説明

化粧品油剤用可溶化組成物

【課題】 可溶化力に優れ少量の使用でスクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタノイン等の化粧品用油剤が可溶化出来ると共に、調製した可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)の温度安定性、及びノビやべたつき面等の使用性が良好な化粧品油剤用可溶化組成物を提供する。
【解決手段】
次の成分(A)〜(B)
(A)水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、リシノレイン酸0.9〜1.0モルを酸価1.0以下までエステル化反応したリシノレイン酸ポリグリセリル
(B)水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、オレイン酸、ラウリン酸の一種以上を用い、オレイン酸とラウリン酸の合計モル数が0.9〜1.6モル、酸価1.0以下までエステル化反応した、オレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルの一種以上
から成り(A)と(B)の重量比が、(A)/(B)=1.0以下である化粧品油剤用可溶化組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品油剤用可溶化組成物に関するものであり、化粧水や美容液等の化粧品へ、化粧品油剤を可溶化し、透明に配合する事が出来る化粧品油剤用可溶化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品の内、化粧水や美容液等の皮膚保護性を向上するために、スクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタノイン等の化粧品油剤を透明に配合する場合がある。これら油剤は、水に対して難溶性の成分であり、通常は可溶化剤によって可溶化し、透明に配合される。この可溶化剤として、従来からHLBが12以上の親水性界面活性剤が、その可溶化力の強さ故に一般的に使用されている。例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン誘導体が挙げられる。しかしながら、これらのポリオキシエチレン誘導体の中には、配合量によって皮膚刺激性や眼粘膜刺激性が認められたり、感作性が認められたりする等の問題点があった。更には、親水基としてエチレンオキシド鎖を有している為、エチレンオキシド鎖の分解によるホルマリンの溶出等の問題があった。
【0003】
皮膚等に対する刺激の面から、より安全性を高める目的で、ポリグリセリン脂肪酸エステルの使用が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。しかしながら、これら報告に用いられているポリグリセリン脂肪酸エステルは、可溶化力が弱く、可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)を調製するには、かなり多量に配合する必要があり、得られる可溶化化粧料はノビが重くなる、塗布後べたつく等の官能面上の問題があった。また、低温から高温までの温度安定性が弱く、外観が濁ったりし安定性面上の問題もあった。
【0004】
その他、ポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した方法が提案されている(特許文献3)。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとポリグリセリンラウリン酸エステルとの混合物を用いるものであり、微細エマルション(調製物の外観が半透明)を得る方法としては良好であるが、透明な外観を必要とする可溶化に対しては、不十分な方法であった。つまり、化粧水や美容液等にスクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタノイン等の化粧品油剤を可溶化する為には、多量のポリグリセリン脂肪酸エステルが必要となり官能面上の問題があり、また温度安定性面においても不十分なものであった。
【0005】
以上の事から、安全性の高い界面活性剤として幅広い分野で使用されているポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた、可溶化力と温度安定性、及びノビやべたつき面等の使用性に優れた化粧品油剤用可溶化組成物の開発が求められていた。
【特許文献1】特開平6−219923号公報
【特許文献2】特開平11−71256号公報
【特許文献3】特許第3534199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題点を解決した化粧品油剤用可溶化組成物を提供するものである。即ち、可溶化力に優れ少量の使用でスクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタノイン等の化粧品用油剤が可溶化出来ると共に、調製した可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)の温度安定性、及びノビやべたつき面等の使用性が良好な可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリグリセリンとリシノレイン酸を特定の反応条件でエステル化反応したリシノレイン酸ポリグリセリルと、特定のオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルとを混合し、これらの混合比率が特定の重量比である化粧品油剤用可溶化組成物が、上記課題を解決し得る事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、次の成分(A)〜(B):
(A)水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、リシノレイン酸0.9〜1.0モルを酸価1.0以下までエステル化反応したリシノレイン酸ポリグリセリル
(B)水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、オレイン酸、ラウリン酸の一種以上を用い、オレイン酸とラウリン酸の合計モル数が0.9〜1.6モル、酸価1.0以下までエステル化反応した、オレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルの一種以上
から成り(A)と(B)の重量比が、(A)/(B)=1.0以下である化粧品油剤用可溶化組成物(請求項1)を提供する。
【0009】
更には、上記成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルが、オレイン酸とラウリン酸の混合脂肪酸ポリグリセリルから成り、そのモル比が、ラウリン酸/オレイン酸=1.0以下である(請求項2)、若しくは、オレイン酸ポリグリセリルとラウリン酸ポリグリセルの混合物から成り、その重量比がラウリン酸ポリグリセリル/オレイン酸ポリグリセリル=1.0以下である(請求項3)化粧品油剤用可溶化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧品油剤用可溶化組成物は、可溶化力に優れ少量の使用でスクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタノイン等の化粧品用油剤が可溶化出来ると共に、調製した可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)の温度安定性、及びノビやベタつき面等の使用性が良好な可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)を開発する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いる、水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリンとしては、グリセリンを原料とし、脱水縮合反応し得たポリグリセリン等が挙げられ、好ましくは平均重合度10〜15のポリグリセリンである。例えばデカグリセリン、ウンデカグリセリン、ドデカグリセリン、ペンタデカグリセリンが挙げられ、これらの一種又は二種以上が用いられる。平均重合度が10未満のポリグリセリンを用いた場合は、可溶化性能が不十分となり、好ましくない。逆に、平均重合度が20を超えるとエステル化反応が困難となり好ましくない。また、入手も困難で有る為好ましくない。
【0013】
ここで言うポリグリセリンの平均重合度とは、水酸基価から算出したものであり、以下の(i)式により算出する。また、(i)式中の水酸基価は「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)に準拠し測定する。具体的には、試料1gを無水酢酸・ピリジン溶液によりアセチル化する時、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数で表され、以下の(ii)式で求められる。
【0014】
平均重合度=(112.2×103−18×水酸基価)/
(74×水酸基価−56.1×103) (i)
水酸基価=(a−b)×28.05/試料の採取量(g) (ii)
a:空試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
【0015】
本発明に用いるリシノレイン酸としては、中和価が170〜190のものを用いるのが良い。この範囲外の中和価を示すリシノレイン酸を用いると、本発明の目的である可溶化力を十分に発揮するリシノレイン酸ポリグリセリルを合成する事が出来ない。
【0016】
本発明の成分(A)であるリシノレイン酸ポリグリセリルは、上記水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、リシノレイン酸0.9〜1.0モルを酸価1.0以下までエステル化反応させる。リシノレイン酸が0.9モル未満の場合は、反応物に未反応のポリグリセリンが含まれ、可溶化力を十分に発揮するリシノレイン酸ポリグリセリルを合成する事が出来ない。逆に、リシノレイン酸が1.0モルを超える場合は、得られるエステルの親油性が高くなり、可溶化力を十分に発揮するリシノレイン酸ポリグリセリルを合成する事が出来ない。
【0017】
本発明に用いる成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルを構成する脂肪酸としては、オレイン酸、ラウリン酸の一種以上を用いる。これらは特に限定はないが、オレイン酸としては、中和価190〜210のものを用いるのが良い。また、ラウリン酸としては、中和価が270〜290のものを用いるのが良い。この範囲外の中和価を示すオレイン酸、ラウリン酸を用いると、本発明の目的である可溶化力を十分に発揮するオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルを合成する事が出来ない。また、これら以外の脂肪酸では、本発明の目的である可溶化力を十分に発揮出来ないか、可溶化水溶液中に経時で沈殿物が発生するため、安定性面において、好ましくない。
【0018】
本発明の成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルは、上記水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、オレイン酸、ラウリン酸の一種以上の合計モル数が0.9〜1.6モルで酸価1.0以下までエステル化反応させる。オレイン酸、ラウリン酸の一種以上の合計モル数が0.9モル未満の場合は、反応物に未反応のポリグリセリンが含まれ、可溶化力を十分に発揮するオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルを合成する事が出来ない。逆に、オレイン酸、ラウリン酸の一種以上の合計モル数が1.6モルを超える場合は、得られるエステルの親油性が高くなり、可溶化力を十分に発揮するオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルを合成する事が出来ない。
【0019】
また本発明において、上記成分(A)であるリシノレイン酸ポリグリセリル、及び成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルの重量比は、(A)/(B)=1.0以下であり、好ましくは0.1〜0.5である。この範囲外、すなわち(A)/(B)が1.0を超える場合は本発明の目的である可溶化力を十分に発揮出来ない。
【0020】
上記成分(A)であるリシノレイン酸ポリグリセリル、及び成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルのエステル化反応は、酸価1.0以下までエステル化反応を行う。酸価1.0を超えたところで反応を終了すると、得られるエステル中に未反応の脂肪酸が多く残り過ぎ、本発明の目的である可溶化力を十分に発揮する事が出来ず好ましくない。また、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの臭気も悪く、また未反応脂肪酸により、皮膚刺激を誘発する可能性が有り好ましくない。
【0021】
ここで言う酸価とは、試料(ポリグリセリン脂肪酸エステル)1g中に含まれている遊離脂肪酸(未反応脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数であり、「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)に準拠し測定する。以下の式により算出する。
酸価=(5.611×A×F)/B
A:0.1モル/L水酸化カリウム標準液使用量(ml)
F:0.1モル/L水酸化カリウム標準液のファクター
B:試料採取量(g)
【0022】
本発明において、上記成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルがオレイン酸とラウリン酸の混合脂肪酸ポリグリセリルであり、そのモル比がラウリン酸/オレイン酸=1.0以下の範囲である場合、可溶化力が更に良好(可溶化水溶液の透過性が向上)となり、より好ましい。
【0023】
また、上記成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルが、オレイン酸ポリグリセリルとラウリン酸ポリグリセリルの混合物であり、その重量比がラウリン酸ポリグリセリル/オレイン酸ポリグリセリル=1.0以下の範囲である場合も、可溶化力が更に良好(可溶化水溶液の透過性が向上)となり、より好ましい。
【0024】
本発明の化粧品油剤用可溶化組成物を構成する、リシノレイン酸ポリグリセリル及びオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルは、上記の各成分を、上記条件を満たす様に仕込み、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えた後、常圧もしくは減圧下において、常法に従ってエステル化反応を行う方法で製造することが出来る。アルカリ触媒量としては、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの重量に対し、500〜3500ppmの範囲で用いる。500ppm未満のアルカリ触媒量では、反応が進みにくく好ましくない。逆に3500ppmを超えると、これを用いた可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)は、pH値が高くなり過ぎ、化粧料として用いる事は好ましくない。
【0025】
本発明の化粧品油剤用可溶化組成物により、可溶化できる化粧品油剤としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、オクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸セトステアリル、オクタン酸ステアリル、オクタン酸イソステアリル、アセチルリシノレイン酸ラノリンアルコール、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、イソノナン酸イソノニル、トリカプリル酸グリセリル、トリオクタノイン、トリラウリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリラノリン脂肪酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、オレンジラフィー油、ホホバ油、液状ラノリン、サフラワー油、大豆油、月見草油、ブドウ種子油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、アルモンド油、ゴマ油、コムギ胚芽油、トウモロコシ油、綿実油、アボカド油、オリブ油、ツバキ油、パーシック油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油等が挙げられ、これら以外にも化粧品に用いられる幅広い油剤に対して可溶化する事が出来る。
【0026】
可溶化する方法は特に限定されず、本発明の可溶化組成物と被可溶化物質である化粧品油剤とを室温にて混合し、その後その混合物を精製水にて溶解する事で容易に可溶化水溶液を調製する事が出来る。
【0027】
本発明の可溶化組成物と、被可溶化物質である化粧品油剤のとの量関係は、特に限定はないが、好ましくは重量比で被可溶化物質の2〜4倍量の可溶化組成物を用いる。
【0028】
また、本発明の効果を損なわない範囲で通常、化粧水や美容液等の化粧料に配合される成分であるグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、ヒアルロン酸、マルチトール等の糖類、アルギン酸塩、セルロース誘導体、クインスシードガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸系ポリマー等の増粘剤類、パラベン類、フェノキシエタノール、サリチル酸、ソルビン酸、イソプロピルメチルフェノール等の防腐剤類、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、アスコルビン酸塩誘導体等の美白剤、収斂剤類、紫外線吸収剤類、アミノ酸類、グリチルリチン酸誘導体類、植物エキス類、pH調整剤、香料、脂溶性ビタミン等を配合する事ができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
<合成実施例1>
リシノレイン酸229.7gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)649.1gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、3時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル780.8gを得た。このものの酸価は0.4であった。
【0031】
<合成実施例2>
リシノレイン酸185.3gとドデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約12のポリグリセリン)695.5gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、3時間の条件下で反応を行い、ドデカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸0.9モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル785.6gを得た。このものの酸価は0.4であった。
【0032】
<合成実施例3>
リシノレイン酸134.1gとエイコサグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約20のポリグリセリン)748.9gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、3時間の条件下で反応を行い、エイコサグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル777.6gを得た。このものの酸価は0.4であった。
【0033】
<合成実施例4>
オレイン酸305.8gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)570.8gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとオレイン酸1.6モルとのエステル化反応生成物であるオレイン酸ポリグリセリル790.4gを得た。このものの酸価は0.5であった。
【0034】
<合成実施例5>
オレイン酸105.9gとラウリン酸75.1gとペンタデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約15のポリグリセリン)784.4gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、ペンタデカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)0.9モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物である(オレイン酸/ラウリン酸)ポリグリセリル870.6gを得た。このものの酸価は1.0であった。
【0035】
<合成実施例6>
オレイン酸228.8gとラウリン酸18.0gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)632.7gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=0.11)1.2モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物である(オレイン酸/ラウリン酸)酸ポリグリセリル790.4gを得た。このものの酸価は0.8であった。
【0036】
<合成実施例7>
オレイン酸77.7gとラウリン酸110.3gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)696.5gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=2.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物である(オレイン酸/ラウリン酸)酸ポリグリセリル792.0gを得た。このものの酸価は0.8であった。
【0037】
<合成実施例8>
オレイン酸220.7gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)659.3gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとオレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物であるオレイン酸ポリグリセリル790.4gを得た。このものの酸価は0.8であった。また、ラウリン酸170.2gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)716.8gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとラウリン酸1.0モルとのエステル化反応生成物であるラウリン酸ポリグリセリル787.2gを得た。このものの酸価は0.8であった。ここで得た、オレイン酸ポリグリセリルの400gとラウリン酸ポリグリセリルの400gを混合した(ラウリン酸ポリグリセリル/オレイン酸ポリグリセリル(重量比)=1.0)。
【0038】
<実施例1>
(A)合成実施例1(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例7(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=2.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比10:90((A)/(B)=0.11)で混合した。
【0039】
<実施例2>
(B)合成実施例8(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物と、デカグリセリン1.0モルとラウリン酸1.0モルとのエステル化反応生成物とを重量比1:1で混合した混合エステル)を用いた((A)/(B)=0)。
【0040】
<実施例3>
(A)合成実施例2(ドデカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸0.9モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例6(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=0.11)1.2モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比50:50((A)/(B)=1.0)で混合した。
【0041】
<実施例4>
(A)合成実施例3(エイコサグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例4(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸1.6モルとのエステル化反応生成物)とを、重量比15:85((A)/(B)=0.18)で混合した。
【0042】
<実施例5>
(A)合成実施例1(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例5(ペンタデカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)0.9モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比20:80((A)/(B)=0.25)で混合した。
【0043】
<実施例6>
(A)合成実施例1(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例8(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物と、デカグリセリン1.0モルとラウリン酸1.0モルとのエステル化反応生成物とを重量比1:1で混合した混合エステル)とを、重量比30:70((A)/(B)=0.43)で混合した。
(比較例)
【0044】
<合成比較例1>
リシノレイン酸194.2gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)686.1gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、3時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸0.8モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル779.2gを得た。このものの酸価は0.4であった。
【0045】
<合成比較例2>
リシノレイン酸261.5gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)615.9gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、3時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.2モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル788.8gを得た。このものの酸価は0.4であった。
【0046】
<合成比較例3>
リシノレイン酸321.3gとヘキサグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約6のポリグリセリン)553.5gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、3時間の条件下で反応を行い、ヘキサグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル789.6gを得た。このものの酸価は0.4であった。
【0047】
<合成比較例4>
リシノレイン酸229.7gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)649.1gを反応容器に入れ、2.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において200℃、2時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物であるリシノレイン酸ポリグリセリル792.8gを得た。このものの酸価は3.0であった。
【0048】
<合成比較例5>
オレイン酸175.1gとラウリン酸124.2gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)581.1gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)1.8モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物である(オレイン酸/ラウリン酸)ポリグリセリル783.2gを得た。このものの酸価は1.0であった。
【0049】
<合成比較例6>
オレイン酸113.4gとミリスチン酸91.7gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)677.2gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びミリスチン酸の合計モル数が(ミリスチン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物である(オレイン酸/ミリスチン酸)ポリグリセリル792.8gを得た。このものの酸価は1.0であった。
【0050】
<合成比較例7>
ステアリン酸115.7gとラウリン酸81.5gとデカグリセリン(水酸基価から算出した平均重合度が約10のポリグリセリン)686.1gを反応容器に入れ、0.8gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において240℃、1時間の条件下で反応を行い、デカグリセリン1.0モルとステアリン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/ステアリン酸(モル比)=1.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物である(ステアリン酸/ラウリン酸)ポリグリセリル791.2gを得た。このものの酸価は1.0であった。
【0051】
<比較例1>
(A)合成比較例1(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸0.8モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例7(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=2.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比10:90((A)/(B)=0.11)で混合した。
【0052】
<比較例2>
(A)合成比較例2(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.2モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例6(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=0.11)1.2モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比40:60((A)/(B)=0.67)で混合した。
【0053】
<比較例3>
(A)合成比較例3(ヘキサグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成比較例5(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)1.8モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比15:85((A)/(B)=0.18)で混合した。
【0054】
<比較例4>
(A)合成比較例4(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとを酸価が3.0までエステル化反応させたエステル化反応生成物)と(B)合成実施例4(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸1.6モルとのエステル化反応生成物)とを、重量比20:80((A)/(B)=0.25)で混合した。
【0055】
<比較例5>
(A)合成実施例1(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成実施例7(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比90:10((A)/(B)=9.00)で混合した。
【0056】
<比較例6>
(A)合成実施例1(デカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸1.0モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成比較例5(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)1.8モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比20:80((A)/(B)=0.25)で混合した。
【0057】
<比較例7>
(A)合成実施例2(ドデカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸0.9モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成比較例6(デカグリセリン1.0モルとオレイン酸及びミリスチン酸の合計モル数が(ミリスチン酸/オレイン酸(モル比)=1.0)の1.0モル混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比20:80((A)/(B)=0.25)で混合した。
【0058】
<比較例8>
(A)合成実施例2(ドデカグリセリン1.0モルとリシノレイン酸0.9モルとのエステル化反応生成物)と(B)合成比較例7(デカグリセリン1.0モルとステアリン酸及びラウリン酸の合計モル数が(ラウリン酸/ステアリン酸(モル比)=1.0)1.0モルの混合脂肪酸とのエステル化反応生成物)とを、重量比20:80((A)/(B)=0.25)で混合した。
【0059】
<比較例9>
参考文献3に記載の、SY−グリスターCRS−75(縮合リシノレイン酸ポリグリセリル:阪本薬品工業(株)製)と、ML−750(モノラウリン酸デカグリセリル:阪本薬品工業(株)製)とを、重量比20:80((A)/(B)=0.25)で混合した界面活性剤。
【0060】
<比較例10>
POE(15)セチルエーテル。
【0061】
[可溶化評価]
実施例で得た化粧品油剤用可溶化組成物、比較例で得たポリグリセリン脂肪酸エステル組成物や、その他界面活性剤を2.5g又は3.0gと、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1.0gを室温にて良く混合し、その後、精製水100gを添加し、撹拌溶解させ水溶液を調製した。その水溶液を分光光度計(日立製作所製:U−2900)にて、660nmの波長にて透過率を測定し、以下に示す基準で評価した。その結果を表1、2に示す。
(基準)
◎:98.0%以上
○:97.0%以上98.0%未満
△:96.0%以上97.0%未満
×:96.0%未満
【0062】
[温度安定性評価]
上記水溶液を50℃及び0℃×1ヶ月暴露し、上記同様の条件にて透過率を測定し、以下に示す基準で評価した。その結果を表1、2に示す。
(基準)
◎:98.0%以上
○:97.0%以上98.0%未満
△:96.0%以上97.0%未満
×:96.0%未満
【0063】
[使用性評価]
上記、水溶液を健常女性パネラー20名に使用させ、その際のノビ、馴染み後のべたつき感、臭気について官能評価を行った。評価項目毎に、5点:「非常に良好」、4点:「良好」、3点:「やや悪い」、2点:「悪い」、1点:「非常に悪い」に従い採点し、20名の平均点を算出し、以下に示す基準で評価した。その結果を表1、2に示す。
(基準)
◎:4.5点以上
○:4.0点以上4.5点未満
△:3.0点以上4.0点未満
×:3.0点未満
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
実施例の化粧品油剤用可溶化組成物は、可溶化力及び可溶化水溶液の温度安定性が良好なものであった。また、その可溶化水溶液の使用性(ノビ、ベタツキ感、臭気)も良好であった。一方、比較例のポリグリセリン脂肪酸エステル組成物、又はその他界面活性剤は、可溶化力、温度安定性及び使用性の何れかの項目において悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の化粧品油剤用可溶化組成物は、可溶化力に優れ少量の使用でスクワラン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタノイン等の化粧品用油剤が可溶化出来ると共に、調製した可溶化水溶液(化粧水や美容液等の化粧料)の温度安定性、及びノビやべたつき面等の使用性が良好な可溶化水溶液が調製でき、化粧水や美容液等の化粧料に利用可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(B)
(A)水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、リシノレイン酸0.9〜1.0モルを酸価1.0以下までエステル化反応したリシノレイン酸ポリグリセリル
(B)水酸基価から算出した平均重合度nが10〜20のポリグリセリン1.0モルと、オレイン酸、ラウリン酸の一種以上を用い、オレイン酸とラウリン酸の合計モル数が0.9〜1.6モル、酸価1.0以下までエステル化反応した、オレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルの一種以上
から成り(A)と(B)の重量比が、(A)/(B)=1.0以下である化粧品油剤用可溶化組成物。
【請求項2】
上記成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルにおいて、オレイン酸とラウリン酸のモル比が、ラウリン酸/オレイン酸=1.0以下である請求項1記載の化粧品油剤用可溶化組成物。
【請求項3】
上記成分(B)であるオレイン酸及び/又はラウリン酸ポリグリセリルが、オレイン酸ポリグリセリルとラウリン酸ポリグリセルの混合物から成り、その重量比がラウリン酸ポリグリセリル/オレイン酸ポリグリセリル=1.0以下である請求項1記載の化粧品油剤用可溶化組成物。


【公開番号】特開2010−100586(P2010−100586A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275090(P2008−275090)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】