説明

包装用フィルム、充填包装体および充填包装方法

【課題】チーズ等の内容物との密着性を保ちながら包丁やナイフによる切れ性(カット性)に優れ、縦型自動充填包装機適性にも優れる包装用フィルム、該フィルムに内容物を充填してなる充填包装体、および該フィルムを用いた充填包装方法を提供すること。
【解決手段】包装用フィルム10は、外層11と熱可塑性樹脂からなるシール層12とを積層してなり、シール層12が多孔質である。包装用フィルム10を用いてチーズ等の内容物を充填した包装体では、包丁やナイフにより外装フィルム(包装用フィルム10)ごと容易に内容物を切り分けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用フィルム、充填包装体および充填包装方法に関する。詳しくは、ブロックチーズ、羊羹およびういろう等の内容物を充填包装する際に使用される包装用フィルム、該フィルムに内容物を充填してなる充填包装体および該フィルムを用いた充填包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロックチーズ、羊羹およびういろう等の食品の包装材料として、食品表面に密着性のあるワックスがコートされたセロファンが用いられている。このような包装材料は、販売流通ルートにおける食品の変質やカビの繁殖を防ぎ、その鮮度を保つために欠かせない素材として慣用されている。また、上述したセロファンとしては、防湿セロファン(塩化ビニリデン樹脂がコートされたセロファン)が汎用されている。例えば、図6に示すように防湿セロファン層41にワックス層42がコートされ、さらにブロッキング防止用のコーンスターチ43が塗布された包装材料40が知られている。
一方、このような包装材料により包装された食品は、一般に1回で全て食されることは少なく、喫食のために好みの大きさや形をカットした後、ブロック状の形体で保存されるのが普通である。それ故、このような食品を包装する包装材料には、保存性はもちろん、包丁やナイフによる切れ性(カット性)にも優れることが要求される。
【0003】
そこで、包装材料の基材フィルムとしてセロファンではなく、分子配列にしたがって一方向に裂けやすい性質を有するプラスチックフィルムを用いることが提案されている(特許文献1参照)。このようなプラスチックフィルムとして、具体的には一軸延伸ポリプロピレンフィルムが記載されている。そして、特許文献1に記載の包装材料を用いてブロックチーズを包装すると、該チーズ上の任意の位置のフィルムをナイフにより直線的に容易に裂くことができる。
また、ブロックチーズの包装用積層体として、微細孔を有するガスバリア基材を外層とし、ワックスを内層とする積層体も提案されている(特許文献2参照)。この積層体では、外層のガスバリア基材が多数の微細孔を有しているので、ナイフ等によりフィルム包装の上からチーズをカットする際のカット性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−040485号公報
【特許文献2】特開平11−292184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された包装材料では、良好な引き裂き性は一方向のみにしか得られないため、賽の目状等に切って使用することはできない。また、包装材料内面に熱溶融ワックスを塗布しているためにシール強度が弱い。
また、特許文献2に記載された包装材料では、あらゆる方向に良好な切れ性(カット性)を有するものの、フィルムに易カット性を付与するための微細孔が最外層のガスバリア性を有するフィルム自体に施されている為、微細孔の大きさによっては、十分なガスバリア性が得られないおそれがある。
さらに、上記いずれの文献に記載の包装材料も、内面が熱溶融ワックスであるので、縦型自動充填包装機を用いて内容物を挟雑物シールしながら連続充填包装することが難しいという問題がある。具体的には、熱溶融ワックスの溶融温度が低く、且つシール時の剥離強度が低いため、内容物を充填する際に内容物ごと挟雑物シールすることが困難であり、縦型自動充填包装機を用いると内容物の重量に耐え切れず破袋が生じやすい。また、熱溶融ワックスを塗布すると、包装に使用する前の保存時に包装材料(フィルム)同士のブロッキングが問題となるため、その防止策として包装材料製造時にシール面にコーンスターチを塗布するとともに、包装材料を冷蔵保存することが一般に行われている。しかしながら、包装材料表面へのコーンスターチの使用は、製造時に粉が舞い工程管理が難しくなるという問題がある。
それ故、縦型自動充填包装機を用いて製造するには、食品と接する最内層が熱間接着性(ホットタック性)に優れる熱可塑性樹脂層であることが好ましい。しかし、最内層用としてホットタック性に優れる熱可塑性樹脂フィルムを採用すると、包丁やナイフによる切れ性(カット性)が極めて悪くなる。また、最内層にワックスを塗布する場合に比べてフィルムとチーズ等の食品との密着性が低下し、包丁等による連続的な裁断も困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題に鑑み、チーズ等の内容物との密着性を保ちながら包丁やナイフによる切れ性(カット性)に優れ、縦型自動充填包装機適性にも優れる包装用フィルム、および該フィルムに食品等の内容物を充填してなる充填包装体、および該フィルムを用いた充填包装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、食品等の内容物を包装するフィルムの外層ではなく内層を多数の微細孔が明けられた構造とすることにより前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のような包装用フィルム、充填包装体および充填包装方法をを提供するものである。
【0008】
(1)外層と、熱可塑性樹脂からなる多孔質のシール層とを有する包装用フィルム。
(2)前記外層がバリア性を備えることを特徴とする上述の(1)記載の包装用フィルム。
(3)前記外層が易裂性を備えることを特徴とする前述の(1)または(2)に記載の包装用フィルム。
(4)前記シール層に形成される孔の平均開口径が1μm以上、500μm以下であることを特徴とする前述の(1)から(3)までのいずれかに記載の包装用フィルム。
(5)前記シール層における孔の数が1×10個/m以上、2×10個/m以下であることを特徴とする前述の(1)から(4)までのいずれかに記載の包装用フィルム。
(6)該包装用フィルムの厚みが40μm以上、150μm以下であることを特徴とする前述の(1)から(5)までのいずれかに記載の包装用フィルム。
(7)上述の(1)から(6)までのいずれかに記載の包装用フィルムを用いて内容物を充填包装してなることを特徴とする充填包装体。
(8)前記内容物が食品であることを特徴とする上述の(7)記載の充填包装体。
(9)上述の(1)から(6)までのいずれかに記載の包装用フィルムを用いて、縦型自動充填包装機により内容物を充填することを特徴とする充填包装方法。
(10)前記内容物が食品であることを特徴とする前述の(9)記載の充填包装方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装用フィルムによれば、シール層が多孔質であるので、シール層自体が易カット性に寄与する。それ故、当該フィルムにチーズ等の内容物を充填した包装体としたときに、包丁やナイフでチーズ等の内容物をフィルムごと容易に切り分けることができる。しかも、シール層が多孔質であることから、チーズ等の内容物との密着性にも優れている。また、当該フィルム製造時に、必ずしもコーンスターチを使用する必要がないので、工程管理上も有利である。
さらに、本発明の包装用フィルムは、シール層が熱可塑性樹脂層であるので、熱溶融ワックスをシール層とした場合に比べてホットタック性に優れており、縦型自動充填包装機による連続充填包装に適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における包装用フィルムの層構成例を示す概略断面図。
【図2】本実施形態における包装用フィルムについて他の層構成例を示す概略断面図。
【図3】本実施形態における包装用フィルムについてさらに他の層構成例を示す概略断面図。
【図4】本実施形態における充填包装体および包丁による連続裁断の様子を示す概略斜視図。
【図5】本実施形態における縦型自動充填包装機を示す概略図。
【図6】従来の食品用包装フィルムの層構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔包装用フィルム〕
本発明は、外層と、多孔質の熱可塑性樹脂からなるシール層とを含んで構成される包装用フィルム(以下、単に「本フィルム」ともいう。)である。なお、本出願において、易カット性とは、包丁やナイフにより、本フィルムを内容物(例えばチーズ、羊羹、ういろう等の食品)とともに容易に切断(裁断)できる性質をいう。
【0012】
(シール層)
シール層の素材は、熱可塑性樹脂であるが、ヒートシール性およびホットタック性の観点より、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等が好適に用いられる。ポリエチレンとしては、低温シール性の観点より、高圧法ポリエチレンや、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。また、ポリプロピレンとしては、ヒートシール性の観点よりランダムポリプロピレンが好ましい。具体的には、上述した各樹脂からなる無延伸フィルムがシール層として好適に適用できる。
このような熱可塑性樹脂をシール層の素材として用いることにより、ワックスコーティングとは異なって、ホットタック性を十分に向上させることができ、結果として優れた縦型自動充填包装機(縦ピロー包装機)適性を発揮できる。上述した各熱可塑性樹脂の中では、ホットタック性の観点より直鎖状低密度ポリエチレンが特に好ましい。
【0013】
多孔質のシール層は、シール層表面に対して熱針やレーザーによる突き刺しを行ったり、放電加工あるいはシール層表面に対してダイヤモンドロール処理(表面にダイヤモンド粒子を形成したローラによる押圧により多数の微細孔を形成する方法。特開平5−131557号等参照。)等の多孔化処理を行って形成することができる。シール層における孔部は、シール層の断面方向全体に渡って貫通していてもよいし、貫通していなくともよい。例えば、特開平5−131557号に開示された多孔質フィルム製造装置によれば、外層とシール層からなる積層フィルムのシール層側から当該処理を行い、所定の平均開口径および孔密度を有する多孔質のシール層を形成することができる。また、該装置によれば、シール層の貫通・非貫通も制御することができる。
【0014】
シール層に形成される孔の平均開口径は、1μm以上、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、300μm以下、さらに好ましくは10μm以上、250μm以下である。
シール層に形成される孔の平均開口径が1μm以上であると、本フィルムの易カット性を十分に発揮できる。また、孔の平均開口径が500μm以下であると、本フィルムは、強度や耐ピンホール性にも十分優れている。
ここで、シール層に形成される孔の形状については特に限定されない。円形でも楕円形でもよく、あるいは不定形であってもよい。なお、シール層表面に開口している孔50点を無作為に抽出して孔径を測定し、その平均値を平均開口径とする。また、開口径は、孔が円形の場合は直径(内径)であるが、孔の形状が円形ではない場合、開口径は最長部分の径を採用する。
【0015】
本発明では、シール層における孔の数は、1×10個/m以上、2×10個/m以下であることが好ましく、5×10個/m以上、1×10個/m以下であることがより好ましい。
シール層における孔の数が1×10個/m以上であると、本フィルムのカット性がさらに優れものとなる。また、シール層における孔の密度が2×10個/m以下であると、本フィルムの強度や耐ピンホール性にも十分優れたものとなる。
ここで、シール層用フィルムは、単層フィルムに限らず多層フィルムであってもよい。多層フィルムは、共押出法およびラミネート法のうち少なくともいずれかの方法を用いて製造できる。
【0016】
(外層)
外層は、セロファンや種々のプラスチックフィルムを適用できる。このような外層用フィルムは、バリア性を備えることが好ましい。ここで、本発明におけるバリア性とは、酸素、水蒸気、その他被包装物の品質劣化を促すガスの少なくともいずれかを遮断する性質を意味する。
外層としてバリアフィルムを用いることで、包装体内に充填された食品の保存性を向上させることができる。このような外層用バリアフィルムとしては、例えば、防湿セロファン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の素材を適用することができる。また、バリアフィルムとしては、前述したバリア性素材自体からなるフィルムであってもよいし、ポリプロピレン等の適当な基材フィルムの表面層あるいは中間層としてバリア性素材をコーティングないし積層してもよい。あるいは、外層用フィルムとしてアルミ箔を積層したものを用いたり、金属(アルミニウム等)や無機物(SiO等)の蒸着を行って外層用フィルムとしてもよい。
なお、酸素ガスバリア性であれば、JIS K7126(MOCON法、25℃、60%RH)により、120cc/m・24hr以下であることが好ましい。水蒸気バリア性であれば、JIS Z0208(カップ法、40℃、90%RH)により、100g/m・day以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明では、外層が易裂性を備えていると、本フィルムにおける易カット性をさらに向上させることができるので好ましい。ここで、易裂性とは、フィルムにノッチを入れて裂いた時に、当該フィルムが、力を加える方向に実質的に延伸されることなく裂けていく性質をいう。
このような易裂性を備える外層用フィルムとしては、セロファンや延伸フィルムあるいは、表面を物理的に傷つけて脆くしたフィルム(延伸・無延伸を問わない)、あるいは三層以上の多層構造であって中間に脆い層を含むフィルム(延伸・無延伸を問わない)などが採用できる。
延伸フィルムとしては一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムが挙げられ、素材樹脂としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、およびポリスチレン等が挙げられる。このような易裂性フィルムとしては、乳酸系ポリエステル樹脂等を原料とする脂肪族ポリエステル系延伸フィルムに活性線を照射したものや、融点の異なる乳酸系ポリエステル樹脂層からなる多層ポリエステル延伸フィルムなどが好適である(WO2003/057765参照)。
なお、外層全体が易裂性フィルムでもよく、外層が多層構成であって、その少なくとも1層が易裂性フィルムであってもよい。
【0018】
(積層方法)
上述した本発明の包装用フィルムは、外層用フィルムとシール層用フィルムとを積層することにより容易に得ることができる。積層方法としては、ドライラミネート法でもポリサンドラミネート法でもよい。ポリサンドラミネート法の場合は、接着用ポリエチレン樹脂層の厚みは、接着力の点で5μm以上が好ましく、本フィルムの剛性が高くなりすぎないように20μm以下が好ましい。なお、外層用フィルムに対し押出ラミネート法によりシール層を付加してもよい。
シール層用フィルムは、先に多孔質フィルムとしてからラミネートしてもよいし、ラミネート後にシール層用フィルムに多孔化処理を施してもよい。外層用フィルムに孔明け処理の影響が及ぶのを避けるためには、前もってシール層用フィルムに多孔化処理を施すことが好ましい。
ここで、外層用フィルムは、単層フィルムに限らず多層フィルムであってもよい。多層フィルムは、共押出法およびラミネート法のうち少なくともいずれかの方法を用いて製造できる。
【0019】
本発明の包装用フィルムは、厚みが40μm以上、150μm以下であることが好ましく、70μm以上、90μm以下であることがより好ましい。
本フィルムの厚みが40μm以上であると、食品包装フィルムとして十分な強度を備えている。一方、本フィルムの厚みが150μm以下であるので、易カット性も十分発揮できる。
また、本発明では、外層(用フィルム)の厚みは、12μm以上、70μm以下であることが好ましく、シール層(用フィルム)の厚みは、20μm以上、80μm以下であることが好ましい。
【0020】
〔包装用フィルムの構成例〕
図1〜図3は、本発明の包装用フィルムについて、3種類の層構成例を示す概略断面図である。各層構成例において機能および素材が同じものは同じ符号を使用している。
図1に示す包装用フィルム10は、外層としての防湿セロファン層11と、ヒートシール層としての直鎖状低密度ポリエチレン層12とが、ドライラミネート法による接着層13を介して接着されている。直鎖状低密度ポリエチレン層12のシール面には、多数の微細な孔15が設けられている。なお、ドライラミネート用の接着剤としては、周知の任意のものが使用できる。
図2に示す包装用フィルム20は、防湿セロファン層11と、直鎖状低密度ポリエチレン層12とが、ポリサンドラミネート法による接着層14により接着されている。
図3に示す包装用フィルム30は、ドライラミネート法による接着層13を介して接着された2層からなるラミネート層31(易裂性ポリエステルフィルム層311、防湿セロファン層312)を外層として、ドライラミネート法による接着層13を介して直鎖状低密度ポリエチレン層12と積層されている。なお、易裂性ポリエステルフィルム311は、たとえば、WO2003/057765号公報に記載のポリエステルフィルムである。
【0021】
〔充填包装体〕
図4は、本発明の包装用フィルムを用い、後述する充填方法によりチーズ等の内容物を充填してなる充填包装体100を示す概略斜視図である。なお、図4は、充填包装体100に対し包丁150で該包装体ごと内容物(食品L)を切り分ける様子も併せて示したものである。充填包装体100は、シール層が多孔質であるので、シール層自体が易カット性に寄与する。それ故、充填包装体の内容物がチーズ等の食品であっても、包丁やナイフで内容物をフィルムごと容易に切り分けることができる。
【0022】
〔内容物の充填方法〕
充填包装体100は、たとえば図5に示すような縦型自動充填包装機(縦ピロー包装機)200により製造することができる。図5(A)は正面図、図5(B)は側面図である。以下、上述の構成例にかかる包装用フィルム10,20,30を自動充填用基材フィルムとして説明する。
図5に示すように、縦型自動充填包装機200は、投入パイプ52の内部に設けられた投入ノズル51から投入される内容物(例えば、チーズ等の食品L)を充填包装するものである。投入パイプ52の外周部には、繰り出される包装用フィルム10,20,30を筒状に形成するための製袋ガイド53が取り付けられている。製袋ガイド53を通過した該包装用フィルムは、製袋ガイド53の下方に設けられた縦シールバー54によって合わせ面がヒートシールされ、筒状フィルム10’,20’,30’が形成される。
【0023】
投入パイプ52の下端部には、該筒状フィルムを内側から広げるための案内バー55が設けられ、案内バー55によって広げられた部分が、フィルム送りローラ56で挟持される。フィルム送りローラ56は、該筒状フィルムを下方に送るためのものであり、該筒状フィルムの両側部を挟持する4枚の円盤状ローラで構成されている。フィルム送りローラ56の下方には、該ローラの回転に同期して回転される一対のシゴキローラ57が設けられている。シゴキローラ57は、該筒状フィルムを挟んで扁平状に潰すことによって、内容物(食品L)が充填されたフィルムの膨らみを規制するものであり、水平方向に対向移動可能に設けられている。また、シゴキローラ57は、該筒状フィルムを挟む領域の一部位であってその軸方向の中央部が他の部位よりも径が小さい小径部57aとなっており、シゴキローラ57を閉じていても、この小径部57aでは該筒状フィルムは潰されず、内容物(食品L)は上下へ流通可能となっている。
【0024】
シゴキローラ57の直下には、該筒状フィルムを横方向(幅方向)にヒートシールするための横シールバー58が配置されている。横シールバー58は、水平方向に対向移動可能で、それぞれヒーター(図示せず)を内蔵した一対の加熱部材58a、58bを有し、各加熱部材58a、58bにより該筒状フィルムを挟み、加圧することで該筒状フィルムがその幅方向に熱シールされる構成となっている。また、各加熱部材58a、58bのうち一方の加熱部材58aの、他方の加熱部材58bとの対向面には、該筒状フィルムの加圧の際に全面が筒状フィルムに当接される2つの斜面からなる山形の突起61が該筒状フィルムの幅方向に一様に形成されている。
【0025】
さらに、横シールバー58の下方には、横シールバー58によりヒートシールされた部位を冷却し切断するための切断バー59が配置されている。切断バー59は、水平方向に対向移動可能な2つの部材を有する。これら2つの部材のうち一方の部材には、冷却水を流通させるための冷却水通路(図示せず)が内部に形成されているとともに、他方の部材に対して進退移動可能に設けられた切断刃60が設けられている。切断刃60は、該筒状フィルムの切断動作時以外は、一方の部材内に引き込まれている。
この縦型自動充填包装機200に包装用フィルム10,20,30をセットして運転することで、充填包装体100を容易に製造することができる。
【0026】
なお、本発明の包装用フィルムは上述したように縦型自動充填包装機での使用に適性を有するものであるが、その使用は縦型自動充填包装機による連続充填包装に限定されるものではなく、チーズ、羊羹、ういろうの他、ハムやソーセージ等の食肉加工品や蒲鉾等の水産練製品といった食品類のほか、内容物をフィルムごと切断するという需要がある物全般に対して使用可能であり、その丈夫さと良好な切れ性を発揮するものである。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〕
実施形態における図1の包装用フィルムを以下のような条件で製造した。
外層用フィルムとして、防湿セロファン(ダイセルバリューコーティング製 KセルシK−G #350)を最外層とし、シール層としてダイヤモンドロール法により多数の微細な孔明け処理を施した直鎖状低密度ポリエチレン(40μm)をドライラミネート法により接着して実施例1フィルムを得た。シール層表面に開口した微細孔の平均開口径は75μmであり、孔密度は10個/mであった。
【0029】
〔実施例2〕
実施形態における図2の包装用フィルムを以下のような条件で製造した。
外層用フィルムとして、防湿セロファン(ダイセルバリューコーティング製 KセルシK−G #350)を最外層とし、シール層としてダイヤモンドロール法により多数の微細な孔明け処理を施した直鎖状低密度ポリエチレン(40μm)をポリサンドラミネート法(PE層 13μm)により接着して実施例2フィルムを得た。
【0030】
〔実施例3〕
実施形態における図3の包装用フィルムを以下のような条件で製造した。
外層用として、易裂性ポリエステルフィルム(東洋紡製 手切れ性ポリエステルフィルム ティアファイン 14μm)、防湿セロファン(ダイセルバリューコーティング製 KセルシK−G #350)および、実施例1で使用した多孔質低密度ポリエチレンフィルム(30μm)を各々ドライラミネート法により接着して実施例3フィルムを得た。
【0031】
〔比較例1〕
図6に示すように、外層41として、防湿セロファン(ダイセルバリューコーティング製 KセルシK−G #350)を用い、ワックス層42として熱溶融ワックス(100g/m)を塗布したものを比較例1フィルムとした。なお、ワックス層にはコーンスターチ43を塗布した。この構成のフィルムは、カット性に優れるためブロックチーズ等の包装用として汎用的に使用されているものである。
【0032】
〔比較例2〕
縦型自動充填包装機にて汎用的に使用されるドライラミネートフィルム(外層:二軸延伸ナイロンフィルム 25μm/シール層:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム 40μm)を比較例2フィルムとした。
【0033】
〔評価方法〕
前記の実施例1〜3、および比較例1、2の各フィルムについて、下記の評価条件により「(1)フィルムのシール強度」をそれぞれ比較・評価した。また、前記各フィルムを用いて下記の製造条件によりチーズを充填包装し、「(2)自動充填適性」を比較・評価した。そして、充填包装後の各包装体について、「(3)易カット性」をそれぞれ比較・評価した。
【0034】
(1)フィルムのシール強度
各フィルムについて、15mm巾の短冊状に裁断し、裁断後の各試験片について、種々の条件でシール層同士をヒートシールし、最も剥離強度が安定するシール条件を決定した。そして、該シール条件でヒートシールした各試験片について引張り試験機を用いて300mm/分の速度で180度剥離を行い、最大剥離強度をフィルムのシール強度とした。結果を表1に示す。
【0035】
(2)自動充填適性
図5の縦型自動充填包装機200を用い、上述の各積層フィルムを充填包装用フィルムとして、毎分40ショットでプロセスチーズ(各200g)の自動充填を行った。そして以下の基準で自動充填適性を評価した。結果を表1に示す。なお、製造後の充填包装体は、図4のようなブロック状に賦形し、「(3)カット性」試験に供した。
○:自動充填時に破袋が生じることなく充填包装体を得ることができた。
△:およそ、30ショットに1回程度の頻度で破袋が生じ、ショット数を20ショット/分まで下げることで破袋がなくなった。
×:ショット数を20ショット/分まで下げても、破袋が生じた。
【0036】
(3)カット性(包丁の切れ性)
20代から50代の男女10名を選び、上述の試験で得られた各充填包装体に対し、包丁を用いて図4のように1cm間隔で連続的に裁断してもらい、包丁での切れ性(カット性)を官能評価した。具体的には、比較例1の積層フィルムにより製造した充填包装体を基準として『同等の切れ性』を3点、『やや劣る』を2点、『劣る』を1点として比較評価した。結果(平均点)を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
〔評価結果〕
表1の結果より、シール性に関して、実施例1〜3における本発明の包装用フィルムは、いずれも比較例1のフィルムよりも顕著にシール性が高い。また、一般的に縦型連続充填包装機に用いられる比較例2のフィルムと同程度のシール強度を有している。
自動充填適性についても、実施例1〜3における本発明の包装用フィルムを用いた場合には、比較例2のフィルムと比べても何ら遜色がない。一方、比較例1のフィルムでは、シール層であるワックス層のホットタック性が悪いため、充填速度を上げることができなかった。
そして、充填包装体のカット性試験では、実施例1〜3における本発明の包装用フィルムは、易カット性に優れる比較例1のフィルムと比べてもさほどカット性は劣っていないことがわかる。一方、縦型自動充填包装機に汎用的に使用される比較例2のフィルムは非常にカット性に劣ることがわかる。
また、実施例1〜3における本発明の包装用フィルムは、外層には必ずしも孔明け処理を必要としないので、外層にバリア性を有するフィルムを使用することが可能であり、バリア性を高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
10,20,30 包装用フィルム
11,41 外層(防湿セロファン層)
12 シール層、直鎖状低密度ポリエチレン層
13,14 接着層
15 孔
31 ラミネート層
40 包装材料
42 ワックス層
43 コーンスターチ
51 投入ノズル
52 投入パイプ
53 製袋ガイド
54 縦シールバー
55 案内バー
56 フィルム送りローラ
57 シゴキローラ
57a 小径部
58 横シールバー
58a,58b 加熱部材
59 切断バー
60 切断刃
61 突起
100 充填包装体
150 包丁
200 縦型自動充填包装機(縦ピロー包装機)
311 易裂性ポリエステルフィルム層
312 防湿セロファン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と、熱可塑性樹脂からなる多孔質のシール層とを有する包装用フィルム。
【請求項2】
前記外層がバリア性を備えることを特徴とする請求項1記載の包装用フィルム。
【請求項3】
前記外層が易裂性を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装用フィルム。
【請求項4】
前記シール層に形成される孔の平均開口径が1μm以上、500μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項5】
前記シール層における孔の数が1×10個/m以上、2×10個/m以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項6】
前記包装用フィルムの厚みが40μm以上、150μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の包装用フィルム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の包装用フィルムを用いて内容物を充填包装してなることを特徴とする充填包装体。
【請求項8】
前記内容物が食品であることを特徴とする請求項7に記載の充填包装体。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の包装用フィルムを用いて、縦型自動充填包装機により内容物を充填することを特徴とする充填包装方法。
【請求項10】
前記内容物が食品であることを特徴とする請求項9に記載の充填包装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−42089(P2011−42089A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191188(P2009−191188)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】