説明

化粧板

【課題】磁石を取り付けられるとともに、切断などの加工も容易であり、さらに、必要に応じて、不燃性を容易に付与することができる化粧板を提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含有する芯材層1の表面に、メラミン樹脂を含有する表面化粧層2を積層した化粧板において、芯材層1同士の間又は芯材層1と表面化粧層2の間に、熱可塑性樹脂接着層3を介して、耐腐食性又は防錆処理を施した磁性金属板4が一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板に関し、特に、台所で調理器具などを吊り下げる磁石付きフック等の磁石を取り付けることができ、さらに、必要に応じて、不燃性を容易に付与できる化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛メッキ鋼板を挿入することで、磁石が付着し、切断が容易な鋼板メラミン樹脂化粧板が開発されている(特許文献1参照)。
これらの化粧板は、家具や台所シンク周り等の内装には使用できるが、その使用範囲は火災予防条例等の規制のために火気のない部分に限られ、コンロ周りには用いることができなかった。
【0003】
しかしながら、実際には台所で使用する場合、火気のあるコンロ周りと火気のないシンク周りなどで化粧板のデザインや化粧板の厚みが変わると、施工後の美観や施工部材の拾い出し、施工の容易さに問題が生じるとともに、施工時に誤って不燃性が必要とされる部分に不燃性を有しない化粧板を設置してしまうというような間違いが懸念されるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−58601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の化粧板が有する問題点に鑑み、磁石が取り付けられるとともに、切断などの加工も容易であり、さらに、必要に応じて、不燃性を容易に付与することができる化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の化粧板は、熱硬化性樹脂を含有する芯材層の表面に、メラミン樹脂を含有する表面化粧層を積層した化粧板において、芯材層同士の間又は芯材層と表面化粧層の間に、熱可塑性樹脂接着層を介して、耐腐食性又は防錆処理を施した磁性金属板が一体化されていることを特徴とする。
【0006】
この場合において、熱可塑性樹脂接着層がホットメルトシートよりなり、その融点を60〜160℃、厚みを10〜100μmとすることができる。
【0007】
また、磁性金属板の厚みを0.05〜0.2mmとすることができる。
【0008】
また、磁性金属板の材質をステンレス鋼又はガルバニウム鋼とすることができる。
【0009】
また、磁性金属板に複数の貫通孔を設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧板によれば、熱硬化性樹脂を含有する芯材層の表面に、メラミン樹脂を含有する表面化粧層を積層した化粧板において、芯材層同士の間又は芯材層と表面化粧層の間に、熱可塑性樹脂接着層を介して、耐腐食性又は防錆処理を施した磁性金属板が一体化されていることから、表面に磁石が取り付けられるとともに、磁性金属板の接着・積層性も良く、使用中に剥離することがなく、不燃性を容易に付与できることから、台所に施工する場合でも、コンロ周りと火気のない部分で化粧板を区別することなく、統一した美観と優れた施工性を併せ持った台所の内装化粧板として使用することができる。
【0011】
この場合、熱可塑性樹脂接着層がホットメルトシートよりなり、その融点を60〜160℃、厚みを10〜100μmとすることにより、磁性金属板を一体成型時の熱圧プレスによって良好に接着・積層することができ、また、コンロ使用時の高温に曝されても層間剥離を生じることかない。
【0012】
また、磁性金属板の厚みを0.05〜0.2mmとすることにより、切断などの加工を容易にすることができる。
【0013】
また、磁性金属板の材質をステンレス鋼又はガルバニウム鋼とすることにより、耐腐食性を向上させることができ、化粧板の表面に錆による膨れなどの不具合を生じさせることがない。
【0014】
また、磁性金属板に複数の貫通孔を設けることにより、金属板の接着・積層性を高めるとともに、化粧板を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の化粧板の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に、本発明の化粧板の実施例を示す。
この化粧板は、熱硬化性樹脂を含有する芯材層1の表面に、メラミン樹脂を含有する表面化粧層2を積層したもので、芯材層1同士の間又は芯材層1と表面化粧層2の間に、熱可塑性樹脂接着層3、3を介して、耐腐食性又は防錆処理を施した磁性金属板4が配設され一体化されている。
この化粧板の厚みは、特に限定されるものではないが、1.5〜6mm、特に、2〜5mmの厚みであることが好ましい。この厚みであると、台所で使用される他の化粧板との段差をなくすことができ、台所周りを美しく仕上げることができる。
【0017】
表面化粧層2は、例えば、酸化チタンを含有する紙材にメラミン樹脂を含浸させた化粧紙、必要に応じて、これに適宜の印刷を施した化粧紙を用いることができる。
紙材は、例えば、秤量70〜150g/mのチタン含有紙を採用することができ、これにメラミン樹脂を60〜150質量%含浸させ、さらに、その表面に任意の印刷層を形成することができる。
この場合、表面化粧層2の表面に細かい皺(しぼ)状の模様が現れることを防止するため、表面化粧層2のメラミン樹脂の含有量を、上記のような含浸率に設定することが望ましい。
【0018】
芯材層1は、ガラス不織布や織布からなり、これにメラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸又は塗布されるとともに、無機質骨材である炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、無水珪酸、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を含有したシートを複数枚積層して構成される。
この場合、芯材層1全体として、熱硬化性樹脂が5〜20質量%含有されるようにすると、無機質骨材とガラス不織布や織布からなる不燃成分は、芯材層全体の95〜80質量%となり、化粧板に不燃性を付与することができる。
熱硬化性樹脂の含有量が、20質量%より多いと、不燃性となり難く、反対に、5質量%より少ないと、結合力(接着力)が小さく、成形性が悪くなる。
【0019】
また、最下層に積層される裏面化粧層5は、例えば、紙材にメラミン樹脂やフェノール樹脂を含浸させたものを用いることができる。 紙材は、例えば、秤量70〜150g/mのクラフト紙を採用することができ、これにメラミン樹脂を60〜150質量%含浸させたものである。なお、必要に応じて、その表面に任意の印刷層等を形成することもできる。
【0020】
熱可塑性樹脂接着層3は、金属に対し接着性の良好なものを使用し、例えば、融点が60〜160℃で、好ましくは、100〜160℃で、さらに好ましくは、130〜160℃で、厚みが10〜100μm、好ましくは、20〜50μm程度のフィルム状のホットメルトシートを使用することができる。
【0021】
通常、化粧板は、火災予防条例に従って、コンロより150mm以上の距離を離して配置される。その場合のコンロ使用時における化粧板表面の温度は約60℃となるため、60℃以上の融点を有するホットメルトシートを使用すれば、コンロの熱による層間剥離は生じることがない。しかし、コンロとの距離が75mmになると、化粧板表面の温度は100℃となるので、上記融点以下のホットメルトシートでは層間剥離のおそれがある。
このため、コンロとの距離が75mmで使用される場合のことを考慮すれば、ホットメルトシートの融点を100℃以上、さらに好ましくは130℃以上にするのが望ましい。一方、融点が160℃以上になると、化粧板成型時の熱圧プレスの熱によって溶融接着しないので、好ましくない。さらに、ホットメルトシートの厚みが10μmより薄いと、磁性金属板が接着・積層しにくくなり、100μmより厚くなっても接着・積層性が向上しないばかりではなく、化粧板の不燃性の発現を困難にするし、化粧板のコストも高くなる。
本実施例では、融点が139℃、厚みが30μmのグラフト反応によって官能基を導入することにより金属と接着性を高めたポリプロピレン系のホットメルトシートを使用し、融点を約140℃とすることにより、磁性金属板4を一体成型時の熱圧プレスによって完全に溶融接着した不燃性を有する化粧板とした。また、コンロ周りに本実施例の化粧板を配設し、化粧板より75mm離れておかれたコンロを使用した場合、コンロの発する熱によって、化粧板が高温になっても、その温度によってホットメルトシートが軟化や溶融することなく、接着力を保持できるため、層間剥離を防止することができるようにしている。
【0022】
熱可塑性樹脂接着層3に用いられる上記ホットメルトシート以外の例として、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の公知の樹脂から作製されたホットメルトシートを挙げることができる。
【0023】
また、熱可塑性樹脂接着層に用いられるホットメルトシート以外の樹脂の例として、ポリエチレン系、ポリエステル系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系の樹脂が好適であり、他にエチレン以外のポリオレフィン系(例えば、ポリプロピレン)、ポリアミド系、ポリウレタン系、合成ゴム系の樹脂があり、これらの混合物、共重合物など、金属と接着性が良好なものを挙げることができる。
【0024】
磁性金属板4は、耐腐食性に優れるステンレス鋼板や、アルミニウムと亜鉛との合金被膜を有するガルバニウム鋼板、メッキ等の防錆処理を施した鉄板等を使用することができる。
この場合、磁性金属板4に、厚さ0.05〜0.2mm、好ましくは、0.05〜0.15mmの薄板を用いることにより、チップソー等による切断加工を容易にすることができる。
また、磁性金属板4に複数の貫通孔を設けることにより、金属板の接着・積層性を高めるとともに、化粧板を軽量化することができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
図2(a)に示すように、表面化粧層2、2枚の芯材層1、両面に厚さ30μmで融点が139℃のポリプロピレン系のホットメルトシート(熱可塑性樹脂接着層)3を設けたステンレス鋼(SUS430)製0.1mm薄板4、2枚の芯材層1、裏面化粧層5を上から順に配設し、熱圧プレスによって一体成型して化粧板を得た。
【0026】
(実施例2)
図2(b)に示すように、表面化粧層2、2枚の芯材層1、両面に厚さ60μmで融点が139℃のポリプロピレン系のホットメルトシート(熱可塑性樹脂接着層)3を設けたステンレス鋼(SUS430)製0.1mm薄板4、2枚の芯材層1、裏面化粧層5を上から順に配設し、熱圧プレスによって一体成型して化粧板を得た。
【0027】
(実施例3)
図2(c)に示すように、表面化粧層2、2枚の芯材層1、両面に厚さ30μmで融点が139℃のポリプロピレン系のホットメルトシート(熱可塑性樹脂接着層)3を設けたステンレス鋼(SUS430)製0.05mm薄板4、2枚の芯材層1、裏面化粧層5を上から順に配設し、熱圧プレスによって一体成型して化粧板を得た。
【0028】
(実施例4)
図2(d)に示すように、表面化粧層2、両面に厚さ30μmで融点が139℃のポリプロピレン系のホットメルトシート(熱可塑性樹脂接着層)3を設けたステンレス鋼(SUS430)製0.05mm薄板4、1枚の芯材層1、両面に厚さ30μmの上記ホットメルトシート3を設けたステンレス鋼(SUS430)製0.05mm薄板4、裏面化粧層5を上から順に配設し、熱圧プレスによって一体成型して化粧板を得た。
【0029】
(実施例5)
図2(e)に示すように、表面化粧層2、2枚の芯材層1、両面に厚さ30μmで融点が139℃のポリプロピレン系のホットメルトシート(熱可塑性樹脂接着層)3を設けたガルバニウム鋼板の0.115mm薄板4、2枚の芯材層1、裏面化粧層5を上から順に配設し、熱圧プレスによって一体成型して化粧板を得た。
【0030】
(比較例1)
図2(f)に示すように、表面化粧層2、2枚の芯材層1、接着層なしのステンレス鋼(SUS430)製0.1mm薄板4、2枚の芯材層1、裏面化粧層5を上から順に配設し、熱圧プレスによって一体成型して化粧板を得た。
【0031】
これら実施例1〜5と比較例1の各化粧板に対し、成形性(反り)、密着性、不燃性、加工性(切断)及び磁着力(磁着枚数)の面から、以下の基準で評価を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
(1)成形性(反り)
各化粧板を250mm角のサイズに切断し、定盤の上に置いた状態で端部の浮き上がりが3.5mm以下の場合に良(表1での表記は「○」とする)とする。
【0033】
(2)密着性
各化粧板を50mm角のサイズに切断して煮沸水の中に入れ、2時間後に取り出して目視し、層間剥離のない場合に良(表1での表記は「○」とする)とする。
【0034】
(3)不燃性
実施例1、2の化粧板について、発熱性試験としてISO5660の試験方法に基づき、コーンカロリー試験機を用いて、総発熱量と発熱速度を求めた。この試験方法では、総発熱量が8MJ/m以下、発熱速度200kW/m以下の場合には不燃性を有するとされる。
【0035】
(4)加工性(切断)
鋸歯(径:305mm、厚さ:2.4mm、歯数:120、すくい角:15°、横すくい角:15°、先端逃げ角:15°、先端傾き角:10°の兼房株式会社製チップソー「BOARD PRO」)を使用して各化粧板を切断し、その切り口を目視確認し、バリやカエリがない場合に良(表1での表記は「○」とする)とする。
【0036】
(5)磁着力(磁着枚数)
丸型で直径30mm、高さ5mmのネオジウム磁石を用いて、化粧板との間にA4コピー用紙(4.1g/枚)を何枚挟むことができるかを測定し、落下しない枚数を求めた。
なお、このネオジウム磁石を用いて、0.1mm鋼板に挟むことができるA4コピー用紙の枚数は35枚であった。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1〜5の化粧板は、成形性、密着性、切断加工性のいずれにおいても良好な評価を得た。
実施例1、2の化粧板は、総発熱量が8MJ/m以下、発熱速度200kW/m以下であり、不燃性を有していることがわかった。実施例3、5の化粧板と実施例1の化粧板との相違点は、それぞれ磁性金属板の厚さ、磁性金属板の種類だけであるし、実施例4の化粧板は芯材層が少なくなっているだけであるので、実施例3〜5の化粧板は、不燃性を有すると推測される。
磁着力においては、11〜24枚挟むことができて、いずれの実施例も台所などで磁着できる紙片の枚数としては十分であった。
これに対し、比較例1は、熱可塑性樹脂接着層であるホットメルトシートがないことから、密着性の評価で剥離して密着性がなく、実使用できないことがわかった。このため、他の評価は実施しなかった。
【0039】
以上、本発明の化粧板について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の化粧板は、化粧板の表面に磁石付きフック等の磁石を磁着させるという特性を有していることから、例えば、台所のコンロ付近の化粧板の用途に好適に用いることができ、さらに、必要に応じて、不燃性を容易に付与することができ、不燃性化粧板の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の化粧板の一実施例を示す分解図である。
【図2】化粧板を示し、(a)〜(e)は本発明の実施例の層構成を、(f)は比較例の層構成を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 芯材層
2 表面化粧層
3 熱可塑性樹脂接着層
4 磁性金属板
5 裏面化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含有する芯材層の表面に、メラミン樹脂を含有する表面化粧層を積層した化粧板において、芯材層同士の間又は芯材層と表面化粧層の間に、熱可塑性樹脂接着層を介して、耐腐食性又は防錆処理を施した磁性金属板が一体化されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
熱可塑性樹脂接着層がホットメルトシートよりなり、その融点が60〜160℃、厚みが10〜100μmであることを特徴とする請求項1記載の化粧板。
【請求項3】
磁性金属板の厚みが0.05〜0.2mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧板。
【請求項4】
磁性金属板の材質がステンレス鋼又はガルバニウム鋼であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の化粧板。
【請求項5】
磁性金属板に複数の貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−196510(P2007−196510A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17439(P2006−17439)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】