説明

化学分析データの視覚化

情報を失うことなく化学分析データ点を圧縮し、格納されているデータ点から、入れ子になっているデータ配列を生成し、入れ子になっているデータ配列をビデオメモリ内に格納し、それにより入れ子になっているデータ配列からの画像を描写し、描写された画像300を表示する方法を提供する。この化学分析器は、クロマトグラフィモジュールおよびクロマトグラフィモジュールから溶離液を受け取る質量分析モジュールを備えていて、コンピュータユニットはクロマトグラフィモジュールおよび質量分析モジュールからデータ点を受け取り、描写された画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、化合物の化学分析に関するものであり、より具体的には、化学分析から導かれたデータを表示するための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学分析をより速く、より正確に行いたいという要求は、いくつもの分析技術の発展を促した。このような技術として、液体クロマトグラフィ(LC)および質量分析法(MS)の2つがある。
【0003】
図1は、紫外(UV)吸光検出器を使用することにより得られる典型的なLCクロマトグラムの一例である。クロマトグラムは、異なる試料化合物に伴われたピークをいくつか含む。LC分析の期間は、行程とも呼ばれるが、通常、試料の種類に応じて数分から数時間またはそれ以上を要する。大半のLC検出器は、選択された時間単位に従って、強度値などの一片の情報を出力する。集められた情報から、検出器測定強度対保持時間の2次元(2D)グラフ−クロマトグラム−が形成される。グラフ内のピークは、分離された試料化合物の存在を示す。
【0004】
LCとは対照的に、MSは、試料化合物の質量関係情報を出力する。質量分析の前に、試料化合物がイオン化され、多くの場合断片化される。MS計測器は、電場および/または磁場を使用して、イオンを加速し、イオンをイオン検出器に送る。いくつかのMS計測器では、電場および/または磁場を掃引し、一定範囲の質量対電荷比(m/z)値を有する質量分析済みイオンを異なる時刻にイオン検出器に到達させる。質量スキャンの完了にかかる時間は、典型的には1秒未満であり、m/z値の広い範囲、典型的には1電荷当たり50原子質量単位(AMU)から1電荷当たり約2000AMUに及ぶ。
【0005】
飛行時間型(TOF)MS計測器において、異なるm/zのイオンの集合体は、イオン検出器に同時に送られる。m/z値の小さなイオンは、m/z値の大きなイオンの前に検出器に到達する。
【0006】
典型的なイオン検出器では、イオン強度応答は、与えられた時刻に検出器に当たるイオンの個数に比例する。したがって、検出器から得られる生の強度データは、関連するイオンの質量ではなくm/z値に比例する。しかし、質量分析計の出力データは、質量データと単に呼ばれることが多い。
【0007】
図2は、イオン強度対m/zのグラフの一例であり、この図は、MSを使って得られたデータの典型的なグラフを例示している。スペクトロメーターは、質量値、つまり、m/z値によって変化する強度値を有する情報点の配列を生成する。このデータの2次元グラフは、スキャンと呼ばれる。MSスキャンのピークは、典型的には、LCクロマトグラムで観測されるピークに比べて鮮明で、情報に富む。
【0008】
LCおよびMSは、独立に使用されることが多いが、計測器によっては、LCカラムの溶離液がMSの試料供給源として使用されるように、これらの技術を併用する。LC/MSと呼ばれるこの化合物技術は、LCの化合物分離能力とMSの検出感度の両方を利用する。
【0009】
LC/MSにおいて、MSは、LCデバイスの保持時間の単位当たりの質量スキャンを出力する。そのため、LC/MS計測器は、対応するイオン−m/z値およびクロマトグラフ保持時間値を伴っているイオン強度値を出力する。質量スキャンは、数千から50万個程度までのデータ点、またはそれ以上を含むことができ、またクロマトグラムは、数百から数千個までのデータ点を持つことができるため、LC/MS分析では、単一試料であっても、データの膨大な量を容易に生成することに留意されたい。したがって、単一の試料から得られた完全なデータ集合は、それぞれクロマトグラフ保持時間、m/z、およびイオン強度を伴っている数百万または数十億個のデータ点を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、0.05AMUの最低ピーク幅の分解能を得るために0.05AMU当たり10個のデータ点を有する2000AMUスキャンでは、質量スキャン1回当たり400,000個のデータ点が得られる。2時間のLC実行で1秒に1回のスキャンが得られ、それぞれのデータ点が32ビット浮動小数点数により表される場合、非圧縮LC/MSデータ集合は、10ギガバイトのコンピュータ関係データを含むことになる。データのこのような膨大な量を評価することは、化学分析者にとって重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
要旨
本発明のいくつかの実施形態は、化学分析された試料のデータ集合全体の3次元(3D)視覚化および動的インタラクションを実現するデータ分析の方法および装置に関する。このような分析能力を用いることで試料データの本質を見抜くことができるが、従来のアプローチだと、このような試料データの本質を見抜くことは困難である。本発明のいくつかの実施形態において、現在の考えに最も関連性のあるデータの部分のみから表示画像を生成することにより大きなデータ集合の操作の問題を緩和する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態は、一部は、データのこのような動的インタラクティブ3次元視覚化を使用して複雑なLC/MS関係データが有利に評価されるという理解、およびLC/MSデータのスパイクを含むような性質を利用することにより、完全なデータ集合がすべてのデータを保存する圧縮形式で記憶装置に格納可能であるという理解から得られる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態は、LC/MSデータを提示することに関する以前のいくつかのアプローチに勝るいくつかの利点を有する。例えば、いくつかの実施形態において、分析者は、データの大きな完全な集合を容易に調査できるだけでなく、その後、データ集合の一部を検討することに視点を移すことができる。このような機能があれば、例えば、雑音レベル近くのレベルを有するピーククラスタの識別が容易に行え、ピークの有無の確認が容易に行え、および/またはデータのフルセットのインタラクティブな利用が可能になる。
【0014】
したがって、一態様では、本発明は、化学的試料を分析する方法を特徴とする。この方法は、情報を実質的に失うことなく化学分析データ点を圧縮すること、圧縮されたデータ点をメインメモリに格納すること、格納されているデータ点から、入れ子になっているデータ配列を生成すること、入れ子になっているデータ配列をビデオメモリ内に格納すること、入れ子になっているデータ配列からの画像を描写(render)すること、および描写された画像を表示することを含む。データ点は、適宜、試料の化学分析から得られた生データである。
【0015】
それぞれのデータ点は、一対一の対応関係により、保持時間値とおよびm/z比値の対を伴っており、イオン強度値を有する。データ点は、ゼロのイオン強度値を持つデータ点の少なくとも一部を除去することにより圧縮される。入れ子になっているデータ配列の少なくとも1つでは、配列と視覚化視点との間の距離に応じてデータの密度が低くなっている。さらに、それぞれの配列は、線形勾配時間軸と非線形勾配質量軸とを有する。
【0016】
他の態様では、本発明は、化学的試料を分析するための分析機器を特徴とする。この計測器は、クロマトグラフィモジュール、クロマトグラフィモジュールから溶離液を受け取る質量分析モジュール、クロマトグラフィモジュールおよび質量分析モジュールからデータ点を受け取るコンピュータユニット、ならびにレンダリングされた画像を表示するためのモニタを備える。このコンピュータユニットは、プロセッサ、ビデオメモリ、および少なくとも1つのプロセッサにより実行されたときに、上述の方法に関連付けられているようなステップを実行する命令を格納するためのメインメモリを備える。
【0017】
図面の簡単な説明
図面において、類似の参照文字は、さまざまな図面全体を通して同じ部品を指す。さらに、これらの図面は、必ずしも縮尺通りではなく、一般に本発明の原理を説明することに重点を置いている。
【0018】
図1は、UV吸光検出器を使用することにより得られる典型的なLCクロマトグラムを示す図である。
図2は、イオン強度対m/zを示すグラフである。
図3は、本発明の一実施形態による、化学分析データの視覚化の方法を示す流れ図である。
図4Aは、通常の地形サンプリンググリッドを示す図である。
図4Bは、本発明の一実施形態による、LC/MSデータサンプリンググリッドを示す図である。
図5は、本発明の一実施形態による、視点位置および関連する視錐台を示す3次元図である。
図6は、本発明の一実施形態による、時間の昇順による質量スキャンの並びとして収集されたデータの編成を例示する図である。
図7は、図6のいくつかのスキャンのうちの1つなど、単一質量スキャンの生データに関する質量−強度関連付けを示す図である。
図8は、図6のいくつかのスキャンのうちの1つなど、単一質量スキャンを示す図である。
図9Aは、図8の質量スキャンに対応するスキャン対象を示す図である。
図9Bは、本発明の一実施形態による、圧縮データ構造を示す図である。
図10は、本発明の一実施形態による、9つのグリッドレベルを示す図である。
図11は、本発明の一実施形態による、9つのグリッドレベルを示す図である。
図12は、本発明の一実施形態による、1つのグリッドレベルを示す図である。
図13は、図12に例示されているメモリ領域の、視野移動に対する応答を例示する図である。
図14は、図13のメモリの更新を例示する図である。
図15は、本発明の一実施形態による、環状アドレス指定を例示するグリッドのデータ配列を示す図である。
図16は、図15の配列の更新バージョンである配列を示す図である。
図17は、本発明の一実施形態による、描写パターンを例示する図である。
図18Aは、本発明の一実施形態による、複数のインデックスの配列と対応関係にある帯状パターンの描画を例示する図である。
図18Bは、本発明の一実施形態による、複数のインデックスの更新配列と対応関係にある未更新の帯状パターンの描画を例示する図である。
図19は、図18Aに示されているインデックスの二重配列と対応関係にある図18Bの更新された帯状パターンを例示する図である。
図20は、本発明の一実施形態による、4つのセクタを例示する描画領域を示す図である。
図21は、本発明の一実施形態による、視錐台と水平面との交差を例示する3次元図である。
図22は、本発明の一実施形態による視野データの体積、「注視」点、カメラアイの間の幾何学的関係を例示する3次元図である。
図23は、本発明の一実施形態による、動物血清データに関連する画像のスクリーンショットを示す図である。
図24は、図23の動物血清データに関連する画像のスクリーンショットを示す図である。
図25は、本発明の他の実施形態による、分析機器を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
説明
以下で説明される本発明のいくつかの実施形態は、大きなLC/MSデータ集合の3次元視覚化に関する。これらの実施形態のうちのいくつかは、データ分析を支えるインタラクティブ3次元視覚化を実現する。本明細書において示されている説明においては、LC/MSデータの分析および提示に主眼を置いているが、当業者であれば、ガスクロマトグラフィ関係データなどのデータの他のジャンル、およびより一般的に、化学分析および他のデータの多くの他のジャンルの表示を包含することを理解している。
【0020】
以下で詳述されるように、いくつかの実施形態において、適宜高速ビデオメモリ内に格納される、データの入れ子になった階層型グリッドを使用して、LC/MSデータの高フレームレート3次元視覚化を支持する。表示の視点から遠い距離を有するグリッドは、これらが伴っている除去されたデータを有する。
【0021】
他の一部の表示技術とは対照的に、LC/MS関係データを表示するいくつかの実施形態は、非線形であるおよび/またはデータの集合全体にわたってデータ点の異なる(例えば時刻点の数20に対する質量点)個数を有する2本軸を支持している。いくつかの実施形態はまた、LC/MSデータの特徴、例えばデータスパイク量(date spikiness)を利用しており、LC/MSデータに典型的なゼロ強度点の最大個数を格納しないことにより、グリッドは容易に合併され、圧縮される。さらに、本発明の一実施形態によれば、グリッドレベルの境界でデータ密度が一致していなくても、LC/MSデータの3次元画像にスパイクが多く含まれるという性質から、多くの状況において対応を必要としない。
【0022】
最初に、背景状況の関係上、LC/MSデータの2次元グラフ表示に関する考慮事項について説明する。
【0023】
図1および2を再び参照すると、分析者は、たびたびLC/MSデータの2次元表示を使用する。ほとんどのLC/MSデータ集合は、有意な強度を持たないデータの部分など、重要でない領域を含んでいるので、データ集合についてある程度知っている分析者は、注目している特定の保持時間にMSスキャンに注意を向けることができる。例えば、これらの領域のデータのみが処理されるか、またはこれらの領域内のデータのみが取得される。
【0024】
分析者は、すべてのデータを保存したい場合に、格納されているデータの量を減らすことができるデータ平均化法を適宜使用し、しかも注目している情報を損なうことはない。分析者は、格納されているデータの量を、取得後に減らすことができるか、または計測器により、取得中にデータ量の削減を行うことができる。例えば、分析者は、重心データを適宜使用し、ピーク最高点のみを分析する。
【0025】
通常、これらの2次元部分集合のうちのいくつかの集合は、試料を適切に評価のために必要になることが多い。このような評価は、多くの場合、単調で退屈なものである。さらに、LC/MS分析者は、通常利用可能なデータすべてを集めたり、検討したりしないため、重要な試料特徴を見逃す可能性がある。
【0026】
以下の説明は、一部は、LC/MSデータ集合の3次元視覚化を行う装置および/または方法の実施形態に関する。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態による、試料から得られた化学分析データ点の視覚化の方法300の流れ図である。
【0028】
方法300は、情報を失うことなく、データを受け取ること(310)、圧縮すること(320)、格納すること(330)を含む。方法300は、さらに、格納されているデータ点から入れ子になっているデータ配列を生成すること(340)、入れ子になったデータ配列をビデオメモリ内に格納すること(350)、入れ子になったデータ配列から画像を描写すること(360)、描写された画像を表示すること(370)を含む。
【0029】
受け取った(310)それぞれのデータ点は、保持時間値とm/z比値の対との一対一対応関係により関連付けられており、イオン強度値を有する。したがって、データ点は、保持時間値、m/z比値および保持時間とm/z比に関連付けられたイオン強度値の3つのデータ断片を含む。データの完全な集合は、3次元表面を定めるが、ただし、この説明のために、m/zおよび保持時間値は、xおよびy軸に関連付けられ、強度は、直交座標系のy軸に関連付けられている。
【0030】
生データなどのデータは、ゼロのイオン強度値を持つデータ点の少なくとも一部を除去することにより圧縮される(320)。したがって、格納されているデータの量完全な生データ集合から減らされても、情報は失われない。圧縮データは、半導体メモリなどのメインメモリ、磁気媒体ディスクドライブもしくは光ドライブまたは他の好適な記憶装置デバイスに適宜格納される(330)。
【0031】
以下でさらに詳しく説明されるが、入れ子になっているデータ配列の少なくとも1つは、視覚化視点とx−z平面との間の距離に応じてデータの低減された密度を有する。さらに、それぞれの配列は、線形勾配時間軸と非線形勾配質量軸とを有する。
【0032】
以下で説明されるように、詳細レベル(LOD)アプローチが、格納されている(330)データの完全な集合の詳細の関連する部分のみを使用して配列を生成する(340)ために適宜使用される。分析者側で選択した視点が移動すると、配列内に格納されている(350)データは、格納されている(330)データの完全な集合から更新される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、配列は、LC/MSデータの特性を利用するために入れ子になった規則正しいグリッドの形態をとる。このようなデータは、完全に規則正しいものではないが、都合よく行と列に編成される。
【0034】
入れ子になっている直線的グリッドは、完全なデータ集合のLOD表示を支持している。すなわち、視覚化されたデータの特定の部分に接近するにつれ、視覚化により、対応するデータの分解能が高まることで細部が詳しく示される、すなわち、画像部分に関連するデータの多くが表示される。それぞれのグリッドレベル、またはLODは、完全なデータの一部が、視点からの距離に伴う特定の下げられた分解能で保持される。データのレベルは、以下でさらに詳しく説明されているように、例えば、環状アドレス指定を使用して、ビデオメモリ内に格納される。
【0035】
それぞれのグリッドレベルにおいて、データの移動セクションだけが画面に表示され、このセクションにおいて、次のレベルにより占有される領域は除外される。視点が移動するにつれ、LODレベルは、データの完全な集合から転送された新しいデータで順次更新される。グリッドについては、図4Bを参照しつつ以下でさらに詳しく説明される。
【0036】
それぞれの矩形グリッドは、分解能の異なるレベルでデータの1つのセクションを表す。例えば、最も近い矩形は、関連するすべてのデータを適宜保持するが、遠い矩形ほど、距離に応じて、関連するデータの一部が除去される。適宜、例えば、それぞれの詳細レベルは、2のべき乗で下がる。
【0037】
以下の説明は、入れ子になっている規則正しいグリッドを取りあげているが、当業者であれば、説明されている原理がさまざまな形態を有するデータ配列に適用可能であることを理解する。いくつかの好ましい実施形態において、不規則なグリッドではなく、行と列からなる規則正しいグリッドを使用する。LC/MSデータは、時間軸または質量軸のいずれかの方向に均等な間隔で並べられていないが、データ点の行と列として編成可能であるという意味で規則正しい。データは、典型的には、異なる保持時間に関して集められた、一連の質量スキャンとして収集される。それぞれのスキャンは、データの行(または列)に関連付けることができる。いくつかの代替え実施形態において、不規則なグリッドを使用する。
【0038】
LC/MSデータは、地形データと類似する点をいくつか有するものとして適宜取り扱われるが、実質的違いもある。典型的には、地形に関係する標高データは、LC/MSデータに特徴的なピークに似た急変する特徴をほとんど、またはまったく持たない比較的滑らかな表面を記述する。さらに、一部のLC/MSデータのスパイク状の特徴は、データの比較的平坦なセクションによりしばしば分けられる。
【0039】
地形図は、2本の水平な長さ方向軸において規則正しく並べられた間隔により都合よくサンプリングされる。グリッドは、望ましくは、中心配置ピラミッド状階層化で配列され、地形の上に置かれる視点を回転させて異なる方向を見られるようにする機能を支持する。
【0040】
対照的に、LC/MSデータは、通常、規則正しくないサンプリング間隔を用いており、これらの間隔は、本発明のいくつかの実施形態の2つの水平座標において異なる。さらに、m/zサンプリングは、通常非線形であり、時間軸に関連付けられているサンプリングに比べて約10倍またはそれ以上大きいサンプリングとなっている。そのため、LC/MSデータの領域分割は、比較的困難であることが多く、場合によっては、予想外の結果が生じる。
【0041】
さらに、完全なデータ集合は、視点がデータ集合の片側にもっぱら置かれた状態で、適宜表示される(370)。つまり、視点は、適宜、データ集合の上に、つまり、集合内のデータの保持時間値−m/z値の対の上に置かれない。例えば、視点に関連付けられているピボット点は、データの上に置かれない。
【0042】
このような表示を支持するために、いくつかの実施形態において、入れ子になったグリッドは、互いに関して中心に配置されないように生成される(340)。例えば、すべてのグリッドは、視点に最も近いデータ集合の辺にそって境界を共有する。
【0043】
本発明の一実施形態により、図4Aは、通常の地形サンプリンググリッド400Aの一例を示し、図4Bは、LC/MSデータサンプリンググリッド400Bの一例を示す。質量軸サンプリングは、非線形であり、試料のバーストでときどき途絶える。時間サンプリングレートは、適宜規則正しいが、場合によって、規則正しい間隔で並んでいる保持時間値は、例えば、計測器側で他の目的のためにスキャンを交互に重ねる(interleave)ので、欠けている。グリッドの点は、質量分析法を介して得られた強度値に関連付けられ、また保持時間およびm/zの対応する値に関連付けられる。
【0044】
次に、図5を参照すると、いくつかの実施形態において、分析者の選択に応じて、データ集合の全部または一部の3次元視覚化を行う。図5は、視点位置および関連する視錐台の3次元図である。この図は、描写(360)に使用される入れ子になった配列の集合の一部がどのように選択されるかを例示している。この選択は、データ集合に関する時間、質量および/または強度のスケールおよび/または位置に対する分析者の選択に応じて行われる。図は、近平面520と遠平面530により囲まれている、視点540、視野角550および視錐台510を例示している。
【0045】
本明細書ではカメラアイ位置とも呼ばれる視点540は、3次元データ集合に関する観測者(カメラ)の選択された位置である。視錐台510は、視野角550、近平面520、および遠平面530により決定される射影角錐台で囲まれた体積である。視錐台体積の内側に置かれたデータのみが、表示画面を介して表示される。
【0046】
グリッドは、現在の表示に必要なデータのみを含む。視点540がデータから遠く離れている場合、細部は示されない。視点540がデータに近づくにつれ、見える細部は増えるが、視野は狭まる。適切な距離のところで、細部が完全に見える。
【0047】
可視状態の細部と視野との間のこのバランスにより、特定の表示に関係するデータの量がほぼ一定であり、このデータが必要とするメモリは、完全なデータ集合に比べて少なくて済むことが保証される。いくつかの実施形態において、高速なビデオメモリを使ってグリッドのデータを格納し、その一方で、メインメモリに、完全なデータ集合を格納する。このアプローチでは、従来の、または専用のコンピュータシステム内に典型的に存在するメモリの異なる種類を効率よく使用できる。
【0048】
さまざまな実行において、分析者は、データの集合を調べやすくするために選択された表示条件を操作する。例えば、分析者は、方位角または迎角の両方の任意の角度からデータを観測できるように視点540をデータに関して回転し、そのデータに近づいたり離れたりする。
【0049】
当業者であれば理解するように、さまざまな実行において単色陰影、色付陰影および/または照明効果を実現する。例えば、分析者は、光源の位置を適宜移動する。例えば、いくつかの実装において、色パターンを使用し、このパターンで、分析者に対しそれぞれのピークの相対強度を示す。適時、分析者は、モニタ表示ピークを選択し、その選択に対する応答としてピークに対する時間、質量および強度の値が画面に表示される。
【0050】
本発明のいくつかの好ましい実行において、プログラミング技術の当業者に知られているオブジェクト指向プログラミングを使用する。例えば、方法300のさまざまな機能は、C++プログラミング言語の関数として適宜実行される。
【0051】
プログラミング技術を介して適宜実行される機能の一例について、次に説明する。LC/MSデータを伴っている保持時間値は、1次元構造内に置かれ、質量値は、もう1つの1次元構造内に置かれ、強度値は、2次元構造内に置かれる。この配置により、幾何学形状の点を描写する(360)ために、必要なデータ、すなわち時間に関するデータと質量に関するデータを取り出すのに2つの構造座標のみがあればよい。
【0052】
1次元時間構造から時間値を持ってくるために時間座標が使用され、1次元質量構造から質量値を持ってくるために質量座標が使用され、2次元強度構造から対応する強度値を持ってくるために両方の構造座標が使用される。対応する2次元構造含まれる場合に、規準ベクトルまたはカラーなどの、それぞれのデータ点の他の特性を得るために、類似のプロセスが適宜使用される。
【0053】
上述のように、例示的な実施形態において、入れ子になった規則正しいグリッド矩形を生成(340)し、表示のため画像を描写(360)する際にLODアプローチを使用する。以下でさらに詳しく説明されるように、異なるグリッドレベルが同期化され、一方で表示されているメモリの移動セクションのみが更新される。メモリ更新は、視点が移動すると、隣接レベルの重なりを描画せずに、行われる。いくつかの例示的な実施形態において、グリッドレベルの間の接合は、実質的なアーチファクトを生成せず、したがって、画像アーチファクトを回避するために描写(360)への対応を必要としない。
【0054】
本発明の例において、時間および質量分解能は、以下のようにそれぞれのグリッドレベルに割り当てられる。質量軸における分解能は時間軸の分解能よりも高ければ、時間軸よりも質量軸のほうがLODレベルが多い。したがって、いくつかのグリッドレベルは、同じ時間分解能を有する。これとは別に、最も粗いLODレベルで入れ子になっている規則的なグリッド矩形を生成する(340)ことを開始し、最も粗い分解能を質量と時間の両方に割り当てる。次いで、増大する分解能を有するグリッドレベルは、グリッドレベルが最も細かい時間分解能レベルに達するまで、質量および時間の増大する分解能を利用する。増大する分解能を有するその後のグリッドレベルは、時間分解能を最も細かいレベルに保持し、質量分解能のみを高める。グリッドレベルへのこの分解能割り当ては、同じ時間レベルだが、実質的に異なる質量レベルを有するレベルの境界において予想外の結果が生じうる。
【0055】
あるいは、図10を参照しつつ以下でさらに詳しく説明されるように、レベル割り当ては、最も粗いレベルからではなく、最も細かいレベルから開始する。最も細かい分解能のグリッドは、最も細かい分解能で質量と時間の両方を有する。減少する分解能を有するグリッドレベルは、あるいはグリッドレベルが最も粗い時間分解能に達するまで、質量および時間の両方の減少する分解能を有する。減少する分解能を有するその後のグリッドレベルは、時間分解能を最も粗いレベルに保持し、質量分解能のみを減らす。この場合、時間レベルは同じであるが質量レベルは異なるレベルの境界は、より粗い分解能のところに生じ、より高い分解能のレベルの間の遷移は、比較的滑らかなものとなっている。
【0056】
直交軸をLC/MSデータ軸に割り当てる代替の方法は、時間をx軸に、質量をz軸に、強度をy軸に関連付ける。あるいは、軸割り当ては、x軸における質量、z軸における時間、およびy軸における強度に変更される。これにより適宜、データはx軸に平行な行に編成され、この編成により、データを配列の形で格納することが支持される。いくつかの実施形態において、描写(360)時の軸の交換を支持する。
【0057】
上述のように、データは、好ましくは、データ構造を可逆圧縮形式でメインメモリに格納する(330)ために圧縮される(320)。データ構造は、他のソフトウェアコンポーネントから適宜隠されており、したがって、他のコンポーネントにおいて圧縮が知られている必要はない。
【0058】
データ収集のいくつかの場合において、LC/MS計測器は、異なる計測条件により得られた質量スキャンを交互に重ね、特定の計測条件で得られたすべてのスキャンを関数データファイルに格納する。他の関数データファイルであれば、異なる計測条件により得られたスキャンを含む。例えば計測器はスキャン10回毎に1回のスキャンを使用して自己較正し、すべての較正スキャンを、通常の取得スキャンが格納されている同じデータファイル内に格納するのではなく、別の関数データファイルに格納する。
【0059】
交互に重ねられたスキャンは、時間軸におけるデータのサンプリングレートが不規則になる原因の1つである。データディレクトリに収められている異なる関数は、分析者が選択した何らかの規約に従って分析時に分析者により割り当てられた関数番号により適宜区別される。
【0060】
図6は、時間の昇順による質量スキャンの並びとして収集されたデータの編成を例示する図である。データ編成は、時間順に次々に集められた一連の質量スキャン610を含む。
【0061】
図7は、図6のスキャン610のうちの1つのスキャンなど、時刻tで集められた、単一質量スキャンの生データに関する質量−強度関連付けを示す図である。単一スキャン700は、取得の時刻に関連付けられており、対として量値710と強度値720の並びを含む。図中、「p」は、スキャンの中の対の数である。対は、質量値の昇順で並べ替えられる。
【0062】
図8は、図6のいくつかのスキャンのうちの1つなど、単一質量スキャン800の図である。通常の質量スキャンは、ゼロを伴う強度を有する多数の質量値を含む。質量クロマトグラムのこの特徴は、生データをファイルに保存するために利用される。強度値がゼロであるすべての質量−強度の対は、図8に例示されているように非ゼロ強度対(810)に隣接しているものを除き、保存前に破棄される。この図は、図6のいくつかのスキャン610のうちの1つなど、生データから得られるような単一質量スキャン800の図を示している。
【0063】
可逆圧縮のこの例では、保存データのサイズを縮小するが、残っているゼロ強度対は完全な試料データ集合を保存するためには一般に必要ないので、まだある程度の冗長性を有する。図9Aおよび図9Bに関して説明されているように、好ましい圧縮(320)アプローチは、このような冗長性を排除し、質量−強度の対を、質量インデックスと強度値から形成される対で置き換える。格納されているデータのデータ量削減をさらに行うと、生データを収集することに関して、例えば約35%の縮小が行われる。したがって、本発明の実施例では、それぞれの強度値は時間インデックスと質量インデックスのインデックスの対でアドレス指定される。
【0064】
図9Aは、mxをi番目の質量インデックスとする、図8の質量スキャンに対応する、質量インデックス940および強度値950を含む、スキャン対象900の図である。図9Bは、質量配列910B、時間配列920B、およびスキャン対象900などのスキャン対象930Bの関連する配列を含む圧縮データ構造を示す図である。データ中には、質量スキャン毎に1つの対象930Bがあり、それぞれのスキャンは対応する保持時間に関連付けられている。
【0065】
すべての質量値は、質量インデックスによりアドレス指定される配列910B内に置かれる。同様に、すべての時間値は、時間インデックスによりアドレス指定される他の配列920B内に置かれる。配列は両方とも、昇順で並べ替えられる。すべての非ゼロ強度値は、質量および時間インデックスによりアドレス指定可能なデータ構造930B内に置かれる。
【0066】
この例のデータ編成は、例えば、当業者に知られているC++コーディング技術を使用して実行することができる、すべてのデータ格納機能の詳細をクライアント関数から隠す。したがって、クライアントは、強度値が非格納ゼロ値であるとしても、インデックスの対を渡して、引き換えに、強度値を受け取るだけでよい。つまり、インデックスで非格納値をアドレス指定する場合、ゼロ値が返される。クライアント側では、この内部挙動を意識する必要はない。
【0067】
時間値配列920Bは、適宜、以下のようにして構成される。スキャン時間は、配列内に昇順で入れられる。質量値配列910Bは、適宜、以下のようにして構成される。
【0068】
前のほうで述べたように、それぞれの質量スキャンが、非ゼロ強度値と関連付けられている質量値、および関連付けられているゼロ強度を有するさらなる少しの質量値だけを有するとしたとき、それぞれのスキャンは、データ内に存在する可能なすべての質量値を有するわけではない。したがって、データ内に存在するすべての質量値を見つけるために、それぞれのスキャンを読み取り、質量値配列に、配列内にすでに入っていない質量値のみを代入する。すべての質量スキャンが読み取られた後、質量配列は、データ内に存在する可能なすべての質量値を含む。昇順で並べ替えるために、値は、読み取りを完了した後ではなく、読み取りと同時に並べ替えられる。このようなアプローチでは、適宜、スキャンのテストをしながら、新しい質量値の観測を高速化する。
【0069】
いくつかの実行において、強度データ構造(930B)は、質量値配列が完結してから構成される。この場合、質量スキャンは、2回読み取られ、1回目に質量値配列を構成し、2回目に強度データ構造を構成する。
【0070】
スキャン対象は、キーを値にマップし、キーは上述の質量インデックスであり、値は強度値である。配列は、キー、つまり、インデックスを格納し、他の配列は、両方とも昇順で並べ替えられ、同じサイズを有する値を格納する。配列に値を代入するために、読み取った非ゼロ強度値毎に、新しいキー−値の対が加えられる。この対は、値として強度値、およびキーとして質量値に対応するインデックスを含む。
【0071】
圧縮(320)データにおけるデータ量削減は、適宜、質量軸のみついて行われ、適宜、質量軸点を得るために規則的な間隔で質量をサンプリングすることを伴う。いくつかの実行において、分析者が質量サンプリング間隔を定義し、スキャン毎に、それぞれの間隔内に収まる質量に対応するすべての強度を加えることにより、それぞれの質量点における強度が計算される。データ量が削減されたデータは、生データについて上で説明されているのと同じ圧縮技術を使用して適宜格納される。
【0072】
次に、図10から図16を参照すると、グリッドレベル情報および入れ子になっている配列を生成する(340)機能が、例示的ないくつかの例に関してさらに詳しく説明される。
【0073】
メインメモリに格納されている(330)完全なデータ集合は、ビデオメモリ内に格納すべき(350)グリッド関係データを生成する(340)ためのデータのソースとなる。グリッド関係データは、グリッドのLODレベルに応じて分解能の異なるレベルを有し、このデータ量削減は、適宜、時間および質量において異なる。
【0074】
例えば、入れ子になっている配列を生成する(340)間、データ量削減のための質量レベルおよび時間レベルは、格納されている(330)データの要求に含まれる。それに応答して、返されたデータについてデータ量削減が実行される。データ量削減基準は、適宜、最大強度値である。つまり、返されるデータ点の強度は、データ量削減において考慮されるデータ点の個数において見られる最大強度である。
【0075】
グリッド生成(340)のためのデータ量削減は、適宜、質量軸のみついて行われ、適宜、質量軸点を得るために規則的な間隔で質量をサンプリングすることを伴う。いくつかの実行において、分析者は質量サンプリング間隔を定義し、スキャン毎に、それぞれの間隔内に収まる質量に対応するすべての強度を加えることにより、それぞれの質量点における強度が計算される。データ量が削減されたデータは、生データについて上で説明されているのと同じ圧縮技術を使用して適宜格納される。
【0076】
グリッドレベルは、適宜、最も細かい分解能の場合のレベルについてのゼロから、最も粗い分解能の場合のレベルについてのある正の数までの範囲の数により識別される。ゼロレベルは、最高データ分解能に関連付けられているが、本明細書では最低レベルと呼ばれる。
【0077】
グリッドレベルの生成(340)時に、新しいデータファイルが読み込まれると、使用すべきデータの量に応じて、多数のレベルが適宜選択される。例えば、質量方向および時間方向のデータ点の個数が調べられ、それぞれの方向のデータ点の個数は、一般に異なるため、質量軸および時間軸に対する最高レベルとともに独立した領域分割値が定義される。
【0078】
以下の説明は、質量軸および時間軸に別個に適用する、点の個数といった場合、軸の1つにおける点の個数のことであり、一般に両方の軸の点の個数を掛けて得られる、グリッドレベルにおける点の総数のことではない。
【0079】
時間軸と質量軸の異なる分解能が与えられた場合(質量分解能は約100倍高い)、ほとんどいつでも時間軸よりも質量軸においてレベルが多いが、このことは、異なる質量サンプリング密度を有するが同じ時間サンプリング密度を有するグリッドがあることを意味している。使用するグリッドの個数は、見つかった最高レベル数(通常は、最高質量レベル)により決まる。
【0080】
図10を参照すると、質量および時間レベルをそれぞれのグリッドに割り当てるために適宜使用される基準は、以下のとおりである。レベルゼロのグリッドでは、質量も時間もレベルゼロにある。より高いグリッドレベルでは、質量レベルも時間レベルも1レベルだけ高くなる。グリッドが質量または時間において最高レベルに到達すると、その後グリッドレベルが高くなっても、その到達した最高レベルを維持する。
【0081】
図10は、質量レベル1020および時間レベル1030を含む9つのグリッドレベル1010の関連付けの一例を示す図である。グリッドレベル1010は、最高質量レベル8(9つの質量レベルのうち)と最高時間レベル3(4つの異なる時間レベルのうち)を有する。レベル0から3は、質量、時間とも0から3のレベルを有する。グリッドレベル4から8は、それぞれ、質量レベル4から8を有するが、すべて、最高時間レベルである時間レベル3を有する。
【0082】
質量軸と時間軸との間の領域分割およびデータ点間隔が異なることから、グリッドによって覆われたデータ領域は、一般に正方形であるとはいえない形である。これらは、適宜、時間軸に平行に配向された薄い矩形と考えられるが、分析者は、スケーリングを選択することによりこれらの矩形の形状を変更することができる。
【0083】
質量および時間レベルの他の分布は、図11に例示されており、図11は、質量レベル1120および時間レベル1130を含む9つのグリッドレベル1110の一例を例示している。
【0084】
この例は、図10のレベル1010、1020、1030に類似しているが、時間レベル分布は異なる。これらのレベル1110、1120、1130において、最高時間レベルは、最高レベルのグリッドに割り当てられ、時間レベルは、時間レベル0に到達するまで下げられ、グリッドのレベルが低くなって行く。
【0085】
その後の低いレベルのグリッドは、時間レベルを0に保持する。質量軸と時間軸との分解能の差が大きいものとした場合に、この時間レベル分布により、可能な限り多くのグリッドにおいて時間分解能が最大になる。しかし、この例では、いくつかの場合において、6番目のグリッドと低レベルグリッドのうちの1つとの間の遷移を示した場合に表示画像内に質量分解能の差がきわめて顕著である。
【0086】
次に、図12から図16を参照すると、データ配列の生成(340)をサポートするメモリ内でのグリッドレベルの更新の例が説明されている。図12は、グリッドレベル1200の図である。この例では、グリッドレベルは、データの3つの領域を有し、これらの領域は、ここでは、メモリ領域1203、描画領域1202および穴領域1201と呼ばれる。前のほうで述べたように、グリッドのデータは、適宜、ビデオメモリに格納される(350)。
【0087】
描画領域1202は、表示内に示されているグリッドのデータの部分であり、穴領域1201は、次に低いレベルのグリッドにより占有される領域であり、メモリ領域1203は、ビデオメモリ内に格納されている(350)領域である(グリッドのデータ全体)。
【0088】
この例では、メモリ領域1203は、それぞれの方向に描画領域1202の次元の2倍となるように選択され、描画領域1202がメモリ領域1203内で移動した場合に遅滞なく描画を行うことを支持している。この例では、穴領域1201は、それぞれの方向に描画領域のサイズの半分である。何故ならば、この例においては、隣接グリッドレベルのサイズは2だけ異なるからである。
【0089】
図13は、図12に例示されているメモリ領域の、視野移動に対する応答を例示する図である。この図は、現在のメモリ領域1203、新しいメモリ領域1303、新しい描画領域1302および穴領域1201を含む。
【0090】
データセット全体内における入れ子になっているグリッドの位置は、図5を参照しつつ上で説明されているように、視錐台の位置により決定される。視錐台が移動すると、その移動が十分に大きければ、格納されているデータの完全な集合に関する入れ子になっているグリッドの位置は、それに応じて移動する。
【0091】
移動が小さい場合、描画領域1302は、現在のメモリ領域1203内で移動し、表示の応答は即座である。しかし、描画領域1302が現在のメモリ領域1203の境界に近づきすぎるか、境界を越えた場合、メモリ領域は、新しいメモリ領域1303へシフトされ、新しい描画領域1302は、適宜新しいメモリ領域1303内の中心に置かれる。
【0092】
適宜、近接性インジケータが実行され、これにより、描画領域とメモリ領域境界との近接性を連続的に評価し、事前に選択された近接性条件に応じてメモリ更新を誘発する。
【0093】
図14は、図13に例示されているモリの更新を例示する図である。メモリ領域を移動するために、新しいメモリ領域1303は、メインメモリ内に格納されている可逆圧縮された完全なデータ集合からの新しいデータ1303Aで更新される。しかし、メモリ領域1303は、完全に再び書き込まれる必要はなく、メモリ領域1303では、少なくとも一部の現在のデータ1203Aを保持し、新しいデータ1303Aを必要に応じて更新する。したがって、新しいメモリ領域1303は、何らかの新しいデータ1303Aおよび何らかの保持されているデータ1203Aを含む。さらに、現在のメモリ領域1203は、新しいメモリ領域1303にはもはや必要ない何らかの破棄されたデータ1203Bを有する。
【0094】
いくつかの実行において、メモリ領域更新は、環状アドレス指定を介して実行され、このアドレス指定により、グリッドのデータ配列の内側の正しい位置に新しいデータを挿入し、その位置にある古いデータを上書きしやすくなる。
【0095】
環状アドレス指定は、2次元データ配列について循環バッファ保留を行う。配列の末尾にあるデータが配列の先頭に続く循環バッファ保留において、配列の先頭からのオフセットが、データの並びの始まりのマークとなる。2次元配列のそれぞれの行は、循環バッファ保留であり、行の並びも循環バッファ保留である、つまり、最後の行の後の行の並びは、最初の行に続く。したがって、2次元配列の先頭からの2つのオフセット値は、データの並びがどこから始まるかを決定する。
【0096】
環状オフセットインデックスの対は、メモリ領域の原点がグリッドのデータ配列内に置かれている場所を追跡するために使用される。データを格納するために使用された配列は、質量スキャンにおけるデータ編成を伴って、質量軸に平行な複数の行で編成される。それぞれの行内の点の個数は、グリッドの質量領域分割数に等しく、行の数は、グリッドの時間領域分割数に等しい。配列が初めてロードされるときに、行は時間順序で並んでおり、それぞれの行は質量順序で並んでおり、メモリ領域原点は配列原点と一致する。
【0097】
図15は、データの行1520を有するグリッドのデータ配列1500の一例を示している。このグリッドは、200の質量領域分割と50の時間領域分割を有する。初期状態において、配列の原点1521およびメモリ領域の原点1631は一致し、質量と時間の環状オフセットはゼロである。
【0098】
図16は、配列1500の更新バージョンである配列1500Aを例示している。質量環状オフセットは3になるように選択され、時間環状オフセットは2になるように選択される。メモリ領域原点1531および配列原点1521はもはや一致しない。これら2つのオフセットは、データの参照を適切に解除するために使用される。データのそれぞれの行はその配列の一区画を占有し、質量環状オフセットは隣接する区画内にあるデータに侵入せずにその区画内のデータに適用されることに留意されたい。
【0099】
描画領域の描写(360)を支持するために、メモリ領域の位置、描画領域の位置、穴領域の位置および2つの環状オフセットインデックスが追跡される。画像の描写(360)のために三角細片(triangle strips)が使用される。図17は、本発明の一実施例の三角形帯状パターン1700を例示する図である。これらの三角細片は、配列1500、1500Aのデータの編成に従って、質量軸に平行に走っている。それぞれの三角細片は、データの2つの隣接する行の点により定義される。
【0100】
三角細片を描画するために、配列内のデータが格納されている(350)データから読み込まれ、環状アドレス指定の参照が解除される。時間軸の参照を解除することにより、配列の内側のどの三角細片が描画されるかを決定し、質量軸の参照を解除することにより、データの行の中のどこから三角細片が始まるかを決定する。
【0101】
この例において、時間および質量軸の参照を解除するために、異なるアプローチが使用される。時間軸に関して、仮想アドレスに環状オフセットが加えられ、実アドレスを取得するためにモジュロ演算が使用される。描画する三角細片の時間的な位置に、環状時間オフセットが加えられ、データ配列内の実際の位置を取得するために、モジュロ演算が適用される。
【0102】
描画する三角細片がアドレス指定された後、その三角細片の描画を開始する質量位置を見つけるために質量軸の参照が解除される。図18Aおよび図8Bは、インデックスの配列1820A、1820Bに対応して描画される帯状パターン1810A、1810Bをそれぞれ例示する図をそれぞれ示している。三角細片は、三角形を形成するために正しい並びでそれぞれの点をアドレス指定するインデックスの配列を使用して描画される。
【0103】
図18Aは、描画する第1の三角形がデータのアドレス指定された行の先頭にある一例を示し、三角細片を形成するためのインデックスの配列を示す。図18Bは、環状質量オフセットが3であるために描画する第1の三角形がデータのアドレス指定された行の先頭にない場合に、インデックスの配列がどのように修正されるかを示している。
【0104】
環状質量参照解除を取り扱うこの技術は、環状アドレス指定が変わるたび毎のインデックス配列の再計算を伴う。次に図19を参照すると、好ましい一実施形態では、インデックスの再計算を必要としない。
【0105】
図19は、図18Aに示されている元の構成から修正されないインデックスの配列1920を例示する図である。この例では、倍のサイズの配列を使用し、配列1920の第2の部分は、配列1920の第1の部分と同じインデックスの並びを繰り返す。配列1920の先頭のインデックスから始めるのではなく、環状質量オフセットに対応する位置からインデックスを始める。その点からデータの行の末尾まで描画される三角形(帯状パターン1910で示されているような)は、インデックスの配列の第1の部分の中のインデックスにより形成され、三角形の残り部分は、インデックスの配列の第2の部分の中のインデックスにより形成される。
【0106】
次に、図20を参照すると、グリッドに穴がない場合(例えば、グリッドが最低の可視状態にあるとき)、描画領域全体は、上述のように、質量軸に追随する三角細片を使用して描画される。グリッドを穴とともに描画する必要がある場合、描画領域は、例えば、4つのセクタに分割され、それぞれのセクタが描画される。図20は、4つのセクタ2010を例示する描画領域2000の図である。
【0107】
方法300のいくつかの実行において、視点および視錐台の位置変更により、グリッドの描画領域の新しい位置および可視状態のグリッドが決定される。
【0108】
図21は、視錐台と水平面(質量−時間平面)との交差を例示する3次元図である。この図は、表示位置2101、水平面2102、錐台交差幅2103およびLOD中心2104を示している。データ領域全体の中で入れ子になっているグリッドの位置が視錐台の位置により決定され、入れ子になっているグリッドは、視錐台と、カメラアイ位置2101、つまりLOD中心2104までの最短距離を有する水平面2102との交差点を中心とする。
【0109】
LOD中心2104は、視線方向が垂直の場合に錐台の中心に向かって移動し、視線方向が平面に対し垂直である場合に錐台−平面交差の中心と一致する。LOD中心点2104での錐台交差の幅2103は、どれが描画されるべき最低の(高い分解能の)ものであるかを決定するために使用される。
【0110】
幅が広いということは、カメラが比較的遠くにあるか、または視野が広いということである。いずれの場合も、低分解能グリッドレベル(高レベル)のみが描画を許され、高分解能レベル(低レベル)は、不可視のマークが付けられる。対照的に、幅が狭い場合、より高い分解能レベルが描画を許される。
【0111】
視錐台移動の結果としていくつかのグリッドを更新する必要がある場合、それらのグリッドは、それぞれのグリッドの更新が完了するまで、一時的に不可視にされる。グリッドは、最高レベル(低い分解能)から更新され、順に低いレベル(高い分解能)へと更新が続く。さらに、描画更新は、それぞれのグリッドの更新の後に実行され、その結果、交互に重ねられた更新および描画が順次続き、例えば、分解能の漸進的増加の視覚的効果が得られる。
【0112】
データ集合全体の表示は、仮想立方体の内側に収まるように尺決めされる。しかし、分析者は、適宜、立方体の内側の視野データのフォーム因子を修正する追加の尺決めを設定する。
【0113】
図22は、視野データの立方体2201、体積2201内の「注視」点2202およびカメラアイ2203の間の幾何学的関係を示す3次元図である。この図は、体積2201に関するカメラ移動に関係する幾何学的考慮を図示している。すでに説明したように、分析者は、カメラ視野2203を調節して、異なる配向により異なる位置からデータ集合を観察し、および/またはカメラ視野2203を異なる注視点2202に向ける。適宜、カメラ注視点2202は、x−z平面に固定され、分析者は、注視点2202をデータの体積2201に関連付けられている立方体の底部内のどこかに配置する。
【0114】
カメラアイ位置2203は、方位角Wだけ注視点2202の垂直線を中心にして回転され、0から90度までの迎角Eだけ注視点2202を中心にして回転される。分析者は、さらに、カメラアイ位置2203と注視点2202との間の距離も選択する。
【0115】
近い平面と遠い平面(図5)は、適宜、カメラアイ2203と注視点2202との間の距離に応じて決定される。遠い平面は、例えば、体積2201が決して削り取られないように設定され、近い平面は、固定された深さ分解能を維持するように遠い平面の固定比に設定される。
【0116】
陰影付け効果とともに描写(360)する場合、分析者は、カメラ移動が選択されるときに光源位置を同様の方法で移動する。例えば、シミュレートされた光源は、点光源および/または指向性光源である。このような光源は、LC/MSデータの描写された地形に対するコントラストを生じさせ、分析者による研究を助ける。このような照明技術は、グラフィックディスプレイアートの当業者には知られている。
【0117】
データ解釈を補助するため、適宜、陰影付けに加えてさまざまなカラースキームが適用される。例えば、それぞれの表示されるデータ点の強度を示すために、描写(360)の際に、適宜、色のある範囲が適用される。そこで、色は、ピーク振幅を意味付けするために使用される。3次元画像内のそれぞれの点の色は、適宜、その点の強度値によって決まる。
【0118】
質量、時間および/または強度軸が、分析者がデータの完全な集合の一部の3次元視覚化をナビゲートしながら向きに対する自分の感覚を保つのを助けるために、適宜表示される。これらの軸には、適宜、それぞれの軸名とデータの上下限がラベルとして付けられる。
【0119】
一実行において、表示内のある点の選択に応じて、その点に関連付けられている3つの座標が表示される。例えば、画面の左下隅に座標を表示するために、2次元直交射影が使用される。
【0120】
次に、図23および24を参照すると、異なる視野角および異なる3次元レンダリング条件の下で画像化されたデータを有する試料の異なる種類の例ついて、視覚化のスクリーンショットが説明されている。
【0121】
図23は、動物血清データに関連する表示画像のスクリーンショットである。このスクリーンショットは、データのグレースケールによるデータの3次元視覚化の一例を提供する。ピークの前景のクラスタは、三重帯電画分の同位体である。表示条件が表1に示されている。
【0122】
【表1】

【0123】
図24は、図23のデータの表示のもう1つのスクリーンショットであるが、質量領域分割が異なっている。2つの中心クラスは、三重帯電画分であり、前景の小さなクラスタは、二重帯電画分であり、水平線近くのクラスタもまた二重帯電画分である。表示条件が表2に示されている。
【0124】
【表2】

【0125】
次に図25を参照すると、上で指摘したように、本発明のいくつかの実施形態は、LC/MS計測器を伴う。図25は、本発明の他の実施形態による分析機器2500のブロック図である。計測器2500は、LCモジュール2591、MSモジュール2592、制御および分析用のモジュール2591、2592とデータ通信するコンピュータユニット2510、コンピュータユニット2510から視覚化命令を受け取るモニタ2580、およびキーボードまたはコンピュータユニット2510に対する分析者によるインタラクションを支持するヒューマンインタラクションデバイスの他の種類を備えている。コンピュータユニット2510は、モジュール2591、2592からデータを受け取り、適宜、モジュール2591、2592に制御信号を送る。
【0126】
コンピュータユニット2510は、少なくとも1つのプロセッサ2511およびメモリコンポーネントを備え、これらのメモリコンポーネントは、ダイナミックランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ2513、ビデオRAM(VRAM)2512、および磁気媒体ハードディスクドライブ2514を含む。メインメモリ2513および/またはディスクドライブ2514は、実行されたときに本明細書で説明されている方法のうちの1つ、例えば、方法300を実行させる命令を格納する。計測器の他の実施形態では、コンピュータユニットは、ソフトウェア、ファームウェアおよび/またはハードウェアを介して(例えば、特定用途向け集積回路として)実行される。VRAMは、適宜、専用グラフィックスデバイスに含まれ、この専用グラフィックデバイスはさらに、適宜、グラフィックス処理ユニット(GPU)を備える。GPUは、適宜、例えば、画像の描写を実行しモニタ2580で表示するために使用される。
【0127】
ある代替のコンピュータユニットは、例えば、マイクロプロセッサなどの1つまたは複数の集積回路を含む。ある代替の実施形態における単一の集積回路またはマイクロプロセッサは、計測器制御ユニットおよびシステムの他の電子回路部分を備える。ある実施形態において、1つまたは複数のマイクロプロセッサは、制御ユニットの機能を有効にするソフトウェアを実行する。ある実施形態において、ソフトウェアは、汎用機器および/または本明細書で説明されている機能にもっぱら使用される専用プロセッサ上で実行するように設定される。
【0128】
一実施形態において、コンピュータユニット2510は、動作環境のローカルに置かれている、または動作環境のリモートにあるシステムとユーザーとの間のネットワーク接続による通信を実現する。
【0129】
本明細書で述べた説明に照らして、さまざまな代替の実施形態が、データ処理および提示の分野における当業者には明白なものである。例えば、ある代替の実施形態は、異なるソフトウェア言語および/またはオペレーティングシステムおよび/またはハードウェアに基づいており、および/またはLC/MS計測器以外の計測器から得られたデータに適用される。したがって、本明細書で提示されている詳細な実施形態は、例示的であり、本発明の範囲を説明されている実施形態のみに制限することを意図していない。
【0130】
代替の実施形態は他の特徴を含む。1つは、画面には決して現れないデータをGPUに送るのを避けるために、錐台の間引きを用いることである。もう1つは、メモリへのデータの格納を伴うもので、すべてのLODレベルがデータを取り出す供給元となるデータベースを1つだけ用意するのではなく、LODレベル毎に1つのデータベースを用意し、それぞれのレベルで必要な分解能を使用できるようにする。このアプローチは、適宜、特に高いレベルにおいてメモリ更新を改善する。
【0131】
他の代替の特徴には、比較または差の識別を目的とする2つまたはそれ以上のLC/MSデータ集合の3次元におけるオーバーレイがある。あるいは、2つまたはそれ以上のLC/MSデータ集合の間の差分演算、または他の何らかの演算が、3次元画像レンダリングの前に実行される。
【0132】
他のオプションは、ピーククラスタ識別などの一般的計算へのGPUの使用である。他の選択肢の特徴としては、指定された質量および時間座標に視点を固定すること、および選択された位置における3次元視覚化の切断部を表す2次元グラフの提示がある。
【0133】
本明細書で説明されている内容の変更形態、修正形態、および他の実行は、当業者であれば、一部請求項により定義されているように本発明の精神および範囲から逸脱することなく、思い付く。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】UV吸光検出器を使用することにより得られる典型的なLCクロマトグラムである。
【図2】イオン強度対m/zを示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態による、化学分析データの視覚化の方法を示す流れ図である。
【図4A】通常の地形サンプリンググリッドを示す図である。
【図4B】本発明の一実施形態による、LC/MSデータサンプリンググリッドを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、視点位置および関連する視錐台を示す3次元図である。
【図6】本発明の一実施形態による、時間の昇順による質量スキャンの並びとして収集されたデータの編成を例示する図である。
【図7】図6のいくつかのスキャンのうちの1つなど、単一質量スキャンの生データに関する質量−強度関連付けを示す図である。
【図8】図6のいくつかのスキャンのうちの1つなど、単一質量スキャンを示す図である。
【図9A】図8の質量スキャンに対応するスキャン対象を示す図である。
【図9B】本発明の一実施形態による、圧縮データ構造を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による、9つのグリッドレベルを示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による、9つのグリッドレベルを示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による、1つのグリッドレベルを示す図である。
【図13】図12に例示されているメモリ領域の、視野移動に対する応答を例示する図である。
【図14】図13のメモリの更新を例示する図である。
【図15】本発明の一実施形態による、環状アドレス指定を例示するグリッドのデータ配列を示す図である。
【図16】図15の配列の更新バージョンである配列を示す図である。
【図17】本発明の一実施形態による、描写パターンを例示する図である。
【図18A】本発明の一実施形態による、複数のインデックスの配列と対応関係にある帯状パターンの描画を例示する図である。
【図18B】本発明の一実施形態による、複数のインデックスの更新配列と対応関係にある未更新の帯状パターンの描画を例示する図である。
【図19】図18Aに示されているインデックスの二重配列と対応関係にある図18Bの更新された帯状パターンを例示する図である。
【図20】本発明の一実施形態による、4つのセクタを例示する描画領域を示す図である。
【図21】本発明の一実施形態による、視錐台と水平面との交差を例示する3次元図である。
【図22】本発明の一実施形態による視野データの体積、「注視」点、カメラアイの間の幾何学的関係を例示する3次元図である。
【図23】本発明の一実施形態による、動物血清データに関連する画像のスクリーンショットを示す図である。
【図24】図23の動物血清データに関連する画像のスクリーンショットを示す図である。
【図25】本発明の他の実施形態による、分析機器を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の化学分析結果から、保持時間値およびm/z比値の対によりそれぞれ一意に識別される、イオン強度値を有するデータ点を受け取ること、
データ点により与えられた実質的にすべてのデータを保存して、受け取ったデータ点を圧縮すること、
圧縮されたデータ点を第1のメモリに格納すること、
格納され圧縮されたデータ点から、入れ子になっている複数のデータ配列を生成すること(入れ子になっている複数のデータ配列の少なくとも1つは、入れ子になっている複数のデータ配列の少なくとも1つと視覚化視点との間の距離に応じて、データの低減された密度を有し、それぞれの配列は線形勾配時間軸および非線形勾配質量軸を有する。)、
入れ子になっている複数のデータ配列を第1のメモリまたは第2のメモリに格納すること、
視覚化視点に応じて、格納された入れ子になっているデータ配列から現在の画像を描写すること、および、
描写された現在の画像を表示すること
を含む、化学試料を分析する方法。
【請求項2】
圧縮することが、ゼロのイオン強度値を有するデータ点のうちの少なくともいくつかを除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受け取ったデータ点を圧縮することが、
一対一の対応関係にて線形勾配時間軸の複数の時間値を複数の時間インデックスに関連づけること、および、
一対一の対応関係にて非線形勾配質量軸の複数のm/z値を複数の質量インデックスに関連づけること、および、
非ゼロの強度値を有するそれぞれのデータ点を、時間インデックスおよび質量インデックスの対応する対によりアドレス指定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
入れ子になっている複数のデータ配列を生成することが、データの低減された密度を有する入れ子になっているデータ配列の少なくとも1つをそれぞれの時間インデックス値に結びつけられたデータ点の一部を取り除くことにより生成して、時間スケール密度を保存すること、および質量スケール密度を低減することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
線形勾配時間軸の可能なすべての時間値を時間インデックスでアドレス指定された配列内に格納し、非線形勾配質量軸の質量値を質量インデックスでアドレス指定された配列内に格納する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
入れ子になっている複数のデータ配列の少なくとも2つが、互いに関して中心を外れている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
視覚化視点が、保持時間とおよびデータ点を伴っているすべてのイオン強度値のm/z比とのすべての対の外にあるピボット点を伴っている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生成された入れ子になっている複数のデータ配列を、入れ子になっている複数のデータ配列に関する視覚化視点の位置の変化に応じて更新することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
更新することが、位置の変化が変化閾値よりも大きい場合にのみ更新することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
入れ子になっている複数のデータ配列を生成することが、視点が閾値量よりも大きく移動することに応じて配列の少なくとも1つの一部を更新することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
描写することが、入れ子になっている複数のデータ配列に視点が近づくことに応じて、詳細度を高め、視野を狭めることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
描写することが、隣接配列レベルを伴っている隣接画像部分の間の遷移なしに画像を描写することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1のメモリが、DRAMを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第2のメモリが、第1のメモリよりも高速であり、入れ子になっている複数のデータ配列が第2のメモリ内に格納されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第2のメモリが、グラフィック処理デバイス内に置かれ、描写することが、グラフィック処理デバイスにより描写することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
描写することが、特定の視野についての選択されたデータの量がほぼ一定となるように可視状態の細部のレベルと視野のサイズとのバランスを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
描写することが、色パターンを強度値に関連付けることを含み、該色パターンが、ピークの少なくともいくつかの相対強度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
描写することが、選択された照明効果を画像に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
クロマトグラフィモジュール、
クロマトグラフィモジュールから溶離液を受け取る質量分析モジュール、
クロマトグラフィモジュールおよび質量分析モジュールから、保持時間値とおよびm/z比値の対によりそれぞれ一意に識別される、イオン強度値を有するデータ点を受け取るコンピュータユニット{このコンピュータユニットは、少なくとも1つのプロセッサ、第2のメモリ、および命令を格納している第1のメモリを有する[この命令は、少なくとも1つのプロセッサにより実行されたときに、
データ点により与えられた実質的にすべてのデータを保存して、受け取ったデータ点を圧縮するステップ、
圧縮されたデータ点を格納するステップ、
格納され圧縮されたデータ点から、入れ子になっている複数のデータ配列を生成するステップ(入れ子になっている複数のデータ配列の少なくとも1つは、入れ子になっている複数のデータ配列の少なくとも1つと視覚化視点との間の距離に応じて、データの低減された密度を有し、それぞれの配列は線形勾配時間軸および非線形勾配質量軸を有する。)、
入れ子になっている複数のデータ配列を第1のメモリまたは第2のメモリに格納するステップ、
視覚化視点に応じて、格納された入れ子になっているデータ配列から現在の画像を描写するステップ、および、
描写された現在の画像を表示するステップ
を実行させる。]。}、ならびに、
描写された画像を表示するモニタ
を備える、化学試料を分析するための装置
【請求項20】
圧縮することが、ゼロのイオン強度値を有するデータ点のうちの少なくともいくつかを除去することを含む、請求項19に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2008−541095(P2008−541095A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511450(P2008−511450)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018637
【国際公開番号】WO2006/124724
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】