説明

包装用ケース

【課題】所定形状のシートを折り曲げて六面体に組み立てられる包装用ケースにおいて、ケースの開口を蓋部で確実に密閉し、ケース開口を閉鎖した蓋部を閉鎖位置に固定して開封が困難な構造のものとする。
【解決手段】折り曲げ罫線Lvを挟んで連設された四側面部1,2,3,4の上下縁部に、一対の内フラップ7,7と、根本部分が細幅にくびれた舌状の差し込み片8aを先端に設けてなる外蓋8と、差し込み片8aが係入する切込み部9aが蓋面内に形成された中蓋9を折り曲げ罫線Lhを挟んで連設し、ケース開口に内フラップ7,7、中蓋9及び外蓋8を折り重ね、外蓋8の差し込み片8aを中蓋9の切込み部9aに差し込んで前記開口を閉鎖する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品や日用品、その他の物品を収納して販売や展示に供するのに好適な包装用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品などの小間物を包装する容器として、透明度の高いプラスチックにより成形されたシートを所定形状に打ち抜き、これをその表面に形成された折り曲げ罫線に沿って折り曲げて六面体に組み立てられるケースが利用されている。
【0003】
図9はその一例を示しており、このケースは、四側面部11,12,13,14と糊代面部15と上下蓋部16,16とを連設させたシートSを、その表面に形成された折り曲げ罫線Lで折り曲げるとともに糊代面部15を右側面部13の端部に固着して筒体となし、この筒体の上下開口に、上下蓋部16,16を構成する、左右側面部13,14の上下縁部に設けた内フラップ17,17と背面部12の上下縁部に設けた外蓋18とをそれぞれ折り重ね、さらに正面部11の上下縁部の中央に突設させた係合片19を外蓋18の差し込み片18aに形成された係止スリット18bに差し込むことにより前記上下開口を閉鎖して箱形に組み立てられるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、図10(A)に示されるように、正面部11の上端に折り曲げ罫線Lを挟んで中蓋20を連設するとともに、この中蓋20に外蓋18の先端に設けた係合片19が係入する係止スリット20aを形成し、ケースの上部開口に内フラップ17,17、中蓋20及び外蓋18を折り重ね、係合片19を前記係止スリット20aに差し込んで中蓋20の下側に係合させることにより前記上部開口を閉鎖する構成のケースも知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−85747号公報
【特許文献2】特開2004−352273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記図9に示されたケースは係合片19が差し込み片18aに、前記図10に示されたケースは係合片19が中蓋20にそれぞれ係合することにより、ともに外蓋18を閉鎖位置に保持してケースの開口を確実に閉じることが可能である。
【0007】
しかし、図9に示されたケースは、外蓋18を閉鎖位置に保持できたとしても、ケースに収納する物品の形状や大きさ、重量によっては物品を収納した状態でケースの胴部が膨らんで差し込み片18aと正面部11の内面との間に大きな隙間ができ、この隙間から塵埃や異物がケース内部に入り込んでしまうことがあった。
また、物品を包装したケースを運搬したり展示したりしている際にケースが捻れるなどして係合片19が係止スリット18bから抜けて外蓋18が開いてしまうことがあり、開封防止のためには外蓋18を粘着テープなどで留め付けて係合片19を係止スリット18b内に固定させる必要があった。
【0008】
図10に示されたケースは、ケースの上部開口を内フラップ17,17と中蓋20と外蓋18とを多重に重ねて閉鎖できるものの、中蓋20の係止スリット20aがその折り曲げ罫線Lから若干の距離を開けた位置に設けてあるので、同図(B)に示されるように、係合片19を係止スリット20aに差し込んだ状態で正面部11の内面と係止スリット20aとの間に隙間Sができ、係止スリット20aが直線状に形成されていることと相俟って、ケース運搬中などに中蓋20の下方で係合片19ががたついて係止スリット20aから抜けてしまうことがあり、このものも開封防止用の粘着テープで外蓋18を留め付ける必要があった。
【0009】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、所定形状のシートを折り曲げて六面体に組み立てられる包装用ケースにおいて、ケースの開口を蓋部で確実に密閉し、粘着テープなどの止着手段を用いなくとも、ケース開口を閉鎖した蓋部を閉鎖位置に固定して、ケースを搬送している間などに加わる衝撃や力によってはケースが開封することのないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明は、折り曲げ罫線を挟んで連設された四側面部の上下縁部にそれぞれ折り曲げ罫線を挟んで上下蓋部が連設されてなるシートを、前記四側面部の一側端に設けられた糊代面を他側端に固着して筒体となし、この筒体の上下の開口に上下蓋部を折り重ねて六面体に組み立てられる包装用ケースにおいて、前記上下蓋部が、一対の内フラップと、根本部分が細幅にくびれた舌状の差し込み片を先端に設けてなる外蓋と、前記差し込み片が係入する湾曲乃至屈曲した形状の切込み部が前記差し込み片が係入する切込み部が蓋面内に形成された中蓋とからなり、前記筒体の開口面内に折り曲げた内フラップに中蓋と外蓋を折り重ね、外蓋の差し込み片を中蓋の切込み部に差し込んで前記開口を閉鎖する構成を有することを特徴とする。
【0011】
前記構成の包装用ケースにおいて、差し込み片は外蓋に連設した根本部分を細幅にくびれた形状、それよりも先端側を広幅な舌状に形成される。また、切込み部は前記差し込み片が挿入し得る長さであって、差し込み片の根本部が挿入する部分、つまり切込み部の中央部は弓形に湾曲した形状、或いは「く」字形に屈曲した形状に設けて形成される。
これによれば、差し込み片は、その全体を切込み部に沿った形状に変形させて切込み部に差し込まれ、差し込んだ状態で、差し込み片はその根本部分が切込み部に沿って湾曲乃至屈曲するため、差し込み片の中蓋の下側に入り込んだ広幅な舌状部分全体が湾曲乃至屈曲した形状に保形され、当該舌状部分を中蓋の下面と内フラップとにそれぞれ確実に係合させて差し込み片は切込み部から抜け難くいものとなる。
また、差し込み片が係入する切込み部は、正面部の縁部ではなく中蓋の面内に設けてあるので、外蓋の差し込み片を切込み部に差し込むと、切込み部は外蓋で覆われ、外蓋の下側に隠れてケースの外側に露出せず、切込み部に差し込んだ差し込み片が抜け難くなる。この場合、切込み部を中蓋の折り曲げ罫線に近接させて設け、より好ましくは折り曲げ罫線から中蓋の先端方向にシートの肉厚分程度の距離を開けた位置に設ければ、切込み部に差し込み片を差し込むと正面部の内面に差し込み片が重なって接合し、差し込み片の抜き外しがより困難となってケースは開封がし難い構造のものとなる。
【0012】
箱形に組み立てられた本発明のケースは、上下の蓋部が、一対の内フラップと中蓋と外蓋との四枚のフラップにより構成され、これらをケースの開口に折り重ねて開口を多重に閉鎖し、外蓋の先端に設けた差し込み片を中蓋に形成された切込み部に差し込んで中蓋に係合させることで、多重に重なった四枚のフラップが閉鎖位置に保持され、ケース開口を確実に閉じることができる。外蓋を中蓋に被せた状態でケースの開口はその周囲が四枚のフラップで囲われるので、外蓋と四側面との間に隙間ができることはなく、ケース内部は確実に密閉される。
前記構成において、切込み部は湾曲乃至屈曲した部分を有して、差し込み片が挿入し得る幅の筋状や長穴形状に形成することができ、また、差し込み片と切込み部をそれぞれ外蓋と中蓋に位置対応させて複数箇所設けてもよい。
【0013】
前記構成において、ケースを構成するシートの材質としては、耐折性が良好なポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、或いはポリ乳酸などの生物由来性樹脂、その他の樹脂単体又はこれらの複合体からなるプラスチックシートを用いることができる。特にポリエチレンテレフタレート製のシートは、透明性が良好で剛性が高い点で好ましく、中でもアモルファスPET(A−PET)は、より透明性が良好で且つ未延伸であるためシートの方向に関係なく強度が高い点で好ましい。
シートの肉厚は、0.1〜0.8mmに設定することができる。0.1mmより薄いと面部の折れ曲がりや破損を来しやすくなり、0.8mmよりも厚いと折り曲げ加工に要する圧力は大となる。耐折性や剛性などを考慮すると、0.2〜0.6mmに設定することが好ましい。
シートに付設される折り曲げ罫線の種類は問わず、ミシン目などのスリットを断続させた罫線や凹穴状の押し罫線、V字やU字状、台形状の溝を断続又は連続させた罫線、溝内を二段溝状とした二段罫線、筋状の溝を平行に近接配置した罫線などシートを罫線に沿って折り曲げることが可能な適宜な種類の罫線をケースの寸法やシートの材質、剛性、厚みなどに応じて適宜に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の包装用ケースを構成するシートの展開図である。
【図2】図1のシートの要部拡大図である。
【図3】外蓋の差し込み片と中蓋の切込み部を拡大して示した図である。
【図4】図1のシートを折り曲げて包装用ケースを組み立てるときの(A)は中蓋を折り重ねた状態、(B)は外蓋を折り重ねた状態の外観を示した図である。
【図5】差し込み片を切込み部に差し込んだ状態のケースの内部透過図である。
【図6】外蓋を折り重ねた状態の上蓋部の要部切断端面図である。
【図7】(A),(B)はそれぞれ中蓋に形成する切込み部の他の形態を示した図である。
【図8】本発明の包装用ケースの他の実施形態の上蓋部の外観を示した図である。
【図9】従来の包装用ケースにおける(A)はシート展開図、(B)はケースの外観図である。
【図10】従来の包装用ケースの他例における(A)は外観図、(B)は外蓋を折り重ねた状態の上蓋部の要部切断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の包装用ケースは、折り曲げ罫線を挟んで連設された四側面部の上下縁部にそれぞれ折り曲げ罫線を挟んで上下蓋部が連設されてなるシートを、四側面部の一側端に設けられた糊代面を他側端に固着して筒体となし、この筒体の上下の開口に上下蓋部を折り重ねて六面体に組み立てられるケースであり、図1は本発明の一実施形態のケースを展開したシートの構成を示している。
【0016】
このシートSは、各々矩形の板面からなる、正面部1、背面部2、左右側面部3,4及び糊代面部5の各面部が縦方向の折り曲げ罫線Lvを挟んで連設され、前記四側面部の上下縁部に横方向の折り曲げ罫線Lhを挟んで上下蓋部6,6を連設させた形状に設けてある。
【0017】
上下蓋部6,6は、左右側面部3,4の上下縁部に連設させた内フラップ7,7と、背面部2の上下縁部に連設させた外蓋8と、正面部1の上下縁部に連設させた中蓋9とにより構成してある。
【0018】
詳しくは、図2及び図3に示されるように、外蓋8は、その折り曲げ罫線Lhから先端部までの長さHが左右側面部3,4の幅DよりもシートSの肉厚T分だけ短く(H=D−T)なるように設けられ、その先端中央部には、根本部分が細幅にくびれていて先端側が扇状に広がった舌状の差し込み片8aを折り曲げ罫線Lvを挟んで連設してある。
【0019】
中蓋9は、外蓋8と略同じ長さで正面部1の縁部から突出していて、その面内中央であって折り曲げ罫線Lhから前記シートSの肉厚Tだけ離れた位置にスリット状の切込み部9aを形成してある。
より詳しくは、図3に示されるように、切込み部9aは、その全体が差し込み片8aが挿入可能な長さを有するとともに、その中央部9a1が差し込み片8aの根本部分が挿通する長さの部分を折り曲げ罫線Lh側から中蓋9の先端側に向かって弓形に膨らんだ湾曲形状をなし、且つその両側9a2,9a2が当該湾曲部の端部から中蓋9の先端側へ屈曲して斜め直線状に延びた形状に形成してある。
【0020】
このように形成されたシートSは、各折り曲げ罫線Lvに沿って四側面部1,2,3,4を折り曲げるとともに、正面部1の側端に設けた糊代面部5を右側面部3の側端部に接着剤などで一体に固着して筒体となし、この筒体の上下の開口に、図4に示されるように、折り曲げ罫線Lhに沿って内折れさせた内フラップ7,7と中蓋9を折り重ね、次いで中蓋9に折り重ねた外蓋8の差し込み片8aを切込み部9aに差し込んで係入させることにより箱形に組み立てられる。
【0021】
外蓋8を中蓋9に折り重ねて差し込み片8aを切込み部9aに差し込んだ状態で、図5に示されるように、差し込み片8aは、中蓋9の下側で切込み部9aの湾曲した中央部9a1に沿って全体が湾曲し、且つ図6に示されるように、正面部1の内面に重なって接合して、その湾曲した広幅な舌状部分が中蓋9の下面と内フラップ7,7とに確実に係合するので、外蓋8は前記筒体の開口を閉鎖する位置に確実に保持されてケース内部は密閉される。外蓋8を止着するための粘着テープなどの止着手段は不要である。
また、切込み部9aは外蓋8で覆われ、外蓋8の下側に隠れてケースの外側に露出しないので差し込み片8aが抜け難くなり、ケースの搬送中などにケースに衝撃や力が加わってもケースが開封することはない。
【0022】
前記構成の包装用ケースにおいて、差し込み片8aを切込み部9aから抜け難くするため、図7に示されるように、切込み部9aの全体を屈曲した形状に設けたり、長穴形状に設けたりしてもよい。また、図8に示されるように、差し込み片8aと切込み部9aを、外蓋8と中蓋9に位置対応させて複数箇所設けてもよい。
【0023】
なお、図示したケースは本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明の包装用ケースはこれに限定されず、収納する物品の大きさや形状、包装の態様などに応じて適宜な形態で構成することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
S シート、1 正面部、2 背面部、3,4 左右側面部、5 糊代面部、6 蓋部、7 内フラップ、8 外蓋 8a 差し込み片、9 中蓋、9a 切込み部、Lv 縦の折り曲げ罫線、Lh 横の折り曲げ罫線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ罫線(Lv)を挟んで連設された四側面部(1,2,3,4)の上下縁部にそれぞれ折り曲げ罫線(Lh)を挟んで上下蓋部(6、6)が連設されてなるシート(S)を、前記四側面部(1,2,3,4)の一側端に設けられた糊代面部(5)を他側端に固着して筒体となし、この筒体の上下の開口に上下蓋部(6,6)を折り重ねて六面体に組み立てられる包装用ケースにおいて、
前記上下蓋部(6,6)が、一対の内フラップ(7,7)と、根本部分が細幅にくびれた舌状の差し込み片(8a)を先端に設けてなる外蓋(8)と、前記差し込み片(8a)が係入する湾曲乃至屈曲した形状の切込み部(9a)が蓋面内に形成された中蓋(9)とからなり、前記筒体の開口面内に折り曲げた内フラップ(7,7)に中蓋(9)と外蓋(8)を折り重ね、外蓋(8)の差し込み片(8a)を中蓋(9)の切込み部(9a)に差し込んで前記開口を閉鎖する構成を有することを特徴とする包装用ケース。
【請求項2】
切込み部(9a)を長穴形状に設けたことを特徴とする請求項1に記載の包装用ケース。
【請求項3】
外蓋(8)の先端に複数の差し込み片(8a)を設けるとともに、中蓋(9)の蓋面内に前記差し込み片(8a)が係入する複数の切込み部(9a)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用ケース。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−148500(P2011−148500A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8872(P2010−8872)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(591123252)菱江産業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】