説明

包装箱

【課題】外フラップの突出寸法や段ボール紙の中しんの段目方向に拘わらず、小さい力で容易に開封可能とする。
【解決手段】各一対の端壁10A,10Bおよび側壁11A,11Bを備え、各端壁10の少なくとも一端に内フラップ14A,14Bを連設するとともに、各側壁11に内フラップ14A,14Bの外面に重畳し互いの先端縁が突き合う外フラップ16A,16Bを連設し、これらフラップの重畳部分を貼着することにより封緘した包装箱において、少なくとも一方の外フラップ16Aに、その先端縁に沿って延びるスリット20と、スリット20の略両端から外フラップ16Aの先端縁に向けて外広がりに傾斜して延びる一対の開封補助用折曲線21A,21Bと、を有する開封補助部19を設け、開封補助部19を、外フラップ16Aにおける突出方向と同一方向に延びる中心線L1を基準として、非対称に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装箱は、それぞれ対向する一対の端壁および側壁を備え、各端壁に内フラップが連設され、各側壁に外フラップが連設されている。そして、側壁および端壁により囲繞された外周壁の開口端は、内フラップを折り曲げた後に外フラップを折り曲げ、これらの重畳部分を熱溶融樹脂からなる接着剤(ホットメルト)で貼着することにより封緘される。
【0003】
この包装箱を開封する場合には、互いに突き合った外フラップにおいて、内面側に内フラップが存在しない中心に手を差し込み、一方の外フラップを引き上げる。これにより、内フラップに対して外フラップを剥離させる。しかし、互いに突き合わさった状態の外フラップ間に手を差し込む作業は、手が外フラップの先端縁に擦れるため、作業者に不快感を与える。
【0004】
本発明は、このような包装箱の開封作業性を向上するためのものであり、関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−326624号公報
【特許文献2】特開2003−335323号公報
【特許文献3】特願2007−056556号
【0006】
特許文献1の包装箱には、互いに突き合う外フラップの先端縁に、半円形状をなす凹部と凸部が交互に連続する波状の凹凸部を設けている。これにより、開封時に外フラップ間の隙間に手の指を挿入する作業性を向上するとともに、作業者の指先が切れ難くなるように構成している。
【0007】
特許文献2の包装箱には、外フラップの中央に、先端縁に向けてV字形状をなすように広がる一対の斜折罫を設けるとともに、その中央に先端縁に対して直交する中折罫を設け、該中折罫の両側に一対の可撓部を設けている。これにより、開封時には、一方の外フラップの可撓部を内向きに押し込むことにより、他方の外フラップの先端縁を露出させ、手の挿入作業性を向上している。
【0008】
しかし、これら特許文献1,2の包装箱は、外フラップの先端縁間への手の挿入作業性は向上できるが、外フラップを内フラップから剥離する際には非常に強い力が必要になるため、力の弱い作業者である場合には、開封は非常に困難である。
【0009】
そこで、本出願人は特許文献3で、この種の包装箱の問題点を解決するために、封緘状態での閉塞強度を損なうことなく、小さい力で開封可能な包装箱を提案している。具体的には、この特許文献3の包装箱は、外フラップに対して略W字形状をなすように開封補助用折曲線と屈曲補助用折曲線とを設けた構成としている。そのうち、両外側に位置する開封補助用折曲線は、連続する側壁との境界線から外フラップの先端縁に向けて外向きに広がるように傾斜して延びるように形成されている。しかも、一方の第1開封補助用折曲線における外フラップの先端位置は、他方の第2開封補助用折曲線における先端位置より、中心側に位置するように構成している。これにより、外フラップの先端中央部を把持して引き上げた際に作用する力の分力を左右不均一とし、一方の貼着が解除された後に、他方の貼着が解除されるように構成している。
【0010】
しかしながら、この特許文献3の包装箱は、端壁の幅および外フラップの突出寸法が小さく、かつ、外フラップに対して包装箱を構成する段ボール紙の中しんが突出方向と交差する横方向に延びるように構成したラップアラウンド形式のものである。そのため、端壁の幅および外フラップの突出寸法が大きい汎用の包装箱では、同様の作用が得られ難い。
【0011】
即ち、汎用の包装箱は、フラップにより閉塞した面が上下に位置するように積み重ねるため、耐圧強度を考慮して中しんがフラップの突出方向に延びるように形成される。よって、外フラップの突出量に応じた長い開封補助用折曲線を設けた場合には、その折曲線に沿ってのみ折り曲げることができず、開封作業時に中しん(段目)に沿って意図しない変形線が生じるため、同様の作用が得られないという問題がある。また、フラップの突出量が大きいため、開封補助用折曲線を外フラップの先端縁に位置させようとした場合、その傾斜角度が小さくなり、同様の作用が得られないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、外フラップの突出寸法や段ボール紙の中しんの段目方向に拘わらず、小さい力で容易に開封可能な包装箱を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の包装箱は、それぞれ対向する各一対の端壁および側壁を備え、前記各端壁の少なくとも一端に内フラップをそれぞれ連設するとともに、前記各側壁に内フラップの外面に重畳し互いの先端縁が突き合う外フラップをそれぞれ連設し、これらフラップの重畳部分を貼着することにより封緘した包装箱において、少なくとも一方の外フラップに、その先端縁に沿って延びるスリットと、該スリットの略両端から外フラップの先端縁に向けて外広がりに傾斜して延びる一対の開封補助用折曲線と、を有する開封補助部を設け、前記開封補助部を、外フラップにおける突出方向と同一方向に延びる中心線を基準として、非対称に形成したものである。
【0014】
具体的には、この包装箱は、表紙および裏紙の間に波状をなす中しんを配設した段ボール紙製であり、その中しんが前記外フラップの突出方向に沿って延びるように構成されている。
【0015】
この包装箱は、外フラップの先端縁とスリットとに指を差し込み、その間の部分を把持して引き上げるように開封作業を行う。または、外フラップの先端縁に指を差し込み、先端縁を引き上げるように開封作業を行う。または、スリットに指を差し込み、先端縁の側を引き上げるように開封作業を行う。
【0016】
この際、開封補助用折曲線とスリットとで囲まれた開封補助部が隆起した状態をなす。また、本発明では、外フラップに設けたスリットの両側に開封補助用折曲線を設けるため、外フラップの突出寸法などに拘わらず、この開封時に予め設計した折線を形成することができる。そして、この状態で開封作業を行うと、外フラップの中心線を基準として開封補助部を非対称に形成しているため、両側に位置する一対の貼着領域に作用する力を偏らせることができる。その結果、力が強く作用する側の貼着領域を先に剥離した後、残りの貼着領域を後から剥離することができる。そのため、一対の貼着領域に均等な力を加えて剥離する場合と比較して、小さな力で容易に開封することができる。
【0017】
この包装箱では、前記スリットを、前記外フラップの幅方向中央に位置するように設け、各開封補助用折曲線の傾斜角度を異なるように形成することにより、前記開封補助部を非対称に形成している。このようにすれば、外フラップの先端縁上に位置する先端位置が、外フラップの中心線に近い開封補助用折曲線を設けた側の貼着領域から剥離させることができる。
【0018】
または、前記スリットを、前記外フラップの幅方向中央から横方向に偏った位置に設けることにより、前記開封補助部を非対称に形成している。このようにすれば、スリットの端部までの距離が近い貼着領域から剥離させることができる。
【0019】
また、前記スリットの中間位置から連続する側壁に向けて外向きに傾斜して延びる一対の把持補助用折曲線を設けることが好ましい。
しかも、前記スリットの略両端から連続する側壁に向けて延びる一対の把持補助用折曲線を設けることが好ましい。
このようにすれば、スリットに指を差し込む作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の包装箱では、外フラップに設けたスリットの両側に開封補助用折曲線を設けるため、外フラップの突出寸法などに拘わらず、開封時に予め設計した折線を形成することができる。そして、開封作業を行うと、開封補助部の外フラップの中心線を基準として非対称に形成しているため、両側に位置する一対の貼着領域に作用する力を偏らせることができる。その結果、力が強く作用する側の貼着領域を先に剥離した後、残りの貼着領域を後から剥離することができる。そのため、一対の貼着領域に均等な力を加えて剥離する場合と比較して、小さな力で容易に開封することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1から図7は、本発明の第1実施形態に係る包装箱を示す。この包装箱は、図3に示すように、それぞれ対向する各一対の端壁10A,10Bおよび側壁11A,11Bを備え、これらの上下端縁にそれぞれ蓋壁を構成するフラップ14A,14B〜17A,17Bを連設したものにおいて、開封作業を小さい力で容易に行うことができるようにするために、各外フラップ16A,16B,17A,17Bに開封補助部19を設けたものである。
【0023】
この包装箱は、図2(A)に示す表紙2および裏紙3の間に波状の中しん4を配設した段ボール紙1を、周知の紙器打抜装置(図示せず)によって図1に示す連続した一枚のブランクとして打ち抜き、所定部位を糊付けにより貼着して成形される。
【0024】
この包装箱のブランクは、図1に示すように、矩形状をなす端壁10A,10Bおよび側壁11A,11Bが横方向に交互かつ直線的に連続するように設けられている。具体的には、左端から右端にかけて、第1の側壁11A、第1の端壁10A、第2の側壁11Bおよび第2の端壁10Bの順番で連設されている。これらのうち、左側端部に位置する側壁11Aの側縁には、右側端部に位置する端壁10Bに貼着するための糊代部12が連設されている。そして、これら端壁10A,10B、側壁11A,11Bおよび糊代部12の各境界線に位置する部分には、肉厚を圧縮するように罫を入れて形成した第1折曲線13が設けられている。この第1折曲線13は、図2(B)に示すように、段ボール紙1に対して裏紙3の側から罫を入れることにより、該裏紙3を内向きに湾曲させて形成したものである。
【0025】
前記端壁10A,10Bには、それぞれの上端縁に上側内フラップ14A,14Bが連設され、それぞれの下端縁に下側内フラップ15A,15Bが連設されている。また、前記側壁11A,11Bには、それぞれの上端縁に上側外フラップ16A,16Bが連設され、それぞれの下端縁に下側外フラップ17A,17Bが連設されている。そして、これら各フラップ14A,14B〜17A,17Bと、連続した各壁10A,10B,11A,11Bとの境界線に位置する部分には、前記と同様の第2折曲線18が設けられている。なお、形式的にフラップ14A,14B,16A,16Bを上側、フラップ15A,15B,17A,17Bを下側と規定しているが、実際の使用に際して上下の制限はない。
【0026】
ここで、このブランクは、段ボール紙1を構成する中しん4が各フラップ14A,14B〜17A,17Bの突出方向に沿って並列に延びるように打ち抜かれている。また、第2折曲線18は、横方向に直線的に延びるように構成されるとともに、各フラップ14A,14B〜17A,17Bの先端縁が直線的に位置するように構成されている。これにより、周知の紙器打抜装置のなかでも、汎用機械であるフレキソグルアにより形成可能に構成されている。
【0027】
そして、本実施形態では、各外フラップ16A,16B,17A,17Bに、開封補助部19が設けられている。この開封補助部19は、外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端縁に沿って延びるスリット20と、該スリット20の両端から延びる一対の開封補助用折曲線21A,21Bとを備えている。また、開封操作当初に外フラップ16A,16B,17A,17Bの把手を容易に可能とするために、把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bが更に設けられている。
【0028】
前記スリット20は、外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端側と、側壁11A,11Bに連続する基端側とに区画するものである。このスリット20は、外フラップ16A,16B,17A,17Bの幅方向中央において先端縁に沿って延びるように形成されている。このスリット20は、図2(C)に示すように、切断刃によって表紙2から裏紙3にかけて切断して形成されている。また、スリット20は、作業者(人体)の手を挿入可能な全長であり、開封補助部19を把持した際に作業者の指に痛みを与えないように、先端縁と逆側である側壁11A,11Bの側を中心とした円弧状に形成されている。さらに、スリット20の両端部には変形時の破断を防止するために、側壁11A,11Bの側に向けて湾曲する円弧状湾曲部20aが設けられている。
【0029】
前記開封補助用折曲線21A,21Bは、スリット20の略両端から外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端縁に向けて外広がりに傾斜して延びるように設けたものである。これら開封補助用折曲線21A,21Bは、図2(D)に示すように、段ボール紙1の表紙2の側から肉厚を圧縮するように罫を入れて形成した所謂逆罫の折曲線21aと、該折曲線21aに沿って所定間隔をもって設けた不連続の切断線21bとからなるリード罫により構成している。
【0030】
そのうち、外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端縁に向けてスリット20の左側から延びるように設けた一方の第1の開封補助用折曲線21Aは、その先端位置P1である外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端縁との交点が、中心線L1との間の距離が寸法S1に設定されている。また、他方の第2の開封補助用折曲線21Bは、その先端位置P2である外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端縁との交点が、中心線L1との間の距離が寸法S2に設定されている。そして、先端位置P1,P2の寸法S1,S2は、S1<S2になるように構成している。ここで、中心線L1は、外フラップ16A,16B,17A,17Bの幅(横)方向中央から、突出方向と同一方向に延びる仮想線である。
【0031】
これにより、第1の開封補助用折曲線21Aの先端位置P1は、第2の開封補助用折曲線21Bの先端位置P2より、外フラップ16A,16B,17A,17Bの先端縁において中心側に位置する。また、各開封補助用折曲線21A,21Bの傾斜角度(先端縁とのなす角)α,βは異なり(α>β)、開封補助部19全体としては、中心線L1を基準として、左右非対称な台形状に形成されている。なお、本実施形態では、第1の開封補助用折曲線21Aの傾斜角度αは約45度、第2の開封補助用折曲線21Bの傾斜角度βは約35度に設定している。
【0032】
前記把持補助用折曲線としては、スリット20から略V字形状をなすように側壁11A,11Bに向けて延びる一対の第1把持補助用折曲線22A,22Bと、側壁11A,11Bに向けて平行に延びる一対の第2把持補助用折曲線23A,23Bとが設けられている。これら把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bは、表紙2の側から罫を入れて形成した逆罫の折曲線により構成されている。第1把持補助用折曲線22A,22Bは、スリット20の中央(頂部)から連続する側壁11A,11Bとの境界線である第2折曲線18にかけて外向きに傾斜して延びるもので、本実施形態では中心線L1を基準として対称に設けられている。また、第2折曲線18との交点である端部は、スリット20の両端(湾曲部20aの側方頂部)に対応するように設けられている。第2把持補助用折曲線23A,23Bは、スリット20の両端である湾曲部20aの側方頂部から、第2折曲線18に対して直交方向に延びるように平行に設けられている。これにより、第1把持補助用折曲線22A,22Bと第2把持補助用折曲線23A,23Bの端部は、互いに第2折曲線18上で交わり、略M字形状をなすように構成されている。
【0033】
この包装箱のブランクは、端壁10Aに対して側壁11Aが折り曲げられ、側壁11Bに対して端壁10Bが折り曲げられ、この状態で重畳する糊代部12と端壁10Bの側縁とが酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤などにより貼着される。そして、この状態で、所定の製造メーカに出荷されて、組み立てて使用される。
【0034】
具体的には、端壁10A,10Bに対して下側内フラップ15A,15Bが折り曲げられた後、側壁11A,11Bに対して下側外フラップ17A,17Bが折り曲げられる。そして、重畳した下側内フラップ15A,15Bと下側外フラップ17A,17Bとを、熱溶融樹脂からなる接着剤(ホットメルト)で貼着する。
【0035】
その後、未封緘状態の上側から所定の商品を収容させ、端壁10A,10Bに対して上側内フラップ14A,14Bが折り曲げられた後、側壁11A,11Bに対して上側外フラップ16A,16Bが折り曲げられる。そして、重畳した上側内フラップ14A,14Bと上側外フラップ16A,16Bとを、熱溶融樹脂で貼着する。
【0036】
このようにして封緘した包装箱は、図3および図4に示すように、1つの外フラップ16A,16B,17A,17Bの両側に、ホットメルトによる貼着領域R1,R2が形成される。なお、本実施形態では、第1の開封補助用折曲線21Aを設けた側を第1貼着領域R1、第2の開封補助用折曲線21Bを設けた側を第2貼着領域R2としている。そして、これら貼着領域R1,R2は、一部が開封補助用折曲線21A,21Bの下部に位置する。言い換えれば、開封補助用折曲線21A,21Bは、貼着領域R1,R2を横断して延びるように設けられている。
【0037】
この包装箱を開封する場合には、作業者は、例えば上側外フラップ16Aのスリット20と第2折曲線18の間である把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bの形成領域に、親指または親指を除く他の指を当て、下向きに押圧する。これにより、図5に示すように、把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bが谷折れすることにより、スリット20を境界として段差を生じさせる。この際、本実施形態では、スリット20を人体の手を挿入可能な全長で設けているため、そのスリット20を利用して開封を行うことを認識させることができる。しかも、把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bによりスリット20を境界とした段差を容易に形成できるため、開封作業性を向上できる。
【0038】
この状態で、上側に位置する開封補助部19の内面側に指を差し込んで上向きに引き上げる。その結果、互いに突き合った上側外フラップ16A,16Bの先端縁において、指を差し込んだ上側外フラップ16Aの先端縁を浮き上げ、上側外フラップ16A,16Bの間に残りの指を差し込んで開封補助部19を把持する。なお、この状態では、上側外フラップ16Aが開封補助用折曲線21A,21Bに沿って谷折れした状態をなす。
【0039】
ついで、作業者は、開封補助部19を引き上げる。この際、図6に示すように、まず、図中右側に位置する上側外フラップ16Aと上側内フラップ14Bとの貼着領域R1の側が剥離される。その後、図7に示すように、図中左側に位置する上側外フラップ16Aと上側内フラップ14Aの貼着領域R2の側が剥離される。
【0040】
次に、貼着領域R1が剥離された後、貼着領域R2が剥離される作用について具体的に説明する。
【0041】
まず、開封補助部19をもって引き上げると、開封補助用折曲線21A,21Bおよびスリット20で囲まれた開封補助部19が隆起した状態をなす。そして、この際には、本実施形態では、スリット20の両側に開封補助用折曲線21A,21Bを設けるため、上側外フラップ16Aの突出寸法や中しん4の段目方向などに拘わらず、予め設計した開封補助用折曲線21A,21Bに沿った谷折れ線を形成することができる。
【0042】
なお、開封補助部19を把持して引き上げた状態では、上側内フラップ14A,14Bに対してスリット20の両端が離れる高さTは同一である。一方、開封補助用折曲線21A,21Bは、中心線L1に対する先端位置P1,P2までの距離S1,S2が異ならせることにより、傾斜角度α,βを異ならせているため、上側内フラップ14A,14Bに対する高さ方向の各傾斜角度が異なる。この傾斜角度は、貼着領域R1,R2近傍での変位量に相当し、第1の開封補助用折曲線21Aの側が、第2の開封補助用折曲線21Bの側より変位量が大きい。そして、この変位は、それぞれ貼着領域R1,R2の接着を解除(剥離)する力として作用する。
【0043】
即ち、本実施形態では、開封補助部19は、開封補助用折曲線21A,21Bの傾斜角度α,βを異ならせた非対称に形成しているため、両側に位置する一対の貼着領域R1,R2に作用する力を偏らせることができる。その結果、変位量が大きく、力が強く作用する第1の開封補助用折曲線21Aが位置する貼着領域R1の側を先に剥離させた後、第2の開封補助用折曲線21Bが位置する残りの貼着領域R2を後から剥離させることができる。
【0044】
因みに、この開封力の分配作用は、上側外フラップ16Aを開封する際に加える総合力に大きな影響を及ぼす。即ち、一対の貼着領域R1,R2に均等な力を加えて剥離する場合には、単一の貼着領域R1を剥離する際の力の2倍の力が必要である。これに対して、本実施形態では、従来では均等に力が分配される中心を把持して開封操作を行っても、前述のように作用する力を貼着領域R1,R2に分配できる。その結果、総合力としては、本実施形態の包装箱であれば、60%程度の力で開封することが可能であることを引っ張り試験により確認している。
【0045】
なお、以上の説明では、上側外フラップ16Aを開封する場合を一例として説明したが、他方の上側外フラップ16Bを開封する場合、および、他の下側外フラップ17A,17Bを開封する場合も同様である。勿論、一方の上側外フラップ16A,16Bまたは下側外フラップ17A,17Bを開封した後に、残りを開封する場合には、その先端縁だけを直接把持して開封してもよい。
【0046】
また、前記開封操作の一例では、上側外フラップ16Aの先端縁とスリット20とに指を差し込んで把持して開封作業を行うようにしたが、上側外フラップ16A,16Bの先端縁間に指を差し込み、一方の上側外フラップ16Aの先端縁を引き上げるように開封作業を行ってもよい。または、上側外フラップ16Aのスリット20に指を差し込み、先端縁の側を引き上げるように開封作業を行ってもよい。これらのようにしても、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0047】
図8から図10は第2実施形態の包装箱を示す。この包装箱は、把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bを設けない構成とした点で、第1実施形態と大きく相違している。
【0048】
具体的には、第2実施形態の包装箱のブランクは、図8に示すように、上側外フラップ16A,16Bにのみ、開封補助部19を設け、上下の制限を設けている。そして、スリット20は、第1実施形態と比較して側壁11A,11Bとの境界である第2折曲線18の側に偏った位置に設けることにより、両端に形成する開封補助用折曲線21A,21Bの全長が長くなるように構成している。なお、この構成により、作業者は、上側外フラップ16A,16Bの先端縁からスリット20にかけて開封補助部19を把持することが不可能になるため、本実施形態のスリット20は、把持する際の考慮はせず、直線状をなすように構成している。また、スリット20は、全長を長くした開封補助用折曲線21A,21Bの先端位置P1,P2が、確実に上側外フラップ16A,16Bの先端縁上に位置するように全長を短く構成している。そして、開封補助用折曲線21A,21Bは、第1実施形態に示すリード罫の代わりに、表紙2の側から罫を入れて設けた逆罫により構成している。
【0049】
この包装箱のブランクは、図9に示すように、端壁10Aに対して側壁11Aを折り曲げ、側壁11Bに対して端壁10Bを折り曲げ、重畳した糊代部12と端壁10Bの側縁とを貼着した状態で製造メーカに出荷される。そして、下側内フラップ15A,15Bを折り曲げた後に、下側外フラップ17A,17Bを折り曲げ、これらの重畳部分をホットメルトにより貼着した後、所定の商品を収容した後に、上側内フラップ14A,14Bを折り曲げた後に、上側外フラップ16A,16Bを折り曲げ、これらの重畳部分をホットメルトにより貼着する。
【0050】
そして、この包装箱を開封する場合には、作業者は、上側外フラップ16A,16Bの先端縁間に指を差し込み、例えば上側外フラップ16Aの先端内面に指を当て、上向きに引き上げる。これにより、上側外フラップ16Aは、スリット20を境界として段差が生じるとともに、開封補助用折曲線21A,21Bに沿って谷折れした状態をなす。
【0051】
この状態で更に力を加えると、図10に示すように、上側外フラップ16Aと上側内フラップ14Bとの貼着領域R1の側が剥離された後、上側外フラップ16Aと上側内フラップ14Aの貼着領域R2の側が剥離される。
【0052】
図11から図13は第3実施形態の包装箱を示す。この包装箱は、4枚の外フラップ16A,16B,17A,17Bのうち、1枚の上側外フラップ16Aにのみ、開封補助部19を設けた点で、第1実施形態と大きく相違している。
【0053】
具体的には、第3実施形態の包装箱のブランクは、図11に示すように、上側外フラップ16Aに、円弧状をなすスリット20と、一対の開封補助用折曲線21A,21Bとを有する開封補助部19が設けられるとともに、把持補助用折曲線22A,22B,23A,23Bが設けられている。そして、スリット20は、その幅(横)方向の中心線L2が、上側外フラップ16Aの中心線L1から、第1の開封補助用折曲線21Aを設ける側に横方向に偏った位置に設けることにより、中心線L1を基準として左右非対称としている。また、開封補助用折曲線21A,21Bは、第1実施形態と同様のリード罫により構成しており、その傾斜角度α,βを同一としている。さらに、第1把持補助用折曲線22A,22Bは、スリット20の中央ではなく、上側外フラップ16Aの中央から、第2折曲線18上におけるスリット20の両端に対応する位置に向けて延びるように設けている。
【0054】
この第3実施形態の包装箱を開封する場合には、作業者は、第1実施形態と同様の開封作業を行う。そして、この第3実施形態では、開封補助部19を引き上げると、開封補助用折曲線21A,21Bおよびスリット20で囲まれた開封補助部19が隆起した状態をなし、開封補助用折曲線21A,21Bに沿った谷折れ線が形成される。
【0055】
但し、本実施形態では、開封補助部19は、開封補助用折曲線21A,21Bの傾斜角度α,βを同一に形成しているため、これら開封補助用折曲線21A,21Bによる開封力の分配作用は均等である。しかし、本実施形態では、スリット20自体を開封補助用折曲線21Aを設ける側に偏らせているため、両側に位置する一対の貼着領域R1,R2に作用する力を偏らせることができる。その結果、力が強く作用する第1の開封補助用折曲線21Aが位置する貼着領域R1の側を先に剥離させた後、第2の開封補助用折曲線21Bが位置する残りの貼着領域R2を後から剥離させることができる。
【0056】
なお、本発明の包装箱は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、開封補助部19は、第1実施形態では全ての外フラップ16A,16B,17A,17Bに設け、第2実施形態では上側外フラップ16A,16Bにのみ設け、第3実施形態では、上側外フラップ16Aのみに設けたが、その形成数や形成位置は希望に応じて変更が可能である。
【0058】
また、第1および第2実施形態では、対向する上側外フラップ16A,16Bに対して、左側に開封補助用折曲線21Aを形成し、右側に開封補助用折曲線21Bを形成したが、一方の上側外フラップ16Aは、左側に開封補助用折曲線21Aを形成し、右側に開封補助用折曲線21Bする一方、他方の上側外フラップ16Bは、左側に開封補助用折曲線21Bを形成し、右側に開封補助用折曲線21Aする構成としてもよい。このようにすれば、上側外フラップ16A,16Bを封緘した状態で、互いの先端縁を境界として開封補助用折曲線16A,16Bを対称に位置(鏡面反射形状)させることができる。
【0059】
さらに、前記各実施形態では、端壁10A,10Bおよび側壁11A,11Bの上下端縁にフラップ14A,14B〜17A,17Bを連設する構成としたが、例えば上端のみにフラップ14A,14B,16A,16Bを連設した構成としてもよい。
【0060】
さらにまた、前記各実施形態では、外フラップ16A,16B,17A,17Bを同一の突出寸法で形成し、上下端の開口部において中央部で互いの先端縁が突き合うように構成したが、互いの先端縁が突き合う寸法設定であれば、その突出寸法は異なるように構成してもよい。
【0061】
そして、前記各実施形態では、端壁10A,10B、側壁11A,11Bおよびフラップ14A,14B〜17A,17Bからなる蓋壁により構成した六面体構造としたが、各端壁10A,10Bと側壁11A,11Bとの間に面取り壁を設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態の包装箱のブランクを示す平面図である。
【図2】(A),(B),(C),(D)は図1の要部拡大断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の包装箱を示す斜視図である。
【図4】図3の包装箱の平面図である。
【図5】第1実施形態の包装箱の開封時の一工程を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の包装箱の開封時の他の一工程を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態の包装箱の開封状態を示す斜視図である。
【図8】第2実施形態の包装箱のブランクを示す平面図である。
【図9】第2実施形態の包装箱を示す斜視図である。
【図10】第2実施形態の包装箱の開封時の一工程を示す斜視図である。
【図11】第3実施形態の包装箱のブランクを示す平面図である。
【図12】第3実施形態の包装箱を示す斜視図である。
【図13】第3実施形態の包装箱の開封時の一工程を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1…段ボール紙
2…表紙
3…裏紙
4…中しん
10A,10B…端壁
11A,11B…側壁
12…糊代部
13…第1折曲線
14A,14B…上側内フラップ
15A,15B…下側内フラップ
16A,16B…上側外フラップ
17A,17B…下側外フラップ
18…第2折曲線
19…開封補助部
20…スリット
20a…円弧状湾曲部
21A,21B…開封補助用折曲線
21a…折曲線
21b…切断線
22A,22B…第1把持補助用折曲線
23A,23B…第2把持補助用折曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ対向する各一対の端壁および側壁を備え、前記各端壁の少なくとも一端に内フラップをそれぞれ連設するとともに、前記各側壁に内フラップの外面に重畳し互いの先端縁が突き合う外フラップをそれぞれ連設し、これらフラップの重畳部分を貼着することにより封緘した包装箱において、
少なくとも一方の外フラップに、その先端縁に沿って延びるスリットと、該スリットの略両端から外フラップの先端縁に向けて外広がりに傾斜して延びる一対の開封補助用折曲線と、を有する開封補助部を設け、
前記開封補助部を、外フラップにおける突出方向と同一方向に延びる中心線を基準として、非対称に形成したことを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記包装箱は、表紙および裏紙の間に波状をなす中しんを配設した段ボール紙製であり、その中しんが前記外フラップの突出方向に沿って延びるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記スリットを、前記外フラップの幅方向中央に位置するように設け、各開封補助用折曲線の傾斜角度を異なるように形成することにより、前記開封補助部を非対称に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記スリットを、前記外フラップの幅方向中央から横方向に偏った位置に設けることにより、前記開封補助部を非対称に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装箱。
【請求項5】
前記スリットの中間位置から連続する側壁に向けて外向きに傾斜して延びる一対の把持補助用折曲線を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の包装箱。
【請求項6】
前記スリットの略両端から連続する側壁に向けて延びる一対の把持補助用折曲線を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−13123(P2010−13123A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172094(P2008−172094)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】