説明

化合物の製造方法

【課題】酸素原子及び炭素原子を介して2個の芳香環が渡環した構造を有する材料の原料となる化合物を高収率で製造する方法の提供。
【解決手段】式(1)


〔式中、A環及びB環は、芳香環を表す。〕で表される化合物と、特定の酸無水物と、過酸化水素とを反応させて式(3)


で表される化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を用いた、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜太陽電池、有機薄膜トランジスタ等の有機素子が高い関心を集めている。
有機半導体材料としては、例えば、酸素原子及び炭素原子を介して2個の芳香環が渡環した構造を有する材料がある。該構造を有する材料として、特許文献1には、繰り返し構造(A)を有する高分子化合物が記載されており、

繰り返し構造(A)を有する高分子化合物の原料となる化合物(B)の製造方法としては、

トリフルオロ酢酸とクロロホルムとの混合溶媒中、化合物(C)を過ホウ酸ナトリウムで酸化することにより製造する方法が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の化合物(B)の製造方法は、収率が低いという課題があった。
【0005】
本発明は、酸素原子及び炭素原子を介して2個の芳香環が渡環した構造を有する材料の原料となる化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、溶媒中で、式(1)

〔式中、A環及びB環は、同一又は相異なり、芳香環を表す。〕
で表される化合物と、式(2)

〔式中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。〕
で表される化合物と、過酸化水素とを反応させる式(3)

〔式中、A環及びB環は、前述と同じ意味を表す。〕
で表される化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、酸素原子及び炭素原子を介して2個の芳香環が渡環した構造を有する材料の原料となる化合物を、高収率で製造することができるため、本発明は極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、溶媒中で、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、過酸化水素とを反応させる、式(3)で表される化合物の製造方法に関するものである。
【0010】
式(1)及び式(3)中、A環及びB環は、同一又は相異なり、芳香環を表す。芳香環としては、芳香族炭素環、芳香族複素環が挙げられる。
【0011】
芳香族炭素環としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ペンタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、ピレン環、ピセン環、ペリレン環などが挙げられる。
芳香族複素環としては、置換基を有していてもよいピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、アクリジン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、シンノリン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、シロール環、ホスホール環、ベンゾフラン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾシロール環、ベンゾホスホール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾホスファゾール環などが挙げられる。
【0012】
芳香族炭素環及び芳香族複素環の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基などが挙げられる。
これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基は、置換されていてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。
【0013】
ここでハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状アルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜30である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基及びエイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びアダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0015】
アルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状アルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の炭素数は、通常1〜20程度であり、アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基及びラウリルオキシ基が挙げられる。また、置換されたアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基及び2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0016】
アリール基とは芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基であり、その炭素数が通常6〜60程度である。アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基及びC1〜C12アルキルフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)が挙げられる。また、置換されたアルキル基としては、C1〜C12アルコキシフェニル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0017】
アリールオキシ基の炭素数は通常6〜60程度であり、アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基及びC1〜C12アルキルフェノキシ基が挙げられる。また、置換されたアリールオキシ基としては、C1〜C12アルコキシフェノキシ基及びペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
【0018】
アリールアルキル基の炭素数は通常7〜60程度であり、アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基及びC1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。また、置換されたアリールアルキル基としては、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
【0019】
アリールアルコキシ基の炭素数は通常7〜60程度であり、アリールアルコキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基及びC1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。また、置換されたアリールアルコキシ基としては、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0020】
A環及びB環の好ましい一態様は、ともに芳香族複素環である。
【0021】
A環及びB環の芳香族炭素環から水素原子を2個除いた基としては、以下の式(101)〜式(125)で表される基が挙げられ、また、A環及びB環の芳香族複素環から水素原子を2個除いた基としては、以下の式(201)〜式(267)で表される基が挙げられる。
【0022】

【0023】

【0024】

【0025】

【0026】

【0027】

【0028】

【0029】
上記式中、R’は、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基又はアリールアルコキシ基を表す。R’’及びR’’’は、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。
【0030】
ここで、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基の炭素数及び具体例は、前述のA環及びB環が有していてもよい置換基であるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基の炭素数及び具体例と同じである。また、A環及びB環に関して前述したように、これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0031】
式(1)で表される化合物としては、以下の式(301)〜式(335)で表される化合物が例示される。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】
式(301)〜式(335)中、R’及びR’’は、前述と同じ意味を表す。また、式(1)で表される化合物の他の例としては、置換基を有する式(301)〜式(335)で表される化合物が挙げられる。該置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基などが挙げられる。ここで、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基の炭素数及び具体例は、前述のA環及びB環が有していてもよい置換基であるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基の炭素数及び具体例と同じである。また、A環及びB環に関して前述したように、これらのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基及びアリールアルコキシ基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0036】
式(301)〜式(335)で表される化合物の中で、好ましい化合物は式(321)〜式(325)で表される化合物であり、より好ましい化合物は式(321)で表される化合物である。
【0037】
本発明に用いられる式(2)で表される化合物において、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。
【0038】
及びRで表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状アルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜20である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基及びエイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びアダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0039】
及びRで表されるアリール基の炭素数が通常6〜60程度であり、アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられる。また、置換されたアリール基の具体例としては、C1〜C12アルコキシフェニル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0040】
及びRで表されるアルキル基、アリール基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びC1〜C12アルコキシ基などが挙げられる。好ましい置換基は、塩素原子及びフッ素原子であり、特に好ましい置換基はフッ素原子である。
【0041】
式(2)で表される化合物の具体例としては、以下の式(401)〜式(430)で表される化合物が挙げられる。
【0042】

【0043】

【0044】

【0045】
式(401)〜式(430)で表される化合物の中でも、式(3)で表される化合物の収率を高める観点からは、式(401)で表される化合物、式(410)で表される化合物及び式(421)で表される化合物が好ましく、式(401)で表される化合物(無水酢酸)及び式(421)で表される化合物(無水トリフルオロ酢酸)がより好ましく、特に、式(421)で表される化合物が好ましい。
【0046】
本発明で用いられる過酸化水素は、希釈されていない過酸化水素を用いてもよいし、希釈されている過酸化水素を用いてもよいが、式(3)で表される化合物の収率を高める観点からは、水で希釈されている過酸化水素を用いることが好ましい。使用する過酸化水素の濃度としては、通常1〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%である。
【0047】
本発明で用いられる溶媒は、式(2)で表される化合物や過酸化水素水と反応しない溶媒であればよく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0048】
脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及びシクロヘキサンが挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及びクメンが挙げられる。
脂肪族ハロゲン化炭化水素としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン及び1,1,2,2−テトラクロロエタンが挙げられる。
芳香族ハロゲン化炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、o−クロロベンゼン及び1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられる。
溶媒の中でも、式(3)で表される化合物の収率を高める観点からは、ハロゲン原子を含む有機化合物が好ましく、脂肪族ハロゲン化炭化水素がより好ましい。クロロホルム及びジクロロメタンがさらに好ましく、ジクロロメタンが特に好ましい。
【0049】
本発明における製造方法としては、例えば、
第1の態様:溶媒中で、式(2)で表される化合物と過酸化水素とを混合して混合液を製造し、次いで、該混合液に式(1)で表される化合物を混合すること反応させる方法。
第2の態様:溶媒中で、式(1)で表される化合物と過酸化水素とを混合して混合液を製造し、次いで、該混合液に式(2)で表される化合物を混合することで反応させる方法。
第3の態様:溶媒中で、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを混合して混合液を製造し、次いで、該混合液に過酸化水素を混合することで反応させる方法、が挙げられる。式(3)で表される化合物の収率を向上させる観点からは、第1の態様が好ましい。
【0050】
第1の態様において、式(2)で表される化合物と過酸化水素とを混合して混合液を製造する際の温度、該混合液に式(1)で表される化合物を混合する際の温度、及び反応の温度は、好ましくは−20〜50℃であり、より好ましくは−10〜20℃である。第1の態様において、式(2)で表される化合物と過酸化水素とを混合して混合液を製造し、該混合液を保持することが好ましい。保持しておく時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは5分〜1時間である。第1の態様において、該混合液に式(1)で表される化合物を混合した後の反応時間は、好ましくは10分〜10時間であり、より好ましくは30分〜5時間である。
【0051】
上記反応で得られた反応生成物は、例えば、水を加えて希釈した後に生成物を有機溶媒で抽出し、有機層中の溶媒を留去する処理等の通常の後処理を行い、式(3)で表される化合物を得ることができる。生成物の単離及び精製はクロマトグラフィーによる分取や再結晶などの方法により行うことができる。
【0052】
また、本発明の製造方法において、式(2−2)

〔式中、A環、B環は前述と同じ意味を表す。〕
で表される化合物が副生することがある。式(2−2)で表される化合物が副生する場合、溶媒中で、脱水剤を用いて式(2−2)で表される化合物を脱水する脱水反応により、式(3)で表される化合物を製造することも可能である。
【0053】
脱水剤としては硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テトラフルオロほう酸及びポリリン酸が好ましく用いられる。さらに好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸であり、特に好ましくはp−トルエンスルホン酸である。
【0054】
脱水反応を行う際の溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン炭化水素が挙げられる。
【0055】
脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及びシクロヘキサンが挙げられる。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及びクメンが挙げられる。
脂肪族ハロゲン化炭化水素としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン及び1,1,2,2−テトラクロロエタンが挙げられる。
芳香族ハロゲン化炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、o−クロロベンゼン及び1,2,4−トリクロロベンゼンが挙げられる。
これらの溶媒の中で、芳香族炭化水素が好ましく、トルエン及びキシレンがより好ましく、トルエンが特に好ましい。脱水反応の温度は通常20〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。脱水反応の時間は通常10分〜5時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0056】
式(3)で表される化合物は、有機半導体材料を製造するための原料として好ましく用いられ、得られた有機半導体材料を、エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜太陽電池素子、有機薄膜トランジスタ素子等に用いることにより、高い特性の有機素子を得ることが可能となる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
参考例1
(化合物1の合成)

フラスコ内の空気をアルゴンで置換した1000mLの4つ口フラスコに、3−ブロモチオフェン13.0g(80.0mmol)及びジエチルエーテル80mLを入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ったまま、n−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(2.6M、31mL、80.6mmol)を滴下した。−78℃で2時間反応させた後、3−チオフェンアルデヒド8.96g(80.0mmol)をジエチルエーテル20mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下後−78℃で30分攪拌し、さらに室温(25℃)で30分攪拌した。反応液を再度−78℃に冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液(2.6M、62mL、161mmol)を15分かけて滴下した。滴下後、反応液を−25℃で2時間攪拌し、さらに室温(25℃)で1時間攪拌した。その後、反応液を−25℃に冷却し、ヨウ素60g(236mmol)をジエチルエーテル1000mLに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、室温(25℃)で2時間攪拌し、1規定のチオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えて反応を停止させた。ジエチルエーテルで反応生成物を抽出した後、硫酸マグネシウムで反応生成物を含む溶液を乾燥し、ろ過後、ろ液を濃縮して35gの粗生成物を得た。クロロホルムを用いて粗生成物を再結晶することにより精製し、化合物1を28g得た。
【0059】
参考例2
(化合物2の合成)

300mLの4つ口フラスコに、参考例1で合成したビスヨードチエニルメタノール(化合物1)を10.5g(23.4mmol)及び塩化メチレンを150mL加えて均一な溶液とした。該溶液にクロロクロム酸ピリジニウム7.50g(34.8mmol)を加えて室温(25℃)で10時間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を除去後、ろ液を濃縮し、化合物2を10.0g(22.4mmol)得た。
【0060】
参考例3
(化合物3の合成)

フラスコ内の空気をアルゴンで置換した300mLフラスコに、化合物2を10.0g(22.4mmol)、銅粉末を6.0g(94.5mmol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼称する場合がある。)を120mL加えて、120℃で4時間攪拌した。反応後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、反応液をシリカゲルカラムに通して不溶成分を除去した。その後、水500mLを加え、クロロホルムで反応生成物を抽出した。クロロホルム溶液である油層を硫酸マグネシウムで乾燥し、油層をろ過し、ろ液を濃縮して粗製物を得た。粗製物をシリカゲルカラム(展開液:クロロホルム)で精製し、化合物3を3.26g得た。ここまでの操作を複数回行った。
【0061】
参考例4
(化合物3−Br の合成)


フラスコ内の空気をアルゴンで置換したフラスコに、化合物3を10.0g(5.20mmol)、テトラフドロフラン(以下、THFと呼称する場合がある。)を100mL入れ、均一溶液とした。フラスコを0℃に保ち、N−ブロモスクシンイミド(以下、NBSと呼称する場合がある。)2.31g(1.30mmol)を15分かけて加えた。その後、0℃で2時間攪拌し、析出した固体をろ過して回収し、チオ硫酸ナトリウム水溶液(10wt%)及び水で洗浄した。得られた固体を粗製物3−Br−A と呼ぶ。その後、ろ液にチオ硫酸ナトリウム水溶液(10wt%)を200mL加えて、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮して析出した固体を回収した。得られた固体を粗製物3−Br−B と呼ぶ。粗製物3−Br−A と粗製物3−Br−B を合わせ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製して化合物3−Br を17.3g得た。ここまでの操作を複数回行った。
【0062】
実施例1
(化合物4−Br の合成)

2Lフラスコに、ジクロロメタン500mLと過酸化水素水(35wt%)50gとを入れ、フラスコを0℃に保った。その後、フラスコ内にトリフルオロ酢酸無水物382.5gを40分かけて滴下した。滴下後、0℃で30分攪拌した。フラスコを0℃に保ったまま、30分かけて化合物3−Br を50g(143mmol)加えた。さらに、ジクロロメタン250mLを加え、フラスコを0℃に保ったまま2時間20分攪拌した。その後、反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム337.5gを水1250mLに溶解した水溶液)に注ぎ込み反応を停止した。得られた生成物をクロロホルムで抽出し、クロロホルム溶液である有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、その後、ろ過した。得られたろ液の溶媒を留去し、粗製物4−Br を38.2g得た。
1Lフラスコに、得られた粗製物4−Br を38.2g、p−トルエンスルホン酸を0.5g、トルエンを450mL入れ、均一溶液とした。フラスコを120℃のオイルバスで加熱し、1時間攪拌した。その後、室温(25℃)まで冷却し、溶媒を留去した。得られた固体をメタノールで洗浄し、減圧下で乾燥して化合物4−Br を26.9g(73.5mmol)得た。化合物3−Br から化合物4−Br を製造する反応の収率は51.4%であった。
【0063】
比較例1
(化合物4−Br の合成)


メカニカルスターラーを備え、フラスコ内の気体空気をアルゴンで置換した1000mL4つ口フラスコに、化合物3−Br を25.0g(71.4mmol)、クロロホルムを250mL、トリフルオロ酢酸を160mL入れて均一な溶液とした。該溶液に過ホウ酸ナトリウム1水和物21.0g(210mmol)を35分かけて加え、室温(25℃)で240分間攪拌した。その後、5wt%亜硫酸ナトリウム水溶液500mLを加えて反応を停止し、炭酸水素ナトリウムを反応液のpHが6になるまで加えた。その後、クロロホルムで反応生成物を抽出し、クロロホルム溶液である有機層をシリカゲルカラムに通してろ液を得、エバポレーターでろ液の溶媒を留去した。メタノールを用いて残渣を再結晶し、化合物4−Br を7.70g(21.0mmol)得た。化合物3−Br から化合物4−Br を製造する反応の収率は29.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中で、式(1)

〔式中、A環及びB環は、同一又は相異なり、芳香環を表す。〕
で表される化合物と、式(2)

〔式中、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。〕
で表される化合物と、過酸化水素とを反応させる式(3)

〔式中、A環及びB環は、前述と同じ意味を表す。〕
で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
溶媒中で、式(2)で表される化合物と過酸化水素とを混合して混合液を製造し、次いで、該混合液に式(1)で表される化合物を混合する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(2)で表される化合物が、無水酢酸又は無水トリフルオロ酢酸である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
A環及びB環が、芳香族複素環である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
A環及びB環が、チオフェン環である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
溶媒が、ハロゲン原子を含む有機化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−241207(P2011−241207A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94771(P2011−94771)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】