説明

化合物および有機発光素子

【課題】 高性能の有機発光素子およびそれを可能とする材料を提供する。
【解決手段】 新規フルオランテン誘導体およびそれを有する有機発光素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物およびその化合物を用いた発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化が可能であることから、広汎な用途への可能性を示唆している。
【0003】
しかしながら、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気などによる劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。フルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合、現状では更なる長寿命の、高変換効率、高色純度の青、緑、赤色発光が必要であり、種々の提案がされている。
【0004】
また、特許文献として特許文献1乃至4等が挙げられる。
【特許文献1】特開平10−189248号公報
【特許文献2】WO2005/061656号
【特許文献3】特開2002−69044号公報
【特許文献4】特開2001−284050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、極めて純度のよい発光色相を呈し、高効率で高輝度、高寿命の光出力を有する有機発光素子用化合物を提供することにある。さらには製造が容易でかつ比較的安価に作成可能な有機発光素子を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の化合物は、下記一般式[1]で示されることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式[1]において、R1、R2は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、R1同士、R2同士は同じであっても異なっていてもよく、またR1およびR2は互いに同じであっても異なっていてもよい。Xは二価のアリーレン基であり、置換あるいは無置換のナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基、クリセニレン基、ジベンゾ[a,h]アントリレン基、ナフタセニレン基、ペンタセニレン基、ペリレニレン基から選ばれる二価の芳香族基である。R1同士、R2同士は結合して環を形成してもよい。a、bは1乃至9の整数。)
さらに、本発明の化合物は前記一般式[1]のXが置換あるいは無置換のアントリレン基である下記一般式[2]で示される化合物であることを特徴とする。
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式[2]において、R1乃至R3は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、R1同士、R2同士、R3同士は同じであっても異なっていてもよく、またR1、R2およびR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。R1同士、R2同士、R3同士は結合して環を形成してもよい。a、bは1乃至9の整数。cは1乃至8の整数。)
【0012】
さらに、本発明の化合物は下記一般式[3]で示されることを特徴とする。
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式[3]において、R1、R3は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、R1同士、R3同士は同じであっても異なっていてもよく、またR1およびR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。Y2は、置換あるいは未置換のナフチル基、フェナントリル基、アセナフチル基、アセフェナントリル基、アセアントリル基、ベンゾ[a]アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ナフタセニル基、ジベンゾ[a,h]アントリル基、ピセニル基、ペリレニル基から選ばれる縮合環芳香族基、または置換あるいは無置換の複素環基である。R1同士、R3同士は結合して環を形成してもよい。aは1乃至9の整数。cは1乃至8の整数。)
【0015】
また、本発明は少なくとも一方が透明か半透明な陽極および陰極からなる一対の電極間に侠持された有機化合物を含む1または複数の層より構成される有機発光素子において、前記有機化合物を含む層のうち少なくとも一層が、前記一般式[1]及至[3]で示される二環以上の縮合環芳香族基あるいは複素環基が二環以上の縮合環芳香族基に置換し、その二環以上の縮合環芳香族基を置換基として有するフルオランテン化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機発光素子である。
【0016】
さらに、本発明は前記一般式[1]及至[3]で示される化合物を少なくとも一種含有する層が発光領域のある少なくとも一層であることを特徴とする有機発光素子である。
【0017】
さらに、本発明は前記発光領域のある少なくとも一層が発光層であることを特徴とする有機発光素子である。
【0018】
さらに、本発明は前記発光層が、ホストとゲストの少なくとも2種の化合物から構成されることを特徴とする有機発光素子である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の化合物は高いガラス転移温度を有し、また本発明の化合物を特に発光層のホストまたはゲストとして含有させることにより、高効率発光を得ることを可能とする。本発明の有機発光素子は、低い印加電圧で高効率な発光を与えると共に、高い熱的安定性をもち、優れた耐久性も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明の選ばれた二環以上の縮合環芳香族基あるいは複素環基を有する特定の二環以上の縮合環芳香族基が置換することを特徴とするフルオランテン化合物について説明する。
【0022】
本発明において使用される化合物は有機発光素子用材料として使用できる。その中で、発光層用として使用する場合、発光層において単独で用いること、及びドーパント(ゲスト)材料、ホスト材料の目的で使用でき、高効率発光し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さい素子を得ることができる。
【0023】
発光層が、キャリア輸送性のホスト材料とゲストからなる場合、発光にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送。
2.ホストの励起子生成。
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達。
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動。
【0024】
それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程と競争でおこる。
【0025】
EL素子の発光効率を高めるためには、発光中心材料そのものの発光量子収率が大きいことは言うまでもない。しかしながら、ホスト−ホスト間、あるいはホスト−ゲスト間のエネルギー移動が如何に効率的にできるかも大きな問題となる。また、通電による発光劣化は今のところ原因は明らかではないが、少なくとも発光中心材料そのもの、または、その周辺分子による発光材料の環境変化に関連したものと想定される。
【0026】
そこで本発明者らは種々の検討を行った。
【0027】
はじめに、異なる縮合環芳香族基を結合し、さらに電子トラップ効果を期待しフルオランテニル基を導入した形の下記一般式[4]で示される化合物について検討した。
【0028】
【化4】

【0029】
(一般式[4]において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、同じであっても異なっていてもよい。Xは二価のアリーレン基であり、置換あるいは無置換のナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基、クリセニレン基、ジベンゾ[a,c]アントリレン基、ジベンゾ[a,h]アントリレン基、ナフタセニレン基、ペンタセニレン基、ペリレニレン基から選ばれる二価の芳香族基である。Y2は、置換あるいは未置換のナフチル基、フェナントリル基、アセナフチル基、アセフェナントリル基、アセアントリル基、ベンゾ[a]アントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基、ジベンゾ[a,c]アントリル基、ジベンゾ[a,h]アントリル基、ピセニル基、ペリレニル基から選ばれる縮合環芳香族基、または置換あるいは無置換の複素環基である。R1同士は結合して環を形成してもよい。aは1乃至9の整数。)
【0030】
その結果、二環以上の縮合環芳香族基あるいは複素環基が、二環以上の縮合環芳香族基に置換しており、その二環以上の縮合環芳香族基を置換基として有することを特徴とするフルオランテン化合物に注目した。そして前記一般式[1]及至[3]で示される化合物及びそれを使用した有機発光素子の発明に至った。有機発光素子においては、特に発光層のホストまたはゲストに用いた素子が高効率発光し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さいことを見出した。
【0031】
通電による発光劣化の原因の一つとして、発光層の薄膜形状の劣化による発光劣化が考えられる。この薄膜形状の劣化は、駆動環境の温度、素子駆動時の発熱等による有機薄膜の結晶化に起因すると考えられている。これは、材料のガラス転移温度の低さに由来すると考えられ、有機EL材料は高いガラス転移温度を有する事が望まれている。本発明の化合物は高いガラス転移温度を有し(たとえば例示化合物101は216℃)、有機EL素子の高耐久化を期待する事が出来る。
【0032】
本発明において使用される化合物は、二環以上の縮合環芳香族基あるいは複素環基が、二環以上の縮合環芳香族基に置換しており、その二環以上の縮合環芳香族基を置換基として有することを特徴とするフルオランテン化合物である。従ってこのフルオランテン化合物は分子内における各縮合環芳香族基間の回転が束縛された分子構造が形成され得る。本発明は、この構造的要因による分子振動抑制、それに伴う振動構造のない発光波形を考慮し分子設計を行った。また、量子収率の観点からも、アントラセン、ピレン、フルオランテンといった縮合環芳香族構造を有する置換基を組み合わせることが、高い量子収率を実現するために好ましい。さらに、分子間の縮合環芳香族基同士の相互作用による濃度消光を抑制するため、縮合環芳香族基にtert−ブチル基等の立体障害基を導入することも量子収率向上に好ましい。
【0033】
また、上述したように有機発光素子に用いられる化合物は高いガラス転移温度が求められている。一般的に、分子量の大きい材料はガラス転移温度が高い。本発明のフルオランテン化合物は、二環以上の縮合環芳香族基あるいは複素環基が、二環以上の縮合環芳香族基に置換しており、その二環以上の縮合環芳香族基を置換基として有することを特徴とするフルオランテン化合物である。そしてこのフルオランテン化合物は分子量が約500以上900以下と蒸着性も考慮すると適正な分子量を有する。本発明のフルオランテン化合物と比べて置換基としてフェニル基、トリル基等小さい芳香環だけ有するフルオランテンは分子量が小さく、高いガラス転移温度が期待できないと考えられる。また、アルキル基だけの導入ではガラス転移温度は低下してしまうと考えられる。本発明は、以上の考察のもとに分子設計し発明がなされたものである。
【0034】
なお、本発明のフルオランテン化合物をドーパント材料として使用する場合、次の数値範囲は好適な数値範囲である。即ちホスト材料に対するドーパント濃度は0.01wt%以上80wt%以下、好ましくは1wt%以上40wt%以下である。ドーパント材料はホスト材料からなる層全体に均一あるいは濃度勾配を有して含まれるか、あるいはある領域に部分的に含まれてドーパント材料を含まないホスト材料層の領域があってもよい。
【0035】
また本発明の化合物において、水素置換基は、重水素で置き換わってもよい。
【0036】
本発明の化合物において、置換あるいは未置換のアルキル基としては、メチル基、メチル−d1基、メチル−d3基、エチル基、エチル−d5基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、iso−プロピル基、iso−プロピル−d7基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ブチル−d9基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−オクチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、パーフルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−フルオロシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0037】
置換あるいは未置換のアラルキル基としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルイソプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、9−アントリルメチル基、2−(9−アントリル)エチル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2―クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2―ブロモベンジル基、3−ブロモベンジル基、4−ブロモベンジル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0038】
置換あるいは未置換のアリール基としては、フェニル基、フェニル−d5基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−トリフルオロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、メシチル基、4−tert−ブチルフェニル基、ジトリルアミノフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ナフチル−d7基、アセナフチレニル基、アントリル基、アントリル−d9基、フェナントリル基、フェナントリル−d9基、ピレニル基、ピレニル−d9基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、クリセニル基、ジベンゾクリセニル基、ベンゾアントリル基、ベンゾアントリル−d11基、ジベンゾ[a,h]アントリル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基、ペリレニル−d−11等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0039】
置換あるいは未置換の複素環基としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリジル−d5基、ビピリジル基、メチルピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ターピロリル基、チエニル基、チエニル−d4基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル−d7基、フリル基、フリル−d4基、ベンゾフリル基、イソベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾフリル−d7基、キノリル基、キノリル−d6基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、インドリジニル基、フェナジニル基、カルバゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0040】
置換あるいは未置換のアルコキシ基としては、上記記載の置換あるいは未置換のアルキル基、アラルキル基を有するアルキルオキシ基、アラルキルオキシ基、上記記載の置換あるいは未置換のアリール基、複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0041】
ハロゲン原子としては、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基などが挙げられる。
【0042】
上記置換基がさらに有しても良い置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基などの複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基などのアミノ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0043】
さらに、本発明において使用される選ばれた二環以上の縮合環芳香族基あるいは複素環基を有する特定の二環以上の縮合環芳香族基が置換することを特徴とするフルオランテン化合物を具体的に以下の表1に挙げるが、もちろんこれらに限定されるものではない。表1では、本発明において使用される化合物をA−B−Cと表し、BにはA,Cが結合する位置を示している。即ち例示化合物101については、以下のように表記される。
【0044】
【化5】

【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
【表9】

【0054】
参考化合物として、一般式[4]において、一般式[1]及至[3]で示される化合物以外の化合物を以下に挙げる。
【0055】
【表10】

【0056】
【表11】

【0057】
【表12】

【0058】
【表13】

【0059】
【表14】

【0060】
本発明の化合物の合成法について以下に述べる。
【0061】
表1に示す化合物のうち、置換基2つを有するピレニル基が置換した化合物は、合成収率の観点から好ましくは9−ブロモアントラセンにピレニル基を導入後、続く臭素化を経てフルオランテンボロン体との鈴木カップリングにより合成する。他方法として、9、10−ジブロモアントラセンを出発物質とし、AあるいはCのユニットのボロン体を反応させ、さらに残った臭素部分にAあるいはCの残りのユニットのボロン体を反応させ導入してもよいが、もちろん合成法はこれに限定されるものではない。
【0062】
表2〜4に示す化合物は、Bユニットのジブロモ体を出発物質としている。そしてAあるいはCのユニットのボロン体を鈴木カップリングにより反応させ、さらに残った臭素部分にAあるいはCの残りのユニットのボロン体を反応させ合成できる。もちろん合成法はこれらに限定されるものではない。
【0063】
中心ユニットBの入手の利便性、Bのジハロゲン体、モノハロゲン体の合成の簡便性という観点からは、表1,2,3,5,6に示した化合物群が好ましい。表3およびその他の表に例示したクリセンユニットもジハロゲン体、モノハロゲン体の合成の簡便性という観点からは好ましい。
【0064】
次に、本発明の有機発光素子について詳細に説明する。
【0065】
本発明の有機発光素子は、一対の電極と、該一対の電極間に狭持された一または複数の有機化合物を含む層を少なくとも有する有機発光素子において、前記有機化合物を含む層の少なくとも一層が、上記本発明の化合物の少なくとも一種を含有する。
【0066】
この有機化合物を含む層の少なくとも一層とは、好ましくは発光層である。
【0067】
図3に本発明の有機発光素子の好ましい例を示す。
【0068】
図3は、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、発光層3,電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成のものである。発光層を含め、これら有機層は陽極と陰極の間に配置されている。本発明に係るフルオランテン化合物は有機層に一種含有される。より具体的には発光層に含有される。
【0069】
図3に示した有機発光素子は、キャリヤ輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した化合物と適時組み合わせて用いられる。極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の化合物が使用できるため、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリヤあるいは励起子を有効に閉じこめて、発光効率の向上を図ることも可能になる。図3は、本発明の有機発光素子の一例を示す断面図である。
【0070】
図3以外の例としては、基板1上に、陽極2、発光層3及び陰極4を順次設けた構成のものが挙げられる。ここで使用する発光素子は、それ自体でホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能を単一で有している場合や、それぞれの特性を有する化合物を混ぜて使う場合に有用である。
【0071】
また、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4を順次設けた構成の場合は、発光物質はホール輸送性かあるいは電子輸送性のいずれか、あるいは両方の機能を有している材料をいづれかの層に用いる。発光性の無い単なるホール輸送物質あるいは電子輸送物質と組み合わせて用いる場合に有用である。また、この場合、発光層は、ホール輸送層5あるいは電子輸送層6のいずれかから成る。
【0072】
その他に、図3に対してホール注入層を陽極2側に挿入した構成があり、陽極2とホール輸送層5の密着性改善あるいはホールの注入性改善に効果があり、低電圧化に効果的である。
【0073】
さらに、図3に対してホールあるいは励起子(エキシトン)が陰極4側に抜けることを阻害する層(ホール/エキシトンブロッキング層)を、発光層3、電子輸送層6間に挿入した構成がある。イオン化ポテンシャルの非常に高い化合物をホール/エキシトンブロッキング層として用いる事により、発光効率の向上に効果的な構成である。
【0074】
ただし、図3および上記に挙げた素子構成はあくまでごく基本的な構成であり、本発明の化合物を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成されるなど多様な層構成をとることができる。
【0075】
本発明の有機発光素子は、図3および上記に挙げた素子構成のいずれの形でも使用することができる。
【0076】
特に、本発明の化合物を用いた有機層は、発光層、電子輸送層あるいはホール輸送層として有用であり、また真空蒸着法や溶液塗布法などによって形成した層は結晶化などが起こりにくく経時安定性に優れている。
【0077】
本発明は、特に発光層の構成成分として、本発明の化合物を用いるが、必要に応じてこれまで知られている低分子系およびポリマー系のホール輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物などを一緒に使用することもできる。
【0078】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0079】
正孔(ホール)注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にし、また注入されたホールを発光層に輸送する優れたモビリティを有することが好ましい。正孔注入輸送性能を有する低分子および高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、およびポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0080】
本発明の有機発光素子において使用される化合物以外に使用できる、主に発光機能に関わる材料としては、以下に示す化合物が挙げられる。縮合環芳香族化合物(例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、ルブレンなど)、キナクリドン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、ナイルレッド、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、有機金属錯体(例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体)およびポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0081】
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入を容易にし、注入された電子を発光層に輸送する機能を有するものから任意に選ぶことができ、ホール輸送材料のキャリア移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0082】
本発明の有機発光素子において、本発明の化合物を含有する層およびその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。特に塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0083】
上記結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独または共重合体ポリマーとして1種または2種以上混合してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0084】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いるか、あるいは複数併用することもできる。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0085】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはリチウム−インジウム、ナトリウム−カリウム、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム、マグネシウム−インジウム等、複数の合金として用いることができる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で用いるか、あるいは複数併用することもできる。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成をとることもできる。
【0086】
陽極と陰極は少なくともいずれか一方が半透明であってもよい。
【0087】
本発明で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜などを用いて発色光をコントロールする事も可能である。
【0088】
なお、作成した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属などをカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0089】
本発明の素子は、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を作成し、それに接続して作成することも可能である。
【0090】
また、素子の光取り出し方向に関しては、ボトムエミッション構成(基板側から光を取り出す構成)および、トップエミッション(基板の反対側から光を取り出す構成)のいずれも可能である。
【0091】
また、本発明においては、発光領域に、ゲスト材料として本発明のフルオランテン化合物とホスト材料を含むことを特徴の一つとする。特に4環以上の縮合環炭化水素骨格を有する化合物がホスト材料として優れ、4環以上の縮合環炭化水素骨格としては、ピレン骨格、フルオランテン骨格、ベンゾフルオランテン骨格、テトラセン骨格、トリフェニレン骨格、クリセン骨格などが挙げられる。
【0092】
その中で、ピレン骨格を有する化合物としては、例えば以下のような材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
【化6】

【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
<実施例1>
[例示化合物No.101の製造方法]
本発明の例示化合物101は、例えば以下に説明するような方法により製造できる。
【0096】
(1)中間体化合物1 9−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)アントラセンの合成
【0097】
【化7】

【0098】
窒素雰囲気下、9−ブロモアントラセン5g(19.4mmol)、2−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン7.73g(19.4mmol)をトルエン(240ml)、エタノール(120ml)の混合溶媒に溶解させ、さらに炭酸ナトリウム3.93g(38.8mmol)を蒸留水40mlに溶解させた水溶液を加え、50℃で30分攪拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.57g,1.36mmol)を加え、90℃に加熱したシリコーンオイルバス上で3.5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、水、トルエン、酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水層をさらにトルエン、酢酸エチルの混合溶媒で抽出(2回)しはじめに分離した有機層溶液に加えた。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘプタン=1:3)で精製し、中間体化合物1を6.5g得た。
【0099】
(2)中間体化合物2 9−ブロモ−10−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)アントラセンの合成
【0100】
【化8】

【0101】
窒素雰囲気下、中間体化合物1(6g、13.4mmol)をジオキサン100mlに溶解させ、水酸化カリウム0.75g(13.4mmol)を蒸留水5mlに溶かした水溶液を加え、臭素2.56g(16.1mmol)を滴下した。40℃に加温したオイルバス上で30分攪拌後、5%チオ硫酸ナトリウム溶液9.7g(3.08mmol)を加え、さらに20℃で2時間攪拌した。ろ過後メタノール洗浄し、トルエンから再結晶(2回)した。真空加熱乾燥し、中間体化合物2を3.6g得た。
【0102】
(3)例示化合物101の合成
【0103】
【化9】

【0104】
窒素雰囲気下、中間体化合物2(3g、5.69mmol)、フルオランテン−3−イル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン1.87g(5.69mmol)をトルエン(200ml)、エタノール(100ml)の混合溶媒に溶解させ、さらに炭酸ナトリウム0.64g(11.4mmol)を蒸留水30mlに溶解させた水溶液を加え、50℃で30分攪拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.66g,0.571mmol)を加え、90℃に加熱したシリコーンオイルバス上で5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、水、トルエン、酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水層をさらにトルエン、酢酸エチルの混合溶媒で抽出(2回)しはじめに分離した有機層溶液に加えた。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;トルエン:ヘプタン=1:3)で精製した。120℃で真空乾燥し、さらに昇華精製を行い、淡黄色固体として例示化合物101を2.3g得た。
【0105】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)によりこの化合物のM+である648.4を確認した(マトリクスなし)。
【0106】
さらに、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。(図1)
パーキンエルマー社製DSC(Pyris1)を用いてガラス状態の化合物を室温から10℃/minの昇温速度でガラス転移温度を測定したところ、216℃であった。
【0107】
ホスト材料の下記化合物5に対し5wt%の例示化合物101を含むクロロホルム溶液から混合膜を作成しそのPLスペクトルを測定し、例示化合物101由来のスペクトルを観測した(図2)。
【0108】
<実施例2>
図3に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作成した。
【0109】
基板1としてのガラス基板上に、陽極2としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。
【0110】
正孔輸送材料として下記構造式で示される化合物3を用いて、濃度が0.2wt%となるようにクロロホルム溶液を調整した。
【0111】
【化10】

【0112】
この溶液を上記のITO電極上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で1分間スピンコートを行い膜形成した。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を完全に除去した。形成されたホール輸送層5の厚みは15nmであった。
【0113】
次に、ホール輸送層5の上に第1の化合物として前記例示化合物No.101と下記に示す第2の化合物として下記構造式で示される化合物4を共蒸着して25nmの発光層3を設けた。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は0.2nm/sec以上0.3nm/sec以下の条件で成膜した。
【0114】
【化11】

【0115】
更に電子輸送層6として2、9−[2−(9,9’−ジメチルフルオレニル)]−1、10−フェナントロリンを真空蒸着法にて25nmの膜厚に形成した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は0.2nm/sec以上0.3nm/sec以下の条件であった。
【0116】
次に、フッ化リチウム(LiF)を先ほどの有機層の上に、真空蒸着法により厚さ0.5nm形成し、更に真空蒸着法により厚さ100nmのアルミニウム膜を設け電子注入電極(陰極4)とする有機発光素子を作成した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は、フッ化リチウムは0.05nm/sec、アルミニウムは1.0nm/sec以上1.2nm/sec以下の条件で成膜した。
【0117】
得られた有機EL素子は、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0118】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al電極(陰極4)を負極にして、4Vの印加電圧で、発光効3.8lm/Wの青色の発光が観測された。また、CIE色度はx=0.15,y=0.14と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0119】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、100時間電圧を印加したところ、良好な発光の継続が確認された。
【0120】
<実施例3>
実施例2の化合物4の代わりに下記構造式で示される化合物5を用いた以外は実施例2と同様の方法により素子を作成した。本実施例の素子は4Vの印加電圧で、発光効率 4lm/Wの発光が観測された。また、CIE色度はx=0.15,y=0.14と色純度の良好な青色の発光が観測された。
【0121】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、100時間電圧を印加したところ、良好な発光の継続が確認された。
【0122】
【化12】

【0123】
<実施例4>
[例示化合物No.111の合成]
実施例1のフルオランテン−3−イル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに5,8−ジ−tert−ブチルフルオランテン−3−イル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.111を合成する事が出来る。
【0124】
<実施例5>
[例示化合物No.115の合成]
実施例1のフルオランテン−3−イル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりにフルオランテン−8−イル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.115を合成する事が出来る。
【0125】
<実施例6>
[例示化合物No.103の合成]
実施例1の2−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに2−(7−iso−プロピル−3−メチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.103を合成する事が出来る。
【0126】
<実施例7>
[例示化合物No.105の合成]
実施例1の2−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに2−(2,7−ジ−tert−ブチルピレン−4−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.105を合成する事が出来る。
【0127】
<実施例8>
[例示化合物No.116の合成]
(1)中間体化合物7 1−ブロモ−4−(7−tert−ブチルピレン−1−イル)ナフタレンの合成
実施例1の中間体化合物1の合成で用いた9−ブロモアントラセンの代わりに1,4−ジブロモナフタレン、2−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに2−(7−tert−ブチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用い、1,4−ジブロモナフタレン、炭酸ナトリウム水溶液、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの混合溶液に、2−(7−tert−ブチルピレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランのトルエン、エタノール混合溶液を滴下する以外は実施例1の中間体1の合成と同様の方法で中間体化合物7を合成することが出来る。
【0128】
(2)例示化合物116の合成
実施例1の例示化合物101の合成で用いた9−ブロモ−10−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)アントラセンの代わりに1−ブロモ−4−(7−tert−ブチルピレン−1−イル)ナフタレンを用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.116を合成する事が出来る。
【0129】
<実施例9>
[例示化合物No.121の合成]
実施例8の1,4−ジブロモナフタレンの代わりに1,5−ジブロモナフタレンを用いる以外は実施例8と同様の方法で例示化合物No.121を合成する事が出来る。
【0130】
<実施例10>
[例示化合物No.124の合成]
実施例8の1,4−ジブロモナフタレンの代わりに1,5−ジブロモ−3,7−ジメチルナフタレンを用いる以外は実施例8と同様の方法で例示化合物No.124を合成する事が出来る。
【0131】
<実施例11>
[例示化合物No.129の合成]
実施例8の1,4−ジブロモナフタレンの代わりに6,12−ジブロモクリセンを用いる以外は実施例8と同様の方法で例示化合物No.129を合成する事が出来る。
【0132】
<実施例12>
[例示化合物No.139の合成]
実施例8の化合物7の合成と同様な鈴木カップリング反応の条件で、9,10−ジブロモアントラセンに1当量の2−(ナフタレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを反応させ得られる9−ブロモ−10−(ナフタレン−1−イル)アントラセンを9−ブロモ−10−(7−tert−ブチル−3−メチルピレン−1−イル)アントラセンの代わりに用いる以外は実施例1と同様の方法で例示化合物No.139を合成する事が出来る。
【0133】
<実施例13>
[例示化合物No.144の合成]
実施例12の2−(ナフタレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに2−(フェナンスレン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例12と同様の方法で例示化合物No.144を合成する事が出来る。
【0134】
<実施例14>
[例示化合物No.153の合成]
実施例12の2−(ナフタレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに2−(クリセン−6−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例12と同様の方法で例示化合物No.153を合成する事が出来る。
【0135】
<実施例15>
[例示化合物No.6−2の合成]
実施例12の2−(ナフタレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランの代わりに2−(キノリン−8−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを用いる以外は実施例12と同様の方法で例示化合物No.183を合成する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明における例示化合物101のH−NMR(CDCl)スペクトルを示す図である。
【図2】ホスト材料の化合物5に対し5wt%の例示化合物101を含むクロロホルム溶液からスピンコーティング法により混合膜を作成し、そのPLスペクトルを示す図である。
【図3】本発明における有機発光素子の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0137】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示される化合物。
【化1】

(一般式[1]において、R1、R2は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、R1同士、R2同士は同じであっても異なっていてもよく、またR1およびR2は互いに同じであっても異なっていてもよい。Xは二価のアリーレン基であり、置換あるいは無置換のナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基、クリセニレン基、ジベンゾ[a,h]アントリレン基、ナフタセニレン基、ペンタセニレン基、ペリレニレン基から選ばれる二価の芳香族基である。R1同士、R2同士は結合して環を形成してもよい。a、bは1乃至9の整数。)
【請求項2】
前記一般式[1]のXが置換あるいは無置換のアントリレン基であることを特徴とする下記一般式[2]で示される請求項1に記載の化合物。
【化2】

(一般式[2]において、R1乃至R3は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、R1同士、R2同士、R3同士は同じであっても異なっていてもよく、またR1、R2およびR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。R1同士、R2同士、R3同士は結合して環を形成してもよい。a、bは1乃至9の整数。cは1乃至8の整数。)
【請求項3】
下記一般式[3]で示される化合物。
【化3】

(一般式[3]において、R1、R3は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基及び複素環基からなる群より選ばれた基であり、R1同士、R3同士は同じであっても異なっていてもよく、またR1およびR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。Y1は、置換あるいは未置換のナフチル基、フェナントリル基、アセナフチル基、アセフェナントリル基、アセアントリル基、ベンゾ[a]アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基、ジベンゾ[a,h]アントリル基、ピセニル基、ペリレニル基から選ばれる縮合環芳香族基、または置換あるいは無置換の複素環基である。R1同士、R3同士は結合して環を形成してもよい。aは1乃至9の整数。cは1乃至8の整数。)
【請求項4】
少なくとも一方が透明か半透明な陽極および陰極からなる一対の電極間に配置された化合物を含む1または複数の層より構成される有機発光素子において、前記化合物を含む層のうち少なくとも一層が、請求項1乃至3いずれか1項に記載の化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の前記化合物を少なくとも一種含有する層が発光領域のある少なくとも一層であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記発光領域のある少なくとも一層が発光層であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記発光層が、ホストとゲストの少なくとも2種の化合物から構成されることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−308477(P2007−308477A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40901(P2007−40901)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】