説明

化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置

【課題】 銅めっき試験片の化学銅めっきの析出量を自動的に測定すると共に、規定量に達した場合に自動的にプリント配線板を銅めっき槽から取出せるように構成した。
【解決手段】 銅めっき液aを充填する銅めっき槽3内に、プリント配線板1と共に銅メッキ液aに浸漬させためっき銅めっき試験片12と、銅が析出した銅めっき試験片12の重量を測定する析出銅重量測定手段20と、析出銅重量測定手段20により測定しためっき試験片12の重量を銅析出前の当該めっき試験片12との比較において銅の析出重量を演算すると共に銅の析出重量をめっき試験片12の銅析出膜厚に換算する重量換算析出銅膜演算手段17と、重量換算析出銅膜演算手段17が換算した銅めっき試験片12の銅析出膜厚が所定量に達した場合に銅めっき槽3内のプリント配線板1を取出す巻揚げ機制御手段18とを有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に化学銅めっきを施す化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板への化学銅めっきは、銅めっき槽内に銅めっき液を充填しておき、該銅めっき液にプリント配線板を所定時間浸漬させて、銅をプリント配線板の表面に析出させることによって行っている。
【0003】
そして、銅めっき槽内においてプリント配線板に連続的に銅を析出させるためには、銅めっき液の主成分である硫酸銅、水酸化ナトリウム、ホルマリンの充填量を分析し、所定量に満たない場合には新たに補給することによって行っている。
【0004】
また同時に、プリント配線板への銅の析出量を連続的に測定し、析出量(析出速度)をある範囲内に調整するために、pH調整剤である前記水酸化ナトリウムの補給量を調整する必要がある。
【0005】
このために、化学めっき装置には、プリント配線板への析出銅膜厚を定期的に計測して、析出銅膜厚を管理している(特許文献1参照)。
【0006】
また、従来においては、図4に示すような方法において、析出銅膜厚を計測し、析出銅膜の管理を行っていた。
【0007】
すなわち、従来のプリント配線板の銅化学めっき装置は、プリント配線板1を複数枚ロットにして巻き上げ機13に吊り下げられた収容籠2に収容した状態で、銅メッキ液aが充填された銅めっき槽3内に投入して銅めっき液aに所定時間浸漬し、プリント配線板1のスルーホール等に銅めっきを施している。
【0008】
銅めっき槽3内に充填された銅めっき液aは、硫酸銅、水酸化ナトリウム、ホルマリンを主成分として構成しており、銅析出に必要な濃度を確保すべく銅めっき液自動分析器4によって分析されて、不足している場合には、硫酸銅補給用貯槽5、水酸化ナトリウム補給用貯槽6及びホルマリン補給用貯槽7からそれぞれの補給用ポンプ8a、8b、8cによって銅めっき槽3内に補給されるようになっている。
【0009】
また、銅めっき槽3内の銅めっき液aは、銅めっき液循環ポンプ9によって吸い上げられて、銅めっき液循環配管10を通って銅めっき液温度調整用熱交換器11を経由して温度調整された後に、再び銅めっき槽3内に循環されるようになっている。
【0010】
そして、プリント配線板1に施される銅析出量は、銅めっき槽3の肩部に針金12a等により吊り下げられた試験片12を銅めっき液a内にプリント配線板1の浸漬とタイミングを合わせて浸漬しておき、定期的に作業者が浸漬した試験片12を銅めっき槽3内から取出し重量を計量し、試験片12の当初重量と比較して、その差分により、測定しており、この試験片12の取出し測定は複数回行って、化学銅めっき装置における析出銅膜厚が所定範囲になるように管理を行っている。
【特許文献1】特開平10−147883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図4に示すような従来の化学銅めっき装置においては、プリント配線板の製造工程の中で、厚付け化学銅めっき作業は、銅めっき液aの主成分(硫酸銅、水酸化ナトリウム、ホルマリン)を銅析出に必要な濃度に調整し、液温を70℃付近で保持することにより、プリント配線板1に銅を析出させることにより行っている。また同時に、ある範囲内に析出量(析出速度)を調整するために、pH調整剤である水酸化ナトリウムの補給量を調整する必要がある。
【0012】
これらのために、上記した従来の化学銅めっき装置においては、銅めっき槽3内に浸漬した試験片12を30分から1時間毎くらいの間隙で取出し、上皿天秤等の計量器を使用して重量を計量し、重量換算による析出量を算出し、規定範囲内の析出量であることを確認しながら、水酸化ナトリウムの補給量を調整し、この作業を何回となく繰り返すことによって、銅析出量が試験片12に析出された時点で、プリント配線板1の銅析出膜厚が所定量なされたものとなして、銅めっき槽3から巻き上げ機等を使用してプリント配線板1を製品として取出ししていた。
【0013】
このために、試験片12を何回も銅めっき槽3内から取出して、これを計量する作業は、多くの工数を要し、非常に作業効率を悪くしており、製品コストに跳ね返っていた。
【0014】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、自動的に化学銅めっきの析出量を測定するようにして、規定量の銅めっきが試験片に析出したと判断できる場合には、自動的にプリント配線板を銅めっき槽から取出すことができるように構成した化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明に係る化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置は、プリント配線板に化学銅めっきを施す化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置であって、銅めっき液を充填する銅めっき槽内に、前記プリント配線板と共に前記銅メッキ液に浸漬させためっき試験片と、銅が析出した前記めっき試験片の重量を測定する析出銅重量測定手段と、該析出銅重量測定手段により測定した前記めっき試験片の重量を銅析出前の当該めっき試験片との比較において銅の析出重量を演算すると共に該銅の析出重量を前記めっき試験片の銅析出膜厚に換算する重量換算析出銅膜演算手段と、該重量換算析出銅膜演算手段が換算した前記試験片の銅析出膜厚が所定量に達した場合に前記銅めっき槽内のプリント配線板を取出す巻揚げ機制御手段とを有して構成することを特徴とする。
【0016】
かかる構成により、析出銅重量測定手段により測定しためっき試験片の重量を銅析出前の当該めっき試験片の重量との比較において銅の析出重量を演算すると共に、重量換算析出銅膜演算手段により銅の析出重量をめっき試験片の銅析出膜厚に換算し、この換算量に基づいて試験片の銅析出膜厚が所定量に達したか否かを判断し、達した場合には巻揚げ機制御手段により銅めっき槽内のプリント配線板を自動的に取出すことができ、作業者の作業工数を大幅に削減して、プリント配線板の製作コストを激減させることができる。
【0017】
また、請求項2に記載の本発明に係る化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置は、プリント配線板に化学銅めっきを施す化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置であって、銅めっき液を充填する銅めっき槽内に、前記プリント配線板と共に前記銅メッキ液に浸漬させためっき試験片と、該めっき試験片を前記銅めっき槽から定期的に所定幅引揚げるめっき試験片引揚げ手段と、該めっき試験片引揚げ手段により定時的に引き上げる毎にめっき試験片における銅めっき液外に顕出した所定幅の部分の析出銅膜厚をその都度測定するX線或いは音波等による測定器から構成した析出銅膜厚測定手段と、該析出銅膜厚測定手段が測定した析出銅膜厚が所定量に達した場合に前記銅めっき槽内の前記プリント配線板を取出す巻揚げ機制御手段とを有して構成することを特徴とする。
【0018】
かかる構成により、引揚げ手段により定期的に所定幅引揚げられためっき試験片において、析出銅膜量が定期的に引揚げられる毎に析出銅膜厚測定手段により測定され、析出銅膜厚測定手段が測定した析出銅膜厚が所定量に達した場合には巻揚げ機制御手段により銅めっき槽内のプリント配線板を自動的に取出すことができ、作業者の作業工数を大幅に削減して、プリント配線板の製作コストを激減させることができる。
【発明の効果】
【0019】
上記のように構成する本発明において、試験片に析出した析出銅膜を自動的に測定し、測定した結果に基づいてプリント配線板を自動的に銅めっき槽から製品として取出すことができ、作業者の作業工数を大幅に削減して、プリント配線板の製作コストを激減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施の形態について説明する。なお説明に使用する符号は、従来装置に対応する部分に付した同一符号を使用することとする。
【0021】
図1は本発明に係る一の実施の形態を採用した化学銅めっき装置の概略構成図、図2はプリント配線板の製造工程を描画した説明図である。
【0022】
図1において、プリント配線板1は、複数枚を1ロットとして巻揚げ機13に吊り下げられた収容籠2に収容した状態で、銅メッキ液aが充填された銅めっき槽3内に投入されて銅めっき液aに所定時間浸漬し、プリント配線板1スルーホール等に銅めっきが施されている。
【0023】
銅めっき槽3内に充填された銅めっき液aは、硫酸銅、水酸化ナトリウム、ホルマリンを主成分として構成されており、銅析出に必要な濃度を確保すべく銅めっき液自動分析器によって分析されて、不足している場合には、硫酸銅補給用貯槽5、水酸化ナトリウム補給用貯槽6及びホルマリン補給用貯槽7からそれぞれの補給用ポンプ8a、8b、8cによって銅めっき槽3内に補給されるようになっている。
【0024】
また、銅めっき槽3内の銅めっき液aは、銅めっき液循環ポンプ9によって吸い上げられて、銅めっき液循環配管10を通って銅めっき液温度調整用熱交換器11を経由して温度調整された後に、再び銅めっき槽3内に循環されるようになっている。
【0025】
さらに、銅めっき液aが充填された銅めっき槽3内において、プリント配線板1と共に予め所定の触媒が付与されたステンレス板或いはガラスエポキシ板等からなる試験片12が銅メッキ液a内に浸漬すべく吊り下げられている。
【0026】
試験片12は、天秤棒の如き竿体14の一端側に吊り下げられており、竿体14の他端側には所定の質量を有する分銅15が吊り下げられている。
【0027】
竿体14はその中央部を支点14aとしており、支点14aには、計量ロッド16aが装着され、計量ロッド16aは、試験片12及び分銅15の重量の対比により上下動するように析出銅重量測定器16に装着されている。
【0028】
ここで、竿体14、分銅15及び析出銅重量測定器16によって、銅が析出しためっき試験片12の重量を測定する析出銅重量測定手段20を構成することになる。
【0029】
析出銅重量測定器16は、計量ロッド16aの上下動を電気的に検知して、検知結果を重量換算銅析出量演算手段17に送出する。
【0030】
重量換算銅析出量演算手段17は、析出銅重量測定器16から送出された検知結果に基づき、銅析出前のめっき試験片12の重量と比較して、銅の析出重量に演算されると共に銅の析出重量をめっき試験片12の銅析出膜厚に換算する。
【0031】
さらに、重量換算析出銅膜演算手段17は、換算した試験片12の銅析出膜厚が所定量に達するか否かを感知して、所定量に達した場合には、巻揚げ機制御手段18に所定量に達した旨の信号を送出する。
【0032】
この信号を受けた巻揚げ機制御手段18は、巻揚げ機13に信号を送出して、プリント配線板1の引揚げ機能を働かせる。
【0033】
上記のように構成する化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置は、図2に示すプリント配線板製造工程における厚付け化学銅めっき工程において使用されるのである。
【0034】
すなわち、樹脂製基板等の基材21の表裏両面に銅箔22を張設して、プリント配線板1を製作するための材料を準備し、次に、スルーホール穴明け工程において、基材21の所定部位に、銅箔22と共に、スルーホール23を貫通形成し、その後、触媒付与工程において、スルーホール23に触媒24を塗布することにより付与しておく。
【0035】
上記のように構成する場合、試験片12に析出した析出銅膜を自動的に測定し、測定した結果に基づいてプリント配線板1を自動的に銅めっき槽3から製品として取出すことができ、作業者の作業工数を大幅に削減して、プリント配線板1の製作コストを激減させることができる。
【0036】
次に、上記本発明にかかる実施の形態を用いながら、銅めっき槽3内に、基材21を浸漬してスルーホール23に銅析出を施して製作するプリント配線板1の厚付け化学銅めっき工程となり、所定圧の銅析出がなされた場合には、銅めっき槽3内からプリント配線板1を引揚げて、回路25を形成する回路形成工程及びソルダーレジストを形成するソルダーレジスト工程を経て、プリント配線板1が完成する。
【0037】
次に、図3を用いて、本発明にかかる他の実施の形態を採用した化学銅めっき装置について説明する。
【0038】
図3は本発明にかかる他の実施の形態を採用した化学銅めっき装置の概略構成図である。
【0039】
図3によれば、銅めっき液aを充填する銅めっき槽3内に、プリント配線板1と共に銅メッキ液aに浸漬しておく試験片12と、タイマーを有してめっき試験片11を銅めっき槽3から定期的に段階的に所定幅引揚げるめっき試験片引揚げ手段28と、めっき試験片引揚げ手段28により定時的に段階的に引き上げる毎にめっき試験片12における銅めっき液a外に顕出した所定幅の部分の析出銅膜厚をその都度測定するX線或いは音波等による測定器から構成された析出銅膜厚測定手段29と、析出銅膜厚測定手段29が測定した析出銅膜厚に基づき、銅析出量演算手段28によってめっき試験片12の銅析出膜厚を演算し、銅析出量演算手段30が銅析出膜厚が所定量に達したものと判断した場合に銅めっき槽3内のプリント配線板1を取出す巻揚げ機制御手段31とを有して構成している。
【0040】
そして、巻揚げ機制御手段29は、プリント配線板取出し信号を巻揚げ機に送出して、プリント配線板1の引揚げ機能を働かせる。
【0041】
かかる構成により、めっき試験片引揚げ手段28により定期的に段階的に所定幅引揚げられためっき試験片12において、定期的に引揚げられる毎にX線或いは音波等による測定器から構成された析出銅膜厚測定手段29により測定し、析出銅膜厚測定手段29が測定した析出銅膜厚が所定量に達した場合には銅析出量演算手段30の指令に基づき巻揚げ機制御手段31により銅めっき槽3内のプリント配線板1を自動的に取出すことができ、作業者の作業工数を大幅に削減して、プリント配線板1の製作コストを激減させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態における化学銅めっき装置におけるその他の構成は、上記位置の実施の形態における構成と同じであるので、詳細説明を割愛する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、試験片に析出した析出銅膜を自動的に測定し、測定した結果に基づいてプリント配線板を自動的に銅めっき槽から製品として取出すことができ、作業者の作業工数を大幅に削減して、プリント配線板の製作コストを激減させることができることから、プリント配線板に化学銅めっきを施す化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置等に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る一の実施の形態を採用した化学銅めっき装置の概略構成図である。
【図2】プリント配線板の製造工程を描画した説明図である。
【図3】本発明に係る他の実施の形態を採用した化学銅めっき装置の概略構成図である。
【図4】従来における化学銅めっき装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0045】
1 プリント配線板
3 銅めっき槽
12 銅めっき試験片
14 竿体
15 分銅
16 析出銅重量測定器
17 重量換算銅析出量演算手段
18 巻揚げ機制御手段
20 析出銅重量測定手段
28 めっき試験片引揚げ手段
29 析出銅膜測定手段
31 巻揚げ機制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板に化学銅めっきを施す化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置であって、
銅めっき液を充填する銅めっき槽内に、前記プリント配線板と共に前記銅メッキ液に浸漬させためっき試験片と、銅が析出した前記めっき試験片の重量を測定する析出銅重量測定手段と、該析出銅重量測定手段により測定した前記めっき試験片の重量を銅析出前の当該めっき試験片との比較において銅の析出重量を演算すると共に該銅の析出重量を前記めっき試験片の銅析出膜厚に換算する重量換算析出銅膜演算手段と、該重量換算析出銅膜演算手段が換算した前記試験片の銅析出膜厚が所定量に達した場合に前記銅めっき槽内のプリント配線板を取出す巻揚げ機制御手段とを有して構成することを特徴とする化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置。
【請求項2】
プリント配線板に化学銅めっきを施す化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置であって、
銅めっき液を充填する銅めっき槽内に、前記プリント配線板と共に前記銅メッキ液に浸漬させためっき試験片と、該めっき試験片を前記銅めっき槽から定期的に所定幅引揚げるめっき試験片引揚げ手段と、該めっき試験片引揚げ手段により定時的に引き上げる毎にめっき試験片における銅めっき液外に顕出した所定幅の部分の析出銅膜厚をその都度測定するX線或いは音波等による測定器により構成した析出銅膜厚測定手段と、該析出銅膜厚測定手段が測定した析出銅膜厚が所定量に達した場合に前記銅めっき槽内の前記プリント配線板を取出す巻揚げ機制御手段とを有して構成することを特徴とする化学銅めっき装置における析出銅膜厚管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−32633(P2006−32633A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208954(P2004−208954)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】