説明

化粧シート用隠蔽性フィルム、及び化粧シート

【課題】隠蔽性が高く、なおかつ、フィルムの外観が良好なポリオレフィン系の化粧シート用隠蔽性フィルム、及び化粧シートを提供する。
【解決手段】本発明の化粧シート用隠蔽性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)を少なくとも1層以上含み、1軸方向または2軸方向に延伸されてなるフィルムであって、フィルム全体の空孔率が10〜70%であり、80℃で15分加熱した際のフィルムの収縮率がフィルム引き取り方向(MD)及びMDに対する直角方向(TD)のいずれも10%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具類や建築内装材等に用いられるプラスチック化粧合板やプラスチック被覆鋼板等の化粧材に用いられる樹脂製の化粧シート用隠蔽性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にプラスチック化粧合板のような化粧材は、合板等の木材や鋼板等の下地材に、隠蔽性のある樹脂製のフィルムに印刷を施してなる化粧シートを貼り付けたものが多く使用されており、この化粧シート用フィルムの素材としては、塩化ビニル系樹脂が広く用いられている。
【0003】
このような塩化ビニル系樹脂からなる化粧シート用フィルムは、着色や印刷が容易で意匠性に優れており、更に下地材との接着性も良好であることから、化粧シート用として広く使用されている。しかし、塩化ビニル系樹脂は用済後の焼却廃棄処分の際に塩化水素ガスを発生する可能性があり、その処理に時間と費用とがかかること、或いは焼却炉の炉材の損傷を防止するために特別な材質の炉材を使用しなくてはならないこと、等の問題が指摘されており、ポリオレフィン系樹脂の使用が種々提案されている。
【0004】
このような化粧シート用フィルムは、意匠性の面から下地材の影響を受けないようにフィルム自体に隠蔽性が必要とされており、例えば下記特許文献1のように、ポリオレフィン系樹脂に着色剤として酸化チタンを含有させて隠蔽層性を高めた化粧シート用隠蔽性フィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−319411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、有機または無機の顔料成分からなる着色剤によってフィルムの隠蔽性を高める場合には、多量の着色剤を添加する必要があり、製品のコストも高くなるとともに、フィルムの外観の悪化が問題となる。すなわち、着色剤をフィルムに多量添加を行うと、顔料成分が分散不良を起こし隠蔽ムラの原因となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、隠蔽性が高く、なおかつ、フィルムの外観が良好なポリオレフィン系の化粧シート用隠蔽性フィルム、及び化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)を少なくとも1層以上含み、1軸方向または2軸方向に延伸されてなるフィルムを隠蔽性フィルムとして用いることにより、着色剤を用いなくても高隠蔽性を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、(1)ポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)を少なくとも1層以上含み、1軸方向または2軸方向に延伸されてなる多孔フィルムであって、フィルム全体の空孔率が10〜70%であり、80℃で15分加熱した際のフィルムの収縮率がフィルム引き取り方向(MD)及びMDに対する直角方向(TD)のいずれも10%以下である化粧シート用隠蔽性フィルム。
(2)前記フィルムは、少なくとも2種以上の積層構成からなる(1)に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
(3)前記フィルムは、少なくとも2種以上の積層構成からなり、ポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)と、ポリオレフィン系樹脂を含み、充填剤を含まない樹脂組成物Bにより構成される層(B層)とを有する、(1)又は(2)に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
(4)前記ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが0.1〜30g/10分のポリプロピレン系樹脂である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
(5)前記充填剤は、平均粒径が0.3〜10μmの炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムである(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
(6)前記樹脂組成物Aは、さらに着色剤を含んでなる(1)〜(5)のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
(7)前記フィルムは、厚みが10〜200μmである(1)〜(6)のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
(8)前記フィルムは、1軸方向に4〜7倍の範囲で延伸されてなるものである(1)〜(7)のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
及び、
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルムの少なくとも片面に印刷を施してなる化粧シート。
に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた隠蔽性を有し、なおかつ、フィルムの外観に優れたポリオレフィン樹脂系の隠蔽性フィルムを得ることができ、化粧シート用隠蔽性フィルムとして好ましく使用できる。また、着色剤の使用を低減できるのでコスト的にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧シート用隠蔽性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)を少なくとも1層以上含み、1軸方向または2軸方向に延伸されてなるフィルムであって、フィルム全体の空孔率が10〜70%であり、80℃で15分加熱した際のフィルムの収縮率がフィルム引き取り方向(MD)及びMDに対する直角方向(TD)のいずれも10%以下である。
【0012】
(樹脂組成物A)
本発明の樹脂組成物Aは、少なくともポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含んでなる。
【0013】
(ポリオレフィン系樹脂)
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0014】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体及び/または、エチレンを主成分とする、エチレンとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたポリエチレン等)、あるいは前記単独重合体及び/または共重合体と他の重合体との混合物(ポリマーブレンド)等が例示できる。この単独重合体及び/または共重合体と混合してポリマーブレンドを与えることのできる重合体としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム等のジエン系ゴムや、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、及びスチレン−ブタジエン系やスチレン−イソプレン系等のスチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体及び/または共重合体、あるいは前記単独重合体及び/または共重合体と他の重合体との混合物(ポリマーブレンド)等が例示できる。該共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとの、ランダム共重合体またはブロック共重合体、あるいはポリオレフィン系の共重合体を幹ポリマーとしたプロピレンのグラフト共重合体等が例示できる。このプロピレンと共重合可能なα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その一種または二種以上の混合物が用いられる。α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%、特に2〜6重量%とするのが好ましい。
【0016】
また、上記のプロピレンのグラフト共重合体の幹ポリマー用のポリオレフィン系共重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が例示できる。プロピレンの単独重合体及び/または共重合体と混合してポリマーブレンドを与えることのできる重合体としては、上記したポリエチレン系樹脂に混合する重合体と同じものが挙げられる。
【0017】
本発明においては、80℃における収縮率の観点からポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
中でもメルトフローレート(JIS K6758、及びJIS K7210に従って測定)が0.1〜30g/10分のポリプロピレン系樹脂がフィルムの製膜が安定するため好ましい。メルトフローレートが0.1以上であれば、押出製膜時に負荷がかかりすぎず、安定してフィルムの製膜ができる。また、メルトフローレートが30g/10分以下であれば均一にフィルムを製膜することができるため好ましい。なお、より好ましいメルトフローレートの範囲は、下限は1g/10分以上であり、上限は20g/10分以下である。
【0019】
(充填剤)
本発明において用いられる充填剤は、特に制限はなく、無機系、有機系のいずれであっても使用できる。無機系充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、タルクなどが挙げられる。有機系充填剤の具体例としては、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末が挙げられる。中でも延伸の安定性、空孔率の設計容易性等の観点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましく使用できる。
【0020】
充填剤の平均粒径は0.3〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.3μm以上であればフィルムに空孔が形成され安く、隠蔽性を向上させることができる。また、平均粒径が10μm以下であれば空孔の個数が多くなり、樹脂と空孔の界面数が増加するため、隠蔽性の点から好ましい。また、平均粒径を10μm以下とすれば、延伸が不均一または不安定となることによってフィルムの外観が悪化してしまうことを防止できる。
【0021】
さらに、フィラーの形状に異方性があると延伸時の空孔が不均一になる可能性がある。そのためどの方向からも均一である球径のフィラーは延伸がより安定する。平均粒径の下限は0.5μm以上であることが好ましく、特に1.0μm以上であることがより好ましい。また平均粒径の上限は9.0μm以下であることが好ましく、特に7.0μm以下であることがより好ましい。
なお、平均粒径の測定方法は後述する実施例に記載の評価方法のとおりである。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂に対する充填剤の量としては、ポリオレフィン系樹脂20〜70質量%に対して、充填剤を30〜80質量%添加することが好ましい。より好ましい範囲としては、ポリオレフィン系樹脂25〜60質量%に対して、充填剤を40〜75質量%添加する。充填剤が30質量%以上であれば空孔の発生が多く優位にフィルムに隠蔽性を付与できる、充填剤が80質量%以下であれば、延伸前のフィルムを安定して製膜することができる。
【0023】
(着色剤)
本発明において、樹脂組成物Aにはさらに着色剤を含んでいてもよい。
着色剤としては、特に制限はなく使用でき、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、ジメチルキナクリドン、キナクリドンY、ジクロルキナクリドン、ジケトピロロピロール、縮合アゾ、イソインドリノン、モノアゾ、Niチタンイエロー、Crチタンイエロー、焼成酸化鉄、シアニングリーン、シアニンブルー、群青、アルミニウム等が挙げられる。
【0024】
着色剤を併用する場合、充填剤と着色剤の割合を、質量比で充填剤:着色剤=1:1〜20:1の範囲とすることが好ましい。着色剤の割合を前記範囲内とすることによって隠蔽性と外観とを両立することができる。着色剤を併用することによって、延伸による多孔化のみよりも更に高隠蔽なフィルムを得られるとともに、様々な色を付けられることら、意匠性の面で有効である。
【0025】
(隠蔽性フィルムの構成)
本発明の隠蔽性フィルムは、延伸によって生じる空孔を有する多孔フィルムであり、樹脂組成物Aにより構成される単層のフィルムであってもよいが、少なくとも2種以上の積層構成のフィルムであってもよい。
積層構成の場合には、ポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)と、ポリオレフィン系樹脂を含み、充填剤を含まない樹脂組成物Bにより構成される層(B層)とを有することが好ましい。
【0026】
(樹脂組成物B)
本発明の樹脂組成物Bにおけるポリオレフィン系樹脂は、樹脂組成物Aと同様のものを使用することができる。
【0027】
(積層構成)
A層とB層を有する積層構成としては、A層/B層の2層構成、A層/B層/A層、B層/A層/B層の3層構成等、目的に応じて任意の構成を採用することができるが、フィルムの成形性や化粧シートとしての二次加工性の観点から、B層/A層/B層の3層構成が好ましい。
充填剤を含まないB層を両外層とすることによって、フィルム成形時の目やに発生を防止でき、より外観の良好なフィルムを得ることができる。この場合の厚み比率は1/8/1〜1/30/1の範囲とすることが好ましい。
積層構成としては、A層、B層以外の他の層を1層以上含んでいてもよく、4層以上の多層構成であっても構わない。
【0028】
(各層におけるその他の添加剤)
本発明におけるA層、B層には、上述の成分の他に、必要に応じて、各種添加剤を含有することができ、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤、核剤、難燃剤、消臭剤等、通常ポリオレフィン系樹脂フィルムに添加される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0029】
(隠蔽性)
本発明のフィルムは、1軸方向または2軸方向に延伸されることにより、充填剤を起点として空孔を生じて多孔フィルムとなり、光拡散の効果から隠蔽性を発現することができる。なお、隠蔽性の測定方法は後述する実施例に記載の評価方法のとおりである。
【0030】
(隠蔽性フィルムの厚み)
本発明のフィルムは、厚みが10〜200μmであることが好ましい。10μm以上であれば隠蔽性が不足することがなく、200μm以下であれば化粧シートとして使用する際の二次加工性や取り扱い性に優るため好ましい。厚みの下限としては、20μm以上であることがより好ましく、また上限としては150μm以下であることがより好ましい。
【0031】
(隠蔽性フィルムの空孔率)
本発明のフィルムは、フィルム全体での空孔率が10〜70%であることが重要である。なお、空孔率の測定方法は後述する実施例に記載の評価方法のとおりである。空孔率が10%未満であればフィルムに十分な隠蔽性を付与できない。一方で空孔率が70%より高いと延伸時にフィルムが破断する頻度が増えるため好ましくない。空孔率の範囲は、下限は20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。また上限は65%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
(隠蔽性フィルムの収縮率)
本発明のフィルムは、80℃で15分加熱した際のフィルムの収縮率がフィルム引き取り方向(MD)及びMDに対する直角方向(TD)のいずれも10%以下であることが重要である。
80℃で15分加熱した際のフィルムの収縮率が10%以下であることによって、化粧シートとして後工程で印刷が施された場合においても外観及び意匠性を損なわず、安定した二次加工性を担保できる。10%を超えると、印刷を施した化粧シートがカールしたり、印刷の柄がずれて意匠性を損なう等の問題を生じる場合がある。
収縮率としては、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。
なお、収縮率の測定方法は後述する実施例に記載の評価方法のとおりである。
【0033】
(延伸条件)
本発明のフィルムは、1軸方向に4〜7倍の範囲で延伸されてなるものであることが好ましい。延伸倍率が4倍以上であれば延伸が安定し、フィルムにムラが発生することを防止できる。また延伸倍率が7倍以下であれば延伸時にフィルムが破断することを防止することができる。
【0034】
(化粧シート)
本発明の化粧シート用隠蔽性フィルムの少なくとも片面に印刷を施すことによって化粧シートとすることができる。本発明の化粧シートは、合板等に貼り合せて家具類や建築内装材等の意匠性シートとして用いたり、鋼板等に貼り合せてプラスチック被覆鋼板等の化粧材として用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施形態について実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(1) 隠蔽性フィルムの作成
ポリオレフィン系樹脂と充填剤を表1記載の割合で配合・混合したペレット原料を用いて、Tダイを装着した押出成形機によって、シリンダー温度を230℃に設定して溶融し、B層/A層/B層の構成からなる2種3層構成の無延伸フィルムを製造した。この無延伸フィルムを、90℃に加熱したロールと延伸ロールとの間で、表1記載の延伸条件にて一軸延伸し、多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムについて後述の各種物性を評価し、測定結果を表1に示した。
【0037】
なお、表1における各ポリオレフィン系樹脂、充填剤、着色剤の詳細は以下のとおりである。
(ポリオレフィン系樹脂)
・PP :密度が0.9g/cm、230℃で測定したメルトフローレートが15g/10分のホモポリプロピレン
・PE : 密度が0.96g/cm、190℃で測定したメルトフローレートが7g/10分の高密度ポリエチレン
(充填剤)
・炭カル : 平均粒径が6.0μmの炭酸カルシウム
・タルク : 平均粒径が11.0μmのタルク
(着色剤)
・酸化チタン :平均粒径が0.25μmの酸化チタン
【0038】
<評価>
実施例における各種の物性の評価は以下に記載の方法で評価した。
【0039】
(1)平均粒径(μm)
充填剤につき、恒圧式透過法(島津式粉体比表面積測定器SS−100使用)により、測定した比表面積から算出した。試料の重量を3.0g、試料を厚さ1.35cmとし、試料層の断面積を2cm、空気圧力を50cmHOの条件下で測定し、空気の粘性係数を181×10−6g/(cm・sec)として計算した。
【0040】
(2)収縮率( % )
隠蔽性フィルムから1辺100mmの正方形試験片1片を打抜き各片の中央に印を付ける。
印を付けたところの縦、横の長さを測定し加熱する。
求める収縮率は次式により算出する。
収縮率(%)={(加熱前の長さ−加熱後の長さ)/加熱前の長さ}×100
なお、加熱条件は80℃×15分(空気乾燥機で加熱)であり、フィルム引き取り方向(MD)とMDに対する直角方向(TD)の両方について測定した。
フィルム引き取り方向(MD)及びMDに対する直角方向(TD)の収縮率がいずれも10%以下であれば化粧シート用隠蔽性フィルムとして実用範囲内である。
【0041】
(3)空孔率(%)
隠蔽性フィルムから10cm角の試料を切り取り、その重量w(g)と厚さt(μm)を計測し、樹脂組成物の比重ρ(g/cm) から、次式より算出した。
空孔率(%)=[1−{w/(10×10×t×0.0001×ρ)}]×100
【0042】
(4)隠蔽性
隠蔽性フィルムの中央部から試験片をとり、隠蔽率試験紙(JIS K5400 7.2(2)(f))の黒地と白地を下地にし色差を測定し、ΔEを求める。
なお、ΔEの数値が低いほど隠蔽性は高く、ΔEが5以下であれば化粧シート用としては十分な隠蔽性である。
【0043】
(5)メルトフローレート
JIS K6758(及びJIS K7210)に従って測定した。
【0044】
(6)外観
隠蔽性フィルムを目視にて以下の基準で評価した。
◎:極めて良好
○:若干の延伸ムラがみられるものの実用範囲内
×:隠蔽ムラが発生し化粧シート用としては実用範囲外
【0045】
(7)総合評価
全ての評価項目において優れていた場合を◎、化粧シート用として実用範囲内の場合を○、実用範囲外のものを×とした。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から、実施例1〜4のフィルムは化粧シート用隠蔽性フィルムとして優れていることが確認できた。なお着色剤だけを用いた参考例のフィルムは、酸化チタンの分散不良に起因して隠蔽ムラを生じており、外観不良を起こしていた。また、酸化チタンの量が多いためコスト的にも不利である。
また、実施例の中でも平均粒径が10μm以下である炭酸カルシウムを使用した実施例1〜3のフィルムは、平均粒径が10μmより大きいタルクを使用した実施例4のフィルムに比べて延伸ムラがなく、外観の点で優れた態様であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)を少なくとも1層以上含み、1軸方向または2軸方向に延伸されてなる多孔フィルムであって、フィルム全体の空孔率が10〜70%であり、80℃で15分加熱した際のフィルムの収縮率がフィルム引き取り方向(MD)及びMDに対する直角方向(TD)のいずれも10%以下である化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項2】
前記フィルムは、少なくとも2種以上の積層構成からなる請求項1に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項3】
前記フィルムは、少なくとも2種以上の積層構成からなり、ポリオレフィン系樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物Aにより構成される層(A層)と、ポリオレフィン系樹脂を含み、充填剤を含まない樹脂組成物Bにより構成される層(B層)とを有する、請求項1又は2に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレートが0.1〜30g/10分のポリプロピレン系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項5】
前記充填剤は、平均粒径が0.3〜10μmの炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項6】
前記樹脂組成物Aは、さらに着色剤を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項7】
前記フィルムは、厚みが10〜200μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項8】
前記フィルムは、1軸方向に4〜7倍の範囲で延伸されてなるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧シート用隠蔽性フィルムの少なくとも片面に印刷を施してなる化粧シート。

【公開番号】特開2013−52567(P2013−52567A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191526(P2011−191526)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】