説明

化合物及びその製造方法並びに該化合物を含むレジスト組成物

【課題】化学増幅型のレジスト組成物の感度を、さらに高めるために利用される酸増殖機能を有する化合物及びこの化合物を用いたレジスト組成物を提供する。
【解決手段】式(I)又は(I')で表される化合物。


(式中、Z及びZは、それぞれ独立に水素原子、C1〜12のアルキル基又はC3〜12の環状飽和炭化水素基を表す。環Y及び環Yは、それぞれ独立に置換されていてもよいC3〜20の脂環式炭化水素基を表す。Q〜Qは、それぞれ独立にフッ素原子又はC1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。m及びnは、0〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法並びに該化合物を含むレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型レジストは、放射線照射部位で酸発生剤から発生した酸を触媒とする反応により、照射部位におけるレジストのアルカリ現像液に対する溶解性を変化させるものであり、これによってポジ型又はネガ型のパターンを与える。
【0003】
化学増幅型ポジ型レジストは、放射線照射部で発生した酸が、その後の熱処理(post exposure bake:以下、PEBと略すことがある)によって拡散し、樹脂等の保護基を脱離させるとともに、酸を再生成することにより、その照射部位をアルカリ可溶とする。
また、化学増幅型ネガ型レジストは、照射部位で発生した酸がPEBによって拡散し、架橋剤に作用して、その照射部位のマトリックス樹脂を硬化させる。
このように、放射線の照射によってレジスト中に酸を発生させる放射線-酸反応に、酸の作用によってレジスト中で自己触媒的に分解して、新たに酸を増殖的に発生する酸増殖反応を組み合わせることにより、酸触媒反応を大幅に加速する方法が提案されている。また、このような方法に用いられる種々の酸増殖剤が提案されている(例えば、特許文献1等)。
この特許文献1には、KrFからのエキシマレーザを利用するリソグラフィーに適した樹脂組成物に含まれる酸増殖剤として、下記式に示す構造を有する化合物が開示されている。


【0004】
【特許文献1】特開2003−280198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、さらなる微細パターンが求められており、従来から用いられている酸増殖剤では十分な微細パターンを得ることができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化合物は、式(I)又は式(I')で表される。



(式(I)中、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12の環状飽和炭化水素基を表す。ただし、Z及びZのうち、少なくとも一方は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12の環状飽和炭化水素基である。環Y及び環Yは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表す。Q、Q、Q及びQは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。)



(式(I')中、Q'〜Q'は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペル
フルオロアルキル基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
この化合物においては、Q〜Q及びQ'〜Q'が、フッ素原子であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の化合物(I)の製造方法は、式(II)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを反応させて式(I)で表される化合物を製造する方法である。



(式(I)〜式(VI)中、Z、Z、環Y、環Y及びQ〜Qは、上記と同じ意味表す。)
また、別の化合物の製造方法は、式(V)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを脱水反応させて式(I)で表される化合物を製造する方法である。



(式(I)、式(III)〜式(V)中、Z、Z、環Y、環Y及びQ〜Qは、上記と同じ意味表す。)
また、本発明の化合物(I')の製造方法は、式(V')で表される化合物と、式(VII)及び式(VIII)で表される化合物とを縮合反応させて式(I')で表される化合物を製造する方法である。



(式(I')、式(VII)、式(VIII)及び式(V')中、Q'〜Q'、m及びnは、上記と同じ意味表す。Lはハロゲン原子を表す。)
【0008】
また、本発明の酸増殖剤は、上述した化合物を含む。
さらに、本発明のレジスト組成物は、上述した化合物と、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(A)と、光酸発生剤(B)とを含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物によれば、酸の作用で効率的に分解することにより、新たに強酸を放出する自己触媒反応を最大限発揮させることができる。
また、本発明の化合物の製造方法によれば、有効な化合物を効率的に製造することができる。
さらに、本発明の酸増殖剤及びレジスト組成物によれば、高感度な化学増幅型のレジスト組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化合物は、式(I)又は式(I')で表される(以下、この化合物を化合物(I)又は化合物(I')ということがある)。



(式(I)中、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12の環状飽和炭化水素基を表す。ただし、Z及びZのうち、少なくとも一方は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12の環状飽和炭化水素基である。環Y及び環Yは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表す。Q〜Qは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。)



(式(I')中、Q'〜Q'は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
【0011】
及びZにおけるアルキル基では、炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜12であることが適している。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2,2−ジメチルヘキシル基等が例示される。
また、環状飽和炭化水素基では、炭素数は特に限定されないが、炭素数3〜12であることが適している。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が例示される。
【0012】
環Y及び環Yにおける脂環式炭化水素基では、炭素数は特に限定されないが、炭素数3〜20であることが適している。具体的には、下記の構造式で表される化合物の任意の位置に結合手を有する二価の置換基が例示される。なかでも、※(アスタリスク)の位置に2つの結合手を有する二価の置換基が適している。



脂環式炭化水素基に置換されていてもよい置換基としては、特に限定されず、化合物(I)の製造において反応に不活性な置換基であればよい。例えば、アルキル基及びアルコキシ基が例示される。これらの置換基としては、例えば、炭素数1〜6であるものが適している。
【0013】
、Q、Q及びQにおけるペルフルオロアルキル基では、炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜6が適している。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
及びZは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基であることがより好ましい。
環Y及び環Yは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびアダマンチル基であることが好ましい。
、Q、Q及びQは、フッ素原子、トリフルオロメチル基であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
従って、これらの好ましい各置換基を任意に組み合わせて得られる化合物(I)が好ましい化合物として例示される。
【0015】
化合物(I)としては、例えば、以下の式で表される化合物が挙げられる。

【0016】

【0017】

【0018】

【0019】
化合物(I')としては、例えば、以下の式で表される化合物が挙げられる。


【0020】
化合物(I)は、以下に示したように、式(II)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを反応させることによって製造することができる。
また、化合物(I)は、以下に示したように、式(V)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを脱水反応させることによって製造することができる。

【0021】



(式(I)〜式(VI)中、Z、Z、環Y、環Y及びQ〜Qは、上記と同じ意味表す。)
【0022】
これらの反応は、反応自体に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下、触媒の存在下又は非存在下で行うことができる。
このような溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの硫黄化合物;これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0023】
また、式(II)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを反応させることによって化合物(I)を製造する場合に用いる触媒としては、例えば、塩基性化合物が好ましく、具体的には、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。また、ルイス酸(FeBr、AlBr等)の存在下で反応を行ってもよい。用いる触媒の量は、式(II)で表される化合物に対して触媒量以上で、好ましくは触媒量から4倍モルである。
【0024】
式(V)で表される化合物と、式(III)及び式(IV)で表される化合物と反応させることによって化合物(I)を製造する場合に用いる脱水剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−アルキル−2−ハロピリジニウム塩、1,1−カルボニルジイミダゾール、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジ−2−ピリジル炭酸塩、ジ−2−ピリジルチオノ炭酸塩、6−メチル−2−ニトロ安息香酸無水物/4−(ジメチルアミノ)ピリジン(触媒)等が挙げられる。用いる脱水剤の量は、式(V)で表される化合物に対して2倍モル以上で、好ましくは2倍モルから4倍モルである。
式(III)及び(IV)で表されるアルコールは、式(II)又は式(V)の化合物に対して、0.1〜10モル程度で反応させることができる。
【0025】
反応温度は、式(II)で表される化合物と、式(III)及び式(IV)で表される化合物とを反応させることによって化合物(I)を製造する場合には、例えば、−70〜100℃、好ましくは−50〜80℃、さらに好ましくは−20〜50℃程度が挙げられる。
式(V)で表される化合物と、式(III)及び式(IV)で表される化合物とを反応させることによって化合物(I)を製造する場合には、反応温度は、例えば−50〜200℃、好ましくは−20〜150℃、さらに好ましくは−10〜120℃程度が挙げられる。この温度範囲であれば、反応速度が低下することもなく、反応時間が長くなり過ぎることがない。
【0026】
反応圧力は、通常、絶対圧力で0.01〜10MPa、好ましくは常圧〜1MPaの範囲である。この圧力の範囲であれば、特別な耐圧の装置は必要ではなく、安全上の問題がなく、工業的に有利である。
【0027】
反応時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは5分〜12時間の範囲である。
反応が終了した後においては、反応生成物を精製することが好ましい。例えば、生成物の性状と不純物の種類等によって、液性調整、濾過、濃縮、晶析、洗浄、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製方法から適宜選択することが好ましい。
得られた化合物の同定は、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)、融点測定装置等を用いて行うことができる。
【0028】
また、本発明の化合物(I')は、以下に示したように式(V')で表される化合物と、式(VII)及び式(VIII)で表される化合物とを反応させることによって製造することができる。



(式(I')、式(VII)、式(VIII)及び式(V')中、Q'〜Q'、m及びnは、上記と同じ意味表す。Lはハロゲン原子を表す。)
【0029】
反応は不活性溶媒、例えばジクロロエタン、トルエン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が挙げられる。
反応は、−70℃〜200℃程度の温度範囲、好ましくは、−50℃〜150℃程度の温度範囲で攪拌して行うことが適している。
反応は、脱酸剤を用いることが好ましい。脱酸剤としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基あるいは水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。用いる塩基の量は、式(V')のジカルボン酸1モルに対して、溶媒に相当する量でもよく、通常、0.001モル程度〜5モル程度で、好ましくは1〜3モル程度である。
式(VII)及び式(VIII)中のハロゲン原子Lは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であるが、好ましくは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であり、より好ましくは塩素原子及び臭素原子である。
【0030】
本発明の化合物(I)及び化合物(I')は、酸によって分解し、自ら強酸を発生し、酸触媒反応を大幅に加速する、いわゆる酸増殖剤として機能させることができる。従って、このような酸増殖剤として有効に機能させるために、例えば、レジスト組成物に配合することが好ましい。この場合、化合物(I)及び化合物(I')は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようなレジスト組成物としては、少なくとも、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(A)と、光酸発生剤(B)とを含有するものが例示される。
ここで、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(A)としては、このような特性を有する樹脂であれば特に限定されるものではなく、当該分野で公知の樹脂のいずれをも使用することができる。例えば、特開2007−197718号公報、特開2005−331918号公報、特開2005−352466号公報、及び特開2005−097516号公報等に記載された公知の樹脂が例示される。
【0031】
また、光酸発生剤(B)としては、特に限定されるものではなく、当該分野で公知の光酸発生剤のいずれをも使用することができる。特に、上述した樹脂と相溶性のあるものが適している。
例えば、特開2008−056668号公報、特開2007−161707号公報、及び特開2008−106045号公報等に記載された公知の光酸発生剤が例示される。
【0032】
このように、化合物(I)又は化合物(I')を樹脂(A)及び光酸発生剤(B)とともに、レジスト組成物として使用する場合には、その全固形分量を基準に、樹脂(A)100質量部に対して、光酸発生剤を0.1〜50質量部程度、0.1〜20質量部程度、さらに1〜10質量部程度の範囲で含有することが好ましい。この範囲とすることにより、パターン形成が充分に行うことができるとともに、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となる。
また、化合物(I)及び化合物(I')は、樹脂(A)100質量部に対して0.5〜30質量部程度用いることが好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部が最も好ましい。この範囲とすることにより、レジスト組成物中で、酸触媒反応を加速させることによって、感度を増幅させて、良好なレジストパターンを得ることができる。
【0033】
なお、このようなレジスト組成物には、上記成分の他、当該分野で公知の添加剤、例えば、クエンチャー、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料等を含有してもよい。
また、このレジスト組成物は、例えば、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域又は真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、当該分野で用いられている種々の光源を用いたリソグラフィー工程において、利用することができる。特に、ArFエキシマレーザを利用するリソグラフィーに適したレジスト組成物を提供することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0035】
実施例1:化合物(I)の合成A


【0036】
2−メチル−2−アダマンタノール(9.71部;58ミリモル:RN=702−98−7)、トリエチルアミン(7.06部;70ミリモル)及び4−ジメチルアミノピリジン(1.43部;12ミリモル)を無水テトラヒドロフラン(97.1部;THF)に溶解した。この溶液に、テトラフルオロコハク酸無水物(10.0部;58ミリモル:RN=699−30−9)のTHF(20.0部)溶液を5℃以下で滴下した。
反応溶液をさらに5℃以下で3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、酢酸エチルで希釈し、5%塩酸で酸性(pH5)とした。有機層を分液して、イオン交換水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して、粗生成物(20部)を得た。
粗生成物(11部)をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム展開)で精製して、ビス(2−メチルアダマンチルー2−イル)テトラフルオロコハク酸エステル(5.37部;収率34.6%)を得た。この化合物をA1とする。
【0037】
H−NMR(CDCl3):δ=2.35(4H,s),2.06〜2.04(4H),1.90〜1.78(12H),1.73(4H,s),1.69(6H,s),1.62〜1.59(4H)
19F−NMR(CDCl3):δ=−115.1
13C−NMR(CDCl3):δ=157.92(t),110.27(t),108.17(t),106.07(t),94.00,37.90,36.14,34.61,32.62,27.12,26.37,21.93
FD−MS : 486(M
【0038】
実施例2:化合物(I)の合成B



テトラフルオロコハク酸(0.25部;1.3ミリモル:RN=377−38−8)のクロロホルム(2.38部)溶液を室温で攪拌し、2−メチル−2−アダマンタノール(0.44部;2.6ミリモル)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.32部;2.6ミリモル)のクロロホルム(8部)溶液を滴下した。この反応溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.54部;2.6ミリモル)を、室温下、5分間で添加した。反応溶液をさらに室温で3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、酢酸エチルで希釈し、5%塩酸で酸性(pH5)とした。有機層を分液して、イオン交換水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して、粗生成物(1.3部)を得た。
粗生成物(1.3部)をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム展開)で精製して、ビス(2−メチルアダマンチルー2−イル)テトラフルオロコハク酸エステル(0.29部;収率45.0%)を得た。得られた化合物は、NMRスペクトルが、化合物A1と一致した。
【0039】
実施例3:化合物(I’)の合成



テトラフルオロコハク酸(5.0部;26.3ミリモル)を無水THF(40部)に溶解して、クロロメチルメチルエーテル(8.5部;105.5ミリモル)を注加して氷冷下に攪拌した。トリエチルアミン(10.6部;104.8ミリモル)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.6部;4.9ミリモル)の無水THF(20部)溶液を4℃〜27℃で滴下した。反応溶液をさらに室温で4時間攪拌した。反応溶液を2%重曹水(300部)クロロホルムで抽出した。有機層を分液して、イオン交換水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して、テトラフルオロコハク酸ジメトキシメチルエステル(3.3部;収率45.1%)を得た。この化合物をA2とする。
H−NMR(CDCl3):δ=3.55(6H,s),5.48(4H、s)
19F−NMR(CDCl3):δ=−116.5
13C−NMR(CDCl3):δ=158.97(t),107.92(m),93.83,58.40
FD−MS : 301(M+Na)
【0040】
実施例4:化合物(I)の合成A



1−エチルシクロヘキサノール(7.0部;58.2ミリモル:RN=1940−18−7)、トリエチルアミン(6.5部;64.2ミリモル)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.7部;5.7ミリモル)を無水THF(35部)に溶解して、氷冷下攪拌した。この溶液に、テトラフルオロコハク酸無水物(5.0部;29.1ミリモル)のTHF(10部)溶液を10℃〜27℃で滴下した。
反応溶液をさらに室温で一晩攪拌した。反応溶液を酢酸エチル(150ml)とイオン交換水(200ml)で希釈した。有機層を分液して、イオン交換水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して、粗生成物(7.2部)を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル展開)で精製して、ビス(1−エチルシクロヘキシル)テトラフルオロコハク酸エステル(1.5部;収率12.6%)を得た。
H−NMR(CDCl3):δ=2.29〜2.26(4H),1.98(4H,q,J=7.6z),1.66〜1.22(16H),0.88(6H,t,J=7.6z)
19F−NMR(CDCl3):δ=−114.5
【0041】
実施例5:化合物(I)の合成B



1,1’−カルボニルジイミダゾール(27.19部;167.7ミリモル)を無水THF(200ml)に溶解して、テトラフルオロコハク酸(15.94部;83.9ミリモル)の無水THF(140ml)溶液を23℃〜32℃/10分間で滴下した。反応溶液を室温で3時間攪拌し、1−エチルシクロペンタノール(16.56部;146.8ミリモル)の無水THF(16ml)溶液を室温/5分間で滴下した。反応溶液を14時間加熱還流した。冷却後、濃縮して残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル展開)で精製して、ビス(1−エチルシクロペンチル)テトラフルオロコハク酸エステル(8.42部;収率15.0%)を得た。
H−NMR(CDCl3):δ=2.23〜2.18(4H),2.05(4H,q,J=7.7z),1.80〜1.62(12H),0.92(6H,t,J=7.7z)
13C−NMR(CDCl3):δ=158.32,110.41〜105.69,100.06,36.73,29.45,8.39
19F−NMR(CDCl3):δ=−115.5
【0042】
実施例6:化合物(I)の合成B



1,1’−カルボニルジイミダゾール(24.36部;150.0ミリモル)を無水THF(120ml)に溶解して、テトラフルオロコハク酸(14.25部;75.0ミリモル)の無水THF(75ml)溶液を23℃〜30℃/10分間で滴下した。反応溶液を室温で3時間攪拌し、1−エチルシクロヘキサノール(18.54部;144.6ミリモル)の無水THF(20ml)溶液を室温/5分間で滴下した。反応溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(20.16部;165.0ミリモル)を添加して、23時間加熱還流した。冷却後、純水で希釈して、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル展開)で精製して、ビス(1−エチルシクロヘキシル)テトラフルオロコハク酸エステル(33.6部;収率56.6%)を得た。
H−NMR(CDCl3):δ=2.29〜2.26(4H),1.98(4H,q,J=7.6z),1.66〜1.22(16H),0.88(6H,t,J=7.6z)
13C−NMR(CDCl3):δ=158.72,110.53〜105.80,91.35,33.73,30.14,25.21,21.44,7.05
19F−NMR(CDCl3):δ=−114.5
LC−MS:433.1([M+Na];Exact Mass=410.21)
【0043】
LC−MSは以下の条件で行った。
LC条件:Agilent 1100
カラム ODS A−210EC
溶出液:溶液A;水
溶液B;アセトニトリル
溶液Bの濃度は、0分(30%)〜50分(100%)〜60分(100%)0.5ml/minとした。
【0044】
MS条件:HP LC/MSD 6130
イオン化:ESI+
ポストカラム:0.5mM NaCl/(水:メタノール=1:1)
50μl/min
【0045】
実施例7〜11及び比較例1
(レジスト組成物の調製)
まず、レジスト組成物を構成する各成分を合成又は準備した。
<樹脂>


【0046】
樹脂合成例1:樹脂R1の合成
温度計、還流管を装着した4つ口フラスコにメチルイソブチルケトン24.36部を仕込み、窒素ガスで30分間バブリングを行った。窒素シール下で72℃まで昇温した後、上記の図で示されるモノマーA 16.20部、B 11.56部、C 8.32部、アゾビスイソブチロニトリル0.27部、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.22部、メチルイソブチルケトン29.77部を混合した溶液を、72℃を保ったまま2時間かけて滴下した。滴下終了後72℃で5時間保温した。冷却後、その反応液をメチルイソブチルケトン39.69部で希釈した。この希釈したマスを、469部のメタノール中へ攪拌しながら注ぎ、析出した樹脂を濾取した。濾物をメタノール235部の液に投入し攪拌後濾過を行った。得られた濾過物を同様の液に投入、攪拌、濾過の操作を、更に2回行った。その後減圧乾燥を行い22.7部の樹脂を得た。この樹脂をR1とする。収率:63%、Mw:10124、Mw/Mn:1.40。
【0047】
樹脂合成例2:樹脂R2の合成
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル(モノマーA) 59.6部(0.24モル)とp−アセトキシスチレン 90.8部(0.56モル)を、イソプロパノール 265部に溶解して、窒素雰囲気下に75℃まで昇温した。ラジカル開始剤ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)11.05部(0.048モル)をイソプロパノール22.11部に溶解して滴下した。反応溶液を12時間加熱還流した。冷却後反応液を大量のメタノールに注いで重合物を沈殿ろ過した。得られたメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル(モノマーA)とp−アセトキシスチレンの共重合体は250部(メタノール含有)であった。
得られた共重合体250部と4−ジメチルアミノピリジン10.3部(0.084モル)とをメタノール202部に加えて20時間加熱還流した。冷却後、反応液を氷酢酸7.6部(0.126モル)で中和して、大量の水に注いで沈殿させた。析出した重合物をろ別し、アセトンに溶解させた後、大量の水に注いで沈殿させる操作を3回繰り返して精製した。得られたメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル(モノマーA)とp−ヒドロキシスチレンの共重合体は102.8部であった。重量平均分子量は約8200(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約30:70(C13 NMR測定)であった。この樹脂をR2とする。
【0048】
<光酸発生剤>
光酸発生剤B1:
トリフェニルスルホニウム 4−オキソ−1−アダマンチルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホナートを、特開2007−224008号に記載の方法に従って合成した。
【0049】
光酸発生剤B2:
トリフェニルスルホニウム 1−{(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)メトキシカルボニル}ジフルオロメタンスルホナートを、特開2006−257078号に記載の方法に従って合成した。
【0050】
<架橋剤>



<クエンチャー>
クエンチャーQ1:2,6−ジイソプロピルアニリン



クエンチャーQ2:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド



<溶剤>
溶媒1:
プロピレングリコールモノメチルエーテル 450部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40部
γ−ブチロラクトン 5部
溶媒2:
プロピレングリコールモノメチルエーテル 240部
2−ヘプタノン 35部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 20部
γ−ブチロラクトン 3部
【0051】
<酸増殖剤>
酸増殖剤A1:実施例1の化合物
酸増殖剤A2:実施例3の化合物
酸増殖剤A3:実施例4の化合物
酸増殖剤A4:実施例5の化合物
【0052】
次いで、以下の表1に示すように各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、各レジスト組成物を調製した。
【0053】
【表1】

※ただし、組成例3については、さらに架橋剤を0.2部含有する。
【0054】
(実施例7、8及び比較例1の評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90度で60秒処理した上で、表1の各組成例のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.06μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、表2の「PB」の欄に示す温度で60秒間プリベークした。
このようにしてレジスト膜を形成したそれぞれのウェハに、電子線描画機〔(株)日立製作所製の「HL−800D 50KeV」を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後は、ホットプレート上にて表2の「PEB」の欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
シリコン基板上のもので現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、その結果を表2に示した。
【0055】
実効感度:0.08μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で表示した。
解像度:実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例9)
実施例7において、組成物1に代えて組成物3を用いた以外は実施例7と同様に実施することにより、レジストパターンが得られる。
【0058】
(実施例10)
実施例7において、組成物1に代えて組成物4を用いた以外は実施例7と同様に実施することにより、レジストパターンが得られる。
【0059】
(実施例11)
実施例7において、組成物1に代えて組成物5を用いた以外は実施例7と同様に実施することにより、レジストパターンが得られる。
【0060】
実施例12
(レジスト組成物の評価)
シリコンウェハに、Brewer社製の有機反射防止膜用組成物である「ARC−29A−8」を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって厚さ780Åの有機反射防止膜を形成した。この上に、組成例3のレジスト液を、乾燥後の膜厚が0.08μmとなるようにスピンコートした。
レジスト液塗布後、ダイレクトホットプレート上にて、90℃で60秒間プリベークした。
このようにしてレジスト膜を形成した各ウェハに、ArFエキシマステッパー〔キャノン製の「FPA5000−AS3」、NA=0.75、2/3Annular〕及び線幅:100nmである1:1のラインアンドスペースパターンを有するマスクを用い、露光量35mJ/cmで、パターンを露光した。
露光後、ホットプレート上にて、105℃で60秒間、ポストエキスポジャーベークを行った。
さらに、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行って、所望のパターンを形成した。
その後、170℃の温度で60秒間、ハードベークを行った。
得られたラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡で観察したところ、良好で精密なパターンが形成されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の化合物によれば、高感度な化学増幅型レジスト組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は式(I')で表される化合物。


(式(I)中、Z及びZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12の環状飽和炭化水素基を表す。ただし、Z及びZのうち、少なくとも一方は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12の環状飽和炭化水素基である。環Y及び環Yは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表す。Q〜Qは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。)


(式(I')中、Q'〜Q'は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
【請求項2】
〜Q及びQ'〜Q'が、フッ素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(II)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを反応させて式(I)で表される化合物を製造する化合物の製造方法。



(式(I)〜式(VI)中、Z、Z、環Y、環Y及びQ〜Qは、上記と同じ意味表す。)
【請求項4】

式(V)で表される化合物と、式(III)及び式(VI)で表される化合物とを脱水反応させて式(I)で表される化合物を製造する化合物の製造方法。



(式(I)、式(III)〜式(V)中、Z、Z、環Y、環Y、及びQ〜Qは、上記と同じ意味表す。)
【請求項5】
式(V')で表される化合物と、式(VII)及び式(VIII)で表される化合物とを縮合反応させて式(I')で表される化合物を製造する化合物の製造方法。



(式(I')、式(VII)、式(VIII)及び式(V')中、Q'〜Q'、m及びnは、上記と同じ意味表す。Lはハロゲン原子を表す。)
【請求項6】
請求項1又は2に記載の化合物を含む酸増殖剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の化合物と、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(A)と、光酸発生剤(B)とを含有するレジスト組成物。

【公開番号】特開2010−83870(P2010−83870A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200487(P2009−200487)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】