化学発光計測装置
【課題】効率よく溶液内の発光を受光面に誘導する発光計測系と、暗電流のばらつきを防止する迷光遮断系を具備した高感度な発光計測方法を提供する。
【解決手段】発光計測対象の試料を収めた容器をホルダに設置した後に、光を検出する光検出器に対向して設けられた遮光板を光検出器に対向する位置から移動させる。この遮光板の移動後には、光検出器の受光面を、遮光板の移動前における遮光板の光検出器に対する対向面の位置と同じ位置か、遮光板の移動前における対向面の位置よりも容器に近い位置に、容器と対向させて配置する。そして、光検出器の受光面の配置後に、光検出器による試料についての発光計測を行う。
【解決手段】発光計測対象の試料を収めた容器をホルダに設置した後に、光を検出する光検出器に対向して設けられた遮光板を光検出器に対向する位置から移動させる。この遮光板の移動後には、光検出器の受光面を、遮光板の移動前における遮光板の光検出器に対する対向面の位置と同じ位置か、遮光板の移動前における対向面の位置よりも容器に近い位置に、容器と対向させて配置する。そして、光検出器の受光面の配置後に、光検出器による試料についての発光計測を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料に含まれる物質の化学発光や生物発光を高い感度と高い精度で検出するための発光計測装置に関する。また、微生物中のATPを発光検出し、汚染度を管理する微生物計数機能にも関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造プラント等における環境管理のための微生物モニタリングでは、空中浮遊菌、落下菌、付着菌を計数する。測定方法は、クリーンルームの生物汚染管理の国際標準化機構ISO14698-1で定められており、該手法により測定された清浄度は、グレードで分類される。空中浮遊菌の測定方法は、浮遊細菌の自然落下や一定量の空気を吸引する空中浮遊菌サンプラ(特許文献1参照)を利用したものが一般的に用いられている。これらの方法では、普通寒天平板培地上に一定時間内に菌を補集し、培養後発生したコロニー数をもって表わすものである。上記普通寒天培地を恒温機中にて2〜3日間培養し、発生したコロニー数を目視で数える。そして、各培地のコロニー数を平均して空中浮遊菌数とする。なお、クリーンルームにおいて高い清浄度が要求される無菌医薬品の製造施設や細胞を生産する細胞培養施設(CPC)では、上述したグレード分類において、グレードAやグレードBを常時保ち管理する必要がある。これは、空中の微粒子数で、≦3,530個/m3、菌数で、≦10 CFU(colony forming unit)/m3に値する。
【0003】
一方、食品、河川、下水処理物等の汚染維持管理では、微生物中に含まれるATP(アデノシン3リン酸)に、発光試薬であるルシフェラーゼ及びルシフェリンを添加して、その生物発光を測定する方法がある。得られた発光強度を菌数に換算する(特許文献2、非特許文献3参照)ことで、汚染度を管理する。非特許文献1(論文)の図6によると、大腸菌の定量下限は約100CFU/mL(試行回数N=10における再現性10.2%)である。一方、非特許文献1の図6に示された試薬キットの取扱説明書の図2によると大腸菌の定量下限は約200CFU/mL、また発光測定に供される試料溶液は約0.1mLであるから、この方法における大腸菌の定量下限は約10ないし20CFUと考えられる。
【0004】
また、ATP発光測定は、空中浮遊菌の計測にも応用できる。即ち、空中浮遊菌サンプラでシャーレ内に保持された寒天培地に菌や塵を回収し、その後、溶液展開し、ATP発光により、回収したサンプル中のATPから空中浮遊菌数を換算して、生きている菌、生菌数をカウントする。
【0005】
ATP発光測定はあるメーカの試薬キットを使用して行うが、その測定手順を簡単に説明すると次のようになる。
(A)サンプル溶液チューブにATP消去液を分注し、生菌以外の死菌やATPを消去する。
(B)サンプル溶液チューブにATP抽出液を分注し、生菌中のATPを抽出する。
(C)サンプル溶液チューブに発光試薬を分注する。このときの分注量は、試験管内の混合液の量と同じもしくはそれ以下である。
(D)発光試薬と混合液の入ったチューブを、発光量測定装置の暗箱に移動させ、その発光量を測定する。
【0006】
このようなATP発光測定において、ATP発光を高い感度でかつ高い精度で測定するためには、高感度な検出器を用いること及び検出器と発光反応場との光学配置による高い集光を実現することが重要である。さらに、装置外や発光物質以外からの光、いわゆる迷光が、装置内へ侵入すると測光精度が低下するので、迷光の侵入を極力抑止させる遮光機構を実現することが重要である。
【0007】
まず、高感度検出器に関しては、従来から、光電子増倍管が、ATP測定用のルミノメータやATP発光を利用したルミノメータを具備した微生物計数装置の光検出器として用いられている。さらなる高感度仕様の場合には、光電子増倍管の信号をデジタル処理する単一光子計数法(フォトンカウンティング法)が採用される。
【0008】
次に、光学配置に関しては、光の強度は発光点からの距離の2乗で減衰するため、発光物質を含む試料容器を受光面に近づけるのが良いとされている。また、発光点からの光は球状に発散するため、受光面へ効率よく回収するための光学配置が重要となる。なお、光の回収効率は立体角でしばしば定義されるが、それによれば、受光面を容器に近づけること、発光エリアに対して大きな受光面を用意することが高感度化を実現する上で重要である。また、強制的に光を鏡面で反射させて、受光面に誘導するように容器ホルダを鏡面部材で取り囲むことも有効である。
【0009】
最後に、迷光対策(迷光の侵入防止)については、一般的に、光検出器と試料容器を遮光ボックスで覆い、即ち発光測定装置全体を遮光体で完全に覆うことによって迷光を遮蔽している。
【0010】
しかしながら、ATP発光を利用した微生物計数装置では、光検出器部以外に、分注・分取を行う溶液制御部が同一装置内部に存在するため、装置の遮光領域が広くなり、また材料に発光体を含む場合が生じてしまう。そのため、迷光の進入を遮断することが困難である。
【0011】
そこで、発光測定装置を局所的に遮光することが効果的であり、ルミノメータで実施されている例もある(特許文献3参照)。一般的には、光検出器の受光面手前に開閉自在なシャッターユニットを設置して遮光対策をする(以下、本明細書中では、「二重遮光型」と呼ぶ)。発光測定を行わないときに、光が発光検出手段に侵入することを受光面の直前で防止する。したがって、受光素子は迷光を浴びることが無く、劣化や、迷光が引き起こす光の蓄積による暗電流のばらつきを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−153259号公報
【特許文献2】特開2000−314738号公報
【特許文献3】特開平7−83831号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nippon Nogeikagaku Kaishi Vol. 78, No. 7, pp.630-635, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の二重遮光型の構造では、受光面先端に遮光機構を設置する場合、受光面の前方に開閉自在なシャッターユニットが設けられる。このシャッターユニットは、実質的にサンプル容器と受光面の距離を遠ざける障害物となり、発光点からの距離を遠ざけてしまう。これが感度低下の原因となり得るという問題点がある。
【0015】
また、上記の従来法では、無菌医薬品製造区域やCPCで要求される1細菌レベルの菌中に含まれるATP発光を検出する感度や測定精度としては十分ではなく、細菌を増やすための培養の前処理工程が作業に含まれるのが一般的であった。そのため、作業が煩雑となり、清浄度の検査結果が出る一連の工程に半日程度以上の時間を費やしてしまうという問題点もある。
【0016】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高感度かつ高精度、並びに測定作業が簡単な発光計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の発光計測方法によれば、発光計測対象の試料を収めた容器をホルダに設置し、当該容器の設置後に、光を検出する光検出器に対向して設けられた遮光板を光検出器に対向する位置から移動させ、遮光板の移動後に、光検出器の受光面を、遮光板の移動前における遮光板の光検出器に対する対向面の位置と同じ位置か、遮光板の移動前における対向面の位置よりも容器に近い位置に、容器と対向させて配置し、光検出器の受光面の配置後に、光検出器による試料についての発光計測を行う。
【0018】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2重遮光型の特に第2の遮光ボックスにより発光計測時外は迷光による蓄光を防ぐことで測定精度に依存する背景信号のばらつきを抑え、計測時は光検出器とサンプル容器底面の近接効果により、極低濃度のATPを定量的に計測することが可能となり、例えば、1細菌中のATP発光の微弱光を高感度かつ高精度に計測し、微生物を1個単位でカウントできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】第1の実施形態による化学発光計測装置の外観構成を示す図である。
【図1B】第1の実施形態による化学発光計測装置の概略構成を示す図である。
【図2A】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(1)である。
【図2B】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(2)である。
【図2C】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(3)である。
【図2D】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(4)である。
【図3A】第1の実施形態による化学発光計測装置で使用するサンプル容器ホルダの構造(1)を示す図である。
【図3B】第1の実施形態による化学発光計測装置で使用するサンプル容器ホルダの構造(2)を示す図である。
【図3C】第1の実施形態による化学発光計測装置で使用するサンプル容器ホルダの構造(3)を示す図である。
【図4】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の概略構成を示す図である。
【図5A】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の動作原理を示す図(1)である。
【図5B】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の動作原理を示す図(2)である。
【図5C】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の動作原理を示す図(3)である。
【図6】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置を用いてATP発光の計測手順を説明するためのフローチャートである。
【図7A】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置を用いて得られた経過時間に対するATP発光曲線を示す図である。
【図7B】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置を用いて得られたATP濃度と発光強度の関係を示すグラフである。
【図8A】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置の外観を示す図である。
【図8B】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置において遮光ステージを装置外部へ引き出した状態を示す図である。
【図9】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置の概略構成を示す図である。
【図10】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置を用いて生菌中のATP量を測定する手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置の動作原理において遮光アタッチメントを用いて光検出機の受光面を遮光している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る化学発光計測装置の概略構成を示す図である。図1Aは、発光計測装置100とそれを制御する制御装置3から構成されるシステムの外観図である。発光計測装置100は、第1の遮光BOX1とサンプル容器をセットする際に開閉する開閉扉2を備えている。その内部の装置構成は、図1Bに示すとおりである。なお、図1Bは、説明を容易にするため、分解図の形態で図示したものである。
【0023】
サンプル容器4は、サンプル容器ホルダ5にセットされる。サンプル容器ホルダ5は、第2の遮光BOX6の天板7上の貫通孔8部に設置される。また、サンプル容器ホルダ5は、それを天板7に載せるだけで位置決めできるようになっている。例えば、定位置に設置できるような枠が天板7に取付けられるようにしてもよく、または、サンプル容器ホルダ5の底部が収まるような四角溝が天板7に彫ってあり、そこに容器ホルダ5が嵌るようになっていてもよい。
【0024】
図1Bに示されるように、サンプル容器ホルダ5は、径の異なる円柱の2段重ね構造で、かつ、サンプル容器ホルダ5の上部と下部が貫通する構造を有している。サンプル容器ホルダ5の構造については、他の例も挙げ、後に詳しく説明する。サンプル容器4は、上部の径の小さい円柱の開口部から挿入し、その固定は、容器上部の傘構造4aを利用する。サンプル容器ホルダ5にぶら下がった状態でマウントされる。傘構造を持たないサンプル容器4を使用する場合については、サンプル容器4に取付けられる専用のストッパ等(図示せず)を用意すればよい。
【0025】
第2の遮光BOX6の天板7は、内部に板状部材9が挿入できる構造になっており、挿入された板状部材9は、第1のアクチュエータ10を使用して、天板内をy軸方向に移動できる。板状部材9の移動により、貫通孔8は開閉可能な窓となる。
【0026】
第2の遮光BOX6内には、光検出器13が格納されている。光検出器13は、第2のアクチュエータ12により、z軸方向に移動可能である。サンプル容器4、サンプル容器ホルダ5、貫通孔8の中心、光検出器13の入射窓16の中心は、z軸方向の同一軸上にあるようにアライメントされている。なお、このアライメントは装置組立時に実行される。また、第1のアクチュエータ10及び第2のアクチュエータ12は、例えば、電力供給もしくは、空気供給で制御するものを使用することができる。
【0027】
光検出器13は、一般的には光電子増倍管(Photomultiplier Tube: PMT)を使用するのが感度の面で好適である。しかし、PMTほどの感度は必要ではなく、装置コストの低下を重視する場合には、ホトダイオード等の半導体素子でも良い。ただし、本明細書では、PMTを使用した系のみについて記載する。PMT(光検出器13)において入射窓16付近以外の部分は導電性シールドでカバーされており、本発明においてはこのシールドを発光計測装置に接地して光検出器13の帯電を防止している。
【0028】
図2は、図1で説明した発光計測装置100の動作原理を説明する図である。
図2Aは、開閉扉2を開けて、発光物質サンプル14を含むサンプル容器4をサンプル容器ホルダ5に挿入し、その後、開閉扉を閉めて、測定を開始する直前の様子を示している。サンプル容器4の設置工程では、貫通孔8は板状部材9で閉じられており、第2の遮光BOX6内部は第1の遮光BOX1の扉開時に侵入する迷光から完全に遮断される。
【0029】
制御装置3から、測定開始の指示を与えると、図2Bに示すように、板状部材9がy軸方向に移動する。これにより、サンプル容器4の底部が光検出器13の光電面15、入射窓16と対向する位置関係となる。
【0030】
次に、第2のアクチュエータ12が駆動し、光検出器13は容器底部に近づく(図2C)。光検出器13の先端に位置する入射窓16、光電面15の一部は、天板7の貫通孔8内へ挿入され、板状部材9よりもz軸方向の距離において、サンプル容器4の底部と接近する。
【0031】
図2Cの状態において、光検出器13に高電圧(High Voltage: HV)が印加され、光測定が開始される。
【0032】
もちろん、第2の遮光BOX6により第1の遮光BOX1外からの迷光を常に遮断しているので、HVの印加は、サンプル容器4をサンプル容器ホルダ5に設置する以前に行っても良い。ただし、装置の非常事態、例えば、板状部材9の駆動系が故障してしまった等、に備えて第1の遮光BOX1の開閉扉2が開状態の時には、HVをOFFにしておく方が好ましい。
【0033】
図2Dは、図2A乃至Cで使用したサンプル容器4よりも容量が小さく、z軸方向に短いタイプを使用した場合の1例である。光検出器13は、第2のアクチュエータ12で任意に位置制御可能であり、さらに、z軸方向において板状部材9よりも上方へ移動できるため、サンプル容器4サイズの変更にかかわらず、発光点からの距離、ここでは、サンプル容器4の底部と光電面15の距離を一定にできる。
【0034】
なお、サンプル容器4とサンプル容器ホルダ5を移動させて、光検出器13に近接させる方法を用いても良い。しかしながら、測定サンプルが一つでない場合、即ち、サンプル容器4が複数あり、順次自動計測を実施するような場合には、サンプル容器4ごとにアクチュエータを用意し、光検出器13との距離を制御する必要があり、装置が大掛かりになってしまう。このため、上述の光検出器13を移動させる形態の方が好適である。また、極微量のATPを対象とする生物化学発光のごとく微弱な発光測定を行う際は、サンプル容器を容器ホルダから取り出してそのまま同じ容器ホルダに戻す操作を行うだけで、計測結果が大きな影響を受け、誤差の原因となる場合がある事実が見出された。この原因は詳細には解明されていないが、サンプル容器の帯電状態の僅かな変化などが影響している可能性が考えられる。いずれにしろサンプル容器やそのホルダを移動させる方法は上記の誤差の問題が生じるリスクがある。一方、上述の光検出器を移動させる方法のように、サンプル容器4は静置して帯電状態の変化を防止し、帯電防止した光検出器13を移動させる形態においては上記のリスクを回避できる、という効果がある。
【0035】
サンプル容器4と光検出器13の距離の制御は、サンプル容器4の種類ごとに、予め、第2のアクチュエータ12の移動距離パラメータを制御装置3内の記憶媒体に保存しておき、必要なときに読み出すことで実現できる。サンプル容器4の底部と光検出器13の入射窓16とは、接触してはいけない。高電圧が光検出13の光電面に印加しており、入射窓16は少なからずとも帯電しているからである。また、サンプル容器4は、プラスチック製品である場合が多く。静電気を帯びているので、接近させただけでも放電することがある。サンプル容器4と入射窓16との距離は、数100μmから数mm程度に設定するのが望ましい。
【0036】
サンプル容器ホルダ5は、サンプル容器4内の発光を効率よく入射窓16に誘導することで、感度の向上が期待できる。入射窓16方向と異なる方向へ散乱した光を回収するために、しばしば、鏡面反射が利用される。容器ホルダに金属材料を用いて加工するか、もしくは、図3A乃至Cのように、サンプル容器ホルダ5の内面に金属膜17を形成した部材を使用するのが良い。成型可能な樹脂材料に金属膜をコートするのがコスト面で有利である。金属材料には、80%以上の反射効率が安定に得られる銀やアルミニウムを用いるのが良い。
【0037】
図3は、代表的な3種類の鏡面反射用金属膜17を有するサンプル容器ホルダ5である。円柱形状のサンプル容器ホルダ68は、サンプル容器4のサイズに対して、光検出器13が最も効果的にアプローチできる形態であるが反射光の光検出器13の入射窓16への回収効率は低い。18はテーパ形状のサンプル容器ホルダであり、19は半球形状のサンプル容器ホルダである。これらにより、効率よく、発光点から散乱した光を光検出器13の入射窓16へ誘導できる。
【0038】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態による化学発光計測装置の概略構成を示す図である。本実施形態の化学発光計測装置は、第1の実施形態の構成に加えて、溶液分注機を備えるものである(分注機付発光計測装置)。
【0039】
図4において、サンプル容器4は、サンプル容器ホルダ5にセットされる。サンプル容器ホルダ5は、第2の遮光BOX6の天板7上の貫通孔8部に設置される。サンプル容器ホルダ5の位置合わせについては、第1の実施形態と同様である。
【0040】
第2の遮光BOX6の天板7は、内部に板状部材9が挿入できる構造になっている。挿入された板状部材9は、第1のアクチュエータ10によって天板内をy軸方向に移動可能になっている。そして、板状部材9の移動で、貫通孔8は開閉可能な光導入窓となる。
【0041】
第2の遮光BOX6内には、光検出器13が格納されている。光検出器13は、第2のアクチュエータ12により、z軸方向に移動可能である。
【0042】
分注機は、サンプル容器内へ液体を分注する際の液体出口となる分注ノズル20、送液ポンプ23、分注ノズルを結ぶ液体搬送配管22、分注ノズル20を固定し、かつ分注ノズル20と液体搬送管22との配管コネクタ21で構成されている。分注ノズル20は、第3のアクチュエータ24によりz軸方向で位置を制御できる。この第3のアクチュエータ24については、例えば、門枠型の板状部材が第1の遮光BOX6に取付けられて、その板に第3のアクチュエータ24を取り付ければよい。
【0043】
また、サンプル容器4、サンプル容器ホルダ5、貫通孔8、光検出器13、分注ノズル20の中心は、z軸方向の同一軸上に整列した形態が好適である。
【0044】
図5は、第2の実施形態による化学発光計測装置(図4:分注機付発光計測装置)の動作原理を説明する図である。図5には、分注ノズル20から、発光試薬、いわゆる、基質や酵素、さらに基質+酵素を添加することで、サンプル容器4中の発光物質を含んだサンプル25が発光する例が示されている。もちろん、サンプル容器4内に予め、発光試薬をストックしておき、分注機から、測定したいサンプルを供給する形態でも良い。微量サンプルを測定したい場合には、分注機からサンプルを供給する形態の方が好ましい。また、発光試薬自体にある程度の発光信号を持つ場合にも、分注機からサンプルを供給する形態の方が好ましい。
【0045】
図5Aは、制御装置3から与えられた測定開始の指示に応答して、板状部材9がy軸方向に移動し、第2のアクチュエータ12が駆動し、光検出器13がサンプル容器4の底部に近づいた状態を示している。さらに、分注ノズル20がサンプル容器4内に挿入された瞬間を示す図である。図5Bは、分注ノズル20から発光試薬が分注され、その分注液滴26が分注ノズル20から遊離する様子を、図5Cは、サンプル容器4内の発光物質を含んだサンプル25内に放出されて発光溶液27を形成した状態を、それぞれ示している。
【0046】
光検出器13へのHVの印加は、図5A乃至Cのうち、どのタイミングでも良い。ユーザ側の意向により、HV印加のタイミングを任意に制御装置3で設定できる。
【0047】
続いて、本実施形態の化学発光計測装置のATP量の検出感度と定量性を示す検量線の作成実験とその結果について説明する。ATPにルシフェラーゼ&ルシフェリン系発光試薬を添加して発光信号を得た。
【0048】
予め、ある高濃度のATP原液を純水やトリス溶液等のバッファで希釈し、1amolから100000amolのATP溶液をサンプル容器4に用意しておく。溶液溜めを有す分注機の送液ポンプ23には、発光試薬をストックしておく。また装置の初期化動作として、第2のアクチュエータ12を駆動し、光検出器13を貫通孔8から遠ざけるとともに、貫通孔8を板状部材9で閉じ、第2の遮光BOX6内部を遮光する(図2Aと同様の状態とする)。
【0049】
図6は、発光測定の測定手順(典型例)を説明するためのフローチャートである。まず、第1の遮光BOX1の開閉扉2を開き(S601)、ATP溶液をストックしたサンプル容器4を設置する(S602)。設置後、第1の遮光BOX1の開閉扉2を閉める(S603)。次に、光検出器13であるPMTにHVを印加する(S604)。第2の遮光BOX6の天板7に具備されている板状部材9が移動し(S605)、天板7の貫通孔8内へPMTが第2のアクチュエータ12により移動し、板状部材9よりもz軸方向で上方に位置するサンプル容器4へと接近する(S606)。光学系が移動した後、計測を開始する。
【0050】
分注機20から、発光試薬が分注される前から計測を開始し、サンプル容器4内の背景光測定を行う(S607)。背景光測定をある一定時間行った後、分注機から発光試薬を分注する(S608)。発光試薬とサンプル容器内のATPが反応し、容器内で発光反応が始まる。ATPの発光測定をある一定時間行った後(S609)、PMTのHVをOFFし(S610)、第2のアクチュエータ12で光検出器13の先端をz軸方向で板状部材9よりも下方へと移動する(S611)。PMT移動後、板状部材9が計測開始前の位置に移動し、貫通孔8は閉じられる(S612)。次に測定済みのサンプル容器4を取り出すために、第1の遮光BOX1の開閉扉2を開き(S613)、サンプル容器4を取り出す(S614)。次のサンプルを測定したい場合は、この工程で、新たに設置し、上記説明した測定フローを繰り返す。測定を終了する場合は、サンプル容器4を取り出した後、第1の遮光BOX1の開閉扉2を閉めて(S615)終了する。
【0051】
図6の工程において、第1の遮光BOX開(S601)、サンプル容器設置(S602)、第1の遮光BOX閉(S603)、サンプル容器取出し(S614)以外の工程は、自動化されており、ユーザが制御装置3上のスタートボタンを押すのみで、工程が順次に進むことが望ましい。各工程間の待ち時間は、ここでは表示していないが、制御装置3で設定できるパラメータとして任意に変更と設定が可能である。
【0052】
図7Aは、図5の装置を用い、図6の工程によって得られた経過時間に対する発光曲線44の典型例である。横軸は時間、縦軸は単位秒あたりのフォトン数(Count Per Second: CPS)を示している。発光試薬を分注する以前の背景光信号45を100秒間取得した後、100秒後に発光試薬を分注し、その後、250秒間、ATP発光信号46を取得した。発光試薬を分注した後、直ちに、数秒で信号強度にピーク値48を示すフラッシュ型(高感度型)発光試薬を使用する。
【0053】
図7Bは、図7Aのピーク値から背景光信号44の値の差分を数値化し、各濃度に対してプロットした検量線グラフ47の典型例である。検量線49が1amolの極低濃度から100000amolまで直線状、即ち定量的な強度変化が得られている。これは、本実施形態の化学発光計測装置が高感度でかつ定量性に優れていることが示された結果である。また、本実施形態では、背景光信号45がサンプル容器4の交換時に入り込む可能性のある迷光の影響を第2の遮光BOX6の板状部材9で回避できているばかりでなく、光検出器を容器に近接して測定することにより大きな立体角を実現している。よって、図7Bの検量線47は、極低濃度における微弱な発光信号を高感度に計測できた結果得られた理想的な検量線である。
【0054】
さらに、図7Bで作成した検量線グラフ47は、極微量な、例えば数個レベルの微生物数をカウントする上で重要である。後述の第3の実施形態に係る微生物計数機能を用いて、クリーンルーム内の空中浮遊菌数をモニタする実験系においては必要不可欠なデータである。
【0055】
一方で、汚染度の高い水質等で、高濃度のATP測定が要求される場合には、汚染度を評価する上で図7Bの検量線は使用できない。しかしながら、本実施形態の化学発光計測装置では、光検出器13とサンプル容器4底部との距離を任意に制御できるため、必要とされる濃度領域に応じて検量線を作成することが可能となる。具体的には、検出したいサンプルの発光強度が非常に高く、ダイナミックレンジの検出上限が足りない事態が生じたときに、光検出器13とサンプル容器4底部の距離間隔を広げて対応すれば良い。例えば、第2のアクチュエータ12が電動タイプの場合には、移動距離はモータに送るパルス数で決まるので、検出可能な感度領域に適した距離を予め実験で探しておいて、その時のパルス数を制御機の記憶媒体に残しておく。そして、必要に応じて、適したパルス数を選択し、容器との距離を即座に変更して対応する。一方、第2のアクチュエータ12がエアータイプの場合には、物理的なストッパで距離を制御する。つまり、実験から感度に応じてストッパの位置を予め決めておくことにより距離調整が可能となるものである。
【0056】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、生菌数をカウントするための微生物計数装機能付化学発光計測装置に関するものである。これは、生菌に含まれるATPのみを選択的に検出し、そのATP量を計測する装置である。菌種により、ATP含有量が予め分かっているため、第2の実施形態の図7Bの検量線をもとに菌数を算出することができる。例えば、大腸菌1個のATP含有量は、2amolから3amolである。
【0057】
図8A及びB、並びに図9は、第3の実施形態による微生物計数装機能付化学発光計測装置50と制御装置3で構成されるシステムの外観を示している。微生物計数機能付化学発光計測装置50は、制御装置3で自動制御される。制御装置3からの命令で、開閉窓51が開状態となり、装置内から、サンプル調整容器53と発光検出容器55をセットする遮光ステージ52が装置外へ移動する(図8A及びB)。ここで、サンプル調整容器ホルダ54、発光検出容器ホルダ69のそれぞれに専用の容器53及び55をセットする。
【0058】
図9を参照して、微生物計数機能付化学発光計測装置50の構成を詳細に説明する。化学発光計測装置50は3個の分注機と1個の分取・分注機を備え、分注機のうち2つは試薬をサンプル調整容器53に分注する手段であり、1つは発光試薬を発光検出容器55へ分注する手段である。分取・分注機は、サンプル調整容器53で調整が終了した溶液を分取し、該分取溶液を発光検出容器55内へ分注する手段である。本実施形態において、発光試薬以外に使用する分注試薬は、ATP消去液とATP抽出液である。分注ノズル20が、サンプル調整容器53内へアプローチできるように、z軸方向移動のための第3のアクチュエータ24群に加え、x軸方向へも移動できる第5のアクチュエータ57が付加されており、分注ノズル位置をx、z軸の2軸で制御できるようになっている。なお、第5のアクチュエータ57は、第1の実施形態における第2のアクチュエータ24と同様に、例えば、第1の遮光BOXの壁に取り付けられた門枠型の板状部材に固定されている。
【0059】
遮光ステージ52の内部には、第2のアクチュエータ12に取付けられている光検出器13が格納されている。遮光ステージ52は、第4のアクチュエータ58でy軸方向に移動可能である。遮光ステージ52の天板の発光検出容器ホルダ69が設置される部分は、貫通孔となっている。また、筒状の遮光アタッチメント56が取付けられている。遮光アタッチメント56の機能は、図11に示すように、PMTがz軸方向に移動し、光検出器13の先端を圧着シールすることで、遮光を可能とするものである。遮光アタッチメント56は、弾性材料を使用しているので、光検出器13のz軸方向への押し付けのみで迷光を遮断できる。弾性材料には、例えば、真空装置のリーク防止に用いるO-リングの材料である黒色のバイトンゴムが好適である。つまり、図8Bの状態では、遮光ステージ52の貫通孔がサンプル調整容器ホルダ54及び発光検出容器ホルダ69で塞がれていないため、光検出器13の受光面を保護する必要がある。そこで、図8Bの状態では、光検出器13の先端部を遮光アタッチメント56に押し当てた状態にしておくことにより、光検出部13の受光面を迷光から保護するようにしている。
【0060】
続いて、図10を参照して、図9を用いた微生物中生菌計数法の手順を説明する。まず、開閉窓51が開き(S1001)、遮光ステージが移動する(S1002)。ここで、採取した菌を含む菌懸濁液を収納したサンプル調整容器53と発光検出容器55を設置する(S1003)。設置後、遮光ステージを微生物計数装置50内部へ移動させる(S1004)。そして、開閉窓51が閉じる(S1005)。
【0061】
次に、サンプル調整容器53内に、生菌以外の外来ATP、死菌由来のATPを消去するためのATP消去液を分注する(S1006)。反応終了後、サンプル調整容器53内にATP抽出液を分注し(S1007)、遮光ステージ52を発光検出容器55から分注できる位置に移動する(S1008)。次に、発光試薬を発光検出容器55内へ分注する(S1009)。ただし、発光試薬分注のタイミングは、ATP消去液注入前後でも良い。
【0062】
発光検出容器55内へ分注する調整済みサンプル溶液のサンプル調整容器53内からの溶液分取は、計測をスタートする前に行う(S1010)。分取量は、数μlから数mlまで適用可能である必要があり、送液ポンプ23系には、シリンジとシリンジポンプの組み合わせを用いるのが好適である。なお、上述の工程において、容器の設置時には、迷光による光の蓄積を抑制するために、図11に示す状態となっているのが特徴である。
【0063】
さらに、光検出器13がz軸方向に移動し(S1011)、天板の貫通孔の内部に入り込み、光検出器13であるPMTにHVを印加する(S1012)。そして、発光試薬を分注した発光検出容器下部から背景光信号を測定した後(S1013)、分取した調整済みサンプル溶液を発光検出容器55内へ分注する(S1014)。調整済みサンプル溶液中のATPが発光試薬と反応し、光を発する。そのATP発光が測定される(S1015)。その後、PMTのHVがOFFとされ(S1016)、第2のアクチュエータ12で光検出器13の先端をz軸方向で遮光ステージ52の天板7よりも下方へ移動し、さらにy軸方向に移動させ、遮光アタッチメント56で光検出器13の先端を圧着する(S1017)。
【0064】
ここで得られたATP発光強度と第2の実施形態における図7Bの検量線から、菌数を算出し、データを出力することができる(S1018)。つまり、菌によって含まれるATP量が決まっているので菌数が算出できる。例えば、枯草菌は17amol/菌、黄色ブドウ球菌は1.52amol/菌、大腸菌は3amol/菌である。
【0065】
なお本実施形態では、ATPの生物化学発光反応を利用した生菌数のカウントのための微生物計数機能付科学発光計測装置を示したが、全自動でサンプル調製を行う自動試料調製機構と高感度な化学発光検出機構とを具備した自動化装置の適用範囲は微生物計数機能に限定されない。本実施形態の変形例として、例えば試料として濃度未知の抗原を含む試料溶液を用い、発光試薬として大過剰のルシフェリンやATPを含む発光試薬を用い、さらにサンプル調製機構を用いて、試料抗原に対し例えばいわゆるサンドイッチイムノアッセイ方式の抗原抗体反応を行うことにより、抗原量に比例する量のルシフェラーゼ標識産物を含有する反応液を生成し、この反応液を分取・分注機構により発光試薬を収納した発光検出容器55に分注して、生じる発光量を自動計測する系を実現することも可能である。この変形例における発光量は反応液中のルシフェラーゼの量、即ち抗原の量に比例する。従って、濃度既知の標準抗原試料の発光量との比較により、抗原量の測定が可能な、高感度な免疫測定装置が実現できる。また核酸のハイブリダイゼーションを選択的結合原理として用い、ルシフェラーゼを標識として用いる、DNAやRNAなどの高感度検出、定量装置などに適用することも可能である。
【0066】
<実施形態のまとめ>
第1実施形態は、サンプル容器をサンプル容器ホルダに設置、または取出す際に使用する開閉扉を有する第1の遮光BOXと、第1の遮光BOX内部に、天板の一部がシャッターユニットになっており、その天板が第1の遮光BOXを覗くように開閉する機構が設けられ、その内部に光検出器が納められている第2の遮光BOXで構成された2重遮光型の発光計測装置を提供している。これにより、迷光を完全に遮断して高感度で高精度に発光計測を実行することができる。
【0067】
より具体的な遮光の構造に関しては、第2の遮光BOXの天板が、開閉用の貫通孔を少なくとも1つ有し、該貫通孔上にサンプル容器を設置する容器ホルダが設置されている構成を基本とし、上記シャッターが該貫通孔を開閉するように機能する。底板に電動アクチュエータを介して光検出器が設置されており、第2の遮光BOXの天板のシャッターが開くことにより、サンプル容器ホルダに設置されたサンプル容器の底部と対向して第2の遮光BOX内の光検出器の受光面が位置するようになっている。
【0068】
また、第1の遮光BOXを開き、発光物質を含む容器を設置する際、第2の遮光BOXの天板のシャッターは閉めておく。これにより、暗電流値のばらつき原因となる光検出器への迷光の侵入を遮断する。そして、発光物質を含む容器を設置した後に、第1の遮光BOXを閉める。測定時には、第2の遮光BOXの天板に設けられたシャッターが開き、電動アクチュエータにより、光検出器の受光面が貫通孔に挿入される。電動アクチュエータの制御により、サンプル容器の底部と光検出の受光面の距離を任意に制御できる。光検出の受光面は、2重遮光用のシャッター位置よりも上部に配置できるので、サンプル容器底部との近接化が実現される。この状態で、発光計測を行うため、光を効率よく受光面に集められ、いわゆる大きな立体角を形成でき、高い感度、及び高い精度で検出できる。
【0069】
第2の実施形態は、上記第1の実施形態の構成に加えて、サンプル容器内に液体を分注する手段(ノズル、送液ポンプ、液体搬送配管等)を備えている。
【0070】
さらに、第3の実施形態は、微生物計測機能を有する化学発光計測装置を提供する。この微生物計測機能は、上述した2重遮光型の化学発光検出装置の第1の遮光BOX内部に、微生物中の生菌に由来するATP量を計測するために必要な反応を行うための処理溶液を分注/分取するためのノズル群とノズルにつながる溶液配管、さらに、処理溶液をストックしておく溶液保持容器と、さらに、溶液をノズル先端から分取/分注するための手段であるポンプによって実現される。なお、第2の遮光BOX上の天板の貫通孔位置には、発光計測用容器の容器ホルダが設置されており、それ以外の場所に容器が設置できる容器ホルダが少なくとも1つ設置されている。ここでは、発光計測用容器以外の容器はサンプルの調整に使用するため、サンプル調整容器ということとする。
【0071】
試料調製容器中の菌懸濁液に、ノズルからATP消去液を分注し、生菌以外の死菌や浮遊ATPを消去する。次に、ATP抽出液を分注し、生菌に含まれている生菌中ATPを抽出する。これらのプロセス中では、光検出器は、第2の遮光BOXで遮光されている。次に、発光計測用容器内に発光試薬を分注し、最後に処理済菌懸濁液を分取し、発光試薬内に分注し混合する。混合と同時に、または、混合直前には、光検出器の受光面は第2の遮光BOXの天板(貫通孔を備える)よりも上部に移動しており、発光計測用容器に近接して測定を開始する。分注時と同時もしくはそれ以前の背景光データを取得できるため、いわゆるフラッシュ型発光試薬を用いる場合、反応開始直後の最も高い発光時の信号を取得することができる。
【0072】
なお、第3の実施形態の構成を第1又は第2の実施形態に追加することも可能である。たとえば、遮光アタッチメント56(図11参照)を第1又は第2の実施形態の構成に追加してもよい。これにより、より遮光性が担保される。
【符号の説明】
【0073】
1…第1の遮光BOX、2…開閉扉、3…制御装置、4…サンプル容器、5…サンプル容器ホルダ、6…第2の遮光BOX、7…天板、8…貫通孔、9…板状部材、10…第1のアクチュエータ、12…第2のアクチュエータ、13…光検出器、14…発光物質サンプル、15…光電面、16…入射窓、17…金属膜、18…テーパ形状のサンプル容器ホルダ、19…半球形状のサンプル容器ホルダ、20…分注ノズル、21…配管コネクタ、22…液体搬送管、23…送液ポンプ、24…第3のアクチュエータ、25…発光物質を含んだサンプル、26…分注液滴、27…発光溶液、44・・・発光曲線、45・・・背景光信号、46・・・ATP発光信号、47・・・検量線グラフ、48・・・信号強度ピーク、49・・・検量線、52・・・遮光ステージ、53・・・サンプル調整容器、54・・・サンプル調整容器ホルダ、55・・・発光検出容器、56・・・遮光アタッチメント、57・・・第5のアクチュエータ、58・・・第4のアクチュエータ、68・・・円柱形状のサンプル容器ホルダ、69・・・発光検出容器ホルダ、50・・・微生物計数機能付化学発光装置、100・・・発光計測装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料に含まれる物質の化学発光や生物発光を高い感度と高い精度で検出するための発光計測装置に関する。また、微生物中のATPを発光検出し、汚染度を管理する微生物計数機能にも関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品製造プラント等における環境管理のための微生物モニタリングでは、空中浮遊菌、落下菌、付着菌を計数する。測定方法は、クリーンルームの生物汚染管理の国際標準化機構ISO14698-1で定められており、該手法により測定された清浄度は、グレードで分類される。空中浮遊菌の測定方法は、浮遊細菌の自然落下や一定量の空気を吸引する空中浮遊菌サンプラ(特許文献1参照)を利用したものが一般的に用いられている。これらの方法では、普通寒天平板培地上に一定時間内に菌を補集し、培養後発生したコロニー数をもって表わすものである。上記普通寒天培地を恒温機中にて2〜3日間培養し、発生したコロニー数を目視で数える。そして、各培地のコロニー数を平均して空中浮遊菌数とする。なお、クリーンルームにおいて高い清浄度が要求される無菌医薬品の製造施設や細胞を生産する細胞培養施設(CPC)では、上述したグレード分類において、グレードAやグレードBを常時保ち管理する必要がある。これは、空中の微粒子数で、≦3,530個/m3、菌数で、≦10 CFU(colony forming unit)/m3に値する。
【0003】
一方、食品、河川、下水処理物等の汚染維持管理では、微生物中に含まれるATP(アデノシン3リン酸)に、発光試薬であるルシフェラーゼ及びルシフェリンを添加して、その生物発光を測定する方法がある。得られた発光強度を菌数に換算する(特許文献2、非特許文献3参照)ことで、汚染度を管理する。非特許文献1(論文)の図6によると、大腸菌の定量下限は約100CFU/mL(試行回数N=10における再現性10.2%)である。一方、非特許文献1の図6に示された試薬キットの取扱説明書の図2によると大腸菌の定量下限は約200CFU/mL、また発光測定に供される試料溶液は約0.1mLであるから、この方法における大腸菌の定量下限は約10ないし20CFUと考えられる。
【0004】
また、ATP発光測定は、空中浮遊菌の計測にも応用できる。即ち、空中浮遊菌サンプラでシャーレ内に保持された寒天培地に菌や塵を回収し、その後、溶液展開し、ATP発光により、回収したサンプル中のATPから空中浮遊菌数を換算して、生きている菌、生菌数をカウントする。
【0005】
ATP発光測定はあるメーカの試薬キットを使用して行うが、その測定手順を簡単に説明すると次のようになる。
(A)サンプル溶液チューブにATP消去液を分注し、生菌以外の死菌やATPを消去する。
(B)サンプル溶液チューブにATP抽出液を分注し、生菌中のATPを抽出する。
(C)サンプル溶液チューブに発光試薬を分注する。このときの分注量は、試験管内の混合液の量と同じもしくはそれ以下である。
(D)発光試薬と混合液の入ったチューブを、発光量測定装置の暗箱に移動させ、その発光量を測定する。
【0006】
このようなATP発光測定において、ATP発光を高い感度でかつ高い精度で測定するためには、高感度な検出器を用いること及び検出器と発光反応場との光学配置による高い集光を実現することが重要である。さらに、装置外や発光物質以外からの光、いわゆる迷光が、装置内へ侵入すると測光精度が低下するので、迷光の侵入を極力抑止させる遮光機構を実現することが重要である。
【0007】
まず、高感度検出器に関しては、従来から、光電子増倍管が、ATP測定用のルミノメータやATP発光を利用したルミノメータを具備した微生物計数装置の光検出器として用いられている。さらなる高感度仕様の場合には、光電子増倍管の信号をデジタル処理する単一光子計数法(フォトンカウンティング法)が採用される。
【0008】
次に、光学配置に関しては、光の強度は発光点からの距離の2乗で減衰するため、発光物質を含む試料容器を受光面に近づけるのが良いとされている。また、発光点からの光は球状に発散するため、受光面へ効率よく回収するための光学配置が重要となる。なお、光の回収効率は立体角でしばしば定義されるが、それによれば、受光面を容器に近づけること、発光エリアに対して大きな受光面を用意することが高感度化を実現する上で重要である。また、強制的に光を鏡面で反射させて、受光面に誘導するように容器ホルダを鏡面部材で取り囲むことも有効である。
【0009】
最後に、迷光対策(迷光の侵入防止)については、一般的に、光検出器と試料容器を遮光ボックスで覆い、即ち発光測定装置全体を遮光体で完全に覆うことによって迷光を遮蔽している。
【0010】
しかしながら、ATP発光を利用した微生物計数装置では、光検出器部以外に、分注・分取を行う溶液制御部が同一装置内部に存在するため、装置の遮光領域が広くなり、また材料に発光体を含む場合が生じてしまう。そのため、迷光の進入を遮断することが困難である。
【0011】
そこで、発光測定装置を局所的に遮光することが効果的であり、ルミノメータで実施されている例もある(特許文献3参照)。一般的には、光検出器の受光面手前に開閉自在なシャッターユニットを設置して遮光対策をする(以下、本明細書中では、「二重遮光型」と呼ぶ)。発光測定を行わないときに、光が発光検出手段に侵入することを受光面の直前で防止する。したがって、受光素子は迷光を浴びることが無く、劣化や、迷光が引き起こす光の蓄積による暗電流のばらつきを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−153259号公報
【特許文献2】特開2000−314738号公報
【特許文献3】特開平7−83831号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nippon Nogeikagaku Kaishi Vol. 78, No. 7, pp.630-635, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の二重遮光型の構造では、受光面先端に遮光機構を設置する場合、受光面の前方に開閉自在なシャッターユニットが設けられる。このシャッターユニットは、実質的にサンプル容器と受光面の距離を遠ざける障害物となり、発光点からの距離を遠ざけてしまう。これが感度低下の原因となり得るという問題点がある。
【0015】
また、上記の従来法では、無菌医薬品製造区域やCPCで要求される1細菌レベルの菌中に含まれるATP発光を検出する感度や測定精度としては十分ではなく、細菌を増やすための培養の前処理工程が作業に含まれるのが一般的であった。そのため、作業が煩雑となり、清浄度の検査結果が出る一連の工程に半日程度以上の時間を費やしてしまうという問題点もある。
【0016】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高感度かつ高精度、並びに測定作業が簡単な発光計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の発光計測方法によれば、発光計測対象の試料を収めた容器をホルダに設置し、当該容器の設置後に、光を検出する光検出器に対向して設けられた遮光板を光検出器に対向する位置から移動させ、遮光板の移動後に、光検出器の受光面を、遮光板の移動前における遮光板の光検出器に対する対向面の位置と同じ位置か、遮光板の移動前における対向面の位置よりも容器に近い位置に、容器と対向させて配置し、光検出器の受光面の配置後に、光検出器による試料についての発光計測を行う。
【0018】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2重遮光型の特に第2の遮光ボックスにより発光計測時外は迷光による蓄光を防ぐことで測定精度に依存する背景信号のばらつきを抑え、計測時は光検出器とサンプル容器底面の近接効果により、極低濃度のATPを定量的に計測することが可能となり、例えば、1細菌中のATP発光の微弱光を高感度かつ高精度に計測し、微生物を1個単位でカウントできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】第1の実施形態による化学発光計測装置の外観構成を示す図である。
【図1B】第1の実施形態による化学発光計測装置の概略構成を示す図である。
【図2A】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(1)である。
【図2B】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(2)である。
【図2C】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(3)である。
【図2D】第1の実施形態による化学発光計測装置の動作原理を示す図(4)である。
【図3A】第1の実施形態による化学発光計測装置で使用するサンプル容器ホルダの構造(1)を示す図である。
【図3B】第1の実施形態による化学発光計測装置で使用するサンプル容器ホルダの構造(2)を示す図である。
【図3C】第1の実施形態による化学発光計測装置で使用するサンプル容器ホルダの構造(3)を示す図である。
【図4】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の概略構成を示す図である。
【図5A】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の動作原理を示す図(1)である。
【図5B】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の動作原理を示す図(2)である。
【図5C】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置の動作原理を示す図(3)である。
【図6】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置を用いてATP発光の計測手順を説明するためのフローチャートである。
【図7A】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置を用いて得られた経過時間に対するATP発光曲線を示す図である。
【図7B】第2の実施形態による分注機付化学発光計測装置を用いて得られたATP濃度と発光強度の関係を示すグラフである。
【図8A】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置の外観を示す図である。
【図8B】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置において遮光ステージを装置外部へ引き出した状態を示す図である。
【図9】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置の概略構成を示す図である。
【図10】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置を用いて生菌中のATP量を測定する手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】第3の実施形態による微生物計数機能付化学発光装置の動作原理において遮光アタッチメントを用いて光検出機の受光面を遮光している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る化学発光計測装置の概略構成を示す図である。図1Aは、発光計測装置100とそれを制御する制御装置3から構成されるシステムの外観図である。発光計測装置100は、第1の遮光BOX1とサンプル容器をセットする際に開閉する開閉扉2を備えている。その内部の装置構成は、図1Bに示すとおりである。なお、図1Bは、説明を容易にするため、分解図の形態で図示したものである。
【0023】
サンプル容器4は、サンプル容器ホルダ5にセットされる。サンプル容器ホルダ5は、第2の遮光BOX6の天板7上の貫通孔8部に設置される。また、サンプル容器ホルダ5は、それを天板7に載せるだけで位置決めできるようになっている。例えば、定位置に設置できるような枠が天板7に取付けられるようにしてもよく、または、サンプル容器ホルダ5の底部が収まるような四角溝が天板7に彫ってあり、そこに容器ホルダ5が嵌るようになっていてもよい。
【0024】
図1Bに示されるように、サンプル容器ホルダ5は、径の異なる円柱の2段重ね構造で、かつ、サンプル容器ホルダ5の上部と下部が貫通する構造を有している。サンプル容器ホルダ5の構造については、他の例も挙げ、後に詳しく説明する。サンプル容器4は、上部の径の小さい円柱の開口部から挿入し、その固定は、容器上部の傘構造4aを利用する。サンプル容器ホルダ5にぶら下がった状態でマウントされる。傘構造を持たないサンプル容器4を使用する場合については、サンプル容器4に取付けられる専用のストッパ等(図示せず)を用意すればよい。
【0025】
第2の遮光BOX6の天板7は、内部に板状部材9が挿入できる構造になっており、挿入された板状部材9は、第1のアクチュエータ10を使用して、天板内をy軸方向に移動できる。板状部材9の移動により、貫通孔8は開閉可能な窓となる。
【0026】
第2の遮光BOX6内には、光検出器13が格納されている。光検出器13は、第2のアクチュエータ12により、z軸方向に移動可能である。サンプル容器4、サンプル容器ホルダ5、貫通孔8の中心、光検出器13の入射窓16の中心は、z軸方向の同一軸上にあるようにアライメントされている。なお、このアライメントは装置組立時に実行される。また、第1のアクチュエータ10及び第2のアクチュエータ12は、例えば、電力供給もしくは、空気供給で制御するものを使用することができる。
【0027】
光検出器13は、一般的には光電子増倍管(Photomultiplier Tube: PMT)を使用するのが感度の面で好適である。しかし、PMTほどの感度は必要ではなく、装置コストの低下を重視する場合には、ホトダイオード等の半導体素子でも良い。ただし、本明細書では、PMTを使用した系のみについて記載する。PMT(光検出器13)において入射窓16付近以外の部分は導電性シールドでカバーされており、本発明においてはこのシールドを発光計測装置に接地して光検出器13の帯電を防止している。
【0028】
図2は、図1で説明した発光計測装置100の動作原理を説明する図である。
図2Aは、開閉扉2を開けて、発光物質サンプル14を含むサンプル容器4をサンプル容器ホルダ5に挿入し、その後、開閉扉を閉めて、測定を開始する直前の様子を示している。サンプル容器4の設置工程では、貫通孔8は板状部材9で閉じられており、第2の遮光BOX6内部は第1の遮光BOX1の扉開時に侵入する迷光から完全に遮断される。
【0029】
制御装置3から、測定開始の指示を与えると、図2Bに示すように、板状部材9がy軸方向に移動する。これにより、サンプル容器4の底部が光検出器13の光電面15、入射窓16と対向する位置関係となる。
【0030】
次に、第2のアクチュエータ12が駆動し、光検出器13は容器底部に近づく(図2C)。光検出器13の先端に位置する入射窓16、光電面15の一部は、天板7の貫通孔8内へ挿入され、板状部材9よりもz軸方向の距離において、サンプル容器4の底部と接近する。
【0031】
図2Cの状態において、光検出器13に高電圧(High Voltage: HV)が印加され、光測定が開始される。
【0032】
もちろん、第2の遮光BOX6により第1の遮光BOX1外からの迷光を常に遮断しているので、HVの印加は、サンプル容器4をサンプル容器ホルダ5に設置する以前に行っても良い。ただし、装置の非常事態、例えば、板状部材9の駆動系が故障してしまった等、に備えて第1の遮光BOX1の開閉扉2が開状態の時には、HVをOFFにしておく方が好ましい。
【0033】
図2Dは、図2A乃至Cで使用したサンプル容器4よりも容量が小さく、z軸方向に短いタイプを使用した場合の1例である。光検出器13は、第2のアクチュエータ12で任意に位置制御可能であり、さらに、z軸方向において板状部材9よりも上方へ移動できるため、サンプル容器4サイズの変更にかかわらず、発光点からの距離、ここでは、サンプル容器4の底部と光電面15の距離を一定にできる。
【0034】
なお、サンプル容器4とサンプル容器ホルダ5を移動させて、光検出器13に近接させる方法を用いても良い。しかしながら、測定サンプルが一つでない場合、即ち、サンプル容器4が複数あり、順次自動計測を実施するような場合には、サンプル容器4ごとにアクチュエータを用意し、光検出器13との距離を制御する必要があり、装置が大掛かりになってしまう。このため、上述の光検出器13を移動させる形態の方が好適である。また、極微量のATPを対象とする生物化学発光のごとく微弱な発光測定を行う際は、サンプル容器を容器ホルダから取り出してそのまま同じ容器ホルダに戻す操作を行うだけで、計測結果が大きな影響を受け、誤差の原因となる場合がある事実が見出された。この原因は詳細には解明されていないが、サンプル容器の帯電状態の僅かな変化などが影響している可能性が考えられる。いずれにしろサンプル容器やそのホルダを移動させる方法は上記の誤差の問題が生じるリスクがある。一方、上述の光検出器を移動させる方法のように、サンプル容器4は静置して帯電状態の変化を防止し、帯電防止した光検出器13を移動させる形態においては上記のリスクを回避できる、という効果がある。
【0035】
サンプル容器4と光検出器13の距離の制御は、サンプル容器4の種類ごとに、予め、第2のアクチュエータ12の移動距離パラメータを制御装置3内の記憶媒体に保存しておき、必要なときに読み出すことで実現できる。サンプル容器4の底部と光検出器13の入射窓16とは、接触してはいけない。高電圧が光検出13の光電面に印加しており、入射窓16は少なからずとも帯電しているからである。また、サンプル容器4は、プラスチック製品である場合が多く。静電気を帯びているので、接近させただけでも放電することがある。サンプル容器4と入射窓16との距離は、数100μmから数mm程度に設定するのが望ましい。
【0036】
サンプル容器ホルダ5は、サンプル容器4内の発光を効率よく入射窓16に誘導することで、感度の向上が期待できる。入射窓16方向と異なる方向へ散乱した光を回収するために、しばしば、鏡面反射が利用される。容器ホルダに金属材料を用いて加工するか、もしくは、図3A乃至Cのように、サンプル容器ホルダ5の内面に金属膜17を形成した部材を使用するのが良い。成型可能な樹脂材料に金属膜をコートするのがコスト面で有利である。金属材料には、80%以上の反射効率が安定に得られる銀やアルミニウムを用いるのが良い。
【0037】
図3は、代表的な3種類の鏡面反射用金属膜17を有するサンプル容器ホルダ5である。円柱形状のサンプル容器ホルダ68は、サンプル容器4のサイズに対して、光検出器13が最も効果的にアプローチできる形態であるが反射光の光検出器13の入射窓16への回収効率は低い。18はテーパ形状のサンプル容器ホルダであり、19は半球形状のサンプル容器ホルダである。これらにより、効率よく、発光点から散乱した光を光検出器13の入射窓16へ誘導できる。
【0038】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態による化学発光計測装置の概略構成を示す図である。本実施形態の化学発光計測装置は、第1の実施形態の構成に加えて、溶液分注機を備えるものである(分注機付発光計測装置)。
【0039】
図4において、サンプル容器4は、サンプル容器ホルダ5にセットされる。サンプル容器ホルダ5は、第2の遮光BOX6の天板7上の貫通孔8部に設置される。サンプル容器ホルダ5の位置合わせについては、第1の実施形態と同様である。
【0040】
第2の遮光BOX6の天板7は、内部に板状部材9が挿入できる構造になっている。挿入された板状部材9は、第1のアクチュエータ10によって天板内をy軸方向に移動可能になっている。そして、板状部材9の移動で、貫通孔8は開閉可能な光導入窓となる。
【0041】
第2の遮光BOX6内には、光検出器13が格納されている。光検出器13は、第2のアクチュエータ12により、z軸方向に移動可能である。
【0042】
分注機は、サンプル容器内へ液体を分注する際の液体出口となる分注ノズル20、送液ポンプ23、分注ノズルを結ぶ液体搬送配管22、分注ノズル20を固定し、かつ分注ノズル20と液体搬送管22との配管コネクタ21で構成されている。分注ノズル20は、第3のアクチュエータ24によりz軸方向で位置を制御できる。この第3のアクチュエータ24については、例えば、門枠型の板状部材が第1の遮光BOX6に取付けられて、その板に第3のアクチュエータ24を取り付ければよい。
【0043】
また、サンプル容器4、サンプル容器ホルダ5、貫通孔8、光検出器13、分注ノズル20の中心は、z軸方向の同一軸上に整列した形態が好適である。
【0044】
図5は、第2の実施形態による化学発光計測装置(図4:分注機付発光計測装置)の動作原理を説明する図である。図5には、分注ノズル20から、発光試薬、いわゆる、基質や酵素、さらに基質+酵素を添加することで、サンプル容器4中の発光物質を含んだサンプル25が発光する例が示されている。もちろん、サンプル容器4内に予め、発光試薬をストックしておき、分注機から、測定したいサンプルを供給する形態でも良い。微量サンプルを測定したい場合には、分注機からサンプルを供給する形態の方が好ましい。また、発光試薬自体にある程度の発光信号を持つ場合にも、分注機からサンプルを供給する形態の方が好ましい。
【0045】
図5Aは、制御装置3から与えられた測定開始の指示に応答して、板状部材9がy軸方向に移動し、第2のアクチュエータ12が駆動し、光検出器13がサンプル容器4の底部に近づいた状態を示している。さらに、分注ノズル20がサンプル容器4内に挿入された瞬間を示す図である。図5Bは、分注ノズル20から発光試薬が分注され、その分注液滴26が分注ノズル20から遊離する様子を、図5Cは、サンプル容器4内の発光物質を含んだサンプル25内に放出されて発光溶液27を形成した状態を、それぞれ示している。
【0046】
光検出器13へのHVの印加は、図5A乃至Cのうち、どのタイミングでも良い。ユーザ側の意向により、HV印加のタイミングを任意に制御装置3で設定できる。
【0047】
続いて、本実施形態の化学発光計測装置のATP量の検出感度と定量性を示す検量線の作成実験とその結果について説明する。ATPにルシフェラーゼ&ルシフェリン系発光試薬を添加して発光信号を得た。
【0048】
予め、ある高濃度のATP原液を純水やトリス溶液等のバッファで希釈し、1amolから100000amolのATP溶液をサンプル容器4に用意しておく。溶液溜めを有す分注機の送液ポンプ23には、発光試薬をストックしておく。また装置の初期化動作として、第2のアクチュエータ12を駆動し、光検出器13を貫通孔8から遠ざけるとともに、貫通孔8を板状部材9で閉じ、第2の遮光BOX6内部を遮光する(図2Aと同様の状態とする)。
【0049】
図6は、発光測定の測定手順(典型例)を説明するためのフローチャートである。まず、第1の遮光BOX1の開閉扉2を開き(S601)、ATP溶液をストックしたサンプル容器4を設置する(S602)。設置後、第1の遮光BOX1の開閉扉2を閉める(S603)。次に、光検出器13であるPMTにHVを印加する(S604)。第2の遮光BOX6の天板7に具備されている板状部材9が移動し(S605)、天板7の貫通孔8内へPMTが第2のアクチュエータ12により移動し、板状部材9よりもz軸方向で上方に位置するサンプル容器4へと接近する(S606)。光学系が移動した後、計測を開始する。
【0050】
分注機20から、発光試薬が分注される前から計測を開始し、サンプル容器4内の背景光測定を行う(S607)。背景光測定をある一定時間行った後、分注機から発光試薬を分注する(S608)。発光試薬とサンプル容器内のATPが反応し、容器内で発光反応が始まる。ATPの発光測定をある一定時間行った後(S609)、PMTのHVをOFFし(S610)、第2のアクチュエータ12で光検出器13の先端をz軸方向で板状部材9よりも下方へと移動する(S611)。PMT移動後、板状部材9が計測開始前の位置に移動し、貫通孔8は閉じられる(S612)。次に測定済みのサンプル容器4を取り出すために、第1の遮光BOX1の開閉扉2を開き(S613)、サンプル容器4を取り出す(S614)。次のサンプルを測定したい場合は、この工程で、新たに設置し、上記説明した測定フローを繰り返す。測定を終了する場合は、サンプル容器4を取り出した後、第1の遮光BOX1の開閉扉2を閉めて(S615)終了する。
【0051】
図6の工程において、第1の遮光BOX開(S601)、サンプル容器設置(S602)、第1の遮光BOX閉(S603)、サンプル容器取出し(S614)以外の工程は、自動化されており、ユーザが制御装置3上のスタートボタンを押すのみで、工程が順次に進むことが望ましい。各工程間の待ち時間は、ここでは表示していないが、制御装置3で設定できるパラメータとして任意に変更と設定が可能である。
【0052】
図7Aは、図5の装置を用い、図6の工程によって得られた経過時間に対する発光曲線44の典型例である。横軸は時間、縦軸は単位秒あたりのフォトン数(Count Per Second: CPS)を示している。発光試薬を分注する以前の背景光信号45を100秒間取得した後、100秒後に発光試薬を分注し、その後、250秒間、ATP発光信号46を取得した。発光試薬を分注した後、直ちに、数秒で信号強度にピーク値48を示すフラッシュ型(高感度型)発光試薬を使用する。
【0053】
図7Bは、図7Aのピーク値から背景光信号44の値の差分を数値化し、各濃度に対してプロットした検量線グラフ47の典型例である。検量線49が1amolの極低濃度から100000amolまで直線状、即ち定量的な強度変化が得られている。これは、本実施形態の化学発光計測装置が高感度でかつ定量性に優れていることが示された結果である。また、本実施形態では、背景光信号45がサンプル容器4の交換時に入り込む可能性のある迷光の影響を第2の遮光BOX6の板状部材9で回避できているばかりでなく、光検出器を容器に近接して測定することにより大きな立体角を実現している。よって、図7Bの検量線47は、極低濃度における微弱な発光信号を高感度に計測できた結果得られた理想的な検量線である。
【0054】
さらに、図7Bで作成した検量線グラフ47は、極微量な、例えば数個レベルの微生物数をカウントする上で重要である。後述の第3の実施形態に係る微生物計数機能を用いて、クリーンルーム内の空中浮遊菌数をモニタする実験系においては必要不可欠なデータである。
【0055】
一方で、汚染度の高い水質等で、高濃度のATP測定が要求される場合には、汚染度を評価する上で図7Bの検量線は使用できない。しかしながら、本実施形態の化学発光計測装置では、光検出器13とサンプル容器4底部との距離を任意に制御できるため、必要とされる濃度領域に応じて検量線を作成することが可能となる。具体的には、検出したいサンプルの発光強度が非常に高く、ダイナミックレンジの検出上限が足りない事態が生じたときに、光検出器13とサンプル容器4底部の距離間隔を広げて対応すれば良い。例えば、第2のアクチュエータ12が電動タイプの場合には、移動距離はモータに送るパルス数で決まるので、検出可能な感度領域に適した距離を予め実験で探しておいて、その時のパルス数を制御機の記憶媒体に残しておく。そして、必要に応じて、適したパルス数を選択し、容器との距離を即座に変更して対応する。一方、第2のアクチュエータ12がエアータイプの場合には、物理的なストッパで距離を制御する。つまり、実験から感度に応じてストッパの位置を予め決めておくことにより距離調整が可能となるものである。
【0056】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、生菌数をカウントするための微生物計数装機能付化学発光計測装置に関するものである。これは、生菌に含まれるATPのみを選択的に検出し、そのATP量を計測する装置である。菌種により、ATP含有量が予め分かっているため、第2の実施形態の図7Bの検量線をもとに菌数を算出することができる。例えば、大腸菌1個のATP含有量は、2amolから3amolである。
【0057】
図8A及びB、並びに図9は、第3の実施形態による微生物計数装機能付化学発光計測装置50と制御装置3で構成されるシステムの外観を示している。微生物計数機能付化学発光計測装置50は、制御装置3で自動制御される。制御装置3からの命令で、開閉窓51が開状態となり、装置内から、サンプル調整容器53と発光検出容器55をセットする遮光ステージ52が装置外へ移動する(図8A及びB)。ここで、サンプル調整容器ホルダ54、発光検出容器ホルダ69のそれぞれに専用の容器53及び55をセットする。
【0058】
図9を参照して、微生物計数機能付化学発光計測装置50の構成を詳細に説明する。化学発光計測装置50は3個の分注機と1個の分取・分注機を備え、分注機のうち2つは試薬をサンプル調整容器53に分注する手段であり、1つは発光試薬を発光検出容器55へ分注する手段である。分取・分注機は、サンプル調整容器53で調整が終了した溶液を分取し、該分取溶液を発光検出容器55内へ分注する手段である。本実施形態において、発光試薬以外に使用する分注試薬は、ATP消去液とATP抽出液である。分注ノズル20が、サンプル調整容器53内へアプローチできるように、z軸方向移動のための第3のアクチュエータ24群に加え、x軸方向へも移動できる第5のアクチュエータ57が付加されており、分注ノズル位置をx、z軸の2軸で制御できるようになっている。なお、第5のアクチュエータ57は、第1の実施形態における第2のアクチュエータ24と同様に、例えば、第1の遮光BOXの壁に取り付けられた門枠型の板状部材に固定されている。
【0059】
遮光ステージ52の内部には、第2のアクチュエータ12に取付けられている光検出器13が格納されている。遮光ステージ52は、第4のアクチュエータ58でy軸方向に移動可能である。遮光ステージ52の天板の発光検出容器ホルダ69が設置される部分は、貫通孔となっている。また、筒状の遮光アタッチメント56が取付けられている。遮光アタッチメント56の機能は、図11に示すように、PMTがz軸方向に移動し、光検出器13の先端を圧着シールすることで、遮光を可能とするものである。遮光アタッチメント56は、弾性材料を使用しているので、光検出器13のz軸方向への押し付けのみで迷光を遮断できる。弾性材料には、例えば、真空装置のリーク防止に用いるO-リングの材料である黒色のバイトンゴムが好適である。つまり、図8Bの状態では、遮光ステージ52の貫通孔がサンプル調整容器ホルダ54及び発光検出容器ホルダ69で塞がれていないため、光検出器13の受光面を保護する必要がある。そこで、図8Bの状態では、光検出器13の先端部を遮光アタッチメント56に押し当てた状態にしておくことにより、光検出部13の受光面を迷光から保護するようにしている。
【0060】
続いて、図10を参照して、図9を用いた微生物中生菌計数法の手順を説明する。まず、開閉窓51が開き(S1001)、遮光ステージが移動する(S1002)。ここで、採取した菌を含む菌懸濁液を収納したサンプル調整容器53と発光検出容器55を設置する(S1003)。設置後、遮光ステージを微生物計数装置50内部へ移動させる(S1004)。そして、開閉窓51が閉じる(S1005)。
【0061】
次に、サンプル調整容器53内に、生菌以外の外来ATP、死菌由来のATPを消去するためのATP消去液を分注する(S1006)。反応終了後、サンプル調整容器53内にATP抽出液を分注し(S1007)、遮光ステージ52を発光検出容器55から分注できる位置に移動する(S1008)。次に、発光試薬を発光検出容器55内へ分注する(S1009)。ただし、発光試薬分注のタイミングは、ATP消去液注入前後でも良い。
【0062】
発光検出容器55内へ分注する調整済みサンプル溶液のサンプル調整容器53内からの溶液分取は、計測をスタートする前に行う(S1010)。分取量は、数μlから数mlまで適用可能である必要があり、送液ポンプ23系には、シリンジとシリンジポンプの組み合わせを用いるのが好適である。なお、上述の工程において、容器の設置時には、迷光による光の蓄積を抑制するために、図11に示す状態となっているのが特徴である。
【0063】
さらに、光検出器13がz軸方向に移動し(S1011)、天板の貫通孔の内部に入り込み、光検出器13であるPMTにHVを印加する(S1012)。そして、発光試薬を分注した発光検出容器下部から背景光信号を測定した後(S1013)、分取した調整済みサンプル溶液を発光検出容器55内へ分注する(S1014)。調整済みサンプル溶液中のATPが発光試薬と反応し、光を発する。そのATP発光が測定される(S1015)。その後、PMTのHVがOFFとされ(S1016)、第2のアクチュエータ12で光検出器13の先端をz軸方向で遮光ステージ52の天板7よりも下方へ移動し、さらにy軸方向に移動させ、遮光アタッチメント56で光検出器13の先端を圧着する(S1017)。
【0064】
ここで得られたATP発光強度と第2の実施形態における図7Bの検量線から、菌数を算出し、データを出力することができる(S1018)。つまり、菌によって含まれるATP量が決まっているので菌数が算出できる。例えば、枯草菌は17amol/菌、黄色ブドウ球菌は1.52amol/菌、大腸菌は3amol/菌である。
【0065】
なお本実施形態では、ATPの生物化学発光反応を利用した生菌数のカウントのための微生物計数機能付科学発光計測装置を示したが、全自動でサンプル調製を行う自動試料調製機構と高感度な化学発光検出機構とを具備した自動化装置の適用範囲は微生物計数機能に限定されない。本実施形態の変形例として、例えば試料として濃度未知の抗原を含む試料溶液を用い、発光試薬として大過剰のルシフェリンやATPを含む発光試薬を用い、さらにサンプル調製機構を用いて、試料抗原に対し例えばいわゆるサンドイッチイムノアッセイ方式の抗原抗体反応を行うことにより、抗原量に比例する量のルシフェラーゼ標識産物を含有する反応液を生成し、この反応液を分取・分注機構により発光試薬を収納した発光検出容器55に分注して、生じる発光量を自動計測する系を実現することも可能である。この変形例における発光量は反応液中のルシフェラーゼの量、即ち抗原の量に比例する。従って、濃度既知の標準抗原試料の発光量との比較により、抗原量の測定が可能な、高感度な免疫測定装置が実現できる。また核酸のハイブリダイゼーションを選択的結合原理として用い、ルシフェラーゼを標識として用いる、DNAやRNAなどの高感度検出、定量装置などに適用することも可能である。
【0066】
<実施形態のまとめ>
第1実施形態は、サンプル容器をサンプル容器ホルダに設置、または取出す際に使用する開閉扉を有する第1の遮光BOXと、第1の遮光BOX内部に、天板の一部がシャッターユニットになっており、その天板が第1の遮光BOXを覗くように開閉する機構が設けられ、その内部に光検出器が納められている第2の遮光BOXで構成された2重遮光型の発光計測装置を提供している。これにより、迷光を完全に遮断して高感度で高精度に発光計測を実行することができる。
【0067】
より具体的な遮光の構造に関しては、第2の遮光BOXの天板が、開閉用の貫通孔を少なくとも1つ有し、該貫通孔上にサンプル容器を設置する容器ホルダが設置されている構成を基本とし、上記シャッターが該貫通孔を開閉するように機能する。底板に電動アクチュエータを介して光検出器が設置されており、第2の遮光BOXの天板のシャッターが開くことにより、サンプル容器ホルダに設置されたサンプル容器の底部と対向して第2の遮光BOX内の光検出器の受光面が位置するようになっている。
【0068】
また、第1の遮光BOXを開き、発光物質を含む容器を設置する際、第2の遮光BOXの天板のシャッターは閉めておく。これにより、暗電流値のばらつき原因となる光検出器への迷光の侵入を遮断する。そして、発光物質を含む容器を設置した後に、第1の遮光BOXを閉める。測定時には、第2の遮光BOXの天板に設けられたシャッターが開き、電動アクチュエータにより、光検出器の受光面が貫通孔に挿入される。電動アクチュエータの制御により、サンプル容器の底部と光検出の受光面の距離を任意に制御できる。光検出の受光面は、2重遮光用のシャッター位置よりも上部に配置できるので、サンプル容器底部との近接化が実現される。この状態で、発光計測を行うため、光を効率よく受光面に集められ、いわゆる大きな立体角を形成でき、高い感度、及び高い精度で検出できる。
【0069】
第2の実施形態は、上記第1の実施形態の構成に加えて、サンプル容器内に液体を分注する手段(ノズル、送液ポンプ、液体搬送配管等)を備えている。
【0070】
さらに、第3の実施形態は、微生物計測機能を有する化学発光計測装置を提供する。この微生物計測機能は、上述した2重遮光型の化学発光検出装置の第1の遮光BOX内部に、微生物中の生菌に由来するATP量を計測するために必要な反応を行うための処理溶液を分注/分取するためのノズル群とノズルにつながる溶液配管、さらに、処理溶液をストックしておく溶液保持容器と、さらに、溶液をノズル先端から分取/分注するための手段であるポンプによって実現される。なお、第2の遮光BOX上の天板の貫通孔位置には、発光計測用容器の容器ホルダが設置されており、それ以外の場所に容器が設置できる容器ホルダが少なくとも1つ設置されている。ここでは、発光計測用容器以外の容器はサンプルの調整に使用するため、サンプル調整容器ということとする。
【0071】
試料調製容器中の菌懸濁液に、ノズルからATP消去液を分注し、生菌以外の死菌や浮遊ATPを消去する。次に、ATP抽出液を分注し、生菌に含まれている生菌中ATPを抽出する。これらのプロセス中では、光検出器は、第2の遮光BOXで遮光されている。次に、発光計測用容器内に発光試薬を分注し、最後に処理済菌懸濁液を分取し、発光試薬内に分注し混合する。混合と同時に、または、混合直前には、光検出器の受光面は第2の遮光BOXの天板(貫通孔を備える)よりも上部に移動しており、発光計測用容器に近接して測定を開始する。分注時と同時もしくはそれ以前の背景光データを取得できるため、いわゆるフラッシュ型発光試薬を用いる場合、反応開始直後の最も高い発光時の信号を取得することができる。
【0072】
なお、第3の実施形態の構成を第1又は第2の実施形態に追加することも可能である。たとえば、遮光アタッチメント56(図11参照)を第1又は第2の実施形態の構成に追加してもよい。これにより、より遮光性が担保される。
【符号の説明】
【0073】
1…第1の遮光BOX、2…開閉扉、3…制御装置、4…サンプル容器、5…サンプル容器ホルダ、6…第2の遮光BOX、7…天板、8…貫通孔、9…板状部材、10…第1のアクチュエータ、12…第2のアクチュエータ、13…光検出器、14…発光物質サンプル、15…光電面、16…入射窓、17…金属膜、18…テーパ形状のサンプル容器ホルダ、19…半球形状のサンプル容器ホルダ、20…分注ノズル、21…配管コネクタ、22…液体搬送管、23…送液ポンプ、24…第3のアクチュエータ、25…発光物質を含んだサンプル、26…分注液滴、27…発光溶液、44・・・発光曲線、45・・・背景光信号、46・・・ATP発光信号、47・・・検量線グラフ、48・・・信号強度ピーク、49・・・検量線、52・・・遮光ステージ、53・・・サンプル調整容器、54・・・サンプル調整容器ホルダ、55・・・発光検出容器、56・・・遮光アタッチメント、57・・・第5のアクチュエータ、58・・・第4のアクチュエータ、68・・・円柱形状のサンプル容器ホルダ、69・・・発光検出容器ホルダ、50・・・微生物計数機能付化学発光装置、100・・・発光計測装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光計測対象の試料を収めた容器をホルダに設置し、
前記容器の設置後に、光を検出する光検出器に対向して設けられた遮光板を前記光検出器に対向する位置から移動させ、
前記遮光板の移動後に、前記光検出器の受光面を、前記遮光板の移動前における前記遮光板の前記光検出器に対する対向面の位置と同じ位置か、前記遮光板の移動前における前記対向面の位置よりも前記容器に近い位置に、前記容器と対向させて配置し、
前記光検出器の受光面の配置後に、前記光検出器による前記試料についての発光計測を行うことを特徴とする発光計測方法。
【請求項2】
前記容器の設置の前に、
前記光検出器を、天板に貫通孔を有する遮光室中に設け、
前記遮光板を、前記貫通孔を閉じるように設けることを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項3】
前記光検出器の受光面の配置の際に、前記検出器の少なくとも先端部分が前記貫通孔を通過するように移動させることを特徴とする請求項2に記載の発光計測方法。
【請求項4】
前記容器の設置の前に、前記ホルダを前記貫通孔上に配置することを特徴とする請求項2に記載の発光計測方法。
【請求項5】
前記光検出器の受光面の配置の際に、
予め、前記ホルダが備える前記貫通孔に通じる内部空間中に前記容器の少なくとも底部が位置するように前記容器を設置しておき、
前記検出器の少なくとも先端部分を、前記貫通孔を通過した後に、前記内部空間中で前記容器と対向して配置されるように、前記内部空間の内部に移動させることを特徴とする請求項2に記載の発光計測方法。
【請求項6】
前記光検出器の受光面の配置の際に、前記遮光版の移動方向と前記光検出器の移動方向とが垂直をなすように前記光検出器を前記遮光板に対して相対的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項7】
前記発光計測の際に、光の信号強度に応じて、前記容器の底部と、前記容器と対向する光検出器の距離を制御することを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項8】
前記光検出器の移動後に、前記容器に発光試薬を注入することを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項1】
発光計測対象の試料を収めた容器をホルダに設置し、
前記容器の設置後に、光を検出する光検出器に対向して設けられた遮光板を前記光検出器に対向する位置から移動させ、
前記遮光板の移動後に、前記光検出器の受光面を、前記遮光板の移動前における前記遮光板の前記光検出器に対する対向面の位置と同じ位置か、前記遮光板の移動前における前記対向面の位置よりも前記容器に近い位置に、前記容器と対向させて配置し、
前記光検出器の受光面の配置後に、前記光検出器による前記試料についての発光計測を行うことを特徴とする発光計測方法。
【請求項2】
前記容器の設置の前に、
前記光検出器を、天板に貫通孔を有する遮光室中に設け、
前記遮光板を、前記貫通孔を閉じるように設けることを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項3】
前記光検出器の受光面の配置の際に、前記検出器の少なくとも先端部分が前記貫通孔を通過するように移動させることを特徴とする請求項2に記載の発光計測方法。
【請求項4】
前記容器の設置の前に、前記ホルダを前記貫通孔上に配置することを特徴とする請求項2に記載の発光計測方法。
【請求項5】
前記光検出器の受光面の配置の際に、
予め、前記ホルダが備える前記貫通孔に通じる内部空間中に前記容器の少なくとも底部が位置するように前記容器を設置しておき、
前記検出器の少なくとも先端部分を、前記貫通孔を通過した後に、前記内部空間中で前記容器と対向して配置されるように、前記内部空間の内部に移動させることを特徴とする請求項2に記載の発光計測方法。
【請求項6】
前記光検出器の受光面の配置の際に、前記遮光版の移動方向と前記光検出器の移動方向とが垂直をなすように前記光検出器を前記遮光板に対して相対的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項7】
前記発光計測の際に、光の信号強度に応じて、前記容器の底部と、前記容器と対向する光検出器の距離を制御することを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【請求項8】
前記光検出器の移動後に、前記容器に発光試薬を注入することを特徴とする請求項1に記載の発光計測方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−198242(P2012−198242A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139577(P2012−139577)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2007−112018(P2007−112018)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2007−112018(P2007−112018)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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