説明

包装装置

【課題】 高速で流れる包装材上にも鮮明でかつ耐擦過性に優れた印字を与える食品包装装置の提供。
【解決手段】 包装装置の印刷ラインにおいて、熱転写プリンタ6の直前に、包装材1を一定の範囲の温度に加熱する手段、および直後に、一定の範囲の温度に冷却する手段を設ける。また熱転写プリンタの直後に、後加熱手段と冷却手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品、部品等を包装するための包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン等のプラスチックからなる包装材に所定の情報を印字し、食品等を封入する包装装置は、一般的に、包装材を送り出すための包装材送り出し手段、包装材に所定の情報を印字する情報印字手段、被包装製品を封入するための製品包装手段等から構成されている。
【0003】
従来より、種々な包装装置が食品等の包装用として開発されており、それらには例えば次のようなものがある。
【0004】
菓子パン等をポリプロピレンの袋体に包装する装置であって、包装材ドラムには連続するポリプロピレンフィルム(以下PPフィルム)が巻かれている。このPPフィルムは数個の案内ローラにより包装手段である横型ピロー包装機へ送られる。この横型ピロー包装機へ送られる途中に設置された情報を印字する手段(この場合は、インクジェットプリンタ)によりPPフィルムに対して例えば賞味期間の日付等の情報が印字されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
また、おにぎりやサンドイッチ等を包装するための包装装置であって、印刷手段として熱転写シートを用い、上記賞味期限の日付等の他に、例えばおにぎりならば、紅鮭、高菜、こんぶ等の個別品種情報等を印字している。(例えば、特許文献2参照。)
【0006】
これら包装装置では製造原価を低減する等の目的のためにライン速度の向上が求められている。特に文献2のように熱転写による印字の場合は、ライン速度を上げると熱溶融転写された印字に流れ、つぶれ等が発生したり、印字された部分が完全に定着する前に擦過によりインクが削られ後続の包装材を汚染したりする不具合があった。
【特許文献1】実開平7−9708号公報
【特許文献2】特開2003−95497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は熱溶融転写された印字にながれやつぶれ等を発生させることなく、且つ印字された部分の定着が速く、擦過に起因する後続包装材の汚染を防止し、ライン速度を向上できる包装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、少なくとも包装材を送り出すための包装材送り出し手段、包装材に所定の情報を熱溶融転写により印字するための情報印字手段、及び被包装製品を包装材に導入、封止するための製品包装手段を有する包装装置において、
【0009】
前記情報印字手段が、印字前の包装材を加熱するための加熱手段および印字後の包装材を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする包装装置である。
【0010】
また、本発明においては、印字された包装材を、前記冷却手段によって冷却する前に、加熱するための後加熱手段を設けることができ、それによって、包装材の加熱・冷却によって奏される効果をより確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱溶融された印字が、ながれやつぶれ等がなく鮮明であり、速やかに定着され、良好な耐擦過性を有し、したがって、後続包装材の汚染が防止され、ライン速度を向上できる包装装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、包装材は、印字される前に、好ましくは直前に、加熱手段によって加熱される。この加熱手段としては、温風を包装材に直接当てる、包装装置が設置されている少なくとも情報印字手段より前段の雰囲気を所望温度に上げる、情報印字手段内部雰囲気を所望温度に上げる等の方法を挙げることができ、特に制限はないが、制御性、簡易性、経済性等の観点から、包装材の案内ロール、ピンチロール等のロール類を加熱して包装材を加熱することが好ましい。特に、制御性の観点から情報印字手段前段近傍にある案内ロール、ピンチロール等のロール類を加熱し、包装材を加熱することが好ましい。
【0013】
本発明においては、包装材はさらに、印字された後に、好ましくは直後に、冷却手段によって冷却される。斯かる冷却手段も、上記加熱手段と同様の観点から、案内ロール、ピンチロール等のロール類、特に情報印字手段後段近傍にある案内ロール、ピンチロール等のロール類を冷却して包装材を冷却することが好ましい。
【0014】
なお、後加熱手段を設ける場合は、上記冷却手段を設ける箇所に後加熱手段を設け、その後段近傍の、例えば案内ロール等を冷却手段として包装材を冷却することができる。
【0015】
加熱手段による加熱は、包装材の情報印字時における温度が35℃〜90℃になるように行われることが好ましい。35℃未満であると、加熱による転写性の向上が得られにくい。また、90℃を超えると、包装材によっては軟化し、あるいは極端な場合には接着してしまう恐れがある。
【0016】
また、後加熱手段を設ける場合には、後加熱手段による加熱は、印字された包装材の温度が35〜90℃になるように行われることが好ましい。斯かる温度範囲が好ましい理由は上記と同じである。
【0017】
冷却手段による冷却は、印字された包装材の温度が10℃〜25℃になるように行われることが好ましい。10℃未満であると、包装材に結露が生じる恐れがある。25℃を超えると、冷却による定着性の向上が得られにくい。
【0018】
なお、上記冷却または後加熱を行う際には、冷却手段(例えば、冷却ロール)または加熱手段(例えば、加熱ロール)と、包装材の情報印字面と反対側の面とを接触させることが好ましい。冷却ロールまたは後加熱ロールを包装材の情報印字面と接触させると、これらのロール面が定着前のインクによって汚染され、後続の包装材を汚染する恐れがあるからである。
本発明で使用される情報転写手段の熱溶融転写媒体としては特に制限はない。
【0019】
熱溶融転写媒体の基材としては、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、アラミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、セロファン等の合成樹脂フィルム、或いはコンデンサー紙、グラシン紙、トレーシング紙のような薄葉紙等を挙げることができる。ここで、耐熱性フィルムが好ましく、特にポリエステルフィルムが価格、機械的強度、寸法安定性、耐熱性等の総合的見地から好ましい。基材の厚さは1〜30μm、好ましくは2〜15μmである。
【0020】
基材の着色層が積層されている面とは反対側の面には転写時の加熱から基材等を保護するために、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂とイソシアネート樹脂との反応生成物、または耐熱粒子を含むアクリル樹脂等を含む、所謂耐熱保護層を形成することが好ましい。
【0021】
着色層において、着色剤は、バインダー樹脂100重量部に対して150〜250重量部含まれることが好ましい。150重量部未満であると所望の印字濃度が得られにくく、一方、250重量部を超えると相対的にバインダー樹脂の量が減少し、結果として、定着性が悪くなり、また印字のつぶれや流れが起こり易くなる。
【0022】
着色剤として顔料、染料を使用することができる。顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、群青、レーキレッド、酸化チタン等を挙げることができ、染料としては、塩基性ベース系、ネオザポン系、ジスアゾ系、アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、可溶性染料系、硫化系、フタロシアニン系、キノンイミン系、シアニン系、ニトロソ系、ニトロ系、スチルベン系、キノリン系、ピラゾロン系、金属錯塩系、ベンゾキノン系、ナフトキノ系等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0023】
着色層には本発明の目的を損ねない範囲で、必要に応じてクロマン系化合物、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、4−チアゾリドン系化合物、紫外線吸収性ポリマー等の紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。また、その他の添加剤、例えば、有機及び/または無機の充填材等の微粒子、離型剤、可塑剤、分散剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、消泡剤、レベリング剤等を含んでもよい。
【0024】
着色層は一般的に0.5〜2g/m2であることが好ましいが、染料、顔料の着色剤の比重や添加量によって適宜変更することができる。
さらに本発明の目的を損ねない範囲で、離型層等その他の層を設けてもよい。
【0025】
上記着色剤層を含む各層の形成は、樹脂等の層構成成分を、水又はトルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、ジオキサン等の溶媒に加え、必要に応じて、ボールミル、バスケットミル、アトライター等を用いて均一に分散、溶解して層形成用の塗布液を調製し、該塗布液を基材に塗布、乾燥することによって行うことができるる。ここで、塗布液の基材への塗布は、グラビアコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、各種ブレードコーター、カーテンコーター等の従来使用されている各種塗布装置を使用して行うことができる。
また、着色層に用いられる樹脂、ワックス等にも特に制限はない。
【0026】
樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂を挙げることができ、これらの中で、熱硬化アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、テルペン系樹脂等が好ましい。
【0027】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、ビーズワックス、サゾールワックス、モンタンワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、リアスワックス、オーキュリーワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス等を好適に使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、下記の実施例、比較例において、「部」は「重量部」を表す。
【0029】
実施例1〜5および比較例1〜2:
厚さ5μmのポリエチレンフタレート(PET)フィルムの一方の面に下記組成(I)の塗布液を塗布量が0.3g/m2となるようにダイレクトグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて耐熱保護層を形成した。
組成(I) シリコーン樹脂 10部
トルエン 45部
MEK 45部
【0030】
上記PETフィルムの他方の面に下記組成(II)の塗布液を塗布量が0.5g/m2となるようにダイレクトグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて剥離層を形成した
組成(II) ポリエチレンワックス 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体 1部
トルエン 10部
【0031】
この剥離層上に下記組成(III)の塗布液を塗布量が1.0g/m2となるようにダイレクトグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥させて色剤層を形成し、熱転写媒体を得た。
エチレン−酢酸ビニル共重合体 10部
テルペンフェノール樹脂 10部
カルナバワックス 10部
カーボンブラック 10部
トルエン 100部
【0032】
得られた各熱転写媒体を図1に示すように構成した模擬包装印刷ラインにおいて使用した。この印刷ラインにおいて、熱転写プリンタの直前に位置する案内ロールを通電加熱して印字前の包装材を加熱し、また、熱転写プリンタの直後に位置する案内ロールの内部に冷却媒体を通して冷却して印字後の包装材を冷却した。このときの加熱温度および冷却温度は表1に示すとおりであった。ポリプロピレンフィルムからなる包装材を10m/min、15m/min、20m/minの各速度で移動させながら、熱転写プリンタ“SmartDate−Sc”(EDM社製)を用いて印字を行い、印字サンプルを得た。得られた印字サンプルの印字特性を下記の基準にしたがって評価した。評価結果は表1に示すとおりである。
【0033】
<印字特性>
印字品位(流れ、つぶれ):
得られた印字の流れ、つぶれの有無を目視で検査した。
◎:流れ、つぶれが確認されなかった
△:実用上問題はないが多少の流れ、つぶれが確認された。
×:ひどい流れ、つぶれが確認された。
転写性(感度;高速印字性):
各速度での印字の状態を目視で検査した。
◎:印字に全く問題ない
○:印字として実用問題のない
×:印字が部分的に問題があった。
耐擦過性・定着性:
各条件で××分間連続印字を行い、包装材及び案内ロールの汚れを検査した。
○:汚れが全くなかった。
×:汚れが確認された。
【0034】
実施例6〜10および比較例3〜4:
熱転写プリンタの直後に位置する案内ロールを、印字後の包装材を加熱するための後加熱手段として使用し、印字前の包装材の加熱温度、および印字後の包装材の加熱温度および冷却温度をそれぞれ表2に示す温度にした以外は、実施例1と同様にして印字サンプルを得、印字特性の評価を行った。評価結果は表2に示すとおりである。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1及び表2に示す結果から明らかなとおり、本発明にしたがって包装材の加熱および冷却を行うことによって得られた印字サンプルは全ての評価項目において非常に優れていることが解かる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一般的な食品包装ラインの概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・包装材、
2・・・案内ロール、
3・・・包装機、
4・・・製袋機、
5・・・熱シール装置、
6・・・プリンタ、
7・・・コンベア、
8・・・食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも包装材を送り出すための包装材送り出し手段、包装材に所定の情報を熱溶融転写により印字するための情報印字手段、及び被包装製品を包装材に導入、封止するための製品包装手段を有する包装装置において、
前記情報印字手段が、印字前の包装材を加熱するための加熱手段および印字後の包装材を冷却するための冷却手段を有することを特徴とする包装装置。
【請求項2】
前記情報印字手段が、前記冷却手段による冷却の前に、印字後の包装材を加熱するための後加熱手段を更に有する請求項1に記載の包装装置。
【請求項3】
前記加熱手段および冷却手段がそれぞれ加熱ロールおよび冷却ロールである請求項1に記載の包装装置。
【請求項4】
前記加熱手段および後加熱手段がそれぞれ加熱ロールであり、前記冷却手段が冷却ロールである請求項2に記載の包装装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、包装材の情報印字時における温度が35℃〜90℃であるように加熱し、前記冷却手段は、情報印字後の包装材の温度が10℃〜25℃であるように冷却する請求項1または3に記載の包装装置。
【請求項6】
前記前加熱手段は、包装材の情報印字時における温度が35℃〜90℃であるように加熱し、前記後加熱手段は情報印字後の包装材の温度が35〜90℃であるように加熱し、前記冷却手段は、情報印字後の包装材の温度が10℃〜25℃であるように冷却する請求項2または4に記載の包装装置。
【請求項7】
前記包装製品が食品または薬品である請求項1乃至6に記載の包装装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−347612(P2006−347612A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178928(P2005−178928)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(505091905)ゼネラルテクノロジー株式会社 (117)
【Fターム(参考)】