説明

化粧崩れ防止用オーバーコート剤

【課題】 本発明は、通常使用しているアイメイクなどを施した上から、塗布することによって、化粧面に強靭でべたつかない耐水性被膜を形成することで、化粧持続性と二次付着性が格段に向上する化粧崩れ防止用オーバーコート剤を提供することにある。
【解決手段】 トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上と、揮発性油剤を含有することを特徴とする化粧崩れ防止用オーバーコート剤を提供することにより、上記課題を解決することを見いだしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧崩れ防止用オーバーコート剤に関し、さらに詳しくは、アイメイクなどの化粧崩れ防止するのに有用なオーバーコート剤に関する。本発明の化粧崩れ防止用オーバーコート剤は、通常使用しているアイメイクなどを施した上から、塗布することによって、化粧面に強靭でべたつかない耐水性被膜を形成することで、化粧持続性と二次付着性が格段に向上するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の化粧崩れ防止用オーバーコート剤は、アイメイクアップ化粧料の中でも、主にアイライナー、マスカラ、アイブロウなどの目の際、睫毛、眉毛に主に用いられる眉目化粧料に対して施すことを目的とするものである。
【0003】
メイクアップ化粧料においては、人の活動時間中に、他との接触や塗布部位の動きの影響で、化粧被膜が部分的に剥離する「化粧崩れ」といわれる現象が見られるものである。さらにその化粧崩れを補正するために、「化粧直し」といわれる化粧をやり直す行為が行われる。実際、化粧直しが行われるのは、メイクアップ化粧料の中でもファンデーションや口紅のような、塗布部位が比較的広く、化粧崩れしやすいアイテムで、手早く化粧直しできるものに限られる。メイクアップ化粧料のうちアイライナー、マスカラ、アイブロウなどの限られた狭い部位に使用される眉目化粧料においては、摩擦や接触などの機会が少ないことから、極端な化粧崩れは少なく、化粧直しは行われないことが多い。これは、手早さを要求される化粧直しが行いづらいのもその原因にある。しかしながら、これらのアイテムにおいても、現実には化粧崩れは起こっており、化粧直しが行いづらいことから、逆にこれらのアイテムの方がより優れた化粧持続性を要求される。
【0004】
眉目化粧料のうちアイライナーは、高濃度のワックスで構成されるペンシルタイプ、エマルション樹脂を被膜剤とするリキッドタイプ、耐水性に優れる油性タイプが主に用いられている。ペンシルタイプは携帯性、利便性には優れるが、肌への付着性が弱くて化粧持続性が充分でない、細いラインが描きにくいなどの欠点がある。リキッドタイプはどうしても耐水性に劣る欠点がある。油性タイプは耐水性には優れるが、耐摩擦性、耐皮脂性の上で充分満足できるものは少ない。マスカラについても同様である。アイブロウは、微妙な色の濃さのコントロールや、自然な感じに仕上げやすいことから、ペンシルタイプが主流であるが、同様に化粧持続性で満足できない。
【0005】
耐水性や耐油性に優れた被膜を形成させることにより、化粧持続性を向上させる製剤に関しては、幾つか関連文献が存在する。
【0006】
トリオルガノシリル基を側鎖に置換基として40重量%以上有する非イオン性天然多糖類およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種のポリマーを成分として含有することで化粧持ちを向上させたメイクアップ化粧料(特許文献1参照)、撥水・撥油性に優れるフッ素変性シリコーン誘導体を用いることで化粧持ちに優れた化粧料(特許文献2参照)、特殊なフッ素変性シリコーン樹脂を用いることで耐水性、耐皮脂性に優れた化粧持ちに優れた化粧料(特許文献3参照)、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体と合成樹脂エマルジョンを含有するメークアップ化粧料(特許文献4参照)、有機シリコン樹脂および高分子量シリコンによって化粧持ちに優れ、二次付着が少ないメーキャップ化粧料(特許文献5参照)などが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−72614公報
【特許文献2】特開平5−247214公報
【特許文献3】特開平6−135818公報
【特許文献4】特開平7−187951公報
【特許文献5】特開平10−72319公報
【0008】
しかしながら、これら文献においては、特殊な成分を用いて、メイクアップ化粧料自体の化粧持続性や二次付着性を改善させるものであり、一旦化粧を施した上から用いて、その欠点を補う、いわゆるオーバーコートという発想で発明されたものはない。
【0009】
二次的な化粧を施すことで、化粧持続性や二次付着性の向上に着目した例は少ないが、幾つか関連文献が存在する。
【0010】
揮発性溶剤に溶解した、フッソ樹脂、シリコーン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、ポリブテン、ポリイソプレン、アルキド樹脂、PVP変性ポリマーからなる群から選ばれる樹脂の一種又は二種以上を含有する皮膚用のオーバーコート化粧料(特許文献6参照)、水不溶性ポリマー及び/又は疎水性ポリマーをアイメークアップ化粧料のオーバーコート用の化粧料に用いるもの(特許文献7参照)、キャンデリラレジン及び/またはロジン酸系樹脂などの油溶性樹脂成分を用いたマスカラオーバーコート(特許文献8参照)などが開示されている。
【0011】
【特許文献6】特開平1−242512公報
【特許文献7】特開2003−95873公報
【特許文献8】特開2003−183131公報
【0012】
これら文献において、特許文献6はファンデーションなどの一般に化粧直しを必要とされるメイクアップ化粧料の耐水性、耐油性、二次付着性を改善するために、塗布した上からスプレーなどを用いて、表面をコートすることで、比較的肌に違和感の少ない緩和な被膜を形成させるものであり、強靭な耐水膜、耐摩擦膜を形成するものではない。特許文献7は、化粧膜の上から水不溶性ポリマーや疎水性ポリマーの被膜を施すことで、汗や皮脂による化粧崩れを防止するもので、水不溶性ポリマーとしては、アクリル酸アルキル共重合体エマルション及び/又はアクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メチルスチレン共重合体エマルションが、疎水性ポリマーとしては、パーフルオロポリエーテル及びフルオロアルキル変性アルキルポリシロキサンが例示されている。特許文献8は、マスカラ用に限定した発明で、化粧持続性、仕上がり膜の均一性に優れた化粧膜を演出することを目的としている。これらについては、終日化粧が持続する程度の強靭な被膜を形成する、格段の向上を目的とするものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明においては、アイメイクアップ化粧料の中でも、主にアイライナー、マスカラ、アイブロウなどの目の際、睫毛、眉毛に主に用いられる眉目化粧料に対して二次的な化粧を施すことによって、化粧持続性、二次付着性の格段の向上を実現する化粧崩れ防止用オーバーコート剤を提供する方法について鋭意検討した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を解決するために研究を行った結果、トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上と、揮発性油剤を含有することを特徴とする化粧崩れ防止用オーバーコート剤を用いることで、これらの課題を解消できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化粧持続性、二次付着性の格段の向上を実現する化粧崩れ防止用オーバーコート剤が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本発明に用いる(A)のトリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体は、一般式(1)で示されるトリオルガノシリル基を側鎖に置換基として40質量%以上含有する非イオン性の多糖類及びその誘導体である。トリオルガノシリル基の含有量が40質量%未満のものでは、他の油剤との相溶性が低く、また耐水性などの低下も認められ、好ましくない。
【0018】
【化1】

[式中、R,R及びRは炭素数1〜6の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい]
【0019】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類としては、プルラン,デンプン,ローカストビーンガム及びグァーガムなどを挙げることができる。これらの中では、被膜強度、揮発油剤への溶解性、適度な粘性という点でプルランが特に好ましい。トリオルガノシリル基を有したプルランを油性基剤に溶解させた場合、高濃度でも流動性に優れたゾル状の粘性挙動を示すことから、高濃度の配合が可能である。グアーガムやローカストビーンガムにおいても、本発明の目的を達成できるが、高濃度では流動性が低下することから、使用性の面で扱いにくい。
【0020】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類の配合量としては、オーバーコート剤全量に対し、3〜35質量%が好ましいが、被膜の自然さと被膜強度を兼ね備えた点で5〜30質量%が特に好ましい。6質量%未満では、充分な被膜強度が得られず、化粧持続性も充分でない。また30質量%を越えると、被膜が厚くなり過ぎて、肌に違和感が感じられ、被膜強度においても、それ以上の向上は見られない。
【0021】
トリオルガノシリル基を導入する非イオン性多糖類の誘導体としては、メチル,エチル,プロピルなどのアルキル基、ヒドロキシエチル,ヒドロキシプロピル,ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル基、カルボキシメチル,カルボキシエチルなどのカルボキシアルキル基によって置換された部分エーテル化物や、アセチル,プロピオニル,ブチリルなどの脂肪族アシル基によって置換された部分エステル化物などが挙げられる。
【0022】
トリオルガノシリル基としては、炭化水素基として炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するものが好ましい。かかる炭化水素基としては、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,tert-ブチル,ペンチル,ヘキシルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロペンチル,シクロヘキシルなどの環状アルキル基、ビニル,アリル,イソプロペニル,1-ブテニル,1-ペンテニル,1-ヘキセニルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。但し、これら炭化水素基の炭素原子数が多くなるに従い、炭化水素基が嵩高いものとなって非イオン性多糖類中に有効に導入することが困難になるため、上記例示のアルキル基、中でも特にメチル,エチル,プロピル,tert-ブチルが好ましい。
【0023】
上記のような炭化水素基を有する一般式(1)のトリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基,トリエチルシリル基,トリプロピルシリル基,tert-ブチルジメチルシリル基,シクロヘキシルジメチルシリル基などを挙げることができる。
【0024】
さらに本発明においては、揮発性油剤の配合を必須とする。トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の被膜を、化粧を施した面に形成させる場合、単独では固体であることから困難である。これを揮発性油剤に予め溶解させることで、適用が可能な性状となり、塗布後に溶媒部分である揮発性油剤が揮発し、トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体1種又は2種以上で形成される膜が形成される。トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の被膜は、可能な限り単一であることが好ましく、膜を希釈してしまう不揮発性油剤などを多く含んでしまうと、被膜強度の低下が見られる。トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体に対して作用しない無機粉体、有機粉体などの配合は問題ない。
【0025】
揮発性油剤としては、常圧下で沸点が260℃以下である低沸点イソパラフィン系炭化水素や、デカメチルテトラシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの揮発性シリコーン油などが挙げられる。低沸点イソパラフィン系炭化水素としては、IPソルベント1620、2028,2835(出光石油化学社製)、シェルソル(シェル化学社製)などを挙げることができる。
【0026】
本発明のオーバーコート剤には、前述の必須成分以外に、本発明品の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、一般的な化粧料や医薬部外品に配合される他の成分、例えば油脂,界面活性剤,保湿剤,無機粉体,有機粉体,紫外線吸収剤,pH調整剤,キレート剤,薬剤,香料,樹脂,その他アルコール類などを、適宜必要に応じて配合することができる。
【実施例】
【0027】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明のオーバーコート剤は、これらに限定されるものではない。
【0028】
表1に示す実施例1〜2、比較例1〜2の処方のオーバーコート剤を調製し、表2に示す評価用のアイブロウを眉に施した上から、専用の筆を用いて塗布した。オーバーコート剤を用いない場合を、比較例3とした。これらについて、塗布後の「べたつき感」「耐水性」「色移り(二次付着し易さ)」「化粧持続性」について、10名の専門パネルを用いて評価した。塗布乾燥後(30秒後)に「べたつき感」「色移り(二次付着し易さ)」を、塗布して6時間経過後に「化粧持続性」を評価した。「耐水性」については、手の甲などに塗布してもらい、水道水で洗い流すことで評価してもらった。判定基準は下記のとおりである。10名の平均値を総合評価点とした。結果を表1に示す。
[判定基準]
「べたつき感」
1:べたつかずさらっとしている
2:特に気にならない
3:べたつく
[判定基準]
「耐水性」
1:非常に耐水性に優れる
2:特に感じられない
3:耐水性に劣る
[判定基準]
「色移り(二次付着し易さ)」
1:色移りが全くみられない
2:特に感じられない
3:色移りがはげしい
[判定基準]
「化粧持続性」
1:ほとんど化粧の落ちがみられない
2:普通
3:化粧持ちが悪い
【0029】
【表1】

【0030】
製造方法:
成分1〜3に成分4〜5を混合加熱溶解した後、冷却した後、成分6を加え、混合均一化する。
【0031】
【表2】

【0032】
表1の評価結果より明らかなように、評価用アイブロウを塗布した上から、本発明のオーバーコート剤を用いることによって、べたつき感、耐水性、色移り性、化粧持続性の全ての項目で比較例と比較して優れていることが確認された。塗布6時間後においても、実施例1〜2の本発明品は、塗布直後と変化がなく、全く化粧直しの必要がないという結果であった。
【0033】
以下、その他本発明の実施例を記載する。
【0034】
[実施例3]アイライナー用オーバーコート剤
1.トリメチルシリル化プルラン 20.0(質量%)
2.軽質イソパラフィン 45.0
3.デカメチルシクロペンタシロキサン 34.0
4.エタノール 1.0
製造方法:
成分1に成分2〜3を加え、混合溶解した後、成分4を加え混合均一化する。
【0035】
[実施例4]マスカラ用オーバーコート剤
1.トリメチルシリル化プルラン 10.0(質量%)
2.トリメチルシリル化グアーガム 10.0
3.軽質イソパラフィン 69.0
4.シリル化処理無水ケイ酸 1.5
5.ジメチルジステアリルアンモニウム 2.5
ベントナイト
6.セリサイト 5.0
7.エタノール 2.0
製造方法:
成分1〜2に成分3加えて混合加熱溶解した後冷却し、成分4〜5、さらに成分6を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分7加え、混合均一化する。
【0036】
本発明のオーバーコート剤は、以上の実施例3〜4においても、実使用の結果、べたつき感、耐水性、色移り性、化粧持続性において優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上と、揮発性油剤を含有することを特徴とする化粧崩れ防止用オーバーコート剤。
【請求項2】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上を、5〜30質量%含有することを特徴とする請求項1記載の化粧崩れ防止用オーバーコート剤。
【請求項3】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体が、トリオルガノシリル基を含有するプルラン及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の化粧崩れ防止用オーバーコート剤。

【公開番号】特開2007−320905(P2007−320905A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153200(P2006−153200)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】