説明

化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法

【課題】広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物の提供。
【解決手段】式(1−1)


[式中、Z及びZは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を;Qは、−CR−等を;R及びRは、水素原子又はアルキル基を;Yは、1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基を;D、D、B、B、E及びEは、単結合又は2価の連結基を;G及びGは、2価の脂環式炭化水素基を;A及びAは、2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基を;Rは、アルキル基を;k及びlは、0〜3の整数を;F及びFは、アルカンジイル基を;P及びPは、水素原子又は重合性基を表す。]で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板などの光学フィルムを用いた部材が含まれている。光学フィルムには、たとえば、下記式で表される重合性化合物(特表平11−513019号公報に記載される化合物)を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布した後、重合して得られる光学フィルムが知られている。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Cordula Mock-Knoblauch, Olivier S. Enger, Ulrich D. Schalkowsky、“L-7 Novel Polymerisable Liquid Crystalline Acrylates for the Manufacturing of Ultrathin Optical Films”、SID Symposium Digest of Technical Papers、2006年、37巻、p.1673
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを与える重合性化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1]式(1−1)で表される化合物。
【0006】

【0007】
[式(1−1)中、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、それぞれ独立に、−CR−、−S−、−NR−、−CO−又は−O−を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基を表す。
及びDは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置換されていてもよい。
及びAは、それぞれ独立に、炭素数3〜16の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
、B、E及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のA及びBは、互いに同一でも異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のA及びBは、互いに同一でも異なっていてもよい。
及びFは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【0008】
[2]Zが炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基であり、かつZが水素原子であるか、又はZが炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基であり、かつZが水素原子である[1]記載の化合物。
【0009】
[3]Yが、式(Y−1)で表される基、式(Y−2)で表される基又は式(Y−3)で表される基である[1]又は[2]記載の化合物。

[式(Y−1)〜式(Y−3)中、Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−R、シアノ基、ニトロ基、−SO、−SOR、−SR、−OR、カルボキシ基又は−NRを表す。複数のZは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
は、上記と同じ意味を表す。
は、−O−又は−S−を表す。
*は、結合手を表す。]
【0010】
[4]G及びGが、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基である[1]〜[3]のいずれか記載の化合物。
[5][1]〜[4]のいずれか記載の化合物、及び重合開始剤を含有する組成物。
[6][5]記載の組成物を用いて形成される光学フィルム。
[7][6]記載の光学フィルムを含むフラットパネル表示装置。
[8] 式(2−1)で表される化合物を還元して式(3−1)で表される化合物を得る工程を含む[1]〜[4]のいずれか記載の化合物の製造方法。

[式(2−1)中、Q、Y、Z、及びZは上記と同じ意味を表す。]

[式(3−1)中、Q、Y、Z、及びZは上記と同じ意味を表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るカラーフィルタ1を示す概略図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置5を示す概略図である。
【図3】本発明に係る偏光板30を示す概略図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置の液晶パネル20と偏光板30との貼合品21を示す概略図である。
【図5】本発明に係る有機EL表示装置の有機ELパネル23を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、化学式中に用いられるR〜R10は、以下の意味を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0014】
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0015】
アルキル基に含まれる水素原子がフッ素原子で置換されている炭素数1〜4の基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のフッ化アルキル基等が挙げられる。
アルキル基に含まれる水素原子がフッ素原子で置換されている炭素数1〜6の基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【0016】
本発明の化合物は、式(1−1)で表される化合物(以下「化合物(1−1)」という場合がある)である。
【0017】

【0018】
[式(1−1)中、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、それぞれ独立に、−CR−、−S−、−NR−、−CO−又は−O−を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基を表す。
及びDは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置換されていてもよい。
及びAは、それぞれ独立に、炭素数3〜16の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
、B、E及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のA及びBは、互いに同一でも異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のA及びBは、互いに同一でも異なっていてもよい。
及びFは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【0019】
及びZにおける炭素数1〜6のアルキル基としては、化合物(1−1)が液晶性に優れる点で、炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基が好ましく、tert−ブチル基がより好ましい。
が炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基であり、かつZが水素原子であるか、又はZが炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基であり、かつZが水素原子であることが好ましい。
【0020】
式(1−1)におけるRおよびRを表す炭素数1〜4のアルキル基としては、炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
は、それぞれ独立に、−S−、−NH−、−N(CH)−又は−O−であると化合物(1−1)の液晶性に優れることから好ましく、−S−又は−O−であると化合物(1−1)、及び後述する中間体である化合物(2−1)の安定性に優れることから特に好ましい。
【0021】
は、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基である。Yが有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、−R、シアノ基、ニトロ基、−SO、−SOR、−SR、−OR、カルボキシ基又は−NRが挙げられる。
は、例えば、式(Y−1)〜式(Y−5)で表される基のいずれかであることが光学特性に優れるので好ましい。
【0022】

【0023】
[式(Y−1)〜式(Y−5)中、Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−R、シアノ基、ニトロ基、−SO、−SOR、−SR、−OR、カルボキシ基又は−NRを表す。
及びVは、それぞれ独立に、−CO−、−S−、−NR−、−O−、−Se−又は−SO−を表す。
〜Wは、それぞれ独立に、−CH=又は−N=を表す。
ただし、V、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、S、N、O又はSeを含む基を表す。
aは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
bは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。
a又はbが2以上の整数である場合、複数のZは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
*は結合手を表す。]
【0024】
は、化合物の安定性に優れ、合成が容易である点で式(Y−1)〜式(Y−5)で表される基のいずれかであることがより好ましい。
【0025】

【0026】
[式(Y−1)〜式(Y−5)中、Z、a、b及び*は、上記と同じ意味を表す。
及びJは、それぞれ独立に−CO−、−NR−、−O−又は−S−を表す。
は、−CH=又は−N=を表す。]
【0027】
さらにYは、化合物(1−1)の製造が容易である点で、式(Y−1)〜式(Y−3)で表される基のいずれかであることがさらに好ましい。
【0028】

【0029】
[式(Y−1)〜式(Y−3)中、Jは、−O−又は−S−を表す。Z、a、b及び*は、上記と同じ意味を表す。]
【0030】
における−SOとしては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。
【0031】
における−SORとしては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシル基スルフィニル等が挙げられる。
【0032】
における−SRとしては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec−ブチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基等が挙げられる。
【0033】
における−ORとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
における−NRとしては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等のN−モノアルキルアミノ基;N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等のN,N−ジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0035】
としては、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、メチルスルホニル基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0036】
及びVは、それぞれ独立に、−S−、−NR−又は−O−であることが好ましい。
【0037】
及びDにおける2価の連結基としては、例えば、−CO−O−、−CS−O−、−CR−、−CR−CR10−、−O−CR−、−CR−O−CR10−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR10−、−CR−CO−O−CR10−、−NR−CR−、−CO−NR−、−O−、−S−、−NR−、−CR=CR−等が挙げられる。
【0038】
およびDは、*−O−CO−、*−O−CS−、*−O−CR−、*−NR−CR−または*−NR−CO−(*はベンゼン環との結合手を表す。)が好ましく、*−O−CO−、*−O−CS−及び*−O−CH−がより好ましく、*−O−CO−がさらに好ましい。DおよびDがこれらの基であると、化合物(1−1)の合成が容易である。DおよびDを表す基において、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
【0039】
及びGとしては、式(g−1)〜式(g−10)で表されるヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基が挙げられ、5員環又は6員環の基が好ましい。
【0040】

【0041】
上記式(g−1)〜(g−10)で表される基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい。
【0042】
及びGとしては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが好ましく、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることがより好ましい。
【0043】
、B、E及びEにおける2価の連結基としては、例えば、−CR−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CS−O−、−O−CS−O−、−CO−NR−、−CH−O−、−CH−S−、−NR−、−CR=CR−及び単結合等が挙げられる。
【0044】
及びEとしては、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−CH−O−、−CH−S−及び単結合が好ましく、−CO−O−がより好ましい。
【0045】
及びBは、互いに同じ種類の基であると、化合物(1−1)の製造が容易なことから好ましい。さらに化合物(1−1)の製造がより容易なことから、Aのみに結合しているB及びAのみに結合しているBが、それぞれ独立に、−CH−CH−、−CO−O−、−CO−NH−、−O−CH−又は単結合であることが好ましく、本発明の化合物が特に高い液晶性を示すという点で、−CO−O−がより好ましい。
に結合しているB及びFに結合しているBは、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−又は単結合であることが好ましい。
【0046】
及びAにおける炭素数3〜16の2価の脂環式炭化水素基としては、上記式(g−1)〜式(g−10)で表される基等が挙げられる。また、A及びAにおける炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基としては、式(a−1)〜式(a−8)で表される基が挙げられる。
【0047】

【0048】
上記式(a−1)〜式(a−8)で表される基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基又はエトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0049】
及びAは、互いにも同種類の基であることが好ましい。またA及びAとしては、p−フェニレン基及びシクロヘキサン−1,4−ジイル基が好ましく、p−フェニレン基がより好ましい。A及びAが上記の基であると、化合物(1−1)の製造が容易である。
【0050】
k及びlは、液晶性の観点から、それぞれ独立に、0〜2であることが好ましい。k及びlの合計は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0051】
及びFとしては、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CF−、−(CF−及び−(CF−が好ましく、−(CH−及び−(CH−がより好ましい。
【0052】
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。P及びPのうち少なくとも1つは、重合性基であることが好ましく、P及びPが両方とも重合性基であることがより好ましい。P及びPがこれらの基であると、得られる光学フィルムの膜硬度に優れる傾向がある。
重合性基とは、本発明の化合物の重合反応に関与し得る基であればよく、具体的には、ビニル基、ビニルオキシ基、スチリル基、p−(2−フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、アセチル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基、アミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、ホルミル基、イソシアナト基又はイソチオシアナト基等が挙げられる。中でも、F又はFとエーテル結合又はエステル結合を介して結合している基が好ましく、光重合に適するという点で、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易で、本発明の化合物の製造も容易であるという点でアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0053】
k及びlの和は1以上6以下である。k及びlは、合成が容易であることから、両者が同じ数であることが好ましい。また、溶解性と液晶相転移温度の観点から、k又はlが1であることが好ましく、両者が1であることがより好ましい。
【0054】
−D−G−E−(A−B−F−P及び−D−G−E−(A−B−F−Pの具体的例としては、式(R−1)〜式(R−104)で表される基が挙げられる。*(アスタリスク)は結合手を表す。また式(R−1)〜式(R−104)におけるnは2〜12の整数を表す。またシクロヘキサン環はトランス体であることが好ましい。
【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】


【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】

【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】
上記−D−G−E−(A−B−F−P及び−D−G−E−(A−B−F−Pの具体的例のうち、合成の工程数が少なく、光学特性に優れることから、化合物(R−1)〜(R−40)がより好ましく、化合物(1−1)の液晶性に優れることから、化合物(R−1)〜(R−36)が特に好ましい。
【0095】
本発明の化合物は、式(2−1)で表される化合物(以下「化合物(2−1)」という場合がある)を還元して式(3−1)で表される化合物(以下「化合物(3−1)」という場合がある)を得る工程を含んで製造されることが好ましい。
【0096】

【0097】
[式(2−1)中、Z、Z、Q、およびYは上記と同じ意味を表す。]
化合物(1−1)において、DおよびDが*−O−CO−(*はベンゼン環との結合手を表す)であり、GとG、EとE、AとA、BとB、FとF、PとPおよびkとlが全て互いに同じである場合、化合物(2−1)を還元して化合物(3−1)を得た後、化合物(3−1)が有する2つのヒドロキシ基に、2当量以上の化合物(6−1)を縮合(エステル化)反応させればよい。
【0098】

[式(3−1)中、Z、Z、Q、およびYは上記と同じ意味を表す。]
【0099】

[式(6−1)中、P、F、B、A、E、G、およびkは上記と同じ意味を表す。]
【0100】
化合物(3−1)と式(6−1)で表される化合物との反応は、縮合剤の存在下に実施することが好ましい。
【0101】
縮合剤としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(一部水溶性カルボジイミド:WSCとして市販されている)、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N、N’−ジイソプロピルカルボジイミド、などのカルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1、2、4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル、が挙げられる。反応性、コスト、使用できる溶媒の点から、縮合剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N、N’−ジイソプロピルカルボジイミド、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾールがより好ましい。
【0102】
化合物(2−1)を還元する方法としては、ボラン、ジボランなどのホウ素化合物;ヒドラジン、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなどの水素化物;水素化物とルイス酸とを組み合わせた還元剤;亜ニチオン酸ナトリウム等の還元剤を用いる方法及びパラジウム炭素を触媒として接触水素還元する方法等が挙げられる。中でも、反応のスケールアップが容易であることから、亜二チオン酸ナトリウムを用いて還元する方法及びパラジウム触媒下接触水素還元する方法が好ましい。
【0103】
上記の還元処理は、上記のいずれの方法においても、好ましくは−20℃から100℃、より好ましくは0℃から80℃、さらに好ましくは15℃から60℃で、化合物(2−1)と還元剤とを溶媒中で混合し、攪拌すればよい。前記還元剤の使用量は、化合物(2−1)に対して、1当量〜100当量が好ましく、1当量〜50当量がより好ましく、1当量〜30当量がより好ましい。
【0104】
化合物(2−1)の還元方法として亜二チオン酸ナトリウムを用いる場合、化合物(2−1)を亜ニチオン酸ナトリウム水溶液に分散させて反応させてもよいし、予め化合物(2−1)をクロロホルム、トルエン、エーテルなどの非極性溶媒に溶解させた後、亜二チオン酸ナトリウム水溶液と混合して二層系で反応させてもよい。
【0105】
前者は、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液中で生成物である化合物(3−1)が析出するため、反応終了後濾過することにより、化合物(3−1)を得ることができる。
後者は、反応終了後、分液することにより、有機層として化合物(3−1)の溶液を得ることができる。該溶液は、溶媒を除去することなく次工程の反応に用いることができる。このとき、脱水剤として無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、モレキュラーシーブなどを化合物(3−1)の溶液に加えて、該溶液に含有される水分を除去することにより、次工程である化合物(1−1)を得る工程において、収率が向上するので好ましい。
【0106】
化合物(2−1)の製造は、式(4−1)で表される化合物(以下「化合物(4−1)」という場合がある)を経由すると容易である。
【0107】

[式(4−1)中、Z、Zは上記と同じ意味を表す。
はハロゲン原子を表す]
【0108】
のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、化合物の安定性に優れるためフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、化合物の合成が容易であること、試薬の取り扱いが容易であることから、塩素原子、臭素原子がより好ましい。
【0109】
特に好ましい化合物(4−1)の具体例としては(C−001)〜(C−004)が挙げられる。
【0110】

【0111】
例えば、化合物(2−1)においてQが−S−の場合には、水系溶媒中化合物(4−1)と硫化ナトリウムとを塩基性条件下で反応させた後、Y−CHOと反応させてシッフ塩基を形成させ、次いで酢酸などの弱酸を用いて反応液を酸性にすることで化合物(2−1)が得られる。
また例えば、化合物(2−1)においてQが−O−の場合には、化合物(4−1)とY−COCl又は(Y−CO)Oとを硫酸触媒下反応させれば化合物(2−1)が得られる。
【0112】
化合物(4−1)は式(5−1)で表される化合物(以下「化合物(5−1)」という場合がある)とアンモニア水、またはアンモニアガスと反応させることによって得られる。
【0113】

[式(5−1)中、Z、Zは上記と同じ意味を表す。
およびXはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。]
【0114】
及びXにおけるハロゲン原子としては、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、化合物の安定性に優れるのでフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、化合物の合成が容易であること、試薬の取り扱いが容易であることから、塩素原子、臭素原子がより好ましい。また、XとXとが同一であると合成が容易であるので好ましい。
【0115】
化合物(5−1)の好ましい例としては、化合物(D−001)〜(D−004)が挙げられる。
【0116】

【0117】
化合物(2−1)の好ましい例としては以下の化合物(B−001)〜(B−200)が挙げられる。
【0118】

【0119】

【0120】

【0121】

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】

【0127】

【0128】

【0129】

【0130】

【0131】

【0132】

【0133】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】
化合物(1−1)としては、式(A1−1)〜式(A200−8)で表される化合物が挙げられる。*は連結部を表し、例えば式(A1−1)で表される化合物は、下記のように表される化合物である。
【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【0152】

【0153】

【0154】

【0155】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】

【0161】

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】

【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】

【0175】

【0176】

【0177】

【0178】

【0179】

【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【0186】

【0187】

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【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】

【0195】

【0196】

【0197】

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【0200】

【0201】

【0202】

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【0230】

【0231】

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【0234】

【0235】

【0236】

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【0239】

【0240】

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【0246】

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【0250】

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【0265】

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【0270】

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【0276】

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【0280】

【0281】

【0282】

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【0286】

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【0290】

【0291】

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【0296】

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【0300】

【0301】

【0302】

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【0339】

【0340】

【0341】

【0342】

【0343】

【0344】

【0345】

【0346】
本発明の組成物は、本発明の化合物、及び重合開始剤を含有する組成物である。
本発明の組成物は、本発明の化合物とは異なる液晶化合物(以下「液晶化合物(A)」という場合がある)を含有してもよい。
【0347】
このような液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物、特開2010−31223号公報に記載された化合物等が挙げられる。なかでも、重合性基を有していてかつ液晶性を示す化合物が好ましい。前記液晶化合物(A)は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0348】
前記液晶化合物(A)としては、例えば、式(A)で表される化合物(以下「化合物(3)」という場合がある)等が挙げられる。
【0349】
11−E11−(B11−A11t−B12−G (A)
[式(A)中、A11は、置換基を有していてもよい芳香族複素環、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を表す。
11及びB12は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH2−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−CS−、−O−CO−O−、−CR1314−、−CR1314−CR1516−、−O−CR1314−、−CR1314−O−CR1516−、−CO−O−CR1314−、−O−CO−CR1314−、−CR1314−O−CO−CR1516−、−CR1314−CO−O−CR1516−、−NR13−CR1415−、−CH=N−、−N=N−、−CO−NR16−、−OCH2−、−OCF2−、−CH2O−、−CF2O−、−CH=CH−CO−O−又は単結合を表す。R13〜R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のN−アルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基又は−E12−P12を表す。
11及びE12は、炭素数1〜18のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH2−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
11及びP12は、重合性基を表す。
tは、1〜5の整数を表す。tが2以上の整数である場合、複数のB11及びA11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0350】
11で表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環等が挙げられ、芳香族複素環としては、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及びベンゾチアゾール環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、チアゾール環又はベンゾチアゾール環が好ましい。A11で表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環としては、例えば式(Ar−1)〜式(Ar−11)で表される2価の基が挙げられる。
【0351】

【0352】
[式(Ar−1)〜式(Ar−11)中、X13は、式(A)中のX1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。X13が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Y13は、式(A)中のY1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。Z13は、式(A)中のZ1として例示した基と同じ範囲から選ばれる基を表す。
及びWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。
m1は、0〜6の整数を表す。
n1は、0〜4の整数を表す。
o1は、0〜2の整数を表す。
m1、n1又はo1が2以上の整数である場合、複数のZ13は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0353】
11で表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環としては、具体的に下記の基が例示される。
例えば、式(Ar−1)、式(Ar−7)で表される基の具体例としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【0354】

【0355】
11で表される脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3〜18であり、5〜12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。A11で表される脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等が挙げられる。該脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0356】
11及びP12としては、化合物(A)のP1及びP2と同様の基が挙げられる。より低温での硬化が可能であることから光重合性基が好ましく、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基がより好ましく、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0357】
11及びE12としては、炭素数1〜18のアルカンジイル基であり、直鎖状であるか分岐が1箇所である炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。
【0358】
化合物(A)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0359】

【0360】
液晶化合物(A)の含有量は、例えば、液晶化合物(A)と化合物(1−1)との合計量100質量部に対して、0〜90質量部であり、好ましくは0〜70質量部である、さらに好ましくは0〜40質量部である。
【0361】
本発明の組成物によりえられる光学フィルムの波長分散特性は、化合物(1−1)に由来する構造単位の含有量及び液晶化合物(A)に由来する構造単位の含有量によって、決定することができる。光学フィルム中の化合物(1−1)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より逆波長分散特性を示す。具体的には、化合物(1−1)に由来する構造単位の含有量が異なる組成物を2〜5種類程度調製し、それぞれの組成物について、同じ膜厚の光学フィルムを製造してその位相差値を求める。そして、結果から、化合物(1−1)に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(1−1)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
【0362】
本発明の組成物は、重合開始剤を含有する。重合開始剤は、光重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0363】
光重合開始剤としては、たとえばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられる。
【0364】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0365】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、α,α−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシ−1−エタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマー等が挙げられる。
【0366】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0367】
光重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152又はアデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)及びTAZ−104(三和ケミカル社製)等の市販の光重合開始剤も用いることができる。
【0368】
得られる光学フィルムの耐熱性及び耐湿熱性が高くなる傾向があるという点で、光重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物が好ましい。なかでも2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オンがより好ましい。
【0369】
本発明の組成物における重合開始剤の含有量は、液晶化合物(A)と本発明の化合物との合計100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは、0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、本発明の化合物の配向を乱れを抑制した上で、本発明の化合物を重合させることができる。
【0370】
本発明の組成物は、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、例えばキサントン又はチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等)、アントラセン又はアルコキシ基等の置換基を有するアントラセン系化合物(例えば、ジブトキシアントラセン等)、フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
【0371】
光増感剤を用いることにより、本発明の化合物の重合反応を高感度で行ったり、重合して得られる光学フィルムの経時安定性を向上させたりすることができる。また光増感剤の含有量としては、液晶化合物(A)と本発明の化合物との合計100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、本発明の化合物の配向を乱れを抑制した上で、本発明の化合物を重合させることができる。
【0372】
本発明の組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン又はアルコキシ基等の置換基を有するハイドロキノン化合物、ブチルカテコール等のアルキル基等の置換基を有するカテコール化合物、ピロガロール化合物、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール化合物、β−ナフチルアミン化合物或いはβ−ナフトール化合物等を挙げることができる。
【0373】
重合禁止剤を用いることにより、液晶化合物(A)や本発明の化合物の重合を容易に制御することができ、得られる光学フィルムの安定性を向上させることができる。また重合禁止剤の含有量は、液晶化合物(A)と本発明の化合物との合計100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、本発明の化合物の配向を乱れを抑制した上で、本発明の化合物を重合させることができる。
【0374】
さらに本発明の組成物は、レベリング剤を含有してもよい。レベリング剤としては、例えば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)又はフッ素系添加剤(DIC株式会社製:F−445、F−470、F−479)等を挙げることができる。
【0375】
レベリング剤を用いることにより、より平滑な光学フィルムを得ることができる。さらに光学フィルムの製造過程で、本発明の組成物の流動性を制御したり、得られる光学フィルム中の架橋密度を調整したりすることができる。レベリング剤の使用量の具体的な数値は、例えば液晶化合物(A)と本発明の化合物との合計100質量部に対して、0.01質量部〜30質量部であり、好ましくは0.05質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、本発明の化合物の配向を乱れを抑制した上で、本発明の化合物を重合させることができる。
【0376】
本発明の組成物は、その流動性の点で、溶剤を含むことが好ましい。溶媒としては、本発明の化合物、液晶化合物等を溶解し得る溶剤であって、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン、フェノール等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;フェノール;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。特に、本発明の化合物及び本発明の組成物は、相溶性に優れ、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、非塩素化脂肪族炭化水素溶剤及び非塩素化芳香族炭化水素溶剤に溶解し得るため、クロロホルム等の塩素化炭化水素溶剤を用いることなく、成膜することができる。
【0377】
溶剤の含有量は、本発明の組成物に対して、好ましくは50質量%〜98質量%であり、より好ましくは50〜95質量%である。
逆に、本発明の組成物中の固形分の濃度は、2〜50質量%であり、5〜50質量%が好ましい。固形分の濃度が2質量%以上であると、光学フィルムが薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償のために必要な複屈折率を有する光学フィルムが得られやすい傾向がある。また、固形分の濃度が50質量%以下であると、組成物の粘度が小さくなりすぎず、光学フィルムの膜厚のムラが生じにくくなる傾向がある。ここで、固形分とは、本発明の組成物から溶剤を除いた成分をいう。
本発明の組成物が溶剤を含む場合、その粘度は、光学フィルムの膜厚のムラが生じにくくなる傾向があるという点で、0.1〜10mPa・s、好ましくは0.1〜7mPa・sである。
【0378】
本発明の光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。光学フィルムの一種である位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
【0379】
本発明の光学フィルムは、本発明の化合物に由来する構造単位を有し、該構造単位の含有量を変更することにより、光学フィルムの波長分散特性を調整することができる。光学フィルムに含まれる全構造単位中、本発明の化合物に由来する構造単位の含有量が多くなれば、長波長になるほど複屈折が大きくなる性質(いわゆる逆波長分散特性)を示しやすくなる傾向がある。
【0380】
具体的には、以下の(a)〜(e)に示す操作により決定した、本発明の化合物に由来する構造単位の含有量を含む光学フィルムが得られるような本発明の組成物を調製すればよい。
(a)本発明の化合物の含有量が異なる本発明の組成物を2〜5種類程度調製する、
(b)調製したそれぞれの組成物について、同じ膜厚であり、本発明の化合物に由来する構造単位の含有量が異なる光学フィルムを製造する、
(c)(b)で得られた光学フィルムの位相差値を求める、
(d)(c)で得られた位相差値に基づいて、本発明の化合物に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求める、
(e)(d)で得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な本発明の化合物に由来する構造単位の含有量を決定する。
ある波長λにおける位相差値Re(λ)を550nmにおける位相差値Re(550)で除した値(Re(λ)/Re(550))が1に近い波長域や、[Re(450)/Re(550)]<1かつ[Re(650)/Re(550)]>1の逆波長分散性を示す波長域では、一様の偏光変換が可能である。
【0381】
本発明の光学フィルムは、本発明の組成物を塗布し、乾燥し、光照射及び/又は加熱することで、組成物に含まれる重合性成分を重合させることにより得られる。
本発明の組成物を塗布し、乾燥したフィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、得られる光学フィルムは、モノドメイン配向による複屈折性を示す。
【0382】
本発明の組成物に含まれる本発明の化合物の含有量や支持基材上への本発明の組成物の塗布量を適宜調整することにより、光学フィルムの膜厚を調製することができる。本発明の化合物の量が一定である場合、得られる光学フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(7)
Re(λ)=d×Δn(λ) (7)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表わす。)
に従って決定されるため、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚d及びΔn(λ)を調整すればよい。
【0383】
支持基材への本発明の組成物の塗布方法としては、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法又はダイコーティング法等が挙げられる。またディップコーター、バーコーター又はスピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0384】
上記支持基材としては、例えばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム又は透光性フィルムを挙げることができる。なお上記透光性フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム又はポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0385】
光学フィルムの貼合工程、運搬工程、保管工程等、光学フィルムの強度が要求される工程においても、支持基材を用いることにより、破れ等がなく容易に取り扱うことができる。
【0386】
支持基材上に配向膜を形成した後、該配向膜上に本発明の組成物を塗布することが好ましい。配向膜は、本発明の組成物の塗布時に、該組成物に溶解しない溶剤耐性を持つことが好ましい。また、配向膜は、溶剤の除去や液晶の配向の加熱処理における耐熱性をもつことが好ましい。さらに、ラビング時に、摩擦等による剥がれ等が起きないことが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマー又は配向性ポリマーを含有する組成物からなることが好ましい。
【0387】
上記配向性ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0388】
またこれらの配向性ポリマーは、溶剤に溶解して、溶液として用いられる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0389】
また配向膜は、市販の配向膜材料をそのまま使用して形成してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)又はオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)等が挙げられる。
【0390】
このような配向膜を用いるとば、延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。それゆえ、支持基材上にフラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを提供することが可能である。
【0391】
支持基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば支持基材上に、市販の配向膜材料や配向膜の材料となる化合物を溶液にして塗布し、その後、アニールするこ方法が挙げられる。
【0392】
配向膜の厚さは、10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲とすれば、本発明の化合物等を該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
【0393】
必要に応じて、配向膜をラビング処理してもよいし、配向膜に偏光UV照射を行ってもよく、かかる処理により本発明の化合物等を所望の方向に配向させることができる。すなわち、製造した光学フィルムの複屈折状態を示す屈折率楕円体の形状や傾きを調整することができる。
【0394】
配向膜をラビングする方法としては、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ搬送されている配向膜に接触させる方法が挙げられる。
【0395】
かかる支持基材上に積層した配向膜上に未重合フィルムを積層する方法は、液晶セルを作製し、該液晶セルに液晶化合物を注入する方法に比べて、生産コストを低減することができる。さらにロールフィルムでのフィルムの生産も可能である。
【0396】
溶剤の除去方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。乾燥温度は、0〜250℃が好ましく、0〜200℃がより好ましく、30〜190℃がさらに好ましい。また乾燥時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。乾燥温度及び乾燥時間が上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0397】
乾燥後、本発明の組成物に含まれる重合性成分を重合させることにより、本発明の化合物の配向が固定されたフィルムが得られる。本発明の光学フィルムは配向が固定されているため、熱による複屈折への影響を受けにくい。
【0398】
本発明の組成物に含まれる重合性成分を重合させる方法は、本発明の化合物の種類に応じて、適宜決定すればよい。本発明の化合物が有する重合性基が光重合性であれば光重合法が用いられ、該重合性基が熱重合性であれば熱重合法が用いられる。光重合法によれば低温で未重合フィルムを重合させることができ、支持基材の耐熱性の選択幅が広がるという点及び工業的に製造が容易であるという点で、光重合性の重合性基を有する本発明の化合物を用いることが好ましい。また成膜性の観点からも光重合が好ましい。光重合法による硬化未重合フィルムに可視光、紫外光又はレーザー光を照射することにより行われる。取り扱いやすいという点で、紫外光が好ましい。光照射は、本発明の化合物が液晶相をとる温度で行う。マスキングして光照射を行う等によってパターニングされた本発明の光学フィルムを得ることもできる。
複屈折率Δn(λ)は、重合時の露光量、加熱温度、加熱時間適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように調製することができる。
【0399】
本発明の光学フィルムは、ポリマーを延伸することによって位相差を与える延伸フィルムと比較して、より膜厚が薄い。
【0400】
支持基材を剥離することにより、配向膜と本発明の光学フィルムとが積層されたフィルムが得られる。さらに、配向膜を剥離して、本発明の光学フィルムのみからなるフィルムを得ることができる。
【0401】
かくして得られた光学フィルムは、透明性に優れ、様々な表示装置用フィルムとして使用される。光学フィルムの厚みは、上記のとおり、光学フィルムの位相差値によって、異なるものであるが、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであることが特に好ましい。
【0402】
複屈折性を示す光学フィルムの位相差値としては、50〜500nmであり、好ましくは100〜300nmである。
【0403】
このように、薄膜でより広い波長域において一様の偏光変換が可能な本発明の光学フィルムは、液晶パネルや有機ELパネル等のフラットパネル表示装置において、光学補償フィルムとして用いることができる。
【0404】
本発明の光学フィルムは、広帯域λ/4板又はλ/2板として使用することができる。広帯域λ/4板又はλ/2板として使用する場合には、光学フィルム中の本発明の化合物に由来する構造単位の含有量を適宜選択すればよい。λ/4板の場合には、得られる光学フィルムのRe(550)を113〜163nm、好ましくは135〜140nm、特に好ましくは約137.5nmに膜厚を調整すればよく、λ/2板の場合には、得られる光学フィルムのRe(550)を250〜300nm、好ましくは273〜277nm、特に好ましくは約275nmとなるように、膜厚を調整すればよい。
【0405】
本発明の光学フィルムは、VA(Vertical Alingment)モード用光学フィルムとして使用することもできる。VAモード用光学フィルムとして使用する場合には、本発明の化合物に由来する構造単位の含有量を適宜選択すればよい。得られる光学フィルムのRe(550)が、好ましくは40〜100nm、より好ましくは60〜80nmとなるように膜厚を調整すればよい。
【0406】
本発明の光学フィルムは、アンチリフレクション(AR)フィルム等の反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、広帯域円偏光フィルム、視野角拡大フィルム又は透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルム等にも用いることができる。
本発明の光学フィルムは1枚でも優れた光学特性を示すが、複数枚を積層して用いてもよい。また、他のフィルムと組み合わせて用いてもよい。他のフィルムと組み合わせた具体例としては、偏光フィルムに本発明の光学フィルムを貼合させた楕円偏光板、該偏光フィルムに本発明の光学フィルムを広帯域λ/4板として貼合させた広帯域円偏光板等が挙げられる。
【0407】
本発明の光学フィルムは、支持基材又は配向膜上に塗布し、重合させることによって形成することができるため、図1に示すように従来よりも簡便にカラーフィルタ上に広帯域の例えばλ/4、λ/2の光学フィルムを形成することができる。
【0408】
図1は、本発明に係るカラーフィルタ1を示す概略図である。
カラーフィルタ1は、本発明の光学フィルム2が、配向膜3を介して該カラーフィルタ層4上に形成されてなるカラーフィルタである。
【0409】
かかるカラーフィルタ1の製造方法の一例を以下に記載する。まず、カラーフィルタ層4の上に配向性ポリマーを積層し、ラビング処理を施して、配向膜3を形成する。配向性ポリマーは、インクジェット法を用いて積層してもよい。
続いて、得られた配向膜3上に、得られる光学フィルムが所望の波長分散特性をもつように、本発明の化合物の含有量が調整された本発明の組成物を調製し、所望の位相差値になるような厚みになるよう該溶液を塗布して、光学フィルム2を形成する。
【0410】
かかるカラーフィルタ1を用いることにより、より薄型の液晶表示装置を製造することが可能となる。その一例として、本発明に係る液晶表示装置5を示す概略図を図2に示した。
【0411】
図2は、本発明に係る液晶表示装置5を示す概略図である。
図2に示す液晶表示装置5では、偏光板6上に、例えばガラス基板等のバックライトと対向する基板7が接着剤を介して固定されている。基板7上に作成されたカラーフィルタ層4’上に配向膜3’を介して光学フィルム2’が形成されている。さらに光学フィルム2’上に対向電極8が形成され、対向電極8上に液晶相9が形成されている。バックライト側は、偏光板10にガラス基板等の基板11が接着剤を介して固定されており、さらに基板11には液晶層をアクティブ駆動させるための薄膜トランジスタ(TFT)及び絶縁層12が形成され、さらにTFT上にAg、Al又はITO(Indium Tin Oxide)による透明電極13及び/又は反射電極13’が形成されている。図2に示す液晶表示装置5の構成は、従来の液晶表示装置と比較して、光学フィルムの枚数が少ない構成であり、より薄型の液晶表示装置の製造が可能となる。
【0412】
カラーフィルタ1’が一方の基板の液晶層側に形成された液晶表示装置5の製法の一例を以下に記載する。バックライト側の基板上にはホウケイ酸ガラス上に、MoやMoW等からなるゲート電極、ゲート絶縁膜、及びアモルファスシリコンを堆積・パターニングそして、アモルファスシリコンをエキシマレーザでアニールすることによって結晶化してなる半導体薄膜を形成、その後、ゲート電極両脇の領域にP、B等をドープさせ、nチャンネル、pチャンネルのTFTを形成させることができる。さらにSiOからなる絶縁層12を形成させることにより、バックライト側の基板が得られる。さらにバックライト側基板11上にITOをスパッタさせることにより、全透過型表示装置用の透明電極13を積層させることができる。また、同じくITOの換わりにAg、Al等を用いることにより全反射型表示装置用の反射電極13’が得られる。さらに反射電極、透明電極を適宜組み合わせることにより、半透過型の液晶表示装置用のバックライト側の電極も得られる。
【0413】
一方、対向する基板7に、カラーフィルタ層4’を形成させる。R(赤色)、G(緑色)、B(青色)のカラーフィルタを具備することにより、フルカラーの液晶表示装置が得られる。次にカラーフィルタ層4’上に配向性ポリマーを塗布し、ラビングすることにより、配向膜3’を形成させる。この配向膜3’上に本発明の組成物を塗布して、液晶相を示す温度で保持しながら、紫外線照射によって組成物に含まれる重合性成分を重合し、本発明の光学フィルム2’を形成させる。光学フィルム形成後、ITOをスパッタさせることにより対向電極8を形成させることができる。さらに該対向電極上に配向膜を形成させ、液晶相9を形成させ、最後に上記バックライト側の基板とあわせて組み立てることにより、液晶表示装置5を作製することができる。
【0414】
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルム及び偏光機能を有するフィルム(偏光フィルム)を積層することにより得られる。具体的には、偏光フィルムの片面もしくは両面に直接、又は接着剤を用いて、本発明の光学フィルムを貼り合わせることにより得られる。本明細書において、接着剤とは、接着剤と粘着剤との両方を意味する。以下、図3〜図5を用いて、本発明の偏光板について説明する。
【0415】
図3(a)〜図3(e)は、本発明に係る偏光板1を示す概略図である。
図3(a)に示す本発明の偏光板30aは、積層体14と、偏光フィルム15とが直接貼り合わされており、積層体14は、支持基材16、配向膜17及び本発明の光学フィルム18からなる。偏光板30aは、支持基材16、配向膜17、本発明の光学フィルム18、偏光フィルム15の順に積層されている。
【0416】
図3(b)に示す本発明の偏光板30bは、積層体14と偏光フィルム15とが、接着剤層19を介して貼り合わされている。
図3(c)に示す本発明の偏光板30cは、積層体14と積層体14’とが直接貼り合わされ、さらに積層体14’と偏光フィルム15とが直接貼り合わされている。
図3(d)に示す本発明の偏光板30dは、積層体14と積層体14’とが接着剤層19を介して貼り合わされ、さらに積層体14’上に偏光フィルム15が直接貼り合わされている。
図3(e)に示す本発明の偏光板30eは、積層体14と積層体14’とを接着剤層19を介して貼り合わせ、さらに積層体14’と偏光フィルム15とを接着剤層19’を介して貼り合せた構成を示す。
【0417】
本発明の偏光板とは、偏光フィルムと本発明の光学フィルムを含む積層体とを貼り合わせたものである。積層体14及び積層体14’の代わりに、積層体14から支持基材16及び配向膜17を剥離した、本発明の光学フィルム18を用いてもよいし、積層体14から支持基材16を剥離した、配向膜17及び本発明の光学フィルム18からなるフィルムを用いてもよい。
本発明の偏光板は、積層体を複数積層してもよく、その複数の積層体は、全て同一であっても、異なっていてもよい。
【0418】
偏光フィルム15は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
【0419】
接着剤層19及び接着剤層19’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。かかる接着剤としては、例えばアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0420】
本発明の表示装置は、本発明の光学フィルムを備えるものであり、例えば本発明の偏光板と液晶パネルとが貼り合わされた貼合品を備える液晶表示装置や、本発明の偏光板と有機ELパネルとが貼り合わされた貼合品を備える有機EL表示装置を挙げることができる。本発明の表示装置に用いられる本発明の偏光板30としては、広帯域円偏光板として機能するものであることが好ましい。
本発明の表示装置の実施形態として、液晶表示装置と有機EL表示装置とを例にとり、以下説明する。
【0421】
図4は、本発明の液晶表示装置に具備される、液晶パネル20と本発明の偏光板30との貼合品21を示す概略図である。貼合品21は、本発明の偏光板30と液晶パネル20とが、接着層22を介して貼り合わされてなるものである。図示しない電極を用いて、液晶パネル20に電圧を印加することにより、液晶分子が駆動し、白黒表示ができる。
【0422】
図5は、本発明の有機EL表示装置に具備される、有機ELパネル24と本発明の偏光板30と接着層25を介して貼り合わせてなるものである。図示しない電極を用いて、有機ELパネル24に電流を供給することにより、有機ELパネル24に含まれる発光性化合物が発光し、白黒表示ができる。
【実施例】
【0423】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0424】
(実施例1)
<化合物(A041−1)の合成例>
化合物(A041−1)は下記のスキームに従って合成した。化合物(D−001)は、2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンを出発物質として、Synthetic Communications,29巻、5号、821−825頁(1999)、OPPI Briefs,30巻、115−116頁(1998)に記載された方法に準じて合成した。
【0425】

【0426】
<化合物(C−001)の合成>
2,3−ジクロロ−5,6−ジメチル−ベンゾキノン(D−001)を5.00g、を30mLの濃アンモニア水溶液(28wt%)に分散させた。氷冷下で30分攪拌し、メタノール30mLを30分かけて滴加した。室温で10分攪拌した後、得られた濃紫色溶液を常温で減圧してメタノールを除去した。析出した紫色沈殿を濾取し、純水で懸洗後、真空乾燥させて化合物C−001を4.01g得た。収率は化合物D−001基準で89%であった。
【0427】
化合物(C−001)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)2.00〜2.02(dd、3H)、2.08〜2.10(dd、3H)、5.25(br s、2H)
【0428】
<化合物(41−1)の合成>
硫化ナトリウム九水和物を3.86g、水酸化ナトリウム1.29mgを純水55gに溶解し、窒素雰囲気下、90℃で10分攪拌した。溶液に化合物C−001を2.00gを加えて、10分攪拌した。40℃まで冷却後反応溶液に、2−ベンゾフランカルバルデヒド1.57gを加え、さらに2時間攪拌した。得られた反応溶液に、1.50gの酢酸を滴加し、室温まで放冷後、析出した褐色沈殿を濾取した。沈殿を純水200mLで洗浄後、さらに水・メタノール混合溶媒(水−2質量部、メタノール−1質量部)100mLで二回洗浄した。得られた褐色粉末を真空乾燥させて、還元体(41−2)を含む化合物(41−1)を2.08g得た。収率は化合物C−001基準で62%であった。
【0429】
化合物(41−2)のH−NMR(DMSO):δ(ppm)2.22(s、1H)、2.23(s、1H)、7.34〜3.7.39(dt、1H)、7.44〜7.49(dt、1H)、7.69〜7.82(m、3H)、8.99(s,1H)、9.31(s、1H)。
【0430】
<化合物(A41−1)の合成>
化合物(A)を2.84g、ジメチルアミノピリジン40mg、無水硫酸ナトリウム12gをクロロホルム50mL、トルエン50mLからなる混合溶媒に溶解させて、ジイソプロピルカルボジイミド0.98gを窒素雰囲気下で加えて10分室温で反応させた。一方、化合物(41−1)1.0gをクロロホルム10mL、純水10mLに分散させた。溶液を窒素雰囲気で15分攪拌後、亜ニチオン酸ナトリウム3gを加えて沸点還流で4時間攪拌した。反応溶液からエバポレータにてクロロホルムを留去し、析出した橙色粉末を濾取し、化合物(41−2)を得た。化合物(41−2)は乾燥させずにそのまま即座に予め準備した上記化合物(A)の反応溶液に加えて、室温で5時間反応させた。反応溶液にシリカゲル2g、活性炭200mgを加えてセライト濾過した。濾液を回収し減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて析出した淡黄色沈殿を濾取した。さらにメタノール200mLで2回洗浄後、真空乾燥させて化合物(A41−1)を2.35g得た。収率は化合物(41−1)基準で65%であった。
【0431】
化合物(A41−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜1.89(m、24H)、2.19〜2.46(m、14H)、2.64〜2.89(m、4H)、3.92〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.87〜7.01(m、8H)、7.27〜7.32(dt、1H)、7.37〜7.43(dt、1H)、7.49(s、1H)、7.55〜7.58(dd,1H)、7.67〜7.70(dd、1H)
【0432】
得られた化合物(A41−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A41−1)は、昇温時において、98℃から154℃まで粘性の高い相を示し、154℃から明確なネマチック相を与える。さらに化合物(A41−1)は180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、94℃までネマチック相を呈し徐々に結晶化した。
【0433】
(実施例2)
<化合物(A141−1)の合成例>
化合物(A141−1)は下記のスキームに従って合成した。化合物(D−003)は、2−t−ブチル−1,4−ベンゾキノンを出発物質として、Synthetic Communications,29巻、5号、821−825頁(1999)、OPPI Briefs,30巻、115−116頁(1998)に記載された方法に準じて合成した。
【0434】

【0435】
<化合物(C−003)の合成>
2,3−ジクロロ−5,6−ジメチル−ベンゾキノン(D−003)を5.00g、を30mLの濃アンモニア水溶液(28wt%)に分散させた。氷冷下で30分攪拌し、メタノール30mLを30分かけて滴加した。室温で10分攪拌した後、得られた濃紫色溶液を常温で減圧してメタノールを除去した。析出した紫色沈殿を濾取し、純水で懸洗後、真空乾燥させて化合物C−003を4.01g得た。収率は化合物D−003基準で89%であった。
【0436】
化合物(C−003)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.27(s、9H)、5.37(br s、2H)、6.59(s、1H)
【0437】
<化合物(141−1)の合成>
硫化ナトリウム九水和物を3.86g、水酸化ナトリウム1.29mgを純水55gに溶解し、窒素雰囲気下、90℃で10分攪拌した。溶液に化合物C−003を2.00gを加えて、10分攪拌した。40℃まで冷却後反応溶液に、2−ベンゾフランカルバルデヒド1.57gを加え、さらに2時間攪拌した。得られた反応溶液に、1.50gの酢酸を滴加し、室温まで放冷後、析出した褐色沈殿を濾取した。沈殿を純水200mLで洗浄後、さらに水・メタノール混合溶媒(水−2質量部、メタノール−1質量部)100mLで二回洗浄した。得られた褐色粉末を真空乾燥させて、化合物(141−1)を2.08g得た。収率は化合物C−003基準で62%であった。
【0438】
化合物(141−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.38(s、9H)、7.29〜7.31(dd、1H)、7.36〜7.42(dd、1H)、7.57〜7.69(m、3H)
【0439】
<化合物(A141−1)の合成>
化合物(A)を2.84g、ジメチルアミノピリジン40mg、無水硫酸ナトリウム12gをクロロホルム50mL、トルエン50mLからなる混合溶媒に溶解させて、ジイソプロピルカルボジイミド0.98gを窒素雰囲気下で加えて10分室温で反応させた。一方、化合物(141−1)1.0gをクロロホルム10mL、純水10mLに分散させた。溶液を窒素雰囲気で15分攪拌後、亜ニチオン酸ナトリウム3gを加えて室温で4時間攪拌した。反応溶液からエバポレータにてクロロホルムを留去し、析出した橙色粉末を濾取し、化合物(141−2)を得た。化合物(141−2)は乾燥させずにそのまま即座に予め準備した上記化合物(A)の反応溶液に加えて、室温で5時間反応させた。反応溶液にシリカゲル2g、活性炭200mgを加えてセライト濾過した。濾液を回収し減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて析出した淡黄色沈殿を濾取した。さらにメタノール200mLで2回洗浄後、真空乾燥させて化合物(A141−1)を2.35g得た。収率は化合物(141−1)基準で65%であった。
【0440】
化合物(A141−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.38〜1.94(m、33H)、2.36〜2.85(m、12H)、3.93〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.87〜7.03(m、8H)、7.26〜7.45(m、4H)、7.55〜7.58(dd、1H)、7.68〜7.71(dd、1H)。
【0441】
得られた化合物(A141−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A141−1)は、昇温時において、93℃から117℃まで粘性の高い相を示し、117℃から明確なネマチック相を与える。さらに化合物(A141−1)は180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、45℃までネマチック相を呈し徐々に結晶化した。
【0442】
(実施例3)
<化合物(A144−1)の合成例>
化合物(A144−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0443】

【0444】
<化合物(144−1)の合成>
硫化ナトリウム九水和物を3.86g、水酸化ナトリウム1.29mgを純水55gに溶解し、窒素雰囲気下、90℃で10分攪拌した。溶液に化合物C−003を2.00gを加えて、10分攪拌した。40℃まで冷却後反応溶液に、2−ベンゾフランカルバルデヒド1.57gを加え、さらに2時間攪拌した。得られた反応溶液に、1.50gの酢酸を滴加し、室温まで放冷後、析出した褐色沈殿を濾取した。沈殿を純水200mLで洗浄後、さらに水・メタノール混合溶媒(水−2質量部、メタノール−1質量部)100mLで二回洗浄した。得られた褐色粉末を真空乾燥させて、化合物(144−1)を2.08g得た。収率は化合物C−003基準で62%であった。
【0445】
化合物(144−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.38(s、9H)、2.46(s、3H)、2.52(s、3H)、6.77(s、1H)、6.94(s、1H)、7.12(s、1H)、7.74(s、1H)
【0446】
<化合物(A144−1)の合成>
化合物(A)を2.84g、ジメチルアミノピリジン40mg、無水硫酸ナトリウム12gをクロロホルム50mL、トルエン50mLからなる混合溶媒に溶解させて、ジイソプロピルカルボジイミド0.98gを窒素雰囲気下で加えて10分室温で反応させた。一方、化合物(141−1)1.0gをクロロホルム10mL、純水10mLに分散させた。溶液を窒素雰囲気で15分攪拌後、亜ニチオン酸ナトリウム3gを加えて室温で4時間攪拌した。反応溶液からエバポレータにてクロロホルムを留去し、析出した橙色粉末を濾取し、化合物(141−2)を得た。化合物(141−2)は乾燥させずにそのまま即座に予め準備した上記化合物(A)の反応溶液に加えて、室温で5時間反応させた。反応溶液にシリカゲル2g、活性炭200mgを加えてセライト濾過した。濾液を回収し減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて析出した淡黄色沈殿を濾取した。さらにメタノール200mLで2回洗浄後、真空乾燥させて化合物(A144−1)を2.35g得た。収率は化合物(144−1)基準で65%であった。
【0447】
化合物(A144−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜1.94(m、33H)、2.36〜2.87(m、18H)、3.93〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.87〜7.02(m、9H)、7.18(s、1H)、7.24(s、1H)、7.41(s、1H)
【0448】
得られた化合物(A144−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A144−1)は、昇温時において、100℃から125℃まで粘性の高い相を示し、125℃から明確なネマチック相を与える。さらに化合物(A144−1)は180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、50℃までネマチック相を呈し徐々に結晶化した。
【0449】
(実施例4〜5及び比較例1)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液を塗布し、乾燥後、厚さ89nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に、表17の組成の組成物をスピンコート法により塗布し、表1に記載の乾燥温度で1分間乾燥した。次いで表2に記載の光照射時の温度まで加温しながら、表1に記載の積算光量の紫外線を照射して、表2に記載の膜厚の光学フィルムを形成させた。
【0450】
【表1】


液晶化合物(z−0):下記式で表される化合物(特表平11−513019号公報に記載される化合物)

重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製)
重合開始剤:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819;BASFジャパン社製)
レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK−361N;ビックケミージャパン製)
溶剤:シクロペンタノン
【0451】
【表2】

【0452】
<光学特性の測定>
光学フィルムの正面位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。得られた光学測定正面位相差値は、波長447.3nm、546.9nm、及び627.8nmにおいて、それぞれ測定し、[Re(447.3)/Re(546.9)](αとする)及び[Re(627.8)/Re(546.9)](βとする)を算出した。また、光学フィルムの膜厚d(μm)をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス社製)を用いて測定した。結果を表19に示す。Δnは、Re(546.9)の値を膜厚で割って算出した(Δn=Re(546.9)/d)。
【0453】
【表3】

【0454】
実施例4及び5の光学フィルムは、αが1以下であり、βの値が1以上であったことから、その屈折率は逆波長分散性を示すことが確認された。このことから、本発明の化合物を用いて形成される光学フィルムは、広い波長域において一様の偏光変換が可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0455】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを製造することができる。
【符号の説明】
【0456】
1,1’ カラーフィルタ
2,2’,18,18’ 本発明の光学フィルム
3,3’ 配向膜
4,4’ カラーフィルタ層
5 液晶表示装置
6,10 偏光板
7,11 基板
8 対向電極
9 液晶層
12 TFT、絶縁層
13 透明電極
13’ 反射電極
30,30a,30b,30c,30d,30e 本発明の偏光板
14,14’ 積層体
15 偏光フィルム
16,16’ 支持基材
17,17’ 配向膜
19,19’,22,25 接着剤層
20 液晶パネル
21,23 貼合品
24 有機ELパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−1)で表される化合物。


[式(1−1)中、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、それぞれ独立に、−CR−、−S−、−NR−、−CO−又は−O−を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基を表す。
及びDは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置換されていてもよい。
及びAは、それぞれ独立に、炭素数3〜16の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R、−OR、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
、B、E及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のA及びBは、互いに同一でも異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のA及びBは、互いに同一でも異なっていてもよい。
及びFは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【請求項2】
が炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基であり、かつZが水素原子であるか、又はZが炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基であり、かつZが水素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、式(Y−1)で表される基、式(Y−2)で表される基又は式(Y−3)で表される基である請求項1又は2記載の化合物。

[式(Y−1)〜式(Y−3)中、Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−R、シアノ基、ニトロ基、−SO、−SOR、−SR、−OR、カルボキシ基又は−NRを表す。複数のZは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
は、上記と同じ意味を表す。
は、−O−又は−S−を表す。
*は、結合手を表す。]
【請求項4】
及びGが、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基である請求項1〜3のいずれか記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の化合物、及び重合開始剤を含有する組成物。
【請求項6】
請求項5記載の組成物を用いて形成される光学フィルム。
【請求項7】
請求項6記載の光学フィルムを含むフラットパネル表示装置。
【請求項8】
式(2−1)で表される化合物を還元して式(3−1)で表される化合物を得る工程を含む請求項1〜4のいずれか記載の化合物の製造方法。

[式(2−1)中、Q、Y、Z、及びZは上記と同じ意味を表す。]

[式(3−1)中、Q、Y、Z、及びZは上記と同じ意味を表す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77055(P2012−77055A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226286(P2010−226286)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】