説明

化粧シートおよび化粧材ならびに化粧シートの製造方法

【課題】鋼板基材への透湿による錆、強度劣化などの影響を与えることなく、木質基材への反りも抑制する事のできるバイオマス原料から構成された樹脂系の化粧シートおよび化粧材を提供する。
【解決手段】少なくとも、透湿度50から1500g/m・day・40℃, 90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(1)の片側または両側に透湿度0.01から10g/m・day・40℃,90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(2)を設けてなる化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品などの表面化粧等に使用するための化粧シートおよび化粧材ならびに化粧シートの製造方法に関するものであり、特に植物由来プラスチックを主原料とし、焼却時にも有毒ガスを発生せず、地球環境と人体に優しい化粧シートおよび化粧材ならびに化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂系の化粧シートとして様々な構成のものが考えられている。樹脂系化粧シートの多くは、絵柄層を設けており、基材の木質材料などの色味のばらつきを隠蔽できると同時に、エンボス加工による高意匠化と基材の保護などの性能を両立できるため、性能面では多くの利点がある。
この種の化粧シートに使用される熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル共重合体樹脂などが該化粧シートの基材シート又はその基材シート表面の透明樹脂層などとして使用される。例えば化粧シートの基材シートには、紙または熱可塑性樹脂シートを使用し、これに印刷を施してなる印刷シートがそのまま用いられたり、表面保護層および/もしくは意匠表現層として前述の透明樹脂層が設けられたりし、木材合板、木質繊維板、パーティクルボードなど木質系基材の表面に貼合わされ使用される。
また、特に表面強度を必要とする床材および縁材には、塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などの表面強度に優れる高強度な樹脂材料が使用されてきた。
【0003】
上記した各種の樹脂系の化粧シートの基材シートや透明樹脂層の構成材料としては従来、安価で加工適性や物性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が最も多用されて来たが、近年では環境問題に対する社会的な関心の高まりを受けて、環境への悪影響の少ないポリ塩化ビニル樹脂以外の樹脂、例えばポリオレフィン系熱可塑性樹脂を使用した化粧シート等も開発され、提案されている。(特許文献1参照)
また、従来の化粧シートが木質基材に貼合わされた化粧部材は、廃棄時にはその化粧シートと木質基材の分別が困難であり、また表面化粧シートの材質が判別できない、などの問題により、原料リサイクルは困難であり、また有害ガス発生の問題から焼却処理も困難であり、埋め立て処理といった廃棄処理方法をとらざるを得ないという現状の問題がある。
【0004】
一方、ポリ乳酸樹脂は、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とするバイオマス材料であり、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となる生分解性樹脂でもある。さらには燃焼により発生する熱量も少なく、また燃焼時に発生する炭酸ガスは、もともとポリ乳酸樹脂の原料となる澱粉を光合成する時に吸収した大気中の炭酸ガスであり、カーボンニュートラルと言う観点からも環境に優しい最も有望な生分解性バイオマス樹脂であるといわれている。
【特許文献1】特開平9−300524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポリ乳酸樹脂などを用いた生分解性樹脂による積層シートは表面強度に優れ、非石油系の植物由来の環境に優しいポリ乳酸を利用するということは優れた点であるものの、その他の物性面で優れた点が見出せなかったこと、耐熱性に劣る、耐久性に劣る(生分解性)、耐薬品性に劣る、ポリ乳酸自体のもつ高剛性により加工性に劣るなどの理由により、これまで化粧シートとして実用化されるに至らなかった。
更に、これまで化粧シートとして実用化されるに至らなかった故、注意されていなかった特性として、浸透度が高いといった問題もあり、ポリ乳酸を用いた化粧シートの実用化は困難であった。
【0006】
また、化粧シートを貼り合わせる基材側の合板、MDF、ハードボード、パーティクルボードなどの脱漏あるいは吸水または放湿により含水率が変わりやすく、特に木質系基材は、化粧シート貼り合わせ時の接着剤の乾燥の度合いや、保管あるいは長期間の使用に関して表裏の湿度条件が異なることにより、木質系基材に反りを生じるということがあった。
それを解消する方法として、裏面に透湿性の高い紙などの基材を粘着する方法や、塩ビなど表面が透湿性の低いシートを基材の両面に粘着するような方法が考えられてきた。また、湿度を遮断するのにアルミ箔を積層する方法や、アルミ蒸着層を設けるなどの方法がとられてきた。しかし、これらの方法は反りや歪みの防止効果は不十分なものであったり、塩ビシートなど環境への悪影響が懸念されていたり、作業工程が多くなるなどの問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、平面状基材へのラミネート加工は勿論のこと、立体形状の基材へのラッピング加工や真空成形加工等の立体成形にも耐えることができ、しかも外気の湿度により強度が極端に劣化する事も無く、鋼板基材への透湿による錆、強度劣化などの影響を与えることなく、木質基材への反りも抑制する事のできるバイオマス原料から構成された樹脂系の化粧シートおよび化粧材ならびに化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕少なくとも、透湿度50〜1500g/m・day・40℃, 90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(1)の片側または両側に透湿度0.01〜10g/m・day・40℃,90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(2)を設けてなる化粧シート。
〔2〕透湿度が0.01〜30g/m・day・40℃, 90%RHの範囲であることを特徴とする前記〔1〕に記載の化粧シート。
〔3〕前記フィルムもしくはシート状基材(1)が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の化粧シート。
〔4〕前記フィルムもしくはシート状基材(1)が植物由来の材料からなることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の化粧シート。
〔5〕前記フィルムもしくはシート状基材(1)がポリ乳酸樹脂を含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載の化粧シート。
〔6〕前記フィルムもしくはシート状基材(2)がオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載の化粧シート。
〔7〕前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出成形により形成されたことを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕の何れか一項に記載の化粧シート。
〔8〕前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出され、シート状に成形される際に直下の基材に達しない深さで表面に凹凸模様を同時に施すことを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕の何れか一項に記載の化粧シート。
〔9〕前記フィルムもしくはシート状基材(1)の片側もしくは両側に絵柄層があり、その外側に前記フィルムもしくはシート状基材(2)が設けられていることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕の何れか一項に記載の化粧シート。
〔10〕前記〔1〕〜〔8〕の何れか一項に記載の化粧シートの製造方法であって、
前記フィルムもしくはシート状基材(2)を溶融押出成形により形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。
〔11〕前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出され、シート状に成形される際に直下の基材に達しない深さで表面に凹凸模様を同時に施すことを特徴とする前記〔10〕に記載の化粧シートの製造方法。
〔12〕前記〔1〕〜〔9〕の何れか一項に記載の化粧シートを金属基材に貼合わせたことを特徴とする化粧材。
〔13〕前記〔1〕〜〔9〕の何れか一項に記載の化粧シートを木質基材に貼合わせたことを特徴とする化粧材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧シートによれば、少なくとも、透湿度が50〜1500g/m・day・40,90%RHの範囲と比較的高いフィルムもしくはシート状基材(1)の片側または両側に、透湿度0.01〜10g/m・day・40,90%RHと比較的低い範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(2)を設けることで、化粧シートの透湿度を低減できる。これにより、化粧シートを例えば木質基材に貼り合せた場合でも、木質基材からの放湿を遅らせることにより反りを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の化粧シートによれば、前記フィルムもしくはシート状基材(1)が熱可塑性樹脂からなることにより、シート状基材の加熱溶融成形が可能となる。また、意匠性の高い化粧シートを提供することができる。
【0011】
また、本発明の化粧シートによれば、前記フィルムもしくはシート状基材(1)が植物由来の材料、特にポリ乳酸樹脂を含む材料からなることにより、再生可能な資源を有効利用し、環境に優しい化粧シートを提供することができ、更にポリ乳酸を使用することで硬く、強度の高い化粧シートを提供することができる。
【0012】
また、本発明の化粧シートによれば、前記フィルムもしくはシート状基材(2)がオレフィン系樹脂を含むことにより、透湿度も低く、コスト的にも有利な汎用の材料で化粧シートを提供することができる。
【0013】
また、本発明の化粧シートの製造方法によれば、前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出成形により形成されたことにより、少ないエ程で高い機能を有する化粧シートおよびその製造方法を提供することができる。
【0014】
また、本発明の化粧シートの製造方法によれば、前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出され、シート状に成形される際に直下の基材に達しない深さで表面に凹凸模様を同時に施すことにより、更に意匠性の高い化粧シートを、より少ないエ程で、また、防湿の機能を損なうことなく製造することができる。
【0015】
本発明の化粧材によれば、前記の何れかに記載の化粧シートを金属基材に貼合わせたことにより、金属基材への透湿による錆、強度劣化などの影響を与えることのない化粧材を提供することができる。
【0016】
本発明の化粧材によれば、前記の何れかに記載の化粧シートを木質基材に貼合わせたことにより、吸湿しやすい木質基材でも、反りなどを生じさせない化粧材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の化粧シートは、少なくとも、透湿度50〜1500g/m・day・40℃, 90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(1)の片側または両側に透湿度0.01〜10g/m・day・40℃,90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(2)を設けてなる。フィルムもしくはシート状基材(1)とフィルムもしくはシート状基材(2)の間には、接着剤からなる層を設けてもよく、接着層を設けてもよい。また、化粧シートの外側になるフィルムもしくはシート状基材(2)には、トップコート層を設けてもよい。更に、フィルムもしくはシート状基材(1)の片面又は両面には、絵柄層を設けていてもよい。
【0018】
以下、化粧シートを構成する構成部材について説明する。
本発明の化粧シートにおいて、フィルムもしくはシート状基材(1)は、少なくとも、透湿度50〜1500g/m・day・40℃,90%RHの範囲にあるもので、この範囲にあれば、特に材料を限定することは無い。熱可塑性樹脂から形成したフィルム、紙、不織布など様々な基材を用いることができ、更に、これらに防御、抗菌、耐水、密着向上などの機能を付与するためにコートなどの加工処理を施した基材などもこれに含まれる。なお、このフィルムもしくはシート状基材(1)の吸水率は、0.01〜5%以内の範囲にあることがより好ましく、この範囲にあれば、基材やその他様々な場所で生じた水分をある程度は保持することができ、かつ、その水分による化粧シートを貼る基材および化粧シートの劣化・腐食が起こり難い。
【0019】
本発明において透湿度とは、フィルムが水蒸気を透過させる性質を示す値である。単位はg/m・day・40℃,90%RHで表示され、JIS Z0208、JIS K7107、ASTM E96−94で規定される。
更に、このフィルムもしくはシート状基材(1)が熱可塑性樹脂からなると、シート状基材の加熱溶融成形が可能となり、また意匠性の高い化粧シートを提供することができる。
【0020】
また、フィルムもしくはシート状基材(1)が植物由来の材料からなると、再生可能な資源を有効活用し、環境にやさしいため、より好ましい。植物由来材料とは、木粉、木材チップ、木材パルプ、コットン、ケナフ、藁などの天然繊維や天然セルロース系材料、レーヨンなどの再生セルロースまたはセルロースエステルのようなセルロース誘導体、トウモロコシやいも、さとうきび、米などから得られる澱粉系材料やその誘導体、更にこれらの糖類を含む植物から微生物によって得られるポリヒドロキシアルカノエート、更にはこれらの植物から発酵・重合などの過程を経て得られるポリ乳酸やポリブチレンサクシネート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのバイオマスプラスチック、更には、これらの植物から微生物発酵などにより生成されるモノマーを重合などの過程を経て得られる、変性バイオマスポリマーであるポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル系樹脂などの材料も挙げることができる。
【0021】
特に、植物由来材料の中でも比較的融点の高いポリ乳酸を使用することで、より硬く、強度の高い化粧シートを提供することができるため好ましい。また、ポリ乳酸には抗菌性があることが知られており、ポリ乳酸を用いた化粧シートには抗菌性が期待できる。
【0022】
ポリ乳酸としては、とうもろこしなどのでんぷんやセルロースから調製されるポリ乳酸樹脂単一の材料での使用が可能で、ポリ‐L‐乳酸、ポリ‐D‐乳酸、L‐乳酸とD‐乳酸とのランダム共重合体などのポリ乳酸、または、ポリ‐L‐乳酸とポリ‐D‐乳酸の混合物、いわゆるステレオコンプレックスポリ乳酸、あるいはそれらの誘導体が好ましい。
特に、ステレオコンプレックスポリ乳酸はポリ‐L‐乳酸とポリ‐D‐乳酸が1:1で結晶化したポリ乳酸であり、通常のポリ乳酸より融点が高く、耐熱性のポリ乳酸として知られる。このステレオコンプレックスポリ乳酸を使用した化粧シートは、耐熱性が付与される。ポリ乳酸樹脂中に含まれるL‐乳酸とD‐乳酸の割合は、ポリ乳酸樹脂の結晶性、耐熱性、強度などに影響を与える。L‐乳酸とD‐乳酸の比率は10%以下、50%付近、90%以上のものが、好ましく用いられる。
【0023】
また、これらの各ポリ乳酸樹脂の混合物やアロイとしても使用が可能であり、化粧シートが使用される条件や製造工程で求められる加工性の中で、必要な物性が得られるよう混合して使用することが可能である。
【0024】
混合して使用することができる材料としては、石油系はもちろん、バイオマス系原料からできた各種熱可塑性樹脂も挙げることができ、特にバイオマス系熱可塑性樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリカプロラクトン系、酢酸セルロース系、その他セルロース系、ポリエステルアミド系、酢酸ビニル系、デンプン系のものから適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
【0025】
また、フィルムもしくはシート状基材(1)には、透明熱可塑性エラストマーを含んでいてもよく、特にポリ乳酸のような固いものに用いると、フィルムの柔軟性、加工適性が付与でき、折り曲げや衡撃にも強いフィルムができる。熱可塑性エラストマーとしては、水素添加ジエン系重合体、変性ジエン系重合体が好ましく、その他にもスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーまたはこれらの混合物等が挙げられる。具体的に最も好ましいエラストマーの構造としては、水添スチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐エチレンブチレン‐オレフィン結晶ブロックコポリマー、オレフィン結晶‐エチレン‐ブチレン‐オレフィン結晶ブロックコポリマーが挙げられ、また、これらの熱可塑性エラストマーをエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アルコシキシリル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などへ変性したエラストマーが挙げられる。
【0026】
また、本発明にポリ乳酸などのようなカルボキシル基を有するポリエステルを用いる場合、加水分解を防止するために、カルボキシル基と反応する官能基を有する化合物を用いることもでき、用いられるカルボキシル基と反応性を有する官能基を有する化合物としては、N‐N‘‐ジ‐2,6‐ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6‘‐テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ポリカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ化合物、2,2’‐m‐フェニレンビス(2‐オキサゾリン)、2,2‘‐p‐フェニレンビス(2‐オキサゾリン)などのオキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アミン化合物などから選ばれる少なくとも一種または二種以上の化合物を任意に選択使用することができる。また、カルボキシル基との反応性を高める反応触媒を添加することもできる。触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物第4級アンモニウム塩、リン酸エステル、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0027】
本発明の化粧シートを構成するフィルムもしくはシート状基材(1)と(2)との積層方法においては特に制限はなく、従来公知の任意の方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、予めフィルム状あるいはシート状に成形された基材(1)をドライラミネート接着剤、感熱接着剤、感圧接着剤又は電離放射線硬化型接着剤等の適宜の接着剤を介してフィルム状あるいはシート状に成形された基材(2)の表面上に接着する方法、或いは接着剤を介さずに熱圧着又は超音波溶着等の手段によって直接接着する方法や、フィルムもしくはシート状基材(2)を加熱溶融し、フィルム乃至シート状に押出し成形すると同時に熱可塑性樹脂シートからなる基材(1)の表面上に積層し接着させる方法等、従来公知の各種の方法の中から、樹脂の特性に合致した方法を適宜選択して使用することができる。
【0028】
更に、本発明の化粧シートを構成するフィルムもしくはシート状基材(2)は透湿度0.01〜10g/m・day・40℃,90%RHの範囲にある基材であれば、特に材料を限定することは無く、熱可塑性樹脂から形成したフィルム、シート、各種コーティングにより作製した薄膜、紙、不織布など様々な基材を用いることができ、更に、これらに防湿、抗菌、耐水、密着向上などの機能を付与するためにコートなどの加工処理を施した基材、特に透湿度を低くするために、金属や酸化金属を蒸着などの手法でコーティングしたものなどもこれに含まれる。
【0029】
透湿度は、一般的に基材の厚みに大きく影響し、厚い程透湿度は小さくなる傾向にあるが、本発明の化粧シートにおいては、用途にもよるが、加工性・コスト・意匠性・隠蔽性など様々な理由により、平均の厚みで5〜200μmの範囲にあると好ましく、特に20〜120μmであるとより好ましい。また、本発明の化粧シートはシート状基材(2)に凹凸が施すことも可能である。この際、シート状基材(2)の凹部の深さは1〜200μmであることが好ましく、更には10〜100μmであることが好ましい。
従って、前述のフィルムまたはシート状基材(1)の厚みとその他保護層などを考慮すると、本発明の化粧シートの平均の厚みはおよそ40〜300μmの厚みと成る。
【0030】
この透湿度の高いフィルムと低いフィルムの組合せからなる構成により、本発明の化粧シートとしての透湿度が0.01〜30g/m・day・40℃,90%RHの範囲にすることができる。これにより、化粧シート外気からの化粧シートおよび化粧板を保護すると同時に木質基材からの放湿を遅らせることにより反りを防ぐことができる。
【0031】
また、意匠性の観点から、本発明の化粧シートを構成するフィルムもしくはシート状基材(2)は透明もしくは半透明であることが好ましく、透明であることに対し数値で限定などはしないが、例えば本発明の化粧シートを構成するフィルムもしくはシート状基材(1)の上に施した印刷柄が見える程度であればよい。
【0032】
本発明の化粧シートを構成するフィルムもしくはシート状基材(2)は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン‐(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6‐ナイロン、6,6‐ナイロン、6,10‐ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン‐テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができるが、特にオレフィン系樹脂が透湿度の観点から見て好ましい。
【0033】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度、又は高密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン‐プロピレン共重合体、プロピレン‐ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン樹脂、或いは下記に記載した各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。ポリオレフィン系樹脂シートは、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能である。ポリオレフィン系樹脂は、その分子構造から、水蒸気との親和性が低く、水蒸気のフィルム内への拡散が著しく低い。このことが、透湿度を低く保つことができる要因となっている。
【0034】
更に、これらのフィルムもしくはシート状基材(2)が熱可塑性樹脂を含んで成り、溶融押出成形により形成されていると、より少ないエ程で高機能の化粧シートを製造することができる。
【0035】
更に、本発明の化粧シートは凹凸模様を施すことも可能で、この凹凸模様の形成方法としては、特に制限は無いが、金属製のエンボス版を使用した機械エンボス法が最も一般的である。またエンボスの形成時期にも特に制限はなく、フィルムあるいはシート状基材(2)の積層と同時あるいは積層前後に施すことができる。またこれらの中から選ばれる複数の時期に、同一又は異なる模様のエンボスを複数回に亘って施すこともできる。なお、エンボスの凹陥部には、必要に応じてワイピング法等の手法により着色剤を充填しても良く、これによって表面の凹凸模様と同調した色彩模様を有する意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。
【0036】
特に、本発明の化粧シートにおいては、シート状に成形される際に直下の易材に達しない深さで表面に凹凸模様を同時に施すことで、更に意匠性の高い化粧シートおよびその製造方法を、より少ない工程で製造できる。更に、凹凸の深さが直下の基材に達しない深さにすることで、防湿の機能を損なわずに、提供することができる。
【0037】
また、特に押出ラミネート法により熱可塑性のフィルムもしくはシート状基材(2)を積層させる場合は、接着性樹脂を介してフィルムもしくはシート状基材(1)あるいはアンカー層、インキなどとの接着性を向上させることもできる。この場合、接着性樹脂は共押しにより押出積層させることも工程の少なさから見て好ましい。
【0038】
本発明の化粧シートは以上のような組成により構成され、化粧シート全体の透湿度は0.01〜100g/m・day・40℃,90%RH、より好ましくは0.01〜10g/m・day・40℃,90%RHの範囲にある。この範囲にあると、外気から化粧シート自体および化粧板を保護すると同時に、木質基材からの放湿を遅らせることにより反りを防ぐことができる。
【0039】
本発明の化粧シートの構成として、例えば、フィルムもしくはシート状基材(1)の片面にアンカーやインキなどにより絵柄を印刷し、更に、その上にアンカー層を設け、その上にフィルムもしくはシート状基材(2)を設ける。更に最表面にはシートの保護層を設けることもできる。構成の例としては、ここに記載の限りではなく、フィルムもしくはシート状基材(2)の上に更に絵柄層を印刷したり、フィルムもしくはシート状基材(1)の裏側に柄印刷や、隠蔽のためのベタ印刷を設けることや、更に化粧シートを貼る基材との密着を向上させるために、プライマー層を設けることもできる。
【0040】
こうして製造した化粧シートは、プライマー層、接着剤などを介し基材と貼り合わせて化粧材を構成することができ、貼り合せる接着剤としては、特に限定されないが、反応性ホットメルト接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、ビニル系接着剤などの水性エマルジョン接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤などの建築部材に使用される一般的な接着剤を用いることができる。
【0041】
なお、本発明の化粧シートの層間および表面あるいは絵柄インキ層の形成に先立ち必要に応じて、例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー処理又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、各層間の密着性の向上を図ることもできる。
【0042】
また、本発明のシートは必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、加水分解抑止剤、核剤、顔料、フィラー、発泡剤等の各種の添加剤を添加できる。
【0043】
上記の他、熱可塑性樹脂シート状基材を構成する熱可塑性樹脂に、適宜の有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を添加することによって、熱可塑性樹脂シ一ト基材を着色することもできる。特に、用途により化粧シートが隠蔽性を必要とする場合には、隠蔽性顔料を使用して熱可塑性樹脂シート状基材を隠蔽性とすることが好ましい。隠蔽性顔料とは、分散媒たる熱可塑性樹脂と比較して高屈折率の顔料であり、屈折率の高さや耐侯性、耐薬品性等の面から、例えば酸化チタン系顔料や酸化鉄系顔料等の無機顔料を少なくとも使用することが好ましい。勿論、熱可塑性樹脂シート状基材自体を隠蔽性とする替わりに、隠蔽性顔料等を含有する印刷インキ又はコーティング剤等からなる隠蔽ベタ層を設けてもよく、両者を併用することもできる。
【0044】
また、化粧シートの表面に更に優れた表面物性を付与する目的で、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層の表面にトップコート層を設けることもできる。トップコート層の構成材料としては、従来から係る化粧シートのトップコート層の構成材料として公知の各種のトップコート剤の中から、任意のものを使用することができる。一般的には、少なくとも下地を透視可能な透明性を有する必要がある他、化粧シートの用途により要求される耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を具備させるべく、硬化性樹脂を主成分とする材料から構成することが好ましい。但し、立体成形用途の場合には、化粧シートの伸びに迫従すべく柔軟性にも配慮する必要がある。
【0045】
上記トップコート層の構成材料として、具体的には、例えばメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、好適に使用することができる。また必要に応じて、艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、結露防止剤、抗菌剤、防腐剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。また、トップコート層を艶の異なる2層以上から構成し、その内1層以上を絵柄状に設けることによって、表面の艶の変化による材質感や視覚的立体感を有する化粧シートを得ることもできる。
【0046】
本発明の化粧シートを張合わせる金属基材は、特に限定されるものではなく、従来から建装材の金属材料として用いられるものが広く適用できる。具体的には、例えば、鉄板、アルミニウム板、亜鉛メッキ板、ポリ塩化ビニル、塗工鋼板、銅板、その他の鋼板等が挙げられる。
【0047】
また、本発明の化粧シートを張合わせる木質基材は、特に限定されるものではなく、従来から建装材の木質基材として用いられるものが広く適用できる。具体的には、例えば、杉、檜、松、欅、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた、突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
【0048】
トップコート層の形成方法にも特に制限はなく、例えばグラビアコート法、ロールコ一ト法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法等の従来公知の任意のコーティング法を適宜適用することができる。
【0049】
なお、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層とトップコート層との密着性が不十分である場合には、トップコート層の塗工形成に先立ち、シート表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層とトップコート層との間の密着性を向上することができる。
【0050】
本発明の化粧シートは、金属基材に貼合わせ、化粧材を提供することができる。これにより、金属基材への透湿による錆、強度劣化などの影響を与えることのない化粧材を提供することができる。
【0051】
本発明の化粧シートは例えば合板やパーティクルボード等の木質基材に貼合わせ、化粧材を提供することができ、これにより、吸湿しやすい木質基材でも、反りなどを生じさせない化粧材を提供することができる。
【0052】
以上説明したように、本発明において平面基材へのラミネートやVカット加工等は勿論のこと、柱状基材へのラッピングラミネートや三次元凹凸基材への立体成形ラミネートにも耐えることができ、しかも外気の湿気により強度が極端に低下することもなく、鋼板基材への透湿によるさび、強度低下などの影響を与えることなく、木質基材への反りを抑制することのできるバイオマス原料から構成された、高い意匠性をもつ樹脂系化粧シートを提供することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0054】
「実施例1」
シート状基材(1)として、市販の着色二輪延伸ポリ乳酸フィルム(厚さ50μm)を用い、その表面にコロナ処理を施した後、グラビア印刷法により絵柄用インキ(東洋インキ製造株式会社製 商品名「ラミスター」)を使用して木目模様を施し、模様層を形成した。さらに木目模様の模様層上に2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 商品名「タケラック」(主剤)と商品名「タケネート」(硬化剤))からなるアンカーコート剤をグラビア印刷法により固形分厚み約1μmとなるように塗工して、アンカーコート層を形成し、基材Aを得た。
【0055】
一方、シート状基材(2)として、Tダイを用いた共押出し法によって樹脂温度190℃でのメルトインデックスが4の酸変性ポリプロピレン系樹諧(三井化学株式会社製;アドマー)と樹脂温度230℃でのメルトインデックスが18のホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製:プライムポリプロ)を、厚み比をこの順に5μmと75μmで基材Aのアンカーコート層上に積層し、積層シートBを得た。また、この際、冷却ロールの表面に道管模様の凹凸を反転させた柄を付与したものを用い、ポリプロピレン表面に深度約20μmの道管模様を形成した。
【0056】
さらに、積層シートB、シート状基材(2)側の最表層に表面保護層(大日本インキ化学工業株式会社製 商品名「UCクリヤー」)を設けて、実施例1の化粧シートを得た。
【0057】
<実施例1の化粧シートの層構成>
トップコート層:ウレタン系コート剤 6μm
透明熱可塑性ポリプロピレン系樹脂層 80μm
印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート状基材:二軸延伸ポリ乳酸フィルム 50μm
【0058】
「実施例2」
シート状基材(1)として、190℃のメルトインデックスが5のポリ乳酸100部、水添スチレンブタジエンゴム系エラストマー20部、無機顔料6部、ポリエステル用ポリカルボジイミド(日清紡)1部を二軸混練機にて混練しコンパウンドを作製した後、カレンダー法によって成形した厚さ70μmのシートを用いる以外は、実施例1と同様の手法により実施例2の化粧シートを作製した。
【0059】
<実施例2の化粧シートの層構成>
トップコート層:ウレタン系コート剤 6μm
透明熱可塑性ポリプロピレン系樹脂層(シート状基材(2)) 80μm
印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート状基材(1):ポリ乳酸系フィルム 70μm
【0060】
「実施例3」
シート状基材(1)として、190℃のメルトインデックスが5のポリ乳酸100部、乳酸とポリエステルの共重合体(大日本インキ化学工業株式会社製 商品名・型番「プラメート(R) PD−350」)10部、無機顔料6部を二軸混練機にて混練し、コンパウンドを作製した後、シート状基材(2)として、PGA(ポリグリコール酸)樹脂を用い、両者を共押しにより2層構造から成るシートを作製した。実施例1と同様に、グラビア印刷機によりシート状基材(1)の側に柄印刷を施し、シート状基材(2)の上にトップコート層を設け、実施例3の化粧シートを作製した。
【0061】
<実施例3の化粧シートの層構成>
トップコート層:ウレタンコート剤 6μm
ポリグリコール酸樹脂層(シート状基材(2)) 20μm
ポリ乳酸系樹脂層(シート状基材(1)) 60μm
印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
【0062】
「実施例4」
シート状基材(1)として、坪量70g/mの難燃紙を用い、それ以外は実施例1と同様の手法により、実施例4の化粧シートを作製した。
【0063】
「比較例1」
透明熱可塑性樹脂層のポリプロピレンをポリ乳酸に変えて、その他の材料および製造方法は実施例1と同様の手法により、比較例1の化粧シートを作製した。
【0064】
<比較例1の化粧シートの層構成>
トップコート層:ウレタン系コート剤 6μm
透明熱可塑性樹脂層:ポリ乳酸系樹脂(シート状基材(2)) 50μm
印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート状基材(1):二軸延伸ポリ乳酸フィルム 50μm
【0065】
<透湿度測定>
実施例1〜4、比較例1の化粧シートおよび基材としての二軸延伸ポリ乳酸フィルム、および押出ラミネートの際に作製した積層していない透明熱可塑性樹脂層の単体フィルム(ポリプロピレン系、ポリ乳酸系の)2種類の透湿度を、MOCON (R)水蒸気透過率測定装置PERMATRAN‐W(R)にて測定した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
「実施例5,6」
上記の実施例5,6の化粧シートを、酢酸ビニルエマルジョン接着剤を介して、厚さ3mmのMDF板に貼合わせ、十分に養生して縦2m、横1mの長方形の化粧板を得た。
【0068】
<評価>
上記実施例5,6の化粧板、および比較例1の化粧シートと同様な手法により作製した比較例2の化粧板の反りを予め測定した後、それらを40℃,90%RHの環境試験室内に横にして立て掛けて(化粧板の長手方向の辺を水平にして立て掛けて)1週間放置し、その後、それら化粧板の縦方向の反りを測定し、試験前後の差を計測した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
更に、得られた化粧板をサンシャインウェザーメーターに投入し、1000時間後の化粧シートの観察を行った。
【0071】
実施例5および実施例6の化粧シートは、特に試験前と比べても大きな変化が見られず、木目柄も鮮明で、かつ基材の反りなども観察されず、化粧シートとして良好な結果が得られた。一方、比較例2の化粧シートは木目柄がにじんでおり、かつ基材の膨れが見られ、化粧シートとして良好な結果が得られなかった。
【0072】
「実施例7,8」
上記の実施例1,2および比較例1の化粧シートを、厚さ1mmの鋼板基材の表面に貼合せて化粧材を作製し、実施例7,8および比較例3の化粧材を作製した。40℃,90%の環境試験室に放置して、3カ月後化粧材の外観観察を行った。
【0073】
実施例7および/または実施例8の化粧シートは、特に試験前と比べても大きな変化が見られず、木目柄も鮮明で、かつ基材のさびや劣化が観察されず、良好な結果が得られた。一方、比較例3の化粧シートは、基材の鋼板から出たさびが化粧シートを変色している様子が観察でき、化粧シートとして良好な結果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品などの表面化粧等に使用するための化粧シートおよび化粧材に広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、透湿度50〜1500g/m・day・40℃, 90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(1)の片側または両側に透湿度0.01〜10g/m・day・40℃,90%RHの範囲にあるフィルムもしくはシート状基材(2)を設けてなる化粧シート。
【請求項2】
透湿度が0.01〜30g/m・day・40℃, 90%RHの範囲であることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
【請求項3】
前記フィルムもしくはシート状基材(1)が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記フィルムもしくはシート状基材(1)が植物由来の材料からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記フィルムもしくはシート状基材(1)がポリ乳酸樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記フィルムもしくはシート状基材(2)がオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出成形により形成されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出され、シート状に成形される際に直下の基材に達しない深さで表面に凹凸模様を同時に施すことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記フィルムもしくはシート状基材(1)の片側もしくは両側に絵柄層があり、その外側に前記フィルムもしくはシート状基材(2)が設けられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の化粧シート。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一項に記載の化粧シートの製造方法であって、
前記フィルムもしくはシート状基材(2)を溶融押出成形により形成することを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項11】
前記フィルムもしくはシート状基材(2)が溶融押出され、シート状に成形される際に直下の基材に達しない深さで表面に凹凸模様を同時に施すことを特徴とする請求項10に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9の何れか一項に記載の化粧シートを金属基材に貼合わせたことを特徴とする化粧材。
【請求項13】
請求項1〜9の何れか一項に記載の化粧シートを木質基材に貼合わせたことを特徴とする化粧材。

【公開番号】特開2009−226869(P2009−226869A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78023(P2008−78023)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】