説明

化合物の検出用自動化システム

液体試験試料を処理するための自動化システムを提供する。本開示の自動化システムは気液分離器と、密封可能な試料容器から前記気液分離器まで前記液体試験試料を移送し、かつ前記気液分離器中の前記液体試験試料から少なくとも1つの揮発成分を取り除くためのガス流を供給する第1ガス源のためのアタッチメントを有し、前記液体試験試料中に存在する対象となる化合物が前記液体試験試料を前記気液分離器へ移送する前に少なくとも1つの揮発性種に変換される。更に、前記アタッチメントと、前記気液分離器と流体連絡した捕集容器であって、前記少なくとも1つの揮発成分から前記化合物の前記少なくとも1つの揮発性種を分離し、前記少なくとも1つの揮発性種を保持できる少なくとも1つの物質を含む捕集容器と、前記少なくとも1つの物質から前記少なくとも1つの揮発性種を放出するのに充分な温度まで、前記捕集容器の中の少なくとも1つの物質を急速に加熱するための加熱源とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、土壌、沈殿物、および生物物質など試料中の汚染物などの化合物処理、検出および計測方法とシステムを提供する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年8月1日に出願された米国仮特許出願第60/821,027号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する。
【0003】
水銀は自然に存在する元素であり、極めて低濃度で人間と動物に対して毒性作用を持つことが知られている。水銀の高い毒性が水銀の生体内蓄積傾向と組合されると、水銀を重金属中で特別な関心物にする。特に、水銀は、神経システムを襲う可能性があり、胎児、幼児、および子供は水銀の影響を特に受けやすい。メチル水銀は、沈殿物および水中に見い出される非常に毒性な形態である。メチル水銀は、微生物がえさを食べるとき微生物に摂取され、続いて微生物を常食とする魚介類中に蓄積する。次に、人や魚を食べる野生生物がメチル水銀を含む魚介類を摂取すると、メチル水銀の危険に晒される。従って、環境および生物学的試料中のメチル水銀を検出し正確に測定することは興味あるものである。環境試料中の総水銀を決定するためにいくつかの方法がある。しかしながら、水銀の種分化は非常に困難である。
【0004】
現在、メチル水銀量の分析で使われている多くの方法は、米国環境保護庁によって出版された「蒸留、水性エチレーション、浄化、捕集による水中のメチル水銀」と名付けられた「方法1630」に基づいている。この方法は、水質をモニタリングするために設計されているが、調製ステップを変更することによって他の種類の試料での使用に適合される。試料は、一般に、まずメチル水銀を蒸解する、すなわち蒸留容器から受容容器に移されて凝縮し、水以外の多くの化合物を分離するか、あるいは蒸留抽出し、続いてメチル水銀を含む得られた溶媒を分析に使用する。
【0005】
次に、処理された試料を多量の高純度の脱イオン水と、緩衝液と、エチレート化試薬(通常は、テトラエチルほう酸ナトリウム)とを含む容器に加える。エチレート化試薬は、試料中に存在する様々な形態の水銀と結合し、複雑な「エチラート化された」分子の形成を得る。エチラート化された形態の水銀はかなり揮発性であるので、液体にガスをバブリングして、溶液から取り除く。窒素などのガスは、溶液を浄化し管まで蒸気を運ぶのに利用される。管は広範囲の物質を保持する物質を充填しており、トラップとして作用し、エチラート化された水銀形態を保持する。トラップ充填物質は、捕集し分子を熱脱着(すなわち、捕集充填物質と捕集された分子を分子振動が2つの分子を一緒に保持する吸引力に打ち勝つ温度まで加熱する)で放出するように設計されている。
【0006】
捕集充填物質をパージ容器から取り外し、乾燥窒素ガスを短時間だけ捕集充填物質に通過させて乾燥する。乾燥後に、捕集充填物質を不活性ガス源(通常はアルゴンまたはヘリウム)に手動で接続し(例えば、ニクロム線コイルを使用して)加熱してエチラート化された種を放出する。次に、エチラート化された種は、不活性キャリアガス流を用いて捕集充填物質から一定温度に保持されているガスクロマトグラフィ(GC)カラムに移す。異なる水銀種または形態はカラムから分子量、カラム温度、およびガス流速に基づいた異なる時間で出る、すなわち、小さい水銀種が大きい水銀種の前にGCカラムから出る。
【0007】
不活性キャリアガスがGCカラムを出るとき、不活性キャリアガスは、異なる時間分解された水銀種を石英ウールが充填され、超高温に保持されている石英管(「熱分解」カラムと呼ばれる)まで移動する。石英管では、水銀種の分子形態にかかわらず分解され、原子状水銀はもはや分子中で結合していない。得られた原子状水銀蒸気は、例えば、米国特許第5,731,873号で説明されたような冷蒸気原子蛍光分析(CVAFS)を使用して各水銀種が検出される。次に、各水銀種量が、既知量の水銀を含む標準試料に対して得られる結果と比較して定量化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,731,873号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】米国環境保護庁の「蒸留、水性のエチレーション、浄化、捕集による水中のメチル水銀の方法1630」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この手動によるメチル水銀レベルの分析方法は、かなりの時間がかかり、オペレータにかなりの入力を要求する。あらゆる手動技術のように、実質的に固有変動があるので、この方法はオペレータエラーをもたらす。従って、メチル水銀など低レベル汚染物を検出するシステムと方法に対する必要性として、当技術分野には、費用効率と時間効率の両方を要求しオペレータの最小入力を要求する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
メチル水銀に限定されないが、メチル水銀を含む有機水銀化合物などの低レベルの化合物や汚染物を効率的かつ費用対効果が高い処理、および/または、検出を可能にする自動化システムがその使用方法と共に提供される。開示された自動化システムは、試験試料中の低レベル化合物の処理、捕集、移送、検出、および分析を可能とする。本自動化システムは、当技術分野で知られている種々の手動の化合物処理、および/または、検出システムに対して利点を有する。例えば、本自動化システムは、作業労働量を低減し、手順上の均質性と良い再現性を提供し、与えられた時間内で分析する試験試料数を増加することができる。
【0012】
1つの実施例では、液体試験試料を処理する自動化システムは、パージ容器のような気液セパレータ(a gas and liquid separater)と、密封可能な試料容器から気液分離器まで試験試料を移送し、かつ気液分離器中の試験試料から1つの揮発成分を取り除くためにガス流を供給する第1ガス源用のアタッチメントを有する。試験試料中に存在する対象化合物は、試験試料を気液分離器へ移送する前に、少なくとも1つの揮発性種に変換される。気液分離器と流体連絡し、揮発成分から化合物の揮発性種を分離して揮発性種を保持できる物質を含む捕集容器と、この物質から揮発性種を放出させるために充分な温度まで捕集容器中の物質を急速に加熱する加熱源とを更に有する。
【0013】
本明細書に使用される場合、アルデヒド、ケトン、炭化水素などの揮発性成分は、十分高い蒸気圧を有する化合物であり、通常の条件でかなり大気中蒸発する。揮発性化合物は以下のものを含むが、これらに限定されない:メタン、エタン、メチレンクロリド(ジクロロメタン)、1,1,1−トリクロロエタン(メチルクロロホルム)、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFC−113)、トリクロロフルオロメタン(CFC−11)、ジクロロジフルオロメタン(CFC−12)、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)、トリフルオロメタン(HFC−23)、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CFC−114)、クロロペンタフルオロエタン(CFC−115)、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジクロロ−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、パラクロロベンゾトリフルオリド(PCBTF)、周期的な、分岐または直線状の完全にメチル化したシロキサン誘導体、アセトン、ペルクロロエチレン(テトラクロロエチレン)、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225cb)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−10ミー)、ジフルオロメタン(HFC−32)、エチルフルオリド(HFC−161)、1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245ca)、1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245ea)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,2,3,3ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、クロロフルオロメタン(HCFC−31)、1−クロロ−1-フルオロエタン(HCFC151a)、1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン(HCFC−123a)、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロ−4−メトキシブタン(COCHまたはHFE−7100)、2−(ジフルオロメトキシメチル)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン((CFCFCFOCH)、1−エトキシ−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン(COCまたはHFE−7200)、2−(エトキシジフルオロメチル)−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン((CFCFCFOC)、酢酸メチル、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−3−メトキシプロパン(n−COCHまたはHFE−7000)、3−エトキシ−1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6−ドデカフルオロ−2(トリフルオロメチル)ヘキサン(HFE−7500)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ(HFC 227ea);ぎ酸メチル(HCOOCH)および他のパーフルオロカーボン化合物。
【0014】
他の実施例では、自動化システムは、複数の試料容器を運ぶためのホルダ、ガスクロマトグラフィ(GC)システム、および熱分解カラムをさらに含む。試料容器、気液分離器、捕集容器、GCシステム、熱分解カラム、および自動化システムの他のコンポーネント部品は、複数の管状部材を通して互いに流体連絡している。本明細書に使用されるとき、「流体連絡」という用語は、液体連絡、および/または、ガス状連絡を含む。
【0015】
1つの実施例では、試験試料中に存在する興味ある化合物は、試験試料を気液分離器あるいはパージ容器中へ移送する前に。少なくとも1つの揮発性種に変換される。揮発性種は、パージ容器中で試験試料から除去され、次に、捕集容器中で捕集物質によって吸収される。それに続いて、揮発性種は、急激な加熱によって捕集物質から急速に放出される。それに続いて、揮発性種は、室温付近で作動するガスクロマトグラフシステムで分離される。分離された揮発性種は、熱分解カラム中で加熱されて、その化合物の元素状形態となり、次に、検出デバイスによって測定される。
【0016】
別の実施例では、試験試料中の水銀種は、揮発性のエチラート化された水銀種を与えるためにエチラート化されるか、または、揮発性のプロピラート化された水銀種を与えるためにプロピラート化されて、パージ容器中で試験試料から除去されて、次に、捕集容器中で捕集物質によって吸収される。それに続いて、エチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種は、急激加熱によって捕集物質から急速に放出され、室温付近で作動するGCシステムによって分離される。分離されたエチラート化されたあるいはプロピラート化された水銀種は、熱分解カラムで加熱されて元素状水銀を形成し、検出デバイスによって測定される。
【0017】
試料容器は、密封可能なオートサンプラのガラスビンであるが、これに限定されない。1つの実施例では、試験溶液、試験試料の混合物を調製するために、試料容器に高純度脱イオン水などの水と酢酸緩衝液などの緩衝液とを加える。試料容器は、空気の気泡が全く残っていないのを保証するために先端までいっぱいに満たされ、次にシールされる。別の実施例では、試験溶液、試験試料の混合物を調製するために、高純度脱イオン水などの水と酢酸緩衝液などの緩衝液とテトラエチルほう酸ナトリウムなどのエチレート化試薬とが試料容器中に加えられる。エチレート化試薬は、試験溶液中に存在するあらゆる水銀と反応し、容器中で揮発性のエチラート化された水銀種を形成する。あるいはまた、プロピラート試薬は、揮発性のプロピラート化された水銀種を形成するために使用される。試料容器は、空気の気泡が全く残っていないのを保証するために先端までいっぱいに満たされ、次にシールされる。
【0018】
自動化システムは、穿孔針アセンブリをさらに含む。穿孔針アセンブリの針は、試料容器を穿孔する。例えば、窒素などのガス源は、穿孔針アセンブリの通気ポートを通って試料容器中を通過し、得られるガス圧が気液分離器の下部に接続された切替可能弁を通過して試験溶液を試験溶液から気液分離器に押し込む。
【0019】
1つの実施例では、気液分離器はパージ容器である。パージ容器は、少なくとも2つのポートを含む細長い管であり、第1ポートがパージ容器の下部に配置され、第2ポートがパージ容器の上部に配置される。試験溶液は、第2ポートを通過してパージ容器に入り、パージ容器をいっぱいに満たす。次に、ガス源をパージ容器に導入し、気泡を試験溶液まで移動させて試験溶液から除去し、揮発性種は第1ポートを通ってパージ容器を出る。ガス源は、連続したガス流であり、試験溶液を試料容器から気液分離器に押し込む圧力を提供する。
【0020】
次に、揮発性種は、弁システムを通過し、捕集容器に向かう。捕集容器は、揮発性種を収集(吸着)、乾燥、熱脱離することができる。パイレックス(登録商標)ガラスかあるいは石英で作られる捕集容器は、揮発性種を収集、吸着または捕集するための少なくとも1種の捕集物質を含む。
【0021】
上記説明された「浄化および捕集」システムは、試験試料から揮発性種を分離するための少なくとも1つの気液分離器と、揮発性種を捕集する気液分離器と流体連絡している少なくとも1つの捕集容器とを含むが、揮発性種とともに使用することに限定されず「浄化および捕集」システムが他の化合物および/または汚染物を捕集して分離するために使用されることも理解される。
【0022】
揮発性種が充填物質によって吸着または捕集された後に、捕集容器はガス源手段を使って乾燥される。ガス源は弁システムを通って捕集容器中に移動する。捕集容器は、加熱源によって加熱され、オプションに冷却システムと連絡している。
【0023】
1つの実施例では、加熱源は赤外線放出を提供する少なくとも1つのハロゲン電球を含む。赤外線放出は、ハロゲン電球によって急速に提供され、捕集容器中の捕集物質を急激に加熱する。捕集物質の急速で急激な加熱方法は「急速加熱」と呼ばれる。捕集容器の急速加熱により発生して蓄積した熱エネルギーは、熱脱離手段により捕集物質から揮発性種の迅速な放出をもたらす。
【0024】
自動化システムは、不活性ガスキャリヤー源をさらに含む。不活性ガスキャリヤーは、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、またはラドンを含むはこれらに限定されない。不活性ガスキャリヤーは、別の弁システムを通って捕集容器に入る。捕集容器中の捕集物質から放出された揮発性種は、不活性ガスキャリヤーと混合され、得られる混合物は、捕集容器を出て、弁システムを通り抜けて合流点に向かい、そこから揮発性種と不活性ガスキャリヤーの混合物は、ガスクロマトグラフ(GC)システムに移動する。
【0025】
GCシステムは、一定温度に保持された、例えばクロモソープW上のOV−3などの少なくとも1つのGC充填物質と熱分解カラムとを含む。GCシステムは、分光光度計などの検知デバイスとガス状連絡している。GCカラムは、どんな構成もあり得る。1つの実施例では、GCカラムは、S字形であり、テフロン(登録商標)管で形成され、約9インチの全長を持ち、比較的低温度(約35℃)で作動する。別の実施例では、GCカラムは、U字形であり、テフロン(登録商標)管で形成され、約9インチの全長を持ち、比較的低温度(約35℃)で作動する。エチラート化されたまたはプロピラート化された異なる水銀種の形態は、分子の大きさに依存して異なる時間でGCカラムを出る。
【0026】
1つの実施例では、様々な形態の揮発性種はGCカラムを通過した後で、熱分解カラムを通過する。熱分解カラムは、急激な加熱手段で様々な形態の揮発性種を分解して試験化合物の元素状形態に変換することができる。熱分解カラムはニクロム線のコイルなどの加熱源によって加熱される。電位がニクロム線コイルを横切って提供されると、ニクロム線コイルを流れる電流を引き起こす。ニクロム線の抵抗損失は、熱分解カラムの急激加熱を引き起こして熱分解カラムの安定加熱をもたらし、熱分解カラム内に蓄積された熱エネルギーが様々な形態の揮発性種を化学分解して試験化合物の元素状形態にする。
【0027】
熱分解カラムから出る試験化合物の元素形態の分子は、分光光度計のような検出デバイス内を通過しそこで特定時間にGCカラムを出る試験化合物の元素状形態の量を測定する。分光光度計は、例えば、冷蒸気原子蛍光分光光度計(CVAFS)である。
【0028】
別の実施例では、自動化システムは、複数の試料容器を保持する容器、パージ容器、少なくとも3つの捕集容器、およびガスクロマトグラフィ(GC)システムを含む。各捕集容器は、ハロゲン電球などの加熱源に接続され、揮発性種の収集(吸着)、乾燥、および熱脱着を実行することができる。このシステムは、第1捕集容器が揮発性種を吸着し、第2捕集容器が乾燥し、第3捕集容器中の揮発性種の熱脱離の同時処理操作を可能する。
【0029】
この実施例では、揮発性種の第1試料は、パージ容器を出て第1弁システムを通過し、第1の3ポート弁を通過して第1捕集容器に向かう。揮発性種の第1試料が第1捕集容器中の充填物質によって吸着または捕集された後に、第1捕集容器はガス源手段を通して乾燥され、次に、上記説明されたように、揮発性種は熱脱着手段により放出される。
【0030】
第1捕集容器中に捕集された揮発性種の第1試料を乾燥するとき、揮発性種の第2試料は、パージ容器から出て第2三方弁を通過して第2捕集容器に入る。いったん揮発性種の第2試料が第2捕集容器中の充填物質によって吸着または捕集されると、第2捕集容器は、第2の3ポート弁を通過して第2捕集容器の中に移動するガス源手段により乾燥され、次に、熱脱着手段により揮発性種が放出される。
【0031】
第2捕集容器中で捕集された揮発性種の第2試料を乾燥しているとき、揮発性種の第3試料は、第3の3ポート弁を通過してパージ容器から出て第3捕集容器に入る。揮発性種の第3試料が第3捕集容器中の充填物質によって吸着または捕集された後に、第3捕集容器は、第3の2ポート弁を通過して第3捕集容器中に移動するガス源手段を通して乾燥され、揮発性種は熱脱着により放出される。上記説明された第1、第2、第3捕集容器を含む自動化サイクルは、連続的に繰り返えす。
【0032】
別の実施例では、自動化システムは1つ、2つまたは4つ以上の捕集容器を含む。
【0033】
また、試験試料中に存在する化合物量を決定する方法が提供される。ある実施例では、そのような方法は、密封可能な試料容器中に液体試験試料を配置する工程と、液体試験試料を密封可能な試料容器から少なくとも1つの気液分離器までガス流を使用して移送する工程と、液体試験試料から化合物の揮発成分を分離する工程と、揮発性種を捕集物質に吸収する工程と、揮発性種を放出するのに充分な温度まで捕集物質を急速に加熱する工程とを有する。他の実施例では、揮発性種はガスクロマトグラフィ手段を通して分離され、各分離された揮発性種は、試験化合物の元素状形態を形成するのに十分な温度まで加熱され、分離された揮発性種から形成された各試験化合物の各元素状形態の量を決定する。
【0034】
本明細書に記載された自動化システムの複数の捕集容器と複数の弁システムとを使用すると、たった1つのパージ容器と1つのGCシステムを必要とするだけで、複数の揮発性種の複数試料を同時に吸着、乾燥、熱脱着し得る利点を提供する。従って、システム効率とアウトプットを高めることができる。また、当技術分野で知られた化合物処理と検知システムでの熱脱離は、一般には、ニクロム線コイル内に捕集容器を配置し、ニクロム線コイルに電位を提供して電流を流すことで達成される。この方法は、捕集容器の周囲に巻かれたニクロム線コイルを抵抗加熱して最初に捕集物質の外側層だけを加熱する。最終的に捕集物質全体の内容物が加熱されるが捕集物質の加熱は、急速でないし均一でもない。対照的に、本開示の自動化システムの急速加熱を利用すると、加熱に必要な時間をかなり短縮し、捕集物質を一様に加熱して、揮発性種の熱脱着に必要な時間を低減する。
【0035】
本開示の自動化システムで使用されるGCカラムは、一般に、当技術分野で使われるGCカラムよりかなり短いものであり、本GCカラムは、当技術分野で一般に使われるGCカラムが必要とする90℃〜150℃の作動温度の代わりに、35℃近辺の温度で作動することができる。これにより、空間および材料に対する必要条件を低減し、電力消費を低減する利点が提供され、かなりの費用節約がもたらされる。
【0036】
当技術分野で知られている化合物の処理と検知システムは、試料容器からパージ容器まで試験試料を移すために、一般に、ぜん動ポンプシステムをさらに利用する。しかしながら、揮発性種は、そのようなシステムで必要なフレキシブルチューブに付着しやすい。1つの例では、メチル水銀は、テフロン(登録商標)管などのフッ化物ポリマー管に付着しないが、テフロン管は、その硬さによってぜん動ポンプでの使用に適さない。本開示の自動化システムは、試料容器からパージ容器まで試験試料を移すためにぜん動ポンプシステムの代わりにガス源を使うので、テフロン(登録商標)管を本開示システムで使用することができる。
【0037】
本発明のこれらおよび追加の特徴およびそれらを得る方法は明らかであり、本発明は、以下のより詳細な説明と添付図面を参照することにより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】化合物の処理と検出用の自動化システムの実施例を示す図である。
【図2】図1の自動化システムのガスクロマトグラフィ(GC)システムの実施例を示す図である。
【図3】本開示の自動化システムで得られる例示のガスクロマトグラフィのピーク分析を示す図である。
【図4】従来のメチル水銀検知システムで得られる例示のガスクロマトグラフィのピーク分析を示す図である。
【図5】化合物処理と検出用の自動化システムの別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、添付図面を参照し、以下の詳細な説明でさらに詳細に説明される。図1は、メチル水銀を含む低レベル有機水銀化合物の処理および/または検出のために開示された自動化システム10の実施例を示しているが、それに限定されない。図1に示す実施例では、自動化システム10は、複数の試料容器30を保持するホルダ20と、気液分離器あるいはパージ容器40と、捕集容器50と、ガスクロマトグラフィ(GC)システム60を含む。自動化システム10の試料容器30、パージ容器(気液分離器)40、捕集容器50、ガスクロマトグラフィ(GC)システム60、および他のコンポーネントは、複数の管状部材の手段により互いに流体連絡されている。本明細書に使用される場合、用語「流体連絡」は、液体連絡、および/または、ガス状連絡のことをいう。管状部材は、テフロン(登録商標)管などのフッ素ポリマーによって形成されるが、それに限定されない。
【0040】
試料容器30は、密封可能なオートサンプラガラスビンであるが、それに限定されない。この実施例では、試験溶液を調製するために、試験試料の混合物、高純度脱イオン水などの水、酢酸緩衝液などの緩衝液、およびテトラエチルほう酸ナトリウムなどエチレート化試薬が試料容器30に加えられる。試験試料は、水銀を含むと信じられている液体、水銀基準物、または水などのブランクであるが、それに限定されない。エチレート化試薬は、試験溶液中に存在するいかなる水銀とも反応し、容器30中でエチラート化された水銀種を形成する。あるいはまた、プロピラート化試薬は、エチラー化試薬剤に代わって使用されプロピラート化された水銀種を提供する。試料容器30は、空気の気泡が全く残っていないのを保証するために先端までいっぱいに満たされた後にシールされる。試料容器30は最少量の空気を含むので、エチラート化されたあるいはプロピラート化された水銀種は、試験溶液が自動化システム10に移されて分析される前に、何時間も安定した状態を保つことができる。
【0041】
自動化システム10はさらに穿孔針アセンブリ15を含む。穿孔針アセンブリ15の針16は、試料容器30を穿孔する。通気ライン18は、ガス源22手段によって加圧され、次に、針のせん孔操作の間および後に、ガス源が試料容器30を加圧する。充填作業は針16の先端の門形を通して行われ、試験試料は、先端ライン16を通って外に流れ、弁28を通って、ポート44を通って、パージ容器(気液分離器)40の下部まで通過するのを可能とする。充填作業がいったん完全に行われると、ガスが流れ続けて、試料容器30の内部と先端ライン16と弁28とパージ容器40まで導く管からあらゆる残留物を除去する。また、ガスは、試験試料溶液からガス流中への揮発性種の除去を容易し、揮発性種は、ポート42を通って出て、弁システム32と捕集容器50に向かう。
【0042】
1つの実施例では、例えば、窒素であるガスは、ガス源22から、穿孔針アセンブリ15の通気ポートを通って試料容器30中まで通過する。ガス源22からのガスが試料容器30に達する前に、ガスはオプションに少なくとも1つの流量制御デバイス24を通過し、ガス流量の測定、および/または、制御をする。流量制御デバイス24は、質量流量コントローラまたはロータメータであるが、それに限定されない。また、ガス源22からのガスは、オプションに少なくとも1台の精製デバイス26を通過し、ガス中に存在するいかなる水銀も排除する。精製デバイス26は、金製クリーンアップカラムであるが、それに限定されない。試料容器30中で得られるガス圧は、試料容器から試験溶液を、パージ容器(気液分離器)40の下部近くに配置されたA/B弁などの切り替え可能弁28を通過して、パージ容器40まで押し込む。全体の試験溶液を試料容器30からパージ容器40中に移送した後で、試料容器30の内壁から残留物質を除去するために、連続的にガスを流す。ガス流は、また、移送管中に残りる小さい小滴あるいは膜からいかなる揮発性種も除去する。
【0043】
図1に示される実施例では、パージ容器(気液分離器)40は、少なくとも2つのポート42と44を含む細長い管であるが、他の構成もまた自動化システム10と共に利用され得る。第1ポート42は、パージ容器40の上部に配置され、第2ポート44はパージ容器40の下部に配置される。試験溶液は、第2ポート44を通ってパージ容器40に入り、少なくとも部分的にパージ容器40を満たす。ガス源22からのガスは、次に、パージ容器40の下部またはその近くでパージ容器40に導入され、ガスが気泡を移送して試験溶液を通過し、試験溶液から揮発性のエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を除去した後、第1ポート42を通ってパージ容器40から出る。試験溶液から実質的にすべてのエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種を取り除いた後で、切替可能弁28が切り換えられるとガス流が逆方向となり、ガス源22からのガスは、先端からパージ容器40に入り、試験溶液の急速な排液が第2ポート44を通って廃棄物容器46に入る。実質的にすべての試験溶液をパージ容器40から除去した後でこのガスは連続して流されてして残留物質を容器から除去する。残留物は、そうしないと残留して自動化システム10のそれに続く作業を汚染する可能性がある。
【0044】
パージ容器(気液分離器)40を出るエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種は、次に、弁システム32を通過し、捕集容器50に入る。弁システム32は、AB弁と、3ポート弁と、2ポート弁などであるが、それに限定されない。捕集容器50は、エチラート化された水銀またはプロピラート化された種を収集(吸着)、乾燥、および熱脱着するのを実行することができる。捕集容器50は、パイレックス(登録商標)ガラス、石英、または他の適切な材料で作られている。捕集容器50は、エチラート化されたかまたはプロピラート化された種を収集、吸着、または捕集する少なくとも1つの捕集物質を含んでおり、加熱源52とオプションの冷却ファンのような冷却システム54とに連結されている。エチラート化されたまたはプロピラート化された種を効率的に捕集することができる当技術分野で知られた、例えば、黒鉛化された炭素あるいはテナックス(登録商標)などの捕集物質を捕集容器50中で使用することができる。
【0045】
エチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種が充填物質によって吸着または捕集された後に、捕集容器50は窒素などのガス手段によって乾燥される。図1に示されたように、ガスはガス源22から質量流量コントローラやロータメータなどのオプションの流量制御デバイス56と、オプションの精製デバイス58と、弁システム32とを通過して捕集容器50中に入る。
【0046】
例えば、ハロゲン電球である加熱源52は、赤外線放出を提供することができる。加熱源52によって提供される赤外線放出は、急速かつ急激に捕集容器50中の捕集物質を加熱する。加熱源52による加熱は、好ましくは約20秒未満である。例えば、加熱源52は、約8〜20秒、約8〜12秒、約12〜16秒、または約16秒〜20秒の間、捕集容器50を加熱するために使用される。1つの実施例では、加熱源52による加熱は、約8秒間続き、捕集容器50中の捕集物質の温度を約200℃まで十分に上昇させる。捕集容器50中の蓄積された熱エネルギーは、熱脱着手段によって捕集物質からのエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種の迅速な放出をもたらす。熱によって引き起こされる分子振動がエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種と捕集物質との間の吸引力に打ち勝つからである。
【0047】
自動化システム10は、不活性ガスキャリヤー源66をさらに含む。不活性ガスキャリヤーは、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、またはラドンを含むが、それに限定されない。1つの実施例では、不活性ガスキャリヤーは、アルゴンである。不活性ガスキャリヤー源66からの不活性ガスキャリヤーは、流量制御デバイス68と、オプションの精製デバイス70を通過し、弁システム64手段を通って捕集容器50に入る。流量制御デバイス68は、質量流量コントローラあるいはロータメータであるが、それに限定されない。捕集容器50中の捕集物質から放出されたエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種は、不活性ガスキャリヤーと混合され、得られる混合物が捕集容器50を出て、弁システム32を通過し、GCシステム60に向かう。窒素などの乾燥あるいはパージガスは、弁システム64を通過してシステムを出て、排気トラップ76に入る。
【0048】
図1に示されたように、弁システム32と64、加熱源52、および冷却デバイス54は、マイクロコントローラ92と電気的に連結され、マイクロコントローラ92は、自動化システム10の制御と自動化のための適切なコンピュータシステに連結している。このようなコンピュータシステムは当技術分野で周知である。
【0049】
捕集容器50から放出された後で、エチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種と不活性ガスキャリヤーとの混合物は、ガスクロマトグラフ(GC)システム60に移動する。図2に示されたように、GCシステム60は、OV−3などのGC充填物質を含むGCカラム80を含む。GCカラム80は一定温度に保持される。放出されるエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種の分子は、分子の質量によって決定される速度で、入口からGCカラム80出口まで移動する。大きい分子は、GC充填物質に強く吸引され、長い期間の間、GC充填物質に吸着し、その結果、GCカラム80からエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種の小さい分子よりゆっくり放出される。一般に、Hg0が最初にGCカラム80から出て、次に、メチル水銀が続き、次に、Hg2+が出る。また、水銀分子が移動する速度は、GC充填物質およびガス流速の温度に依存するので、これらの変数が最適化され、次に、通常は一定に保持される。一般に、エチラート化されたまたはプロピラート化された水銀種の各形態は、互いに重ならないようにしてGCカラム80を出る。
【0050】
GCカラム80の全長は変えられるが、GCカラム80は、一般に、当技術分野で知られている慣用のGCカラムより短い全長を有する。GCカラム80は、約2インチ〜約36インチの間、約2インチ〜約9インチの間、約10インチ〜約20インチの間、あるいは約21インチ〜約36インチの間で測定される。1つの実施例では、GCカラム80の全長は約9インチである。GCカラム80は、比較的低温度で、例えば、約35℃で作動することができる。GCカラム80は、好ましくは、テフロン(登録商標)などの非反応性物質から構成される。熱は、アルミニウム製加熱ブロック(図示せず)のような熱源手段を通してGCカラム80に提供される。1つの実施例では、アルミニウム製加熱ブロックは、約4インチ×2インチ×1インチである。
【0051】
異なるエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種はGCカラム80を出て、オプションの弁システム84手段により熱分解カラム82に移送される。熱分解カラム82は、エチラート化されたかまたはプロピラート化された様々な形態の水銀種を分解して水銀の元素状形態に変換することができる。熱分解カラム82は、熱分解カラム82を約700℃の温度まで加熱するニクロム線コイルなどの加熱源85によって加熱されるが、エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を分解するのに充分な温度であれば、どのような温度でも使用することができる。熱は、例えば、バルク熱源とニクロム線コイルに印加される電流によって供給される。
【0052】
次に、元素状水銀は、熱分解カラム82を出て、分光光度計90に入り、元素状水銀が検出されて測定される。GCシステム60とともに使用するために適合した分光光度計90は、米国特許第5,731,873号で説明されるように冷蒸気原子蛍光分析(CVAFS)を含むが、これに限定されない。分光光度計90は、オプションにヨウ素酸炭素カラムなどの公害防止デバイス95に接続することができる。図2に示されたように、GCシステム60は、マイクロコントローラ94と電気的に接続されており、マイクロコントローラ94はGCシステム60の制御と自動化用のいかなるコンピュータシステムにも接続することができる。自動化システム10の1つの実施例では、図1に示されているようなマイクロコントローラ92などの1つのマイクロコントローラは、全体の自動化システム10を制御するために使用することができる。
【0053】
254nmの紫外光の強い放出を有する水銀蒸気光源は、分光光度計90の検出セルを通過するいかなる水銀原子も励起する。励起水銀原子は、自然に基底状態に戻るとき、同じ波長光を再放出する。この蛍光放出は、検出される蛍光を最大にし、検出される入射ビームとその散乱光を最小にするような入射光源に対する正しい角度で検出することができる。光電子増倍管検出器と254nm光学フィルターから出てくる検出された信号は、増幅してから測定する。連続測定はこの信号で行う。この信号は、どんなときでもセルを通過する原子状水銀の相対測定を定量化するのに使用される。この種類のシステムはかなり線形であり、不活性キャリアガス中の水銀密度の4桁以上の正確な相対的測定(10000:1より大きい範囲)を提供する。原子水銀量はGCシステム60を出るエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の量に比例しているので、試験試料から得られた結果をメチル水銀の既知量を有する「標準」試料を使用して得られた結果とを比較することは可能であり、既知量の確実性を持って未知濃度の水銀種を有する特定試料を定量化することを可能にする。
【0054】
図3と図4に示されるように、捕集容器の急速加熱と、約9インチ長さで約35℃の低温で作動するGCカラムとを含む本明細書に開示されたシステムの使用は、慣用のメチル水銀検知システムを使用して得られる持続運転時間よりはるかに短い持続運転時間をもたらす。特に、全体のクロマトグラフ処理は、本明細書に開示された自動化システム(図3)を使用することで、慣用のメチル水銀検知システム(図4)を使用する約7〜8分の運転時間と比較すると約5分未満で過程で達成することができる。
【0055】
図5は、低レベルメチル水銀を収集、移送、検出、分析する自動化システム100の別の実施例を示している。自動化システム100は、複数の試料容器30を保持するホルダ20と、パージ容器(気液分離器)40と、少なくとも3つの捕集容器110、120、130と、ガスクロマトグラフィ(GC)システム60(図2に示す)とを含む。3つの捕集容器110、120、130を除いて、図5に示された自動化システム100のシステムコンポーネントの全ては、図1に示された自動化システム10のシステムコンポーネントと同じであることが理解される。自動化システム100は、3つの3ポート弁32、125、135と、3つの2ポート弁64、140、150とをさらに含む。自動化システム100は、第1捕集容器でエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を吸着し、第2捕集容器で乾燥し、第3捕集容器中でエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を熱脱離する同時操作を可能にする。
【0056】
捕集容器110、120、130は、それぞれエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を収集、吸着または捕集するために少なくとも1つの捕集物質を含む。各捕集容器110、120、130は、エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の収集(吸着)、乾燥、および加熱脱着を実行することができ、加熱源52、160、170によってそれぞれ加熱される。熱源52、160、170は、好ましくはハロゲン電球であり、それぞれ急激に捕集容器110、120、130を加熱することができる。また、捕集容器110、120、130は、冷却ファンなどの冷却デバイス54、180、190に接続される。
【0057】
図5に示される実施例では、第1試験溶液からのエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種は、ポート42を通過してパージ容器(気液分離器)40を出た後で、第1弁システム32通過して第1捕集容器110に入る。エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の第1試料は、第1容器110中の充填物質によって吸着され捕集された後に、第1捕集容器110は、ガス源22からの窒素などのガス手段により乾燥される。図1に示された実施例のように、窒素ガスは流量制御デバイス56と、オプションの精製デバイス58とを通過し、合流デバイス62に向かう。そこで、ガス源22は、第1弁システム32を通って第1捕集容器に入る。
【0058】
この実施例では、ハロゲン電球などの第1加熱源52は、熱脱着手段により捕集容器110中の捕集物質からエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の迅速な放出を引き起こす。放出されたエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種は、ガス源66からの不活性ガスキャリヤーと混合され、混合ガスは、2ポート弁64を通って第1捕集容器110に入る。得られた混合物は、第1捕集容器110を出て、弁システム32を通過し、合流点72に向かい、次に、図1に示されたようにガスクロマトグラフ(GC)システム60に移動し、上記説明されたように、続いてメチル水銀を検出して分析する。
【0059】
第1捕集容器110中に捕集されたエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の試料を乾燥するとき、エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の第2試料は、パージ容器(気液分離器)40から出て、3ポート弁125を通って第2の捕集容器120に入る。エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の第2試料が第2捕集容器120中で吸着または捕集された後に、第2捕集容器120は、第2弁システム125を通って第2捕集容器120に移動するガス源22からのガス手段により乾燥される。第2熱源160によって提供される赤外光の放出は、第2捕集容器120中の捕集物質を加熱し、それにより熱脱着手段によりエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を第2の試料から放出させる。第2捕集容器120中の捕集物質から放出されたエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種は、ガス源66からの不活性ガスキャリヤーと混合され、混合ガスは、2ポート弁140を通って第2捕集容器120に入る。得られる混合物は、第2捕集容器120を出て、弁システム125通って合流点72を通過し、次に、ガスクロマトグラフ(GC)システム60まで移動する。
【0060】
第2捕集容器120に捕集されたエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種を乾燥しているとき、エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の第3試料はパージ容器(気液分離器)40から出て、3ポート弁135を通って第3捕集容器に入る。エチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の第3試料が第3捕集容器130中の充填物質によって吸着または捕集された後に、第3捕集容器130は、第3弁システム135を通って第3捕集容器まで移動するガス源からのガス手段により乾燥される。第3熱源170によって提供される赤外光の放出は、第3捕集容器130中の捕集物質を加熱し、それにより熱脱着手段によりエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種の第3試料を放出する。第3捕集容器130中の捕集物質から放出されたエチラート化されたかまたはプロピラート化された水銀種は、不活性ガスキャリヤー66と混合され、混合ガスは、2ポート弁150を通って第3捕集容器130に入る。得られる混合物は、第3捕集容器130を出て、弁システム135通って合流点72を通過し、次に、ガスクロマトグラフ(GC)システム60まで移動する。
【0061】
第1、第2、第3捕集容器110、120、130を含む上記説明された自動化サイクルは、連続して繰り返される。自動化システム100の例示の操作において、パージ容器40を一杯に満たす時間と空にする時間を含む吸着フェーズは、約6分続き、乾燥フェーズは約3分続き、脱離およびGC分析フェーズは約5分続く。一般に、自動化システム100は、1時間に約10試料を扱うことができ、48試験試料バッチに対して約1.5時間で試験試料調製を伴う。
【0062】
本発明は、その特別な実施例を参照して記載されているが、様々な変更がなされることや、同等物が本発明の真の趣旨と範囲から逸脱せずに代用されることを当業者は理解すべきである。本発明を実践する使用に対して、特別な状況、材料、組成物、方法、方法の工程または工程を適合させるためにさらに多くの変形をすることができる。このような変形の全ては、ここに添付される特許請求の範囲内であることを意味している。例えば、開示システムと方法は、有機水銀種の分離、検出、および計測に関して詳細に説明されているが、当業者は、事実上、開示ステムと方法が他の化合物と汚染物の分離、検出、および計測で使われるかもしれないことを理解することができる。
【0063】
本出願、特許出願、および本出願に引用された特許のすべては、本各個別の出願人、特許出願または特許が特別におよび個別にその全体を参照により合体することを意図するように同じ程度で本明細書に引用によりその全体が合体される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試験試料を処理するための自動化システムであって、
(a)気液分離器と、
(b)密封可能な試料容器から前記気液分離器まで前記液体試験試料を移送するための、かつ前記気液分離器中の前記液体試験試料から少なくとも1つの揮発成分を取り除くための、ガス流を供給する第1ガス源用のアタッチメントであって、前記液体試験試料中に存在する対象となる化合物が前記液体試験試料を前記気液分離器へ移送する前に少なくとも1つの揮発性種に変換される、前記アタッチメントと、
(c)前記気液分離器と流体連絡した捕集容器であって、前記少なくとも1つの揮発成分から前記化合物の前記少なくとも1つの揮発性種を分離して前記少なくとも1つの揮発性種を保持できる少なくとも1つの物質を含む、前記捕集容器と、
(d)前記少なくとも1つの物質から前記少なくとも1つの揮発性種を放出するのに充分な温度まで、前記捕集容器の中の少なくとも1つの物質を急速に加熱する加熱源と、
を有することを特徴とする自動化システム。
【請求項2】
前記加熱源は赤外線放射を提供することを特徴とする請求項1に記載の自動化システム。
【請求項3】
前記加熱源はハロゲン電球であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動化システム。
【請求項4】
前記加熱源が前記少なくとも1つの物質を25秒未満で少なくとも150℃の温度まで加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項5】
前記化合物は有機水銀化合物であり、前記少なくとも1つの揮発性種がエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項6】
前記有機水銀化合物はメチル水銀化合物であることを特徴とする請求項5に記載の自動化システム。
【請求項7】
前記気液分離器と前記捕集容器がフッ素ポリマーから形成された複数の管状部材を通して互いに流体連絡していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項8】
複数の密封可能な試料容器を保持できる少なくとも1つのホルダをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項9】
穿孔針アセンブリをさらに有し、前記穿孔針アセンブリが前記液体試験試料を前記密封可能な試料容器から前記気液分離器まで移すことができる少なくとも1本の針を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項10】
精製デバイスをさらに有し、前記第1ガス源からのガス流は前記試料容器に達する前に前記精製デバイスを通過することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項11】
前記捕集容器から放出された揮発性種を除去するために不活性ガスキャリヤーの流れを供給する第2ガス源用のアタッチメントを更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項12】
前記気液分離器との流体連絡中に廃棄物容器をさらに含み、前記廃棄物容器は、前記気液分離器中の前記液体試験試料から前記揮発成分を除去した後の前記液体試験試料を受け入れることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項13】
前記対象となる化合物が少なくとも2つの揮発性種に変換され、
前記自動化システムは、更に、
(a)前記捕集容器から放出された少なくとも2つの揮発性種を分離するために前記捕集容器と流体連絡するガスクロマトグラフィ(GC)システムと、
(b)前記ガスクロマトグラフシステムと流体連絡する熱分解カラムであって、前記揮発性種のそれぞれを化合物の元素状形態に変換するために十分な温度まで加熱する熱分解カラムと、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項14】
前記ガスクロマトグラフィシステムは、36インチ未満の長さを有するガスクロマトグラフィーカラムを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項15】
前記ガスクロマトグラフィカラムは、12インチ未満の長さであることを特徴とする請求項14に記載の自動化システム。
【請求項16】
前記ガスクロマトグラフィカラムは、40℃未満の温度で動作することを特徴とする請求項14または15に記載の自動化システム。
【請求項17】
前記熱分解カラム中の各揮発性種から形成された化合物の元素状形態の量を決定するための分光光度計を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項18】
前記自動化システムは少なくとも2つの捕集容器を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項19】
前記自動化システムは少なくとも3つの捕集容器を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載の自動化システム。
【請求項20】
化合物を含む疑いのある液体試験試料を処理するための方法であって、
(a)密封可能な試料容器中に前記液体試験試料を置く工程と、
(b)前記液体試験試料を前記密封可能な試料容器から気液分離器まで第1ガス流を使用して移送する工程と、
(c)前記気液分離器中の前記液体試験試料に前記第1ガス流を通過させて前記液体試験試料から少なくとも1つの揮発成分を分離する工程と、
(d)捕集物質に少なくとも1つの揮発性種を吸収させて前記少なくとも1つの揮発成分から前記少なくとも1つの揮発性種を分離する工程と、
(e)前記少なくとも1つの捕集物質を前記少なくとも1つの揮発性種を放出するのに充分な温度まで急速に加熱する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記捕集物質が25秒未満で少なくとも150℃の温度まで加熱されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物は有機水銀化合物であり、前記少なくとも1つの揮発性種がエチラート化されたまたはプロピラート化された水銀化合物であることを特徴とする請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有機水銀化合物はメチル水銀化合物であることを特徴とする請求項20乃至請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1ガス流が窒素であることを特徴とする請求項20乃至請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
(a)ガスクロマトグラフィによって前記少なくとも1つの揮発性種を分離する工程と、
(b)前記少なくとも1つの揮発性種を元素状化合物を形成するのに充分な温度まで加熱する工程と、
(c)前記分離された揮発性種から形成された各元素状化合物の量を決定する工程と、
を有することを特徴とする請求項20乃至請求項24のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−545750(P2009−545750A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522901(P2009−522901)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/017538
【国際公開番号】WO2008/016715
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509029416)ブルックス ランド ラブス,エルエルシー (1)
【住所又は居所原語表記】3958 6th Avenue NW, Seattle, Washington 98107 U.S.A.