説明

化粧料組成物

肌美白、肌若返りに有効な化粧料組成物を提供する。該化粧料組成物は、哺乳類の細胞外液と同等のモル濃度比のNaイオン、Kイオン、Caイオン、Mgイオン、ClイオンおよびHCOイオンと、0.05〜0.15モル/Lの濃度のグルコースと、0.01〜0.03モル/Lのグルタミン酸ナトリウムとを含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料組成物、特に、肌の美白および肌の若返りに有効な化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、抗酸化物質の効能が種々取り上げられ、脚光を浴びている。このような抗酸化物質として、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ポリフェノール類、リグニン類等の種々の物質が検討され、グルタチオンのように強い抗酸化作用を示し、薬理作用が期待されているものもある。
しかし、多くの抗酸化物質は、濃度、pH等の条件により、酸化物質としても働き、特に、アスコルビン酸は、0.01Mのような低濃度では酸化物質として作用することが判明している(例えば、非特許文献1参照)。
一方、塩類と糖類を含有する水溶液が、生鮮食品の保存期間を延ばし、その効果が抗酸化作用であることが判明している(例えば、特許文献1、非特許文献2および3参照)。また、そのような水溶液がドライスキンの予防や、ニキビ等の炎症の改善に有用な化粧料として、また、皮膚または粘膜疾患の予防、治療に有効な医薬として使用できることが判明している(例えば、特許文献2および3参照)。
【特許文献1】特開2001−346560号公報
【特許文献2】特開2001−348321号公報
【特許文献3】特開2002−308783号公報
【非特許文献1】FEBS Letters, 405, 186-190 (1997)
【非特許文献2】日本畜産学会第100年大会講演要旨、165頁(2002)
【非特許文献3】第2回ABO研究会抄録、14頁(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、人体に対してより安全に、かつ有効に作用し、抗酸化作用のみを有し、酸化物質としては作用しない抗酸化剤を得ることを目的として鋭意研究を重ねたところ、塩類と糖類、特に、グルコースを含有する水溶液がその目的に適しており、これが肌の美白および肌の若返りに有効な化粧料組成物として有用であることを知り、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、
(1)哺乳類の細胞外液と同等のモル濃度比のNaイオン、Kイオン、Caイオン、Mgイオン、ClイオンおよびHCOイオンと、0.05〜0.15モル/Lの濃度のグルコースと、0.01〜0.03モル/Lのグルタミン酸ナトリウムとを含んでなることを特徴とする化粧料組成物、
(2)美白化粧料である上記(1)記載の組成物、
(3)肌の若返り用化粧料である上記(1)記載の組成物、および
(4)水溶液である上記(1)記載の組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
肌の美白効果に関しては、アルブチン、コウジ酸、レチノール等、メラニン生成の引き金となるチロシナーゼ活性の抑制作用によるものが知られているが、本発明の化粧料組成物による美白効果は、細胞そのものの活力を上げながら、なお、細胞内で生産されたメラニン顆粒を分解することによるものと考えられ、美白効果の機構が従来と全く異なる。
また、細胞そのものの活力を上げることにより、肌の若返り効果が期待される。
本発明の化粧料組成物は、その主成分の取り込みが、メラニン産生細胞であるヒト正常メラノサイトで確認されているところから、経皮吸収上の障害は全くないと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の化粧料組成物は、溶質として、グルタミン酸ナトリウムを含め、上記した塩類と、グルコースとを含有する水性液剤、特に水溶液である。
塩類は、陽イオンとしてNaイオン、Kイオン、CaイオンおよびMgイオン、陰イオンとしてClイオンおよびHCOイオンの供給源となる化粧料上許容される化合物を適宜混合して使用でき、海水塩、原塩なども包含する。とりわけ、Caイオン源として、乳酸カルシウムを使用すると、細胞へのCaイオンの積極的な取り込みを促進することが判明しており、好ましい。
これらの塩類は、組成物において、各イオンが哺乳類の正常な細胞外液と同等なモル濃度比となるように処方される。一般に、組成物中のNaイオン:Kイオン:Caイオン:Mgイオンのモル濃度比が0.130〜0.150モル/L:0.001〜0.007モル/L:0.002〜0.005モル/L:0.001〜0.003モル/L、Clイオン:HCOイオンのモル濃度比が0.080〜0.150モル/L:0.02〜0.04モル/Lの範囲、代表的には、例えば、Na:K:Ca:Mgの各イオンのモル濃度比が、0.14モル/L:0.004モル/L:0.0025モル/L:0.0015モル/Lで、Cl:HCOの各イオンのモル濃度比が、0.1モル/L:0.027モル/Lとなるように処方される。
モル濃度調整において、例えば、塩化ナトリウムを0.14モル/L加えた場合は、塩素イオンも0.14モル/Lとなり、単純な配合ではこの比率になり得ないが、本発明では、グルタミン酸ナトリウムに含まれるNaイオンで補い、これによって溶液全体が上記比率になるように調整する。組成物中のグルタミン酸ナトリウムの含量は0.01〜0.03モル/Lの範囲から選択される。
Naイオンの補給は、他のNa含有化合物でも可能であるが、グルタミン酸ナトリウムの使用により、グルコースの細胞内への取り込みが促進され、細胞活性が向上することが判明している。
【0007】
本発明においては、必須の糖類として、還元作用のみを有し、酸化物質としては作用しない安全なグルコースを使用する。組成物中のグルコースの含量は0.05〜0.15モル/Lの範囲から選択される。
所望により、他の糖類、例えば、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノースなどの単糖類、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロースなどの二糖類、水溶性のオリゴ糖を適宜併用してもよい。
【0008】
本発明においては、以上の溶質に加えて、溶質のモル濃度の総合計が0.54モル/Lを超えない範囲で、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのムコタンパク質、ムコ多糖類を加えることができる。さらに、この溶質濃度の範囲で、必要により、サンショウエキス、陳皮エキス、桂皮エキス、当帰エキス、シキミエキス、苦参エキス、甘草エキス、ヨクイニンエキスのごとき別の活性成分や、イノシトール、ナイアシン、ナイアシンアミド、グルクロン酸、グルコサミンのごとき添加物をさらに添加してもよい。
【0009】
本発明の化粧料組成物は、所望の成分の混合、溶解等の自体公知の方法で製造することにより、水性液剤、好ましくは水溶液の剤形とすることができる。所望の成分を精製水に溶解するだけで、特にpH調整をせずとも、人体に適したpH7.35〜7.45とすることができる。
本発明の化粧料組成物の各成分はいずれも極めて安全性の高いものであり、本発明の化粧料は、例えば、適宜皮膚に適用することにより、肌の美白、肌の若返り等に使用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
以下の処方に従い(塩類に関して、括弧内はイオンの濃度)、各成分を精製水に溶解し、水溶液の形態の本発明の化粧料組成物を得た。
NaCl 5.61g/L(0.0960モル/L)
KCl 0.30g/L(0.0040モル/L)
Ca(C 0.77g/L(0.0025モル/L)
MgSO 0.18g/L(0.0015モル/L)
NaHCO 2.27g/L(0.0270モル/L)
グルタミン酸ナトリウム 2.88g/L(0.0170モル/L)
グルコース 20.00g/L(0.1110モル/L)
トレハロース 10.00g/L(0.0292モル/L)
マルトース 5.00g/L(0.0146モル/L)
【実施例2】
【0011】
肌美白に関する試験
(1)電子顕微鏡観察
正常ヒト新生児包皮表皮メラニン細胞(NHEM、KM4009)を、HMGS添加Medium154(クラボウ製)を用いて、5%CO2含有湿潤雰囲気下、37℃で8日間培養した。HMGS添加Medium154使用区を対照区とし、それに実施例1の各成分を実施例1記載の濃度で添加したもの(1.0倍量添加)を試験区とし、8日目の細胞を採取した。グルタルアルデヒドで前固定後、包埋固定し、JEOL JEM-2000EX電子顕微鏡で細胞を観察した。
添付の図1は対照区、図2は試験区の細胞の約5300倍に拡大したものである。図1に示すごとく、対照区の細胞では、メラニン顆粒(黒色楕円の粒)が細胞内に多数観察され、さらにメラニン顆粒の詰まった細胞質を分離するところが観察されたが、試験区の細胞では、矢印で示すように、ライソゾーム内でメラニン顆粒が分解されている様子が観察された。
(2)メラニン量の測定
上記(1)と同様に、HMGS添加Medium154使用区を対照区、それに実施例1の各成分を、実施例1記載の濃度の0.5倍の濃度で添加した試験区(0.5倍量添加区)、1.0倍量の濃度で添加した試験区(1.0倍量添加区)および1.5倍の濃度で添加した試験区(1.5倍量添加区)の計4区でNHEM細胞を8日間培養した。各々、2日目、4日目および8日目で検体を採取し、タンパク量当たりのメラニン吸光度(475nm)を測定した。各区につき、5検体を採取し、その平均±標準偏差を各区の数値とした。
結果を表1および図3に示す。
【0012】
【表1】

この結果、対照区に比べ、0.5倍量添加区および1.0倍量添加区では経時により、メラニン量の減少が見られた(FisherのPLSD法により、対照区と、0.5倍量添加区および1.0倍量添加区の間に統計的有意差が認められた)。
このように、本発明の化粧料組成物は、メラニン顆粒を分解することにより、肌美白効果を発揮する。
【実施例3】
【0013】
肌の若返り(活性化)に関する試験
実施例2(2)と同様にNHEM細胞を培養し、MTT分析により、ミトコンドリアで生成されるホルムアザンの増加率によって、添加物の細胞に与える活性効果を試験した。各区につき、5検体を採取し、その平均±標準偏差を各区の数値とした。
結果を表2および図4に示す。
【0014】
【表2】

この結果、対照区に比べ、実施例1の各成分添加区では経時により、高い増加率を示した(FisherのPLSD法により、対照区と全ての添加区との間に統計的有意差が認められた)。ただし、1.5倍量添加区では6日目より減少傾向を示し、8日目では明らかに減少した。
このように、本発明の化粧料組成物は、細胞の活性も高めることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
以上記載したごとく、本発明の化粧料組成物は、優れた肌美白効果および肌若返り効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例2における対照区の細胞を示す。
【図2】実施例2における試験区の細胞を示す。
【図3】実施例2におけるメラニン測定値の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例3におけるMTT分析値の経時変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の細胞外液と同等のモル濃度比のNaイオン、Kイオン、Caイオン、Mgイオン、ClイオンおよびHCOイオンと、0.05〜0.15モル/Lの濃度のグルコースと、0.01〜0.03モル/Lのグルタミン酸ナトリウムとを含んでなることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
美白化粧料である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
肌の若返り用化粧料である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
水溶液である請求項1記載の組成物。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/046624
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515472(P2005−515472)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016939
【国際出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(500264375)株式会社ゲオ (11)
【Fターム(参考)】