説明

化粧用原板、化粧鋼板及びそれらの製造方法

【課題】ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備える上、高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応できる化粧鋼板を与える化粧用原板、及び該化粧鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板の片面に、接着剤層Aを介して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを積層してなる化粧用原板であって、前記接着剤層Aが、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを含む接着剤を用いて形成されてなることを特徴とする化粧用原板、及び前記化粧用原板において、2軸延伸PET樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層のうちの少なくとも1つが施されてなる化粧鋼板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用原板、それを用いてなる化粧鋼板、及びそれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、家庭電化製品、耐食性を必要とする建材などの用途に用いられる化粧鋼板を与える、鋼板の片面に2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが密着性よく積層されてなる化粧用原板、それを用いて得られた化粧鋼板(プレコート鋼板)、及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧鋼板としては、有機物を被覆した鋼板が多く使用されており、その中でもいわゆるプレコート鋼板の比率が高まる傾向にある。このプレコート鋼板には、鋼板に塗料を塗布する塗装タイプ、予めフィルム状態にしたものに色や模様をつけて鋼板に貼り付けるラミネートタイプ、鋼板に塗装・印刷した上に透明あるいは半透明のフィルムを貼り付ける複合タイプと呼べるものなどがある。
【0003】
このうち塗装タイプには、ポリ塩化ビニル系のほか、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系などがあるが、高い耐食性が求められる用途向けには、膜厚の大きなポリ塩化ビニル系が多く用いられている。特に、高い耐食性を必要とする用途では、原板にステンレス鋼板やアルミ板、厚目付けの亜鉛めっき鋼板などを用いるなど、原板において耐食性の向上を図ることが可能であるが、そのような原板は非常に高価なため、普及していない状況である。
また、ラミネートタイプ、複合タイプでは、ポリ塩化ビニル単体のフィルム、またはポリ塩化ビニルとポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある。)を貼り合わせたフィルムを用いるのが一般的であった。
【0004】
ところで、近年塩素を含有する樹脂は、廃棄物として焼却する際に環境汚染の原因物質となる可能性があることを指摘されるようになり、ポリ塩化ビニルの使用をやめる動きが盛んになってきている。
【0005】
このような背景のもと、塗装タイプのプレコート鋼板ではポリ塩化ビニル系以外の塗料を使用すると塗膜の厚みに限界があるため、高い耐食性を要求される用途にはラミネートタイプでポリ塩化ビニルを用いず、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂単体のフィルム、あるいはポリオレフィンフィルムとPETフィルムを貼り合わせたものを使用する試みが行われている。
【0006】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂の再結晶挙動や、樹脂層の硬さの不足のため、実用的には加工性や耐傷つき性に難点があって、満足すべき製品が供給されていないのが実情である。さらに、意匠の出来上がったフィルムを単にラミネートする方法では、表面の立体感などの表現に限界があることから、塗料の種類を変えたり、塗料への添加物で表面の立体感を付与することができるなどの、塗装・印刷タイプのプレコート鋼板が有する多様な意匠表現力には及ばないという問題もある。
【0007】
ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらには美麗な外観をも兼ね備えたプレコート鋼板として、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートを主体とする樹脂からなり厚さが20μmから150μmの範囲内にある2軸延伸フィルムを、鋼板の片面に接着剤層を介してラミネートし、その表面に必要に応じて接着剤を塗布した後に、合成樹脂塗料による塗装と印刷とを任意の回数で、かつ任意の順序で施したことを特徴とする化粧鋼板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−309067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載の化粧鋼板は、ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備えている。しかしながら、PETフィルムを鋼板に積層するために介在させる接着剤層を形成する接着剤についてはなんら規定がなく、実施例ではポリエステルウレタンポリオールを主剤とする接着剤が用いられており、このポリエステルウレタンポリオールを主剤とする接着剤は、本発明者らの研究によると、煮沸試験や180〜230℃程度の高温での耐熱性など過酷な要求物性に対しては、充分に対応できないことが分かっている。
本発明は、このような状況下になされたものであり、ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備える上、180〜230℃程度の高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応できる化粧鋼板を与える化粧用原板、及び前記性状を有する化粧鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
鋼板の片面に、(1)主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを組み合わせた接着剤を用いて形成された接着剤層を介して、特定の厚さを有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを積層することにより、所望の性状、すなわち高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応しうる化粧鋼板を与える化粧用原板が得られること、(2)該ポリエステル樹脂を得るにあたり、特定の脂肪族ジカルボン酸としてアゼライン酸を用いることにより特に所望の性状が得られること、(3)この化粧用原板において、前記樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層のうちの少なくとも1つを積層することにより、所望の性状を有する化粧鋼板が得られること、を見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]鋼板の片面に、接着剤層Aを介して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを積層してなる化粧用原板であって、前記接着剤層Aが、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを含む接着剤を用いて形成されてなることを特徴とする化粧用原板、
[2]上記[1]の化粧用原板において、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層形成工程、絵柄層形成工程及び上塗り層形成工程のうちの少なくとも1つが積層されてなることを特徴とする化粧鋼板、
[3](a)鋼板又は2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に接着剤層Aの半硬化層を形成する工程、(b)前記(a)工程で形成された接着剤層Aの半硬化層上に、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム又は鋼板を、加熱・加圧下に積層する工程を含む化粧用原板の製造方法であって、前記(a)工程における接着剤層Aの半硬化層が、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを組み合わせた接着剤を用いて形成されることを特徴とする化粧用原板の製造方法、及び
[4]上記[3]に記載の製造方法で得られた化粧用原板に、さらに(c)工程として、(b)工程で積層された2軸延伸フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層形成工程、絵柄層形成工程及び上塗り層形成工程のうちの少なくとも1つの工程を施すことを特徴とする化粧鋼板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備える上、180〜230℃程度の高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応できる化粧鋼板を与える化粧用原板、及び前記性状を有する化粧鋼板、並びにそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の化粧用原板の構成の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の化粧鋼板の構成の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の化粧用原板について説明する。
[化粧用原板]
本発明の化粧用原板は、鋼板の片面に、接着剤層Aを介して、2軸延伸PET樹脂フィルムを積層してなる化粧用原板であって、前記接着剤層Aが、主剤として、ウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを組み合わせた接着剤を用いて形成されてなることを特徴とする。
【0015】
(鋼板)
本発明の化粧用原板に用いられる鋼板としては特に制限はなく、例えば熱間圧延鋼板や冷間圧延鋼板、さらにそれらの各種の金属メッキあるいはさらにクロメート処理などの表面処理を施したもの、ステンレス鋼板など種々のものを用いることができるが、亜鉛またはその合金をメッキし、さらに表面処理を施した冷間圧延鋼板が経済的な見地から最も推奨できる。
本発明の化粧用原板においては、鋼板の裏面については、用途や使用環境に応じて、必要に応じ合成樹脂塗料による塗装その他の公知の方法で被覆することができる。
【0016】
(PET樹脂フィルム)
本発明の化粧用原板において、前述した鋼板の片面に接着剤層Aを介して積層されるPET樹脂フィルムとしては、2軸延伸処理したものが用いられ、また経済性の観点から、安価な無色透明のものが好適である。
PET樹脂フィルムの素材であるPET樹脂は、一般に言われているテレフタル酸とエチレングリコールの工業的レベルで純粋な重合体に限定するものではなく、他のモノマーとの部分的な共重合体や混合体なども、PET樹脂としての特徴を著しく失わない範囲で含むことができる。また、一般的に工業的に行われている2軸延伸がなされている限りは、フィルム成形の方法や延伸度は限定しない。なぜならば、樹脂の種類としてのPETを選定した理由は、塩素を含まず、安価な工業製品として入手できるものの中で、後述の化粧鋼板の表面被覆として好ましい硬さと耐食性を兼ね備えているためであり、2軸延伸フィルムの形で使用する理由は、表面の望ましい平滑さを持ち、後にある程度の加熱を受けても、PET樹脂フィルムの融点が高いことにより、樹脂が再結晶することがなく、加工性の低下が起きにくいためである。
【0017】
PET樹脂フィルムの厚さは、好ましくは20〜150μmの範囲で選定される。この厚さが20μm以上であると、塗装・印刷後に平滑な外観を得ることが容易となり、良好な耐食性を確保でき、また、塗装・印刷層を厚く仕上げる必要が生じないため、経済的である。一方、150μm以下であると、フィルムの剛性のためにラミネート作業が不安定とならず、製品となった化粧鋼板の加工にフィルムが追随するので、剥離を起こしにくくなる。また、厚くなりすぎると、フィルムは高価となり、内部応力により加工部に剥離が生じる可能性が大きくなってしまう。
このような観点から、PET樹脂フィルムの厚さは、好ましくは50〜150μm、より好ましくは75〜100μmである。
【0018】
PET樹脂フィルムは、接着剤層Aと、その表面側に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また、PET樹脂フィルムは、樹脂フィルムとその上に設けられる層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施しても良い。ただし、易接着層は、PET樹脂フィルムとの接着性において、高温での耐熱性や煮沸試験によっても密着性を有していることを要する。なお、PET樹脂フィルムとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着層が設けられたものも用いることができる。
【0019】
(接着剤層A)
本発明の化粧用原板において、前述した鋼板と、PET樹脂フィルムとの間に介在させる接着剤層Aは、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを含む接着剤を用いて形成される。
【0020】
<ポリエステル樹脂>
接着剤層Aを形成するのに用いられる接着剤を構成する主剤であるポリエステル樹脂は、ウレタン結合を有しないものである。本発明において、ウレタン結合を有しないとは、ポリエステル樹脂が意図してウレタン結合を有しないことを意味し、例えば後述するポリエステル樹脂を製造するにあたり使用する多価アルコールや多塩基酸などに含まれる不純物に由来してウレタン結合を有してしまうような場合、ウレタン結合を有する態様を含む概念である。ただし、そのような場合でも、ウレタン結合のポリエステル樹脂中に含まれる含有量は3質量%以下である。
【0021】
また、本発明で用いられる接着剤は、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂以外に、本発明の硬化を阻害しない範囲で他の樹脂を含有していてもよい。本発明においては、該接着剤の主剤中にウレタン結合を有しないポリエステル樹脂が60質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むものがより好ましく、最も好ましくは100質量%、すなわち主剤がウレタン結合を有しないポリエステル樹脂のみである。
【0022】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、好ましくは多価アルコールと多塩基酸とから得られる、より具体的には、多価アルコールと多塩基酸とを重縮合させることにより得られるものである。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの二価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコールなどが好ましく挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましい。多価アルコールは単独で、又は複数種を用いてもよい。
【0023】
多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ドコサン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などの脂環式ジカルボン酸;クエン酸、イソクエン酸などの脂肪族トリカルボン酸などが好ましく挙げられる。これらのなかでも、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、両末端にカルボキシル基を有するものが好ましく、該カルボキシル基間の炭素鎖の炭素数が5〜20であるものが好ましく、炭素数5〜15のものがより好ましい。多塩基酸は単独で、又は複数種を用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、特にアゼライン酸が好ましい。アゼライン酸を採用することにより、接着剤の柔軟性に加えて、煮沸密着性、長期耐水性が向上する。
【0024】
本発明においては、ポリエステル樹脂は、ガラス転移点Tgが−5℃以下であることが好ましい。ガラス転移点Tgが−5℃以下であると、高温での耐熱性、ピール強度及び煮沸密着性の点で良好な結果が得られる。なお、本発明においてガラス転移点Tgは、DSC装置を用い、昇温速度8℃/minの条件で測定した値である。
また、ポリエステル樹脂は、接着性能の観点から、重量平均分子量Mwが20,000以上であることが好ましく、25,000以上であることがより好ましい。さらに水酸基価は、好ましくは1〜20mgKOH/g、より好ましくは4〜20mgKOH/gであり、酸価は、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは6mgKOH/g以下である。
なお、上記重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による標準ポリスチレン換算の値である。
【0025】
<ポリイソシアネート化合物>
接着剤層Aの形成に用いられる接着剤に硬化剤として含まれるポリイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネー(XDI)ト、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(ないしは脂環式)ポリイソシアネートを用いることができる。これらのなかでも、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、とりわけ4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)が好ましい。
【0026】
また、上記したポリイソシアネート化合物のアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、弾性変性ポリイソシアネートなどのいわゆる変性ポリイソシアネートも使用できる。
ここで、アダクト変性体とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物と、前記各種のポリイソシアネート化合物との反応物である。
また、弾性変性ポリイソシアネートとは、前記のトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物をモノマーとして用い、これに弾性を有する活性水素含有化合物をウレタン反応させ、NCO末端のプレポリマーとしたものである。
ポリイソシアネート化合物を弾性変性するために用いられる弾性を有する活性水素含有化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオールなどが挙げられる。
本発明においては、硬化剤として、前記ポリイソシアネート化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明においては、主剤である前記ポリエステル樹脂と、硬化剤である前記ポリイソシアネート化合物との使用割合は、通常質量比で100:2〜100:15の範囲で選定されるが、接着剤としての性能の観点から、ポリイソシアネート化合物中のNCO基と、ポリエステル樹脂中のOH基とのモル比[NCO]/[OH]が0.5〜1.5の範囲にあるのが好ましく、0.8〜1.2の範囲にあるのがより好ましい。
本発明においては、接着剤層Aを形成する接着剤は2液硬化型であることが好ましい。2液硬化型のものであれば、優れた初期密着性や、高温での耐熱性、煮沸密着性などが得られる。
【0028】
本発明の化粧用原板において、鋼板にPET樹脂フィルムを積層するために、主剤として前述した性状を有するポリエステル樹脂と、硬化剤として前述したポリイソシアネート化合物とを組み合わせてなる接着剤、好ましくは2液硬化型接着剤を用いることにより、得られた化粧用原板は、ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備える上、高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応できる化粧鋼板を与えることができる。
これに対して、主剤としてポリエステルウレタンポリオールと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを組み合わせてなる接着剤は、後述の比較例で示すように、高温での耐熱性や煮沸密着性などの過酷な要求物性に対応することはできない。
【0029】
次に、本発明の化粧用原板の製造方法について説明する。
[化粧用原板の製造方法]
本発明の化粧用原板の製造方法は、(a)鋼板の片面に接着剤層Aの半硬化層を形成する工程、(b)前記(a)工程で形成された接着剤層Aの半硬化層上に、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを、加熱・加圧下に積層する工程を含む化粧用原板の製造方法であって、前記(a)工程における接着剤層Aの半硬化層が、主剤として、ガラス転移点Tgが−5℃以下であるポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを組み合わせた接着剤を用いて形成されることを特徴とする。
【0030】
((a)工程)
本発明の化粧用原板の製造方法において、(a)工程は、前述した鋼板又は2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(2軸延伸PET樹脂フィルム)の片面に接着剤層Aの半硬化層を形成する工程である。
前記接着剤層Aの半硬化層は、鋼板の片面に、前述した接着剤、好ましくは2液硬化型接着剤を、乾燥膜厚で好ましくは5〜30μm、より好ましくは12〜20μmになるように、ロールコータ、フローコータなどを用いて塗布、加熱乾燥することにより形成することができる。
なお、前記接着剤及びその構成成分については、前述した本発明の化粧用原板の説明において示したとおりである。
【0031】
((b)工程)
本発明の化粧用原板の製造方法において、(b)工程は、前述した(a)工程で形成された接着剤層Aの半硬化層上に、2軸延伸PET樹脂フィルム又は鋼板を、加熱・加圧下に積層する工程である。ここで、もちろんのことであるが、(a)工程で接着剤層Aを鋼板に設けた場合は、2軸延伸PET樹脂フィルムを積層し、(a)工程で接着剤層Aを2軸延伸PET樹脂フィルムに設けた場合は、鋼板を積層することとなる。
この(b)工程における加熱・加圧下での積層については特に制限はないが、通常、120〜250℃程度の温度条件下で該PET樹脂フィルムを積層する方法が用いられる。積層後、所定温度環境下(通常は、30℃〜60℃程度)で一定時間保管することにより、接着剤層Aの半硬化層は硬化し、接着剤層Aが形成し、該PET樹脂フィルムは、鋼板上に密着性よく積層され、本発明の化粧用原板が得られる。
【0032】
このようにして得られた本発明の化粧用原板においては、鋼板の片面に接着剤層Aを介して積層される2軸延伸PET樹脂フィルムには、意匠性を求めずに汎用性のある無色透明のものとしておき、客先からの要求に合った意匠を、出荷直前に塗装・印刷によって付与できるため、注文された意匠の化粧鋼板を短納期で供給することができる。また2軸延伸PET樹脂フィルムの厚さは、好ましくは20〜150μmの範囲である。
図1は、本発明の化粧用原板の一例の構成を示す断面模式図であって、化粧用原板10は、鋼板1の片面に、接着剤層A2を介して、2軸延伸PET系樹脂フィルム3が積層されてなる構造を有している。
【0033】
次に、本発明の化粧鋼板について説明する。
[化粧鋼板]
本発明の化粧鋼板は、前述した本発明の化粧用原板において、2軸延伸PET樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層のうちの少なくとも1つが積層されてなることを特徴とする。ここで、下塗り層は、いわゆるベタ層のことであり、上塗り層は、鋼板の表面保護を目的に積層される層である。
本発明の化粧鋼板においては、前記2軸延伸PET樹脂フィルム上に、必要に応じて接着剤層Bが設けられ、その上に合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層のうちの少なくとも1つが積層されていてもよい。
前記接着剤層Bを形成する接着剤については、2軸延伸PET樹脂フィルム上に、下塗り層や絵柄層を密着性よく、積層し得るものであればよく、特に制限されず、各種の接着剤を用いることができる。
【0034】
本発明の化粧鋼板においては、前記2軸延伸PET樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層が順次積層されてなるものが好ましい。この場合においても、前記と同様に、2軸延伸PET樹脂フィルム上に、必要に応じて接着剤層Bが設けられ、その上に、合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層が順次積層されていてもよい。
【0035】
合成樹脂塗料、インクの種類は、本発明の趣旨に沿ってポリ塩化ビニル系以外のものを選択すること以外には特に制約はない。塗膜の加工性、硬さと傷つきにくさ、耐食性、耐候性等の種々の性能のバランスがとれているという点で、ポリエステル系の塗料、インクが本発明には最も適している。
【0036】
塗装、印刷の方法についても、通常の化粧鋼板で採用されている如何なる方法も適用できる。また、塗装や印刷については、繰り返し同じ方法もしくは異なった方法で重ねてもよく、印刷と印刷の中間に塗装をはさむ方法も、意匠表現の一方法として本発明の範囲に含まれる。あらかじめPET樹脂フィルムがラミネートされているため、塗装の厚みは通常の化粧鋼板の場合より薄くてもよい場合もあるが、敢えて薄くする必要はない。
【0037】
塗装や印刷は、PET樹脂フィルムをラミネートする工程内で行ってもよいが、前述の化粧用原板、または該化粧用原板のPET樹脂フィルム上に基調色の下塗り塗装までを施した半製品をストックしておき、注文に応じた意匠を別の工程で付与すれば、短納期での生産に資することができる。
【0038】
また、接着剤層B、下塗り層、絵柄層及び上塗り層の形成は、上記したような塗料を塗工した後、各々200〜240℃程度の温度で加熱硬化することが好ましい。
【0039】
加飾すなわち意匠の付与については、印刷を施すことを原則としているが、その代わりに、または付加的に、塗料に樹脂等のビーズを添加したり、塗料やインクのはじき現象やちぢみ現象を利用して表面凹凸を得る技術を採用するのも効果的である。このような技術を利用することによって、下塗り層、絵柄層、上塗り層のいずれかを省略しても実用的な意匠性を確保することができるのは既存の塗装・印刷タイプの化粧鋼板と同じである。
【0040】
次に、本発明の化粧鋼板の製造方法について説明する。
[化粧鋼板の製造方法]
本発明の化粧鋼板の製造方法は、前述した化粧用原板の製造方法で得られた化粧用原板に、さらに(c)工程として、(b)工程で積層された2軸延伸PET樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層形成工程、絵柄層形成工程及び上塗り層形成工程のうちの少なくとも1つの工程、及び加熱乾燥の処理を施すことを特徴とする。
この化粧鋼板の製造方法においては、(b)工程と(c)工程との間に、さらに必要に応じて(b’)接着剤層Bを形成する工程を設けることができる。
また、本発明の化粧鋼板の製造方法においては、(c)工程に変えて、(d)工程として、(b)工程で積層された2軸延伸PET樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層形成工程、絵柄層形成工程及び上塗り層形成工程を順次施すことが好ましい。この場合においても、(b)工程と(d)工程との間に、さらに必要に応じて(b’)接着剤層Bを形成する工程を設けることができる。
【0041】
このようにして得られた本発明の化粧鋼板は、ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備える上、高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応することができる。
図2は、本発明の化粧鋼板の構成の一例を示す断面模式図である。
化粧鋼板20は、鋼板1上に、接着剤層A2を介して2軸延伸PET系樹脂フィルム3が積層されてなる化粧用原板10における前記樹脂フィルム3上に、必要に応じて設けられる接着剤層B4、下塗り層5、印刷層6及び上塗り層7が順に積層されてなる構造を有している。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
【0043】
<接着剤層Aを形成する接着剤を構成する主剤について>
(1)ガラス転移点Tg
DSC装置を用い、昇温速度8℃/minの温度条件で測定した。
(2)重量平均分子量Mw
GPC法により、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwを測定した。
(3)水酸基価
定法に従い、試料1g当たりのKOHのmg数を求めた。
(4)酸価
定法に従い、試料1g当たりのKOHのmg数を求めた。
【0044】
<化粧用原板について>
(5)200℃耐熱性
200℃で2分30秒加熱した際の接着剤層の軟化の有無及びPETフィルムの収縮値を求めた。また、剥離の状態を確認した。
収縮値1mm以上は不合格である。また、剥離していれば不合格である。
(6)ピール強度
ピール強度測定用機器を用い、30mm/分の条件でピール強度を測定した。ピール強度30N/25.4mm以上が合格である。
(7)加工性
20℃にて、内側R=0mmの先端アールをもたないV字曲げ加工部におけるPETフィルムのクラックの状態を目視観察し、下記の判定基準で加工性を評価した。
×:全面にクラックが発生。
△:部分的にクラックの発生が多い。
○:クラックの発生がない。
(8)煮沸密着性
(a)加工部
100℃の沸とう水に、試料を7日間浸漬した際の4mm曲げ代部(内側R=2(半径2mmの円弧))の加工により形成したものについて、曲げ代の剥離状況を目視観察し、下記判定基準で煮沸密着性を評価した。
×:4mm曲げ部全面に浮きが発生。
△:部分的に浮きが発生(3mm以上)。
□:部分的に浮きが発生(1mm〜3mm未満)。
○:浮きの発生がない。
(b)デュポン凹部
100℃の沸とう水に、試料を2時間浸漬した際の凹部(デュポン衝撃試験機(1kg/50cm,1/2Φ)のPET樹脂フィルムの剥離状況を目視観察し、下記の判定基準で煮沸密着性を評価した。
×:全面に浮きが発生。
△:部分的に浮きが発生(3mm以上)。
□:部分的に浮きが発生(1mm)。
○:浮きの発生がなし。
(9)トータル評価
下記の判定基準でトータル評価を行った。
×:使用不可。
□:用途別可否の可能性がある。
○:使用可能である。
◎:問題なく使用可能である。
【0045】
実施例1
(1)化粧用原板の作製
鋼板として、厚さ0.45mmの冷間圧延鋼板に、連続溶融亜鉛メッキ(片面当たりのメッキ量120g/m2)を施し、さらにクロメート処理を施したメッキ鋼板を用いた。
また、接着剤として、多塩基酸(テレフタル酸,イソフタル酸及びアゼライン酸)と多価アルコール(エチレングリコール及びネオペンチルグリコール)とを縮重合させて得られたポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール,ウレタン結合含有量:0質量%,ガラス転移点Tg:−15℃,Mw:28,000,水酸基価:4mgKOH/g,酸価:4mgKOH/g)を主剤とし、該主剤と硬化剤であるポリイソシアネート化合物(ジフェニルメタンジイソシアネート)とを、質量比100:9で組み合わせてなる2液硬化型の接着剤を用いた。
【0046】
次に、前記メッキ鋼板の片面に、前記の2液硬化型接着剤を、ロールコータを用いて、乾燥膜厚がおよそ15μmになるように塗布、加熱乾燥して半硬化塗膜層を形成した。次いで、この半硬化塗膜層の上に、表面にコロナ放電処理を施した厚さ75μmの2軸延伸無色透明のPETフィルム(「S−75(商品名)」,ユニチカ株式会社製)を、約200℃の温度条件下にて、ロールを用いて積層し、40℃の環境下で24時間保管することにより、該半硬化塗膜層を硬化させ、接着剤層Aとなし、化粧用原板を作製し、諸特性を評価した。
接着剤の性状を第1表に示し、諸特性の評価結果を第2表に示す。
(2)化粧鋼板の作製
次に、上記(1)で得られた化粧用原板における2軸延伸PETフィルム上に、ポリエステル樹脂系接着剤(大日本塗料(株)製)を乾燥膜厚でおよそ2μmになるように塗布・加熱乾燥した後、ポリエステル系熱硬化型下塗り塗料を乾燥膜厚でおよそ20μmになるように塗布・加熱乾燥し、さらにポリエステル系のインクで柄を印刷し、最後にポリエステル系の無色透明の塗料で乾燥膜厚およそ20μmの上塗り塗装を行って、焼き付け乾燥することにより、図2に示す構成の化粧鋼板を作製した。
【0047】
実施例2〜7
(1)化粧用原板の作製
実施例1(1)において、主剤と硬化剤との質量比が第1表に示す2液硬化型の接着剤を用い、かつ第1表に示すラミネート温度で2軸延伸PETフィルムを積層したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、6種の化粧用原板を作製し、諸特性の評価を行った。
接着剤の性状を第1表に示し、諸特性の評価結果を第2表に示す。
(2)化粧鋼板の作製
上記(1)で得られた6種の化粧用原板をそれぞれ用い、実施例1(2)と同様な操作を施し、6種の化粧鋼板を作製した。
【0048】
比較例1〜8
(1)化粧用原板の作製
第1表に示す性状を有するウレタン結合を有するポリエステルウレタンポリオールを主剤とし、これに第1表に示す質量比でイソシアネート系硬化剤を加えた接着剤を用い、第1表に示すラミネート温度で2軸延伸PETフィルムを積層したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、化粧用原板を作製し、諸特性の評価を行った。諸特性の評価結果を第2表に示す。
(2)化粧鋼板の作製
上記(1)で得られた化粧用原板をそれぞれ用い、実施例1(2)と同様な操作を施し、の化粧鋼板を作製した。
【0049】
【表1】

【0050】
[注]
ポリエステルウレタンポリオール(a):「タケラックA543(商品名)」,武田薬品工業(株)製
ポリエステルウレタンポリオール(b):「タケラックA515(商品名)」,武田薬品工業(株)製
ポリエステルウレタンポリオール(c):「タケラックA610(商品名)」,武田薬品工業(株)製
ポリエステルウレタンポリオール(d):「タケラックA310(商品名)」,武田薬品工業(株)製
イソシアネート系(a):ジフェニルメタンジイソシアネート
イソシアネート系(b):トリレンジイソシアネート(TDI)
イソシアネート系(c):イソホロンジイソシアネート(IPDI)とキシリレンジイソシアネート(XDI)との架橋物(混合比=3:1)
【0051】
【表2】

【0052】
第2表から分かるように、実施例の化粧用原板は、200℃耐熱性、ピール強度、加工性及び煮沸密着性の全てについて優れた性能を示すことが確認された。これに対し、比較例の化粧用原板は、高温での耐熱性(200℃耐熱性)、ピール強度、加工性及び煮沸密着性のいずれか一つ以上の性能が十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の化粧用原板を用いて得られた、本発明の化粧鋼板は、ポリ塩化ビニルを用いることなく、耐食性や密着性、加工性や耐傷つき性に優れ、さらに美麗な外観をも兼ね備える上、高温での耐熱性や煮沸試験などの過酷な要求物性に対して、充分に対応することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 鋼板
2 接着剤層A
3 2軸延伸PET系樹脂フィルム
4 接着剤層B
5 下塗り層
6 印刷層
7 上塗り層
10 化粧用原板
20 化粧鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の片面に、接着剤層Aを介して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを積層してなる化粧用原板であって、前記接着剤層Aが、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを含む接着剤を用いて形成されてなることを特徴とする化粧用原板。
【請求項2】
ポリエステル樹脂が、多価アルコールと多塩基酸とから得られ、該多塩基酸が脂肪族ジカルボン酸である請求項1に記載の化粧用原板。
【請求項3】
脂肪族ジカルボン酸が、両末端にカルボキシル基を有し、該カルボキシル基間の炭素鎖の炭素数が5〜20である請求項2に記載の化粧用原板。
【請求項4】
脂肪族ジカルボン酸が、アゼライン酸を含む請求項2又は3に記載の化粧用原板。
【請求項5】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、20,000以上である請求項1〜4のいずれかに記載の化粧用原板。
【請求項6】
主剤と硬化剤との使用割合が、質量比で100:2〜100:15である請求項1〜5のいずれかに記載の化粧用原板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の化粧用原板において、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層のうちの少なくとも1つが積層されてなることを特徴とする化粧鋼板。
【請求項8】
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に、さらに接着剤層Bが設けられ、その上に合成樹脂塗料による下塗り層、絵柄層及び上塗り層のうちの少なくとも1つが施されてなる請求項7に記載の化粧鋼板。
【請求項9】
(a)鋼板又は2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に接着剤層Aの半硬化層を形成する工程、(b)前記(a)工程で形成された接着剤層Aの半硬化層上に、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム又は鋼板を、加熱・加圧下に積層する工程を含む化粧用原板の製造方法であって、前記(a)工程における接着剤層Aの半硬化層が、主剤としてウレタン結合を有しないポリエステル樹脂と、硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを組み合わせた接着剤を用いて形成されることを特徴とする化粧用原板の製造方法。
【請求項10】
ポリエステル樹脂が、多価アルコールと多塩基酸とから得られ、該多塩基酸が脂肪族ジカルボン酸である請求項9に記載の化粧用原板の製造方法。
【請求項11】
脂肪族ジカルボン酸が、両末端にカルボキシル基を有し、該カルボキシル基間の炭素鎖の炭素数が5〜20である請求項9又は10に記載の化粧用原板の製造方法。
【請求項12】
脂肪族ジカルボン酸が、アゼライン酸を含む請求項9〜11のいずれかに記載の化粧用原板の製造方法。
【請求項13】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、20,000以上である請求項9〜12のいずれかに記載の化粧用原板の製造方法。
【請求項14】
主剤と硬化剤との使用割合が、質量比で100:2〜100:15である請求項9〜13のいずれかに記載の化粧用原板の製造方法。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかに記載の製造方法で得られた化粧用原板に、さらに(c)工程として、(b)工程で積層された2軸延伸フィルム上に、合成樹脂塗料による下塗り層形成工程、絵柄層形成工程及び上塗り層形成工程のうちの少なくとも1つの工程を施すことを特徴とする化粧鋼板の製造方法。
【請求項16】
(b)工程と(c)工程との間に、さらに(b’)接着剤層Bを形成する工程を設ける請求項15に記載の化粧鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−148433(P2012−148433A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7279(P2011−7279)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】