説明

包装容器用の切断刃及びそれを有する包装容器

【課題】切断刃の形状を最適化することによって、十分優れた切断性を有する切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供すること。
【解決手段】包装容器用の切断刃24は、中央エリア28とその両側に側部エリア30とを有する。中央エリア28は、歯高の高い複数の第1歯38と、それより歯高の低い複数の第2歯とを有し、第1歯の一つがV字の頂点部に配置され、他の第1歯38が頂点部の第1歯38を中心に所定の間隔で配置され、第2歯が第1歯間に配置されている。V字の頂点部に配置される第1歯38の先端部は、包装容器の所定の位置に取り付けられた状態において、包装容器の蓋体の前面壁とは逆側に曲がっている。第2歯の歯先を結ぶ直線L2は、第1歯の歯先を結ぶ直線L1と第1歯及び第2歯の歯元を結ぶ第3直線との間に位置する。側部エリア30は、複数本の側部歯31を有し、側部歯31の歯先はL2上又はL2とL3との間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコアにロール状に巻かれたラップフィルムを収容するための包装容器、及び当該包装容器に用いられる切断刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の形式のラップフィルム用包装容器が知られている。その多くは厚紙製であり、ロール状に巻かれたラップフィルムを収納する容器本体と、この容器本体に一体的に設けられた蓋体とから構成される。そして、容器から引き出されたラップフィルムは、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた鋸歯状の切断刃によって切断される。
【0003】
この種の切断刃としては、フィルムを容易に切断できるように、直線状の形状のものに代えて、切断刃の中間部が側部エリアよりも容器の底辺に近づいているV字状の形状のものが用いられている。これは、切断刃の最も突き出している部分からラップフィルムを切断し始めることで、切断を確実に且つ容易に行うための形状である。
【0004】
このような切断刃としては、一般的に、切断性及び耐久性の観点から金属製のものが用いられているが、近年の環境問題及び使用者の安全性への配慮から、紙製や樹脂製の非金属製のものが検討されている。
【0005】
このような非金属製の切断刃は、金属製の切断刃ほどの良好な切断性を発揮することは難しく、特に伸縮性に富んだポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のラップフィルムの切断には大きな力を要するため、切断性を向上することが求められている。
【0006】
かかる要求に応えるため、様々な形状の切断刃が提案されている。例えば、V字の頂点部に大きめの歯を配置することによって切断当初のラップフィルムへの歯の食い込みを容易にしたもの(例えば、特許文献1,2)等が提案されている。
【特許文献1】登録実用新案第2547868号公報
【特許文献2】実開平7−11527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、種々の歯の構成を有するV字状切断刃によるラップフィルムの切断性、切れ味及び耐久性について検討した。その結果、特許文献1及び2のような従来のV字状の切断刃は、ラップフィルムの切断性が十分ではないことが分かった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、切断刃の形状を最適化することによって、十分優れた切断性と良好な切れ味とを有する切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の切断刃は、ロール状包装物を収容する包装容器の蓋体における前面壁の裏面に取り付けられる、前記ロール状包装物を切断するための非金属製のV字状の切断刃において、
(a)V字の頂点部を含む中央エリアと、前記中央エリアの両側に配置される側部エリアとを備え、
(b)前記中央エリアは、それぞれ同一歯高である複数本の第1歯と、前記第1歯よりも歯高が低くそれぞれ同一歯高である複数本の第2歯とを有し、
(c)前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、前記第1歯の他のものが前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
(e)前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線が、前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線と前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線との間に位置しており、
(f)当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、前記頂点部に配置される第1歯の先端部が、前記蓋体の前面壁とは逆側に曲がっており
(g)前記側部エリアは、複数本の側部歯を有し、前記側部歯の歯先が、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線の間に位置している
ことを特徴としている。
【0010】
切断刃に上述の構成の中央エリアを設けることで、包装容器に取り付けられて媒体であるラップフィルム等を切断する際に、切断が中央エリアによる切断当初の「突き刺し」段階と、その後の側部エリアによる「切り開き」段階の2段階に分割される。更には、「突き刺し」段階は、歯高の最も高い第1歯による突き刺し工程と、第1歯より歯高の低い第2歯による突き刺し工程の2工程に分割される。切断当初、ラップフィルムに接する歯は第1歯のみであるため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。また、第1歯のみでは第1歯間の谷部の抵抗によりラップフィルムの突き刺しに力を要することとなるが、第1歯で突き刺した後には第2歯がラップフィルムを貫くことで、円滑にラップフィルムを突き刺すことが可能となる。また、第1歯のみでは第1歯間の谷部(歯元)の抵抗によりラップフィルムの突き刺しに力を要することとなるが、第1歯で突き刺した後には第2歯がラップフィルムを貫くことで、ラップフィルムの切断当初における「突き刺し」段階を一層容易にすることができる。また、本発明の切断刃のV字の頂点部に配置される第1歯の先端部は、蓋体の前面壁側とは逆側に突出するように曲がっている。この先端部の歯先方向を切断するラップフィルムに向かうようにして、切断刃を包装容器の蓋体に取り付けることによって、ラップフィルムの当初の突き刺しを一層容易にすることができる。
【0011】
そして、一旦、「突き刺し」段階において、ラップフィルムの中央部分に突き刺し部が形成されたならば、その後のラップフィルムの切り開きに大きな力は不要であり、側部エリアにおいてラップフィルムは円滑に切り開かれてラップフィルムは切断される。なお、各歯の歯高は、隣り合う歯によって形成された溝の底部、すなわち歯元の複数を結ぶ第3直線と、当該歯の歯先との最短距離として測定することができる。
【0012】
本発明の切断刃は、包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、中央エリアに配置される第1歯の先端部及び第2歯の先端部が、蓋体の前面壁とは逆側に曲がっていることが好ましい。
【0013】
このように、中央エリアに先端部が突出した第1歯及び第2歯を有する切断刃は、蓋体の前面壁側とは逆側に先端部が突出していない平刃よりも厚み方向の剛性が高い。このため、切断刃が変形し難くなり、ラップフィルムの切断時に、切断刃が包装容器本体の前面壁から浮いてしまうことを抑制することができる。したがって、切断時にラップフィルムが滑らずに歯先で突き刺すことが可能となる。また、側部エリアに設けられる比較的歯高の低い側部歯によって「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を容易にすることができる。
【0014】
本発明の切断刃は、当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、上記前面壁の裏面に接する側の当該切断刃の面(以下、「主面」という。)に垂直で且つ第1歯の先端部の歯先又は第2歯の先端部の歯先を含む縦断面における先端部の歯先方向が蓋体の前面壁に対して所定の角度θをなしており、その角度θが10〜40°であることが好ましい。
【0015】
切断刃の第1歯及び第2歯の先端部が、上述の角度で曲がっていることにより、包装容器に取り付けられてラップフィルムを切断する際に、切断当初のラップフィルムの突き刺しを一層容易にすることができる。また、上記角度で先端部が曲がっている歯を有する切断刃は、厚み方向の剛性が高く、また、十分な耐久性を有している。したがって、ラップフィルムの切断性に一層優れるとともに、良好な切れ味を有する。
【0016】
本発明の切断刃は、当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、当該切断刃の面(主面)に垂直で且つ第1歯の先端部の歯先又は第2歯の先端部の歯先を含む縦断面における、先端部の突出高さに対する主面に平行な方向の先端部の長さの比率が1.2〜7であることが好ましい。
【0017】
このような切断刃は、優れた切断性と良好な切れ味と耐久性の全てを一層高水準で達成することができる。
【0018】
また、側部エリアは、交互に配置された歯高の異なる大小2種の側部歯を有することが好ましい。
【0019】
このように側部エリアに歯高の異なる大小2種の側部歯を交互に配置することによって、「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行時及び「切り開き」段階において、同時にラップフィルムと接する側部歯の本数を少なくすることができる。したがって、歯高が単一の複数の側部歯を備える場合よりも「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行がより円滑化されるとともに、より小さい力でラップフィルムを切り開き切断することが可能となる。
【0020】
また、側部歯の先端部が、蓋体の前面壁とは逆側に曲がっていることが好ましい。
【0021】
このように、中央エリアに属する大歯及び中歯だけでなく、側部エリアに属する側部歯の先端部も、蓋体の前面壁とは逆側に突出するように曲がっている切断刃であれば、ラップフィルムの「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を一層円滑にすることができる。また、このように側部エリアの側部歯の先端部も蓋体の前面壁側とは逆側に突出するような側部歯を有する切断刃は、厚み方向の剛性に一層優れる。このため、ラップフィルムの切断時において、切断刃が変形し難くなり、切断刃が包装容器の前面壁から浮いてしまうのを十分に抑制することができる。したがって、ラップフィルムの切断性をより一層向上することができる。
【0022】
また、本発明の切断刃は、側部エリアの外側における端部に、側部エリアの側部歯よりも歯高の高い端部歯を有する端部エリアをさらに備えていることが好ましい。
【0023】
このように側部エリアの外側における切断刃の端部に側部エリアの側部歯よりも歯高の高い歯を配置することによって、ラップフィルムの切断を、ラップフィルムの中央部からではなくラップフィルムの端から開始する場合にも、ラップフィルムの切断が「突き刺し」段階と「切り開き」段階との2段階に分割される。切断当初、ラップフィルムに接する歯は側部エリアの外側の端部エリアに配置される歯高の高い端部歯のみであるため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。したがって、ラップフィルムの切断をラップフィルムの端部から開始する場合及びラップフィルムの中央部から開始する場合の双方において、ラップフィルムを容易に切断することができる。
【0024】
また、第1歯、第2歯、側部歯及び端部歯の少なくとも一つにおける斜辺を、内側に凹んだ円弧状とすること、すなわち歯の形状をいわゆる銀杏の葉の形状とすることが好適である。
【0025】
かかる形状にすれば、切断性を確保するため歯先角度を鋭角にしつつ、歯間ピッチを広げることが可能となる。これにより、一定の長さでの歯の本数を増やさずに済み、ラップフィルムの突き刺しに要する力が大きくなるのを抑制することができる。また、末端ほど幅が広くなるため、歯の耐久性向上の効果も得られる。
【0026】
本発明ではまた、ロール状包装物を収容する容器本体と、容器本体の前面壁の一部を覆うように、容器本体と一体的に設けられる蓋体と、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられる上記切断刃とを備える包装容器を提供する。
【0027】
この包装容器は、上述の特徴を有する切断刃を備えるため、媒体であるラップフィルム等の切断性に十分に優れるとともに、良好な切れ味と十分な耐久性とを兼ね備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、切断刃の形状を最適化することによって、十分優れた切断性と良好な切れ味とを兼ね備えた切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。この包装容器10は、1枚の厚紙、好ましくはコートボール紙から作られている。図1に示すように、包装容器10は、円筒状の紙管12にロール状に巻き付けられたラップフィルム14を収納するための容器本体16と、この容器本体16に一体的に設けられた蓋体18とから構成されている。閉蓋時、この包装容器10の全体形状は略直方体形状をなす。なお、本実施形態では、ラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとする。
【0030】
容器本体16の上部は、ラップフィルム14を引き出すための開口部として開放されている。また、蓋体18は、容器本体16の後面壁の頂縁20から連続して延びている。従って、蓋体18は容器本体16に対して回動可能であり、容器本体16の開口部と容器本体の前面壁27の一部とを覆うことができるように構成されている。
【0031】
蓋体18の前面壁22の先端縁はV字状をなし、その形状に合わせて切断刃24もV字状のものが用いられている。このようなV字状の切断刃24を採用した包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合、図1に示す如く、一方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、他方の手で包装容器10を握ると共にその手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。これにより、V字状切断刃24の中央エリアにある歯がラップフィルム14を貫き、そのままラップフィルム14を引くと、ラップフィルム14は切り開かれて切断される。
【0032】
次に、本実施形態に係る切断刃24について更に詳細に説明する。
【0033】
図2は、本発明の好適な実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。切断刃24の主成分はポリエステル樹脂である。このような切断刃24は、ポリエステル樹脂を含有する通常のシートにプレス加工やレーザ切削法を施して本発明の形状の歯に成形して得ることができる。
【0034】
本実施形態に係る切断刃24は、V字の頂点を通る中心線(図2の符号CL)を中心として左右対称となっており、中央エリア28と、その両側に位置する側部エリア30とに区分されている。
【0035】
側部エリア30における歯(側部歯)31は一定の寸法であり、従来一般に用いられている歯と同程度の比較的小さなものが用いられている。以下、この寸法の歯を「小歯」と称する。
【0036】
本実施形態に係る中央エリア28は、図2に明示するように、15本の歯35,36,38から構成される。中央エリア28における歯は、側部エリア30の側部歯31と同じ寸法の小歯35、小歯35よりも歯高の高い歯(第2歯:以下「中歯」と称する)36、及び、中歯36よりも更に歯高の高い歯(第1歯:以下「大歯」と称する)38の3種類となっている。なお、以下の説明では、中歯及び大歯の参照符号36,38に、適宜、アルファベットの添え字を付す。
【0037】
大歯38の1本(38a)は、切断刃24のV字の頂点部(中央エリア28の長手方向中心)に位置し、他の大歯38b,38cは中央の大歯38aを中心にして左右に2本ずつ、一定の間隔で配置されている。中央の第1番目の大歯38aの歯先と、左右各側にある第2番目と第3番目の大歯38b,38cの歯先とは、直線で結ぶことができ、左右各側のこの直線(第1直線)L1は、中央エリア28の左右各側にある中歯36の歯先よりも前側(図1の蓋体前面壁22の先端縁から離れる側)に位置している。
【0038】
また、中央エリア28における中歯36は、左右各側に4本ずつ、計8本、配置されている。中央側の4本の中歯36a,36bは大歯38a,38b,38c間に一定の間隔で配置されており、同間隔で他の4本の中歯36c,36dが第3番目の大歯38cの外側に配置されている。左右各側の中歯36a、36b、36c及び36dの歯先は直線(第2直線)L2で結ぶことができ、左右各側のこの直線L2は、前記直線L1及び歯元を結ぶ第3直線(L3)と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L2は、直線L1と直線L3との間に位置している。
【0039】
また、左右各側の側部エリア30における側部歯31の歯先を結ぶ直線(第4直線)L4は、同側の直線L1、L2及びL3と実質的に平行であり、且つ、当該直線L1及びL2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、左右各側の直線L4は、直線L2とL3との間に位置している。
【0040】
更に、中央エリア28の小歯35は、左右各側において、第3番目と第4番目の中歯36c,36dの間に配置されており、その歯先は、側部エリア30の側部歯31の歯先を結ぶ直線L4の延長線上に位置している。
【0041】
本実施形態にかかる切断刃24において、小歯35、中歯36、大歯38、側部歯31のそれぞれの歯先角度αは、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯31〜38自体の耐久性を損なうからである。
【0042】
また、小歯35、中歯36、大歯38、側部歯31のそれぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、本実施形態では、斜辺が内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度αを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、二等辺三角形よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、後述するが、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0043】
図3は、図2におけるI−I線に沿った断面構成を説明するための図である。すなわち、図3は、大歯38cの歯先を含む切断刃24の縦断面図である。切断刃24及び大歯38cは、所定の厚さDを有している。大歯38cは、大歯38cの先端部3、及び該先端部3と一体的に形成される本体部5とを有する。大歯38cの先端部3は、大歯38cの本体部5から、切断刃24の厚さ方向(図3の下方向)に突出するように曲がっている。
【0044】
図3において、大歯38cの先端部3は、大歯38cの本体部5に対して所定の角度θをなすようにして一体的に形成されている。大歯38cの先端部3は、図3の断面における主面24aに平行な方向に所定の長さCを有する。また、先端部3は、切断刃24の厚さ方向に、本体部5からの最大突出高さBが所定の値になるように突出している。中央エリア28に属する他の大歯38a,38b,38d及び中歯36a,36b,36cも、図3の大歯38cと同様の断面構造を有している。このように、本実施形態の切断刃24は、大歯38及び中歯36が所謂鷲歯状に曲がっている。
【0045】
切断刃24は、閉蓋状態において、蓋体18(図1)によって覆われる容器本体の前面壁27に向かって、大歯38及び中歯36の歯先が突出するように、蓋体18の前面壁22の裏面に取り付けられる。このため、切断刃24の大歯38及び中歯36により、ラップフィルム14を容易に突き刺すことができる。
【0046】
また、切断刃24の中央エリア28に属する大歯38及び中歯36が、図3のような断面構造を有する切断刃24は、平板状の切断刃に比べて、厚み方向の剛性に優れている。したがって、ラップフィルムの切断時において、切断刃24がその厚み方向に変形し難くなり、ラップフィルムの切断性を一層向上させることができる。
【0047】
次に、本実施形態にかかる切断刃24を有する包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する場合について説明する。
【0048】
まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。
【0049】
この際、最初に切断刃24の頂点部にある第1番目の大歯38aがラップフィルム14に接触し、これを突き刺す。また、ほぼ同時に、第2番目の大歯38b、更には第3番目の大歯38cがラップフィルム14に接し、これを突き刺す。このように、最初にラップフィルム14に接するのは、歯間ピッチの大きな最大5本の大歯38のみであるため、切断当初に包装容器10をひねる力は小さなものですむ。すなわち、各大歯38がラップフィルム14を突き刺すために必要な最小限の力は一定であるため、その力の約5倍のみの力が包装容器10をひねる最小の力となる。従来の如く、歯先角度を小さくし、歯間ピッチを小さくしたものでは、ラップフィルム14に接する歯の本数が多数となるため、包装容器10に加える力は必然的に大きなものとなり、使用のフィーリングも損なうものであったが、本実施形態ではそのような問題はない。
【0050】
図4は、切断刃24の主面に垂直で大歯38又は小歯36の歯先を含む、図1の包装容器10の縦断面図である。蓋体の前面壁22の裏面23に取り付けられた切断刃24の大歯は、その先端部3の歯先が図4に示すように容器本体の前面壁27に向かうような断面構造を有している。このため、ラップフィルム14の切断開始時における、ラップフィルム14と大歯の先端部3の歯先方向とのなす角度γを、10〜40°とすることができる。したがって、ラップフィルム14と切断刃24(大歯38)の歯先とを点で接触させることができ、ラップフィルム14に大歯38を容易に突き刺すことが可能となる。なお、上記角度γが10°未満の場合、ラップフィルム14の突き刺し時における大歯38とラップフィルム14との接触面積が大きくなるため、良好な切断性が損なわれる傾向がある。一方、上記角度γが40°を超える場合、大歯38の歯先や大歯38及び中歯36の歯先や歯元がラップフィルム14に引っ掛かるために、良好な切れ味が損なわれる傾向がある。
【0051】
続いて、ラップフィルム14には中歯36が接し、これらの中歯36によりラップフィルム14が貫かれる。ここで、仮に中歯36がないと仮定すると、大歯38間のピッチが広いため、歯38間の谷部が抵抗となってラップフィルム14の切り開きに大きな力を要することになる。しかしながら、本実施形態では、大歯38によるラップフィルム14の突き刺しに引き続いて中歯36が大歯38間のラップフィルム14を貫くことになるため、ラップフィルム14の突き刺しが円滑化される。なお、ラップフィルム14に同時に接する中歯36の数は最大8本であるが、実際に同時にラップフィルム14に接する中歯36の数は8本よりも少なく、また大歯38によってもラップフィルム14の突き刺しが行われて周辺部が脆弱化しているため、中歯36による突き刺しに要する力は大歯38による突き刺し時に比して更に小さなものとなる。このようにして、大歯38による第1段階の切断から中歯による第2段階の切断も、使用者に抵抗感を与えることなく、円滑に行われることとなる。
【0052】
なお、中歯36も、大歯38と同様に、その先端部が、蓋体の前面壁22とは逆側に曲がっている。すなわち、中歯36の先端部は、切断刃24の厚さ方向に突出するように曲がっている。このような中歯36は、その歯先が図4に示すように容器本体の前面壁27に向かって突出するように曲がっている断面構造を有しているため、歯先が厚さ方向に突出するように曲がっていない従来の平板状の切断刃に比べて、ラップフィルム14を容易に突き刺すことができる。
【0053】
更に、包装容器10を矢印A方向にひねると、中央エリア28の小歯35が、第3番目と第4番目の中歯36c,36d間のラップフィルム14を突き刺し、ラップフィルム14の切り開きが側部エリア30へと進んでいく。ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、側部歯31からなる側部エリア30においても円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0054】
本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、ラップフィルム14を切断する際、格別に大きな力は必要なく、これは、各歯31,35,36,38の歯先角度αを過度に小さくする必要性を減らすものであり、ひいては各歯31,35,36,38の耐久性を向上させることにもなる。
【0055】
また、切断刃24は、所定の厚さDを有しつつ、容器本体の前面壁27に向かって突出するように曲がっている先端部を有する大歯38及び中歯36を備えているため、切断刃24の厚さ方向に高い剛性を有する。包装容器10をA方向に回してラップフィルム14を切断する際に、蓋体18の前面壁22を容器本体の前面壁27から引き離そうとする力、すなわち切断刃24に厚さ方向(図3の上方向)への力が加えられるが、切断刃24は厚さ方向に高い剛性を有するため容易に変形しない。このため、切断刃24が容器本体の前面壁27から浮き上がるのを抑制することができる。したがって、ラップフィルム14の突き刺し及び切り開きを一層容易にすることができ、切断時の切れ味を良好にすることができる。
【0056】
切断歯24の厚さは、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましく、0.15〜0.28mmであることがさらに好ましい。切断刃の厚さが大きくなり過ぎると十分良好な切断性が得られない傾向があり、切断刃の厚みが小さくなり過ぎると良好な切れ味が損なわれる傾向がある。切断刃の厚さを0.15〜0.28mmとすることによって、良好な切断性と良好な切れ味とを一層高水準で両立できる切断刃を得ることができる。また、大歯38及び中歯36の先端部3は、本体部5(図3)と同等の厚さを有することが好ましい。
【0057】
なお、大歯38及び中歯36の歯高を過度に大きくした場合、切断刃24の固定部からの距離、すなわち蓋体前面壁22の先端縁からの距離が長くなり、耐久性が損なわれる恐れがある。また、歯高が大きければ、包装容器10を使用する者の手を傷つける恐れもある。このため、切断性、耐久性及び安全性の面から、例えば、中央エリア28の大歯38の歯高H1は、好ましくは1.0〜4.0mm、より好ましくは1.2〜3.5mm、さらに好ましくは1.5〜3.0mm、中歯36の歯高H2は、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.2〜2.5mm、小歯35の歯高H3は、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mmとするのがよい。
【0058】
また、中央エリア28の歯間ピッチは、大歯38間が好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mm、中歯36間も好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは4.0〜7.0mm、さらに好ましくは4.5〜6.0mmとするのがよい。歯間ピッチが9.0mmを超えた場合には、ラップフィルム14の第1段階の突き刺しにおいて大歯38間の谷部(歯元)にフィルム14が引っかかって切断に支障が生じ、歯間ピッチが3.0mmよりも狭い場合には、中央エリア28に設けられる歯の本数が増加し、その結果突き刺しに必要な力が大きくなり本発明の目的を達成できないからである。
【0059】
大歯38及び中歯36の先端の曲率半径は、60〜100μmであることが好ましい。このような大歯38及び中歯36を有する切断刃24は、十分優れた切断性を有するとともに十分優れた耐久性を有する。
【0060】
大歯38及び中歯36の先端部3の長さC(図3)は、0.05〜1.0mmであることが好ましく、0.05〜0.4mmであることがより好ましい。また、大歯38及び中歯36の先端部3の最大突出高さBは、0.02〜0.2mmであることが好ましく、0.02〜0.1mmであることがより好ましい。先端部3の最大突出高さBに対する長さCの比率(C/B)は、1.2〜7であることが好ましく、2〜6であることがより好ましい。該比率が2〜6である先端部3を有する大歯38及び中歯36を備える切断刃24は、ラップフィルムの切断性に特に優れており、また良好な耐久性を有する。
【0061】
また、中央エリア28の大歯38及び中歯36の本体部5と先端部3とのなす角度θ(図3)は、10〜40°であることが好ましく、10〜20°であることがより好ましい。当該角度θが10〜20°である大歯38及び中歯36を備える切断刃24は、ラップフィルムの切断性に特に優れており、また良好な耐久性を有する。
【0062】
側部エリア30の側部歯31の歯高H3は、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mm程度とするのがよい。また、側部歯31の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.2mm、より好ましくは1.2〜2.5mmとするのがよい。
【0063】
次に、本実施形態に係る切断歯の製造方法について以下に説明する。図5は、本実施形態に係る包装容器の製造方法を模式的に示す工程断面図である。刃材60は、包装容器の蓋体18における前面壁22の裏面23に取り付けられる切断刃24の材料である。刃材60としては、樹脂層、接着層、シーラント材が順次積層された市販の積層シートを用いることができる。
【0064】
刃材60に用いられる積層シートの樹脂層は、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)等を主成分とすることが好ましい。このうち、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。これによって、ラップフィルムの「突き刺し」及び「切り開き」の進行を一層円滑にすることができ、また、切断刃の耐久性を一層優れたものとすることができる。なお、ポリエステル樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリ乳酸樹脂が特に好ましい。
【0065】
樹脂層は、上述の樹脂成分にそれ以外の成分を添加した組成物を用いて形成することができる。樹脂成分以外の成分としては、特許第3573605号に開示される無機充填剤の他、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、離型剤、顔料、染料等を含有する。無機充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルク等の無機粉体を用いることができる。
【0066】
ただし、十分に優れた切断性と耐久性とを両立させる観点から、樹脂層全体に対して、ポリエステル樹脂の含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0067】
接着層はポリウレタン系の接着剤から形成される。また、シーラント材としては変性ポリエチレン樹脂を用いることができる。変性ポリエチレン樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレン樹脂を主成分とするアイオノマー等が挙げられる。これらのうち、特にエチレンメタクリル酸共重合体が好ましい。
【0068】
刃材60の厚さは、0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましく、0.15〜0.28mmであることがより好ましい。このようなシート状の刃材60を、下金型70及び上金型72で打ち抜き加工することにより、切断刃24が形成される。
【0069】
本実施形態の切断刃24の形成に用いられる上金型72には、中央エリア28の大歯38及び中歯36の打ち抜きを行う加工部分78の刃先端に、切断刃24の先端部と相補的な形状の傾斜部が形成されている。これによって、打ち抜き加工を行なった際、大歯38及び中歯36の先端部が切断刃24の厚さ方向に突出するように形成される。
【0070】
下金型70及び上金型72で刃材60を打ち抜いて切断刃24を形成する際、超音波発振器76を用いて包装容器の蓋体18の前面壁22から超音波を照射することによって、当該切断刃24を、前面壁の裏面23に接着することができる(超音波接着法)。なお、刃材60として、上述のような、樹脂層、接着層、シーラント材が順次積層された積層シートを用いる場合、シーラント材が前面壁の裏面23に接着するようにして、切断刃24を前面壁の裏面23に固定することができる。このように、シーラント材によって包装容器の蓋体18に接着された切断刃24は、十分な接着力によって包装容器の蓋体における前面壁の裏面に固定されるため、包装容器の蓋体から容易に剥離しない。
【0071】
以上の製造方法によって、切断刃24を包装容器の蓋体における前面壁の裏面23に備える包装容器10を製造することができる。なお、包装容器の蓋体における前面壁の裏面に切断刃を取り付ける方法は、公知のコールドグルー法、又は感圧接着剤法等であってもよい。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0073】
例えば、図6は、本発明の別の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。本実施形態にかかる切断刃24は、中央エリア28とその両側に位置する側部エリア30とから構成されており、中央エリア28に、上記実施形態と同様の歯の構成を有する。ただし、本実施形態にかかる切断刃24は、側部エリア30に歯高の異なる大小2種の側部歯を備えている点で、上記実施形態にかかる切断刃24と異なっている。
【0074】
図6の切断刃の側部エリア30には、長手方向に歯高の異なる大小2種の側部1歯31,側部2歯32が交互に設けられている。側部2歯32は、側部1歯31よりも歯高が高く、中央エリア28の中歯36と同等の歯高を有する。このため、中央エリア28の中歯36の歯先を結ぶ直線L2が、側部エリア30の側部歯32の歯先を通っている。また、中央エリア28の小歯35の歯先と側部エリア30の側部1歯31の歯先とを結ぶ直線L4は、中央エリア28の大歯38の歯先を結ぶ直線L1、中央エリア28の中歯36を結ぶ直線L2、及び歯元を結ぶ直線L3と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1及びL2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L4は、直線L2と直線L3との間に位置している。なお、図6の側部エリアには、4本の側部歯しか示されていないが、実際は側部歯31,32が交互に切断刃24の端まで設けられている。また、当該切断刃24は他方の側部エリア30にも対称に同様の歯の構成を備えている。
【0075】
本実施形態にかかる切断刃24において、側部歯31,32のそれぞれの歯先角度は、大歯38及び中歯36と同等の歯先角度である。また、側部歯31,32のそれぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、大歯38及び中歯36と同様に、斜辺が内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度を、鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、二等辺三角形よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0076】
図6に示すような、側部エリアに歯高が互いに異なる大小二種の側部歯(側部歯31、32)を備える本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行時及び「切り開き」段階の進行時に、ラップフィルム14に同時に接する側部歯の本数が少なくなるため、突き刺し段階から切り開き段階の移行に要する力、及び切り開き段階の進行に要する力を一層小さくすることができる。
【0077】
側部エリア30の側部1歯31の歯高H3は、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mmとするのがよい。また、側部2歯32の歯高H2は、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.2〜2.5mmとするのがよい。側部1歯31及び側歯2歯32の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.5〜2.5mmとするのがよい。
【0078】
図7は、本発明のさらに別の実施形態にかかる切断刃の片側の側部エリア及び端部エリアの一部拡大図である。図7の切断刃24は、中央エリア及び側部エリアに上記実施形態、すなわち図6と同様の歯の構成を有する。ただし、本実施形態の切断刃24は、側部エリア30の外側(中央エリア側とは反対側)に、端部歯40を有する端部エリア29を備える点で上記実施形態の切断刃と異なっている。なお、本実施形態の切断刃24は他方の端部エリアにも図7と同様の歯の構成を備える。
【0079】
本実施形態の切断刃24の端部エリア29に備えられる端部歯40は、側部エリア30に属する側部1歯31及び側歯2歯32よりも高い歯高を有する。端部歯40の歯先を結ぶ直線L5は、中央エリアの大歯を結ぶ直線L1と中央エリアの中歯を結ぶ直線L2との間に位置している。このように、側部エリアの側部歯よりも歯高の高い端部歯40を備えることにより、切断刃24の一方の端部からラップフィルムの切断を開始する場合でも、ラップフィルムを容易に切断することができる。すなわち、ラップフィルムを切断刃の頂点部及び切断刃の端部のどちらから開始しても、ラップフィルムを容易に切断することができ、切断時のフィーリングも良好である。
【0080】
端部歯40の歯高H4は、好ましくは0.8〜3.5mm、より好ましくは0.9〜2.0mm、さらに好ましくは1.0〜1.5mmとするのがよい。また、端部歯40の歯間ピッチは、好ましくは0.5〜3.5mm、より好ましくは0.7〜2.5mmとするのがよい。
【0081】
なお、上記実施形態では、側部エリア29に同一歯高の端部歯40のみを配置したが、側部エリア30と同様に、歯高の異なる端部歯を例えば交互に設けてもよい。また、端部エリアには、側部歯よりも歯高の高い端部歯と側部歯よりも歯高の低い歯とを設けてもよい。
【0082】
上述の各実施形態では、ロール状包装物であるラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとしているが、他の樹脂からなるラップフィルムであっても本発明を適用することができる。かかる場合、歯高、歯間ピッチ、歯先角度等は上記寸法から適宜変更され得る。また、ロール状包装物はラップフィルムのみならず、アルミフォイルや紙であってもよい。
【0083】
また、中央エリアを構成する歯の本数は、上記の各実施形態より多くても或いは少なくてもよいが、ラップフィルムが2段階以上で歯に接するように構成することが必須条件となる。なお、上記の各実施形態では、中央エリアに属する全ての大歯の先端部及び全ての中歯の先端部の歯先方向が容器本体の前面壁に向かうように突出していたが、V字の頂点部に配置される大歯の先端部の歯先方向のみが容器本体の前面壁に向かうように突出している切断刃でも本発明の効果を得ることができる。また、中央エリアに属する大歯及び中歯の先端部のみではなく、側部エリアに属する側部歯や端部エリアに属する端部歯の先端部の歯先方向も、中央エリアの大歯及び中歯の先端部と同様に、容器本体の前面壁に向かうように突出していてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例、比較例及び参考例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
市販のポリエチレンテレフタレート樹脂シート(二軸延伸(結晶性)、厚み:250μm)を用いて、V字状の切断刃を作製した。この切断刃は、図6に示すように、中央エリア28と該中央エリアのその両外側に隣接して設けられる側部エリア30とを備える。具体的には、中央エリア28に大歯38を5本、中歯36を8本、小歯35を2本有し、側部エリア30に側部1歯31を37本、側部2歯32を38本有する。なお、大歯38の歯高は1.7mm、中歯36の歯高は1.2mm、小歯35の歯高は0.8mm、側部1歯31の歯高は0.8mm、側部2歯32の歯高は1.2mmである。
【0086】
また、この切断刃の中央エリア28にある大歯38及び中歯36は、図3に示すように、それぞれの先端部3が、切断刃の厚さ方向に突出するように曲がっている。大歯38及び中歯36のそれぞれの先端部3の主面24aに平行な方向の長さCは0.30mmであり、先端部3の最大突出高さBは0.08mmである。また、図3に示すような切断刃24の断面において、大歯38及び中歯36それぞれにおける先端部3と本体部5とのなす角度θは15°である。
【0087】
このような切断刃を、株式会社クレハにより製造、販売されている登録商標「NEWクレラップ」に使用されている包装容器(長さ約31cm、幅4.5cm、高さ4.5cmのコートボール紙製の容器)に接着し、図1に示すようなポリ塩化ビニリデン製のラップフィルムを有する包装容器を作製した。切断刃の中央エリア28にある大歯38及び中歯36の歯先は、蓋体の前面壁22とは逆側に曲がっており、主面24cに垂直で大歯38又は中歯36の歯先を含む縦断面における、大歯38又は中歯36の歯先方向と蓋体の前面壁22とのなす角度は15°であった。また、閉蓋状態における、切断刃の大歯及び中歯の先端部3の歯先方向と容器本体の前面壁とのなす角度γ(図4)は、15°であった。
【0088】
(実施例2,3)
実施例1と同一の形状(同一断面形状)を有する切断刃を作製し、実施例1と同様にして包装容器を作製した。
【0089】
(比較例1,2)
市販のポリエチレンテレフタレート樹脂シート(二軸延伸(結晶性)、厚み:250μm)を用いて、V字状の切断刃を作製した。この切断刃は、図6に示すような中央エリア28、及びその両外側に隣接する側部エリア30を備える。具体的には、中央エリア28に大歯38を5本、中歯36を8本、小歯35を2本有し、側部エリア30に側部1歯31を37本、側部2歯32を38本有する。なお、大歯38の歯高は1.7mm、中歯36の歯高は1.2mm、小歯35の歯高は0.8mm、側部1歯31の歯高は0.8mm、側部2歯32の歯高は1.2mmである。
【0090】
なお、これらの切断刃の断面形状は、従来の切断刃と同様に平板状であり、各歯の歯先はいずれも切断刃の厚み方向に曲がっていない。
【0091】
このような切断刃を、株式会社クレハにより製造、販売されている登録商標「NEWクレラップ」に使用されている包装容器(長さ約31cm、幅4.5cm、高さ4.5cmのコートボール紙製の容器)にそれぞれ接着し、図1に示すようなポリ塩化ビニリデン製のラップフィルムを有する包装容器をそれぞれ作製した。閉蓋状態における、切断刃の大歯及び中歯の先端部3の歯先方向と容器本体の前面壁とのなす角度γ(図4)は、0°であった。
【0092】
<切断性試験1>
上述の通り作製した実施例1〜3、及び比較例1,2の包装容器を引張り試験機にセットし、該包装容器から引き出したポリ塩化ビニリデン製のラップフィルムを、蓋体の前面壁に対して60°の一定角度で引っ張って切断する引張り試験を実施した。この引張り試験において最初に検出されたピークから切断力(g)を求めた。
【0093】
【表1】

【0094】
<切断性試験2>
実施例1及び比較例1で作製した包装容器を用いて、ラップフィルムを通常の方法で切断し、切断後のラップフィルムの切断形状を目視にて観察した。図8(a)は、実施例1の包装容器によって切断したラップフィルムの切断形状を模式的に示す図である。図8(b)は、比較例1の包装容器によってラップフィルムの切断形状を模式的に示す図である。
【0095】
実施例1の包装容器によって切断したラップフィルムの切断形状は、切断刃と同等の形状を有していた。したがって、実施例1の包装容器は、十分良好な切れ味を有している。
【0096】
一方、比較例1の包装容器によって切断したラップフィルムの切断形状は、切断刃と同等の形状とはなっていなかった。図8(b)の切断形状から、切断時にラップフィルムが伸びていることが分かる。この破断形状が示すように、比較例1の包装容器の切断性はあまり良くなかった。
【0097】
<耐久性試験>
実施例1及び比較例1の包装容器を用いて耐久性試験を行なった。具体的には、上述の切断性試験1を300回繰り返し行った後の切断力を、上述の切断性試験1と同様にして測定した。測定は5回繰り返して行い、平均値を求めた。測定結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
耐久性試験の結果、実施例1の方が、比較例1よりも良好な耐久性を有することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の好適な実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。
【図3】図2におけるI−I線に沿った断面構成を説明するための図である。
【図4】切断刃24の主面に垂直で大歯38又は小歯36の歯先を含む、図1の包装容器10の縦断面図である。
【図5】本実施形態に係る包装容器の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態にかかる切断刃の中央部の拡大図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態にかかる切断刃の片側の側部エリア及び端部エリアの一部拡大図である。
【図8】切断したラップフィルムの切断形状を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0101】
3…先端部、5…本体部、10…包装容器、12…紙管、14…ラップフィルム、16…容器本体、18…蓋体、20…容器本体の後面壁の頂縁、22…蓋体の前面壁、23…裏面、24…切断刃、24a…主面、26…容器本体の前面壁の底辺、27…容器本体の前面壁、28…中央エリア、29…端部エリア、30…側部エリア、31…側部1歯(側部歯)、32…側部2歯(側部歯)、35…小歯、36…中歯(第2歯)、38…大歯(第1歯)、40…端部歯、60…刃材、70…下金型、72…上金型、76…超音波発振器、78…加工部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状包装物を収容する包装容器の蓋体における前面壁の裏面に取り付けられる、前記ロール状包装物を切断するための非金属製のV字状の切断刃において、
V字の頂点部を含む中央エリアと、前記中央エリアの両側に配置される側部エリアとを備え、
前記中央エリアは、
それぞれ同一歯高である複数本の第1歯と、前記第1歯よりも歯高が低くそれぞれ同一歯高である複数本の第2歯とを有し、
前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、前記第1歯の他のものが前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線が、前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線と前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線との間に位置しており、
当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、前記頂点部に配置される第1歯の先端部が、前記蓋体の前面壁とは逆側に曲がっており、
前記側部エリアは、
複数本の側部歯を有し、前記側部歯の歯先が、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線の間に位置していることを特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項2】
当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、前記中央エリアに配置される前記第1歯の先端部及び前記第2歯の先端部が、前記蓋体の前面壁とは逆側に曲がっていることを特徴とする請求項1記載の包装容器用の切断刃。
【請求項3】
当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、前記前面壁の裏面に接する側の当該切断刃の面に垂直で且つ前記第1歯の先端部の歯先又は前記第2歯の先端部の歯先を含む縦断面における前記先端部の歯先方向が、前記蓋体の前面壁に対して所定の角度θをなしており、
前記角度θが10〜40°であることを特徴とする請求項2記載の包装容器用の切断刃。
【請求項4】
当該切断刃が前記包装容器の所定位置に取り付けられた状態において、当該切断刃の前記面に垂直で且つ前記第1歯の先端部の歯先又は前記第2歯の先端部の歯先を含む縦断面における、前記先端部の突出高さに対する当該切断刃の前記面に平行な方向の前記先端部の長さの比率が1.2〜7であることを特徴とする請求項2又は3記載の包装容器用の切断刃。
【請求項5】
前記側部エリアは、交互に配置された歯高の異なる大小2種の側部歯を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項6】
前記側部歯の先端部が、前記蓋体の前面壁とは逆側に曲がっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項7】
前記側部エリアの外側における前記切断刃の端部に、前記側部エリアの前記側部歯よりも歯高の高い端部歯を有する端部エリアをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項8】
前記第1歯、前記第2歯及び前記側部歯の少なくとも一つにおける斜辺が内側に凹んだ円弧状となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項9】
前記第1歯、前記第2歯、前記側部歯及び前記端部歯の少なくとも一つにおける斜辺が内側に凹んだ円弧状となっていることを特徴とする請求項7記載の包装容器用の切断刃。
【請求項10】
ロール状包装物を収容する容器本体と、前記容器本体の前面壁の一部を覆うように、前記容器本体と一体的に設けられる蓋体と、前記蓋体の前面壁の裏面に取り付けられる請求項1〜9のいずれか1項に記載の切断刃と、を備える包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−126570(P2009−126570A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306241(P2007−306241)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】