説明

包装容器の蓋材

【課題】従来知られたものとは別の手法により、アルミニウム層を有することなく保形性が確保された、カップ状容器のシート状蓋材を提供する。
【解決手段】外周縁に開封用タブ21を有し、カップ状容器本体10の開口外周縁に引き剥がし可能に固定されるシート状蓋材。当該シート状蓋材は、少なくとも、開口外周縁に固定するためのシール層と、ポリ乳酸系フィルム層と、紙層およびフィルム層からなる基材層と、を含む積層体からなる。基材層に複数のハーフカット50a、50bを設け、当該ハーフカットを設けた領域における蓋材強度が弱くなるよう構成している。ポリ乳酸系フィルム層はそれ自体が保形性を有しており、これとハーフカットとの相乗効果により、アルミ層が存在しなくとも、開口時および閉止時の保形性を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップラーメンその他のインスタント食品等の包装容器に使用するシート状の蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図1に示したように、カップラーメンの容器に使用されるシート状蓋材20は、湯を注ぐ間に開口状態を良好に維持できることが好ましい。このため、通常は、蓋材20を紙層、接着層、アルミ層、及びヒートシール性プラスチック層を含む積層構造として、その保形性を高めることが行なわれている。すなわち、積層構造中にアルミ層を含めることで、当該アルミ層が、製造工場においては、100枚以上積み重ねられた個々の蓋材20の平面性を保持し、また、消費者による喫食時には、容器本体内に湯を注ぐ際に、一部開封された蓋材20の湾曲開封状態を保持する。
【0003】
しかしながら、蓋材20がアルミ層を含むと以下のような不都合がある。
(1)最終製品としてのカップラーメンに対して、金属探知機を利用した異物混入検査を行なうことが不可能となる。これは、アルミ層が金属探知機に反応するからである。
(2)廃棄焼却の際に、アルミが焼却炉内に残って、焼却炉内壁等に付着する。
(3)電子レンジによる調理が行われる場合、アルミ層の外周縁でスパークが生じることがある。
【0004】
このような問題を解決するためには、蓋材の積層構成中のアルミ層を省略する必要がある。本願出願人は、このような観点から既に、アルミ層を省略しつつも保形性を確保した蓋材を開発し、特許出願を行ってきた(特許文献1および特許文献2)。
【0005】
特許文献1および2においては、シート状蓋材の積層構造中からアルミ層を省略し、プラスチック基材層を設けている。そして、シート状蓋材の開封方向略中間部に易湾曲帯状領域を設けている。
この易湾曲帯状領域は、プラスチック基材層を貫通する複数本の平行ハーフカットで構成されていて、これにより良好な保形性を確保している。
【0006】
【特許文献1】特開2002-104513号公報
【特許文献2】特開2003-095336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術とは別の手法により、アルミニウム層を有することなく保形性が確保された蓋材を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
本発明により、次の特徴を備えたシート状蓋材が提供される。
本発明のシート状蓋材は、外周縁に開封用タブを有し、カップ状容器本体の開口外周縁に引き剥がし可能に固定される。当該シート状蓋材は、少なくとも、「開口外周縁に固定するためのシール層」と「ポリ乳酸系フィルム層」と「紙層およびフィルム層からなる基材層」とを含む積層体からなる。
さらに、上記基材層に複数のハーフカットを設け、当該ハーフカットを設けた領域における蓋材強度が弱くなるよう構成している。
【0009】
上記構成を有する本発明のシート状蓋材においては、「ハーフカット」および「ポリ乳酸系フィルム層(PLA層)」を利用して保形性を実現している。
ポリ乳酸系フィルム層(PLA層)は、トウモロコシ等から採取される植物由来の樹脂であって、それ自体が保形性を有する。このような保形性を有するPLA層を採用するとともに、ハーフカットを併用することで、アルミ層を省略しつつも有効な保形性を実現している。ハーフカットが形成された領域においては、他の領域に比べて蓋材強度が相対的に低下するので、この領域を利用して、シート状蓋材を「上方へ湾曲して開口した状態」を維持することができる。すなわち、アルミ層を省略しつつも保形性を実現できる。
【0010】
なお、ポリ乳酸系フィルム層は、積層構造中の任意の位置に存在していればよいが、最上層(上表面)に配置したとき、最上層のポリ乳酸層が保形性に寄与し、下位の層がそれに追随するよう作用することにより、シート状蓋材の保形性が最も高まると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明のシート状蓋材20は、外周縁に開封用タブ21を有し、カップ状容器10の開口外周縁11に引き剥がし可能に固定されるもので、この点においては、図1に示した従来例と同じである。
【0012】
≪第1実施形態≫
図2は、本発明のシート状蓋材20を備えたカップ状容器10を示す斜視図であって、図4は、図2中の4−4線断面を示している。本発明においては、ポリ乳酸系フィルム層(PLA層)およびハーフカットを利用することで、アルミ層無しでの保形性を実現している。
【0013】
ポリ乳酸系フィルム層(PLA層)は、トウモロコシ等から採取される植物由来の樹脂であって、それ自体が保形性を有する。したがって、アルミ層が存在しなくともある程度の保形性が得られる。本発明では、これに加えて、さらにハーフカットを併用することで、有効な保形性を実現している。さらに、廃棄を考えるとき、PLA層は天然成分であるが故に、アルミ層と比較して、環境問題にも優れる。
ハーフカットが形成された領域においては、他の領域に比べて蓋材強度が相対的に低下するので、この領域を利用して、シート状蓋材を「上方へ湾曲して開口した状態」に維持することができる。
【0014】
図2に示した例では、シート状蓋材20上の2つの領域にハーフカット群50a、50bを形成している。ハーフカット群50aは、4本のハーフカットで構成され、それらの間隔を比較的小さくとっている。一方、ハーフカット群50bは、5本のハーフカットで構成され、それらの間隔を比較的大きくとっている。
図3に示した開封状態を見れば分かるように、ハーフカット群50aに対応する領域では、シート状蓋材は比較的小さな弧を描いて湾曲する。したがって、ハーフカット群50aにおいては、各ハーフカットの間隔を小さくしている。
一方、ハーフカット群50bに対応する領域では、シート状蓋材は比較的大きな弧を描いて湾曲する。したがって、ハーフカット群50bにおいては、各ハーフカットの間隔を大きくしている。
【0015】
ただし、以上のようなハーフカット群の数、配置、およびそこに含まれるハーフカットの数や間隔は、図示したものに限定されるものではなく、適宜設定することができる。ただ、お湯の注ぎ易さ、および高い保形性といった観点からは、少なくとも、図2中のハーフカット群50aの位置に、ハーフカットを設けることが好ましい。
図2の例において、ハーフカット群50aは、蓋材の中心Cに関し、開封用タブ21とは反対側の位置であって、開封用タブ21と蓋材中心Cを結ぶ仮想線に対し略直交して延在する(すなわち、矢印Aで示した開封方向に略直交して延在する)。あるいは、ハーフカット群は、シート状蓋材の中心Cを通る位置で、上記仮想線に対し略直交して延在していてもよい。
【0016】
これにより、大きな注ぎ口が確保されるとともに、ハーフカット群50aよりも開封用タブ21側に位置する蓋材の重量割合が大きくなり、重力の影響で、開口時および閉止時における保形性が高まる。
すなわち、図3に示した開封状態においては、上方へと湾曲して反っている蓋部分の割合が大きくなり、重力の影響で良好な開口状態が維持できる。また、メンを蒸らす場合においても、重力の作用により閉止状態を維持するのは容易である。
【0017】
≪シート状蓋材の積層構造≫
図4の断面図に示したように、シート状蓋材20は、表側から順に、「PLA層」、「紙層」、「PET(ポリエチレンテレフタレート)基材層」、「PE(ポリエチレン)層」、「シール層」を備える。
ハーフカット群50aは、「PET基材層」から「紙層」の途中まで形成されている。そして、ハーフカット50aを形成した後で、これを覆うように、「PE層」および「シール層」が積層される。図示していないが、ハーフカット群50bも同じである。
【0018】
「PLA層」は、積層構造中の任意の位置に存在していればよいが、図4に示したように、最上層(上表面)に配置した場合に、シート状蓋材20の保形性が最も高まると考えられる。それは、最上層のポリ乳酸層が保形性に寄与し、下位の層がそれに追随するよう作用するからである。
【0019】
≪変形例(図5)≫
ハーフカットをシート状蓋材の裏面側に入れる場合、図4の断面図に示したように、最下層のヒートシール層でハーフカットを覆う(塞ぐ)ことが好ましい。その理由は、油シミ対策である。すなわち、ハーフカットが裏面に露出していると、特に油分を含む内容物の場合、当該油分が露出したハーフカット内に侵入し、これが表面側からシミとして視認されることとなり、商品価値が低下するからである。
【0020】
しかしながら、図4のように紙層の表裏両面にフィルム層が存在すると、バブリングの問題が生じることがある。
すなわち、シールヘッドによりシート状蓋材のヒートシールを行う場合、シート状蓋材中の紙層に含まれている水分が蒸発して逃げようとする。このとき、紙層の表裏両面にフィルム層が積層されていると、水蒸気がフィルム層を押し上げて、いわゆるバブリング現象を起こし、シート状蓋材の表面に凹凸が生じる。
【0021】
図5に示した変形例では、このようなバブリングや油シミの問題を解決するために、ハーフカット群50a’をシート状蓋材20’の上表面側から入れている。ハーフカットがシート状蓋材20’の裏面側に露出することがないので、油シミを有効に防止できる。また、紙層中の水分をハーフカット群50a’から外に逃がして、バブリングの問題を低減できる。
【0022】
≪積層構造中の紙層≫
紙層としては、少なくとも表面が白色で多色印刷適性を有するものが好ましく、坪量50g/m2 〜120g/m2 程度、好ましくは75g/m2 〜100g/m2 程度の両アート紙、片アート紙あるいは両面、片面コート紙などを好適に使用することができる。この紙層が薄すぎると、ピールに際し紙層自体が破れたりあるいは、例えば着色された遮光層を設けた場合、表面から黒ずんで見えたりするので商品価値が劣ることになり、また厚過ぎるとピールした際にデッドホールド性に乏しくなる危惧がある。また、紙層に加え、ポリエチレンテレフタレートや延伸ナイロンや延伸ポリプロピレンや酸化アルミニウムや酸化珪素などの金属酸化物をセラミック蒸着したポリエチレンテレフタレート、延伸ポリプロピレンなどの強度や各種バリアー性などが優れた5〜12μmの樹脂フィルムを積層することもできる。
【0023】
≪積層構造中のシール層≫
シール層としては、例えばヒートシール性に優れる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン樹脂あるいはエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタアクリル酸共重合体(EMAA)等エチレン共重合樹脂のフィルムが好適に用いられ、さらにこれらポリオレフィン樹脂にポリスチレンやポリブデン等からなる、ポリオレフィン樹脂に対し不相溶性成分を混合したものとすることもできる。また、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/アクリル酸共重合樹脂等からなるホットメルト接着剤を塗布量15〜25g/m2 程度で設けてもよく、これらシーラント層(42)によって容器本体(10)のフランジ部(12)との十分な密封性と剥離開封性を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のカップ容器を説明する斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシート状蓋材を備えたカップ状容器を示す斜視図。
【図3】図2のカップ状容器の開口状態を示す斜視図。
【図4】図2中の4−4線断面図。
【図5】変形例を説明する図。
【符号の説明】
【0025】
10 カップ状容器
11 開口外周縁
20、20’ シート状蓋材
21 開封タブ
50a、50b、50a’ ハーフカット群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁に開封用タブ(21)を有し、カップ状容器本体(10)の開口外周縁(11)に引き剥がし可能に固定されるシート状蓋材であって、
当該シート状蓋材は、少なくとも、開口外周縁(11)に固定するためのシール層と、ポリ乳酸系フィルム層と、紙層およびフィルム層からなる基材層と、を含む積層体からなり、
上記基材層に複数のハーフカット(50a、50b、50a’)を設け、当該ハーフカットを設けた領域における蓋材強度が弱くなるよう構成したことを特徴とする、シート状蓋材。
【請求項2】
上記ハーフカットは、シート状蓋材の中心(C)を通る位置、または当該中心(C)に関して開封用タブ(21)とは反対側の位置において、開封用タブ(21)と上記中心(C)を結ぶ仮想線に対し略直交して延在していることを特徴とする、請求項1記載のシート状蓋材。
【請求項3】
上記積層体において、ポリ乳酸層系フィルム層が最上層に位置していることを特徴とする、請求項1または2記載のシート状蓋材。
【請求項4】
上記ハーフカット(50a’)がシート状蓋材の上表面から形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のシート状蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184717(P2009−184717A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28846(P2008−28846)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】