説明

化学的に繊維内架橋されたセルロースの繊維を含む化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維

【課題】 化学的に繊維内架橋されたセルロースの繊維を含む化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維を提供する。
【解決手段】 酒石酸、リンゴ酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・マレエート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・イタコネート)コポリマー、及びそれらの混合物から成る群より選択されるポリカルボン酸架橋剤により化学的に繊維内架橋されたセルロースの繊維を含む化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース製品に関するものであり、また、化学的に架橋されたセルロース繊維と水性結合剤とを含む組成物を用いる前記製品を作る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリスチレンは低密度であり、比較的高い物理的強度を有する。前記ポリスチレンは、造形品へと容易に成形され、申し分の無い絶縁性を有する。発泡ポリスチレンは、例えばホットドリソクを入れるカップ、及び食品用の包装、例えば卵用のカートン及びファーストフード用の容器として用いられる。生憎、発泡ポリスチレンは生分解性ではなく、その製造において非再利用源を消費する。
【0003】
セルロース繊維から作られる製品は、生分解性で、再生可能源から作られ、そして再利用することができるので、魅力的な代替品である。その主な欠点は、典型的なセルロース製品は比較的高密度であるか又は嵩高くない点である。嵩は、密度に反比例し、材料の比重量によって占められる体積であり、cm/gmの単位で示される。必須の強度を提供する
ために必要とされるセルロース材料の量によって、重い製品が作り出される。その製品の断熱性は良くない。
【0004】
Weyerhaeuser Companyから1990年に出版された小冊子では、嵩高い添加剤(High Bulk Additive)又はHBAとして知られている化学的に架橋されたセルロース繊維と、濾紙、含浸用紙(saturation papers)、ティシュー及びタオル地、ペーパーボード、紙製
品及び吸収製品におけるHBAの利用とが説明されている。前記の小冊子は、HBA繊維を5%及び15%のレベルでペーパーボードの中に組み込むことができることを示していた。また、前記の小冊子は、HBAを3プライペーパーボードの中間プライにおいて用いることができることも示している。前記のボードを、従来の3プライボードと比較した。基本重量は25%減少し;テーバー剛性は一定のままであるが;破壊荷重は縦方向において25kN/mから16kN/mまで減少し、横方向においては9kN/mから6kN/mまで減少した。
【0005】
Kundsenらによる米国特許第4,913,773号には、基本重量は増加していないが
、剛性が増大している製品が記載されている。彼らは、従来の繊維の2つの外部プライの間に、多屈曲繊維(anfractuous fibers)の内部プライを有する3プライペーパーボードマットを提案している。すべて多屈曲繊維から成る中間プライを含むこの構造を、従来の繊維と多屈曲繊維とから成る単一プライマット、及び異なる従来の繊維から成るダブル及びトリプルプライ構造と比較している。Kundsenらは、必要な剛性を得るために、中心プ
ライにおいて多屈曲繊維が少なくとも10重量%存在していることを求めている。Kundsenらは、多屈曲繊維から作られた単一プライ制御盤を開示している。
【0006】
Kundsenらは、機械的処理によって、アンモニア又は苛性ソーダによる化学的処理によ
って、あるいは機械的処理と化学的処理とを組み合わせることによって多屈曲繊維を得ている。Kundsenらは、ある種のマルチプライ構造と共に結合剤を用いているかもしれない
。Kundsenらは、十分な結合を有するマルチプライペーパーボードを得るために、100
%処理された繊維に対して澱粉1%を加えることを開示している。またKundsenらは、欄
5の最初の全パラグラフにおいて多数の結合剤も開示している。
【0007】
Kokkoによる欧州特許第0 440 472号では、嵩高い繊維について考察している
。前記の繊維は、ポリカルボン酸を用いて木材パルプを化学的に架橋することによって作
られる。Kokkoは、個別化され架橋された繊維、及びこの繊維から作られた嵩高い吸収紙
に関心を向けている。
【0008】
Kokkoは、未処理繊維75%と処理繊維25%とのブレンドを用いた。Kokkoによって達成された最大乾燥嵩高さは、クエン酸処理繊維25%を用いて5.2cm/gm、及びクエ
ン酸/燐酸一ナトリウム処理繊維25%を用いて5.5cm/gmであった。
【0009】
また、Kokkoは、ポリカルボン酸架橋繊維は、製紙にとって重要なカチオン性添加剤、
例えばカチオン性補強樹脂(cationic strength resin)に対して一層受容的であるべき
であり、更に架橋繊維から作られたシートの強度は、カチオン性湿潤補強樹脂を混和することによって嵩高さを高めることに関して妥協させない、回復可能なものであるべきである、ことを記載している。Kokkoが、カチオン性補強添加剤、または他の補強添加剤を架
橋繊維と共に実際に試して見たという説明は無い。従って、Kokkoは、用いることができ
るカチオン性添加剤の量について説明していなかった。例えばKokkoが説明しているよう
なアニオン性繊維をカチオン性添加剤で処理することによって、添加剤で前記繊維の全表面は実質的に完全に被覆される。前記の事実は、メチレンブルー染料による実験でKokko
によって注目されている。カチオン性添加剤は、アニオン性繊維の全表面に引き付けられる。全繊維が被覆されるので、繊維と繊維との接触点において結合剤を提供するのに必要とされるよりも更に多くの添加剤が用いられる。
【0010】
Youngらによる米国特許第5,217,445号では、おむつの捕捉/分配領域が開示されている三前記おむつは、化学的に剛化されたセルロース繊維を50−100重量%及び結合手段を0−50%重量%含む。結合手段は、他の剛化されていないセルロース材料、
合成繊維、化学添加剤及び熱可塑性繊維であることができる。前記材料は、約0.03gm/cm未満の乾燥密度、3.33cm/gmの嵩を有する。
【発明の開示】
【0011】
成形されたプラスチックに似させることができる高い嵩と強度特性の両力を有する新しいセルロース製品に対する需要がある。前記製品は、5cm/gmを超える嵩を有している
べきである。また、前記の製品、必ずしもアニオン性ではない嵩高い繊維と、カチオン性結合剤に限定されない様々な水溶性又は水分散性結合剤から選択し得る結合剤とを用いて作ることができる場合には好ましい。
【0012】
本発明は、嵩高い繊維/水性結合剤組成物を提供する。嵩高い繊維は、約1cm/gm −
約40cm/gmの嵩を有する、繊維内で化学的に架橋されたセルロース材料である。前記繊維の嵩は、典型的には、約5cm/gmを超える。一般的には、適当な架橋剤は、ヒドロ
キシル基と結合して、繊維内のセルロース分子にあるヒドロキシル基の間に共有結合の橋を作り出すことができる二官能価タイプである。例えばクエン酸のようなポリカルボン酸架橋剤を用いると、食品包装に特に適する製品が製造される。
【0013】
化学的に架橋された嵩高い繊維に対して、例えば澱粉及びポリビニルアルコールのような水性結合剤をある重量%加えると、嵩高い繊維のみに比べて、従来の繊維のみに比べて、又は前記結合剤を有していない嵩高い繊維と従来の繊維とから成る混合物に比べて、優れた物理的性質を有する組成物が製造される。前記材料は、発泡ポリスチレンの望ましい強度と嵩高さを有する。また、それは、従来の繊維と比較して、内部強度を生じさせるのに必要な繊維の量が少ない材料も生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、化学的に架橋されたセルロース繊維及び水性結合剤を含む組成物を提供する。前記組成物は、風乾完成紙料の総重量の0.5−99重量%の量で、従来の製紙繊維完
成紙料と組み合わされる。従来の製紙繊維完成紙料とは、硬木及び軟材を含む任意の種から作られる製紙繊維のことであり、またパルプ化プロセスの後に別な方法で化学的に処理されていない場合に、繊維に対して適用される剥離剤を有し得る繊維のことである。
【0015】
セルロース繊維は、綿、麻、イネ科の植物(grasses)、籐類、植物の殻(husks)、トウモロコシの茎又は他の適当な源を含む任意の源から得ることができる。化学木材パルプは好ましいセルロース繊維である。
【0016】
嵩高い化学的に架橋されたセルロース繊維は、様々な適当な架橋剤を用いて架橋することができる、繊維内で架橋されたセルロース繊維である。各繊維は、それぞれ、多数のセルロース分子から構成されていて、セルロース分子にあるヒドロキジル基の少なくとも一部分は、架橋剤による架橋反応によって、同じ繊維内のセルロース分子にある他のヒドロキシル基に結合されている。架橋繊維は、約1cm/gm − 約50cm/gm、典型的には約10cm/gm − 約30cm/gm、及び通常は約15cm/gm − 約25cm/gmの嵩を有す看マットヘと成形することができる。
【0017】
適当な架橋剤は、一般的には、ヒドロキシル基と結合することができ、且つ繊維内のセルロース分子にあるヒドロキシル基との間に共有結合の橋を作り出すことができる二官能価タイプである。架橋剤の好ましいタイプは、例えばメトリル化尿素、メチロール化環状尿素、メチロール化低級アルキル置換環状尿素、メチロール化ジヒドロキシ環状尿素のような尿素誘導体から選択される。好ましい尿素誘導体架橋剤は、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)及びジメチルジヒドロキシエチレン尿素である。尿素誘導体の混合物も用いることができる。好ましいポリカルボン酸架橋剤は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸、グルタル酸及びシトラコン酸である。これらのポリカルボン酸架橋剤は、材料の目的用途が食品用包装であるときには特に有用である。用いることができる他のポリカルボン酸架橋剤は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・マレエート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル・ユ・イタコネート)コポリマー、マレイン酸、イタコン酸、及びタルトレートモノ琥珀酸である。ポリカルギン酸の混合物を用いることもできる。
【0018】
他の架橋剤は、Chungによる米国特許第3,440,135号、Lashらによる米国特許
第4,935,022号、Herronらによる米国特許第4,889,595号、Shawらによる米国特許第3,819,470号、Steijerらによる米国特許第3,658,613号
、Deanらたよる米国特許第4,822,453号、及びGraefらによる米国特許第4,8
53,086号において説明されており、前記特許のすべては本明細書において参照として完全に含まれる。
【0019】
架橋剤は、架橋剤とセルロース分子との闇の結合反応を促進する触媒を含むことができるが、ほとんどの架橋剤は、触媒を必要としない。適当な触媒としては、尿素ベースの架橋物質を用いるときに有用であることができる酸性塩が挙げられる。前記の塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、あるいはこれら又は他の類似化合物の混合物が挙げられる。燐含有酸のアルカリ金属塩を用いることもできる。
【0020】
架橋剤は、典型的にはセルロース繊維1トン当たり約2kg − 約200kg、好ましくは約20kg − 約100kgの量で適用される。
セルロース繊維は、架橋剤で処理する前に剥離剤で処理されたかもしれない。剥離剤は、内部繊維結合を最小にする傾向があり、繊維をお互いから一層容易に分離することができる。結合剤は、カチオン性、アニオン性又は非イオン性であることができる。カチオン性剥離剤は、非イオン性又はアニオン性剥離剤よりも優れていると考えられる。剥離剤は
、典型的には、セルロース繊維紙料(stock)に加えられる。
【0021】
適当なカチオン性剥離剤としては、第四アンモニウム塩が挙げられる。これらの塩は、典型的には、1つ又は2つの低級アルキル置換基、及び脂肪性で比較的長鎖の炭化水素であるか又はそれを含む1つ又は2つの置換基を有する。非イオン性結合剤は、典型的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの2つの材料の混合物と反応する脂肪性・脂肪族(fatty-aliphatic)アルコール、脂肪性・アルキルフェノール、及び脂肪
性・芳香族酸及び脂肪酸の反応生成物を含む。
【0022】
剥離剤の例は、Herveyらによる米国特許第3,395,708号及び第3,544,862号、Emanuelssonらによる米国特許第4,144,122号、Forssbladらによる米国特許第3,677,886号、Osborne IIIによる米国特許第4,351,699号、Hellstonらによる米国特許第4,476,323号及びLaursenによる米国特許第4,303,471号において見出すことができる。前記特許のすべては、引例として本明細書に完全に含まれる。適当な剥離剤は、Berol Chemicals, Incorporated of Metairie, Louisianaから市販されているBerocell 584である。それは、繊維の重量に対して剥離剤0.25重量%のレベルで用いることができる。又、剥離剤は必要ではないかもしれない。
【0023】
嵩高い繊維は、Weyerhaeuser Companyから市販されている。それは、HBA繊維であり、多数のグレードのものが市販されている。そのグレードの任意のものの適合性は、製造される最終製品に従う。いくつかのグレードは、他のグレードに比べて、食品グレードの用途に一層適するかもしれない。米国特許出願第07/395,208号及び第07/607,268号では、HBA繊維を製造する方法及び装置が説明されている。これらの出願は、参照として本明細書に完全に含まれる。
【0024】
本質において、コンベヤー12(図1)は、セルロース繊維マット14を運んで、アプリケーター18によってマット14上に架橋剤が適用される繊維処理領域16を通過させる。典型的には、化学薬品は、前記マットの両側に均一に適用される。マット14は、フィベライザー(fiberizer)20によって、実質的に破壊されていない独立繊維へと分離
される。繊維化のために、ハンマーミル及びディスク精砕機(disc refiner)を用いることができる。次に、乾燥装置22において、その繊維を乾燥させ、架橋剤を硬化させる。
【0025】
嵩高い繊維からは、繊維と繊維の結合強度が不良なセルロース製品が製造される。繊維と繊維の結合強度を測定する方法の1つは引張指数である。引張指数は、シートの基本重量に関して標準化されたシートの引張強さの尺度であり、材料の固有の引張強さの尺度を提供する。HBAが引き続いて作られる、未改質で破壊されていないセルロース繊維から作られたウェットレイドシート(wet laid sheet)は、約1.1Nm/gの引張指数を有し、それに対して、化学的に架橋された嵩高い繊維から作られた同様なウェットレイドシートは、前記引張指数の140分の1に当たるわずか約0.008Nm/gの引張指数を有する。繊維は、単にパッドを横切るように空気を吹込むことによって、嵩高い材料のパッドから容易に取り出すことができる。
【0026】
本発明の組成物は、水性結合剤を必要とする。これによって、嵩が増加し、密度が低下し、そして嵩高い繊維を用いずに作られた製品と実質的に同じ強度を有する製品が製造される。水媒介性という用語は、水で運ぶことができる任意の結合剤を意味しており、水溶性で、水中に分散することができ、あるいは水中懸濁液を形成する結合剤を含む。適当な水性結合剤としては、澱粉、改質澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレン/アクリル酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアミン、グアーガム、酸化ポリエチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルクロリド/アクリル酸コポリマー、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポ
リマー及びポリアクリロニトリルが挙げられる。これらのうちの多くは、水中分散液又は懸濁液のためのラテックスポリマーとなる。特に適当な結合剤としては、澱粉、ポリビニルアルコール及びポリビニルアセテートが挙げられる。結合剤の目的は、シート内にある嵩高い繊維の全体の結合を増加させることである。
【0027】
様々な量で水性結合剤を用いることができる。用いられる結合剤の量は、添加レベルとして表すことができる。これは、繊維及び結合剤の乾燥重量に関連のある結合剤の量である。適当な結合剤添加レベルは、約0.1重量%− 約6重量%、好ましくは約2.0重
量% − 約5.0重量%、最も好ましくは約2.5重量% − 約4.5重量%である。
【0028】
結合剤は嵩高い繊維パッドに対して適用し、真空によってシート中に吸収させることができる。過剰の結合剤は吸い取ることによって除去する。更に、パッドの中に140℃の空気を通すことによってシートを乾燥させる。処理したパッドは低密度であり、申し分の無い剛性を有する。パッドは鋭いナイフを用いて容易に切断することができる。その材料は、外観及び風合いが発泡ポリスチレンに極めて似ている。
【0029】
上記の材料単独又は従来の繊維と混ぜたものを、単一プライ折畳みボックスボードとして用いることができ、また折畳みペーパーボードボックスの形態で用いることができる。
ペーパーボードにおける全繊維の重量を基準として、嵩高い添加繊維を最大20%まで用いると、プロセスの制限工程が何であるかに従って、二次成形プロセス、プレスプロセス及び乾燥プロセスを加速することができ、またペーパーボードの製造における圧延を向上させることができる。
【実施例】
【0030】
実施例1
市販のHBA繊維20gを9.5リットルの水の中に分散させて、コンシステンシー(consistency)0.21%のHBA/水スラリーを作った。コンシステンシーは、パルプ
/水スラリー重量の百分率として表した風乾パルプの重量である。そのスラリーを、8インチ×8インチの実験室用ハンドシート金型の中に配置した。まず最初に吸引し、次に吸取紙の間に入れて手でプレスし、最後に温度105℃のオーブンの中で乾燥させることによって、スラリーを脱水してパッドを作った。得られたセルロースパッドの密度は、0.02g/cm、嵩は50cm/gであった。市販の紙の密度は、典型的には、約0.5g/cm
− 約1g/cmであり、嵩は約2cm/g − 1cm/gである。ウェットレイドHBA繊維パッドの密度は、典型的なペーパーシートの密度に比べて約25− 50分の1であり、
嵩は、典型的なペーパーシートに比べて約50 − 100倍大きい。繊維は、空気をシートの中に吹込むことによって、HBA繊維パッドから取り出すことができた。
【0031】
実施例2
HBA繊維6.5gを水8リットル中に分散させて、コンシステンシー約0.08%のセルロース・水スラリーを提供した。そのスラリーを、直径6インチの実験室用ハンドシート金型でパッドヘと成形した。スラリーは実施例2のようにして脱水した。得られたパッドは、密度0.025g/cmであり、嵩は40cm/gであった。
【0032】
このパッドの引張指数を測定した。HBA繊維パッドに関する引張指数、及び市販されているHBA用の出発パルプであるNB316から作られた対照パッドに関する引張指数。表Iはその結果である。
【0033】
【表1】

エアレイイング(air laying)によって作られたHBA繊維のパッドは同様な低い引張指数を有する。
【0034】
嵩高い添加シートを実施例1のようにして調製した。水性結合剤の水溶液をシートに適用した。典型的には、その溶液をシート中に真空吸引した。過剰の結合剤溶液は、まず最初に吸取ることによってシートから除去する。更に、パッドを通して空気を吸込むことによって乾燥させる。その空気は温度約140℃である。
【0035】
この方法を用いて作られた乾燥パッドは、低密度であり、申し分の無い剛性を有する。シートの強度は、結合剤を用いずに作られた嵩高い添加シートに比べて、著しく増大した。製品はナイフで容易に切断することができた。その材料は、外観及び風合いが発泡ポリスチレンに極めて似ている。
【0036】
実施例3
直径6インチのパッドを、エアレイド法又はウェットレイド法を用いて、嵩高い添加繊維から作った。各方法によって、実質的に結合していない嵩高い繊維添加パッドを作る。そのパッドの重量を計量し、直径6インチのブフナー漏斗中に置いた。
【0037】
そのパッドを、澱粉又はポリビニルアルコールの水溶液で飽和させた。その澱粉は、A.
E. Staley Manufacturing Companyから市販されているHAMACO 277澱粉であった。ポリビニルアルコールは、DuPont Chemical Companyから市販されているELVANOL HVであった。
溶液中の結合剤の量は、溶液の総重量を基準として約0.5重量%− 5重量%であった

【0038】
上記のパッドをブフナー漏斗から取り出し、合成不織布のシートの間に入れた。適当な不織布は、James River O.5 oz/yd Cerex 23不織布である。支持されたパッドを吸取紙の間で絞って、飽和シートから過剰の液体を除去した。次に、実験室用熱接着機を用いて、そのパッドの中に、約140℃の熱空気を通すことによって乾燥させた。パッド中にある繊維重量の約2.5%− 約5%の結合剤添加レベルが、この方法を用いて得られた。
結合剤添加レベルは、典型的には、パッド中繊維重量の約3%− 約4.5%である。
【0039】
パルプ密度及び引張指数を実施例2のようにして測定した。結合剤を有するNB316及び結合剤なしのNB316、及び結合剤を有していないHBA繊維を対照として用いた。サンプル及び結果を表IIに掲げる。たとえHBAパッドの密度がNB316パッドの密度0.220g/cmの1/2未満であるとしても、結合剤で処理されたHBA繊維パッドのほとんどは、結合剤を有していないNB316の引張指数1.15Nm/gに等しいか又はそれを超える引張指数を有する、ことが注目される。ポリビニルアルコールはHBA繊維パッドの引張指数を大きく増加させることが注目された。ポリビニルアルコールで結合されたHBA繊維パッドは、澱粉で結合されたNB316繊維の1/3の密度を有していたが、澱粉で結合されたNB316の引張指数とほとんど等しい引張指数を有していた。ポリビニルアルコールで結合されたHBA繊維パッドの別のサンプルの密度は、澱粉で結合されたNB316の密度の1/3未満であったが、ポリビニルアルコール結合HBA繊維パッドの引張指数は、澱粉結合NB316の引張指数の2倍を超えるものであった。
【0040】
【表2】

また、HBAと従来のパルプ繊維との澱粉で結合された配合物は、低密度であり、且つ従来のパルプ繊維単独とほとんど同じ引張指数を有する製品を提供することができる、ということが表IIにおいて認められる。
【0041】
図2は、実施例3に従って製造された、HBA/水性結合剤組成物の電子顕微鏡写真である。図2は、水性結合剤が実質的に完全に繊維間の交差点又は接触点に集まることを示している。1つの作業理論に本発明を限定するものではないが、ポリマーは主として毛管作用によって交差点又は接触点において集まるか又は濃縮される、と考えられる。結合剤の大部分は必要とされる場所に存在している。
【0042】
実施例4
直径6インチのエアレイドHBA繊維パッドの重量を計量し、直径6インチのブフナー漏斗に置いた。水溶液の総重量を基準として2%及び5%ポリマー濃度の、ポリビニルアセテートラテックスポリマーであるReiChold PVAcラテックス40−800の水溶液。そ
の水溶液をブフナー漏斗中にある前記パッドの中に通した。そのパッドを実施例4におけるパッドと同じようにして乾燥させた。ポリマーバインダーの添加レベルは約2重量%−
約4重量%であった。得られたパッドは十分に結合されていた。
【0043】
実施例5
化学的に架橋された嵩高い繊維とNB316従来パルプとの重量比10/90配合物9.95gを水9.5リットル中に分散させた。水は、水溶性カチオン性ポテト澱粉であるD.S. 0.3「ACCOSIZE 80」澱粉を0.8重量%含んでいた。そのセルロース分散液を8イ
ンチ×8インチハンドシート金型の中に入れて、基本重量約240g/mを有するパッド
を製造した。吸取紙の間でプレスすることによって、そのパッドから過剰の水分を除去し
、次に105℃のファンオーブンの中で乾燥させた。
【0044】
その乾燥パッドに関して密度、テーバー剛性及び耐熱性を試験した。McDonald's Corporationによって用いられているクラムの貝殻の包装箱のふたの発泡ポリスチレンと同じ値が得られた。セルロースパッドにおける単位面積当たりの材料費と、ポリスチレンぶたにおける単位面積当たりの材料費は実質的に等しかった。試験の結果を表IIIに掲げる。
【0045】
【表3】

繊維配合物は、有望なことに、スチロフォーム材料に匹敵した。
【0046】
実施例6
セルロース繊維/結合剤組成物を用いて、成形されたスチロフォームと同様な特性を有する成形品を作ることができる。それらは、特に食品の容器として用いることができる。
【0047】
繊維/結合剤組成物を用いて成形プレートを作った。従来の漂白されたサザンパインクラフト毛羽パルプ(southern pine kraft fluff pulp)(NB316)2708.5gと、個別化され化学的に架橋された繊維(HBA)300.5gとの90/10重量%繊維配合物を、水433リットル中スラリーにした。その水は、ポリビニルアルコールであるDuPont Elvanol HV 1重量%を含んでいた。消泡剤であるCynol 420 50ppmを前記スラリ
ーに加えて、泡の増成を防止した。そのスラリーを成形して、Emery Internationalのプ
レート成形機を用いて、直径10インチのディナープレートにした。図3参照。この機械では、パルプ撹拌機40は、スラリータンク44中にあるパルプスラリー42を連続して撹拌する。多孔質の造形されたワイヤ成形スクリーン46をパルプスラリー中に浸漬し、脱水ポンプ48によって前記スクリーンから水を除去した。十分な量のパルプ50がスクリーン46上にあるとき、スクリーンをスラリーから取り出す。パルププレート50を、移動金型52へと移動させ、真空ポンプ54により生じた真空によって保持した。プレート50を金型52から取り出し、オーブン中で乾燥させた。
【0048】
得られたプレートの耐熱性は高かった。得られたプレートは、再利用パルプ繊維から作られた従来の成形パルプ製品の密度0.25−0.5g/cmに比べて、約0.16g/cmの密度を有していた。
【0049】
実施例7
従来の繊維から成るシートのエッジ吸上と、従来の繊維と嵩高い添加繊維との混合物から成るシートのエッジ吸上とを比較した。タッピー(Tappi)ハンドシートを調製した。
それらは、風乾繊維1トン当たり澱粉10ポンド及び風乾繊維1トン当たりカイメン(Kymene)5ポンドを含んでいた。2種類の繊維完成紙料を用いた。第一の完成紙料は、従来のパルプ繊維を含んでいた。第二の完成紙料は、従来のパルプ繊維を90重量%及び嵩高い添加繊維を10重量%含んでいた。湿潤ハンドシートをプレスして異なる密度とし、エッジ吸上について比較した。シートの重量を計量し、シートのエッジを、特定の時間、液
体の中に入れた。その後で、シートの重量を再び計量した。吸上は、エッジ100インチ当たりに吸収される液体のg数で表される。その結果を図4に掲げる。任意の密度において、従来の繊維は、従来の繊維/嵩高い添加繊維混合物に比べて、より多量の液体を吸収した。
【0050】
実施例8
湿潤プレスの後、従来の繊維から成るシートの固形分レベルと、従来の繊維と嵩高い添加繊維との混合物から成るシートの固形分レベルとを比較した。2種類のパルプ完成紙料を用いた。第一パルプは従来のパルプ繊維を含んでいた。第二パルプは、従来のパルプ繊維を90重量%及び嵩高い添加繊維を10重量%含んでいた。湿潤ハンドシートを異なる荷重圧でロールプレスし、プレスの後、シート中の固形分レベルを重量%で測定した。その結果を図5に掲げる。従来の繊維と嵩高い添加繊維との混合物から成るシートは、より高い固形分レベルを有していた。すなわち、前記のシートは、従来の繊維シートに比べて、プレス後に一層乾燥した。従来の繊維は太線で示してあり、従来の繊維/嵩高い添加繊維混合物は点線で示してある。
【0051】
実施例9
単一プライハンドシートを、プロセス水再循環機関を備えている8インチ×8インチ成形機を用いて作った。用いたパルプは、漂白されたクラフトベイマツ及び始めに記したHBAであった。HBAは叩解せずに用いたが、使用する前に、Waringブレンダー(水中0.2%コンシステンシー)おいて30秒間繊維を離解させて、密繊維束を除去した。
【0052】
澱粉を加えたら、プロセス水を再循環させて、澱粉の各バッチから多数のハンドシートを作った。その澱粉は、ペンシルベニア州にあるRaison Inc.から市販されている「Acosize 80」カチオン性澱粉であった。それは、最初に、固形分4%において煮沸し、次にプ
ロセス水で望ましいレベルまで希釈した。
【0053】
ハンドシートは、コンシステンシー約0.1− 0.2%のパルプから作った。実験3
では、パルプ%はオーブン乾燥重量に基づいている。実験4では、澱粉固形分%は、プロセス水中に溶解された澱粉レベルのことであり、シート中の添加量のことではない。
【0054】
ハンドシートは、実験室用「蒸気缶」乾燥機で乾燥させた。圧延はしなかった。その結果を表IVに掲げる。結合剤を添加すると、HBAシートの剛性が向上する。
明細及び実施例はほんの一例であり、本発明の範囲は、以下の請求の範囲において具体的に表現されていることは当業者には明らかである。
【0055】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、嵩高い化学的に架橋された繊維を作る方法を示している構成図である。
【図2】図2は、本発明に従って作られた、嵩高い添加剤繊維(HBA)/水性結合剤組成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図3】図3A及び図3Bは、プレート製造装置の線図である。
【図4】図4は、プレス固形分対 荷重圧のグラフであり、嵩高い繊維が完成紙料中に含まれているときには可能な生産性が増大することを示している。
【図5】図5は、エッジ吸上(edge wick)対 密度のグラフであり、嵩高い繊維が完成紙料中に含まれているときには吸収性が低下することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒石酸、リンゴ酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・マレエート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・イタコネート)コポリマー、及びそれらの混合物から成る群より選択されるポリカルボン酸架橋剤により化学的に繊維内架橋されたセルロースの繊維を含む化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。
【請求項2】
該セルロース繊維が木材パルプ繊維である請求項1記載の化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。
【請求項3】
ポリカルボン酸架橋剤をセルロース繊維のマットに適用し、この場合に該ポリカルボン酸架橋剤は、酒石酸、リンゴ酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・マレエート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・イタコネート)コポリマー、及びそれらの混合物から成る群より選択され;
該マットを、実質的に破れていない個別化された繊維に分離させ;そして
該架橋剤を硬化させて繊維内架橋を形成させる、
工程を含む化学的に繊維内架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維を作る方法。
【請求項4】
該セルロース繊維が木材パルプ繊維である請求項3記載の方法。
【請求項5】
セルロース繊維のマットに架橋触媒を適用する工程をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
該架橋触媒がリン含有酸のアルカリ金属塩である請求項5記載の方法。
【請求項7】
該架橋剤を適用する前にセルロース繊維のマットを剥離剤で処理する工程をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項8】
該剥離剤を、カチオン性、非イオン性、及びアニオン性剥離剤から成る群より選択する請求項7記載の方法。
【請求項9】
該ポリカルボン酸架橋剤が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸、グルタル酸、シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸およびタルトレートモノ琥珀酸の中の1種以上の添加をさらに含む請求項1記載の化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。
【請求項10】
該ポリカルボン酸架橋剤が、該クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸、グルタル酸、シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸およびタルトレートモノ琥珀酸の中の1種以上の添加をさらに含む請求項3記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・マレエート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・イタコネート)コポリマー、及びそれらの混合物から成る群より選択されるポリカルボン酸架橋剤により化学的に繊維内架橋されたセルロースの繊維を含む化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。
【請求項2】
該セルロース繊維が木材パルプ繊維である請求項1記載の化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。
【請求項3】
ポリカルボン酸架橋剤をセルロース繊維のマットに適用し、この場合に該ポリカルボン酸架橋剤は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・マレエート)コポリマー、ポリ(メチルビニルエーテル・コ・イタコネート)コポリマー、及びそれらの混合物から成る群より選択され;
該マットを、実質的に破れていない個別化された繊維に分離させ;そして
該架橋剤を硬化させて繊維内架橋を形成させる、
工程を含む化学的に繊維内架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維を作る方法。
【請求項4】
該セルロース繊維が木材パルプ繊維である請求項3記載の方法。
【請求項5】
セルロース繊維のマットに架橋触媒を適用する工程をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
該架橋触媒がリン含有酸のアルカリ金属塩である請求項5記載の方法。
【請求項7】
該架橋剤を適用する前にセルロース繊維のマットを剥離剤で処理する工程をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項8】
該剥離剤を、カチオン性、非イオン性、及びアニオン性剥離剤から成る群より選択する請求項7記載の方法。
【請求項9】
該ポリカルボン酸架橋剤が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸、グルタル酸、シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸およびタルトレートモノ琥珀酸の中の1種以上の添加をさらに含む請求項1記載の化学的に架橋されたセルロースの個別化された嵩高い繊維。
【請求項10】
該ポリカルボン酸架橋剤が、該クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸、グルタル酸、シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸およびタルトレートモノ琥珀酸の中の1種以上の添加をさらに含む請求項3記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−336186(P2006−336186A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219120(P2006−219120)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【分割の表示】特願2003−429264(P2003−429264)の分割
【原出願日】平成7年3月20日(1995.3.20)
【出願人】(391011272)ウェヤーハウザー・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】WEYERHAEUSER COMPANY
【Fターム(参考)】