説明

化粧料及び皮膚用製剤における超分岐ポリカーボネートの使用

本発明は、超分岐ポリカーボネートを含有する組成物、前記超分岐ポリカーボネートの化粧料及び皮膚科学における使用、並びに置換超分岐ポリカーボネートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分岐ポリカーボネートを含む組成物、これらの高分岐ポリカーボネートの化粧料及び皮膚科学における使用、並びに置換高分岐ポリカーボネートに関する。
【背景技術】
【0002】
製薬及び化粧料の分野で調合物の粘度を上げるため、増粘剤がかなり使用される。増粘剤は、調合物が水性、油性、又は表面活性であるかによって選択される。このトピックに関する概説は、Hugo Janistyn、Handbuch der Kosmetika und Riechstoffe [Handbook of cosmetics and fragrances]、Huthig Verlag Heidelberg、1巻、第3版、1978年、979頁に記載されている。水溶液にしばしば使用される増粘剤の例は、脂肪酸ポリエチレングリコールモノエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールジエステル、脂肪酸アルカノールアミド、オキシエチル化脂肪アルコール、エトキシ化グリセロール脂肪酸エステル、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、及び中性塩である。カルボキシル基を含むポリマーも、増粘剤として知られる。これらには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及びイタコン酸などのモノエチレン性不飽和カルボン酸のホモポリマー及びコポリマーが含まれる。これらのポリマーは、少なくともわずかに架橋していることが多い。このようなポリマーは、例えばUS 2,798,053、US 3,915,921、US 3,940,351、US 4,062,817、US 4,066,583、US 4,267,103、US 5,349,030、及びUS 5,373,044に記載されている。これらのポリマーが増粘剤として使用されるときよくある欠点は、pH依存性、及び加水分解に対する不安定性である。さらに、所望の増粘性効果を実現するには、大量のポリマーが必要であることが多く、電解質の存在下において調合物の安定性は低い。カゼイン、アルギナート、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカルボメトキシセルロースなどの天然材料も、増粘剤として使用される。これらには、とりわけ微生物学的要因に感受性を示すという欠点があり、したがって殺生物剤の添加が必要である。油性調合物の典型的な増粘剤(下記で油系増粘剤とも称される)は、金属セッケン、アモルファス二酸化ケイ素、ヒドロキシステアリン、第四級アンモニウム塩基とベントナイトの化合物、ろう、及びパラフィンである。界面活性剤溶液は、例えば脂肪酸アルキロールアミド、アミンオキシド、セルロース誘導体、多糖、及びカルボキシル基を含む上記のポリマーにより増粘される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US 2,798,053
【特許文献2】US 3,915,921
【特許文献3】US 3,940,351
【特許文献4】US 4,062,817
【特許文献5】US 4,066,583
【特許文献6】US 4,267,103
【特許文献7】US 5,349,030
【特許文献8】US 5,373,044
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hugo Janistyn、Handbuch der Kosmetika und Riechstoffe [Handbook of cosmetics and fragrances]、Huthig Verlag Heidelberg、1巻、第3版、1978年、979頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、化粧料用途に極めて適しており、特に皮膚化粧料の分野において良好な塗布特性を有する、レオロジー改変性、特に増粘性、特に油系増粘性のポリマーを見出すことであった。材料の使用がわずかなわりに増粘性効果が良好であることに加えて、これらは、ゲル用途の場合には清澄性(clarity)、油不溶性及び/又は安定化困難な成分には(共)乳化及び安定化効果、化粧料調合物への良好な組込みも含む。特にゲルの場合、調合物が可能な限り高い透明性(清澄性)を有することが望ましい。可能な限り幅広い製剤化可能性を確実にするためには、増粘剤が低色及び低臭、理想的には無色及び無臭であることが望ましい。さらに、(皮膚)化粧料及び/又は皮膚科用途において使用するには、アレルギー反応を引き起こさないことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、以下に記載する高分岐ポリカーボネートによって実現される。
【0007】
高官能性高分岐ポリカーボネートの調製、並びに接着促進剤として、揺変剤として、又は例えば塗料及びワニス、コーティング、接着剤、シーラント、キャスタブルエラストマー若しくはフォームの重付加若しくは重縮合ポリマーを調製するためのビルディングブロックとしてのその使用が、WO 2005/026234から知られている。
【0008】
WO 2006/018063には、疎水性官能基を備えた樹枝状高分子を含む頭髪用化粧料用組成物が記載されている。樹枝状高分子は、ポリエステル単位(Boltornという商標名で入手可能)又はポリアミド単位(Hybraneという商標名で入手可能)からなる。
【0009】
DE 10 2005 063 096には、少なくとも一つの超分岐ポリエステル及び/又はポリエステルアミドを0.05〜20重量%含む化粧料組成物が記載されている。組成物は、報告によると、頭髪洗浄及び/又は頭髪ケア特性を有する。ポリエステル及び/又はポリエステルアミドは、置換されていない。
【0010】
WO 2004/078809には、高分岐ポリマー及びこれらを含む化粧料組成物が開示されている。
【0011】
本発明の文脈内で、高分岐ポリカーボネートは、構造的にも分子的にも不均一である、ヒドロキシル基及びカーボネート基又は塩化カルバモイル基を有する非架橋高分子を意味すると理解される。これらは、第一にデンドリマーと同様に中心分子から始まってなり得るものであるが、分岐の鎖長は不均一である。これらは、第二に構成が直鎖状で、官能性側鎖を有するものでもあり、あるいはこれら両極端の組合せとして、直鎖及び分岐の分子部分を有することもあり得る。デンドリマー状ポリマー及び高分岐ポリマーの定義については、P.J. Flory、J. Am. Chem. Soc.、1952年、74巻、2718頁及びH. Freyら、Chem. Eur. J.、2000年、6巻、14号、2499頁も参照のこと。
【0012】
本発明に関して、「高分岐」は、分岐度(DB)、すなわち一分子当たりの平均樹状結合数に平均末端基数を加えて、平均樹状結合数と平均直鎖状結合数と平均末端基数の合計で割って、100を掛けたものが、10〜99.9%、好ましくは20〜99%、特に好ましくは20〜95%であることを意味すると理解される。
【0013】
高分岐(highly-branched)という表現に加えて、超分岐(hyperbranched)という表現も文献から知られている。本発明の文脈内で、二つの表現は同義と理解されるべきである。
【0014】
本発明に関して、「デンドリマー状」は、分岐度が99.9〜100%であることを意味すると理解される。分岐度の定義については、H. Freyら、Acta Polym.、1997年、48巻、30頁を参照のこと。
【0015】
高分岐ポリカーボネートは、以下に記載するように調製される。
【0016】
出発材料として、ホスゲン、ジホスゲン、又はトリホスゲンを使用することが可能であるが、有機カーボネート(A)を使用することが好ましい。
【0017】
出発材料として使用される一般式RO[(CO)O]nRの有機カーボネート(A)のR基は、いずれの場合にも互いに独立して、1個〜20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐脂肪族、芳香族/脂肪族、又は芳香族炭化水素基である。2個のR基は、一緒になって環を形成してもよい。好ましくは、1個〜5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、特に好ましくは直鎖若しくは分岐アルキル基、又は置換若しくは非置換フェニル基である。
【0018】
カーボネートは、好ましくは一般式RO(CO)ORの単純なカーボネートとすることができる。すなわち、この場合、nは1である。
【0019】
一般に、nは、1〜5の間、好ましくは1〜3の間の整数である。
【0020】
ジアルキル又はジアリールカーボネートは、例えば脂肪族、芳香脂肪族、又は芳香族アルコール、好ましくはモノアルコールとホスゲンの反応から調製することができる。さらに、これらは、貴金属、酸素、又はNOxの存在下COによるアルコール又はフェノールの酸化的カルボニル化を経由して調製することもできる。ジアリール又はジアルキルカーボネートの調製方法については、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、2000年、Electronic Release、Verlag Wiley-VCHも参照のこと。
【0021】
好適なカーボネートの例には、エチレンカーボネート、1,2-又は1,3-プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネート、又はジドデシルカーボネートなどの脂肪族、芳香族/脂肪族、又は芳香族カーボネートが含まれる。
【0022】
nが1より大きいカーボネートの例には、ジ(tert-ブチル)ジカーボネートなどのジアルキルジカーボネート、又はジ(tert-ブチル)トリカーボネートなどのジアルキルトリカーボネートが含まれる。
【0023】
脂肪族カーボネート、特に基が1個〜5個の炭素原子を有するもの、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、若しくはジイソブチルカーボネートなど、又は芳香族カーボネートとしてジフェニルカーボネートを使用することが好ましい。
【0024】
有機カーボネートを、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも一つの脂肪族又は芳香族アルコール(B)、又は異なる二つ以上のアルコールの混合物と反応させる。
【0025】
少なくとも3個のOH基を有する化合物の例には、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン-ペンタエリトリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、ビス(トリメチロールプロパン)、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌラート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート、フロログルシノール、トリヒドロキシトルエン、トリヒドロキシジメチルベンゼン、フロログルシド(phloroglycide)、ヘキサヒドロキシベンゼン、1,3,5-ベンゼントリメタノール、1,1,1-トリス(4'-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4'-ヒドロキシフェニル)エタン、例えばグルコースなどの糖、糖誘導体、三官能性若しくはそれ以上の官能性のアルコールとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、若しくはブチレンオキシド、又はそれらの混合物とをベースにした三官能性若しくはそれ以上の官能性のポリエーテロール(polyetherol)、あるいはポリエステロール(polyesterol)が含まれる。この場合は、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリトリトール、及びエチレンオキシド又はプロピレンオキシドをベースにしたそれらのポリエーテロールが特に好ましい。
【0026】
これらの多官能アルコールを、二官能性アルコール(B')との混合物として使用することもできる。ただし、使用されるアルコールすべての平均OH官能基が合わせて2個を超えることを条件とする。二つのOH基を有する好適な化合物の例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-、1,3-、及び1,4-ブタンジオール、1,2-、1,3-、及び1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1'-ビス(4-ヒドロキシ-フェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、レソルシノール、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)トルエン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、若しくはそれらの混合物をベースにした二官能性ポリエーテルポリオール、ポリテトラヒドロフラン、ポリカプロラクトン、又はジオールとジカルボン酸とをベースにしたポリエステロールが含まれる。
【0027】
ジオールは、ポリカーボネートの特性の微調節に役立つ。二官能性アルコールが使用される場合、二官能性アルコール(B')と少なくとも三官能性のアルコール(B)の比は、ポリカーボネート所望の特性に従って当業者によって決まる。通常、アルコール(一つ又は複数)(B')の量は、アルコール(B)と(B')をすべて合わせた全量に対して0〜39.9mol%である。その量は、好ましくは0〜35mol%、特に好ましくは0〜25mol%、極めて特に好ましくは0〜10mol%である。
【0028】
高官能性高分岐ポリカーボネートは、反応後に、すなわち別の改変を行うことなく、ヒドロキシル基及び/又はカーボネート基又は塩化カルバモイル基を末端に有する。これらは、様々な溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール、アルコール/水混合物、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシエチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレンカーボネート、又はプロピレンカーボネートに易溶である。
【0029】
本発明の文脈内で、高官能性ポリカーボネートは、ポリマー主鎖を形成するカーボネート基に加えて、末端基又は側基として、少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の官能基も有する生成物を意味すると理解されたい。官能基は、カーボネート基又は塩化カルバモイル基及び/又はOH基である。末端官能基又は側部官能基の数に、上限は原則としてないが、官能基の数が非常に多い生成物は、例えば高粘度又は貧溶解性などの望ましくない特性を有する恐れがある。本発明の高官能性ポリカーボネートが有する末端官能基又は側部官能基は、たいていの場合500個以下、好ましくは100個以下である。
【0030】
カーボネート(A)と二価又は多価アルコール(B)との反応例を用いて説明すると、縮合生成物(K)の最も単純な構造によって、この場合は配列XYm又はYmXがもたらされる。配列中、Xはカーボネート基であり、Yはヒドロキシル基であり、mは、通常1〜6の間、好ましくは1〜4の間、特に好ましくは1〜3の間の整数である。ここで、個別の基をもたらす反応性基は、以下「フォーカル基(focal group)」と一般的に称される。
【0031】
例えば、カーボネートと二価アルコールから最も単純な縮合生成物(K)を調製する際に、反応比が1:1である場合、結果は概して一般式1によって図示されるタイプXYの分子である。
【化1】

【0032】
カーボネートと三価アルコールから反応比1:1で縮合生成物(K)を調製する場合、結果は概して一般式2によって図示されるタイプXY2の分子である。フォーカル基は、この場合カーボネート基である。
【化2】

【0033】
同様に、カーボネートと4価アルコールから反応比1:1で縮合生成物(K)を調製すると、結果は概して一般式3によって図示されるタイプXY3の分子である。フォーカル基は、この場合カーボネート基である。
【化3】

【0034】
式1〜3において、Rは最初に定義された意味を有し、R1は脂肪族又は芳香族基である。
【0035】
さらに、縮合生成物(K)の調製は、一般式4によって図示されるように、例えばカーボネートと三価アルコールからも行うことができ、その場合反応モル比は2:1である。この場合、結果は概してタイプX2Yの分子であり、フォーカル基はこの場合OH基である。式4において、R及びR1は、式1〜3と同じ意味を有する。
【化4】

【0036】
さらに、二官能性化合物、例えばジカーボネート又はジオールが追加的に成分に加えられた場合、これによって、例えば一般式5に図示されるように、鎖の延長がもたらされる。結果はやはり概してタイプXY2の分子であり、フォーカル基はカーボネート基である。
【化5】

【0037】
式5において、R2は脂肪族又は芳香族基であり、R及びR1は上述されたように定義される。
【0038】
合成には二つ以上の縮合生成物(K)を使用することも可能である。この場合、一方では二つ以上のアルコール及び/又は二つ以上のカーボネートを使用することが可能である。さらに、使用されるアルコールとカーボネートの比、及び/又はホスゲンの選択により、異なる構造を有する異なる縮合生成物の混合物を得ることが可能である。これは、カーボネートと三価アルコールの反応の例を用いて例示することができる。(II)に示すように出発材料を1:1の比で使用すると、上記のように分子XY2が得られる。(IV)に示すように出発材料を2:1の比で使用すると、上記のように分子X2Yが得られる。1:1と2:1の間の比の場合は、分子XY2と分子X2Yの混合物が得られる。
【0039】
式1〜5に例として記載されている単純な縮合生成物(K)は、好ましくは分子間反応を受けて、以下で重縮合生成物(P)と称される高官能性重縮合生成物を形成する。縮合生成物(K)及び重縮合生成物(P)をもたらす反応は通常、0〜300℃、好ましくは0〜250℃の温度、特に好ましくは60〜200℃、極めて特に好ましくは60〜160℃で、希釈剤を用いず、又は溶液として行われる。この場合は、各出発材料に対して不活性な溶媒であればいずれでも使用することが通常可能である。例えば、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、又はソルベントナフサなどの有機溶媒を使用することが好ましい。
【0040】
好ましい一実施形態において、縮合反応は、希釈剤を用いず実施される。反応中に放出される一官能性アルコール又はフェノールROHは、反応速度を上げるために、例えば蒸留により場合によっては減圧下で反応平衡物から除去することができる。
【0041】
蒸留除去が想定される場合、反応中に、有効圧力(prevailing pressure)下で沸点が140℃未満のアルコール又はフェノールROHを遊離させるカーボネートを使用することが通常勧められる。
【0042】
反応速度を上げるために、触媒又は触媒の混合物を添加することも可能である。好適な触媒は、例えばDE 10138216又はDE 10147712に記載されているように、エステル化反応又はエステル交換反応を触媒する化合物、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、好ましくはナトリウム、カリウム、若しくはセシウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、第三級アミン、グアニジン、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、若しくは有機ビスマス化合物、さらにはいわゆる複合金属シアン化物(DMC)触媒である。
【0043】
水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、若しくは1,2-ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール類、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、酸化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジオクタン酸スズ、アセチルアセトン酸ジルコニウム、又はこれらの混合物を使用することが好ましい。
【0044】
触媒は通常、アルコール又はアルコール混合物の使用量に基づいて50〜10000重量ppm、好ましくは100〜5000重量ppmの量で添加される。
【0045】
適切な触媒を添加することによって、又は適切な温度を選択することによって、分子間重縮合反応を制御することも可能である。さらに、ポリマー(P)の平均分子量は、出発成分の組成及び滞留時間により調整することができる。
【0046】
高温で調製された縮合生成物(K)及び重縮合生成物(P)は通常、室温で比較的長期間安定である。
【0047】
縮合生成物(K)の特性を考えると、縮合反応によって、分岐しているが架橋していない様々な構造を有する重縮合生成物(P)を生じることが可能である。さらに、理想的な場合には、重縮合生成物(P)は、フォーカル基として1個のカーボネート基又は塩化カルバモイル基、及び2個を超えるOH基を有し、あるいはフォーカル基として1個のOH基、及び2個を超えるカーボネート基又は塩化カルバモイル基を有する。この場合、反応性基の数は、使用される縮合生成物(K)の特性及び重縮合度に起因する。
【0048】
例として、一般式2による縮合生成物(K)は、3分子間縮合によって反応して、一般式6及び7に示される異なる二つの重縮合生成物(P)をもたらすことができる。
【化6】

【0049】
式6及び7において、R及びR1は上記に定義する通りである。
【0050】
分子間重縮合反応を停止させるには、様々な選択肢がある。例えば、反応が停止し、かつ生成物(K)又は重縮合生成物(P)が貯蔵安定である範囲に、温度を下げることができる。
【0051】
さらに、触媒を不活性化することができる。塩基性触媒の場合は、例えば酸性成分、例えばルイス酸又は有機若しくは無機プロトン酸を添加することによって不活性化することができる。
【0052】
別の実施形態において、縮合生成物(K)の分子間反応によって、所望の重縮合度の重縮合生成物(P)が生成するとすぐに、生成物(P)に、(P)のフォーカル基に対して反応性を示す基を含む生成物を添加することによって、反応を停止することができる。例えば、カーボネート基がフォーカル基の場合は、例えばモノアミン、ジアミン、又はポリアミンを添加することができる。ヒドロキシル基がフォーカル基の場合は、モノ-、ジ-、又はポリイソシアナート、エポキシ基を含む化合物、又はOH基と反応する酸誘導体を、生成物(P)に添加することができる。
【0053】
本発明による高官能性ポリカーボネートの調製は、たいていの場合0.1mbar〜20bar、好ましくは1mbar〜5barの圧力範囲内で、バッチ式、半連続式、又は連続式に作動させる反応器又は反応器カスケード中において行われる。
【0054】
上記の反応条件設定の結果として、かつ場合によっては適切な溶媒の選択により、本発明による生成物を調製した後に、別に精製することなく、さらに処理することが可能である。
【0055】
別の好ましい実施形態において、生成物にストリッピングを行う。すなわち、低分子量の揮発性化合物を除去する。このために、所望の変換度に到達したとき、触媒を場合によっては不活性化することができ、ガス、好ましくは窒素、二酸化炭素、若しくは空気を場合によっては導入して、場合によっては減圧下で蒸留することによって、低分子量の揮発性構成要素、例えばモノアルコール、フェノール、カーボネート、塩化水素、又は易揮発性オリゴマー化合物若しくは環式化合物を除去することができる。
【0056】
別の好ましい実施形態において、本発明によるポリカーボネートは、反応の結果としてすでに獲得された官能基に加えて、別の官能基を獲得することができる。官能化は、分子量の増加中、あるいはその後、すなわち実際の重縮合が終わった後に行うことができる。
【0057】
分子量の増加前又は増加中に、ヒドロキシル基又はカーボネート基のほかに、別の官能基又は官能性要素を有する成分が添加される場合、結果は、カーボネート基、塩化カルバモイル基、又はヒドロキシル基とは異なる官能基がランダムに分布しているポリカーボネートポリマーである。
【0058】
この種類の効果は、例えば、ヒドロキシル基、カーボネート基、又は塩化カルバモイル基のほかに、メルカプト基、第一級、第二級、若しくは第三級アミノ基、エーテル基、カルボン酸基若しくはその誘導体、スルホン酸基若しくはその誘導体、ホスホン酸基若しくはその誘導体、シラン基、シロキサン基、アリール基、又は長鎖アルキル基など別の官能基又は官能性元素を有する化合物を重縮合中に添加することによって実現することができる。カルバマート基による改変では、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2-(ブチルアミノ)エタノール、2-(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2-アミノ-1-ブタノール、2-(2'-アミノエトキシ)エタノール、若しくはアンモニアの高級アルコキシル化生成物、4-ヒドロキシピペリジン、1-ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、又はイソホロンジアミンを使用することが可能である。
【0059】
メルカプト基での改変では、例えばメルカプトエタノールを使用することが可能である。第三級アミノ基は、例えばトリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、又はN,N-ジメチルエタノールアミンの組込みにより生成することができる。エーテル基は、例えば、二官能性又はそれ以上の官能性のポリエーテロールを縮合により組み込むことによって生成することができる。ジカルボン酸、トリカルボン酸、例えばテレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸エステル、又はトリカルボン酸エステルなどを添加することによって、エステル基を生成することが可能である。長鎖アルカノール又はアルカンジオールとの反応によって、長鎖アルキル基を導入することが可能である。アルキル又はアリールジイソシアナートとの反応によって、アルキル基、アリール基、及びウレタン基を含むポリカーボネートが生成する。第一級又は第二級アミンの添加によって、ウレタン基又は尿素基の導入が行われる。
【0060】
好ましい一実施形態において、高分岐ポリカーボネートは、直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル基及び/又は-アルケニル基で完全置換又は部分置換されている。本発明の文脈内で、アルケニル基は一価不飽和又は多価不飽和とすることができる。
【0061】
本発明の範囲内で、置換は、高分岐ポリマーと化合物Aを、重合反応中及び/又は重合反応後に反応させることを意味する。化合物Aは、直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル基及び/又はアルケニル基と反応性基を含むということで注目に値する。化合物Aの反応性基は、高分岐ポリマーと反応することができる。好ましくは、化合物Aは、正確に1個の直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキル基及び/又はアルケニル基と正確に1個の反応性基を含む。
【0062】
化合物Aと反応させた高分岐ポリマーは、置換高分岐ポリマーと称される。
【0063】
完全置換又は部分置換を行うことができる。これは、完全置換の場合、高分岐ポリマーの反応性基が化合物Aと完全に反応したことを意味する。部分置換の場合は、高分岐ポリマーの反応性基の全部が化合物Aと反応したわけではない。
【0064】
好ましくは、高分岐ポリマーは、オクチル(カプリル)基、ノニル基、デシル(カプリニル)基、ウンデシル基、ドデシル(ラウリニル)基、テトラデシル基、ヘキサデシル(パルミチル)基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、及び/又は対応する一価不飽和若しくは多価不飽和等価物、例えばドデセニル基、ヘキサジエニル(ソルビニル)基、オクタデセニル(オレイル)基、リノリル基、又はリノレニル基などによって置換されている。この文脈では、等価物とは、対応する直鎖又は分岐アルキル基と少なくとも一つの二重結合を有するということだけが異なる炭化水素基を意味すると理解されたい。
【0065】
置換高分岐ポリカーボネートは好ましくは、得られる高官能性高分岐又は超分岐ポリカーボネートを、ポリカーボネートのOH基及び/又はカーボネート基若しくは塩化カルバモイル基と反応することができる好適な官能化試薬と反応させることによって得られる。
【0066】
ヒドロキシル基を含む高官能性高分岐ポリカーボネートは、例えばエステル、無水物、若しくはアミドなどの酸誘導体基、又はイソシアナート基を含む分子を添加することによって改変することができる。例えば、酸基を含むポリカーボネートは、無水物基を含む化合物との反応によって得ることができる。
【0067】
この場合、置換化合物の反応性基と高分岐ポリマーの反応性基のモル比は、1:10〜1:1、好ましくは1:5〜1:1.1、特に好ましくは1:2〜1:1.2である。特に好ましい範囲は、1:1.7〜1:1.4である。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態において、式R-CO-Yのカルボン酸誘導体及び/又は式R-NCOのイソシアナートを用いた置換が行われる。式中の基は下記の意味を有する。Rは直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキルである。YはOR1、OC(O)R2、又はNR32である。ここで、R1は、水素又は直鎖若しくは分岐C1-〜C6-アルキルであり、R2は直鎖又は分岐C4-〜C40-アルキルであり、RとR2は、同一でも異なってもよい。R3は、水素又は直鎖若しくは分岐C1-〜C4-アルキルであり、二つのR3基は、同一でも又は互いに異なってもよい。好ましい化合物は、直鎖C4〜C40-アルキルイソシアナートであり、オクチル(カプリル)イソシアナート、ノニルイソシアナート、デシル(カプリニル)イソシアナート、ウンデシルイソシアナート、ドデシル(ラウリニル)イソシアナート、テトラデシルイソシアナート、ヘキサデシル(パルミチル)イソシアナート、ヘプタデシルイソシアナート、オクタデシル(ステアリル)イソシアナートが特に好ましい。別の好ましい化合物は、一つ又は複数の二重結合を有する直鎖C4〜C40-アルケニルイソシアナートであり、ドデセニルイソシアナート、ヘキサジエニル(ソルビニル)イソシアナート、オクタデセニル(オレイル)イソシアナート、リノリルイソシアナート、又はリノレニルイソシアナートが特に好ましい。
【0069】
極めて特に好ましい化合物はイソシアン酸ステアリルである。
【0070】
置換は、例えばその後の工程段階(ステップc))において行うことができる。しかし、置換は、早ければ高分岐ポリマーの調製中にも行うことができる。好ましくは、置換は、その後の工程段階において行われる。置換がその後の工程段階で行われる場合、好ましくは高分岐ポリカーボネートが最初に導入され、一つ又は複数の化合物Aが添加される。
【0071】
置換は通常、0〜300℃、好ましくは0〜250℃の温度、特に好ましくは60〜200℃、極めて特に好ましくは60〜160℃で、希釈剤を用いず、又は溶液として行われる。この場合は、一般に特定の出発材料に対して不活性であるすべての溶媒を使用することが可能である。例えば、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、又はソルベントナフサなどの有機溶媒を使用することが好ましい。
【0072】
好ましい一実施形態において、置換反応は、希釈剤を用いず実施される。反応速度を上げるために、反応中に放出される低分子量化合物を、例えば蒸留により場合によっては減圧下で反応平衡から除去することができる。
【0073】
反応を完結させるには、化合物Aを添加した後、又は異なる二つ以上の化合物Aが使用される場合は複数の化合物Aを添加した後に、反応容器の温度を上げることが必要になることがある。昇温幅は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。
【0074】
高官能性ポリカーボネートの置換は、たいていの場合0.1mbar〜20bar、好ましくは1bar〜5barの圧力範囲で、バッチ操作、半連続式、又は連続式に作動させる反応器又は反応器カスケード中において行われる。
【0075】
本発明は、少なくとも一つの高分岐ポリカーボネートを含む化粧料組成物を提供する。
【0076】
好ましくは、高分岐ポリカーボネートは置換されている。
【0077】
化粧料組成物は、好ましくは少なくとも一つの化粧料として好適な担体を含む。
【0078】
化粧料及び/又は皮膚用製剤における高分岐ポリカーボネートの使用は、本発明に基づくものである。
【0079】
好ましくは、高分岐ポリカーボネートは置換されている。
【0080】
使用は、皮膚化粧料製剤における使用が好ましい。
【0081】
高分岐ポリカーボネートを増粘剤として使用することが好ましい。この文脈では、特に油系増粘剤としての使用が好ましい。
【0082】
皮膚化粧料調合物
本発明による皮膚化粧料組成物、特にスキンケア用のものは、様々な形で存在し、使用することができる。したがって、これらは、例えば水中油(O/W)型のエマルション、又は例えば水中油中水型(W/O/W)型の多重エマルションとすることができる。ハイドロディスパージョン(hydrodispersion)、ハイドロゲル、又はピッカリング(Pickering)エマルションなどの乳化剤を含有しない製剤も有利な実施形態である。製剤の稠度は、ペースト状製剤から、流動性製剤を経て、低粘度噴霧可能生成物にまで及ぶことがある。それに応じて、クリーム、ローション、又はスプレーを製剤化することができる。使用には、十分量の本発明による化粧料組成物が、化粧料及び皮膚用組成物には慣例の方式で皮膚に適用される。
【0083】
皮膚表面の塩分は、本発明による調合物の粘度を、調合物の簡単な塗布及び擦込みが可能になるように下げるのに十分である。
【0084】
本発明による皮膚化粧料調合物は、特にW/O又はO/Wスキンクリーム、昼夜用クリーム、アイクリーム、フェイスクリーム、しわ取りクリーム、フェイシャルクリーム、保湿クリーム、漂白クリーム、ビタミンクリーム、スキンローション、ケアローション、及び保湿ローションとして存在する。
【0085】
別の有利な皮膚化粧料調合物は、フェイストナー、フェイスマスク、防臭剤、及び他の化粧料ローション、並びにデコラティブ化粧料用の調合物、例えばコンシーリングスティック、舞台用メーキャップ、マスカラ、アイシャドー、口紅、コールペンシル、アイライナー、メーキャップ、ファンデーション、ほお紅、おしろい、及びペンシル型まゆ墨である。さらに、本発明による組成物を、毛穴洗浄用ノーズストリップ、抗ニキビ組成物、忌避剤、ひげそり用組成物、脱毛組成物、インティメイトケア用組成物、フットケア組成物、及び乳児ケアにおいて使用することができる。W/Wエマルションポリマー及び好適な担体に加えて、本発明による皮膚化粧料調合物は、上述及び後述のように化粧料で慣例の別の活性成分及び/又は補助剤を含む。これらには、好ましくは乳化剤、保存剤、香油、フィタントリオールなどの化粧料活性成分、ビタミンA、E、及びC、レチノール、ビサボロール、パンテノール、天然及び合成光防護剤、漂白剤、着色剤、着色剤、日焼け剤、コラーゲン、タンパク質加水分解物、安定剤、pH調節剤、染料、塩、増粘剤、ゲル形成剤、稠度調節剤、シリコーン、湿潤剤、コンディショナー、リファッティング剤(refatting agent)、並びに別の慣例の添加剤が含まれる。特定の特性が設定されることになっている場合、別のポリマーを組成物に添加することもできる。例えば、触感、塗布挙動、耐水性、及び/又は活性成分と顔料などの補助剤との結合を改善するなどある種の特性を確立するのに、組成物は、シリコーン化合物をベースにしたコンディショニング用物質もさらに含むことができる。好適なシリコーン化合物は、例えば、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアリールアルキルシロキサン、ポリエーテルシロキサン、又はシリコーン樹脂である。以下に、本発明による組成物の別の利用可能な材料を各キーワードの下に記載する。
【0086】
油、脂肪、及びろう
皮膚及び頭髪用化粧料組成物は、好ましくは油、脂肪、又はろうも含む。化粧料組成物の油相及び/又は脂肪相の構成要素は、レシチンと、トリ脂肪酸グリセリル、すなわち8個〜24個、特に12個〜18個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルとの群から選択されることが有利である。トリ脂肪酸グリセリルは例えば、合成、半合成、及び天然油の群、例えばオリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、落花生油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココナッツ油、ヒマシ油、麦芽油、ブドウ種子油、アザミ油、月見草油、マカダミアナッツ油などから選択されることが有利であり得る。別の極性油成分は、3個〜30個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルカンカルボン酸と3個〜30個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルコールとのエステルの群から選択し、さらには芳香族カルボン酸と3個〜30個の炭素原子を有する鎖長の飽和及び/又は不飽和の分岐及び/又は非分岐アルコールとのエステルの群からも選択することができる。次いで、このようなエステル油は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n-ブチル、ラウリン酸n-ヘキシル、オレイン酸n-デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシル、炭酸ジカプリリル(Cetiol CC)及びココグリセリル(Myritol 331)、ジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコール、及びアジピン酸ジブチル、さらには例えばホホバ油などこのようなエステルの合成、半合成、及び天然混合物からなる群から選択できることが有利である。さらに、一つ又は複数の油成分は、分岐及び非分岐炭化水素及び炭化水素ろうの群、シリコーン油、ジアルキルエーテル、飽和又は不飽和の分岐又は非分岐アルコールの群から選択できることが有利である。このような油及びろう成分の所望の混合物であればいずれでも、本発明の文脈内で有利に使用される。ろう、例えばパルミチン酸セチルを油相の単独脂質成分として使用することも場合によっては有利であることがある。本発明によれば、油成分は、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、イソエイコサン、ヤシ脂肪酸2-エチルヘキシル、安息香酸C12〜15-アルキル、トリ(カプリル-カプリン酸)グリセリル、ジカプリリルエーテルからなる群から選択されることが有利である。安息香酸C12〜C15-アルキルとイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物、安息香酸C12〜C15-アルキルとイソノナン酸イソトリデシルの混合物、さらには安息香酸C12〜C15-アルキルとイソステアリン酸2-エチルヘキシルとびイソノナン酸イソトリデシルの混合物が、本発明においては有利である。本発明によれば、5〜50mN/mの極性を有する油として、トリ脂肪酸グリセリル、特にダイズ油及び/又はアーモンド油を使用することが特に好ましい。本発明の文脈内では、炭化水素のうち、パラフィン油、スクアラン、スクアレン、特に水素添加されていてもよいポリイソブテンを有利に使用することができる。
【0087】
さらに、油相をゲルベ(Guerbet)アルコールの群から選択できることが有利である。ゲルベアルコールは、以下の反応方程式
【化7】

【0088】
に基づいて、アルコールの酸化により、アルデヒドが得られ、アルデヒドのアルドール縮合によって、アルドールから水が脱離し、アリルアルデヒドの水素添加により生成される。ゲルベアルコールは低温であっても液体であり、事実上皮膚刺激性を示さない。これらは、化粧料組成物においてファッティング、スーパーファッティング、さらにはリファッティング構成要素として有利に使用される。化粧料におけるゲルベアルコールの使用は、それ自体公知である。次いで、このような種は、たいていの場合以下の構造によって特徴付けられる。
【化8】

【0089】
ここで、R1及びR2は、通常非分岐アルキル基である。本発明によれば、ゲルベアルコール(一つ又は複数)は、以下の群から選択されることが有利である:
R1=プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又はオクチル、及び
R2=ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、又はテトラデシル。
【0090】
本発明によれば好ましいゲルベアルコールは、2-ブチルオクタノール(例えば、Isofol(登録商標)12として市販(Condea))及び2-ヘキシルデカノール(例えば、Isofol(登録商標)16として市販(Condea))である。
【0091】
例えば、2-ブチル-オクタノールと2-ヘキシルデカノールの混合物(例えば、Isofol(登録商標)14として市販(Condea))などの本発明によるゲルベアルコールの混合物も、本発明に従って有利に使用される。このような油及びろう成分の所望の混合物であればいずれでも、本発明の文脈内で有利に使用される。ポリオレフィンのうちでは、ポリデセンが好ましい物質である。一種または複数種のシリコーン油に加えて追加量の他の油相成分を用いることが好ましいものの、油成分は、有利には、ある含有量の環状又は直鎖シリコーン油を有することもでき、または完全にそのような油から構成されていてもよい。低分子量シリコーン又はシリコーン油は、通常以下の一般式で定義される。
【化9】

【0092】
より高い分子量のシリコーン又はシリコーン油は、通常以下の一般式で定義される。
【化10】

【0093】
式中、ケイ素原子は、この場合概括的にR1基〜R4基で示される、同一又は異なったアルキル基及び/又はアリール基で置換されていてもよい。しかし、異なる基の数は必ずしも四つに限定されない。mは、この場合2〜200000の値と仮定することができる。
【0094】
本発明に従って有利に使用することができる環状シリコーンは、通常以下の一般式で定義される。
【化11】

【0095】
式中、ケイ素原子は、この場合概括的にR1基〜R4基で表される、同一又は異なったアルキル基及び/又はアリール基で置換されていてもよい。しかし、異なる基の数は必ずしも四つに限定されない。nは、この場合3/2〜20の値と仮定することができる。nの分数値により、奇数のシロキシル基が環に存在している可能性が考慮される。フェニルトリメチコンが、シリコーン油として選択されることが有利である。他のシリコーン油、例えばジメチコン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、フェニルジメチコン、シクロメチコン(例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、セチルジメチコン、ベヘノキシジメチコンも本発明の文脈内で有利に使用される。シクロメチコンとイソノナン酸イソトリデシルの混合物、さらにはシクロメチコンとイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物も有利である。しかし、以上に記載の化合物と同様の構成を有するシリコーン油を選択することも有利であり、その有機側鎖は、誘導体化、例えばポリエトキシル化及び/又はポリプロポキシル化されている。これらとしては、例えばポリシロキサンポリアルキル-ポリエーテルコポリマー、例えばセチル-ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)は、本発明に従って使用されるシリコーン油として有利に使用される。
【0096】
有利に使用することができる脂肪及び/又はろう成分は、植物系ろう、動物系ろう、鉱物系ろう、及び石油化学系ろうの群から選択することができる。例えば、カンデリラろう、カルナウバろう、木ろう、アフリカハネガヤ(esparto grass)ろう、コルクろう、グアルマろう、コメ胚芽油ろう、サトウキビろう、ベリーろう、オーリクリーろう、モンタンろう、ホホバろう、シアバター、蜜ろう、シェラックろう、鯨ろう、ラノリン(羊毛ろう)、尾脂、セレシン、オゾケライト(地ろう)、パラフィンろう、及びマイクロろう。別の有利な脂肪及び/又はろう成分は、例えばSyncrowax(登録商標)HRC(グリセリルトリベヘナート)及びSyncrowax(登録商標)AW 1 C(C18〜36-脂肪酸)、さらにはモンタンエステルろう、サソール(sasol)ろう、水素添加ホホバろう、合成又は改質蜜ろう(例えば、ジメチコンコポリオール蜜ろう及び/又はC30〜50-アルキル蜜ろう)、例えばTegosoft(登録商標)CRなどのリシノール酸セチル、ポリアルキレンろう、ポリエチレングリコールろうなどの化学的改質ろう及び合成ろうであるが、さらには化学的改質脂肪、例えば水素添加植物油(例えば、水素添加ヒマシ油及び/又は水素添加ココナッツ脂肪酸グリセリル)、例えば水素添加ダイズ脂肪酸グリセリル、トリヒドロキシステアリンなどのトリグリセリド、脂肪酸、例えばステアリン酸C20〜40-アルキル、ヒドロキシステアロイルステアリン酸C20〜40-アルキル、及び/又はモンタン酸グリコールなどの脂肪酸エステル及びグリコールエステルも有利である。また、例えばステアロキシトリメチルシランなど、指定された脂肪及び/又はろう成分と同様の物理的諸特性を有するある種の有機ケイ素化合物は、さらに有利である。本発明によれば、脂肪及び/又はろう成分を、個別に又は組成物における混合物として使用することができる。このような油及びろう成分の所望の混合物であればいずれでも、本発明の文脈内で有利に使用される。油相は、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、ジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコール、ヤシ脂肪酸2-エチルヘキシル、安息香酸C12〜15-アルキル、トリ(カプリル酸-カプリン酸)グリセリル、ジカプリリルエーテルからなる群から有利に選択される。オクチルドデカノール、トリ(カプリル酸-カプリン酸)グリセリル、ジカプリリルエーテル、炭酸ジカプリリル、ココグリセリルの混合物、又は安息香酸C12〜15-アルキル及びイソステアリン酸2-エチルヘキシルの混合物、安息香酸C12〜15-アルキル及びジカプリル酸/ジカプリン酸ブチレングリコールの混合物、さらには安息香酸C12〜15-アルキル、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、及びイソノナン酸イソトリデシルの混合物が、特に有利である。本発明の文脈内では、炭化水素のうち、パラフィン油、シクロパラフィン、スクアラン、スクアレン、水素添加ポリイソブテン及びポリデセンを有利に使用することができる。
【0097】
油成分は、リン脂質の群から選択できることも有利である。リン脂質は、アシル化グリセロールのリン酸エステルである。ホスファチジルコリンのうちで最も重要なのは、例えば、以下の一般構造によって特徴付けられるレシチンである。
【化12】

【0098】
式中、R'及びR"は、典型的には、炭素原子15個又は17個及びcis型二重結合四つまで有する非分岐脂肪族基である。本発明によれば、本発明に従った有利なパラフィン油として、Merkur VaselineからのMerkur Weissoel Pharma 40、Shell & DEA OilからのShell Ondina(登録商標)917、Shell Ondina(登録商標)927、Shell Oil 4222、Shell Ondina(登録商標)933、Pionier(登録商標)6301 S、Pionier(登録商標)2071(Hansen & Rosenthal)を使用することが可能である。好適な化粧料として両立的油脂成分については、Karl-Heinz Schrader、Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika [Fundamentals and formulations of cosmetics]、第2版、Verlag Huthig、Heidelberg、319〜355頁に記載されており、本明細書により、全体として参照される。
【0099】
本発明の別の実施形態は、特許請求の範囲、説明、及び実施例に記載されている。以上に指定され、以下でなお説明されるはずである本発明による主題の特徴は、それぞれの場合に記載の組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せでも使用することができることは言うまでもない。
【0100】
本発明は、以下の実施例で説明することにする。
【実施例】
【0101】
測定方法
Nicolet 210装置を使用して、IR測定を実施した。ヒドロキシル価は、DIN 53240、パート2に従って決定した。分子量は、屈折計を検出器として使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーで決定した。使用した移動相はジメチルアセトアミドであり、分子量を決定するのに使用された標準物は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)であった。
【0102】
供給材料
DBTL:ジラウリン酸ジブチルスズ、製造業者:Sigma-Aldrich
クロルヒドロキシアルミニウム:活性化Aloxicoll(登録商標)粉末、製造業者:Giulini、Ludwigshafen、Germany
水素添加ポリイソブテン:Luvitol(登録商標)Lite、製造業者:BASF Aktiengesellschaft、Ludwigshafen、Germany
パラフィン油:ヌジョール、Fluka AG
【0103】
実施例1:高分岐ポリカーボネートの調製
最初に、撹拌機、還流冷却器、ガス注入口、付属冷却トラップ、及び内部温度計を装備した500mlのガラス反応器に、ジエチルカーボネート88.6g(0.75mol)、及び1,2-プロピレンオキシド単位を用いて、ランダムにエーテル化させたトリメチルプロパンをベースにしたトリオール150g(0.75mol)を導入した。炭酸カリウム0.02gを添加した後、混合物を120℃に加熱し、この温度で3時間撹拌した。生成したエタノール(46g)を留去した。蒸留が完了した際、リン酸0.01gを添加して、触媒を中和し、混合物を100℃で1時間撹拌した。次いで、反応混合物の温度を120℃に上げ、残留しているエタノールを、窒素気流化下でストリッピングした。最終生成物を125μmのフィルターに通して濾過し、清澄な無色低粘度樹脂を得た。これは、以下の特性を有する。ヒドロキシル価=451mgKOH/g;Mn=1300g/mol、Mw=2000g/mol。
【0104】
実施例2〜9:高分岐ポリカーボネートのイソシアン酸ステアリルを用いた改質
撹拌機、還流冷却器、ガス注入口、内部温度計、及び必要量のイソシアン酸ステアリルが入っている滴下漏斗を装備した250mlのガラス反応器に、実施例1の高分岐ポリカーボネートを最初に導入した。高分岐ポリカーボネート及びイソシアン酸ステアリルの使用量を下記の表に示す。反応器を100℃に加熱し、イソシアン酸ステアリルを15分間かけて滴下した。次いで、反応混合物を130℃でさらに3時間撹拌し、IR分光分析でイソシアナート基の消失によって反応の進行を確認した(2270cm-1におけるイソシアナート振動バンド)。
【表1】

【0105】
実施例10:ステアリル改質高分岐ポリカーボネートをパラフィン油に添加することによるゲル形成
実施例2〜9の様々な量(0.5〜40重量%)のポリマーを、パラフィン油に溶解した。目に見えるゲル形成が起こった濃度を、下記の表に示す。
【表2】

【0106】
実施例11:水素添加ポリイソブテン油をベースにした防臭剤スティックの調製
実施例7のポリカーボネート4g及びクロルヒドロキシアルミニウム20gを、撹拌しながら80℃で水素添加ポリイソブテン油76gと混合する。ポリカーボネートが完全に溶解した後、混合物を防臭剤スティック用型に注ぎ込み、周囲温度に冷却する。仕上がった防臭剤スティックは、周囲温度で固体のろう状生成物である。
【0107】
実施例12:パラフィン油をベースにした防臭剤スティックの調製
実施例7のポリカーボネート4g及びクロルヒドロキシアルミニウム20gを、撹拌しながら80℃でパラフィン油76gと混合する。ポリカーボネートが完全に溶解した後、混合物を防臭剤スティック用型に注ぎ込み、周囲温度に冷却する。仕上がった防臭剤スティックは、周囲温度で固体のろう状生成物である。生成物の粘度は、60Pa s(20℃)である。測定の過程において、値は30Pa sまで下がる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖又は分岐C4〜C40-アルキル又はアルケニル基で完全置換又は部分置換されている高分岐ポリカーボネート。
【請求項2】
式R-CO-Y及び/又はR-NCOの誘導体を用いて置換が行われ、
式中、
R=直鎖又は分岐C4〜C40-アルキル、
Y=OR1、OC(O)R2、NR32、ハロゲン、
R1=水素、直鎖又は分岐C1〜C6-アルキル、
R2=直鎖又は分岐C4〜C40-アルキル、ここでRとR2は、同一でも異なっていてもよく、
R3=水素、直鎖又は分岐C1〜C4-アルキル、ここで二つのR3基は同一でも又は互いに異なっていてもよい、
請求項1に記載の置換高分岐ポリカーボネート。
【請求項3】
少なくとも一種の高分岐ポリカーボネートを含む化粧料組成物。
【請求項4】
少なくとも一種の置換高分岐ポリカーボネートを含む化粧料組成物。
【請求項5】
少なくとも一種の化粧料として好適な担体を含む、請求項3又は4に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
高分岐ポリカーボネートの化粧料及び/又は皮膚用製剤における使用。
【請求項7】
置換高分岐ポリカーボネートの化粧料及び/又は皮膚用製剤における使用。
【請求項8】
皮膚化粧料製剤における請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
増粘剤としての前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
油系増粘剤としての前記請求項のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2013−512295(P2013−512295A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540394(P2012−540394)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067982
【国際公開番号】WO2011/064187
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】