説明

化合物のシクロオキシゲナーゼ阻害の選択性を評価する方法及びその評価方法を応用したスクリーニング方法

【課題】 簡便かつ迅速にCOX阻害の選択性を評価する方法を提供すること。
【解決手段】 化合物の存在下及び非存在下で好中球を刺激し、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定し、測定結果に基づいて化合物のCOX阻害の選択性を評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物のシクロオキシゲナーゼ阻害の選択性を評価する方法及びその評価方法を応用したスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗炎症薬としてよく使用されている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の主な作用機序は、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害による、炎症性メディエーターであるプロスタグランジン(PGs)合成阻害である。COXには、COX−1及びCOX−2の2つのアイソザイムが存在することが知られている(例えば、非特許文献1)。COX−1は全ての細胞に存在する構成型の酵素であり、胃粘膜細胞の保護や正常な腎機能維持、止血作用など、生体保護に関与するPGsを合成する。それに対して、COX−2は誘導型であり、炎症刺激によって様々な炎症関連細胞において発現が誘導され、特に、炎症に関与するPGsがCOX−2を介して産生される。
【0003】
NSAIDsは、その種類によってCOX−1及びCOX−2への選択性が異なり、COX−2を選択的に阻害するNSAIDsは胃腸障害などの副作用を引き起こす可能性が低いと考えられている。したがって、NSAIDsのCOX選択性を評価することは臨床上及び薬の開発上、重要なことである。
【0004】
COX阻害の選択性を評価する方法として、以下のものが知られている。
(1)ヒト絨毛刺激ホルモンで刺激したラット前排卵卵胞の顆粒膜細胞の抽出液から、COX−1酵素及びCOX−2酵素を単離し、過酸化水素を基質として各酵素のパーオキシダーゼ活性を測定する方法(非特許文献2)。
(2)マウスのCOX−1又はCOX−2のいずれか一方のみをトランスフェクトしたCOS−1細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞由来)を用いる方法(非特許文献3)。
(3)COX−1又はCOX−2のいずれか一方のみを専ら発現しているヒトの全血由来の成分を使用する方法(非特許文献4)。
【0005】
【非特許文献1】Byron Cryer et al., Prostaglandins & other Lipid Mediators, vol. 56, pp. 341-361 (1998)
【非特許文献2】Jean Sirois et al., The Journal of Biological Chemistry, vol. 267, pp. 6382-6388 (1992)
【非特許文献3】Elizabeth A. Meade et al., Journal of Lipid mediators, vol. 6, pp. 119-129 (1993)
【非特許文献4】C. Brideau et al., Inflammation Research, vol. 45, pp. 68-74 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(1)及び(2)の方法では、種差があるためCOXの構造及び活性に違いがあり、ヒトにおけるNSAIDsのCOX選択性を評価するには不適当である。また、酵素や細胞の調製といった手間がかかり、酵素活性やmRNAの発現量を測定するため、評価に時間がかかるという問題点もある。上記(3)のヒトの全血を使用する方法は、ヒトのCOXを利用しているという利点もあるが、成分の分離の煩雑さや、個体差によるばらつきが大きい等の問題点も多い。また、放射性物質を使用するため、被爆や廃棄の制限も大きな問題となる。さらに、この方法は刺激によってCOX−2が発現し、それによって合成されるPGsを測定するため、24時間以上の培養が必要となり、迅速性にも欠ける。
【0007】
したがって、本発明の目的は、簡便かつ迅速にCOX阻害の選択性を評価する方法を提供することにある。本発明の別の目的は、COX阻害の選択性の評価方法を応用したスクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、NSAIDsのCOX阻害の選択性と、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量に与えるNSAIDsの影響との間に、一定の関係があることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、化合物のシクロオキシゲナーゼ阻害の選択性を評価する方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が変化せず、かつ、スーパーオキシド産生量が変化せず、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を、シクロオキシゲナーゼ−1を選択的に阻害する化合物であると評価し、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少せず、かつ、スーパーオキシド産生量が減少しない化合物を、シクロオキシゲナーゼを非選択的に阻害する化合物であると評価し、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を、シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する化合物であると評価する工程と、
を備える方法を提供する。
【0010】
上記方法によれば、COX酵素やCOXをトランスフェクトした細胞を調製する必要がなく、かつ、COXの酵素活性やCOXのmRNAの発現量を測定する必要もないため、簡便かつ迅速に評価することが可能である。
【0011】
本発明は、また、上記評価方法を応用した以下のスクリーニング方法を提供する。
[1] シクロオキシゲナーゼ−1を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が変化せず、かつ、スーパーオキシド産生量が変化せず、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【0012】
[2] シクロオキシゲナーゼを非選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少せず、かつ、スーパーオキシド産生量が減少しない化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【0013】
[3] シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【0014】
[4] 上記[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法で選択された化合物を抗血栓薬として選択する、抗血栓薬のスクリーニング方法。
【0015】
[5] 上記[2]又は[3]に記載のスクリーニング方法で選択された化合物を抗腫瘍薬として選択する、抗腫瘍薬のスクリーニング方法。
【0016】
[6] 抗腫瘍薬をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化合物のCOX阻害の選択性を評価する方法は、簡便かつ迅速に化合物を評価することが可能である。また、本発明のスクリーニング方法は、簡便かつ迅速に化合物をスクリーニングすることが可能であり、ハイスループットスクリーニングに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(化合物のCOX阻害の選択性の評価方法)
まず、化合物のCOX阻害の選択性を評価する方法について説明する。本発明の化合物のCOX阻害の選択性を評価する方法は以下の工程(1)〜(3)を備える。
(1)Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程。
(2)好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程。
(3) Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が変化せず、かつ、スーパーオキシド産生量が変化せず、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を、シクロオキシゲナーゼ−1を選択的に阻害する化合物であると評価し、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少せず、かつ、スーパーオキシド産生量が減少しない化合物を、シクロオキシゲナーゼを非選択的に阻害する化合物であると評価し、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を、シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する化合物であると評価する工程。
【0020】
以下、各工程を説明する。工程(1)では、好中球あるいは好中球様の培養細胞(以下、説明を簡略化するために、好中球様の培養細胞も含めて好中球と表現する場合がある。)を刺激することにより、好中球に活性酸素の産生を促す。好中球の由来は限定されないが、哺乳類、特にヒトの好中球であることが好ましい。好中球は、常法により血液から採取・精製することができる。例えば、モノ・ポリ分離溶液(大日本製薬)を用いた密度勾配遠心により血液から調製可能である。好中球様の培養細胞とは、好中球様に分化した細胞をいい、例えば、HL−60細胞(ヒト前骨髄芽球系株化細胞)をDMSOなどの分化誘導剤で分化させた細胞やTHP−1細胞(ヒト単球系株化細胞)をBtcAMP(ジブチリルcAMP)などの分化誘導剤で分化させた細胞などが挙げられる。
【0021】
好中球の刺激は、培養液中や緩衝液中で行うことが可能である。好中球の培養に用いられている培地(例えば、RPMI1640培地など)や一般的な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液など)が使用可能である。培地又は緩衝液の好適なpH及び温度は、それぞれ6〜8及び37℃である。Ca2+キレート剤の存在下で好中球を刺激する場合には培養液中にCa2+が含まれていても含まれていなくてもよいが、Ca2+キレート剤の非存在下で好中球を刺激する場合には培養液中にCa2+が含まれていることが望ましく、典型的には0.5mM〜2mMにCa2+濃度は調整される。Ca2+キレート剤としては、EGTA(エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸)やEDTA(エチレンジアミン四酢酸)などの公知のCa2+キレート剤を用いることが可能である。培養液や緩衝液にCa2+キレート剤を添加することにより、好中球の細胞内へのCa2+流入を阻害している。Ca2+キレート剤の濃度は好中球の細胞内へのCa2+の流入を阻止できるのに充分な濃度であればよく、好適な濃度は当該技術分野でよく知られている。Ca2+キレート剤としてEGTAやEDTAを用いる場合、その濃度は典型的には1mM〜10mMである。
【0022】
好中球の刺激は、fMLP(ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン)、C5a(活性化補体成分の一種)及びSOZ(serum−opsonized−Zymosan;血清オプソニン化ザイモサン)等の走化性因子を好中球に接触させることにより達成される。走化性因子の濃度は好中球を刺激できる濃度であればよく、その種類に応じて濃度は異なるが、各走化性因子の好適な濃度は当該技術分野でよく知られている。そして、好中球の刺激を、被検対象である化合物の存在下(複数の濃度であってもよい)及び非存在下の双方で行うことにより、好中球の挙動(具体的には、細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量)の変化が異なるため、その挙動の違いにより化合物のCOX阻害の選択性を評価することが可能である。
【0023】
工程(2)では、刺激を受けた好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する。fMLP等による刺激を受けた好中球は、通常、細胞内Ca2+濃度が上昇し、スーパーオキシド産生量が増加する。しかし、COX阻害化合物の存在下では、COX阻害の選択性に依存して、その挙動が変化する。また、Ca2+キレート剤の存在下で好中球を刺激すると、好中球の細胞内へのCa2+の流入が生じない。そのため、Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下では、細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の増減の変化は異なり、しかも、その違いはCOX阻害の選択性に依存する。
【0024】
細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量は、常法に従って、また、市販の試薬や測定キットを用いて、測定することが可能である。細胞内Ca2+濃度の測定は、例えば、カルシウム蛍光指示薬(例えば、Fura−2やFluo−3、膜透過性を高めたそれらのエステル誘導体など、数多くのカルシウム蛍光指示薬が市販されている)を好中球に導入し、励起光を照射して発生した蛍光を測定することにより可能である。スーパーオキシド産生量の測定は、例えば、CLA(2−メチル−6−フェニル−3,7−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オン)などのスーパーオキシドと反応して化学発光を生じる試薬を測定系に添加し、好中球がスーパーオキシドを産生するに伴い発生する化学発光を測定することにより可能である。
【0025】
本発明者らが開発した化学発光及び蛍光の同時測定装置(特開2004−61438号公報、特開2000−338045号公報及び特開2000−131234号公報等に記載)は、化学発光及び蛍光を同時に測定できるため、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の測定に特に適している。
【0026】
工程(3)では、工程(2)で得られた測定結果に基づいて被検対象の化合物のCOX阻害の選択性を評価する。ここで、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度(スーパーオキシド産生量)が「変化しない」とは、化合物の存在下での測定値を化合物の非存在下での測定値で除した数値が0.7以上1.3以下であることが好ましい。また、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度(スーパーオキシド産生量)が「増加する」とは、化合物の存在下での測定値を化合物の非存在下での測定値で除した数値が1.3よりも大きいことが好ましい。また、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度(スーパーオキシド産生量)が「減少する」とは、0.7未満であることが好ましい。さらに、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度(スーパーオキシド産生量)が「増加しない」とは、「変化しない」又は「減少する」のいずれかの状態を表し、「減少しない」とは「変化しない」又は「増加する」のいずれかの状態を表す。特に、細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の増減の評価に当っては、複数用量(濃度)の被検化合物で測定を行い、用量依存曲線を作成し、その最大変化量について評価を行うことが好ましい。
【0027】
(COX阻害化合物のスクリーニング方法)
次に、本発明のCOX阻害化合物のスクリーニング方法について説明する。本発明のCOX−1を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法は、以下の工程(1)〜(3)を備える。
(1)Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球を刺激する工程。
(2)好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程。
(3)Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が変化せず、かつ、スーパーオキシド産生量が変化せず、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程。
【0028】
工程(1)では、好中球を刺激することにより、好中球に活性酸素の産生を促す。好中球の種類、好中球の刺激等については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。工程(2)では、刺激を受けた好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する。本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した測定方法と同様の測定方法で、測定を行うことが可能である。工程(3)では、工程(2)で得られた測定結果に基づいて被検対象の化合物がCOX−1を選択的に阻害する化合物であるか否かを評価し選択する。評価方法については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。
【0029】
このようにして選択されたCOX−1を選択的に阻害する化合物は、抗炎症薬として利用できるだけでなく、抗血栓薬としても利用することが可能である。血小板には核がなくタンパク質合成はおきない。したがって、血小板に存在するCOXはCOX−1のみであり、誘導型であるCOX−2は存在しない。COX−1を選択的に阻害する化合物は血小板においてCOX−1を阻害し、アラキドン酸からPGI2の合成抑制することにより、血小板の凝集を抑制し、血栓形成を防止することが可能である。
【0030】
本発明のCOXを非選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法は、以下の工程(1)〜(3)を備える。
(1)Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球を刺激する工程。
(2)好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程。
(3)Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少せず、かつ、スーパーオキシド産生量が減少しない化合物を選択する工程。
【0031】
工程(1)では、好中球を刺激することにより、好中球に活性酸素の産生を促す。好中球の種類、好中球の刺激等については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。工程(2)では、刺激を受けた好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する。本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した測定方法と同様の測定方法で、測定を行うことが可能である。工程(3)では、工程(2)で得られた測定結果に基づいて被検対象の化合物が非選択的にCOXを阻害する化合物であるか否かを評価し選択する。評価方法については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。
【0032】
このようにして選択された非選択的にCOX阻害する化合物は、心臓疾患(特に、心筋梗塞)の患者に投与する抗炎症薬として利用することが可能である。COX−2選択的なNSAIDsは心筋梗塞のリスクを増加させるという報告があり、非選択的にCOXを阻害する化合物は、前述のように血小板のCOX−1を阻害することにより血栓形成を防止するため、心筋梗塞のリスクを低減できるからである。
【0033】
本発明のCOX−2を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法は、以下の工程(1)〜(3)を備える。
(1)Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球を刺激する工程。
(2)好中球の細胞内Ca2+濃度及び好中球のスーパーオキシド産生量を測定する工程。
(3)Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程。
【0034】
工程(1)では、好中球を刺激することにより、好中球に活性酸素の産生を促す。好中球の種類、好中球の刺激等については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。工程(2)では、刺激を受けた好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する。本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した測定方法と同様の測定方法で、測定を行うことが可能である。工程(3)では、工程(2)で得られた測定結果に基づいて被検対象の化合物がCOX−2を選択的に阻害する化合物であるか否かを評価し選択する。評価方法については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。
【0035】
このようにして選択されたCOX−2を選択的に阻害する化合物は、胃腸障害などの副作用の少ない抗炎症薬として利用することが可能である。また、COX−2により産生されるPGは、腫瘍血管の新生を誘導することによって、癌の成長に関与していることが指摘されている(例えば、非特許文献1)。このことから、COX−2を選択的に阻害する化合物は、抗炎症薬としてだけでなく、抗腫瘍薬としても利用することが可能と考えられる。
【0036】
(抗血栓薬のスクリーニング方法)
次に、本発明の抗血栓薬のスクリーニング方法について説明する。本発明の抗血栓薬のスクリーニング方法は、上記のCOX−1を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法又は上記の非選択的にCOXを阻害する化合物をスクリーニングする方法で選択された化合物を抗血栓薬として選択することを特徴とする。
【0037】
既に説明したように、血小板に存在するCOXはCOX−1のみであって、誘導型であるCOX−2は存在しない。COX−1を阻害する化合物は血小板においてCOX−1を阻害し、アラキドン酸からPGI2の合成抑制することにより、血小板の凝集を抑制し、血栓形成を防止することが可能である。したがって、COX−1を選択的に阻害する化合物及び非選択的にCOXを阻害する化合物は、抗血栓薬の候補となり得る。
【0038】
(抗腫瘍薬のスクリーニング方法)
最後に、本発明の抗腫瘍薬のスクリーニング方法について説明する。本発明の抗腫瘍薬のスクリーニング方法は、上記の非選択的にCOXを阻害する化合物をスクリーニングする方法又は上記のCOX−2を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法で選択された化合物を抗腫瘍薬として選択することを特徴とする。
【0039】
既に説明したように、COX−2により産生されるPGは、腫瘍血管の新生を誘導することによって、腫瘍の成長に関与していることが指摘されている。また、大腸癌、乳癌、胃癌、食道癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、頭頚部の扁平上皮癌などのヒト癌細胞において、COX−2の発現が増強していることが報告されている。さらに、NSAIDs服用者は、大腸癌や乳癌などの癌の発症率が有意に低いことも報告されている。
【0040】
より具体的には、大腸癌におけるCOX−2の発現及び選択的COX−2阻害剤によって大腸癌の増殖が抑制されることが、Hongmiao Sheng et al., The Journal of Clinical Investigation, vol. 99, pp. 2254-2259 (1997) において報告されている。また、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌におけるCOX−2の発現及びCOX−2が癌転移へ関与(原発巣からの離脱、基底膜の破壊、血管内皮細胞への接着、転移巣での増殖、血管新生など)することは、垣内佳美ら、肝胆膵、45巻、527−533頁(2002年)において報告されている。また、ヒトの大腸癌、乳癌、前立腺癌及び肺癌の生検組織やその新生腫瘍血管の細胞においてCOX−2の発現が認められ、COX−2阻害剤が血管新生を阻害して腫瘍細胞の増殖を抑制することが、Jaime L. Masferrer et al., Cancer Research, vol. 60, pp. 1306-1311 (2000) において報告されている。また、癌化に伴い子宮内膜におけるCOX−2の発現が増加し、COX−2阻害剤によって癌の増殖、進展が抑制されることが、長谷川清志ら、産婦人科治療、83巻、610頁(2001年)において報告されている。さらに、COX−2阻害剤は腫瘍起因性の血管新生を阻害し、癌の転移を抑制する効果があり、ヒトの癌治療に対する新たな治療薬となりうることが、Jaime L. Masferrer et al., Annals of the New York Academy of Sciences, vol. 889, pp. 84-86 (1999) やStephen Gately et al., Seminars in Oncology, vol. 31, pp. 2-11 (2004) で報告されている。
【0041】
したがって、COX−2を選択的に阻害する化合物及び非選択的にCOXを阻害する化合物は、抗腫瘍薬(抗癌薬)の候補となり得る。抗腫瘍薬の中でも、大腸癌、乳癌、胃癌、食道癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌及び頭頚部の扁平上皮癌に対する抗腫瘍薬であることが好ましく、特に大腸癌に対する抗腫瘍薬であることが好ましい。
【0042】
さらに、COX−2を選択的に阻害する化合物及び非選択的にCOXを阻害する化合物と、COX−1を選択的に阻害する化合物と、を区別する方法は、抗腫瘍薬のスクリーニング方法に応用することが可能である。すなわち、本発明の抗腫瘍薬のスクリーニング方法は、以下の工程(1)〜(3)を備える。
(1)Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球を刺激する工程。
(2)好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程。
(3)Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程。
【0043】
工程(1)では、好中球を刺激することにより、好中球に活性酸素の産生を促す。好中球の種類、好中球の刺激等については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。工程(2)では、刺激を受けた好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する。本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した測定方法と同様の測定方法で、測定を行うことが可能である。工程(3)では、工程(2)で得られた測定結果に基づいて被検対象の化合物が非選択的にCOXを阻害する化合物又はCOX−2を選択的に阻害する化合物であるか否かを評価し選択する。評価方法については、本発明の化合物のCOX阻害の選択性の評価方法に記載した通りである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明について詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
COX阻害薬の存在下における、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化を以下の方法により確認した。
【0046】
好中球として、HL−60細胞をDMSO(ジメチルスルホキシド;分化誘導剤)で分化させたものを用いた。すなわち、終濃度1.28%のDMSOを含む10%ウシ胎児血清(FCS)入りRPMI1640培地にて、HL−60細胞を3.0×10cell/mLの密度で、37℃、5%COの条件下で4日間培養した。培地から細胞を回収し、RHバッファー(10mM HEPES、154mM NaCl、5.6mM KCl、pH7.4)で2回洗浄し、10%FCS入りRPMI1640培地に懸濁させた。
【0047】
この細胞懸濁液に3μMのFluo3−AM(1−[2−アミノ−5−(2,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−3−オキシ−9−ザンテニル)フェノキシ]−2−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸;カルシウム検出試薬;蛍光性指示薬)を加えて、37℃、5%COの条件下で30分間インキュベーションし、細胞内にFluo3−AMを取り込ませた。この細胞をRHバッファーで2回洗浄し、同バッファーに懸濁させた。得られた細胞懸濁液(8.0×10cell/mL)に5μLのCOX阻害薬の溶液又は5μLのDMSO(ブランクとして)を加え、さらにCaCl及びCLA(スーパーオキシド検出試薬;化学発光性指示薬)をそれぞれ終濃度が1mM、1μMとなるように加えた。
【0048】
このように調製した試料溶液1mLをセルに入れ、化学発光及び蛍光の同時測定装置(特開2004−61438号公報に記載の装置)のセルホルダーにセルをセットした。セル内の試料溶液は、撹拌しながら37℃でインキュベートした。試料溶液に100μMのfMLPを10μL加えて好中球を刺激し、Fluo−3の蛍光強度及びCLAの化学発光強度の変化をモニターした。
【0049】
用いたCOX阻害薬は以下の通りである:COX−1選択的阻害薬としてフルルビプロフェン及びケトプロフェン、非選択的COX阻害薬としてアスピリン及びイブプロフェン、COX−2選択的阻害薬としてエトドラク及びニメスリド。また、COX阻害薬の添加量(測定セルの試料溶液の含量)は、成人1回分の投与量の1/500、1/5000及び1/50000倍量となるように添加した。
【0050】
図1〜3は、COX阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化を表すグラフである。縦軸はCOX阻害薬添加時の蛍光(細胞内Ca2+濃度)及び化学発光(スーパーオキシド産生量)のピーク面積をブランクのピーク面積(DMSO添加時のピーク面積)で除した比を表し、横軸はCOX阻害薬の添加量(対数)を表す。図1はCOX−1選択的阻害薬の結果を表し、図2は非選択的COX阻害薬の結果を表し、図3はCOX−2選択的阻害薬の結果を表す。
【0051】
図1から明らかなように、COX−1選択的阻害薬の存在下では、非存在下と比べて、好中球を刺激したときの細胞内Ca2+濃度は変化せず、また、スーパーオキシド産生量も変化しなかった。一方、図2及び3から明らかなように、非選択的COX阻害薬及びCOX−2選択的阻害薬の存在下では、非存在下と比べて、好中球を刺激したときの細胞内Ca2+濃度は減少し、スーパーオキシド産生量も減少した。
【0052】
(実施例2)
EGTAの存在下かつCOX阻害薬の存在下における、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化を以下の方法により確認した。
【0053】
実施例1と同様にして、Fluo3−AMを取り込ませた好中球の細胞懸濁液(8.0×10cell/mL)を調製した。細胞懸濁液に、CaCl及びCLAをそれぞれ終濃度が1mM、1μMとなるように加え、室温にて5分間インキュベートし、EGTAを終濃度が5mMとなるように加え、室温にて2.5分間インキュベートした。さらに、5μLのCOX阻害薬の溶液又は5μLのDMSO(ブランクとして)を加え、室温にて2.5分間インキュベートした。その後は、実施例1と同様に好中球を刺激し、Fluo−3の蛍光強度及びCLAの化学発光強度の変化をモニターした。
【0054】
用いたCOX阻害薬及びCOX阻害薬の添加量は、実施例1と同様である。
【0055】
図4〜6は、EGTA存在下かつCOX阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化を表すグラフである。図4はCOX−1選択的阻害薬の結果を表し、図5は非選択的COX阻害薬の結果を表し、図6はCOX−2選択的阻害薬の結果を表す。
【0056】
図4から明らかなように、COX−1選択的阻害薬の存在下では、非存在下と比べて、好中球を刺激したときの細胞内Ca2+濃度は減少し、スーパーオキシド産生量も減少した。また、図5から明らかなように、非選択的COX阻害薬の存在下では、非存在下と比べて、好中球を刺激したときの細胞内Ca2+濃度は減少せず、スーパーオキシド産生量も減少しなかった。さらに、図6から明らかなように、COX−2選択的阻害薬の存在下では、非存在下と比べて、好中球を刺激したときの細胞内Ca2+濃度は減少し、スーパーオキシド産生量も減少した。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】COX−1選択的阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化量を表すグラフである。(a)フルルビプロフェン、(b)ケトプロフェン。
【図2】非選択的COX阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化量を表すグラフである。(a)アスピリン、(b)イブプロフェン。
【図3】COX−2選択的阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化量を表すグラフである。(a)エトドラク、(b)ニメスリド。
【図4】EGTAの存在下かつCOX−1選択的阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化量を表すグラフである。(a)フルルビプロフェン、(b)ケトプロフェン。
【図5】EGTAの存在下かつ非選択的COX阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化量を表すグラフである。(a)アスピリン、(b)イブプロフェン。
【図6】EGTAの存在下かつCOX−2選択的阻害薬の存在下での、好中球の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量の変化量を表すグラフである。(a)エトドラク、(b)ニメスリド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物のシクロオキシゲナーゼ阻害の選択性を評価する方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が変化せず、かつ、スーパーオキシド産生量が変化せず、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を、シクロオキシゲナーゼ−1を選択的に阻害する化合物であると評価し、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少せず、かつ、スーパーオキシド産生量が減少しない化合物を、シクロオキシゲナーゼを非選択的に阻害する化合物であると評価し、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を、シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する化合物であると評価する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
シクロオキシゲナーゼ−1を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が変化せず、かつ、スーパーオキシド産生量が変化せず、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【請求項3】
シクロオキシゲナーゼを非選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少せず、かつ、スーパーオキシド産生量が減少しない化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【請求項4】
シクロオキシゲナーゼ−2を選択的に阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の存在下及び非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少し、かつ、Ca2+キレート剤の存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程と、
を備える方法。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のスクリーニング方法で選択された化合物を抗血栓薬として選択する、抗血栓薬のスクリーニング方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のスクリーニング方法で選択された化合物を抗腫瘍薬として選択する、抗腫瘍薬のスクリーニング方法。
【請求項7】
抗腫瘍薬をスクリーニングする方法であって、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の存在下及び非存在下で好中球あるいは好中球様の培養細胞を刺激する工程と、
好中球あるいは好中球様の培養細胞の細胞内Ca2+濃度及びスーパーオキシド産生量を測定する工程と、
Ca2+キレート剤の非存在下で、化合物の非存在下と比較して化合物の存在下での細胞内Ca2+濃度が減少し、かつ、スーパーオキシド産生量が減少する化合物を選択する工程と、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−180828(P2006−180828A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380122(P2004−380122)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人農業・生物系産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センターからの委託研究事業、産業再生法第30条の適用を受ける出願
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】