化粧容器および化粧容器の製造方法
【課題】全体として、不透明な化粧容器の内容物の残量等が識別できるように、所定の光透過部を設けた化粧容器およびそのような化粧容器の製造方法を提供する。
【解決手段】キャップを備えた化粧容器本体の表面に、樹脂塗膜を形成してなる化粧容器およびその製造方法であって、化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設け、例えば、キャップを完全に装着した状態においては、当該キャップが、光透過部を覆うように構成するとともに、キャップを不完全に装着した状態において、光透過部が露出するように構成する。
【解決手段】キャップを備えた化粧容器本体の表面に、樹脂塗膜を形成してなる化粧容器およびその製造方法であって、化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設け、例えば、キャップを完全に装着した状態においては、当該キャップが、光透過部を覆うように構成するとともに、キャップを不完全に装着した状態において、光透過部が露出するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧容器および化粧容器の製造方法に関し、特に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けた化粧容器およびそのような化粧容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス用の硬化性塗料組成物としては、樹脂塗膜の強度に優れ、ガラス表面との密着力に優れていることから、メラミン樹脂やアクリル樹脂が多用され、それらからなる硬化性塗料組成物を、ガラス容器の表面に塗装した後、加熱したり、紫外線照射したりすることにより、樹脂塗膜を形成し、ガラス容器の装飾性や美的外観性、さらにはガラスの機械的強度を向上させていた。
そして、このようなガラス容器の表面に、非塗装部を設け、そこに粘着ラベル等を貼り付けることが行われているが、かかる非塗装部を設けるために、マスキングテープを利用する方法が知られている。
【0003】
また、図9に示すように、密着性が乏しい紫外線硬化型インクからなる樹脂塗膜(図示せず)を、ガラス容器の所定箇所に予め形成しておき、その上から別の熱硬化性塗料からなる熱硬化性樹脂塗膜を加熱硬化させて形成した後、当該紫外線硬化型インクからなる樹脂塗膜を、熱硬化性樹脂塗膜とともに、マスキングテープ等の粘着テープを引き剥がし、非塗装部91を形成した塗装ガラス容器90を製造する方法も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、図10(a)に示すように、マスキングテープ等を用いることなく、塗装部と、非塗装部と、を同時形成した後、塗装部に対応させて硬化塗膜を形成することにより、部分的硬化塗膜を備えた塗装ガラス容器を効率的に製造する塗装ガラス容器の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、複数個のガラス容器に対して、塗布液を実質的に同時塗布して、塗装ガラス容器を製造する方法であって、複数個のガラス容器を重ねた状態に保持した後、周囲から塗布液を被覆処理することにより、図10(b)に示すように、塗装部101と、非塗装部102と、を同時形成することを特徴とした塗装ガラス容器100の製造方法である。
【特許文献1】特開平5−345164号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−349288号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に開示されたマスキングテープ等を利用した方法により形成される非塗装部は、粘着ラベル等を貼り付けるためのものであって、内容物の残量を認識できなかった。逆に、粘着ラベル等を貼り付けずに、開口部としてそのまま残すと、化粧容器の装飾性を著しく損なうという問題が見られた。
一方、特許文献2等に開示された塗装ガラス容器の製造方法は、マスキングテープ等を利用しなくとも、非塗装部が形成できるという点では画期的であるものの、当該非塗装部は、所望時期において、ガラス容器の内容物を可視化して、内容物の残量を認識するためのインジケータとしての機能は有していなかった。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、外光(紫外線)の影響を受けないように、全体として、不透明な化粧容器であっても、所望時期に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部(非塗装部を含む。)を設けることにより、内容物の残量が認識できるとともに、装飾性等に優れた化粧容器が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所望時期において、ガラス容器の内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部を所定箇所に設けた化粧容器およびそのような化粧容器の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器であって、化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けた化粧容器が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、このように構成することにより、塗装部としての樹脂塗膜が形成してあり、全体として、不透明な化粧容器であっても、外光(紫外線)の影響を受けない状態で光透過部を設けることができ、それにより、内容物を光劣化させることなく、所望時期において、内容物を可視化して、残量等を確認することができる。
したがって、通常使用状態では、樹脂塗膜によって遮光され、内容物を光劣化させることがない一方、任意時期において、化粧容器を上下方向に回転させることによって、化粧容器の内容物の残量等について、容易に認識することができる。また、光透過部が、化粧容器を上下方向に回転させた状態においてのみ露出することから、通常の使用状態における装飾性を損なうことが少なくなる。
なお、キャップを不完全に装着した状態であって、かつ化粧容器を上下方向に回転させた状態の場合、中蓋等が設けられていない場合には、内容物が外部にこぼれる心配があるものの、短時間であれば、実用上、特に問題とならないことが判明している。また、回転させる角度や速度を適宜調整することによっても、そのような外部漏れを有効に防止できることが判明している。
【0008】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、キャップを完全に装着した状態においては、当該キャップが、光透過部を覆うように構成するとともに、化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、キャップを不完全に装着した状態において、光透過部が露出するように構成することが好ましい。
このように構成することにより、キャップを光透過部の遮光部材とし利用することができる。したがって、部品点数を増やすことなく、化粧容器を上下方向に回転させた状態において、キャップの位置を所定位置からずらことによって、はじめて光透過部が露出し、かつ、内容物を可視化することができる。
【0009】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、キャップと、化粧容器本体との間に、中蓋(スプレーヘッド等を含む。)が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、キャップを不完全に装着した状態であって、かつ倒立させたような状態であっても、中蓋(スプレーヘッド等を含む。)によって、内容物が外部にこぼれるおそれを可及的に少なくすることができる。
【0010】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、光透過部が長方形状であるとともに、キャップの一部に、光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部を備えることが好ましい。
このように構成することにより、キャップを光透過部の遮光部材として利用することができ、化粧容器を上下方向に回転させた状態において、キャップの位置をずらして、光透過部の位置に対応させることによって、容易に内容物を可視化することができる。
また、光透過部の形状が所定形状であるとともに、それに対応した形状の光透過部がキャップに備えてあることから、光透過部を設けたことによる内容物への外光の影響をより少なくすることができる。
【0011】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、光透過部に、目盛りを設けることが好ましい。
このように構成することにより、目盛りを利用して、内容物の残量等を定量的に把握することができる。
【0012】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、化粧容器本体が、収容部と、首部とを備えており、当該首部の一部に、光透過部を設けることが好ましい。
このように構成することにより、首部に設けてあるキャップの位置をずらすことによって、内容物を可視化することができる。
また、光透過部が首部に設けてあることから、光透過部を設けたことによる内容物への外光の影響をさらに少なくすることができる。
【0013】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、樹脂塗膜が、多層構造であって、光透過部との端部に、傾斜面が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、樹脂塗膜の剥離を有効に防止することができる。
【0014】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、キャップの一部に、化粧容器を上下方向に回転した所定状態に保持するための保持部を備えることが好ましい。
このように構成することにより、化粧容器から手等を離した状態であっても、化粧容器を回転状態、例えば、倒立状態に保持することができ、内容物を容易かつ正確に可視化することができる。
【0015】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、化粧容器本体が、ガラス容器であることが好ましい。
このように構成することにより、樹脂塗膜を形成することによって、化粧容器の意匠性を向上させることができるとともに、透明性が高いことから、内容物を容易かつ正確に可視化できる光透過部を設けることができる。
【0016】
また、本発明の別の態様は、キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器の製造方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする化粧容器の製造方法である。
(1)キャップおよび化粧容器本体を準備する工程
(2)化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けるとともに、塗装部としての樹脂塗膜を形成する工程
すなわち、このように実施することによって、全体として、不透明な化粧容器であっても、外光(紫外線)の影響を受けない状態で光透過部を設けることができ、それにより、内容物を光劣化させることなく、所望時期において、内容物を可視化することが可能な化粧容器を効率的に得ることができる。
【0017】
また、本発明の化粧容器の製造方法を実施するにあたり、樹脂塗膜を、紫外線硬化樹脂から形成することが好ましい。
このように実施することにより、化粧容器の意匠性を向上させることができるとともに、光透過部の形成を容易かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)〜(b)に例示するように、キャップ14を備えた化粧容器本体12の表面に、塗装部としての樹脂塗膜18を形成してなる化粧容器10であって、化粧容器本体12の一部に、化粧容器10を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物17を可視化するための光透過部16を設けることを特徴とする化粧容器10である。
ここで、図1(a)は、化粧容器10の全体を示した斜視図であり、図1(b)は、化粧容器10の光透過部16における拡大断面図である。
以下、化粧容器として、主として、ガラス容器からなる化粧容器を例にとって説明する。
【0019】
1.化粧容器本体
(1)形態
図1に例示する化粧容器本体12の形状は特に制限されるものでなく、化粧容器の用途に対応させて、図2(a)に示すようなボトルネック型のビン、図2(b)に示すような矩形状のビン、図2(c)に示すような円筒状のガラスビン、図2(d)に示すような異形のガラスビン、あるいは、図示しないものの、矩形状のガラス箱、円筒状のガラス箱、異形のガラス箱等とすることが好ましい。
また、化粧容器本体の形態に関して、外周部に沿って肉厚部を設けたり、あるいは外周部の一部に面取り部を設けたりすることも好ましい。
この理由は、このような化粧容器本体であれば、塗装部としての樹脂塗膜を部分的に形成した後に、正面から眺めた場合に、外周部の肉厚部や面取り部において光が集光し、より鮮明かつ複雑な色を観察することができるためである。
なお、このような化粧容器本体を構成するガラスの種類についても特に制限されるものでなく、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、リン酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス等が挙げられる。
一方、化粧容器本体が樹脂から構成されている場合には、構成する樹脂の種類として、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0020】
(2)着色性
また、化粧容器本体として、無色透明材料から構成することもできるが、着色透明材料や半透明材料から構成することも好ましい。
この理由は、着色透明材料や半透明材料を用いることにより、内容物の識別性を過度に低下させることなく、外側に部分的に設けた樹脂塗膜と、ガラス容器における着色性との関係で、レインボーカラーや玉虫色、さらには鱗粉模様等の複雑な色具合を認識できるためである。すなわち、化粧容器の意匠性や装飾性を向上させることができる。
【0021】
(3)下地層
また、図1(b)に例示するように、化粧容器本体12の表面に、下地層(プライマー層)19を、全面的または部分的に備えることが好ましい。
より具体的には、下地層(プライマー層)の構成材料として、ポリシロキサン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの誘導体を含む熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0022】
特に、ポリシロキサン系の下地層を備えることにより、樹脂塗膜の硬さを所望範囲内の値に容易に調整することができ、化粧容器本体(ガラス容器)と、樹脂塗膜との間の剥離を有効に防止することができる。
また、下地層の構成材料として、メラミン樹脂等に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することも好ましい。
この理由は、このようなポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することにより、ガラスに対する密着力を向上させるとともに、樹脂塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができるためである。
【0023】
さらに、かかる下地層の厚さを0.1〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる下地層の厚さが0.1μm未満の値になると、強度が不足して、化粧容器本体の表面から容易に剥離したり、均一に形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる下地層の厚さが10μmを超えると、その上に形成する樹脂塗膜が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、下地層の厚さを0.5〜8μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0024】
2.キャップ
キャップの形態は特に制限されるものではないが、化粧容器本体の形状に対応して、例えば、図3(a)に示すような円柱状、図3(b)に示すような四角柱状、図3(c)に示すような円錐形、図3(d)に示すような異形等とすることができる。
なお、ガラス容器であっても圧接可能であって、軽量化等も可能なように、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等から構成することが好ましい。
【0025】
また、図4(a)に例示するように、キャップ14の一部に、化粧容器10を上下方向に回転した際に、所定状態に保持するための保持部40を備えることが好ましい。
この理由は、化粧容器から手等を離した状態であっても、化粧容器を回転状態、例えば、45°〜270°の回転状態、特に、図4(b)に例示すように、180°の倒立状態に保持することができ、内容物を容易かつ正確に可視化することができる。
【0026】
また、図5(a)に例示するように、化粧容器本体12に、長方形状の光透過部51を設けてあるとともに、キャップ14の一部に、光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部50を備えていることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、キャップを光透過部の遮光部材とし、キャップの位置をずらすことによって、内容物を可視化することが可能な化粧容器を提供することができるためである。
また、光透過部の形状が所定形状であるとともに、それに対応した形状の光透過部がキャップに備えてあることから、光透過部を設けたことによる内容物への外光の影響をより少なくすることができるためである。
さらに、図5(b)に例示するように、キャップ14の位置を調節し、スリット状の光透過部50と長方形状の光透過部51とが重ね合わさることによって、化粧容器10中の内容物17の残量等を認識できるためである。
【0027】
3.樹脂塗膜
(1)種類
図1に例示する塗装部18を構成する樹脂塗膜の種類については、特に制限されるものではないが、より具体的には、熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物からなるとともに、主剤として、ポリシロキサン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの誘導体を含むことが好ましい。
特に、主剤として、ポリシロキサン系樹脂を含むことにより、樹脂塗膜の硬さを所望範囲内の値に容易に調整することができるとともに、耐水性や耐熱性についても向上できることから好ましい樹脂である。
また、メラミン樹脂等に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を含むことにより、ガラス容器に対する密着力を向上させるとともに、樹脂塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができる。より具体的には、メラミン樹脂100重量部に対して、アクリルポリオール化合物を50〜300重量部、ラクトンポリオール化合物を5〜100重量部の範囲でそれぞれ配合することが好ましい。
【0028】
また、樹脂塗膜の主成分として、ポリシロキサン系樹脂やメラミン樹脂を使用した場合、硬化剤(硬化触媒を含む。以下、同様である。)を添加することが好ましい。
このような硬化剤としては、白金、ジブチルスズ、シュウ酸ジメチルエステル、シュウ酸ジエチルエステル、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、モノクロロ酢酸ナトリウム塩、モノクロロ酢酸カリウム塩、α、α−ジクロロヒドリン、エチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、尿素誘導体、イミドスルフォン酸ニアンモニウム等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、かかる硬化剤の添加量を、主剤100重量部に対して、0.1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる硬化剤の添加量が0.1重量部未満の値となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、かかる硬化剤の添加量が30重量部を超えると、主剤の反応性を制御することが困難となる場合があるためである。
【0029】
また、樹脂塗膜を構成する塗布液中に、各種添加剤を添加することが好ましい。特に、シランカップリング剤を、主剤100重量部に対して、0.5〜50重量部の範囲で添加することが好ましい。
また、このようなシランカップリング剤の種類は特に制限されるものではないが、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の一種単独または二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。
特に、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランを用いた場合には、メラミン樹脂100重量部に対して、10〜40重量部の範囲で添加することが好ましい。
【0030】
また、樹脂塗膜中に、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、ガラス容器の内容物における、紫外線劣化(光劣化)を有効に防止することができるためである。
かかる紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、イソオクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート等のベンゾトリアゾール類、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルペピリジン重縮合物等のヒンダードアミン類 トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0031】
かかる紫外線吸収剤を、主剤100重量部に対して、0.005〜10重量部の範囲で添加することが好ましい。
この理由は、かかる紫外線吸収剤の添加量が0.005重量部未満の値となると、紫外線吸収効果が発現せず、入射した紫外線によって、ガラス容器の内容物が劣化する場合があるためである。一方、かかる硬化剤の添加量が10重量部を超えると、主剤との分散性や相溶性が劣化するためである。
なお、光透過部は、比較的小さく、使用していない際はキャップで被覆されているために、化粧容器の内容物に対する紫外線劣化を促進するおそれは少ないと言える。
【0032】
また、樹脂塗膜中に、干渉性着色剤を含むことが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、レーザー吸収性を高めることができる一方、ガラス容器の装飾性を著しく高めることができるためである。
ここで、干渉性着色剤とは、光学的干渉により、光の多重層反射が発生することで、パールルミネッセンス(真珠光沢)等の色彩効果を付与することができる着色剤である。
具体的には、金属酸化物被覆マイカ(雲母)顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、チタンフレーク顔料、ホログラム顔料およびコレステリック液晶ポリマーからなるフレーク状顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。また、かかる顔料の金属酸化被覆の金属種類としては、二酸化チタン、酸化鉄その他クロム、コバルト、錫、ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0033】
また、干渉性着色剤の添加量を、樹脂塗膜の全体量(100重量%)に対して、0.1〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる干渉性着色剤の添加量が0.1重量部未満の値となると、真珠光沢等の色彩効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる干渉性着色剤の添加量が30重量部を超えると、主剤との分散性や相溶性が劣化したり、塗装外観が低下したりするおそれがあるためである。
したがって、干渉性着色剤の添加量を、樹脂塗膜の全体量(100重量%)に対して、0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1.0〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
また、樹脂塗膜が、多層構造であって、少なくとも一層にレーザー吸収剤を含むことが好ましい。
この理由は、レーザー吸収剤を含む層と、レーザー吸収剤の添加量が比較的少ない、あるいは含有しない層との間における、レーザーエネルギー吸収性の差異によって、容易にレーザーによる光透過部(開口部あるいは薄肉部)の形成が可能となり、より装飾性が高いガラス容器とすることができるためである。
【0035】
ここで、レーザー吸収剤とは、レーザーに対する吸収性の高い染料あるいは顔料(染顔料)であり、照射されたレーザーのエネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換して塗硬膜を溶融発泡あるいはクレージングを行わせると同時に、レーザー吸収剤自体がアブレージョンあるいは飛散することで光透過部(開口部あるいは薄肉部)の形成を可能とする。
具体的には、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等)、グラファイト、チタンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン等の白色顔料、アドミウムイエロー、黄鉛(クロム黄)、ジンククロメート、黄土、黄色酸化鉄等黄色顔料、赤口顔料、アンバー、赤色酸化鉄、カドミウムレッド、鉛丹等の赤色顔料、紺青、群青、コバルトブルー等青色顔料、クロムグリーン、コバルトグリーン、ビリジアン等の緑色顔料の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
この中でも、レーザーの吸収性(吸光度)が高く、主剤との分散性やコスト性が良好であることから、カーボンブラックが特に好ましい。
【0036】
また、レーザー吸収剤は、使用するレーザーにおいて、0.8以上の吸光度を有することが好ましい。
この理由は、レーザー吸収剤の吸光度を0.8未満とすると、レーザーエネルギーの吸収性が不十分になり、塗膜中に変換される熱エネルギーが不足してしまうために、効率的に光透過部(開口部あるいは薄肉部)を形成できなくなる場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の吸光度を0.8〜2.0とすることが好ましく、0.8〜1.6とすることがさらに好ましい。
なお、吸光度(OD)とは、分光光度計又は近赤外線吸光度測定装置で測定される、使用するレーザーの反射率Rの逆数の対数、すなわち、OD=log(1/R)を示す。
【0037】
また、レーザー吸収剤の平均粒径は、10〜3000nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる平均粒径が10nm未満である場合、レーザー照射による光透過部(開口部あるいは薄肉部)を形成する際において、高いレーザーエネルギーを要するため、光透過部の装飾性や仕上がり精度が悪化する場合があるためである。
一方、かかる平均粒径が3000nmを超える場合、ガラス容器上の塗工膜の機械的強度が低下する場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の平均粒径は、100〜1000mの範囲内の値とすることが好ましく、200〜800nmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0038】
また、レーザー吸収剤の添加量を、樹脂塗膜のうちの一層の全体量(100重量%)に対して、0.01〜8重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる添加量が、0.01重量%未満であると、レーザー吸収性が低く、効率的に光透過部(開口部あるいは薄肉部)を形成できなかったり、光透過部の仕上がり具合(装飾性)が悪化したりする場合があるためである。
一方、かかる添加量が、8重量%を超えると、ガラス容器上の塗工膜の機械的強度が低下する場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の添加量を、樹脂塗膜のうちの一層の全体量(100重量%)に対して、0.5〜5.0重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1.0〜3.0重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、樹脂塗膜中に、相溶化剤、他の染顔料、難燃剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属フィラー等)、安定剤(脂肪酸金属塩、酸化防止剤等)、滑剤、分散剤、発泡剤、抗菌剤等を含んでいてもよい。
【0040】
また、化粧容器表面上に塗工されている樹脂塗膜は、多層構造であることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、化粧容器の装飾性や意匠性のみならず、隠蔽性も高めることができるためである。
【0041】
(2)形態等
また、樹脂塗膜の形態に関して、その厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂塗膜の厚さが1μm未満の値になると、強度が不足して、ガラス容器の表面から容易に剥離したり、均一に形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる樹脂塗膜の厚さが100μmを超えると、その上の多層膜が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、樹脂塗膜の厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜30μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、樹脂塗膜が多層構造の場合には、その合計厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0042】
また、JIS K5400に準拠して測定される樹脂塗膜の鉛筆硬度を1〜5Hの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂塗膜の鉛筆硬度が1H未満の値になると、耐磨耗性が著しく低下したり、樹脂塗膜ごと剥離しやすくなったりする場合があるためである。一方、かかる樹脂塗膜の鉛筆硬度が5Hを超えると、ガラス容器の角部等において、樹脂塗膜自体が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、かかる樹脂塗膜の鉛筆硬度を2〜4Hの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0043】
また、樹脂塗膜の端部に関して、その端部が徐々に薄くなった傾斜部を備えることが好ましい。
この理由は、マスキングテープ等を使用して部分的に樹脂膜を形成した場合、樹脂塗膜と、光透過部との境界に、樹脂塗膜の厚さに応じた段差が明確に生じやすくなるためである。すなわち、かかる段差に起因して、樹脂塗膜が剥離しやすくなったり、樹脂塗膜の端部が目立ったり、さらには、光透過部に粘着ラベルを平坦に貼ることが困難になったりするという問題が生じやすくなるためである。
なお、このような傾斜部は、例えば、マスキングテープ等を用いて、樹脂塗膜を形成した後、樹脂塗膜と、光透過部との境界に、例えば、クリアな熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂からなる塗装を施すことにより形成することができる。
【0044】
(3)光透過部
また、図1に示すように、塗装部18としての樹脂塗膜の一部、あるいは塗装部18としての樹脂塗膜に隣接させて、化粧容器10を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、化粧容器の内容物17を可視化するためのインジケータとしての光透過部17を設けることを特徴とする。
この理由は、このように構成することにより、化粧容器10を上下方向に回転させた状態において露出する光透過部17を介して、内容物17を可視化して、かかる内容物17の残量等について容易に認識することができるためである。
【0045】
また、本発明における光透過部とは、化粧容器内部を上下反転させた状態において、露出し、かつ化粧容器の内容物の残量等を観察することができる程度の光透過性を有している。
具体的には、塗装部としての樹脂塗膜を、マスキングテープ等を用いて、完全に除去し、実質的に化粧容器表面を露出した状態(開口部)としたり、あるいは内容物の残量等が認識できる程度に樹脂塗膜を、薄く塗装したり、もしくはレーザー等を用いて、薄膜化させて形成してあり、かつ、化粧容器の表面が露出していない状態(薄肉部)としたりすることができる。
【0046】
また、図6(a)に示すように、光透過部16に、目盛り60が設けてあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、化粧容器における内容物の残量を、定量的に判断することができるためである。
すなわち、このように目盛りを設けることにより、内容物の残量を、定量的に正確かつ迅速に判断することができる。
【0047】
また、図6(b)に示すように、光透過部16の一部または全部を覆うための遮光部材61が設けてあることが好ましい。
この理由は、このように化粧容器の外部から、光透過部の形成位置に対応して、遮光性基材を備えた粘着テープ等を貼り付けることにより、光透過部を介して進入する外光の影響を防止することができるためである。
したがって、このように遮光部材を設けることにより、内容物に対する光劣化をさらに抑制することができる。また、内容物を可視化する際には、かかる遮光部材を取り外すだけで、内容物の残量を正確且つ迅速に判断することができる。
【0048】
また、光透過部16の平面形状を、図6(c)に示すように円形、図6(d)に示すように文字、図6(e)に示すように記号、あるいは、図示はしないものの、楕円形、長円形、多角形、異形および図形からなる群の少なくとも一つとすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、光透過部が装飾効果や情報性を発揮するため、化粧容器についての装飾性や情報性を高めることができるためである。
すなわち、例えば、円形の光透過部を複数個設けることにより、化粧容器としての装飾効果が高まるばかりか、目盛りとしても利用することができる。
【0049】
また、光透過部の大きさに関して、円相当径を10μm〜10cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような大きさであれば、公知の形成方法、例えば、マスキングテープ法や、レーザー法等を用いて、正確かつ迅速に形成することができるためである。また、このような大きさであれば、化粧容器としての装飾効果が高まるばかりか、内容物に対する外光の影響を少なくすることができるためである。
したがって、光透過部の大きさに関して、円相当径を50μm〜5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、100μm〜1cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図7に示すように、キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器の製造方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする化粧容器の製造方法である。
(1)キャップおよび化粧容器本体を準備する工程(S1)
(2)化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けながら、塗装部としての樹脂塗膜を形成する工程(S2)
【0051】
1.キャップおよび化粧容器本体の準備工程
第1の実施形態で説明したのと同様のキャップおよび化粧容器本体、例えば、ガラス容器等を準備することができるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
2.樹脂塗膜の形成工程
(1)塗布工程
図7に示すように、樹脂塗膜の形成工程S2−1において、熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物からなる塗布液を、ガラス容器に対して同時塗布することが好ましい。
ここで、熱硬化性組成物等の塗布方法は、特に限定されないものの、例えば、静電塗装法、電着塗装法、ロールコーター法、エアースプレー法、エアレススプレー法、カーテンフローコーター法等を挙げることができる。
そして、これらの塗布方法のうち、より薄膜化が可能で、ガラスの曲面にも均一に塗布することができる一方、塗布装置の構造も簡易であることから、静電塗装法やエアースプレー法を用いることがより好ましい。
なお、塗布液については、第1の実施形態で説明したのと同様の塗布液とすることができることから、ここでの説明は省略する。
【0053】
(2)樹脂塗膜の硬化工程
次いで、図7に示すように、樹脂塗膜の硬化工程S2−2において、塗布液を適用したガラス容器に対して、加熱処理または紫外線照射等することにより、塗布した熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物を硬化させて、樹脂塗膜を形成することが好ましい。
ここで、硬化工程における硬化条件(焼き付け条件)は、使用する熱硬化性組成物の反応性に応じて適宜変更可能であるが、通常、140℃〜250℃、1〜120分の条件で行うことが好ましく、150℃〜230℃、5分〜60分の条件で行うことがより好ましく、160℃〜220℃、10分〜30分の条件で行うことがさらに好ましい。
また、熱硬化性組成物が、常温乾燥塗料である場合には、室温で1日〜1週間乾燥させることが好ましく、2〜4日乾燥させることも好ましい。
さらに、紫外線硬化性組成物を使用した場合には、紫外線の露光量を例えば、50〜1,000mJ/cm2の範囲内の値にして、樹脂塗膜を形成することが好ましい。
【0054】
3.光透過部の形成工程
次いで、図7に示すように、光透過部の形成工程S2−3において、光透過部を形成する。但し、かかる光透過部は、マスキングテープやマスキング冶具等を用いて、塗装部と同時に形成しても良いし、あるいは、塗装部を全体的に形成した後に、レーザー等を用いて形成しても良い。
したがって、以下、レーザー等を用いて光透過部を形成する場合について、詳細に説明する。
【0055】
(1)レーザーの種類
レーザーの種類としては、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して、適宜選択することができる。
例えば、YAGレーザー、CO2レーザー、YVO4レーザー、Arレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
また、レーザーとして、CO2レーザーおよびYAGレーザーを併用することも好ましい。この理由は、このように実施することにより、塗膜の基材としてのガラス容器等に対する損傷を少なくすることができるためである。
【0056】
(2)処理時間
また、レーザーの処理時間は、レーザーの種類、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して定めることができるが、通常、0.05秒〜3分(光透過部:1cm2当たり)の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、ガラス容器当たりのレーザーの処理時間が0.05秒未満であると、レーザー照射量が少なすぎて光透過部の形成できなくなる場合があるためである。
一方、3分を超えると、レーザー照射量が多すぎて、光透過部に、ズレの発生等の仕上がり精度の低下が見られる場合があるためである。
なお、上述したように、CO2レーザーおよびYAGレーザーを併用する場合、CO2レーザーの照射時間をt1(sec)とし、YAGレーザーの照射時間をt2(sec)としたときに、t1の照射時間の割合を0.1〜30%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、塗膜の基材としてのガラス容器に対する損傷を確実に少なくすることができるためである。
【0057】
(3)焦点距離
また、レーザーの焦点距離は、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して定めることができるが、通常、90〜500cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる焦点距離が90cm未満であると、光透過部において、ズレの発生等の仕上がり精度や装飾性の低下が見られる場合があるためである。
一方、かかる焦点距離が、500cmを超えると、光透過部の形成時間が長くなる場合があるためである。
【0058】
(4)処理温度
また、レーザー処理の際の雰囲気温度を15〜70℃の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、かかる雰囲気温度が15℃未満になると、レーザー照射によって、樹脂塗膜に付与される熱エネルギーが、低温外気に吸収されてしまい、レーザー処理を効率的に実施することが困難になる場合があるためである。
一方、雰囲気温度が70℃を越えると、レーザーの照射位置の精度が低下したり、レーザー照射部位に熱エネルギーが残留しやすくなることにより、光透過部の周囲の仕上がり精度や装飾性が低下したりする場合があるためである。
したがって、レーザー処理の際の雰囲気温度を20〜60℃の範囲内とすることがより好ましく、25〜50℃の範囲内とすることがさらに好ましい。
【0059】
(5)出力
また、レーザー処理において、レーザー装置の出力は、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等の各条件を考慮して、5〜500Wの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、5W未満であると、レーザー照射による熱エネルギーの発生が少なすぎて、光透過部の形成できなくなる場合や形成時間がかかる場合があるためである。一方、500Wを超えると、レーザー照射量が多すぎて、光透過部に、ズレ等が発生することによって、塗装ガラス容器の仕上がり精度が低下したり、ガラス表面に発生した熱エネルギーによってガラス容器表面の平滑性が劣化したりするためである。
したがって、レーザー装置の出力を10〜300Wの範囲内とすることがより好ましく、30〜100Wの範囲内とすることがさらに好ましい。
【0060】
4.後工程
また、図7に示すように、本発明の化粧容器の製造方法は、後工程S−3として、検査工程を設けることも好ましい。
あるいは、図示しないものの、後工程において、光透過部に対して、さらに着色塗装処理やクリア塗装処理を施すか、あるいは光不透過性の粘着ラベル等を貼り付けることが好ましい。
この理由は、このような後工程を設けることにより、不良品を効率的に排除できるとともに、化粧容器の装飾性や情報性に優れ、かつ、平坦で、均一な厚さの樹脂塗膜を備えた化粧容器を形成することができるためである。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を掲げて、本発明の内容を更に詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、これら実施例のみの記載に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更することができる。
【0062】
[実施例1]
1.化粧容器の製造
(1)塗料組成物の作成
攪拌機付の混合容器内に、下記配合材料を仕込み、室温条件で、30分間攪拌して(回転数:1000rpm)、粘度40mPa・s(25℃)の塗料組成物を得た。
メラミン樹脂 100重量部
アクリルポリオール化合物 180重量部
(ヒドロキシル価300mgKOH/g、数平均分子量3,000)
ラクトンポリオール化合物 30重量部
(ヒドロキシル価200mgKOH/g、数平均分子量1,000)
ウレイドプロピルトリエトキシシラン 25重量部
リン酸系硬化触媒 5重量部
赤色顔料(赤色酸化鉄) 5重量部
キシレン 300重量部
酢酸ブチル 150重量部
イソプロピルアルコール 90重量部
【0063】
(2)塗装部および光透過部の形成等
次いで、図8(a)に示すように、スプレーヘッド81およびスプレーチューブ82を備えたガラス容器(収容部:直径5cmの丸底球体状、首部:直径2.5cm、長さ8cmのボトルネック状、内容量100ml)を、化粧容器本体12として、準備した。
次いで、スプレーヘッド81をはずすとともに、ガラス容器の首部の上方半分(幅1cm、長さ4cm)が覆われるように、マスキングテープ(粘着テープ)を貼り付けた。
次いで、上述した塗料組成物を、マスキングテープを貼り付けた状態のガラス容器の周囲から、所定時間、エアースプレーした後、180℃×20分の条件で焼き付け、膜厚が20μmであって、JIS K 5600に基づいた鉛筆硬度が3Hの赤色樹脂塗膜を塗装部として形成した。
一方、マスキングテープを取り外し、化粧容器を回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部(幅1cm、長さ4cm)を有するガラス容器とした。
【0064】
(3)化粧容器の作成
次いで、図8(a)に示すように、スプレーヘッド81およびスプレーチューブ82を取り付けた後、さらに、図8(b)に示すように、光透過部を有していないキャップ14をガラス容器に圧接適合するように、取り付け、実施例1のキャップ14を備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器80とした。
【0065】
2.化粧容器の評価
得られたキャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器につき、以下のようにして、内容物(水)の認識性、樹脂塗膜の密着性、および化粧容器の外観性の評価を行った。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0066】
(1)内容物の認識性
光透過部を有するガラス容器の内部に、水を10cm3収容し、以下の基準に準じて、内容物の認識性を評価した。すなわち、化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、キャップを不完全に装着し、位置をずらした状態において、光透過部が露出して、内容物(水)が目視できるか否かを評価した。
◎:90°回転(横転)させた状態で、内容物(水)を目視することができる。
○:180°回転(倒立)させた状態で、内容物(水)を目視することができる。
×:180°回転(倒立)させた状態で、内容物(水)を目視することができない。
【0067】
(2)樹脂塗膜の密着性
得られたキャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器につき、JIS K 5600に基づいた碁盤目テ−プ法を実施し、100碁盤目あたりの樹脂塗膜のはがれ数から、下記基準に照らして、化粧ガラス容器本体に対する樹脂塗膜の密着性の評価を実施した。
◎:はがれ数は、0個/100碁盤目である。
○:はがれ数は、1〜3個/100碁盤目である。
△:はがれ数は、4〜9個/100碁盤目である。
×:はがれ数は、10個以上/100碁盤目である。
【0068】
(3)化粧容器の外観性
得られたキャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器につき、下記基準に照らして、外観性の評価を実施した。
○:キャップを完全に装着した状態において、光透過部が露出しない。
×:キャップを完全に装着した状態において、光透過部が露出する。
【0069】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1における赤色顔料による樹脂塗膜(第1の樹脂塗膜、厚さ:20μm)の下地として、カーボン入りグレー顔料を含む熱硬化性樹脂を用いて第2の樹脂塗膜(厚さ:10μm)を形成したほかは、実施例1と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0070】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1における赤色顔料による樹脂塗膜(第1の樹脂塗膜)の下地として、カーボン入りグレー顔料を含む熱硬化性樹脂を用いて第2の樹脂塗膜(厚さ:10μm)を形成するとともに、第1の樹脂塗膜の上に、干渉性顔料を含む熱硬化性樹脂からなる第3の樹脂塗膜(厚さ:10μm)を形成したほかは、実施例1と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0071】
[実施例4〜6]
実施例4〜6においては、ガラス容器の首部の上方半分に、幅1cm、長さ4cmの長方形状の光透過部を設けるとともに、キャップに、当該光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部(幅1.2cm、長さ4.2cm)を設けたほかは、実施例1〜3と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0072】
[比較例1〜3]
比較例1〜3においては、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部を形成しなかったほかは、実施例1〜3と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0073】
[比較例4]
比較例4においては、マスキングテープを用いて、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部(幅1cm、長さ4cm)を、ガラス容器の収容部の下方に設けたほかは、実施例1と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の化粧容器によれば、化粧容器を上下方向に回転させた状態、例えば、倒立させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部を所定箇所に設けたため、内容物の残量を容易に認識できるようになった。
したがって、通常の使用状態においては、光透過部が認識されずに意匠性に優れるとともに、化粧容器を倒立させた状態ではじめて光透過部が露出して、内容物の残量等を容易に認識することができる。
よって、理髪店や美容院における化粧容器、あるいは頭髪関係の使用頻度が高い化粧容器のように、常に、内部に所定量を保持しなければならない一方、化粧容器が外観的に客に見られて、使用意欲を刺激することから、このような用途において好適に用いられることが期待される。
また、本発明の化粧容器の製造方法によれば、マスキングテープやレーザー等を用いることにより、全体として、不透明な化粧容器であっても、外光(紫外線)の影響を受けない状態で光透過部を設けることができ、それにより、内容物を光劣化させることなく、所望時期において、内容物を可視化することが可能な化粧容器を効率的に得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)は、本発明の化粧容器の一例を説明するために供する図であり、(b)は、本発明における化粧容器の断面を説明するために供する拡大断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明に用いるガラス容器の形状を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明に用いるキャップの形状を説明するために供する図である。
【図4】(a)は、本発明に用いる保持部を説明するために供する図であり、(b)は、保持部を用いて、化粧容器の内容物の残量を測定するときの形態を説明するために供する図である。
【図5】(a)は、本発明において、長方形状の光透過部と、スリット状の光透過部を備えたキャップと、を備えた化粧容器を説明するために供する図であり、(b)は、長方形状の光透過部と、スリット状の光透過部を備えたキャップと、を用いて、化粧容器の内容物の残量を測定するときの形態を説明するために供する図である。
【図6】(a)〜(e)は、本発明に用いる光透過部の形状を説明するために供する図である。
【図7】図7は、本発明の化粧容器の製造工程を示す図である。
【図8】(a)〜(b)は、実施例に記載された製造条件に基づいて、製造された化粧容器の一例を説明するために供する図である。
【図9】図9は、従来の塗装ガラス容器を説明するために供する図である。
【図10】図10は、従来の塗装ガラス容器を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0077】
10:化粧容器
12:化粧容器本体
14:キャップ
16:光透過部
17:内容物
18:樹脂塗膜
19:下地層(プライマー層)
40:保持部
50:スリット状の光透過部を備えたキャップ
51:長方形状の光透過部
60:目盛り
61:遮光部材
80:スプレーヘッド付き化粧ガラス容器
81:スプレーヘッド
82:スプレーチューブ
S1:キャップおよび化粧容器本体の準備工程
S2:樹脂塗膜形成工程
S2−1:塗布工程
S2−2:樹脂塗膜の硬化工程
S2−3:光透過部の形成工程
S3:後工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧容器および化粧容器の製造方法に関し、特に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けた化粧容器およびそのような化粧容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス用の硬化性塗料組成物としては、樹脂塗膜の強度に優れ、ガラス表面との密着力に優れていることから、メラミン樹脂やアクリル樹脂が多用され、それらからなる硬化性塗料組成物を、ガラス容器の表面に塗装した後、加熱したり、紫外線照射したりすることにより、樹脂塗膜を形成し、ガラス容器の装飾性や美的外観性、さらにはガラスの機械的強度を向上させていた。
そして、このようなガラス容器の表面に、非塗装部を設け、そこに粘着ラベル等を貼り付けることが行われているが、かかる非塗装部を設けるために、マスキングテープを利用する方法が知られている。
【0003】
また、図9に示すように、密着性が乏しい紫外線硬化型インクからなる樹脂塗膜(図示せず)を、ガラス容器の所定箇所に予め形成しておき、その上から別の熱硬化性塗料からなる熱硬化性樹脂塗膜を加熱硬化させて形成した後、当該紫外線硬化型インクからなる樹脂塗膜を、熱硬化性樹脂塗膜とともに、マスキングテープ等の粘着テープを引き剥がし、非塗装部91を形成した塗装ガラス容器90を製造する方法も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、図10(a)に示すように、マスキングテープ等を用いることなく、塗装部と、非塗装部と、を同時形成した後、塗装部に対応させて硬化塗膜を形成することにより、部分的硬化塗膜を備えた塗装ガラス容器を効率的に製造する塗装ガラス容器の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、複数個のガラス容器に対して、塗布液を実質的に同時塗布して、塗装ガラス容器を製造する方法であって、複数個のガラス容器を重ねた状態に保持した後、周囲から塗布液を被覆処理することにより、図10(b)に示すように、塗装部101と、非塗装部102と、を同時形成することを特徴とした塗装ガラス容器100の製造方法である。
【特許文献1】特開平5−345164号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−349288号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に開示されたマスキングテープ等を利用した方法により形成される非塗装部は、粘着ラベル等を貼り付けるためのものであって、内容物の残量を認識できなかった。逆に、粘着ラベル等を貼り付けずに、開口部としてそのまま残すと、化粧容器の装飾性を著しく損なうという問題が見られた。
一方、特許文献2等に開示された塗装ガラス容器の製造方法は、マスキングテープ等を利用しなくとも、非塗装部が形成できるという点では画期的であるものの、当該非塗装部は、所望時期において、ガラス容器の内容物を可視化して、内容物の残量を認識するためのインジケータとしての機能は有していなかった。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、外光(紫外線)の影響を受けないように、全体として、不透明な化粧容器であっても、所望時期に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部(非塗装部を含む。)を設けることにより、内容物の残量が認識できるとともに、装飾性等に優れた化粧容器が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所望時期において、ガラス容器の内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部を所定箇所に設けた化粧容器およびそのような化粧容器の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器であって、化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けた化粧容器が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、このように構成することにより、塗装部としての樹脂塗膜が形成してあり、全体として、不透明な化粧容器であっても、外光(紫外線)の影響を受けない状態で光透過部を設けることができ、それにより、内容物を光劣化させることなく、所望時期において、内容物を可視化して、残量等を確認することができる。
したがって、通常使用状態では、樹脂塗膜によって遮光され、内容物を光劣化させることがない一方、任意時期において、化粧容器を上下方向に回転させることによって、化粧容器の内容物の残量等について、容易に認識することができる。また、光透過部が、化粧容器を上下方向に回転させた状態においてのみ露出することから、通常の使用状態における装飾性を損なうことが少なくなる。
なお、キャップを不完全に装着した状態であって、かつ化粧容器を上下方向に回転させた状態の場合、中蓋等が設けられていない場合には、内容物が外部にこぼれる心配があるものの、短時間であれば、実用上、特に問題とならないことが判明している。また、回転させる角度や速度を適宜調整することによっても、そのような外部漏れを有効に防止できることが判明している。
【0008】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、キャップを完全に装着した状態においては、当該キャップが、光透過部を覆うように構成するとともに、化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、キャップを不完全に装着した状態において、光透過部が露出するように構成することが好ましい。
このように構成することにより、キャップを光透過部の遮光部材とし利用することができる。したがって、部品点数を増やすことなく、化粧容器を上下方向に回転させた状態において、キャップの位置を所定位置からずらことによって、はじめて光透過部が露出し、かつ、内容物を可視化することができる。
【0009】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、キャップと、化粧容器本体との間に、中蓋(スプレーヘッド等を含む。)が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、キャップを不完全に装着した状態であって、かつ倒立させたような状態であっても、中蓋(スプレーヘッド等を含む。)によって、内容物が外部にこぼれるおそれを可及的に少なくすることができる。
【0010】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、光透過部が長方形状であるとともに、キャップの一部に、光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部を備えることが好ましい。
このように構成することにより、キャップを光透過部の遮光部材として利用することができ、化粧容器を上下方向に回転させた状態において、キャップの位置をずらして、光透過部の位置に対応させることによって、容易に内容物を可視化することができる。
また、光透過部の形状が所定形状であるとともに、それに対応した形状の光透過部がキャップに備えてあることから、光透過部を設けたことによる内容物への外光の影響をより少なくすることができる。
【0011】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、光透過部に、目盛りを設けることが好ましい。
このように構成することにより、目盛りを利用して、内容物の残量等を定量的に把握することができる。
【0012】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、化粧容器本体が、収容部と、首部とを備えており、当該首部の一部に、光透過部を設けることが好ましい。
このように構成することにより、首部に設けてあるキャップの位置をずらすことによって、内容物を可視化することができる。
また、光透過部が首部に設けてあることから、光透過部を設けたことによる内容物への外光の影響をさらに少なくすることができる。
【0013】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、樹脂塗膜が、多層構造であって、光透過部との端部に、傾斜面が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、樹脂塗膜の剥離を有効に防止することができる。
【0014】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、キャップの一部に、化粧容器を上下方向に回転した所定状態に保持するための保持部を備えることが好ましい。
このように構成することにより、化粧容器から手等を離した状態であっても、化粧容器を回転状態、例えば、倒立状態に保持することができ、内容物を容易かつ正確に可視化することができる。
【0015】
また、本発明の化粧容器を構成するにあたり、化粧容器本体が、ガラス容器であることが好ましい。
このように構成することにより、樹脂塗膜を形成することによって、化粧容器の意匠性を向上させることができるとともに、透明性が高いことから、内容物を容易かつ正確に可視化できる光透過部を設けることができる。
【0016】
また、本発明の別の態様は、キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器の製造方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする化粧容器の製造方法である。
(1)キャップおよび化粧容器本体を準備する工程
(2)化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けるとともに、塗装部としての樹脂塗膜を形成する工程
すなわち、このように実施することによって、全体として、不透明な化粧容器であっても、外光(紫外線)の影響を受けない状態で光透過部を設けることができ、それにより、内容物を光劣化させることなく、所望時期において、内容物を可視化することが可能な化粧容器を効率的に得ることができる。
【0017】
また、本発明の化粧容器の製造方法を実施するにあたり、樹脂塗膜を、紫外線硬化樹脂から形成することが好ましい。
このように実施することにより、化粧容器の意匠性を向上させることができるとともに、光透過部の形成を容易かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)〜(b)に例示するように、キャップ14を備えた化粧容器本体12の表面に、塗装部としての樹脂塗膜18を形成してなる化粧容器10であって、化粧容器本体12の一部に、化粧容器10を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物17を可視化するための光透過部16を設けることを特徴とする化粧容器10である。
ここで、図1(a)は、化粧容器10の全体を示した斜視図であり、図1(b)は、化粧容器10の光透過部16における拡大断面図である。
以下、化粧容器として、主として、ガラス容器からなる化粧容器を例にとって説明する。
【0019】
1.化粧容器本体
(1)形態
図1に例示する化粧容器本体12の形状は特に制限されるものでなく、化粧容器の用途に対応させて、図2(a)に示すようなボトルネック型のビン、図2(b)に示すような矩形状のビン、図2(c)に示すような円筒状のガラスビン、図2(d)に示すような異形のガラスビン、あるいは、図示しないものの、矩形状のガラス箱、円筒状のガラス箱、異形のガラス箱等とすることが好ましい。
また、化粧容器本体の形態に関して、外周部に沿って肉厚部を設けたり、あるいは外周部の一部に面取り部を設けたりすることも好ましい。
この理由は、このような化粧容器本体であれば、塗装部としての樹脂塗膜を部分的に形成した後に、正面から眺めた場合に、外周部の肉厚部や面取り部において光が集光し、より鮮明かつ複雑な色を観察することができるためである。
なお、このような化粧容器本体を構成するガラスの種類についても特に制限されるものでなく、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、リン酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラス等が挙げられる。
一方、化粧容器本体が樹脂から構成されている場合には、構成する樹脂の種類として、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0020】
(2)着色性
また、化粧容器本体として、無色透明材料から構成することもできるが、着色透明材料や半透明材料から構成することも好ましい。
この理由は、着色透明材料や半透明材料を用いることにより、内容物の識別性を過度に低下させることなく、外側に部分的に設けた樹脂塗膜と、ガラス容器における着色性との関係で、レインボーカラーや玉虫色、さらには鱗粉模様等の複雑な色具合を認識できるためである。すなわち、化粧容器の意匠性や装飾性を向上させることができる。
【0021】
(3)下地層
また、図1(b)に例示するように、化粧容器本体12の表面に、下地層(プライマー層)19を、全面的または部分的に備えることが好ましい。
より具体的には、下地層(プライマー層)の構成材料として、ポリシロキサン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの誘導体を含む熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0022】
特に、ポリシロキサン系の下地層を備えることにより、樹脂塗膜の硬さを所望範囲内の値に容易に調整することができ、化粧容器本体(ガラス容器)と、樹脂塗膜との間の剥離を有効に防止することができる。
また、下地層の構成材料として、メラミン樹脂等に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することも好ましい。
この理由は、このようなポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することにより、ガラスに対する密着力を向上させるとともに、樹脂塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができるためである。
【0023】
さらに、かかる下地層の厚さを0.1〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる下地層の厚さが0.1μm未満の値になると、強度が不足して、化粧容器本体の表面から容易に剥離したり、均一に形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる下地層の厚さが10μmを超えると、その上に形成する樹脂塗膜が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、下地層の厚さを0.5〜8μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0024】
2.キャップ
キャップの形態は特に制限されるものではないが、化粧容器本体の形状に対応して、例えば、図3(a)に示すような円柱状、図3(b)に示すような四角柱状、図3(c)に示すような円錐形、図3(d)に示すような異形等とすることができる。
なお、ガラス容器であっても圧接可能であって、軽量化等も可能なように、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等から構成することが好ましい。
【0025】
また、図4(a)に例示するように、キャップ14の一部に、化粧容器10を上下方向に回転した際に、所定状態に保持するための保持部40を備えることが好ましい。
この理由は、化粧容器から手等を離した状態であっても、化粧容器を回転状態、例えば、45°〜270°の回転状態、特に、図4(b)に例示すように、180°の倒立状態に保持することができ、内容物を容易かつ正確に可視化することができる。
【0026】
また、図5(a)に例示するように、化粧容器本体12に、長方形状の光透過部51を設けてあるとともに、キャップ14の一部に、光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部50を備えていることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、キャップを光透過部の遮光部材とし、キャップの位置をずらすことによって、内容物を可視化することが可能な化粧容器を提供することができるためである。
また、光透過部の形状が所定形状であるとともに、それに対応した形状の光透過部がキャップに備えてあることから、光透過部を設けたことによる内容物への外光の影響をより少なくすることができるためである。
さらに、図5(b)に例示するように、キャップ14の位置を調節し、スリット状の光透過部50と長方形状の光透過部51とが重ね合わさることによって、化粧容器10中の内容物17の残量等を認識できるためである。
【0027】
3.樹脂塗膜
(1)種類
図1に例示する塗装部18を構成する樹脂塗膜の種類については、特に制限されるものではないが、より具体的には、熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物からなるとともに、主剤として、ポリシロキサン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの誘導体を含むことが好ましい。
特に、主剤として、ポリシロキサン系樹脂を含むことにより、樹脂塗膜の硬さを所望範囲内の値に容易に調整することができるとともに、耐水性や耐熱性についても向上できることから好ましい樹脂である。
また、メラミン樹脂等に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を含むことにより、ガラス容器に対する密着力を向上させるとともに、樹脂塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができる。より具体的には、メラミン樹脂100重量部に対して、アクリルポリオール化合物を50〜300重量部、ラクトンポリオール化合物を5〜100重量部の範囲でそれぞれ配合することが好ましい。
【0028】
また、樹脂塗膜の主成分として、ポリシロキサン系樹脂やメラミン樹脂を使用した場合、硬化剤(硬化触媒を含む。以下、同様である。)を添加することが好ましい。
このような硬化剤としては、白金、ジブチルスズ、シュウ酸ジメチルエステル、シュウ酸ジエチルエステル、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、モノクロロ酢酸ナトリウム塩、モノクロロ酢酸カリウム塩、α、α−ジクロロヒドリン、エチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、尿素誘導体、イミドスルフォン酸ニアンモニウム等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、かかる硬化剤の添加量を、主剤100重量部に対して、0.1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる硬化剤の添加量が0.1重量部未満の値となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、かかる硬化剤の添加量が30重量部を超えると、主剤の反応性を制御することが困難となる場合があるためである。
【0029】
また、樹脂塗膜を構成する塗布液中に、各種添加剤を添加することが好ましい。特に、シランカップリング剤を、主剤100重量部に対して、0.5〜50重量部の範囲で添加することが好ましい。
また、このようなシランカップリング剤の種類は特に制限されるものではないが、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の一種単独または二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。
特に、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランを用いた場合には、メラミン樹脂100重量部に対して、10〜40重量部の範囲で添加することが好ましい。
【0030】
また、樹脂塗膜中に、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、ガラス容器の内容物における、紫外線劣化(光劣化)を有効に防止することができるためである。
かかる紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、イソオクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート等のベンゾトリアゾール類、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルペピリジン重縮合物等のヒンダードアミン類 トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0031】
かかる紫外線吸収剤を、主剤100重量部に対して、0.005〜10重量部の範囲で添加することが好ましい。
この理由は、かかる紫外線吸収剤の添加量が0.005重量部未満の値となると、紫外線吸収効果が発現せず、入射した紫外線によって、ガラス容器の内容物が劣化する場合があるためである。一方、かかる硬化剤の添加量が10重量部を超えると、主剤との分散性や相溶性が劣化するためである。
なお、光透過部は、比較的小さく、使用していない際はキャップで被覆されているために、化粧容器の内容物に対する紫外線劣化を促進するおそれは少ないと言える。
【0032】
また、樹脂塗膜中に、干渉性着色剤を含むことが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、レーザー吸収性を高めることができる一方、ガラス容器の装飾性を著しく高めることができるためである。
ここで、干渉性着色剤とは、光学的干渉により、光の多重層反射が発生することで、パールルミネッセンス(真珠光沢)等の色彩効果を付与することができる着色剤である。
具体的には、金属酸化物被覆マイカ(雲母)顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、チタンフレーク顔料、ホログラム顔料およびコレステリック液晶ポリマーからなるフレーク状顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。また、かかる顔料の金属酸化被覆の金属種類としては、二酸化チタン、酸化鉄その他クロム、コバルト、錫、ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0033】
また、干渉性着色剤の添加量を、樹脂塗膜の全体量(100重量%)に対して、0.1〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる干渉性着色剤の添加量が0.1重量部未満の値となると、真珠光沢等の色彩効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる干渉性着色剤の添加量が30重量部を超えると、主剤との分散性や相溶性が劣化したり、塗装外観が低下したりするおそれがあるためである。
したがって、干渉性着色剤の添加量を、樹脂塗膜の全体量(100重量%)に対して、0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1.0〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
また、樹脂塗膜が、多層構造であって、少なくとも一層にレーザー吸収剤を含むことが好ましい。
この理由は、レーザー吸収剤を含む層と、レーザー吸収剤の添加量が比較的少ない、あるいは含有しない層との間における、レーザーエネルギー吸収性の差異によって、容易にレーザーによる光透過部(開口部あるいは薄肉部)の形成が可能となり、より装飾性が高いガラス容器とすることができるためである。
【0035】
ここで、レーザー吸収剤とは、レーザーに対する吸収性の高い染料あるいは顔料(染顔料)であり、照射されたレーザーのエネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換して塗硬膜を溶融発泡あるいはクレージングを行わせると同時に、レーザー吸収剤自体がアブレージョンあるいは飛散することで光透過部(開口部あるいは薄肉部)の形成を可能とする。
具体的には、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等)、グラファイト、チタンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン等の白色顔料、アドミウムイエロー、黄鉛(クロム黄)、ジンククロメート、黄土、黄色酸化鉄等黄色顔料、赤口顔料、アンバー、赤色酸化鉄、カドミウムレッド、鉛丹等の赤色顔料、紺青、群青、コバルトブルー等青色顔料、クロムグリーン、コバルトグリーン、ビリジアン等の緑色顔料の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
この中でも、レーザーの吸収性(吸光度)が高く、主剤との分散性やコスト性が良好であることから、カーボンブラックが特に好ましい。
【0036】
また、レーザー吸収剤は、使用するレーザーにおいて、0.8以上の吸光度を有することが好ましい。
この理由は、レーザー吸収剤の吸光度を0.8未満とすると、レーザーエネルギーの吸収性が不十分になり、塗膜中に変換される熱エネルギーが不足してしまうために、効率的に光透過部(開口部あるいは薄肉部)を形成できなくなる場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の吸光度を0.8〜2.0とすることが好ましく、0.8〜1.6とすることがさらに好ましい。
なお、吸光度(OD)とは、分光光度計又は近赤外線吸光度測定装置で測定される、使用するレーザーの反射率Rの逆数の対数、すなわち、OD=log(1/R)を示す。
【0037】
また、レーザー吸収剤の平均粒径は、10〜3000nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる平均粒径が10nm未満である場合、レーザー照射による光透過部(開口部あるいは薄肉部)を形成する際において、高いレーザーエネルギーを要するため、光透過部の装飾性や仕上がり精度が悪化する場合があるためである。
一方、かかる平均粒径が3000nmを超える場合、ガラス容器上の塗工膜の機械的強度が低下する場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の平均粒径は、100〜1000mの範囲内の値とすることが好ましく、200〜800nmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0038】
また、レーザー吸収剤の添加量を、樹脂塗膜のうちの一層の全体量(100重量%)に対して、0.01〜8重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる添加量が、0.01重量%未満であると、レーザー吸収性が低く、効率的に光透過部(開口部あるいは薄肉部)を形成できなかったり、光透過部の仕上がり具合(装飾性)が悪化したりする場合があるためである。
一方、かかる添加量が、8重量%を超えると、ガラス容器上の塗工膜の機械的強度が低下する場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の添加量を、樹脂塗膜のうちの一層の全体量(100重量%)に対して、0.5〜5.0重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1.0〜3.0重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、樹脂塗膜中に、相溶化剤、他の染顔料、難燃剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属フィラー等)、安定剤(脂肪酸金属塩、酸化防止剤等)、滑剤、分散剤、発泡剤、抗菌剤等を含んでいてもよい。
【0040】
また、化粧容器表面上に塗工されている樹脂塗膜は、多層構造であることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、化粧容器の装飾性や意匠性のみならず、隠蔽性も高めることができるためである。
【0041】
(2)形態等
また、樹脂塗膜の形態に関して、その厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂塗膜の厚さが1μm未満の値になると、強度が不足して、ガラス容器の表面から容易に剥離したり、均一に形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる樹脂塗膜の厚さが100μmを超えると、その上の多層膜が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、樹脂塗膜の厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜30μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、樹脂塗膜が多層構造の場合には、その合計厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0042】
また、JIS K5400に準拠して測定される樹脂塗膜の鉛筆硬度を1〜5Hの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂塗膜の鉛筆硬度が1H未満の値になると、耐磨耗性が著しく低下したり、樹脂塗膜ごと剥離しやすくなったりする場合があるためである。一方、かかる樹脂塗膜の鉛筆硬度が5Hを超えると、ガラス容器の角部等において、樹脂塗膜自体が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、かかる樹脂塗膜の鉛筆硬度を2〜4Hの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0043】
また、樹脂塗膜の端部に関して、その端部が徐々に薄くなった傾斜部を備えることが好ましい。
この理由は、マスキングテープ等を使用して部分的に樹脂膜を形成した場合、樹脂塗膜と、光透過部との境界に、樹脂塗膜の厚さに応じた段差が明確に生じやすくなるためである。すなわち、かかる段差に起因して、樹脂塗膜が剥離しやすくなったり、樹脂塗膜の端部が目立ったり、さらには、光透過部に粘着ラベルを平坦に貼ることが困難になったりするという問題が生じやすくなるためである。
なお、このような傾斜部は、例えば、マスキングテープ等を用いて、樹脂塗膜を形成した後、樹脂塗膜と、光透過部との境界に、例えば、クリアな熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂からなる塗装を施すことにより形成することができる。
【0044】
(3)光透過部
また、図1に示すように、塗装部18としての樹脂塗膜の一部、あるいは塗装部18としての樹脂塗膜に隣接させて、化粧容器10を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、化粧容器の内容物17を可視化するためのインジケータとしての光透過部17を設けることを特徴とする。
この理由は、このように構成することにより、化粧容器10を上下方向に回転させた状態において露出する光透過部17を介して、内容物17を可視化して、かかる内容物17の残量等について容易に認識することができるためである。
【0045】
また、本発明における光透過部とは、化粧容器内部を上下反転させた状態において、露出し、かつ化粧容器の内容物の残量等を観察することができる程度の光透過性を有している。
具体的には、塗装部としての樹脂塗膜を、マスキングテープ等を用いて、完全に除去し、実質的に化粧容器表面を露出した状態(開口部)としたり、あるいは内容物の残量等が認識できる程度に樹脂塗膜を、薄く塗装したり、もしくはレーザー等を用いて、薄膜化させて形成してあり、かつ、化粧容器の表面が露出していない状態(薄肉部)としたりすることができる。
【0046】
また、図6(a)に示すように、光透過部16に、目盛り60が設けてあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、化粧容器における内容物の残量を、定量的に判断することができるためである。
すなわち、このように目盛りを設けることにより、内容物の残量を、定量的に正確かつ迅速に判断することができる。
【0047】
また、図6(b)に示すように、光透過部16の一部または全部を覆うための遮光部材61が設けてあることが好ましい。
この理由は、このように化粧容器の外部から、光透過部の形成位置に対応して、遮光性基材を備えた粘着テープ等を貼り付けることにより、光透過部を介して進入する外光の影響を防止することができるためである。
したがって、このように遮光部材を設けることにより、内容物に対する光劣化をさらに抑制することができる。また、内容物を可視化する際には、かかる遮光部材を取り外すだけで、内容物の残量を正確且つ迅速に判断することができる。
【0048】
また、光透過部16の平面形状を、図6(c)に示すように円形、図6(d)に示すように文字、図6(e)に示すように記号、あるいは、図示はしないものの、楕円形、長円形、多角形、異形および図形からなる群の少なくとも一つとすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、光透過部が装飾効果や情報性を発揮するため、化粧容器についての装飾性や情報性を高めることができるためである。
すなわち、例えば、円形の光透過部を複数個設けることにより、化粧容器としての装飾効果が高まるばかりか、目盛りとしても利用することができる。
【0049】
また、光透過部の大きさに関して、円相当径を10μm〜10cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような大きさであれば、公知の形成方法、例えば、マスキングテープ法や、レーザー法等を用いて、正確かつ迅速に形成することができるためである。また、このような大きさであれば、化粧容器としての装飾効果が高まるばかりか、内容物に対する外光の影響を少なくすることができるためである。
したがって、光透過部の大きさに関して、円相当径を50μm〜5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、100μm〜1cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図7に示すように、キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器の製造方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする化粧容器の製造方法である。
(1)キャップおよび化粧容器本体を準備する工程(S1)
(2)化粧容器本体の一部に、化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けながら、塗装部としての樹脂塗膜を形成する工程(S2)
【0051】
1.キャップおよび化粧容器本体の準備工程
第1の実施形態で説明したのと同様のキャップおよび化粧容器本体、例えば、ガラス容器等を準備することができるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
2.樹脂塗膜の形成工程
(1)塗布工程
図7に示すように、樹脂塗膜の形成工程S2−1において、熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物からなる塗布液を、ガラス容器に対して同時塗布することが好ましい。
ここで、熱硬化性組成物等の塗布方法は、特に限定されないものの、例えば、静電塗装法、電着塗装法、ロールコーター法、エアースプレー法、エアレススプレー法、カーテンフローコーター法等を挙げることができる。
そして、これらの塗布方法のうち、より薄膜化が可能で、ガラスの曲面にも均一に塗布することができる一方、塗布装置の構造も簡易であることから、静電塗装法やエアースプレー法を用いることがより好ましい。
なお、塗布液については、第1の実施形態で説明したのと同様の塗布液とすることができることから、ここでの説明は省略する。
【0053】
(2)樹脂塗膜の硬化工程
次いで、図7に示すように、樹脂塗膜の硬化工程S2−2において、塗布液を適用したガラス容器に対して、加熱処理または紫外線照射等することにより、塗布した熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物を硬化させて、樹脂塗膜を形成することが好ましい。
ここで、硬化工程における硬化条件(焼き付け条件)は、使用する熱硬化性組成物の反応性に応じて適宜変更可能であるが、通常、140℃〜250℃、1〜120分の条件で行うことが好ましく、150℃〜230℃、5分〜60分の条件で行うことがより好ましく、160℃〜220℃、10分〜30分の条件で行うことがさらに好ましい。
また、熱硬化性組成物が、常温乾燥塗料である場合には、室温で1日〜1週間乾燥させることが好ましく、2〜4日乾燥させることも好ましい。
さらに、紫外線硬化性組成物を使用した場合には、紫外線の露光量を例えば、50〜1,000mJ/cm2の範囲内の値にして、樹脂塗膜を形成することが好ましい。
【0054】
3.光透過部の形成工程
次いで、図7に示すように、光透過部の形成工程S2−3において、光透過部を形成する。但し、かかる光透過部は、マスキングテープやマスキング冶具等を用いて、塗装部と同時に形成しても良いし、あるいは、塗装部を全体的に形成した後に、レーザー等を用いて形成しても良い。
したがって、以下、レーザー等を用いて光透過部を形成する場合について、詳細に説明する。
【0055】
(1)レーザーの種類
レーザーの種類としては、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して、適宜選択することができる。
例えば、YAGレーザー、CO2レーザー、YVO4レーザー、Arレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
また、レーザーとして、CO2レーザーおよびYAGレーザーを併用することも好ましい。この理由は、このように実施することにより、塗膜の基材としてのガラス容器等に対する損傷を少なくすることができるためである。
【0056】
(2)処理時間
また、レーザーの処理時間は、レーザーの種類、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して定めることができるが、通常、0.05秒〜3分(光透過部:1cm2当たり)の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、ガラス容器当たりのレーザーの処理時間が0.05秒未満であると、レーザー照射量が少なすぎて光透過部の形成できなくなる場合があるためである。
一方、3分を超えると、レーザー照射量が多すぎて、光透過部に、ズレの発生等の仕上がり精度の低下が見られる場合があるためである。
なお、上述したように、CO2レーザーおよびYAGレーザーを併用する場合、CO2レーザーの照射時間をt1(sec)とし、YAGレーザーの照射時間をt2(sec)としたときに、t1の照射時間の割合を0.1〜30%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、塗膜の基材としてのガラス容器に対する損傷を確実に少なくすることができるためである。
【0057】
(3)焦点距離
また、レーザーの焦点距離は、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等を考慮して定めることができるが、通常、90〜500cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる焦点距離が90cm未満であると、光透過部において、ズレの発生等の仕上がり精度や装飾性の低下が見られる場合があるためである。
一方、かかる焦点距離が、500cmを超えると、光透過部の形成時間が長くなる場合があるためである。
【0058】
(4)処理温度
また、レーザー処理の際の雰囲気温度を15〜70℃の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、かかる雰囲気温度が15℃未満になると、レーザー照射によって、樹脂塗膜に付与される熱エネルギーが、低温外気に吸収されてしまい、レーザー処理を効率的に実施することが困難になる場合があるためである。
一方、雰囲気温度が70℃を越えると、レーザーの照射位置の精度が低下したり、レーザー照射部位に熱エネルギーが残留しやすくなることにより、光透過部の周囲の仕上がり精度や装飾性が低下したりする場合があるためである。
したがって、レーザー処理の際の雰囲気温度を20〜60℃の範囲内とすることがより好ましく、25〜50℃の範囲内とすることがさらに好ましい。
【0059】
(5)出力
また、レーザー処理において、レーザー装置の出力は、樹脂塗膜の膜厚、レーザー吸収剤の種類、吸光性、添加量等の各条件を考慮して、5〜500Wの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、5W未満であると、レーザー照射による熱エネルギーの発生が少なすぎて、光透過部の形成できなくなる場合や形成時間がかかる場合があるためである。一方、500Wを超えると、レーザー照射量が多すぎて、光透過部に、ズレ等が発生することによって、塗装ガラス容器の仕上がり精度が低下したり、ガラス表面に発生した熱エネルギーによってガラス容器表面の平滑性が劣化したりするためである。
したがって、レーザー装置の出力を10〜300Wの範囲内とすることがより好ましく、30〜100Wの範囲内とすることがさらに好ましい。
【0060】
4.後工程
また、図7に示すように、本発明の化粧容器の製造方法は、後工程S−3として、検査工程を設けることも好ましい。
あるいは、図示しないものの、後工程において、光透過部に対して、さらに着色塗装処理やクリア塗装処理を施すか、あるいは光不透過性の粘着ラベル等を貼り付けることが好ましい。
この理由は、このような後工程を設けることにより、不良品を効率的に排除できるとともに、化粧容器の装飾性や情報性に優れ、かつ、平坦で、均一な厚さの樹脂塗膜を備えた化粧容器を形成することができるためである。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を掲げて、本発明の内容を更に詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、これら実施例のみの記載に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更することができる。
【0062】
[実施例1]
1.化粧容器の製造
(1)塗料組成物の作成
攪拌機付の混合容器内に、下記配合材料を仕込み、室温条件で、30分間攪拌して(回転数:1000rpm)、粘度40mPa・s(25℃)の塗料組成物を得た。
メラミン樹脂 100重量部
アクリルポリオール化合物 180重量部
(ヒドロキシル価300mgKOH/g、数平均分子量3,000)
ラクトンポリオール化合物 30重量部
(ヒドロキシル価200mgKOH/g、数平均分子量1,000)
ウレイドプロピルトリエトキシシラン 25重量部
リン酸系硬化触媒 5重量部
赤色顔料(赤色酸化鉄) 5重量部
キシレン 300重量部
酢酸ブチル 150重量部
イソプロピルアルコール 90重量部
【0063】
(2)塗装部および光透過部の形成等
次いで、図8(a)に示すように、スプレーヘッド81およびスプレーチューブ82を備えたガラス容器(収容部:直径5cmの丸底球体状、首部:直径2.5cm、長さ8cmのボトルネック状、内容量100ml)を、化粧容器本体12として、準備した。
次いで、スプレーヘッド81をはずすとともに、ガラス容器の首部の上方半分(幅1cm、長さ4cm)が覆われるように、マスキングテープ(粘着テープ)を貼り付けた。
次いで、上述した塗料組成物を、マスキングテープを貼り付けた状態のガラス容器の周囲から、所定時間、エアースプレーした後、180℃×20分の条件で焼き付け、膜厚が20μmであって、JIS K 5600に基づいた鉛筆硬度が3Hの赤色樹脂塗膜を塗装部として形成した。
一方、マスキングテープを取り外し、化粧容器を回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部(幅1cm、長さ4cm)を有するガラス容器とした。
【0064】
(3)化粧容器の作成
次いで、図8(a)に示すように、スプレーヘッド81およびスプレーチューブ82を取り付けた後、さらに、図8(b)に示すように、光透過部を有していないキャップ14をガラス容器に圧接適合するように、取り付け、実施例1のキャップ14を備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器80とした。
【0065】
2.化粧容器の評価
得られたキャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器につき、以下のようにして、内容物(水)の認識性、樹脂塗膜の密着性、および化粧容器の外観性の評価を行った。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0066】
(1)内容物の認識性
光透過部を有するガラス容器の内部に、水を10cm3収容し、以下の基準に準じて、内容物の認識性を評価した。すなわち、化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、キャップを不完全に装着し、位置をずらした状態において、光透過部が露出して、内容物(水)が目視できるか否かを評価した。
◎:90°回転(横転)させた状態で、内容物(水)を目視することができる。
○:180°回転(倒立)させた状態で、内容物(水)を目視することができる。
×:180°回転(倒立)させた状態で、内容物(水)を目視することができない。
【0067】
(2)樹脂塗膜の密着性
得られたキャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器につき、JIS K 5600に基づいた碁盤目テ−プ法を実施し、100碁盤目あたりの樹脂塗膜のはがれ数から、下記基準に照らして、化粧ガラス容器本体に対する樹脂塗膜の密着性の評価を実施した。
◎:はがれ数は、0個/100碁盤目である。
○:はがれ数は、1〜3個/100碁盤目である。
△:はがれ数は、4〜9個/100碁盤目である。
×:はがれ数は、10個以上/100碁盤目である。
【0068】
(3)化粧容器の外観性
得られたキャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器につき、下記基準に照らして、外観性の評価を実施した。
○:キャップを完全に装着した状態において、光透過部が露出しない。
×:キャップを完全に装着した状態において、光透過部が露出する。
【0069】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1における赤色顔料による樹脂塗膜(第1の樹脂塗膜、厚さ:20μm)の下地として、カーボン入りグレー顔料を含む熱硬化性樹脂を用いて第2の樹脂塗膜(厚さ:10μm)を形成したほかは、実施例1と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0070】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1における赤色顔料による樹脂塗膜(第1の樹脂塗膜)の下地として、カーボン入りグレー顔料を含む熱硬化性樹脂を用いて第2の樹脂塗膜(厚さ:10μm)を形成するとともに、第1の樹脂塗膜の上に、干渉性顔料を含む熱硬化性樹脂からなる第3の樹脂塗膜(厚さ:10μm)を形成したほかは、実施例1と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0071】
[実施例4〜6]
実施例4〜6においては、ガラス容器の首部の上方半分に、幅1cm、長さ4cmの長方形状の光透過部を設けるとともに、キャップに、当該光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部(幅1.2cm、長さ4.2cm)を設けたほかは、実施例1〜3と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0072】
[比較例1〜3]
比較例1〜3においては、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部を形成しなかったほかは、実施例1〜3と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0073】
[比較例4]
比較例4においては、マスキングテープを用いて、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部(幅1cm、長さ4cm)を、ガラス容器の収容部の下方に設けたほかは、実施例1と同様に、キャップを備えたスプレーヘッド付き化粧ガラス容器を作成して、内容物の認識性等を評価した。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の化粧容器によれば、化粧容器を上下方向に回転させた状態、例えば、倒立させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するためのインジケータとしての光透過部を所定箇所に設けたため、内容物の残量を容易に認識できるようになった。
したがって、通常の使用状態においては、光透過部が認識されずに意匠性に優れるとともに、化粧容器を倒立させた状態ではじめて光透過部が露出して、内容物の残量等を容易に認識することができる。
よって、理髪店や美容院における化粧容器、あるいは頭髪関係の使用頻度が高い化粧容器のように、常に、内部に所定量を保持しなければならない一方、化粧容器が外観的に客に見られて、使用意欲を刺激することから、このような用途において好適に用いられることが期待される。
また、本発明の化粧容器の製造方法によれば、マスキングテープやレーザー等を用いることにより、全体として、不透明な化粧容器であっても、外光(紫外線)の影響を受けない状態で光透過部を設けることができ、それにより、内容物を光劣化させることなく、所望時期において、内容物を可視化することが可能な化粧容器を効率的に得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)は、本発明の化粧容器の一例を説明するために供する図であり、(b)は、本発明における化粧容器の断面を説明するために供する拡大断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明に用いるガラス容器の形状を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明に用いるキャップの形状を説明するために供する図である。
【図4】(a)は、本発明に用いる保持部を説明するために供する図であり、(b)は、保持部を用いて、化粧容器の内容物の残量を測定するときの形態を説明するために供する図である。
【図5】(a)は、本発明において、長方形状の光透過部と、スリット状の光透過部を備えたキャップと、を備えた化粧容器を説明するために供する図であり、(b)は、長方形状の光透過部と、スリット状の光透過部を備えたキャップと、を用いて、化粧容器の内容物の残量を測定するときの形態を説明するために供する図である。
【図6】(a)〜(e)は、本発明に用いる光透過部の形状を説明するために供する図である。
【図7】図7は、本発明の化粧容器の製造工程を示す図である。
【図8】(a)〜(b)は、実施例に記載された製造条件に基づいて、製造された化粧容器の一例を説明するために供する図である。
【図9】図9は、従来の塗装ガラス容器を説明するために供する図である。
【図10】図10は、従来の塗装ガラス容器を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0077】
10:化粧容器
12:化粧容器本体
14:キャップ
16:光透過部
17:内容物
18:樹脂塗膜
19:下地層(プライマー層)
40:保持部
50:スリット状の光透過部を備えたキャップ
51:長方形状の光透過部
60:目盛り
61:遮光部材
80:スプレーヘッド付き化粧ガラス容器
81:スプレーヘッド
82:スプレーチューブ
S1:キャップおよび化粧容器本体の準備工程
S2:樹脂塗膜形成工程
S2−1:塗布工程
S2−2:樹脂塗膜の硬化工程
S2−3:光透過部の形成工程
S3:後工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器であって、
前記化粧容器本体の一部に、前記化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けることを特徴とする化粧容器。
【請求項2】
前記化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、前記キャップを完全に装着した状態においては、当該キャップが、前記光透過部を覆うように構成するとともに、
前記化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、前記キャップを不完全に装着した状態において、前記光透過部が露出するように構成することを特徴とする請求項1に記載の化粧容器。
【請求項3】
前記キャップと、前記化粧容器本体との間に、中蓋が設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧容器。
【請求項4】
前記光透過部が長方形状であるとともに、前記キャップの一部に、前記光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項5】
前記光透過部に、目盛りを設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項6】
前記化粧容器本体が、収容部と、首部とを備えており、当該首部の一部に、前記光透過部を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項7】
前記樹脂塗膜が、多層構造であって、前記光透過部との端部に、傾斜面が設けてあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項8】
前記キャップの一部に、前記化粧容器を上下方向に回転した所定状態に保持するための保持部を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項9】
前記化粧容器本体が、ガラス容器であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項10】
キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器の製造方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする化粧容器の製造方法。
(1)前記キャップおよび化粧容器本体を準備する工程
(2)前記化粧容器本体の一部に、前記化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けるとともに、塗装部としての樹脂塗膜を形成する工程
【請求項11】
前記樹脂塗膜を、紫外線硬化樹脂から形成することを特徴とする請求項10に記載の化粧容器の製造方法。
【請求項1】
キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器であって、
前記化粧容器本体の一部に、前記化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けることを特徴とする化粧容器。
【請求項2】
前記化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、前記キャップを完全に装着した状態においては、当該キャップが、前記光透過部を覆うように構成するとともに、
前記化粧容器を上下方向に回転させた状態であって、かつ、前記キャップを不完全に装着した状態において、前記光透過部が露出するように構成することを特徴とする請求項1に記載の化粧容器。
【請求項3】
前記キャップと、前記化粧容器本体との間に、中蓋が設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧容器。
【請求項4】
前記光透過部が長方形状であるとともに、前記キャップの一部に、前記光透過部の形状に対応したスリット状の光透過部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項5】
前記光透過部に、目盛りを設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項6】
前記化粧容器本体が、収容部と、首部とを備えており、当該首部の一部に、前記光透過部を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項7】
前記樹脂塗膜が、多層構造であって、前記光透過部との端部に、傾斜面が設けてあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項8】
前記キャップの一部に、前記化粧容器を上下方向に回転した所定状態に保持するための保持部を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項9】
前記化粧容器本体が、ガラス容器であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化粧容器。
【請求項10】
キャップを備えた化粧容器本体の表面に、塗装部としての樹脂塗膜を形成してなる化粧容器の製造方法であって、下記工程(1)〜(2)を含むことを特徴とする化粧容器の製造方法。
(1)前記キャップおよび化粧容器本体を準備する工程
(2)前記化粧容器本体の一部に、前記化粧容器を上下方向に回転させた状態において露出し、かつ、内容物を可視化するための光透過部を設けるとともに、塗装部としての樹脂塗膜を形成する工程
【請求項11】
前記樹脂塗膜を、紫外線硬化樹脂から形成することを特徴とする請求項10に記載の化粧容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−1283(P2009−1283A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160917(P2007−160917)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
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