化学分析装置
【課題】
試料と試薬を混合および反応させる検査カートリッジの構造を簡易化する。
【解決手段】
化学分析装置に用いる検査カートリッジ2は、試薬を収納可能な複数の試薬容器が形成された試薬カートリッジ51と、この試薬カートリッジに接続され反応容器が形成された反応カートリッジ52とを有する。試薬容器および反応容器は、基板とこの基板表面に形成した凹部を覆うカバーとから構成される。複数の試薬容器と反応容器とを接続する流路を試薬カートリッジおよび反応カートリッジに形成する。この流路は試薬カートリッジと反応カートリッジとの接続部において基板の内部に形成されている。
試料と試薬を混合および反応させる検査カートリッジの構造を簡易化する。
【解決手段】
化学分析装置に用いる検査カートリッジ2は、試薬を収納可能な複数の試薬容器が形成された試薬カートリッジ51と、この試薬カートリッジに接続され反応容器が形成された反応カートリッジ52とを有する。試薬容器および反応容器は、基板とこの基板表面に形成した凹部を覆うカバーとから構成される。複数の試薬容器と反応容器とを接続する流路を試薬カートリッジおよび反応カートリッジに形成する。この流路は試薬カートリッジと反応カートリッジとの接続部において基板の内部に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析装置及びそれに用いる検査カートリッジに係り、特に自動的に分析するのに好適な生化学分析装置及びそれに用いる検査カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生化学分析装置の例が、特許文献1に記載されている。このパンフレットに記載のDNAを含む液体試料からDNAを抽出する方法では、DNA混合液を無機基体としてのガラスフィルタに通過させた後に、洗浄液と溶離液を通過させてDNAだけを回収している。そして、ガラスフィルタを回転可能な構造体に設け、洗浄液や溶離液等の試薬を同じ構造体内の各試薬リザーバに保持している。各試薬は、構造体の回転により発生する遠心力で流動し、各試薬リザーバとガラスフィルタを結ぶ微細流路に設けたバルブが開かれて、ガラスフィルタ内を通過する。
【0003】
従来の生化学分析装置の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の化学分析装置では、複数の化学物質を含む試料から、核酸等の特定の化学物質を抽出し、分析している。そして、一体型カートリッジ内部に溶解液や洗浄液、溶離液等の試薬と核酸を捕獲する捕獲構成部品を備えている。核酸を含む試料をカートリッジ内部に注入した後に、試料と溶離液を混合させて捕獲構成部品に通過させ、捕獲構成部品に洗浄液を通過させる。その後、捕獲構成部品に溶離液を通過させ、捕獲構成部品を通過した後の溶離液をPCR試薬に接触させて反応チャンバへ送っている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/78455号パンフレット
【特許文献2】特表2001−527220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の装置では、1度だけ作動する多数のバルブを設けて、試薬やDNA混合液等の流体の流れを制御している。このバルブでは、封止部に加熱すると溶けるワックス等を使用する。ワックスを用いて流路を物理的に閉じているので、確実に液の流れを制御できる利点を有する。しかしながら、封止部をバルブ毎に設ける必要があること、および封止部を加熱する手段が必要となることのため、回転ディスクが複雑化する。その結果、分析シーケンスを実現する装置が複雑化する。また、回転ディスク内にフィルタを装着するが、装着を容易にするにはフィルタを柔軟にする必要がある。その場合、フィルタ部から流体が漏れる恐れがある。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の装置では、一体型流体操作カートリッジを用いている。このカートリッジでは、複数の試薬を試薬チャンバからバルブを介在させた微細流路に送液しているので、カートリッジがバルブを多数備えなければならず、カートリッジの構造が複雑化する。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、生化学分析装置を小型化および簡素化することにある。本発明の他の目的は、生化学分析装置に用いるカートリッジにおいて、複雑なバルブを不要にすることにある。本発明のさらに他の目的は、生化学分析装置において、多数の試料と試薬の混合や反応、検出を自動的に実行することにある。そして本発明は、これらの目的の少なくともいずれかを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器が形成された試薬カートリッジと、この試薬カートリッジに接続され反応容器が形成された反応カートリッジとを有し、前記試薬容器および反応容器は、基板とこの基板表面に形成した凹部を覆うカバーとから構成されており、複数の前記試薬容器と前記反応容器とを接続する流路を試薬カートリッジおよび反応カートリッジに形成し、この流路は試薬カートリッジと反応カートリッジとの接続部において基板の内部に形成されているものである。また、この化学分析装置に使用する検査カートリッジが上記特徴を備えている。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器と前記試薬容器の外周側に液を移送するための流路と前記流路が接続され、前記試薬容器の外周側に配置された反応容器を備えたものである。また、この化学分析装置に使用する検査カートリッジが上記特徴を備えている。
【0009】
そして、反応カートリッジに被検査試料中の物質を捕捉または結合する結合部を形成し、この結合部に、結合フィルタを保持するフィルタホルダが着脱自在に設けられており、このフィルタホルダは、結合フィルタの挿入方向がこの検査カートリッジを化学分析装置で使用するときの半径方向位置から傾いた方向に配置されるのが良く、試薬容器に接続する前記流路は、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、前記内周側に延びる部分に流路断面積を拡大した流路拡大部を形成し、さらには、この折り返し流路は、外周側に延びる部分に絞り部を有するのがよい。また、試薬容器に接続する前記流路は、試薬容器の外周部で試薬容器と接続され、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、この流路あるいは試薬容器から分岐した流路の端部に、空気流路とこの空気流路に接続する退避容器とを設け、この退避容器を試薬容器の外周端よりも内周側に配置するのが良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カートリッジにおいて、試薬や試料の各チャンバから分析部等に試薬や試料を導く流路内の流れを、カートリッジに作用する遠心力を利用して制御したので、複雑なバルブが不要となり、カートリッジおよびそれを用いる生化学分析装置を小型化および簡素化できる。また、カートリッジを回転させるだけで済み、多数の試料と試薬の混合や反応、検出を自動的に実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る生化学分析装置およびそれに用いるカートリッジの一実施例を、図面を用いて説明する。本実施例は、遺伝子分析装置1の場合である。図1に、遺伝子分析装置1を斜視図で示す。遺伝子分析装置1は、縦軸状に配置されたモータ11と、モータ11の出力軸に取り付けられ、モータ11で回転駆動される保持ディスク12とを有する。保持ディスク12の周方向には、同一形状の検査カートリッジ2が多数配置されている。検査カートリッジ2の上方であって、検査カートリッジ2に形成した流路またはチャンバに対応した位置に、液体の流動を制御する穿孔機13が配置されている。さらに、検査カートリッジ2の上方には、加温装置14や検出装置15が配置されている。
【0012】
このように構成した生化学分析装置である遺伝子分析装置1を用いた分析においては、操作者が検査または分析項目に応じて検査カートリッジ2を用意し、保持ディスク12に装着する。装着された検査カートリッジ2は、モータ11の起動停止および穿孔機13の動作により、検査カートリッジ2内に形成された流路を試薬や試料が流動する。そして、流体の遺伝子検査が実行される。
【0013】
遺伝子分析装置1に用いる検査カートリッジ2の詳細を、図2に斜視図で、その分解斜視図を図3に示す。検査カートリッジ2は、ほぼ平行な平行部を有する反応カートリッジ52と先すぼまりの扇形部を有する試薬カートリッジ51とから形成されている。そして、試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を検査の前に予め接続する。その後、検査カートリッジ2を、遺伝子分析装置1の保持ディスク12中心に向けて、保持ディスク12に取り付ける。保持ディスク12の中心側が、上流側となる。
【0014】
検査カートリッジ2の上面には、凹凸が形成されている。この凹凸で試薬等の密閉流路および容器を形成するために、フィルムあるいは薄板等でできた図示しないカートリッジカバーが、検査カートリッジ2の上面全体を覆っている。カートリッジカバーは、検査カートリッジ2に接着あるいは接合されている。
検査に必要な試薬を収容する複数の試薬容器220〜290が検査カートリッジ2の試薬カートリッジ51に、それぞれ形成されている。これらの試薬容器220〜290には、予め所定量の試薬が分注されている。
【0015】
ここで、各試薬容器220〜290に接続する出口流路221〜291は、試薬容器220〜290を出た後に一端内周側に折り返してから反応カートリッジ52側に流出するよう折返し流路になっている。これらの出口流路221〜291は、試薬カートリッジ51の端面に形成された接続部72まで延びている。各試薬容器220〜290の内周側には、空気流路222〜292が形成されており、その先端部には、空気流路222〜292よりも断面積の大きな穿孔用の空間226〜296が形成されている。
【0016】
試薬カートリッジ51には、検査カートリッジ2にサンプルである全血試料を投入するための試料容器310が形成されている。この試料容器310の下流側には、試薬と試料を所定の動作にしたがって操作するための血清定量容器312と血球貯蔵容器311が隣り合って形成されている。
【0017】
反応カートリッジ52には、試薬と試料を反応させる血清反応容器420、結合前容器430、バッファー容器800、溶離液回収容器390が形成されている。最外周側には、検査カートリッジ2のほぼ幅全体にわたって、廃液容器900が形成されている。上記各容器には、流路が接続されており、試薬や試料を所定の手順で流通させることが可能になっている。
【0018】
このように構成した検査カートリッジ2の組み立て手順を以下に説明する。各試薬容器220〜290に、予め試薬を所定量分注する。試薬カートリッジ51および反応カートリッジ52に凹部として形成された各容器と流路全体を、図示しないカートリッジカバー199でそれぞれ封止する。試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を接続する試薬カートリッジ接続部72が試薬カートリッジ51側端面に設けられている。試薬カートリッジ接続部72は使用時まで、図示しない接続口封止手段71で封止されている。これにより、試薬カートリッジ51内に分注された各試薬は、試薬カートリッジ51内に密閉されており、使用時まで保管される。
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を結合するために、試薬カートリッジ51の反応カートリッジ側52端面であって両側部から試薬カートリッジ接続突き出し部75が突出して設けられている。また、試薬カートリッジ51の側端面中央部には、試薬カートリッジ接続凹部76が形成されている。
【0019】
反応カートリッジ52には、試薬カートリッジ接続突き出し部75に組み合うように、反応カートリッジ接続凹部85が、試薬カートリッジ51側端部の中央部には、試薬カートリッジ接続凹部76と組み合うように、反応カートリッジ接続突き出し部86が設けられている。
【0020】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を接続する直前に、試薬カートリッジ接続部72から接続口封止手段71を剥ぎ取る。試薬カートリッジ接続部72には、試薬カートリッジ接続口73が設けられている。各試薬容器220〜290に接続する流路を試薬カートリッジ接続口73に連通させる接続準備流路74が、試薬カートリッジ51の反応カートリッジ側端部に形成されている。なお、1個の試薬カートリッジ接続部72に、複数の試薬カートリッジ接続口73が形成されている。接続準備流路74は、試薬カートリッジ51の上面に刻まれた流路221〜291の端部に形成されており、試薬カートリッジ接続口73に連通するように、試薬カートリッジ51上面から概略垂直な穴部とそれに引き続く水平部とを有している。
【0021】
反応カートリッジ52には、試薬カートリッジ51の接続部72に対応する凹形状の反応カートリッジ接続口81が形成されており、試薬カートリッジ接続部72が嵌合する。反応カートリッジ接続部81の底面には、反応カートリッジ接続口82が形成されている。反応カートリッジ接続口82は、血清反応容器420および結合前容器430、バッファー容器800に連通いる。
【0022】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を、それぞれの接続部を対向させて組み合わせ、接続および固定する。固定方法は、例えば、試薬カートリッジ接続部71を反応カートリッジ接続部81に圧入する方法を用いる。また、反応カートリッジ接続部81は凹んで形成されているので、その凹みにパッキン92を予め配設する。このように、試薬カートリッジ突き出し部75と反応カートリッジ凹部85および試薬カートリッジ凹部76と反応カートリッジ86とを、各々組み合わせるだけで、試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を容易に接続できる。
【0023】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52との接続状態を、図4に部分縦断面図で示す。結合前容器430に連通する流路部であり、試薬カートリッジ接続部72が反応カートリッジ接続部81に嵌合している。試薬カートリッジ51の上面に形成した流路は、試薬カートリッジ接続口73にに連通する前に、L字状に形成された接続準備流路74により垂直方向から水平方向に流れの向きを変えられている。これにより、試薬カートリッジ接続口73をカートリッジカバー199から離すことが可能になる。接続準備流路74が設けられていないと、試薬カートリッジ接続口73と反応カートリッジ接続口82を形成するためにカートリッジカバー199でそれらの上面を覆わなければならず、パッキン92の挿入、あるいは圧入による嵌合が困難になる。このため、漏れのない接続部とすることが困難となる。
【0024】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52とを接続および固定したので、検査カートリッジ2を必要数だけ保持ディスク12に装着する。サンプルとして全血を用い、ウイルス核酸を抽出及び分析する様子を、図5、6に示した手順書および図7〜図12、図17に示した検査カートリッジ2の上面図を用いて説明する。
【0025】
(1)検査を始めるに当たり、操作者は図7で示すように、真空採血管等で採血した全血501を、検査カートリッジ2の試料注入口301から試料容器310に注入する。その際、試料注入口301上に配置したカートリッジカバー199を、穿孔手段を用いて穿孔して、試料注入口301の部分を外部に開口する。検査カートリッジ2の外部に、全血が飛散するのを防止するために、全血501を注入したら試料注入口301上の部位を、シールあるいはキャップ等で塞ぐ。溶解液容器220および追加溶解液容器230、第1洗浄液容器247、第2洗浄液容器257、第3洗浄液容器260、溶離液容器270、第1増幅液容器290、第2増幅液容器280からなる試薬容器のそれぞれに、予め溶解液227および追加液237、第1洗浄液247、第2洗浄液257、第3洗浄液267、溶離液277、第1増幅液297、第2増幅液287を所定量分注されている。
【0026】
(2)次に、試料容器穿孔部319と血清反応容器穿孔部426を覆うカートリッジカバーを、穿孔機13を用いて穿孔する。試料容器穿孔部319と血清反応容器穿孔部426は、外部空気と連通する。なお、本実施例では穿孔機13を用いて機械的に穴を開けているが、熱を付与してカバーを溶かしたり、カートリッジカバーに開口部を形成し、外部と連通させてもよい。また、本実施例では穿孔により外部空気とカートリッジ内部の空気を連通させているが、重要なのは、空気が自由に穿孔部を通過できることであり、例えば、外部空気ではなく、カートリッジ上に別途設けた空間に連通させる、あるいは穿孔した場所同士が相互に連通されるような構成としても良い。
【0027】
このとき、溶離液退避容器穿孔部176と、第1増幅液退避容器穿孔部196と、第2増幅液退避容器穿孔部186と、第3洗浄液退避容器166を覆うカートリッジカバーも穿孔する。これら4箇所の穿孔の理由については別途後述する。
【0028】
(3)血清分離(図6のステップ1010):遺伝子検査装置1のモータ11を駆動して、保持ディスク12を回転させる。(図5のステップ912、図6のステップ1012:以下の記載において同様)試料容器310に注入した全血501は、保持ディスク12が回転して発生した遠心力により、回転中心99から半径方向外向きの力を受け、外周側に流動する(図8参照)。そして、試料容器310に連通する血清定量容器312へ、さらに血清定量容器312に連通する血球貯蔵容器311に流れ込む。
【0029】
全血試料501の投入量を、血球貯蔵容器311と血清定量容器312がちょうど満たされる程度に設定する。検査カートリッジ2内における試料501の液位601は、遠心力により保持ディスク12の回転中心99を中心とする同心円となる。そこで、血清定量容器312に設けた血清定量容器折り返し流路318の折り返し位置を、液位601より内周側に設定する。これにより、試料501に遠心力が付加されているときは、折返し位置流路318の折り返し位置を越えて試料501が外周側に流れることがなく、血球貯蔵容器311と血清定量容器312内に保持される。
【0030】
(4)保持ディスク12の回転を継続する。全血501は、血球と血清に遠心分離される(ステップ914、1014)。血球502は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内に血清503だけが残る。この一連の血清分離動作時に、検査カートリッジ2内の各試薬容器220〜290には、各試薬227〜297とともに封入された微量の空気が残っているが、空気流路222〜292を試薬充填時にカートリッジカバーで覆っているので、新たに空気は流入しない。各試薬227〜297に遠心力が付加され、試薬容器220〜290の内部で試薬227〜297が外周側に偏る。このときの液位が、試薬容器220〜290に接続した折り返し流路221〜291より内周側に位置するように折り返し流路221〜291位置を設定する。
【0031】
遠心力により、各試薬227〜297の一部が、折り返し流路221〜291に流出すると、折り返し流路221〜291に流入した試薬227〜297の体積分だけ、試薬227〜297を充填したときに封入された空気が膨張する。その結果、試薬容器220〜290内の空気圧力が低下し、負圧となる。この負圧と遠心力とが釣り合い、試薬227〜297は折り返し流路221〜291を越えて流出することがない。したがって、血清分離動作時には、各試薬227〜297は、試薬容器220〜290に保持される。
【0032】
試薬カートリッジ51の側部に位置する試薬容器240〜260および中央部に位置する試薬容器220、230に接続する折り返し流路221〜261では、試薬容器220〜260と折り返し流路221〜261との接続部から内周側に向かう部分の中間部に、流路断面積を拡大させた流路拡大部228〜268を形成している(図8参照)。流路拡大部228〜268を形成して折返し流路221〜261の体積を増加させたので、空気膨張量が増加する。その結果、負圧量が増大し、より確実に試薬227〜267を試薬容器220〜260内に保持できる。
試薬容器260〜290内に試薬261〜291をさらに確実に保持するため、第3洗浄液退避容器160および溶離液退避容器170、第2増幅液退避容器180、第1増幅液退避容器190を接続している。これら退避容器160〜190の作用を、図9を用いて、溶離液退避容器170を例にとり説明する。
【0033】
溶離液容器270は丸い部分とそれに続く棒状部分とから構成されており、棒状部分の最外周667側位置よりも内周側位置668から、溶離液退避容器170に接続する流路が分岐して形成されている。この分岐流路の内周側先端部であって溶離液容器270よりもやや外周側に、溶離液退避容器170を形成している。溶離液退避容器170に、流路を介して溶離液退避容器穿孔部176が接続されている。溶離液退避容器穿孔部176は、溶離液退避容器170よりも内周側に位置しており、この血清分離時にはすでに穿孔手段により穿孔されている。このとき、溶離液容器270よりも内周側であって溶離液容器270に流路を介して接続された溶離液容器穿孔部276はまだ穿孔されていない。
【0034】
この状態で遠心力を受けると、図9に示すように、溶離液容器270内に充填された溶離液277は、外周側に偏り、折り返し流路271に溶離液277が入り込む。同様に、溶離液退避容器170にも溶離液277が流入する。溶離液退避容器170は、溶離液退避容器穿孔部176が穿孔されているので外部と連通しており、溶離液退避容器170内の空気が排出され、溶離液277と置換される。その結果、折り返し流路271内に流入した溶離液277と溶離液退避容器170流入した溶離液277の液位266は、ほぼ同じになる。溶離液退避容器170を設けて溶離液277を溶離液退避容器170に流入させ、空気の膨張体積を増大させているので、より大きな負圧を発生させることができ、より確実に溶離液277が折り返し流路271に流出するのを回避できる。
【0035】
試薬容器220〜260では流路拡大部228〜268を形成していたが、試薬容器270〜290では退避容器170〜190を設けている。この差は、試薬量の多寡に関係する。試薬量の少ないときに流路拡大部を過度に大きくすると、試薬を流出させる処理時に折り返し流路に試薬が残りやすくなる。この不具合を回避するために、試薬量の少ない容器については退避容器を設け、試薬量の多い場合には流路拡大部で対処する。溶離液退避容器170を、溶離液容器270の最外周位置667より内周側位置668で溶離液容器270と接続したので、溶離液容器穿孔部276を穿孔し溶離液277を流出させる処理では、溶離液退避容器170に進入した液が全て溶離液容器270に戻り、液残りの発生を防止できる。
【0036】
各試薬容器穿孔部226〜286を覆うカートリッジカバー199を穿孔すると、穿孔された容器穿孔部226〜286に接続された試薬容器220〜280には、外部から空気が流入し負圧が発生しない。このため、モータ11を回転させると、試薬227〜287は折り返し流路221〜281の最内周部を越えて下流側へ流出する。折り返し流路221〜281を越えて試薬227〜287が流れ始めるとサイホンが形成され、全て流出する。なお、各折り返し流路221〜281には、最内周から下流側の部分の途中に、流路断面積を狭めた折り返し流路絞り部120を形成している。
【0037】
折り返し流路絞り部120の作用を、図10を用いて、溶離液容器270を例にとり説明する。溶離液容器穿孔部276を覆うカートリッジカバー199を穿孔し、モータ11を回転させると、溶離液容器270には負圧が発生しないので、溶離液277が折り返し流路271から下流側へ流出する。特に、折り返し流路271の最内周部を過ぎると、遠心力が作用して折り返し流路271内から速やかに流れ出る。このとき、溶離液容器270の最外周側から折り返し流路271の内周側に向かう溶離液277の流量が十分大きくないと、折り返し流路271の最内周部を過ぎた溶離液277は流路の一部だけを満たして流れる恐れがある。流路断面を満たして流れないと、折り返し流路271でサイホンが形成されない。このとき、試薬容器270内の折り返し流路271より外周側の溶離液277は、下流側に流れることができず、液位669の位置まで流れると流動が停止する。その結果、多量の液残りが生じる。
【0038】
この不具合を回避するために、本実施例では折り返し流路絞り部120を設けている。折り返し流路271の最内周部を過ぎた溶離液の流動抵抗が増大し、流量が抑制される。その結果、折り返し流路271に確実にサイホンが形成され、全ての溶離液277を流出させることが可能になる。折り返し流路絞り部120は、折り返し流路271の最内周部よりも下流側であれば、流路幅や流路深さを不連続に変化させたものでも、徐々に流路断面積を絞るものでも、いずれでもよい。
【0039】
(5)所定時間だけ保持ディスク12を回転させると(ステップ916)、血清の遠心分離動作が終了し、検査カートリッジ2が停止する。
【0040】
(6)溶解液227を使用する処理(ステップ1016)においては、穿孔機13が溶解液容器穿孔部226を穿孔する(ステップ918)。保持ディスク12を回転させる(ステップ920)と、遠心力の作用により溶解液227は流動して(ステップ1018)、溶解液容器220から折返し流路221を経て、血清定量容器折返し流路318と合流部419で合流する(ステップ922、ステップ1022)。
【0041】
この際、溶解液227は、合流部419で血清定量容器折返し流路318内の空気を巻き込み、空気を血清反応容器420側へ移送する。血清定量容器折返し流路318内の空気量が減少し、血清は合流部419の側へ引き込まれる。そして、血清はついには血清定量容器折返し流路318の最内周位置である折返し部分を越え、サイホンが形成される。サイホンが形成されると血清は流れ続け、溶解液227と合流部419で合流して、血清反応容器420へ流れ続ける。保持ディスク12の回転を継続して、遠心力を十分付与し続けると、溶解液227は微量の残液を除き全て流れ、血清は血清定量容器折返し流路318が血清定量容器312に接続する位置602まで液位が低下するまで、流れ続ける。この状態を、図11に示す。血清と溶解液227を同時に流れさせて両者を混合する。
【0042】
血清反応容器420では、混合した血清と溶解液277が反応する(ステップ1024)。血清と溶解液277の混合液が血清反応容器420に流入すると、血清反応容器420内の液面は、図11に示すように、反応液流路421の最内周部である半径位置604よりも外周側になる。このとき、血清と溶解液277の混合液は、反応液流路421の最内周部である折り返し部を越えず、保持ディスク12の回転中は、混合液が血清反応容器420内に保持される。
【0043】
溶解液277は、血清中のウイルスや細菌等からその細胞膜を溶解して核酸を溶出させ、さらに結合部301への核酸の吸着を促進させる。DNAを溶出および吸着する際の試薬としては塩酸グアニジンを、RNAを溶出および吸着する試薬としてはグアニジンチオシアネートを用いる。血清と溶解液277の混合液を血清反応容器420に移送し終えたら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ924)。
【0044】
(7)次に、結合モード(ステップ1026)に移行する。穿孔機13で穿孔部236を覆っているカートリッジカバーを穿孔する(ステップ926)。この際、下流側の容器に接続された、結合前容器穿孔部436、廃液容器穿孔部906、バッファー容器穿孔部806、溶離液回収容器穿孔部396の4個の穿孔部も穿孔し、試薬を結合部301および溶離液回収容器390を介して廃液回収容器900に導くために、各容器や流路を占めていた空気を排出する排出口を形成する。
【0045】
穿孔後、保持ディスク12を回転させる(ステップ928)。遠心力により追加液237は追加液容器230から追加液折返し流路231を経て、血清反応容器420に流入する(ステップ1028)。血清反応容器420内に流入した追加液237は、血清反応容器420内の血清と溶解液の混合液の液面を、内周側に移動させる。混合液の液面が血清反応容器折返し流路421の最内周位置604に達すると、混合液は血清反応容器折返し流路421の最内周位置を越えて下流側に流出する。そして、結合前容器430を経て、結合部301へ流入する(ステップ1030)。一旦、血清と溶解液の混合液が折り返し流路の最内周位置を越えるとサイホンが形成され、血清と溶解液の混合液は結合前容器430に流れ続ける。追加液には、たとえば上述の溶解液を使用する。
【0046】
図12に、結合部301を有する検査チップ2を斜視図で示す。結合部301は、試薬カートリッジ52のほぼ中央部に斜めに形成されており、試薬カートリッジ52に形成したフィルタフォルダ挿入用の凹部450と、この凹部450に嵌合するフィルタフォルダ451とで構成される。フィルタフォルダ451の詳細を、図13に斜視図で示す。フィルタフォルダ451は矩形平板状の側板部と、この側板部の上方に位置し検査カートリッジ2の内周側から外周側に延びる矩形状の天板部と、天板部の下方に位置する半円柱部とを有する。半円柱部には検査カートリッジ2の内周側から外周側に延びる段460付の円筒状のフィルタ挿入空間452が形成されている。
【0047】
フィルタ挿入空間452には、核酸を結合するための円板状の複数のフィルタが挿入されている。すなわち、2枚の結合フィルタ454を、フィルタ支持体453で挟んで、フィルタ挿入空間452の端部の段付部460までしっかり挿入する。結合フィルタ454には、石英やガラスの繊維フィルタ等を用いる。フィルタフォルダ451を検査カートリッジ2の凹部450に嵌合したときに、フィルタフォルダ挿入用凹部450とフィルタフォルダ451間に形成される隙間から液が漏れないように、側板部の前面側のフィルタ挿入面456に溝459を形成し、この溝に、接着剤を充填する。
【0048】
フィルタフォルダ451の天板部の上面は平坦であり、検査カートリッジ凹部450にフィルタフォルダ451を嵌合したときに、検査カートリッジ2の上面とフィルタフォルダ451の上面がほぼ平らになる。これにより、カートリッジカバー199を、フィルタフォルダに接着あるいは接合により密着させることができる。
【0049】
フィルタ挿入用凹部450が検査カートリッジ2に占める位置の詳細を図14に、このフィルタ挿入用凹部450に嵌合するフィルタフォルダ451内の液の状態を、図15に示す。図14は、検査カートリッジ2の上面図である。フィルタフォルダ451に形成したフィルタ挿入空間452の中心軸471は、検査カートリッジ2の回転中心とこのフィルタ挿入空間452の内周側の中心位置とを結ぶ線472から、角度θ1だけ傾いている。結合フィルタ454の向きを角度θ1だけ傾けたのは、以下の理由による。
【0050】
結合部301を、溶解液と血清の混合液(溶解反応液)および第1洗浄液、第2洗浄液、溶離液が流通する。これらの液が流通するとき、液には遠心力が半径方向472に作用する。上記各液が結合部301を流通するときは、フィルタ挿入用凹部452に保持された結合フィルタ454あるいはフィルタ支持体453の一方側の隅部に、遠心力により偏って各液が集められる。したがって、集められた液を容易に排出でき、残液を低減することができる。角度θ1は、液をスムーズに排出するために、左右いずれかの方向に5度以上傾いた角度とする。
【0051】
このように結合フィルタ454の挿入方向を角度θ1だけ傾けるだけの簡単な構成で、流通後の残液量を低減できるので、第1洗浄液および第2洗浄液による結合部301の洗浄効果を高めることができる。また、溶離液の残液を低減できるので、核酸の回収量を増大させることができる。結合フィルタ454の挿入方向を角度θ1だけ傾けたので、遠心力が多少弱くても、残液の増加を抑制できる。その結果、低出力のモータを使用しても、遺伝子検査装置1を製作できる。
【0052】
溶解液と血清との混合液および廃液の流動を、図16に示した検査カートリッジ2の上面図を用いて説明する。結合部301を溶解液と血清の混合液である溶解反応液が通過する(ステップ930、1032)と、核酸が結合部301に設けられた結合フィルタに吸着する。結合部301を通過して生成された廃液591は、遠心力により結合部301に接続され溶離液回収容器390に流入する。溶離液回収容器390の最外周側には、溶離液回収容器折返し流路494が接続されており、この溶離液回収容器折返し流路494は、一旦、半径位置615まで内周側に戻り、外周端側にある廃液貯蔵容器900に接続される。
【0053】
このとき、廃液591は、混合容器420の場合と同様に、溶離液回収容器折返し流路494の戻り部のために、一時的に溶離液回収容器390に保持される。廃液591の量の方が、溶離液回収容器390の容積より十分多いので、図16に示すように、廃液591は溶離液回収容器折返し流路494の最内周位置615を越えて下流側の廃液貯蔵容器900へと流出する(ステップ1034)。廃液貯蔵容器900に廃液591を移送したら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ932)。この際、後述する圧縮空気容器840の作用により、溶離液回収容器内に一時的に保持された廃液591も微量の残液を除き全て廃液貯蔵容器900に移送される。
【0054】
(8)洗浄モード(ステップ1036)に移行する。第1洗浄液容器240に空気を供給するために、第1洗浄液容器に付設した穿孔部246を穿孔する(ステップ934)。再度保持ディスク12を回転させ(ステップ936)、第1洗浄液を遠心力により第1洗浄液容器240から、結合前容器430を経由して、結合部301に導く(ステップ1038、ステップ938)。結合前容器430を洗浄するとともに、結合フィルタ254に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する(ステップ1040)。第1洗浄液には、たとえば上述した溶解液あるいは溶解液の塩濃度を低減した液を使用する。結合前容器430や結合フィルタ251を洗浄した後の廃液は、混合液同様に、溶離液回収容器390を経て廃液貯蔵容器900に導く(ステップ1042)。廃液貯蔵容器900に廃液を移送したら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ940)。
【0055】
次に、第2洗浄液を流動させる。第2洗浄液には、結合前容器430および結合部301に付着した塩等の不要成分を洗浄するために、たとえばエタノールあるいはエタノール水溶液を用いる。保持ディスク12の回転を停止させた状態で、第2洗浄液容器250に空気を供給するために、第2洗浄液穿孔部256を穿孔する。その後、保持ディスク12を回転させ遠心力を作用させる。遠心力により第2洗浄液は第2洗浄液容器250から、結合前容器430を経由して、結合部301に流入し、結合前容器430と結合フィルタ254とを洗浄する。洗浄後の廃液を、第1洗浄液と同様に溶離液回収容器390を経て廃液貯蔵容器900へと移送する。廃液を廃液貯蔵容器900に移送し終えたら、保持ディクス12の回転を停止する(ステップ1038〜1042)。
【0056】
同様に、第3洗浄液容器260に空気を供給するために、第3洗浄液容器穿孔部266を穿孔する。第3洗浄液は、バッファー容器800を経由して、溶離液回収容器390に流入する。そして、溶離液回収容器390に付着した塩あるいは第2洗浄液の微量な残液を洗浄する。第3洗浄液には、たとえば滅菌水やpHを7〜9に調整した水溶液を用いる。結合部301と溶離液回収容器390を洗浄したら、核酸の溶離工程に移行するために、保持ディスク12を停止する(ステップ940)。
【0057】
(9)溶離モードに移行する(ステップ1044)。溶離液容器270に空気を供給するために、溶離液容器穿孔部276を穿孔する(ステップ942)。この際、圧縮空気容器穿孔部846を覆うカバーも穿孔し、圧縮空気容器840を、圧縮空気容器空気流路842を介して外部と連通する。後述するように、圧縮空気容器空気流路846を穿孔することにより、溶離液、第1増幅液、第2増幅液を溶離液回収容器390に保持することが可能となる。保持ディスク12を回転させ(ステップ944)、結合部301に溶離液277を流す(ステップ1046)。溶離液277には、水或いはpHを7から9に調整した水溶液を用いる。溶離液277は、核酸を結合部301の結合フィルタ454から溶離する(ステップ946、ステップ1048)。拡散を含んだ溶離液は結合部301を通過した後、溶離液回収容器390に回収される(ステップ1050)。保持ディスク12の回転を停止する(ステップ948)。
【0058】
(10)増幅および検出モード(ステップ1052)に移行する。第1増幅液容器290に空気を供給するために、第1増幅液容器穿孔部296のを穿孔する。モータ11を回転させると、第1増幅液297は、バッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。第1増幅液297は、核酸を増幅して検出する試薬で、例えばデオキシヌクレオシド3リン酸及び蛍光試薬等を含む。モータ11を停止する。
【0059】
第1増幅液を流通させた後、加温装置を検査カートリッジの溶離液回収容器に移動させる。あるいは保持ディスク12を回転させて、検査カートリッジ2を加温装置の位置まで移動させる。加温装置14を用いて、溶離液回収容器390を温度制御する。第2増幅液容器280に空気を供給するために、第2増幅液容器穿孔部286を穿孔し、モータ11を回転させる。遠心力により、第2増幅液287はバッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。第2増幅液は増幅に必要な酵素を含む。溶離液や第1増幅液、第2増幅液の液量は、これら3種の液のすべてが溶離液回収容器390側に移動したときに、その液面が溶離液回収容器390の折り返し流路494の最内周位置615より外周側に位置するように設定する。
【0060】
第2増幅液287を溶離液回収容器390に移送したら、加温装置14を検査カートリッジの溶離液回収容器390に移動するか、保持ディスク12を回転させて検査カートリッジ2を加温装置14の位置まで移動させる。溶離液回収容器390を温度制御する。所定時間だけ温度制御している間に核酸が増幅し、検出装置15が核酸を検出する(ステップ1054)。増幅および検出に必要な時間、例えば30分ないし2時間程度、加温する。第2増幅液287が移送された溶離液回収容器390には、溶離液と第1、第2増幅液の混合液である増幅反応液が保持される。
【0061】
この時の溶離液回収容器390まわりの液の状態を、図17〜図18を用いて説明する。図17はその上面図であり、図18は図17のA−A‘断面図である。溶離液回収容器390を、外周側に位置する第1の空間833と内周側に位置する第2の空間832に区画するために、仕切り壁820を溶離液回収容器390内に設けている。仕切り壁820は、液の流動を止めないように、カートリッジカバー199との間にわずかの隙間が形成されるように設けられている。
【0062】
溶離液と第1、第2の増幅液のすべてが溶離液回収容器390側に移送されたときに、溶離液回収容器390の液位が、後述する仕切り壁820上かそれよりも内周側であって、溶離液回収容器390の折り返し流路494の最内周部と流路拡大部495より外周側になるように、溶離液回収容器390の大きさを設定する。このとき、圧縮空気容器840を液位631よりも内周側に、液位631を圧縮空気容器接続流路841内に位置させる。
【0063】
増幅反応液と空気の界面は、溶離液回収容器折り返し流路494および圧縮空気容器接続流路841、仕切り壁820に位置する。したがって、液と空気の界面の面積である蒸発面積は僅かな面積になり、増幅および検出中の液の蒸発を低減できる。また、第1の空間833は液で満たされており、空気と液の界面がない。このため、第1の空間833の上面または下面を検出面として用いれば、気液界面の影響を受けずに安定的に検出を行うことができる。第2の空間832の深さDは、第1の空間の深さ程度にする。その理由は、あまり浅すぎると、増幅反応液の僅かな液量の違いにより液位が変動し、その結果、わずかに液量が増加すると折り返し流路494を越えて流出する恐れがあるからである。
【0064】
溶解液と血清の混合液である溶解反応液あるいは第1ないし第3洗浄液が、溶離液回収容器390を通過する場合の溶離液回収容器390回りの詳細を図19に示す。溶解混合液あるいは第1ないし第3洗浄液が溶離液回収容器390に残った状態で増幅反応液が流入すると、増幅および検出モードでの処理が阻害されるため、これらの液は増幅反応液が流入する前に排出されていなければならない。
【0065】
図19では保持ディスク12を回転させて、検査カートリッジ2に遠心力を作用させ、溶解反応液を結合部301を経て溶離液回収容器390に流している。結合部301には結合フィルタが収容されているので、溶離液回収容器390に流入する溶解反応液の流量は非常に少ない。そのため、溶離液回収容器390の折り返し流路494にはサイホンが形成されにくく、折り返し流路494の下流へ間欠的に流れるか、または折り返し流路494を偏流499となって流れる。サイホンが形成されないまま、溶解反応液が結合部301から完全に流れ出すと、液位615で示す液が溶離液回収容器390に残った状態となる。
【0066】
溶解反応液が流れるときには、圧縮空気容器840に接続した穿孔部846を未だ穿孔しない。穿孔部846および空気流路842、圧縮空気容器840内の空気はそれらが形成する空間に閉じ込められて圧縮されている。検査カートリッジ2が回転して遠心力により圧縮空気容器840に液が進入すると、液位641は内周側の液位615位置まで上昇しようとする。しかし、圧縮空気容器840の内圧により液位の上昇は抑制され、液位615より外周側の液位641でバランスする。液位641は、検査カートリッジ2の回転速度が速ければ速いほど液位615に近づく。
【0067】
溶解反応液が結合部301から完全に流れ出て、液位615で示す液が溶離液回収容器390に残った状態となったら、検査カートリッジ2の回転速度を低下させ、遠心力を弱める。液位641は外周側に移動し、圧縮空気容器840内の液が溶離液回収容器390内に流入する。溶離液回収容器390内に流入した液は、溶離液回収容器390内の液位615を上昇させる。それとともに、溶離液回収容器390の外周端から折り返し流路494内を進み、折り返し流路494を液で満たす。この結果、折り返し流路494にサイホンが形成され、溶離液回収容器390内の溶解反応液を全て下流側に排出できる。
【0068】
この理由から、圧縮空気容器840の一部を、折り返し流路494の最内周部よりも外周側に設ける。外周側に一部が位置することによって、溶解反応液が通水中に圧縮空気容器840に流入することができる。また、検査カートリッジ2の回転速度を低下させる場合は、速やかに低下させる。速やかに低下させると、圧縮空気容器840内の液が溶離液回収容器390に容易に移動し、折り返し流路494が液で満たされやすく、サイホンがより確実に形成される。なお、上記説明では溶解反応液の場合を説明したが、第1ないし第3洗浄液でも同様である。
【0069】
本実施例で示した圧縮空気を利用したサイホンの形成は、一旦容器に液を保持した後に液を流動化させる場合に広く適用できる。例えば、血清反応容器420に圧縮空気容器を接続すれば、追加液による溶解反応液の流動が不要になる。溶離液や第1増幅液、第2増幅液を流す前には圧縮空気容器穿孔部846を穿孔して外部に連通させる。これにより、増幅反応液の流動に、内部空気が影響を与えなくなり、増幅反応液を溶離液回収容器390に保持することが可能となる。
【0070】
増幅反応液の液位631より内周側に圧縮空気容器840を配置し、圧縮空気容器接続流路841を介して接続したので、増幅反応液の液位631は圧縮空気容器接続流路841、仕切り壁820に位置するので、液と空気の界面を低減でき液の蒸発が低減される。その結果、穿孔後に蒸発を防ぐために孔をふさぐ等の操作が不要になる。
【0071】
仕切り壁820より外周側の第1の空間833を増幅反応液で満たすことができ、第1の空間833の内外周側端部に検出手段15を設けて増幅反応液を検出すれば、空気と液の界面が検出を阻害するのを防止できる。ここで、仕切り壁を第1、第2の空間より浅い壁としたが、蒸発面積を低減する形状であればよく、第1、第2を接続する流路としてもよい。
【0072】
溶離液回収容器390に、折り返し部を有する折り返し流路494と、折り返し流路494よりも内周まで延びた圧縮空気容器840とを付設したので、サイホン作用により液の排出が容易になる。その際、圧縮空気容器840等を占める空気と検査カートリッジの2の回転速度を制御すれば、確実にサイホンを形成できる。本実施例によれば、特別なバルブを設けることなく、簡易な構成で液の流動を制御できる。
【0073】
上記実施例では、溶離液退避容器を予め穿孔して外部と連通したが、外部と連通させなくとも溶離液退避容器にある程度の溶離液を流入させることができるので、少量で済む場合はこの方法を用いることもできる。その他の退避容器についても同様である。ただし、退避容器を予め外部と連通させれば、試薬をさらに確実に保持できる。上記実施例では、加温装置14と検出装置15とを別々に設けているが、両者を一体化し同じ位置で加温したり検出してもよい。また、加温装置と検出装置とを保持ディスク12の上面に配置したが、下面に配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る遺伝子診断装置の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示した遺伝子診断装置に用いる検査カートリッジの斜視図である。
【図3】図2に示した検査カートリッジの分解斜視図である。
【図4】図2に示した検査カートリッジの部分縦断面図である。
【図5】本発明に係る遺伝子診断装置の動作手順を示すフロー図である。
【図6】本発明に係る遺伝子診断装置の動作手順を示すフロー図である。
【図7】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図8】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図9】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【図10】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【図11】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図12】図2に示した検査カートリッジの斜視図である。
【図13】図2に示した検査カートリッジに用いるフィルタフォルダの分解斜視図である。
【図14】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図15】図13に示したフィルタフォルダの平面図である。
【図16】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図17】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【図18】図2に示した検査カートリッジの部分縦断面図である。
【図19】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【符号の説明】
【0075】
1…遺伝子検査装置、2…検査カートリッジ、11…モータ、12…保持ディスク、13…穿孔機、14…加温装置、15…検出装置、199…カートリッジカバーリッジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析装置及びそれに用いる検査カートリッジに係り、特に自動的に分析するのに好適な生化学分析装置及びそれに用いる検査カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生化学分析装置の例が、特許文献1に記載されている。このパンフレットに記載のDNAを含む液体試料からDNAを抽出する方法では、DNA混合液を無機基体としてのガラスフィルタに通過させた後に、洗浄液と溶離液を通過させてDNAだけを回収している。そして、ガラスフィルタを回転可能な構造体に設け、洗浄液や溶離液等の試薬を同じ構造体内の各試薬リザーバに保持している。各試薬は、構造体の回転により発生する遠心力で流動し、各試薬リザーバとガラスフィルタを結ぶ微細流路に設けたバルブが開かれて、ガラスフィルタ内を通過する。
【0003】
従来の生化学分析装置の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の化学分析装置では、複数の化学物質を含む試料から、核酸等の特定の化学物質を抽出し、分析している。そして、一体型カートリッジ内部に溶解液や洗浄液、溶離液等の試薬と核酸を捕獲する捕獲構成部品を備えている。核酸を含む試料をカートリッジ内部に注入した後に、試料と溶離液を混合させて捕獲構成部品に通過させ、捕獲構成部品に洗浄液を通過させる。その後、捕獲構成部品に溶離液を通過させ、捕獲構成部品を通過した後の溶離液をPCR試薬に接触させて反応チャンバへ送っている。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/78455号パンフレット
【特許文献2】特表2001−527220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の装置では、1度だけ作動する多数のバルブを設けて、試薬やDNA混合液等の流体の流れを制御している。このバルブでは、封止部に加熱すると溶けるワックス等を使用する。ワックスを用いて流路を物理的に閉じているので、確実に液の流れを制御できる利点を有する。しかしながら、封止部をバルブ毎に設ける必要があること、および封止部を加熱する手段が必要となることのため、回転ディスクが複雑化する。その結果、分析シーケンスを実現する装置が複雑化する。また、回転ディスク内にフィルタを装着するが、装着を容易にするにはフィルタを柔軟にする必要がある。その場合、フィルタ部から流体が漏れる恐れがある。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の装置では、一体型流体操作カートリッジを用いている。このカートリッジでは、複数の試薬を試薬チャンバからバルブを介在させた微細流路に送液しているので、カートリッジがバルブを多数備えなければならず、カートリッジの構造が複雑化する。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、生化学分析装置を小型化および簡素化することにある。本発明の他の目的は、生化学分析装置に用いるカートリッジにおいて、複雑なバルブを不要にすることにある。本発明のさらに他の目的は、生化学分析装置において、多数の試料と試薬の混合や反応、検出を自動的に実行することにある。そして本発明は、これらの目的の少なくともいずれかを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器が形成された試薬カートリッジと、この試薬カートリッジに接続され反応容器が形成された反応カートリッジとを有し、前記試薬容器および反応容器は、基板とこの基板表面に形成した凹部を覆うカバーとから構成されており、複数の前記試薬容器と前記反応容器とを接続する流路を試薬カートリッジおよび反応カートリッジに形成し、この流路は試薬カートリッジと反応カートリッジとの接続部において基板の内部に形成されているものである。また、この化学分析装置に使用する検査カートリッジが上記特徴を備えている。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器と前記試薬容器の外周側に液を移送するための流路と前記流路が接続され、前記試薬容器の外周側に配置された反応容器を備えたものである。また、この化学分析装置に使用する検査カートリッジが上記特徴を備えている。
【0009】
そして、反応カートリッジに被検査試料中の物質を捕捉または結合する結合部を形成し、この結合部に、結合フィルタを保持するフィルタホルダが着脱自在に設けられており、このフィルタホルダは、結合フィルタの挿入方向がこの検査カートリッジを化学分析装置で使用するときの半径方向位置から傾いた方向に配置されるのが良く、試薬容器に接続する前記流路は、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、前記内周側に延びる部分に流路断面積を拡大した流路拡大部を形成し、さらには、この折り返し流路は、外周側に延びる部分に絞り部を有するのがよい。また、試薬容器に接続する前記流路は、試薬容器の外周部で試薬容器と接続され、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、この流路あるいは試薬容器から分岐した流路の端部に、空気流路とこの空気流路に接続する退避容器とを設け、この退避容器を試薬容器の外周端よりも内周側に配置するのが良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カートリッジにおいて、試薬や試料の各チャンバから分析部等に試薬や試料を導く流路内の流れを、カートリッジに作用する遠心力を利用して制御したので、複雑なバルブが不要となり、カートリッジおよびそれを用いる生化学分析装置を小型化および簡素化できる。また、カートリッジを回転させるだけで済み、多数の試料と試薬の混合や反応、検出を自動的に実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る生化学分析装置およびそれに用いるカートリッジの一実施例を、図面を用いて説明する。本実施例は、遺伝子分析装置1の場合である。図1に、遺伝子分析装置1を斜視図で示す。遺伝子分析装置1は、縦軸状に配置されたモータ11と、モータ11の出力軸に取り付けられ、モータ11で回転駆動される保持ディスク12とを有する。保持ディスク12の周方向には、同一形状の検査カートリッジ2が多数配置されている。検査カートリッジ2の上方であって、検査カートリッジ2に形成した流路またはチャンバに対応した位置に、液体の流動を制御する穿孔機13が配置されている。さらに、検査カートリッジ2の上方には、加温装置14や検出装置15が配置されている。
【0012】
このように構成した生化学分析装置である遺伝子分析装置1を用いた分析においては、操作者が検査または分析項目に応じて検査カートリッジ2を用意し、保持ディスク12に装着する。装着された検査カートリッジ2は、モータ11の起動停止および穿孔機13の動作により、検査カートリッジ2内に形成された流路を試薬や試料が流動する。そして、流体の遺伝子検査が実行される。
【0013】
遺伝子分析装置1に用いる検査カートリッジ2の詳細を、図2に斜視図で、その分解斜視図を図3に示す。検査カートリッジ2は、ほぼ平行な平行部を有する反応カートリッジ52と先すぼまりの扇形部を有する試薬カートリッジ51とから形成されている。そして、試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を検査の前に予め接続する。その後、検査カートリッジ2を、遺伝子分析装置1の保持ディスク12中心に向けて、保持ディスク12に取り付ける。保持ディスク12の中心側が、上流側となる。
【0014】
検査カートリッジ2の上面には、凹凸が形成されている。この凹凸で試薬等の密閉流路および容器を形成するために、フィルムあるいは薄板等でできた図示しないカートリッジカバーが、検査カートリッジ2の上面全体を覆っている。カートリッジカバーは、検査カートリッジ2に接着あるいは接合されている。
検査に必要な試薬を収容する複数の試薬容器220〜290が検査カートリッジ2の試薬カートリッジ51に、それぞれ形成されている。これらの試薬容器220〜290には、予め所定量の試薬が分注されている。
【0015】
ここで、各試薬容器220〜290に接続する出口流路221〜291は、試薬容器220〜290を出た後に一端内周側に折り返してから反応カートリッジ52側に流出するよう折返し流路になっている。これらの出口流路221〜291は、試薬カートリッジ51の端面に形成された接続部72まで延びている。各試薬容器220〜290の内周側には、空気流路222〜292が形成されており、その先端部には、空気流路222〜292よりも断面積の大きな穿孔用の空間226〜296が形成されている。
【0016】
試薬カートリッジ51には、検査カートリッジ2にサンプルである全血試料を投入するための試料容器310が形成されている。この試料容器310の下流側には、試薬と試料を所定の動作にしたがって操作するための血清定量容器312と血球貯蔵容器311が隣り合って形成されている。
【0017】
反応カートリッジ52には、試薬と試料を反応させる血清反応容器420、結合前容器430、バッファー容器800、溶離液回収容器390が形成されている。最外周側には、検査カートリッジ2のほぼ幅全体にわたって、廃液容器900が形成されている。上記各容器には、流路が接続されており、試薬や試料を所定の手順で流通させることが可能になっている。
【0018】
このように構成した検査カートリッジ2の組み立て手順を以下に説明する。各試薬容器220〜290に、予め試薬を所定量分注する。試薬カートリッジ51および反応カートリッジ52に凹部として形成された各容器と流路全体を、図示しないカートリッジカバー199でそれぞれ封止する。試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を接続する試薬カートリッジ接続部72が試薬カートリッジ51側端面に設けられている。試薬カートリッジ接続部72は使用時まで、図示しない接続口封止手段71で封止されている。これにより、試薬カートリッジ51内に分注された各試薬は、試薬カートリッジ51内に密閉されており、使用時まで保管される。
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を結合するために、試薬カートリッジ51の反応カートリッジ側52端面であって両側部から試薬カートリッジ接続突き出し部75が突出して設けられている。また、試薬カートリッジ51の側端面中央部には、試薬カートリッジ接続凹部76が形成されている。
【0019】
反応カートリッジ52には、試薬カートリッジ接続突き出し部75に組み合うように、反応カートリッジ接続凹部85が、試薬カートリッジ51側端部の中央部には、試薬カートリッジ接続凹部76と組み合うように、反応カートリッジ接続突き出し部86が設けられている。
【0020】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を接続する直前に、試薬カートリッジ接続部72から接続口封止手段71を剥ぎ取る。試薬カートリッジ接続部72には、試薬カートリッジ接続口73が設けられている。各試薬容器220〜290に接続する流路を試薬カートリッジ接続口73に連通させる接続準備流路74が、試薬カートリッジ51の反応カートリッジ側端部に形成されている。なお、1個の試薬カートリッジ接続部72に、複数の試薬カートリッジ接続口73が形成されている。接続準備流路74は、試薬カートリッジ51の上面に刻まれた流路221〜291の端部に形成されており、試薬カートリッジ接続口73に連通するように、試薬カートリッジ51上面から概略垂直な穴部とそれに引き続く水平部とを有している。
【0021】
反応カートリッジ52には、試薬カートリッジ51の接続部72に対応する凹形状の反応カートリッジ接続口81が形成されており、試薬カートリッジ接続部72が嵌合する。反応カートリッジ接続部81の底面には、反応カートリッジ接続口82が形成されている。反応カートリッジ接続口82は、血清反応容器420および結合前容器430、バッファー容器800に連通いる。
【0022】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を、それぞれの接続部を対向させて組み合わせ、接続および固定する。固定方法は、例えば、試薬カートリッジ接続部71を反応カートリッジ接続部81に圧入する方法を用いる。また、反応カートリッジ接続部81は凹んで形成されているので、その凹みにパッキン92を予め配設する。このように、試薬カートリッジ突き出し部75と反応カートリッジ凹部85および試薬カートリッジ凹部76と反応カートリッジ86とを、各々組み合わせるだけで、試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52を容易に接続できる。
【0023】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52との接続状態を、図4に部分縦断面図で示す。結合前容器430に連通する流路部であり、試薬カートリッジ接続部72が反応カートリッジ接続部81に嵌合している。試薬カートリッジ51の上面に形成した流路は、試薬カートリッジ接続口73にに連通する前に、L字状に形成された接続準備流路74により垂直方向から水平方向に流れの向きを変えられている。これにより、試薬カートリッジ接続口73をカートリッジカバー199から離すことが可能になる。接続準備流路74が設けられていないと、試薬カートリッジ接続口73と反応カートリッジ接続口82を形成するためにカートリッジカバー199でそれらの上面を覆わなければならず、パッキン92の挿入、あるいは圧入による嵌合が困難になる。このため、漏れのない接続部とすることが困難となる。
【0024】
試薬カートリッジ51と反応カートリッジ52とを接続および固定したので、検査カートリッジ2を必要数だけ保持ディスク12に装着する。サンプルとして全血を用い、ウイルス核酸を抽出及び分析する様子を、図5、6に示した手順書および図7〜図12、図17に示した検査カートリッジ2の上面図を用いて説明する。
【0025】
(1)検査を始めるに当たり、操作者は図7で示すように、真空採血管等で採血した全血501を、検査カートリッジ2の試料注入口301から試料容器310に注入する。その際、試料注入口301上に配置したカートリッジカバー199を、穿孔手段を用いて穿孔して、試料注入口301の部分を外部に開口する。検査カートリッジ2の外部に、全血が飛散するのを防止するために、全血501を注入したら試料注入口301上の部位を、シールあるいはキャップ等で塞ぐ。溶解液容器220および追加溶解液容器230、第1洗浄液容器247、第2洗浄液容器257、第3洗浄液容器260、溶離液容器270、第1増幅液容器290、第2増幅液容器280からなる試薬容器のそれぞれに、予め溶解液227および追加液237、第1洗浄液247、第2洗浄液257、第3洗浄液267、溶離液277、第1増幅液297、第2増幅液287を所定量分注されている。
【0026】
(2)次に、試料容器穿孔部319と血清反応容器穿孔部426を覆うカートリッジカバーを、穿孔機13を用いて穿孔する。試料容器穿孔部319と血清反応容器穿孔部426は、外部空気と連通する。なお、本実施例では穿孔機13を用いて機械的に穴を開けているが、熱を付与してカバーを溶かしたり、カートリッジカバーに開口部を形成し、外部と連通させてもよい。また、本実施例では穿孔により外部空気とカートリッジ内部の空気を連通させているが、重要なのは、空気が自由に穿孔部を通過できることであり、例えば、外部空気ではなく、カートリッジ上に別途設けた空間に連通させる、あるいは穿孔した場所同士が相互に連通されるような構成としても良い。
【0027】
このとき、溶離液退避容器穿孔部176と、第1増幅液退避容器穿孔部196と、第2増幅液退避容器穿孔部186と、第3洗浄液退避容器166を覆うカートリッジカバーも穿孔する。これら4箇所の穿孔の理由については別途後述する。
【0028】
(3)血清分離(図6のステップ1010):遺伝子検査装置1のモータ11を駆動して、保持ディスク12を回転させる。(図5のステップ912、図6のステップ1012:以下の記載において同様)試料容器310に注入した全血501は、保持ディスク12が回転して発生した遠心力により、回転中心99から半径方向外向きの力を受け、外周側に流動する(図8参照)。そして、試料容器310に連通する血清定量容器312へ、さらに血清定量容器312に連通する血球貯蔵容器311に流れ込む。
【0029】
全血試料501の投入量を、血球貯蔵容器311と血清定量容器312がちょうど満たされる程度に設定する。検査カートリッジ2内における試料501の液位601は、遠心力により保持ディスク12の回転中心99を中心とする同心円となる。そこで、血清定量容器312に設けた血清定量容器折り返し流路318の折り返し位置を、液位601より内周側に設定する。これにより、試料501に遠心力が付加されているときは、折返し位置流路318の折り返し位置を越えて試料501が外周側に流れることがなく、血球貯蔵容器311と血清定量容器312内に保持される。
【0030】
(4)保持ディスク12の回転を継続する。全血501は、血球と血清に遠心分離される(ステップ914、1014)。血球502は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内に血清503だけが残る。この一連の血清分離動作時に、検査カートリッジ2内の各試薬容器220〜290には、各試薬227〜297とともに封入された微量の空気が残っているが、空気流路222〜292を試薬充填時にカートリッジカバーで覆っているので、新たに空気は流入しない。各試薬227〜297に遠心力が付加され、試薬容器220〜290の内部で試薬227〜297が外周側に偏る。このときの液位が、試薬容器220〜290に接続した折り返し流路221〜291より内周側に位置するように折り返し流路221〜291位置を設定する。
【0031】
遠心力により、各試薬227〜297の一部が、折り返し流路221〜291に流出すると、折り返し流路221〜291に流入した試薬227〜297の体積分だけ、試薬227〜297を充填したときに封入された空気が膨張する。その結果、試薬容器220〜290内の空気圧力が低下し、負圧となる。この負圧と遠心力とが釣り合い、試薬227〜297は折り返し流路221〜291を越えて流出することがない。したがって、血清分離動作時には、各試薬227〜297は、試薬容器220〜290に保持される。
【0032】
試薬カートリッジ51の側部に位置する試薬容器240〜260および中央部に位置する試薬容器220、230に接続する折り返し流路221〜261では、試薬容器220〜260と折り返し流路221〜261との接続部から内周側に向かう部分の中間部に、流路断面積を拡大させた流路拡大部228〜268を形成している(図8参照)。流路拡大部228〜268を形成して折返し流路221〜261の体積を増加させたので、空気膨張量が増加する。その結果、負圧量が増大し、より確実に試薬227〜267を試薬容器220〜260内に保持できる。
試薬容器260〜290内に試薬261〜291をさらに確実に保持するため、第3洗浄液退避容器160および溶離液退避容器170、第2増幅液退避容器180、第1増幅液退避容器190を接続している。これら退避容器160〜190の作用を、図9を用いて、溶離液退避容器170を例にとり説明する。
【0033】
溶離液容器270は丸い部分とそれに続く棒状部分とから構成されており、棒状部分の最外周667側位置よりも内周側位置668から、溶離液退避容器170に接続する流路が分岐して形成されている。この分岐流路の内周側先端部であって溶離液容器270よりもやや外周側に、溶離液退避容器170を形成している。溶離液退避容器170に、流路を介して溶離液退避容器穿孔部176が接続されている。溶離液退避容器穿孔部176は、溶離液退避容器170よりも内周側に位置しており、この血清分離時にはすでに穿孔手段により穿孔されている。このとき、溶離液容器270よりも内周側であって溶離液容器270に流路を介して接続された溶離液容器穿孔部276はまだ穿孔されていない。
【0034】
この状態で遠心力を受けると、図9に示すように、溶離液容器270内に充填された溶離液277は、外周側に偏り、折り返し流路271に溶離液277が入り込む。同様に、溶離液退避容器170にも溶離液277が流入する。溶離液退避容器170は、溶離液退避容器穿孔部176が穿孔されているので外部と連通しており、溶離液退避容器170内の空気が排出され、溶離液277と置換される。その結果、折り返し流路271内に流入した溶離液277と溶離液退避容器170流入した溶離液277の液位266は、ほぼ同じになる。溶離液退避容器170を設けて溶離液277を溶離液退避容器170に流入させ、空気の膨張体積を増大させているので、より大きな負圧を発生させることができ、より確実に溶離液277が折り返し流路271に流出するのを回避できる。
【0035】
試薬容器220〜260では流路拡大部228〜268を形成していたが、試薬容器270〜290では退避容器170〜190を設けている。この差は、試薬量の多寡に関係する。試薬量の少ないときに流路拡大部を過度に大きくすると、試薬を流出させる処理時に折り返し流路に試薬が残りやすくなる。この不具合を回避するために、試薬量の少ない容器については退避容器を設け、試薬量の多い場合には流路拡大部で対処する。溶離液退避容器170を、溶離液容器270の最外周位置667より内周側位置668で溶離液容器270と接続したので、溶離液容器穿孔部276を穿孔し溶離液277を流出させる処理では、溶離液退避容器170に進入した液が全て溶離液容器270に戻り、液残りの発生を防止できる。
【0036】
各試薬容器穿孔部226〜286を覆うカートリッジカバー199を穿孔すると、穿孔された容器穿孔部226〜286に接続された試薬容器220〜280には、外部から空気が流入し負圧が発生しない。このため、モータ11を回転させると、試薬227〜287は折り返し流路221〜281の最内周部を越えて下流側へ流出する。折り返し流路221〜281を越えて試薬227〜287が流れ始めるとサイホンが形成され、全て流出する。なお、各折り返し流路221〜281には、最内周から下流側の部分の途中に、流路断面積を狭めた折り返し流路絞り部120を形成している。
【0037】
折り返し流路絞り部120の作用を、図10を用いて、溶離液容器270を例にとり説明する。溶離液容器穿孔部276を覆うカートリッジカバー199を穿孔し、モータ11を回転させると、溶離液容器270には負圧が発生しないので、溶離液277が折り返し流路271から下流側へ流出する。特に、折り返し流路271の最内周部を過ぎると、遠心力が作用して折り返し流路271内から速やかに流れ出る。このとき、溶離液容器270の最外周側から折り返し流路271の内周側に向かう溶離液277の流量が十分大きくないと、折り返し流路271の最内周部を過ぎた溶離液277は流路の一部だけを満たして流れる恐れがある。流路断面を満たして流れないと、折り返し流路271でサイホンが形成されない。このとき、試薬容器270内の折り返し流路271より外周側の溶離液277は、下流側に流れることができず、液位669の位置まで流れると流動が停止する。その結果、多量の液残りが生じる。
【0038】
この不具合を回避するために、本実施例では折り返し流路絞り部120を設けている。折り返し流路271の最内周部を過ぎた溶離液の流動抵抗が増大し、流量が抑制される。その結果、折り返し流路271に確実にサイホンが形成され、全ての溶離液277を流出させることが可能になる。折り返し流路絞り部120は、折り返し流路271の最内周部よりも下流側であれば、流路幅や流路深さを不連続に変化させたものでも、徐々に流路断面積を絞るものでも、いずれでもよい。
【0039】
(5)所定時間だけ保持ディスク12を回転させると(ステップ916)、血清の遠心分離動作が終了し、検査カートリッジ2が停止する。
【0040】
(6)溶解液227を使用する処理(ステップ1016)においては、穿孔機13が溶解液容器穿孔部226を穿孔する(ステップ918)。保持ディスク12を回転させる(ステップ920)と、遠心力の作用により溶解液227は流動して(ステップ1018)、溶解液容器220から折返し流路221を経て、血清定量容器折返し流路318と合流部419で合流する(ステップ922、ステップ1022)。
【0041】
この際、溶解液227は、合流部419で血清定量容器折返し流路318内の空気を巻き込み、空気を血清反応容器420側へ移送する。血清定量容器折返し流路318内の空気量が減少し、血清は合流部419の側へ引き込まれる。そして、血清はついには血清定量容器折返し流路318の最内周位置である折返し部分を越え、サイホンが形成される。サイホンが形成されると血清は流れ続け、溶解液227と合流部419で合流して、血清反応容器420へ流れ続ける。保持ディスク12の回転を継続して、遠心力を十分付与し続けると、溶解液227は微量の残液を除き全て流れ、血清は血清定量容器折返し流路318が血清定量容器312に接続する位置602まで液位が低下するまで、流れ続ける。この状態を、図11に示す。血清と溶解液227を同時に流れさせて両者を混合する。
【0042】
血清反応容器420では、混合した血清と溶解液277が反応する(ステップ1024)。血清と溶解液277の混合液が血清反応容器420に流入すると、血清反応容器420内の液面は、図11に示すように、反応液流路421の最内周部である半径位置604よりも外周側になる。このとき、血清と溶解液277の混合液は、反応液流路421の最内周部である折り返し部を越えず、保持ディスク12の回転中は、混合液が血清反応容器420内に保持される。
【0043】
溶解液277は、血清中のウイルスや細菌等からその細胞膜を溶解して核酸を溶出させ、さらに結合部301への核酸の吸着を促進させる。DNAを溶出および吸着する際の試薬としては塩酸グアニジンを、RNAを溶出および吸着する試薬としてはグアニジンチオシアネートを用いる。血清と溶解液277の混合液を血清反応容器420に移送し終えたら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ924)。
【0044】
(7)次に、結合モード(ステップ1026)に移行する。穿孔機13で穿孔部236を覆っているカートリッジカバーを穿孔する(ステップ926)。この際、下流側の容器に接続された、結合前容器穿孔部436、廃液容器穿孔部906、バッファー容器穿孔部806、溶離液回収容器穿孔部396の4個の穿孔部も穿孔し、試薬を結合部301および溶離液回収容器390を介して廃液回収容器900に導くために、各容器や流路を占めていた空気を排出する排出口を形成する。
【0045】
穿孔後、保持ディスク12を回転させる(ステップ928)。遠心力により追加液237は追加液容器230から追加液折返し流路231を経て、血清反応容器420に流入する(ステップ1028)。血清反応容器420内に流入した追加液237は、血清反応容器420内の血清と溶解液の混合液の液面を、内周側に移動させる。混合液の液面が血清反応容器折返し流路421の最内周位置604に達すると、混合液は血清反応容器折返し流路421の最内周位置を越えて下流側に流出する。そして、結合前容器430を経て、結合部301へ流入する(ステップ1030)。一旦、血清と溶解液の混合液が折り返し流路の最内周位置を越えるとサイホンが形成され、血清と溶解液の混合液は結合前容器430に流れ続ける。追加液には、たとえば上述の溶解液を使用する。
【0046】
図12に、結合部301を有する検査チップ2を斜視図で示す。結合部301は、試薬カートリッジ52のほぼ中央部に斜めに形成されており、試薬カートリッジ52に形成したフィルタフォルダ挿入用の凹部450と、この凹部450に嵌合するフィルタフォルダ451とで構成される。フィルタフォルダ451の詳細を、図13に斜視図で示す。フィルタフォルダ451は矩形平板状の側板部と、この側板部の上方に位置し検査カートリッジ2の内周側から外周側に延びる矩形状の天板部と、天板部の下方に位置する半円柱部とを有する。半円柱部には検査カートリッジ2の内周側から外周側に延びる段460付の円筒状のフィルタ挿入空間452が形成されている。
【0047】
フィルタ挿入空間452には、核酸を結合するための円板状の複数のフィルタが挿入されている。すなわち、2枚の結合フィルタ454を、フィルタ支持体453で挟んで、フィルタ挿入空間452の端部の段付部460までしっかり挿入する。結合フィルタ454には、石英やガラスの繊維フィルタ等を用いる。フィルタフォルダ451を検査カートリッジ2の凹部450に嵌合したときに、フィルタフォルダ挿入用凹部450とフィルタフォルダ451間に形成される隙間から液が漏れないように、側板部の前面側のフィルタ挿入面456に溝459を形成し、この溝に、接着剤を充填する。
【0048】
フィルタフォルダ451の天板部の上面は平坦であり、検査カートリッジ凹部450にフィルタフォルダ451を嵌合したときに、検査カートリッジ2の上面とフィルタフォルダ451の上面がほぼ平らになる。これにより、カートリッジカバー199を、フィルタフォルダに接着あるいは接合により密着させることができる。
【0049】
フィルタ挿入用凹部450が検査カートリッジ2に占める位置の詳細を図14に、このフィルタ挿入用凹部450に嵌合するフィルタフォルダ451内の液の状態を、図15に示す。図14は、検査カートリッジ2の上面図である。フィルタフォルダ451に形成したフィルタ挿入空間452の中心軸471は、検査カートリッジ2の回転中心とこのフィルタ挿入空間452の内周側の中心位置とを結ぶ線472から、角度θ1だけ傾いている。結合フィルタ454の向きを角度θ1だけ傾けたのは、以下の理由による。
【0050】
結合部301を、溶解液と血清の混合液(溶解反応液)および第1洗浄液、第2洗浄液、溶離液が流通する。これらの液が流通するとき、液には遠心力が半径方向472に作用する。上記各液が結合部301を流通するときは、フィルタ挿入用凹部452に保持された結合フィルタ454あるいはフィルタ支持体453の一方側の隅部に、遠心力により偏って各液が集められる。したがって、集められた液を容易に排出でき、残液を低減することができる。角度θ1は、液をスムーズに排出するために、左右いずれかの方向に5度以上傾いた角度とする。
【0051】
このように結合フィルタ454の挿入方向を角度θ1だけ傾けるだけの簡単な構成で、流通後の残液量を低減できるので、第1洗浄液および第2洗浄液による結合部301の洗浄効果を高めることができる。また、溶離液の残液を低減できるので、核酸の回収量を増大させることができる。結合フィルタ454の挿入方向を角度θ1だけ傾けたので、遠心力が多少弱くても、残液の増加を抑制できる。その結果、低出力のモータを使用しても、遺伝子検査装置1を製作できる。
【0052】
溶解液と血清との混合液および廃液の流動を、図16に示した検査カートリッジ2の上面図を用いて説明する。結合部301を溶解液と血清の混合液である溶解反応液が通過する(ステップ930、1032)と、核酸が結合部301に設けられた結合フィルタに吸着する。結合部301を通過して生成された廃液591は、遠心力により結合部301に接続され溶離液回収容器390に流入する。溶離液回収容器390の最外周側には、溶離液回収容器折返し流路494が接続されており、この溶離液回収容器折返し流路494は、一旦、半径位置615まで内周側に戻り、外周端側にある廃液貯蔵容器900に接続される。
【0053】
このとき、廃液591は、混合容器420の場合と同様に、溶離液回収容器折返し流路494の戻り部のために、一時的に溶離液回収容器390に保持される。廃液591の量の方が、溶離液回収容器390の容積より十分多いので、図16に示すように、廃液591は溶離液回収容器折返し流路494の最内周位置615を越えて下流側の廃液貯蔵容器900へと流出する(ステップ1034)。廃液貯蔵容器900に廃液591を移送したら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ932)。この際、後述する圧縮空気容器840の作用により、溶離液回収容器内に一時的に保持された廃液591も微量の残液を除き全て廃液貯蔵容器900に移送される。
【0054】
(8)洗浄モード(ステップ1036)に移行する。第1洗浄液容器240に空気を供給するために、第1洗浄液容器に付設した穿孔部246を穿孔する(ステップ934)。再度保持ディスク12を回転させ(ステップ936)、第1洗浄液を遠心力により第1洗浄液容器240から、結合前容器430を経由して、結合部301に導く(ステップ1038、ステップ938)。結合前容器430を洗浄するとともに、結合フィルタ254に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する(ステップ1040)。第1洗浄液には、たとえば上述した溶解液あるいは溶解液の塩濃度を低減した液を使用する。結合前容器430や結合フィルタ251を洗浄した後の廃液は、混合液同様に、溶離液回収容器390を経て廃液貯蔵容器900に導く(ステップ1042)。廃液貯蔵容器900に廃液を移送したら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ940)。
【0055】
次に、第2洗浄液を流動させる。第2洗浄液には、結合前容器430および結合部301に付着した塩等の不要成分を洗浄するために、たとえばエタノールあるいはエタノール水溶液を用いる。保持ディスク12の回転を停止させた状態で、第2洗浄液容器250に空気を供給するために、第2洗浄液穿孔部256を穿孔する。その後、保持ディスク12を回転させ遠心力を作用させる。遠心力により第2洗浄液は第2洗浄液容器250から、結合前容器430を経由して、結合部301に流入し、結合前容器430と結合フィルタ254とを洗浄する。洗浄後の廃液を、第1洗浄液と同様に溶離液回収容器390を経て廃液貯蔵容器900へと移送する。廃液を廃液貯蔵容器900に移送し終えたら、保持ディクス12の回転を停止する(ステップ1038〜1042)。
【0056】
同様に、第3洗浄液容器260に空気を供給するために、第3洗浄液容器穿孔部266を穿孔する。第3洗浄液は、バッファー容器800を経由して、溶離液回収容器390に流入する。そして、溶離液回収容器390に付着した塩あるいは第2洗浄液の微量な残液を洗浄する。第3洗浄液には、たとえば滅菌水やpHを7〜9に調整した水溶液を用いる。結合部301と溶離液回収容器390を洗浄したら、核酸の溶離工程に移行するために、保持ディスク12を停止する(ステップ940)。
【0057】
(9)溶離モードに移行する(ステップ1044)。溶離液容器270に空気を供給するために、溶離液容器穿孔部276を穿孔する(ステップ942)。この際、圧縮空気容器穿孔部846を覆うカバーも穿孔し、圧縮空気容器840を、圧縮空気容器空気流路842を介して外部と連通する。後述するように、圧縮空気容器空気流路846を穿孔することにより、溶離液、第1増幅液、第2増幅液を溶離液回収容器390に保持することが可能となる。保持ディスク12を回転させ(ステップ944)、結合部301に溶離液277を流す(ステップ1046)。溶離液277には、水或いはpHを7から9に調整した水溶液を用いる。溶離液277は、核酸を結合部301の結合フィルタ454から溶離する(ステップ946、ステップ1048)。拡散を含んだ溶離液は結合部301を通過した後、溶離液回収容器390に回収される(ステップ1050)。保持ディスク12の回転を停止する(ステップ948)。
【0058】
(10)増幅および検出モード(ステップ1052)に移行する。第1増幅液容器290に空気を供給するために、第1増幅液容器穿孔部296のを穿孔する。モータ11を回転させると、第1増幅液297は、バッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。第1増幅液297は、核酸を増幅して検出する試薬で、例えばデオキシヌクレオシド3リン酸及び蛍光試薬等を含む。モータ11を停止する。
【0059】
第1増幅液を流通させた後、加温装置を検査カートリッジの溶離液回収容器に移動させる。あるいは保持ディスク12を回転させて、検査カートリッジ2を加温装置の位置まで移動させる。加温装置14を用いて、溶離液回収容器390を温度制御する。第2増幅液容器280に空気を供給するために、第2増幅液容器穿孔部286を穿孔し、モータ11を回転させる。遠心力により、第2増幅液287はバッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。第2増幅液は増幅に必要な酵素を含む。溶離液や第1増幅液、第2増幅液の液量は、これら3種の液のすべてが溶離液回収容器390側に移動したときに、その液面が溶離液回収容器390の折り返し流路494の最内周位置615より外周側に位置するように設定する。
【0060】
第2増幅液287を溶離液回収容器390に移送したら、加温装置14を検査カートリッジの溶離液回収容器390に移動するか、保持ディスク12を回転させて検査カートリッジ2を加温装置14の位置まで移動させる。溶離液回収容器390を温度制御する。所定時間だけ温度制御している間に核酸が増幅し、検出装置15が核酸を検出する(ステップ1054)。増幅および検出に必要な時間、例えば30分ないし2時間程度、加温する。第2増幅液287が移送された溶離液回収容器390には、溶離液と第1、第2増幅液の混合液である増幅反応液が保持される。
【0061】
この時の溶離液回収容器390まわりの液の状態を、図17〜図18を用いて説明する。図17はその上面図であり、図18は図17のA−A‘断面図である。溶離液回収容器390を、外周側に位置する第1の空間833と内周側に位置する第2の空間832に区画するために、仕切り壁820を溶離液回収容器390内に設けている。仕切り壁820は、液の流動を止めないように、カートリッジカバー199との間にわずかの隙間が形成されるように設けられている。
【0062】
溶離液と第1、第2の増幅液のすべてが溶離液回収容器390側に移送されたときに、溶離液回収容器390の液位が、後述する仕切り壁820上かそれよりも内周側であって、溶離液回収容器390の折り返し流路494の最内周部と流路拡大部495より外周側になるように、溶離液回収容器390の大きさを設定する。このとき、圧縮空気容器840を液位631よりも内周側に、液位631を圧縮空気容器接続流路841内に位置させる。
【0063】
増幅反応液と空気の界面は、溶離液回収容器折り返し流路494および圧縮空気容器接続流路841、仕切り壁820に位置する。したがって、液と空気の界面の面積である蒸発面積は僅かな面積になり、増幅および検出中の液の蒸発を低減できる。また、第1の空間833は液で満たされており、空気と液の界面がない。このため、第1の空間833の上面または下面を検出面として用いれば、気液界面の影響を受けずに安定的に検出を行うことができる。第2の空間832の深さDは、第1の空間の深さ程度にする。その理由は、あまり浅すぎると、増幅反応液の僅かな液量の違いにより液位が変動し、その結果、わずかに液量が増加すると折り返し流路494を越えて流出する恐れがあるからである。
【0064】
溶解液と血清の混合液である溶解反応液あるいは第1ないし第3洗浄液が、溶離液回収容器390を通過する場合の溶離液回収容器390回りの詳細を図19に示す。溶解混合液あるいは第1ないし第3洗浄液が溶離液回収容器390に残った状態で増幅反応液が流入すると、増幅および検出モードでの処理が阻害されるため、これらの液は増幅反応液が流入する前に排出されていなければならない。
【0065】
図19では保持ディスク12を回転させて、検査カートリッジ2に遠心力を作用させ、溶解反応液を結合部301を経て溶離液回収容器390に流している。結合部301には結合フィルタが収容されているので、溶離液回収容器390に流入する溶解反応液の流量は非常に少ない。そのため、溶離液回収容器390の折り返し流路494にはサイホンが形成されにくく、折り返し流路494の下流へ間欠的に流れるか、または折り返し流路494を偏流499となって流れる。サイホンが形成されないまま、溶解反応液が結合部301から完全に流れ出すと、液位615で示す液が溶離液回収容器390に残った状態となる。
【0066】
溶解反応液が流れるときには、圧縮空気容器840に接続した穿孔部846を未だ穿孔しない。穿孔部846および空気流路842、圧縮空気容器840内の空気はそれらが形成する空間に閉じ込められて圧縮されている。検査カートリッジ2が回転して遠心力により圧縮空気容器840に液が進入すると、液位641は内周側の液位615位置まで上昇しようとする。しかし、圧縮空気容器840の内圧により液位の上昇は抑制され、液位615より外周側の液位641でバランスする。液位641は、検査カートリッジ2の回転速度が速ければ速いほど液位615に近づく。
【0067】
溶解反応液が結合部301から完全に流れ出て、液位615で示す液が溶離液回収容器390に残った状態となったら、検査カートリッジ2の回転速度を低下させ、遠心力を弱める。液位641は外周側に移動し、圧縮空気容器840内の液が溶離液回収容器390内に流入する。溶離液回収容器390内に流入した液は、溶離液回収容器390内の液位615を上昇させる。それとともに、溶離液回収容器390の外周端から折り返し流路494内を進み、折り返し流路494を液で満たす。この結果、折り返し流路494にサイホンが形成され、溶離液回収容器390内の溶解反応液を全て下流側に排出できる。
【0068】
この理由から、圧縮空気容器840の一部を、折り返し流路494の最内周部よりも外周側に設ける。外周側に一部が位置することによって、溶解反応液が通水中に圧縮空気容器840に流入することができる。また、検査カートリッジ2の回転速度を低下させる場合は、速やかに低下させる。速やかに低下させると、圧縮空気容器840内の液が溶離液回収容器390に容易に移動し、折り返し流路494が液で満たされやすく、サイホンがより確実に形成される。なお、上記説明では溶解反応液の場合を説明したが、第1ないし第3洗浄液でも同様である。
【0069】
本実施例で示した圧縮空気を利用したサイホンの形成は、一旦容器に液を保持した後に液を流動化させる場合に広く適用できる。例えば、血清反応容器420に圧縮空気容器を接続すれば、追加液による溶解反応液の流動が不要になる。溶離液や第1増幅液、第2増幅液を流す前には圧縮空気容器穿孔部846を穿孔して外部に連通させる。これにより、増幅反応液の流動に、内部空気が影響を与えなくなり、増幅反応液を溶離液回収容器390に保持することが可能となる。
【0070】
増幅反応液の液位631より内周側に圧縮空気容器840を配置し、圧縮空気容器接続流路841を介して接続したので、増幅反応液の液位631は圧縮空気容器接続流路841、仕切り壁820に位置するので、液と空気の界面を低減でき液の蒸発が低減される。その結果、穿孔後に蒸発を防ぐために孔をふさぐ等の操作が不要になる。
【0071】
仕切り壁820より外周側の第1の空間833を増幅反応液で満たすことができ、第1の空間833の内外周側端部に検出手段15を設けて増幅反応液を検出すれば、空気と液の界面が検出を阻害するのを防止できる。ここで、仕切り壁を第1、第2の空間より浅い壁としたが、蒸発面積を低減する形状であればよく、第1、第2を接続する流路としてもよい。
【0072】
溶離液回収容器390に、折り返し部を有する折り返し流路494と、折り返し流路494よりも内周まで延びた圧縮空気容器840とを付設したので、サイホン作用により液の排出が容易になる。その際、圧縮空気容器840等を占める空気と検査カートリッジの2の回転速度を制御すれば、確実にサイホンを形成できる。本実施例によれば、特別なバルブを設けることなく、簡易な構成で液の流動を制御できる。
【0073】
上記実施例では、溶離液退避容器を予め穿孔して外部と連通したが、外部と連通させなくとも溶離液退避容器にある程度の溶離液を流入させることができるので、少量で済む場合はこの方法を用いることもできる。その他の退避容器についても同様である。ただし、退避容器を予め外部と連通させれば、試薬をさらに確実に保持できる。上記実施例では、加温装置14と検出装置15とを別々に設けているが、両者を一体化し同じ位置で加温したり検出してもよい。また、加温装置と検出装置とを保持ディスク12の上面に配置したが、下面に配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る遺伝子診断装置の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示した遺伝子診断装置に用いる検査カートリッジの斜視図である。
【図3】図2に示した検査カートリッジの分解斜視図である。
【図4】図2に示した検査カートリッジの部分縦断面図である。
【図5】本発明に係る遺伝子診断装置の動作手順を示すフロー図である。
【図6】本発明に係る遺伝子診断装置の動作手順を示すフロー図である。
【図7】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図8】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図9】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【図10】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【図11】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図12】図2に示した検査カートリッジの斜視図である。
【図13】図2に示した検査カートリッジに用いるフィルタフォルダの分解斜視図である。
【図14】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図15】図13に示したフィルタフォルダの平面図である。
【図16】図2に示した検査カートリッジの平面図である。
【図17】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【図18】図2に示した検査カートリッジの部分縦断面図である。
【図19】図2に示した検査カートリッジの部分平面図である。
【符号の説明】
【0075】
1…遺伝子検査装置、2…検査カートリッジ、11…モータ、12…保持ディスク、13…穿孔機、14…加温装置、15…検出装置、199…カートリッジカバーリッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器が形成された試薬カートリッジと、この試薬カートリッジに接続され反応容器が形成された反応カートリッジとを有し、前記試薬容器および反応容器は、基板とこの基板表面に形成した凹部を覆うカバーとから構成されており、複数の前記試薬容器と前記反応容器とを接続する流路を試薬カートリッジおよび反応カートリッジに形成し、この流路は試薬カートリッジと反応カートリッジとの接続部において基板の内部に形成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器と、この試薬容器の外周側に液を移送するための流路と、この流路に接続され前記試薬容器の外周側に配置された反応容器とを備えたことを特徴とする化学分析装置
【請求項3】
前記試薬容器に接続する前記流路は、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、前記内周側に延びる部分に流路断面積を拡大した流路拡大部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項4】
前記試薬容器に接続する前記流路は、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、この折り返し流路は、外周側に延びる部分に絞り部を有することを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項5】
試薬容器に接続する前記流路は、試薬容器の外周部で試薬容器と接続され、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、この流路あるいは試薬容器から分岐した流路の端部に、空気流路とこの空気流路に接続する退避容器とを設け、この退避容器を試薬容器の外周端よりも内周側に配置したことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項6】
前記検査カートリッジに被検査試料中の物質を捕捉または結合する結合部を形成し、この結合部に、結合フィルタを保持するフィルタホルダが着脱自在に設けられており、このフィルタホルダは、結合フィルタの挿入方向が前記保持ディスクの半径方向から傾いた方向になるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項7】
前記フィルタホルダの上面が、前記試薬カートリッジの基板上面と実質的に同じ面となるようにフィルタホルダを前記反応カートリッジに保持したことを特徴とする請求項6に記載の化学分析装置。
【請求項8】
試料を保持する試料保持容器と、前記反応容器で反応した反応液からこの試料に含まれる少なくとも一成分を検出する検出容器と、この検出容器から排出された溶液を回収する回収容器とを、前記検査カートリッジに設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の化学分析装置。
【請求項9】
前記検出容器を外周側の第1の部分と内周側の第2の部分に区画する仕切り壁を設け、反応液の液位がこの仕切り壁に位置するように検出容器内に仕切り壁を配置したことを特徴とする請求項8に記載の化学分析装置。
【請求項10】
前記検出容器にこの検出容器の外周側端から一旦内周側に延びた後で外周側に延びる折り返し流路を接続し、この折り返し流路の最内周部よりも少なくとも一部が外周側に位置する圧縮空気容器を前記検出容器に接続したことを特徴とする請求項8に記載の化学分析装置。
【請求項11】
前記反応容器に圧縮空気容器を接続し、前記回転可能な保持ディスクを回転させてこの圧縮空気容器内に圧縮空気を発生させ、前記回転可能な保持ディスクの回転数を減速させて圧縮空気を膨張させ、前記反応容器内の液を移動させることを特徴とする請求項8に記載の化学分析装置。
【請求項1】
回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器が形成された試薬カートリッジと、この試薬カートリッジに接続され反応容器が形成された反応カートリッジとを有し、前記試薬容器および反応容器は、基板とこの基板表面に形成した凹部を覆うカバーとから構成されており、複数の前記試薬容器と前記反応容器とを接続する流路を試薬カートリッジおよび反応カートリッジに形成し、この流路は試薬カートリッジと反応カートリッジとの接続部において基板の内部に形成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
回転可能な保持ディスクと、この保持ディスクの円周上に並んで配置された複数の検査カートリッジとを備える化学分析装置において、前記複数の検査カートリッジの各々は、試薬を収納可能な複数の試薬容器と、この試薬容器の外周側に液を移送するための流路と、この流路に接続され前記試薬容器の外周側に配置された反応容器とを備えたことを特徴とする化学分析装置
【請求項3】
前記試薬容器に接続する前記流路は、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、前記内周側に延びる部分に流路断面積を拡大した流路拡大部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項4】
前記試薬容器に接続する前記流路は、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、この折り返し流路は、外周側に延びる部分に絞り部を有することを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項5】
試薬容器に接続する前記流路は、試薬容器の外周部で試薬容器と接続され、一旦内周側に延びた後、外周側に延びる折り返し流路であり、この流路あるいは試薬容器から分岐した流路の端部に、空気流路とこの空気流路に接続する退避容器とを設け、この退避容器を試薬容器の外周端よりも内周側に配置したことを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項6】
前記検査カートリッジに被検査試料中の物質を捕捉または結合する結合部を形成し、この結合部に、結合フィルタを保持するフィルタホルダが着脱自在に設けられており、このフィルタホルダは、結合フィルタの挿入方向が前記保持ディスクの半径方向から傾いた方向になるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の化学分析装置。
【請求項7】
前記フィルタホルダの上面が、前記試薬カートリッジの基板上面と実質的に同じ面となるようにフィルタホルダを前記反応カートリッジに保持したことを特徴とする請求項6に記載の化学分析装置。
【請求項8】
試料を保持する試料保持容器と、前記反応容器で反応した反応液からこの試料に含まれる少なくとも一成分を検出する検出容器と、この検出容器から排出された溶液を回収する回収容器とを、前記検査カートリッジに設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の化学分析装置。
【請求項9】
前記検出容器を外周側の第1の部分と内周側の第2の部分に区画する仕切り壁を設け、反応液の液位がこの仕切り壁に位置するように検出容器内に仕切り壁を配置したことを特徴とする請求項8に記載の化学分析装置。
【請求項10】
前記検出容器にこの検出容器の外周側端から一旦内周側に延びた後で外周側に延びる折り返し流路を接続し、この折り返し流路の最内周部よりも少なくとも一部が外周側に位置する圧縮空気容器を前記検出容器に接続したことを特徴とする請求項8に記載の化学分析装置。
【請求項11】
前記反応容器に圧縮空気容器を接続し、前記回転可能な保持ディスクを回転させてこの圧縮空気容器内に圧縮空気を発生させ、前記回転可能な保持ディスクの回転数を減速させて圧縮空気を膨張させ、前記反応容器内の液を移動させることを特徴とする請求項8に記載の化学分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−33350(P2007−33350A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219861(P2005−219861)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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