説明

包装箱

【課題】
梱包、開梱の作業によっても傷まず、繰り返し使用することができ、かつ、重量の重い物品の取り出しが可能な包装箱を提供する。
【解決手段】
箱1は、上面と、上面に連設され対向する垂直2面(側面)と、前記側面に連設される底面と、収容物の出し入れを行う開閉部から構成される。図1のとおり、側面ではない対向する垂直2面が、収容物の出し入れを行う開閉部である。開閉部は、上フラップ2、左フラップ3a、右フラップ4b、下フラップ5の4つのフラップから構成される。上フラップ2は箱1の上面から連設され、左フラップ3a、右フラップ4bは箱1の側面から連設され、下フラップ5は箱1の底面から連設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量が比較的重い物品の運搬に好適で繰り返し使用できる包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の運搬においては、運搬中に物品を傷つけないよう、包装箱に入れて運搬することが多い。例えば、包装箱としては、ボール紙でなる直方体の箱(段ボール箱)であって、底面と上面をフラップ(段ボール箱の蓋のことをいう、以下同じ。)で形成したものが最も一般的である。このような段ボール箱では、あらかじめ底面のフラップ同士をクラフトテープ等で貼り合わせ、開口した箱の上部より物品を挿入し、物品を挿入した後に上面のフラップ同士をクラフトテープ等で貼り合わせることによって蓋をし、物品を包装箱に収納した状態で運搬する。また、運搬先では、箱上面に貼り付けたクラフトテープ等を剥がして、物品を包装箱から取り出す。さらに、箱底面に貼り付けたクラフトテープ等を剥がせば、板状に折り畳むことができ、物品を取り出した後の片付けが容易である。
【0003】
しかし、上述のように折り畳む際にクラフトテープ等を剥がす作業は、箱を傷める原因となり、このような傷んだ箱は美観を損なうこと、また、強度が低下することから、再度使用するには不向きである。また、持ち上げるのが困難な重量や体積を有している物品については、箱上面から物品を取り出すことなく、箱側面をカッターナイフ等で切り開いて、箱側面から物品を取り出すこともある。このような側面が切り開かれた箱を再度使用することも難しい。このように、従来の包装箱は、一度使用した後に廃棄するしかなく、エコロジーまた金銭的な面から、一度使用した箱を繰り返し使用できる包装箱の提供が求められている。
【0004】
上記の課題に対する一つの解決策として、クラフトテープ等を用いずに梱包することが考えられ、そのような手段を提案する特許文献1が存在する。この包装箱は、筒状4側壁の一方の対向側壁上辺より先端相互が当接する内フラップを連設し、他方の対向側壁上辺より外フラップを連設し、外フラップに形成された差込片を内フラップに形成された差込溝に嵌挿させることにより、クラフトテープ等を用いずに天面を閉塞するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−143025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の包装箱は、箱上面を収容物の出入口とすることが前提となっている。そのため、上述のとおり、大きな重量や体積を有している物品については、箱上面から収容物を取り出すことが困難であり、箱側面をカッターナイフ等で切り開いて、箱側面から収容物を取り出すのが一般的で、繰り返し使用するには適さない。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、梱包、開梱の作業によっても傷まず、繰り返し使用することができ、かつ、重量の重い物品の収納・取り出しが容易な包装箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、1組の対向する垂直面のいずれかが開閉自在である開閉部を有する直方体の箱であって、前記開閉部は、収容物の出入口となるものであり、上下フラップと左右フラップの4つのフラップを有するとともに、下フラップ、左右フラップ、上フラップの順に箱の内側から外側に向かって重なり合うことによって閉塞され、前記上フラップは、略下向きに延びる少なくとも1つの挿入片を有し、前記左右フラップの少なくともいずれか一方は、前記挿入片を挿入可能な挿入孔を有することを特徴とする。
【0009】
以上の態様では、4つのフラップを重ね合わせることによって、開閉部を閉塞させることができるため、クラフトテープ等でフラップ同士を張り合わせる必要がない。開梱の際に、クラフトテープ等を剥がすこと必要もないため、箱を傷つけるこがなく、箱を繰り返し使用することができる。
【0010】
また、以上の態様では、直方体である箱の1組の対向する垂直面を収容物の出入口(開閉部)として使用するものであるため、箱の上面である水平面に開閉部を設けた従来の箱と異なり、垂直面からの収容物の取出しが可能となる。したがって、収容物が重量の重い物品であっても持ち上げる必要がなく、引きずりながら引き出したり押し込むができる。特に、キャスターを備えた椅子や机等であれば、キャスターを走行させながら収納し、また、取り出すことができる。
【0011】
一方、運搬中に箱内部でキャスターを備えた収容物が水平方向に遊動すると、特にキャスター部分が収容物において最も突出している場合には、箱下部がキャスターに押されて、箱の開閉部が開くことが懸念される。しかし、上記態様では、下フラップ、左右フラップ、上フラップの順に箱の内側から外側に向かって重なり合っているため、開閉部が開いて収容物が箱から出るということがない。すなわち、下フラップが箱の最も内側に位置することで、まず、キャスターの遊動による開閉部への衝撃を下フラップが吸収する。この下フラップを左右フラップが覆い、下フラップを確実に固定する。さらに左右フラップの開閉は、上フラップにより確実に固定される。そして、上フラップは、上フラップに備えられた挿入片を左右フラップに備えられた挿入孔に挿入することによって、開閉部を確実に閉塞することができる。
【0012】
従来の箱は、箱内部に位置する2つのフラップを、箱外側に位置する2つのフラップが覆う形態であり、箱外側に位置する2つのフラップをクラフトテープ等で貼り合わせるか、箱外側に位置する2つのフラップに挿入片を設けることで開閉部を閉塞していたのに対して、上記態様では、上フラップ1つのみに挿入片を設けることで開閉部を確実に閉塞することができる。したがって、箱の梱包・開梱が容易でリサイクル性に優れる。なお、上記従来の箱のように、箱外側に2つのフラップがある形態においては、箱を回転させて水平面にある開閉部を垂直面にして使用したとしても、開閉部の強度が低いために包装箱としての使用に適さない。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記左右フラップは、前記左右フラップから互いに向き合う方向に突出して設けられた突出片を有し、前記突出片が、互いに向き合う左右フラップに対して、箱内側または箱外側から重なるように設けられたことを特徴とする。
【0014】
以上の態様では、左フラップに設けられた突出片は右フラップが箱外側に開くのを抑え、右フラップに設けられた突出片は左フラップが箱外側に開くのを抑えることができ、左右フラップの開閉部の閉まりがより強固になる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、前記左右フラップが、2つの突出片を有し、前記突出片は、前記左右フラップの縁に切り込みを入れることによって形成されるものであることを特徴とする。
【0016】
以上の態様では、2つの突出片があることによって、左右フラップ同士の重なり度合が向上し、左右フラップの開閉部の閉まりがさらに強固になる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1〜3に記載の発明において、前記上フラップは、前記挿入片の挿入方向と垂直な方向に、折り曲げ線を有することを特徴とする。
【0018】
挿入片を挿入孔に挿入する際、上フラップを曲げたり、たわませたりして、挿入片を挿入孔の入り口に合わせる必要があるが、以上の態様では、折り曲げ線によって上フラップの曲げる箇所が固定されるため、挿入片を挿入孔に挿入する作業が容易になる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4に記載の発明において、前記上フラップは、前記折り曲げ線上に、手掛けとなる切欠部を有することを特徴とする。
【0020】
以上の態様では、作業者が箱を開ける際、切欠部に手を掛けることができる。これにより、上フラップを折り曲げ線に沿って折り曲げやすくなり、挿入片を挿入孔に挿入する作業が容易になる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1〜5に記載の発明において、前記上フラップは、前記挿入片を2つ有し、前記2つの挿入片の間に、左右フラップの接合部分に当接して、左右フラップの開閉を抑える抑止片を有することを特徴とする。
【0022】
以上の態様では、上フラップが抑止片を有することによって、箱内部から開閉部に向かって働く力で左右フラップが開く方向に動くのを抑制し、開閉部の開きを抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の本発明によれば、梱包、開梱の作業によっても傷まず、繰り返し使用することができ、かつ、重量の重い物品に取り出しが可能な包装箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る包装箱の全体構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係る包装箱の上フラップのみを切り出した図。
【図3】本発明の実施の形態に係る包装箱の左フラップのみを切り出した図(a)と他の態様を示す図(b)、図(c)。
【図4】本発明の実施の形態に係る包装箱の下フラップのみを切り出した図。
【図5】本発明の実施の形態に係る包装箱の展開した状態を示す図。
【図6】本発明の実施の形態に係る包装箱の展開した状態を示す図。
【図7】本発明の実施の形態に係る包装箱の左右フラップおよび下フラップが閉塞した状態を示す斜視図。
【図8】本発明の実施の形態に係る包装箱のすべてのフラップが閉塞した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施形態という。)について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同様の構成については、適宜説明を省略する場合がある。
【0026】
[1.本実施形態]
[1−1.構成]
(1)全体構成
本実施形態の包装箱(以下、箱1とする)は、各面が方形で立方体を含む直方体である。本実施形態の箱1は、上面と、上面に連設され対向する垂直2面(側面)と、前記側面に連設される底面と、収容物の出し入れを行う開閉部から構成される。図1のとおり、側面ではない対向する垂直2面が、収容物の出し入れを行う開閉部である。
【0027】
2つの開閉部はともに、上フラップ2、左フラップ3a(4a)、右フラップ4b(3b)、下フラップ5の4つのフラップから構成される。上フラップ2は箱1の上面から連設され、左フラップ3a(4a)、右フラップ4b(3b)は箱1の側面から連設され、下フラップ5は箱1の底面から連設されている。2つの開閉部は同じ構成である。
【0028】
箱1は、開閉部を閉じた状態では、箱1内部から見て下フラップ5、左右フラップ、上フラップ2の順に重なり合っている。すなわち、箱の最も内側に下フラップ5が位置し、下フラップを左右フラップが覆い、さらに上フラップ2が左右フラップを覆う形態である。
【0029】
また、箱1は、上面と側面が当接する辺を起点として折り曲げることによって、上面、2つの上フラップ、左フラップ4a、右フラップ4b、側面、からなる面と、底面、2つの下フラップ、左フラップ3a、右フラップ3b、側面、からなる面に分け、折り畳むことできる。
【0030】
以下、一方の開閉部を構成する上フラップ2、左フラップ3a、右フラップ4b、下フラップ5について説明する。
【0031】
(2)上フラップの構成
図2は、上フラップ2のみを切り取った図である。上フラップ2は略長方形であり、箱1の上面と上フラップ2の接する辺を上フラップ2の上辺とし、長さa1とする。上フラップ2の上辺に垂直な2辺を上フラップ2の左右辺とし、長さa2とする。残りの1辺を上フラップ2の下辺とする。
【0032】
上フラップ2は、図2のとおり、挿入片21、21’、抑止片22、折り曲げ線23、切欠部24、24’を有する。
【0033】
挿入片21、21’は、上フラップ2の下辺から、上フラップ2の上辺と反対方向に延びる突出部分である。挿入片21、21’は、図2のように、上フラップ2の左右近傍から離れたように位置する。この位置は、挿入片21、21’が、それぞれ挿入片21を左フラップ3aに備えられた挿入孔32aに、挿入片21’を右フラップ4bに備えられた挿入孔42bに挿入することによって開閉部を閉塞できる位置である。
【0034】
挿入片21、21’の長さおよび幅は、挿入孔32a、42bに挿入し上フラップ2が固定できるよう、箱の大きさに合わせて適宜調整することができる。なお、長さとは、箱の使用状態において、垂直方向を示すものであり、幅とは、水平方向を示すものとする。
【0035】
抑止片22は、上フラップ2の下辺から突出する部分であり、2つの挿入片21、21’の間に備えられる。左右フラップの接合部分に当接して、左右フラップの開閉を抑える働きがある。
【0036】
抑止片22の長さおよび幅は、左右フラップが開くのを抑えるよう、箱の大きさに合わせて適宜調整することができる。
【0037】
折り曲げ線23は、上フラップ2の上下辺と平行な直線である。上フラップ2の上辺と上フラップ2の下辺のほぼ真ん中に備えられ、上フラップ2の左辺から上フラップ2の右辺まで延びる。折り曲げ線23は、上フラップ2を折り曲げやすくする働きがある。
【0038】
切欠部24、24’は、上フラップ2の左辺および右辺から上フラップ内向きに台形に切り取った部分であり、その台形の中心線を延長した線が、折り曲げ線23と一致する。上フラップ2を折り曲げ線23に沿って折り曲げる際に、切欠部24、24’が手掛けとなる。ここでいう手掛けとは、作業者が折り曲げ線23に沿って上フラップ2を折り曲げ、上フラップ2に設けた挿入片21、21’を、左右フラップに設けた挿入孔32a、42b(詳細は後述する)に挿入する際、または、挿入孔32a、42bから取り出す際に、作業者が指でつまむ部分をいう。
【0039】
(3)左右フラップの構成
図3(a)は、左フラップ3aのみを切り取った図である。左フラップ3aは略長方形であり、箱1の側面と左フラップ3の接する辺を、左フラップ3aの左辺とし、長さb1とする。左フラップ3aの左辺に垂直な2つの辺を左フラップ3aの上下辺とし、長さb2とする。もう1辺を左フラップ3の右辺とする。b2は、a1のおよそ1/2である。また、b2は、a2にさらに挿入片の長さを加えた長さと同等であるのが好ましい。
【0040】
左フラップ3aは、図3(a)のとおり、第1突出片31a、第2突出片31a’、挿入孔32a、手掛部33aを有する。右フラップ4bは、第1突出片41b、第2突出片41’b、挿入孔42bを有する。
【0041】
左右フラップは、フラップ同士が互い違いに交差して固定されるように、それぞれ第1突出片と第2突出片を上下に並べて有する。この第1突出片と第2突出片とは、左右フラップの接合する端部の中央に切り込みを入れることで、当該端部から突出する部分として形成される。切り込みを入れることにより形成される2つの突出片のうち、左フラップ3aの上辺側を第1突出片31a、左フラップ3aの下辺側を第2突出片31’aとする。同様に、右フラップ4bは、対応する第1突出片41b、第2突出片41’bを備える。切り込みは、左フラップ3aの右辺に垂直に設けられる。互いに重ね合うことによる突出片の角の磨耗を防止するため、図3(a)のように、第1突出片31a、第2突出片31’aの角をR状に切り取る。
【0042】
なお、突出片は、上記態様に限られず、例えば、図3(b)のように、左フラップ3aの右辺にV字に切り込みを入れることにより突出片を形成してもよい。また、突出片を左右フラップで1つずつ設けることで構成することも可能である。たとえば、図3(c)のように、左フラップ3aは、第2突出片31’aに相当する部分はなく、第1突出片31aのみを備え、右フラップは、第1突出片41bに相当する部分がなく、第2突出片41’bのみを備えるような構成でもよい。
【0043】
突出片31a、31’a、41b、41’bの幅は、突出片同士の重なりが大きいほど開閉部の閉まり強度が高まるが、箱の大きさに合わせて適宜調整できる。
【0044】
挿入孔32aは、左フラップ3aの上部中央に略長方形に形成された穴である。この穴は、完全にくり抜かれたものではなく、長方形の上辺は左フラップ3aと連設されたままで、長方形の残り3辺に切り込みを入れたものである。挿入孔32aの左端は、左フラップ3aの左辺から離れたところに位置する。この位置は、挿入片21を挿入することによって開閉部を閉塞できる位置である。
【0045】
挿入孔32aの長さは、挿入片21が挿入しやすいよう、箱の大きさに合わせて適宜調整できる。挿入孔32aの幅は、挿入片21の幅と同じか、やや長いものである。
【0046】
手掛部33aは、第1突出片31aから左フラップ内向きに台形に切り取った部分である。作業者が、互い違いに重なった左右フラップを開く際に、手掛部33aを指でつまみを開くことで、左右フラップの突出片の閉塞を解放することができる。
【0047】
(4)下フラップの構成
図4は、下フラップ5のみを切り取った図である。下フラップ5は略長方形であり、箱1の底面と下フラップ5の接する辺を、下フラップ5の下辺とする。下フラップ5の下辺につながる2辺を下フラップ5の左右辺、もう1辺を下フラップ5の上辺とする。c1は、a1と同じ長さである。c2は、b2と同等の長さがよい。
【0048】
[1−2.作用効果]
以上のような本実施形態の構成に基づいて、箱の作用について説明する。
【0049】
図5は、箱を展開した状態であって、箱1の上面とそれに連設する2つの上フラップ2、箱1の側面と連設する左フラップ4a、右フラップ4bを示したものである。図6は、箱1の底面とそれに連設する2つの下フラップ5、箱1の側面と連設する左フラップ3a、右フラップ3bを示したものである。のりしろ61を利用して、図5に示された箱1の側面と図6に示された箱1の底面を接着させ、のりしろ62を利用して、図5に示された箱1の上面と図5に示された箱1の側面を接着させると、上面、側面、底面は一体となる。
【0050】
(1)箱の組み立て方法
図5、図6のように、箱を展開した状態から、箱1の底面を下にして水平に箱1を置く。まず、図1に示すように、下フラップ5を垂直方向に立てる。下フラップ5が開閉部の下部分を形成する。下フラップ5は、最も箱内側に位置することになる。
【0051】
次に、図7に示すように、下フラップ5の上に、左フラップ3a、右フラップ4bを重ねる。このとき、上フラップ2は、箱1内部に入らないようにする。左フラップ3a、右フラップ4bを下フラップ5の上に重ねることによって、開閉部のほぼ全領域が閉塞される。下フラップ5と、左フラップ3a、右フラップ4bとが重なっている開閉部の下部分は、フラップが二重に重なるため開閉部の強度が高い。
【0052】
次に、左フラップの第1突出片31aが右フラップの第1片41bより箱外側に位置し、左フラップの第2突出片31a’が右フラップの第2片41’bより箱内側に位置するように、左右フラップの突出片が互い違いに交差して、左右フラップが固定される。左右フラップが互いに重なり合うことによって、左右フラップが箱1の底面に対して垂直方向に立つよう位置づけられる。さらに、左右フラップの突出片が互いに重なり合う開閉部の中心部分であって、特に開閉部の下部分は、フラップが三重に重なるため開閉部の強度が高い。
【0053】
次に、切欠部24、24’に手を掛け、折り曲げ線23に沿って上フラップ2を折り曲げながら、図8のように、挿入片21、21’をそれぞれ挿入孔32a、42bに挿入する。これにより、上フラップ2が、開閉部の一部として固定される。
【0054】
以上の組み立て方法によって、箱の対向する垂直面のうち1つの面の開閉部が閉塞される。対向する他方の面の開閉部も同様の手順で閉塞される。
【0055】
(2)箱の展開方法
箱1の展開方法は、上記箱1の組み立て方法を逆から行う方法である。開閉部が閉塞された箱において、切欠部24、24’に手を掛け、挿入片21、21’をそれぞれ挿入孔32a、42bから引き出す。手掛部33aに手を掛け、左右フラップ3a、4bを箱1外側に向けて開ける。上下フラップ2、5、左フラップ3a、右フラップ4bをそれぞれ、開閉部を形成するときとは反対方向に曲げ、折り畳む。
【0056】
(3)箱全体の効果
本実施形態の箱は、開閉部を閉塞させるためにクラフトテープ等で貼り合わせる必要がない。本実施形態の箱は、開閉部を形成する4つのフラップを重ねあわせることによって、開閉部を閉塞することができるためである。したがって、本実施形態の箱は、従来のように、開梱の際、開閉部を閉塞させるために箱に貼り付けたクラフトテープ等を剥がす必要がなく、そのような作業によって箱が傷つくということがない。開梱、梱包によって、箱を傷つけることがないため、本実施形態の箱は、繰り返し使用することができるという利点がある。
【0057】
本実施形態の箱の上面および底面は1枚の板状の面である。従来、箱上面および底面は、収容物の扉部分として使用するためにフラップで形成されており、箱を積み重ねるのに適した強度を有していなかった。本実施形態の箱は、従来のような箱上面および底面がフラップで形成されているものではないため、箱を積み重ねても箱の形状を保持できる十分な強度を有する。
【0058】
本実施形態の箱は、1組の対向する垂直面が、開閉部となっている。したがって、重量の重い物品であっても持ち上げる必要がなく、引きずりながら引き出したり押し込むことができる。特に、キャスターを備えた椅子や机等であれば、キャスターを走行させながら収納し、また、取り出すことができる。収容物をいったん持ち上げて収納するといった従来の労力と比べて、はるかに小さな労力で作業できる。このように、作業者にとって、開梱、梱包が簡単である。
【0059】
(4)開閉部の効果
運搬中に箱内部でキャスターを備えた収容物が水平方向に遊動すると、特にキャスター部分が収容物において最も突出している場合には、箱下部がキャスターに押されて、箱の開閉部が開くことが懸念される。しかし、本実施形態の開閉部は、4つのフラップで形成され、下フラップ、左右フラップ、上フラップの順に箱の内側から外側に向かって重なり合っているため、開閉部が開いて収容物が箱から出るということがない。すなわち、下フラップが箱の最も内側に位置することで、まず、キャスターの遊動による開閉部への衝撃を下フラップが吸収する。この下フラップを左右フラップが覆い、下フラップを確実に固定する。さらに左右フラップの開閉は、上フラップにより確実に固定される。
【0060】
従来の開閉部は、上下フラップを左右フラップより内側(一般的なダンボール箱)または外側(特許文献1)に位置させるように、2層のフラップから構成されている。これに対して、本実施形態の開閉部は、上フラップと下フラップを異なる層に配置するという従来にない構成であり、すなわち、3層のフラップから構成される。これにより、本実施形態の開閉部は、開閉部の閉塞強度を飛躍的に高め、かつ、開閉の容易さを高めている。
【0061】
本実施形態の上フラップは、挿入片を有しており、左右フラップに備えられた挿入孔に挿入することによって、左右フラップが箱外側に押し出されることで開閉部が開くのを抑制する効果がある。従来の箱は、箱内部に位置する2つのフラップを、箱外側に位置する2つのフラップが覆う形態であり、箱外側に位置する2つのフラップをクラフトテープ等で貼り合わせるか、箱外側に位置する2つのフラップに挿入片を設けることで開閉部を閉塞していたのに対して、本実施形態の上フラップは、上フラップ1つのみに挿入片を設けることで開閉部を確実に閉塞することができる。したがって、箱の梱包・開梱が容易でリサイクル性に優れる。
【0062】
本実施形態の上フラップは、抑止片を有する。箱を組み立てた状態において、挿入片は、左右フラップより箱内側に位置し、抑止片は、左右フラップより箱外側に位置する。すなわち、挿入片と抑止片が左右フラップを挟む状態にある。これにより、左右フラップが箱外側に押し出されることで開閉部が開くのを抑制する効果がある。
【0063】
本実施形態の上フラップは、手掛けとなる切欠部を有する。挿入片を挿入孔に挿入するとき、また挿入孔から挿入片を取り出すとき、作業者は上フラップのどこかを掴まなければならない。手掛けとなる切欠部が、折り曲げ線上にあることで、上フラップを折り曲げ線に沿って折り曲げやすくなり、挿入片を挿入孔に挿入する作業が容易になる。
【0064】
また、本実施形態の上フラップは、手掛けとなる切欠部を有するため、作業者が、例えば、抑止片を掴んで作業を行うということを避けることができる。抑止片は、上記のとおり、開閉部が開くのを抑制する効果があるが、抑止片の変形によってはその効果が低減することが考えられる。作業者が抑止片を掴んで抑止片を変形させることがなく、抑止片の有する作用効果が保持されることによって、箱を繰り返し使用することができる。
【0065】
本実施形態の上フラップは、折り曲げ線を有する。挿入片を挿入孔に挿入する際、上フラップを曲げたり、たわませたりして、挿入片を挿入孔の入り口に合わせる必要があるが、折り曲げ線があることによって、上フラップの曲げる箇所が固定されるため、挿入片を挿入孔に挿入する作業が容易になる。
【0066】
本実施形態の左右フラップは、突出片を有し、互い違いに交差することにより左右フラップが固定される。下フラップは左右フラップによって固定されるが、左右フラップの固定によって、下フラップがさらに強力に固定されるという効果を有する。
【0067】
本実施形態の左右フラップは、手掛部を有するため、作業者が手掛部を掴んで、互い違いに交差する左右フラップを開くことができる。作業者が、左右フラップを開ける際に、左右フラップの角部分を掴んで開けることがあるが、フラップの角は傷みやすい。手掛部があれば、作業者が、角部分を掴んで作業を行うということを避けることができ、角部分の損傷を抑えることで、箱を繰り返し使用することができる。
【0068】
[2.他の実施形態]
本発明は上記実施形態において示した態様に限定されるものではなく、例えば、以下のような実施形態も包含するものである。
【0069】
本発明の挿入片および挿入孔は、1つずつでもよい。挿入孔が1つの場合には、挿入孔は、左フラップまたは右フラップのどちらか一方にのみ備えられる。挿入孔の位置によって、挿入片の位置を調整することができる。
【0070】
本発明の各フラップおよび挿入片、突出片、抑止片の角は、丸みをもたせてもよい。角に丸みがある方が、耐衝撃性の点でよい。特に、挿入片は挿入孔へ出し入れすることによって角が傷みやすいため、角に丸みをもたせる。
【0071】
本発明の挿入片、突出片、抑止片、切欠部、手掛部には、組立方法の表示部を付してもよい。例えば、挿入片には奥まで入れるよう指示する記載をする。これにより、作業者に、挿入片を下向きに挿入孔の奥まで入れるよう促すことができ、開閉部を確実に閉塞することができる。
【0072】
また、突出片には、第1突出片と第2突出片のうち箱内側に入れ込む方がどちらであるかの表示を記載する。これにより、作業者が、左フラップと右フラップを交互に重ね合わせるときに、確実に作業することができる。
【0073】
また、抑止片には、この部分を持って箱を開けてはいけないよう注意を促す記載をし、切欠部には、この部分を持って箱を開けるよう指示する記載をする。これにより、作業者に、上フラップを持ち上げるときに、抑止片ではなく切欠部を掴むように示すことができる。抑止片には、左右フラップが箱外側に動いて開閉部が開くことがないようにする抑制効果があり、作業者が抑止片を持って開けようとすることによって抑止片が傷み、抑止片の抑制効果が低下するのを防ぐことができる。
【0074】
また、手掛部には、この部分を持って箱を開けるよう指示する記載をする。これにより、作業者に、左右フラップを開けるときに、突出片ではなく手掛部を掴むように示すことができる。突出片には、左右フラップが互いに重ね合うことによって固定される効果があり、作業者が突出片を持って開けようとすることによって突出片が傷み、突出片の作用効果が低下するのを防ぐことができる。
【0075】
本発明の箱は、側面の中央やや上よりに、箱の持ち手となる孔を有してもよい。持ち手となる孔に指を入れて、箱を持ち上げることができる。
【0076】
本発明の箱の表面には、再利用箱の表示を付してもよい。例えば、「この箱は環境に配慮して繰り返し使用しています」や、「この箱は再利用箱です ていねいに取り扱いください」と、箱の上面、側面、各フラップに記載する。これにより、作業者、運搬者等、箱を取り扱う者に、箱は繰り返し使用されるものであることを伝え、箱を丁寧に取り扱うように促す。また、箱の使用回数が一目で分かるように、箱使用回数チェック表を、箱の表面に表示してもよい。箱の使用回数によって、箱を廃棄するタイミングを決めることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1・・・箱
2・・・上フラップ
3a、4a・・・左フラップ
3b、4b・・・右フラップ
5・・・下フラップ
61、62・・・のりしろ
21、21’・・・挿入片
22・・・抑止片
23、23’・・・切欠部
24・・・折り曲げ線
31a、41a・・・左フラップの第1突出片
31’a、41’a・・・左フラップの第2突出片
41b、31b・・・右フラップの第1突出片
41’b、31’b・・・右フラップの第2突出片
32a、42a、32b、42b・・・挿入孔
33a、33b・・・手掛部
a1・・・上フラップの上辺の長さ
a2・・・上フラップの左右辺の長さ
b1・・・左フラップの左辺の長さ
b2・・・左フラップの上下辺の長さ
c1・・・下フラップの下辺の長さ
c2・・・下フラップの左右辺の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の対向する垂直面のいずれかが開閉自在である開閉部を有する直方体の箱であって、
前記開閉部は、収容物の出入口となるものであり、上下フラップと左右フラップの4つのフラップを有するとともに、下フラップ、左右フラップ、上フラップの順に箱の内側から外側に向かって重なり合うことによって閉塞され、
前記上フラップは、略下向きに延びる少なくとも1つの挿入片を有し、
前記左右フラップの少なくともいずれか一方は、前記挿入片を挿入可能な挿入孔を有することを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記左右フラップは、前記左右フラップから互いに向き合う方向に突出して設けられた突出片を有し、
前記突出片が、互いに向き合う左右フラップに対して、箱内側または箱外側から重なるように設けられたことを特徴とする、請求項1記載の包装箱。
【請求項3】
前記左右フラップが、2つの突出片を有し、前記突出片は、前記左右フラップの縁に切り込みを入れることによって形成されるものであることを特徴とする、請求項2記載の包装箱。
【請求項4】
前記上フラップは、前記挿入片の挿入方向と垂直な方向に折り曲げ線を有することを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の包装箱。
【請求項5】
前記上フラップは、前記折り曲げ線上に、手掛けとなる切欠部を有することを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の包装箱。
【請求項6】
前記上フラップは、前記挿入片を2つ有し、前記2つの挿入片の間に、左右フラップの接合部分に当接して、左右フラップの開閉を抑える抑止片を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214243(P2012−214243A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80661(P2011−80661)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【出願人】(000208400)大和紙器株式会社 (13)
【Fターム(参考)】