説明

化粧パフ用共重合体ラテックス

【課題】化粧パフを製造する際の発泡工程からゲル化工程まで、きめ細かな発泡構造と発泡倍率を保ち、弾力性と風合いのバランスに優れたきめ細かな化粧パフを安定に効率よく生産することを可能にする化粧パフ用共重合体ラテックスを提供する。
【解決手段】脂肪族共役ジエン系単量体50〜90重量%、シアン化ビニル単量体10〜50重量%およびそれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる単量体合計100重量部を乳化重合して得られた共重合体ラテックスであって、固形分濃度が60重量%以上で、ム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃が60〜150であることを特徴とする化粧パフ用共重合体ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡工程からゲル化工程まで、きめ細かな発泡構造と発泡倍率を安定に保ち、弾力性と風合いのバランスに優れたきめ細かな化粧パフを安定に効率よく生産することを可能にする化粧パフ用共重合体ラテックスに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧パフには耐油性が求められるため、その原料には従来からアクリロニトリルとブタジエンを主な構成要素とする共重合体ラテックスが好んで使用されている。
特に化粧パフの特性を改良する目的として、これまでに種々の提案、例えば特許文献1〜8などが提案されているが、化粧パフを製造する際に発泡工程からゲル化工程まで、きめ細かな発泡構造と発泡倍率を安定に保って、弾力性と風合いのバランスに優れたきめ細かな化粧パフを安定に効率よく生産するには未だ不十分であった。
【特許文献1】特開平6−14811号公報
【特許文献2】特開平6−32942号公報
【特許文献3】特開平6−73220号公報
【特許文献4】特開平6−73221号公報
【特許文献5】特開平11−263846号公報
【特許文献6】特開2004−105355号公報
【特許文献7】特開2004−107436号公報
【特許文献8】特開2004−204148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は化粧パフを製造する際の発泡工程からゲル化工程まで、きめ細かな発泡構造と発泡倍率を保ち、弾力性と風合いのバランスに優れたきめ細かな化粧パフを安定に効率よく生産することを可能にする化粧パフ用共重合体ラテックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前述の諸事情に鑑み現状の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、共重合体ラテックスのム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃を特定範囲とすることで、上記問題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、脂肪族共役ジエン系単量体50〜90重量%、シアン化ビニル単量体10〜50重量%およびそれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる単量体合計100重量部を乳化重合して得られた共重合体ラテックスであって、固形分濃度が60重量%以上で、ム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃が60〜150である化粧パフ用共重合体ラテックスを提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
化粧パフを製造する際の発泡工程からゲル化工程まで、きめ細かな発泡構造と発泡倍率を保ち、弾力性と風合いのバランスに優れたきめ細かな化粧パフを安定に効率よく生産することを可能にする化粧パフ用共重合体ラテックスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
【0007】
本発明におけるシアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
【0008】
上記単量体と共重合可能な他の単量体としては、芳香族ビニル単量体、エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有するエチレン系不飽和単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、エチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。
【0009】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0010】
エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレートやブチルアクリレートの使用が好ましい。
【0011】
ヒドロキシアルキル基を含有するエチレン系不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0012】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0013】
エチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0014】
本発明の共重合体ラテックスを構成する上記の単量体組成は、脂肪族共役ジエン系単量体50〜90重量%、シアン化ビニル系単量体10〜50重量%、およびそれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%であることが必要である。
【0015】
脂肪族共役ジエン系単量体が50重量%未満では化粧パフの風合いが硬くなるので好ましくない。また90重量%を超えると共重合体ラテックスの固形分濃度を上げる濃縮工程で安定性が低下するので好ましくない。好ましくは55〜80重量%、更に好ましくは58〜75重量%である。
【0016】
シアン化ビニル単量体が10重量%未満では共重合体ラテックスの固形分濃度を上げる濃縮工程で安定性が低下するので好ましくない。また50重量%を超えるとでは化粧パフの風合いが硬くなるので好ましくない。好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜40重量%である。
【0017】
共重合可能な他の単量体の合計が20重量%を超えると化粧パフの風合いが硬くなるので好ましくない。好ましくは0〜15重量%、さらに好ましくは0〜10重量%である。
【0018】
本発明における共重合体ラテックスは、公知の乳化重合法により製造することができ、また、これら共重合体ラテックスの重合に際しては、従来公知の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、還元剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等、さらには炭化水素系溶剤を使用することができる。また重合に際し用いられる各単量体およびその他添加剤の添加方法については特に制限はなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法等いずれも採用できる。
【0019】
本発明における共重合体ラテックスの乳化重合において使用される乳化剤としては、ロジン酸石鹸、脂肪酸石鹸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。特に、ロジン酸石鹸、脂肪酸石鹸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩が好ましい。特に、重合系内のpHが9以下ではアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩が、重合系内のpHが9以上ではロジン酸石鹸、脂肪酸石鹸が好ましい。更には、重合系内のpHが9以上ではロジン酸石鹸、脂肪酸石鹸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩の3者を併用すると安定な乳化重合を進行させることができると同時に、化粧パフ成型時に好適な作業性を確保しやすくなる。
【0020】
本発明における共重合体ラテックスの乳化重合に使用できる連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、α−メチルスチレンダイマー、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができ、連鎖移動剤の量は特に限定されない。
【0021】
本発明における共重合体ラテックスの乳化重合に使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に過硫酸カリウムや過硫酸ナトリウムなどの水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイドなどの油溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0022】
また、反応系内に重合開始剤とともに還元剤を存在させると、性能の低下無く反応速度が促進されるので好ましい。還元剤の種類は特に限定されないが、鉄などの遷移金属を含む還元剤を使用すると一般に化粧パフの耐熱変色性能が低下すると言われているので好ましくない。遷移金属を含む還元剤を使用しても金属封止剤をラテックスに添加すれば化粧パフの耐熱変色性能は若干改良されると推測されるが、遷移金属を含む還元剤、例えば硫酸第一鉄などは使用を避けた方がよい。
本発明において好ましく用いられる還元剤の具体例としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、また、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩などの還元性スルホン酸塩、更にはL−アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはデキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が上げられる。特に亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸が好ましい。
【0023】
また、重合に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用しても良い。特に、沸点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすいシクロヘキセンやトルエンが、本発明の目的とは異なるものの、環境問題の観点から好適である。
【0024】
本発明の共重合体ラテックスの固形分濃度は60重量%以上であることが必要である。65重量%未満では化粧パフのきめの細かさが劣るため好ましくない。
【0025】
該共重合体ラテックスの固形分濃度を60重量%以上にするためには、乳化重合して得られた共重合体ラテックスを濃縮する方法、また得られた共重合体ラテックス粒子の一部または全部を公知の粒子肥大化法に従って、例えば平均粒子径が50nm〜200nmの共重合体ラテックスを100nm〜数ミクロンに肥大化させた後、固形分濃度が60重量%以上となるよう濃縮する方法等により調整することができるが、その調整のし易さの点から特に後者の方法が望ましい。
該共重合体ラテックスの固形分濃度が60重量%未満では化粧パフのきめが粗くなり、風合いも硬くなるため好ましくない。好ましくは63重量%、さらに好ましくは65重量%以上である。
【0026】
なお、共重合体ラテックスの粒径肥大化方法としては特に制限されないが、例えば、カルボキシル基含有共重合体粒子等の粒子径肥大化剤を添加して強制的に撹拌する方法(一般にケミカルアグロメ法と称されている)、重合途中で反応を停止させて粒子が単量体で膨潤し、相互に融着し易い状態で強制的に撹拌する方法、重合終了後の共重合体ラテックスにスチレン等の単量体やトルエン、シクロヘキセン等の溶剤を添加して、粒子がそれらで膨潤し、相互に融着し易い状態で強制的に撹拌する方法、ある温度に加温した共重合体ラテックスを一定の圧力でノズルから噴射させるなどして高せん断を与えて肥大化させる方法(以下、加温加圧肥大化法と称する)等が挙げられる。
【0027】
本発明の化粧パフ用共重合体ラテックスは、必要に応じて二種類のラテックスをブレンドすることも可能であり、その際には最終的に得られる共重合体ラテックスの組成ならびに共重合体ラテックスのム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃が本発明にて規定する範囲内となるように調整すればよい。なお、本発明における共重合体ラテックスは、そのム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃が60〜150であることが必要である。ムーニー粘度が60未満では化粧用パフの風合いが柔らかすぎて、反発が不足するので好ましくない。また150を超えると化粧パフの風合いが硬くなるので好ましくない。好ましくは65〜130、特に好ましくは70〜130である。
【0028】
また、本発明の化粧パフ用共重合体ラテックスのゲル含有量については特に制限はないが、70〜95重量%であることが好ましい。
【0029】
本発明の共重合体ラテックスを用いた化粧パフの製造方法における各工程の具体的方法には特に限定はなく、従来公知のいずれの方法も用いることができる。化粧パフの製造工程は通常、加硫剤や助剤を添加する工程、発泡工程、ゲル化工程、加硫工程、水洗工程、乾燥工程の順からなる。加硫剤や助剤を添加する工程では、加硫剤、加硫促進剤、必要により老化防止剤、増粘剤、保水剤、着色剤などの助剤が適宜添加される。加硫剤は特に限定されないが、例えば硫黄やそれを乳化分散したコロイド硫黄などが使用される。加硫助剤や加硫促進剤も特に限定されないが、加硫助剤としては亜鉛華などが、加硫促進剤としては、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバメート系促進剤、2−メルカプトベンゾチアゾール及びその亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系促進剤等が挙げられる。
【0030】
化粧パフの製造に際して、本発明の共重合体ラテックスの固形分換算100重量部に対する前述の各薬剤の添加量にも特に限定はないが、例えば、硫黄0.3〜6重量部、亜鉛華0.5〜7重量部、加硫促進剤0.2〜4重量部の範囲が一般的である。また、その他の助剤として各種の老化防止剤、増粘剤、保水剤、着色剤などの助剤についても本発明の効果を妨げない範囲にて添加してもよい。
【0031】
化粧パフの製造における発泡方法は従来公知の方法がいずれも使用でき、特に制限されない。
発泡方法としては、空気を種々の方法で混入させる強制発泡方法単独、あるいは強制発泡方法でガス発生物質を併用して使用することもできる。強制発泡装置としては、例えば、オークス発泡機、超音波発泡機等を使用できる。
【0032】
ゲル化方法も従来公知の方法がいずれも使用でき特に制限されず、オルガノポリシロキサンを使用した感熱凝固法や急激に温度低下させる冷凍凝固法等も使用できるが、本発明の共重合体ラテックスは、ゲル化剤として珪フッ化ソーダや珪フッ化カリ、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物を起泡した共重合体ラテックスに添加する常温凝固法(ダンロップ法)が最も効果的と考えられる。
【0033】
ゲル化後の加硫工程での諸条件も特に制限はなく、100〜150℃程度の温度で10〜100分程度加硫させることにより良質のゴム発泡体が得られる。また洗浄工程や乾燥工程の諸条件も特に制限はないが、25〜60℃の水またはお湯で5〜20分間程度、攪拌しながら洗浄し、その後遠心分離法などの方法で水を切り、ゴム発泡体の風合いを保てるように40〜120℃程度の温度で乾燥する。
乾燥工程終了後、化粧パフの最終成型物を得るためには、ゴム発泡体を所定の厚さに切り出し、それを所定の形状に切断し、切断した側面やエッジをきめの細かな回転砥石で研磨仕上げする。
【0034】
[実施例]
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。ただし、純水と水以外は固形分あるいは有効成分の重量部または重量%を示す。また、実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0035】
ム−ニ−粘度
日本工業規格JIS K6383に従い、共重合体ラテックス約40gを用いて100℃にて測定した。
【0036】
共重合体ラテックスのゲル含有量測定
室温雰囲気下にて48時間乾燥させ、共重合体ラテックスのフィルムを作成する。そのフィルムを約1g秤量し、これを400ccのメチルエチルケトンに入れ48時間膨張溶解させる。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたメチルエチルケトン不溶分を乾燥後秤量し、この重量のはじめのフィルム重量に占める割合をゲル含有量として重量%で算出した。
【0037】
共重合体ラテックスの平均粒子径の測定
共重合体ラテックスを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡写真を撮影して、粒子1000個の直径を計測し数平均の粒子径を求めた。
【0038】
化粧パフの成型
共重合体ラテックスの固形分換算100部に対して加硫剤としてコロイド硫黄2部、加硫促進剤としてジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業(株)製 ノクセラーEZ)1.5部、亜鉛華3部を添加し、二軸型ハンドミキサーを用いて室温で強制撹拌して、前述のごとく体積で7倍発泡させる。その後、珪フッ化ソーダのスラリー2部を添加し室温で30秒間撹拌を継続して成型用型枠に流し入れ、ゲル化した後110℃の加圧スチームで40分間加硫させた。型枠から取り出した化粧パフを長さ方向に厚み1cmにスライスし、60℃のお湯で10分間水洗した後、70℃のオーブン中で90分乾燥し化粧パフ成型物を得た。
【0039】
化粧パフの品質評価
前述のように成型された化粧パフ成型物のきめの細かさや弾力性、風合いを官能的に検査して、下記の通り判定した。
不良1 :発泡構造のきめが粗く、風合いが柔らかすぎて、反発が不足している。
不良2 :発泡構造のきめは細かいが、風合いが硬く、弾力が不足している。
良好1 :風合いが柔らかく弾力性に富むが、発泡構造のきめがやや粗い。
良好2 :発泡構造のきめは細かいが、やや風合いが硬く、弾力がやや劣る。
優秀 :発泡構造のきめが細かく、風合いが柔らかく、弾力性に富む。
【0040】
実施例A
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン70部、アクリロニトリル30部、t−ドデシルメルカプタン0.2部を仕込み、撹拌しながら温度を15℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は66%、平均粒子径は580nmの実施例Aの共重合体ラテックスを得た。
【0041】
実施例B
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン65部、アクリロニトリル35部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、シクロヘキセン10部を仕込み、撹拌しながら温度を10℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は66%、平均粒子径は620nmの実施例Bの共重合体ラテックスを得た。
【0042】
実施例C
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.8部、ブタジエン65部、アクリロニトリル30部、メチルメタクリレ−ト5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部を仕込み、撹拌しながら温度を25℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.5部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は67%、平均粒子径は590nmの実施例Cの共重合体ラテックスを得た。
【0043】
実施例D
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン70部、アクリロニトリル30部、α−メチルスチレンダイマー1部、t−ドデシルメルカプタン0.15部を仕込み、撹拌しながら温度を10℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は66%、平均粒子径は580nmの実施例Dの共重合体ラテックスを得た。
【0044】
実施例E
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン65部、アクリロニトリル35部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、シクロヘキセン15部を仕込み、撹拌しながら温度を10℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が90%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は67%、平均粒子径は600nmの実施例Eの共重合体ラテックスを得た。
【0045】
比較例A
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン60部、アクリロニトリル40部、t−ドデシルメルカプタン1部を仕込み、撹拌しながら温度を15℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は65%、平均粒子径は570nmの比較例Aの共重合体ラテックスを得た。
【0046】
比較例B
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン65部、アクリロニトリル35部、α−メチルスチレンダイマー5部、t−ドデシルメルカプタン0.05部を仕込み、撹拌しながら温度を5℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は68%、平均粒子径は590nmの比較例Bの共重合体ラテックスを得た。
【0047】
比較例C
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.8部、ブタジエン60部、アクリロニトリル30部、メチルメタクリレ−ト10部、t−ドデシルメルカプタン0.1部を仕込み、撹拌しながら温度を30℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.5部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部、t−ドデシルメルカプタン0.6部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は67%、平均粒子径は620nmの比較例Cの共重合体ラテックスを得た。
【0048】
比較例D
耐圧性の100リットル重合反応機に、純水130部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、ロジン酸カリウム1部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.4部、エチレンジアミン四酢酸0.01部、硫酸第一鉄0.0008部、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.2部、ブタジエン70部、アクリロニトリル25部、メチルメタクリレ−ト5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部を仕込み、撹拌しながら温度を5℃に保った。次に、クメンハイドロパーオキサイド0.1部を添加して反応を開始した。次いで重合転化率が70%に達したところでホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム0.1部を添加した。重合転化率が95%以上になった時点で重合停止剤としてジエチルヒドロキシアミンを添加して重合を終了した。
なお、得られた共重合体ラテックスについては、マントン−ゴーリン(Manton−Gaulin)ホモジナイザーを用いて、温度48℃、圧力3.3×10Paの条件の加温加圧肥大化法により粒子径肥大化処理を行い、濃縮して、その固形分濃度は68%、平均粒子径は550nmの比較例Dの共重合体ラテックスを得た。
【0049】
実施例F〜G、比較例E
表2に記載の配合割合にて共重合体ラテックスを混合し、実施例F〜G、比較例Eの共重合体ラテックスを得た。
【0050】
上記の各共重合体ラテックスを用いて化粧パフを成型し、得られた化粧パフの品質を評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のとおり、本発明は化粧パフを製造する際の発泡工程からゲル化工程まで、きめ細かな発泡構造と発泡倍率を保ち、弾力性と風合いのバランスに優れたきめ細かな化粧パフを安定に効率よく生産することを可能にする化粧パフ用共重合体ラテックスを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン系単量体50〜90重量%、シアン化ビニル単量体10〜50重量%およびそれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる単量体合計100重量部を乳化重合して得られた共重合体ラテックスであって、固形分濃度が60重量%以上で、ム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃が60〜150であることを特徴とする化粧パフ用共重合体ラテックス。
【請求項2】
ム−ニ−粘度 MS(1+4)100℃が70〜130である請求項1記載の化粧パフ用共重合体ラテックス。
【請求項3】
共重合体ラテックスのゲル含有量が70〜95重量%である請求項1又は2記載の化粧パフ用共重合体ラテックス。

【公開番号】特開2006−181051(P2006−181051A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376877(P2004−376877)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】