】取出口形成用切込線の一の実施形態を示す模式図である。
【図4B】取出口形成用切込線の別の実施形態を示す模式図である。
【図4C】取出口形成用切込線の更に別の実施形態を示す模式図である。
【図4D】取出口形成用切込線の更にまた別の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の包装体を上面側から見た状態を模式的に示す平面図である。
【図6A】本発明の包装体を短手中心線で切断した切断面を示す模式図である。
【図6B】本発明の包装体を短手中心線で切断した切断面を示す模式図であり、図6Aに示す包装体の使用状態を示すものである。
【図7】衛生用紙の折り畳み方を示す工程図である。
【図8】衛生用紙の折り畳み方を示す別の工程図である。
【符号の説明】
【0083】
1A,100A,100B:包装体、2A,2B,2C:衛生用紙、4A,4B,4C:包装フィルム、6A,6B,6C:取出口形成用切込線、8A,8B,8C:取出口、10A,10b:フラップ、12A,12B:固定用シール、16,18:接合部、20:衛生用紙束、22,24,26:折り畳み体、28:折り目、P1:起点、P2:終点、PX,P3:点、A1:上面領域、A2,A3:分割領域、A4:フラップ領域、A5:フラップ先端領域、L1:長手方向中心線、L2:直線、E1,E2:縁部、F1:山折り、F2:谷折り、F3:山折り、F4:谷折り、F5:二つ折り。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ポケットティシュのような、衛生用紙束と、衛生用紙束を被包する包装フィルムとを備え、包装フィルムに衛生用紙の取出口を形成する取出口形成用切込線が形成された包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ティシュペーパー等の家庭用衛生用紙の包装体として、図2A及び図2Bに示すように、衛生用紙2Bの折り畳み体が積層された衛生用紙束と、その衛生用紙束を被包する包装フィルム4Bとを備え、その包装フィルム4Bに衛生用紙の取出口8Bを形成する取出口形成用切込線6Bが形成された包装体100Aが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
包装体100Aは、包装体全体が扁平形状に構成されており、取出口形成用切込線6Bは、包装フィルム4Bのうち包装体100Aの一つの面(図中、上側の面)の中央に相当する部分に、包装体100Aの長手方向に向かって形成されている。そして、この取出口形成用切込線6Bを破断すると、直線状の取出口8Bを形成することができ、図2Bに示すように、その取出口8Bから衛生用紙2Bを取出すことが可能なように構成されている。
【0004】
また、包装フィルムのうち包装体の一つの面に相当する部分に、包装体の長辺に対して一定の角度で傾斜するように、直線状の取出口形成用切込線が形成された包装体も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
更に、図3A及び図3Bに示すように、包装体の縁部E1に向かう、起点P1と終点P2の間を繋ぐ凸状の軌跡で取出口形成用切込線6Cが形成された包装体100Bも提案されている(例えば、特許文献3〜6参照)。この包装体100Bは、取出口形成用切込線6Cを破断した後も、固定用シール12Bによって、取出口8Cを再度封着することが可能なように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−313393号公報
【特許文献2】特開2005−185332号公報
【特許文献3】特開平2−296686号公報
【特許文献4】特開平6−115575号公報
【特許文献5】特開昭56−95864号公報
【特許文献6】特開平10−59441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の包装体は、図2Bに示す包装体100Aのように、衛生用紙2Bが狭いスリット状の取出口8Bから引き出されるため、包装フィルム4Bとの摩擦によって衛生用紙2Bが破断されてしまう場合があるという課題があった。
【0008】
また、特許文献1及び2に記載の包装体は、図2Bに示す包装体100Aのように、取出口8Bの開口面積が殆どなく、包装体100A内部の衛生用紙2Bの表面が露出し難いため、スリット状の取出口8Bに指を差し込んで衛生用紙2Bを引き出す必要がある。従って、衛生用紙2Bの取出しが困難であるという課題があった。特に、ポケットティシュ等の携帯用の衛生用紙の場合、そのサイズが小さいことに起因して、衛生用紙束を形成する際に、所謂ポップアップ方式の折り畳み構造を採用し難い。即ち、一枚の衛生用紙を引き出しても、その直下の衛生用紙が連続的に引き出される構造ではないため、上記の課題はより顕著なものとなる。
【0009】
これに対し、特許文献3〜6に記載の包装体は、図3A及び図3Bに示す包装体100Bのように、取出口8Cが大きく開口することに加え、衛生用紙2Cを包装体の縁部E1側に引き抜くことが可能である。従って、衛生用紙2Cの取出しは比較的容易になるという利点がある。
【0010】
しかし、衛生用紙2Cを取り出す際に、二枚以上の衛生用紙2Cが一緒に引き出されてしまう場合があった。このため、余分に引き出された衛生用紙2Cを包装体100B内部に押し込まなければ、取出口8Cの再封着ができない場合があるという課題があった。
【0011】
また、図3A及び図3Bに示す包装体100Bと同様の構成で、包装体上面の短手方向の縁部ではなく、長手方向の縁部を起点として取出口形成用切込線を形成することも考えられる(特許文献3第9図参照)。この場合、図3A及び図3Bに示す包装体100Bと比較して、取出口の開口面積は大きくとることができ、衛生用紙の取出しは容易になるものの、二枚以上の衛生用紙が一緒に引き出されてしまう可能性は、より大きくなってしまう。
【0012】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、衛生用紙の取出しや取出口の再封着が容易であって、衛生用紙が取出口に引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することができる包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、取出口形成用切込線を形成する際に、起点と終点の間を、円弧状等の凸状の軌跡で繋ぎ、かつ、起点及び終点を包装体の縁部から離れた位置に配置することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の包装体が提供される。
【0014】
[1] 衛生用紙の折り畳み体が積層された衛生用紙束と、前記衛生用紙束を被包する包装フィルムと、を備え、前記包装フィルムのうち、前記衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、前記衛生用紙の取出口を形成する取出口形成用切込線が形成され、前記取出口形成用切込線は、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、前記起点P1及び前記終点P2が、包装体の縁部から離隔して配置されている包装体。
【0015】
[2] 前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されている前記[1]に記載の包装体。
【0016】
[3] 前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2が、前記上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、前記軌跡が、前記上面領域A1のうち、前記長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されている前記[1]又は[2]に記載の包装体。
【0017】
[4] 前記折り畳み体は、その長手方向に沿って、幅方向中央部に、前記衛生用紙の縁部又は折り目が位置するように、前記衛生用紙が折り畳まれたものであり、前記取出口形成用切込線は、破断した際に、前記衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目が、前記取出口から露出するように形成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の包装体。
【0018】
[5] 前記取出口形成用切込線と、前記起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、前記上面領域A1の面積S1に対して15〜60%の比率を占めている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の包装体。
【0019】
[6] 前記上面領域A1の長手方向中心線L1と前記取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、前記フラップ領域A4の面積S2に対して20〜70%の比率を占めている前記[5]に記載の包装体。
【0020】
[7] 前記包装フィルムには、前記取出口形成用切込線で分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シールが付設されている前記[1]〜[6]のいずれかに記載の包装体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の包装体は、衛生用紙の取出しや取出口の再封着が容易であって、衛生用紙が取出し口に引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の包装体を実施するための最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える包装体を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[1]本発明の包装体の特徴部分の構成:
本発明の包装体は、図1A及び図1Bに示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aが、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、起点P1及び終点P2が、包装体の縁部E1から離隔して配置されているものである。
【0024】
このような構成では、取出口形成用切込線6を破断すると、取出口形成用切込線6Aと、その起点P1と終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲される領域A1の部分を全て開口させることができる(この部分を「フラップ」と称することにする。図中符号:10A)。
【0025】
従って、開口面積が大きい取出口8Aが形成されるとともに、包装体内部の衛生用紙2Aの表面の一部が面状に露出する。従って、取出しの際に、衛生用紙2Aにかかる摩擦力が小さく、衛生用紙2Aが取出口8Aに引っかかって破断されてしまう事態を有効に防止することができる。また、包装体1A内部の衛生用紙2Aを摘み易くなり、衛生用紙2Aの取出しが容易となる。
【0026】
更に、衛生用紙2Aの折り畳み体は、その四辺が包装フィルム4Aによって押さえられているため、二枚以上の衛生用紙2Aが一緒に引き出されてしまうことが少ない。従って、余分に引き出された衛生用紙2Aを包装体1A内部に押し込まなくても、取出口8Aを再封着することができ、取出口8Aの再封着が容易である。
【0027】
[1−1]取出口形成用切込線:
「取出口形成用切込線」とは、衛生用紙束を被包する包装フィルムに形成される、衛生用紙の取出口を形成するための切込線である。本発明の包装体は、取出口形成用切込線が、(a)起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されている点、及び(b)起点P1及び終点P2が、包装体の縁部から離隔して配置されている点、に特徴がある。
【0028】
「凸状の軌跡」とは、起点P1から始まって、起点P1と終点P2を最短距離で結ぶ直線L1上に存在しない点PXを経由し、終点P2に至る軌跡を意味する。この「軌跡」は、曲線状であってもよいし、折れ線状であってもよい。具体的には、図4Aに示す円弧状、図4Bに示す「コ」の字状、図4Cに示す「く」の字状、図4Dに示す端部側が広がった「コ」の字状等を挙げることができる。中でも、取出口の開口面積を大きくとることができ、再封時にフラップ部全体を引き寄せやすいため再封がし易く、再封した場合にフラップ部が角部から捲れて内部の衛生用紙が露出することが少ないという理由から、円弧状が好ましい。即ち、本発明の包装体は、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aが、起点P1と終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されていることが好ましい。
【0029】
また、本発明の包装体は、図5に示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2が、上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、軌跡が、上面領域A1のうち、長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されていることが好ましい。
【0030】
このような構成では、取出口8Aが長手方向中心線L1を含む、上面領域A1の中央部に形成されているので、取出口8Aの開口面積が大きく、衛生用紙2Aの取出しも容易である。
【0031】
更に、本発明の包装体は、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aのように、取出口形成用切込線6Aの起点P1及び終点P2が、包装体1Aの縁部E1から離隔して配置されている。このような構成により、図6A及び図6Bに示すように、衛生用紙束20を構成する複数の折り畳み体22(即ち、衛生用紙2A)のうち、最上位の折り畳み体24を引き出す際に、その直下の折り畳み体26の四つの縁部が包装フィルム4Aによって押さえられることになる。従って、最上位の折り畳み体24を引き出す際に、その直下の折り畳み体26が一緒に引き出されてしまう事態を回避できる。
【0032】
一方、図3A及び図3Bに示す包装体100Bのように、取出口形成用切込線6Cの起点P1及び終点P2が、包装体1Aの縁部E2に配置されていると、最上位の折り畳み体(即ち、衛生用紙2C)を引き出す際に、その直下の折り畳み体の三つの縁部のみが包装フィルム4Cによって押さえられ、一つの縁部E2側は開放されることになる。従って、開放されている縁部E2側から、最上位の折り畳み体を引き出そうとすると、最上位の折り畳み体と、その直下の折り畳み体が重なった状態で一緒に引き出されてしまうおそれがある。
【0033】
更に、本発明の包装体は、図6A及び図6Bに示す包装体1Aのように、折り畳み体22は、その長手方向中央部に、衛生用紙2Aの縁部又は折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれたものであり、取出口形成用切込線6Aが、破断した際に、衛生用紙束20の最上位の折り畳み体24の縁部又は折り目28が、取出口8Aから露出するように形成されていることが好ましい。
【0034】
このような構成では、最上位の折り畳み体24の縁部又は折り目28を摘んで引き出すことができ、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2の間を凸状の軌跡で繋ぐように形成した構成と相俟って、一層、衛生用紙2Aの取出しが容易になるという利点がある。
【0035】
特に、図6A及び図6Bに示す包装体1Aの折り畳み体22のように、長手方向中央部に、衛生用紙2Aの折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれていると、衛生用紙2Aが少なくとも2枚重ねとなっている部分を指で摘むことになる。従って、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2の間を凸状の軌跡で繋ぐように形成した構成と相俟って、より一層、取出し時における衛生用紙2Aの破れを防止する効果が向上する。
【0036】
本発明の包装体は、取出口形成用切込線と、起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、上面領域A1の面積S1に対して15〜60%の比率を占めていることが好ましい。
【0037】
面積S1に対する面積S2の占める比率を15%以上とすることにより、十分な開口面積の開口部が形成され、衛生用紙の取出しが容易になるという効果を得ることができる。また、面積S1に対する面積S2の占める比率を60%以下とすることにより、開口部が大きくなりすぎないため、最上位の折り畳み体を引き出す際に、その直下の折り畳み体の四つの縁部が包装フィルムによって押さえられる、という本発明の効果が減殺されることを回避できる。
【0038】
また、本発明の包装体は、上面領域A1の長手方向中心線L1と取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、フラップ領域A4の面積S2に対して20〜70%の比率を占めていることが好ましい。
【0039】
面積S2に対する面積S3の占める比率を20〜70%とすることにより、包装体の上面領域A1の中央部が十分に開口する。従って、衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目が取出口の中央に位置し易くなり、衛生用紙の取出しが容易となる。また、面積S2に対する面積S3の占める比率が20%未満又は70%を超えると、包装体の上面領域A1の中央部が十分に開口しない。従って、衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目は取出口の中央から外れ易くなるため(或いは、取出口から露出しなくなるため)、衛生用紙が取り出し難くなる。
【0040】
本明細書に言う「取出口形成用切込線」は、複数の切れ目がその間の不連続部を介して全体として連続するように配置されたものを意味する。従って、複数の切れ目が破線状に配置されてミシン目となっているものの他、比較的長い切れ目の間を点状ないし短い直線状の不連続部分で連結させたような構成のものも含まれる。この場合、切れ目部分の長さを2〜5mm、不連続部分の長さを0.5〜1.5mmとすることが好ましい。
【0041】
[1−2]固定用シール:
本発明の包装体は、固定用シールが付設されていることが好ましい。「固定用シール」とは、取出口形成用切込線の破断によって形成されるフラップを包装体本体に固定するためのシールである。
【0042】
本発明の包装体は、取出口の開口面積を大きくとれるという利点がある一方で、一旦、取出口形成用切込線を破断してしまうと、内部の衛生用紙が露出し易くなり、汚れや破れが発生し易くなるおそれもある。しかし、固定用シールを付設することによって、衛生用紙の取出し時のみ、固定用シールを剥がして取出口を開口させることが可能となり、衛生用紙の表面に塵や埃が付着したり、汚れや破れが発生したりする不具合を効果的に防止することができる。取出口が意図せず開口することを防止できる。
【0043】
また、衛生用紙を取り出した後は、取出口を閉じておくことができるため、グリセリン、流動パラフィンといった液体を染み込ませたローションティシュ等を包装する場合でも、その薬剤の揮発を抑制することができ、ローションティシュを長期間にわたって使用することが可能となる。
【0044】
固定用シールの形態は特に制限されないが、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aのように、包装フィルム4Aには、取出口形成用切込線6Aで分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シール12Bが付設されていることが好ましい。
【0045】
このような構成によれば、比較的簡易な構造で、取出口8Aの意図せぬ開口を防止することができる。そして、ローションティシュを包装した場合でも、十分に薬剤の揮発を抑制することができる。なお、「フラップ外領域」とは、図5の例で説明すれば、包装体1Aの上面領域A1のうち、フラップ領域A4以外の領域を意味する。
【0046】
ポケットティシュ等は複数枚(2プライ1組で2〜20組程度)の衛生用紙が包装されることから、固定用シールは、取出口を繰り返し開閉することが可能な構造とすることが好ましい。例えば、シール剤として、再剥離性粘着剤を塗布しておき、これにより取出口を固定できるようにしたものが好ましい。
【0047】
再剥離性粘着剤は、一旦貼着した後に再度剥離させることが可能な粘着剤であり、貼着と剥離を繰り返し行う用途で用いられるものである。このような性質を有するものである限り、粘着剤の種類は特に限定されないが、本発明においてはアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。
【0048】
[2]本発明の包装体の他の部分の構成:
本発明の包装体は、図1A及び図1Bに示すように、衛生用紙2Aの折り畳み体が積層された衛生用紙束20と、衛生用紙束20を被包する包装フィルム4Aと、を備え、包装フィルム4Aのうち、衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、衛生用紙2Aの取出口8Aを形成する取出口形成用切込線6Aが形成されたものである。
[2−1]包装フィルム:
包装フィルムは、一般に樹脂製のフィルム材からなる。包装用途に用いることから、可撓性に優れたフィルム材であることが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなるフィルム材を用いることができる。
【0049】
包装フィルムの厚みは、10〜40μmであることが好ましい。10μm以上とすることにより、包装材として必要とされる強度を維持することができる。また、包装フィルムを熱融着して包装体を形成する際に、融着部が割ける等の不具合を防止することができる。また、40μm以下とすることにより、前記熱融着の加工性が良好となり、生産性が向上する。
【0050】
[2−2]衛生用紙、衛生用紙束:
衛生用紙としては、家庭用衛生用紙、例えば、ティシュペーパー、ペーパーナプキン、ペーパータオル等を挙げることができる。衛生用紙は、JIS P8124で規定される1枚当たりの坪量が10〜30g/m2のものを用いることが好ましく、11〜20g/m2のものを用いることが更に好ましく、12.5g/m2のものを用いることが特に好ましい。
【0051】
衛生用紙はクレープ紙であってもよい。「クレープ紙」とは、ちりめん状の皺が形成された紙である。例えば、抄紙機のドライヤーシェルやプレスロール等の表面に湿紙を付着させて乾燥させ、乾燥された紙をドクターブレードで掻き取る際に、弛みを生じさせ、ちりめん状の皺を形成する。
【0052】
本発明においては、クレープ率が10〜30%のクレープ紙を衛生用紙として用いることが好ましい。クレープ率を10%以上とすることで、原紙(ひいてはプライ)に柔らかさを付与することができる。一方、30%以下とすることで、生産効率の向上という効果を得ることができる。
【0053】
なお、クレープ率は、抄紙機のドライヤーシェルやプレスロールの周速及び巻き取りロールの周速の値から、下記式(1)により算出することができる。
Rc={(Va−Vb)/Vb}×100:(1)
(但し、Rc:クレープ率(%)、Va:ドライヤーシェル周速(単位:m/分)、Vb:巻き取りロール周速(単位:m/分))
【0054】
家庭用衛生用紙等では、2枚の原紙を重ね合わせた2プライのものが多く用いられるが、3プライ、4プライ、或いはそれ以上の枚数の原紙を重ね合わせたプライであってもよい。この場合、プライにエンボス加工を施すと、衛生用紙の引き出しが容易となる。エンボス加工としては、例えば、マッチドスチール、ネステッド、ピロー等を挙げることができる。
【0055】
衛生用紙は揮発性が低い液体を含浸させたローションティシュであってもよい。液体の種類は特に限定されないが、例えば、保湿剤、消毒剤、その他の薬効成分等を含む薬液の他、香料や着色剤等を含む液体(着色液等)を挙げることができる。
【0056】
より具体的には、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類;グルコール酸系薬剤及びその誘導体;セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;流動パラフィン等の中の一種又は二種以上の成分を含む液体(溶液であってもよい。)が含浸されたものを用いることができる。
【0057】
また、前記成分に加えて、或いは単独で、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチン、システイン等のアミノ酸;アロエエキス、アマチャエキス、アシタバエキス、カリンエキス、キュウリエキス、スギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキス等の植物抽出エキス;オリーブ油、ホホバ油、ローズヒップ油、アーモンド油、ユーカリ油、アボカド油、ツバキ油、大豆油、サフラワー油、ゴマ油、月見草油等の植物油;ビタミン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、キトサン、尿素、ハチミツ、ローヤルゼリー、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、スクワラン、ワセリン等の中の一種又は二種以上の成分を含む液体(溶液であってもよい。)が含浸されたものであってもよい。
【0058】
液体の含浸比率は、ローションティシュ全体の質量のうち含浸された液体の量が、2〜30質量%であることが好ましく、4〜25質量%であることが更に好ましい。2質量%以上とすることで、しっとり感やぬめり感を確実に発現させることが可能となる。一方、30質量%以下とすることで、液体の量が多すぎて紙力が弱くなり、以後の工程で紙切れが起こるという不具合を効果的に防止することができる。
【0059】
衛生用紙は折り畳み体の状態で包装される。一般に、カートン入りティシュ等は、所謂ポップアップ方式の折り畳み構造が採用されている。「ポップアップ方式の折り畳み構造」とは、折り畳まれた衛生用紙の折り返し部分に他の折り畳まれた衛生用紙の一部を挟み込むようにして、複数枚の衛生用紙を連続的に積層する折り畳み構造である。このような折り畳み構造とすると、最上位の衛生用紙を取り出すと、これに挟み込まれていた直下の衛生用紙の一部が引き出され、連続的な取出しが容易となるものである。
【0060】
しかし、ポケットティシュ等の携帯用衛生用紙は、サイズ上の問題から、ポップアップ方式の折り畳み構造を採用することが困難である。従って、衛生用紙を一枚ずつ折り畳んで折り畳み体とし、その折り畳み体を積層して衛生用紙束を形成することが多い。
【0061】
図7は、衛生用紙の折り畳み工程を示す工程図である。衛生用紙の折り畳みは、例えば、(a)図に示すように、一枚(2プライ)の衛生用紙2Aを山折りF1、谷折りF2、山折りF3、谷折りF4の順で折り畳んで、(b)図に示す五つ折りの状態とし、最後に(c)図に示すように、更に長手方向に二つ折りF5して、折り畳む。
【0062】
図8は、衛生用紙の折り畳み工程を衛生用紙の断面で示した工程図である。(a)図は、図7(a)図に示す衛生用紙2のA−A’断面を示す模式図であり、(b)図及び(c)図は、図7(a)図の状態から、図7(b)図の状態に至るまでの衛生用紙2の断面を示す模式図であり、(d)図は、図7の(b)図に示す衛生用紙2のB−B’断面を示す模式図である。
【0063】
図7及び図8に示す折り畳み方によれば、長手方向に沿って、幅方向中央部に、衛生用紙の折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれた折り畳み体20を得ることができる。
【0064】
衛生用紙束は、上記のような折り畳み体が複数積層されたものである。衛生用紙の厚さ、折り畳み状態等により異なるが、通常のポケットティシュの場合であれば、2プライ1組で2〜20組程度、ローションティシュの場合であれば、2プライ1組で8〜15組程度を積層して衛生用紙束とする。但し、3プライ、4プライ、或いはそれ以上を1組としたものであってもよい。
【0065】
[2−3]包装体:
包装の形態は、衛生用紙の形状や枚数により適宜選択すればよい。包装する衛生用紙の枚数が少ない場合(2プライ1組で2〜14組程度)には、2辺シール包装(「ピロー包装」とも称される。)で包装することが好ましい。この場合、包装体は、縦40〜100mm、横50〜150mm、厚さ5〜30mmのサイズに構成することが一般的である。
【0066】
[3]製造方法:
本発明の包装体は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0067】
[3−1]ピロー包装:
図1A及び図1Bに示す包装体1Aの例で説明する。まず、図7に示すように、衛生用紙2Aを折り畳んで折り畳み体20とした後、複数積層して衛生用紙束を形成する。一方、予め所定形状の取出口形成用切込線6Aが形成された包装フィルム4Aを用意しておく。包装フィルム4Aを筒状とするように、衛生用紙束を包みこみ、その状態で包装フィルム4Aの端部同士を熱融着させて筒状に固定する。筒状となった包装フィルム4Aの両開口端部を帯状に熱融着して接合部16,18を形成し、扁平な包装体1Aとする。
【0068】
[3−2]キャラメル包装:
まず、図7に示すように、衛生用紙2Aを折り畳んで折り畳み体20とした後、複数積層して衛生用紙束を形成する。一方、予め所定形状の取出口形成用切込線が形成された包装フィルムを用意しておく。包装フィルムを筒状とするように、衛生用紙束を包みこみ、その状態で包装フィルムの端部同士を熱融着させて筒状に固定する。筒状となった包装フィルムの両開口端部を折り込んで熱融着して接合部を形成し、直方体状の包装体とする。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の包装体について、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の包装体は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aは、衛生用紙2Aの折り畳み体が積層された衛生用紙束20と、衛生用紙束20を被包する包装フィルム4Aと、を備え、包装フィルム4Aのうち、衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、衛生用紙2Aの取出口8Aを形成する取出口形成用切込線6Aが形成されたものである。
【0071】
包装フィルム4Aとしては、ポリエチレン樹脂製の厚さ30μmのフィルム材を用いた。衛生用紙2Aとしては、197mm×210mmのポケットティシュ用衛生用紙を用いた。この衛生用紙は、JIS P8124で規定される1枚当たりの坪量が11.0g/m2のものである。また、この衛生用紙2Aは、2プライのものである。
【0072】
衛生用紙2Aは、図7に示すような方法で、非ポップアップ方式の折り畳み体20とした。まず、(a)図に示すように、一枚(2プライ)の衛生用紙2Aを山折りF1、谷折りF2、山折りF3、谷折りF4の順で折り畳んで、(b)図に示す五つ折りの状態とし、最後に(c)図に示すように、更に長手方向に二つ折りF5して、折り畳んだ。この折り畳み体20は、長手方向に沿って、幅方向中央部に、衛生用紙の折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれている。この折り目28は、折り畳み体20の長手方向中心線から2mmずれた位置に折り目28が形成されている。
【0073】
また、図1A、図1B及び図5に示す包装体1Aは、取出口形成用切込線6Aが、起点P1と終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、起点P1及び終点P2は包装体の縁部E1から25mm離隔して配置されている。起点P1と終点P2との間隔は85mmである。取出口形成用切込線6Aの最凸部(図5中、点P3の位置)は、起点P1と終点P2とを結ぶ直線L2から30mmの位置に配置されている。取出口形成用切込線6Aは、ミシン目によって形成されている。
【0074】
包装体1Aは、図5に示すように、取出口形成用切込線6Aの起点P1と終点P2が、上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、軌跡が、上面領域A1のうち、長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されている。
【0075】
包装体は、取出口形成用切込線と、起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、上面領域A1の面積S1に対して21%の比率を占めている。
【0076】
また、包装体は、上面領域A1の長手方向中心線L1と取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、フラップ領域A4の面積S2に対して34%の比率を占めている。
【0077】
また、包装体1Aは、図6A及び図6Bに示すように、折り畳み体22が、その長手方向中央部に、折り目28が位置するように、衛生用紙2Aが折り畳まれたものである。そして、取出口形成用切込線6Aは、破断した際に、衛生用紙束20の最上位の折り畳み体24の折り目28が、取出口8Aから露出するように形成されている。
【0078】
包装体1Aには、固定用シール12Aが付設されている。この固定用シール12Aは、ポリエチレン樹脂製の厚さ80μmのシート材によって構成されている。サイズは幅20mm、長さ24mmの略長方形であり、先端部がRカットされている。裏面には、再剥離性粘着剤であるアクリル系粘着剤が塗布されているが、先端部については剥離を容易とするため、長さ8mmだけ粘着剤を塗布していない。
【0079】
そして、固定用シール12Aは、包装フィルム4Aに、取出口形成用切込線6Aで分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シール12Bが付設されている。固定用シール12Aはラベラーによって貼付されたものである。
【0080】
包装の形態は、所謂ピロー包装とした。まず、上記折り畳み体を10組(2プライ)積層して衛生用紙束を形成した。一方、予め所定形状の取出口形成用切込線6Aが形成された包装フィルム4Aも用意した。次いで、包装フィルム4Aを筒状とするように、衛生用紙束を包みこみ、その状態で包装フィルム4Aの端部同士を熱融着させて筒状に固定した。その後、筒状となった包装フィルム4Aの両開口端部を帯状に熱融着して接合部16,18を形成し、扁平な包装体1Aとした。最後に、ラベラーで固定用シール12を貼着し、扁平状の包装体1Aとした。この包装体のサイズは、縦80mm、横115mm、厚さ12mmである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の包装体は、ティシュペーパー、ペーパーナプキン、ペーパータオル等の家庭用衛生用紙を包装する包装体として好適に用いることができる。中でも、保湿剤等の比較的揮発性が低い液体が含浸されたローションティシュを包装する包装体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】本発明の包装体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図1B】図1Aに示す包装体の使用状態を示す斜視図である。
【図2A】従来の包装体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2B】図2Aに示す包装体の使用状態を示す斜視図である。
【図3A】従来の包装体の別の実施形態を示す斜視図である。
【図3B】図3Aに示す包装体の使用状態を示す斜視図である。
【図4A】取出口形成用切込線の一の実施形態を示す模式図である。
【図4B】取出口形成用切込線の別の実施形態を示す模式図である。
【図4C】取出口形成用切込線の更に別の実施形態を示す模式図である。
【図4D】取出口形成用切込線の更にまた別の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の包装体を上面側から見た状態を模式的に示す平面図である。
【図6A】本発明の包装体を短手中心線で切断した切断面を示す模式図である。
【図6B】本発明の包装体を短手中心線で切断した切断面を示す模式図であり、図6Aに示す包装体の使用状態を示すものである。
【図7】衛生用紙の折り畳み方を示す工程図である。
【図8】衛生用紙の折り畳み方を示す別の工程図である。
【符号の説明】
【0083】
1A,100A,100B:包装体、2A,2B,2C:衛生用紙、4A,4B,4C:包装フィルム、6A,6B,6C:取出口形成用切込線、8A,8B,8C:取出口、10A,10b:フラップ、12A,12B:固定用シール、16,18:接合部、20:衛生用紙束、22,24,26:折り畳み体、28:折り目、P1:起点、P2:終点、PX,P3:点、A1:上面領域、A2,A3:分割領域、A4:フラップ領域、A5:フラップ先端領域、L1:長手方向中心線、L2:直線、E1,E2:縁部、F1:山折り、F2:谷折り、F3:山折り、F4:谷折り、F5:二つ折り。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生用紙の折り畳み体が積層された衛生用紙束と、前記衛生用紙束を被包する包装フィルムと、を備え、
前記包装フィルムのうち、前記衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、前記衛生用紙の取出口を形成する取出口形成用切込線が形成され、
前記取出口形成用切込線は、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、前記起点P1及び前記終点P2が、包装体の縁部から離隔して配置されている包装体。
【請求項2】
前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されている請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2が、前記上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、前記軌跡が、前記上面領域A1のうち、前記長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されている請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記折り畳み体は、その長手方向に沿って、幅方向中央部に、前記衛生用紙の縁部又は折り目が位置するように、前記衛生用紙が折り畳まれたものであり、
前記取出口形成用切込線は、破断した際に、前記衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目が、前記取出口から露出するように形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
前記取出口形成用切込線と、前記起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、前記上面領域A1の面積S1に対して15〜60%の比率を占めている請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
前記上面領域A1の長手方向中心線L1と前記取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、前記フラップ領域A4の面積S2に対して20〜70%の比率を占めている請求項5に記載の包装体。
【請求項7】
前記包装フィルムには、前記取出口形成用切込線で分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シールが付設されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項1】
衛生用紙の折り畳み体が積層された衛生用紙束と、前記衛生用紙束を被包する包装フィルムと、を備え、
前記包装フィルムのうち、前記衛生用紙束の積層方向と略直交する、包装体の上面に相当する上面領域A1に、前記衛生用紙の取出口を形成する取出口形成用切込線が形成され、
前記取出口形成用切込線は、起点P1と終点P2の間を、凸状の軌跡で繋ぐように形成されるとともに、前記起点P1及び前記終点P2が、包装体の縁部から離隔して配置されている包装体。
【請求項2】
前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2の間を、円弧状の軌跡で繋ぐように形成されている請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記取出口形成用切込線は、前記起点P1と前記終点P2が、前記上面領域A1のうち、その長手方向中心線L1で分割された一方の分割領域A2に配置されるとともに、前記軌跡が、前記上面領域A1のうち、前記長手方向中心線L1で分割された他方の分割領域A3に位置する点P3を通過するように形成されている請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記折り畳み体は、その長手方向に沿って、幅方向中央部に、前記衛生用紙の縁部又は折り目が位置するように、前記衛生用紙が折り畳まれたものであり、
前記取出口形成用切込線は、破断した際に、前記衛生用紙束の最上位の折り畳み体の縁部又は折り目が、前記取出口から露出するように形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
前記取出口形成用切込線と、前記起点P1と前記終点P2を繋ぐ直線L2とで包囲されるフラップ領域A4の面積S2が、前記上面領域A1の面積S1に対して15〜60%の比率を占めている請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
前記上面領域A1の長手方向中心線L1と前記取出口形成用切込線とで包囲されるフラップ先端領域A5の面積S3が、前記フラップ領域A4の面積S2に対して20〜70%の比率を占めている請求項5に記載の包装体。
【請求項7】
前記包装フィルムには、前記取出口形成用切込線で分割されたフラップ領域A4と、フラップ外領域A6とに跨るように、固定用シールが付設されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の包装体。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−126549(P2009−126549A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302933(P2007−302933)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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