説明

化粧用粉体および化粧料

【課題】撥水撥油性および安定性に優れる化粧用粉体、および化粧もち、使用時の感触が良好であり、安定性に優れる化粧料を提供する。
【解決手段】(Z−Y)nX〔Z:炭素原子数1〜6のRF基等、Y:アルキレン基等、n:1または2、X:重合性不飽和基〕の重合単位、CH2=CR1−G−(R2O)q−R3〔R1:水素原子またはメチル基、R2:炭素原子数2〜4のアルキレン基等、q:1〜50、G:−COO(CH2r−等、r:0〜4、R3:水素原子等〕の重合単位、およびCH2=CR4−U〔R4:水素原子またはメチル基、U:水中でイオン化し得る官能基を含有する有機基〕の重合単位を含む含フッ素共重合体(A)が粉体表面に付着した化粧用粉体;該化粧用粉体を含む化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用粉体および該粉体を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料は、汗、皮脂、他の化粧料の油分等によって、汚れ、流れ、化粧崩れ等を生じることがあり、特に、夏期の高温多湿条件下では、化粧崩れが起こりやすい。その結果、化粧もちが悪くなる。そのため、化粧料に含まれる化粧用粉体には、化粧料に耐水性、耐皮脂性、耐油性を付与するための撥水撥油性が必要とされる。
従来の化粧用粉体としては、以下のものが知られている。
【0003】
(1)動植物または鉱物性粉末表面をシリコーン樹脂で被覆し、乾燥、焼き付けして粉末表面に潤滑性を付与した化粧用粉体(特許文献1)。
(2)タルク等の鉱物粉末表面に、分子鎖中にケイ素と直接結合する水素を有するシリコーンを、ブレンダー混合等で単純付着させた後、焼き付けることにより粉末に撥水性を付与した化粧用粉体(特許文献2)。
(3)タルクに、ジメチルポリシロキサンまたはメチル水素ポリシロキサンの有機溶剤溶液を接触、付着させた後、必要に応じてメチル水素ポリシロキサンの架橋触媒である亜鉛オクトエート等を焼き付けることにより、タルクに自由流動性を付与した化粧用粉体(特許文献3)。
【0004】
(4)二酸化チタンをアルキルポリシロキサンで被覆し、必要に応じて総炭素数6以上のエステル化合物を併用し、乾燥、焼き付けして、二酸化チタンの粉塵性、分散性等を改良した化粧用粉体(特許文献4)。
(5)粉末表面上にてメチル水素ポリシロキサンをメカノケミカル的に架橋重合させた化粧用粉体(特許文献5)。
(6)粉体表面をRF(CH2nSiL3〔RFはパーフルオロアルキル基。Lは加水分解性基。〕で表されるフルオロアルキルシランで処理した化粧用粉体(特許文献6)。
【0005】
(7)粉体表面をRF基含有リン酸エステルで表面処理した化粧用粉体(特許文献7)。
(8)粉体表面をRF基含有炭酸エステルで表面処理した化粧用粉体(特許文献8)。
(9)粉体表面をRF基含有重合体で表面処理した化粧用粉体(特許文献9、10)。
【0006】
しかし、(1)〜(6)の化粧用粉体は、いずれも撥水撥油性が不充分である。
(7)、(8)の化粧用粉体は、処理剤の加水分解によりRF基を含む低分子量成分が発生する場合があり、安定性に問題がある。
【0007】
(9)の化粧用粉体には、以下の問題がある。
・処理剤である重合体がRF基含有単量体の単独重合体の場合、化粧料に含まれるシリコーン油剤との相溶性が悪い。
・処理剤である重合体がRF基含有単量体と、アルキルアクリレートまたはシリコーン含有単量体との共重合体の場合、撥油性が低下する。
【特許文献1】特公昭41−9890号公報
【特許文献2】特公昭45−2915号公報
【特許文献3】特公昭45−18999号公報
【特許文献4】特公昭49−1769号公報
【特許文献5】特公昭56−43264号公報
【特許文献6】特開平2−218603号公報
【特許文献7】特開昭62−250074号公報
【特許文献8】特開2001−122893号公報
【特許文献9】特開昭55−167209号公報
【特許文献10】特開平9−12428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明の目的は、撥水撥油性および安定性に優れる化粧用粉体、および化粧もち、使用時の感触が良好であり、安定性に優れる化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の化粧用粉体は、粉体表面に、下記単量体(a)に基づく重合単位の60〜98質量%、下記単量体(b)に基づく重合単位の1〜20質量%および下記単量体(c)に基づく重合単位の1〜30質量%を含む含フッ素共重合体(A)が付着した化粧用粉体であることを特徴とする。
【0010】
単量体(a):
(Z−Y)nXで表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Z:炭素原子数1〜6のRF基またはCm2m+1O(CFWCF2O)dCFK−〔mは1〜6の整数。dは1〜4の整数。W、Kはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3。〕で表される基。
Y:2価有機基または単結合。
n:1または2。
X:重合性不飽和基であって、nが1の場合は−CR=CH2、−COOCR=CH2、−OCOCR=CH2、−OCH2−φ−CR=CH2または−OCH=CH2であり、nが2の場合は=CH(CH2pCR=CH2、=CH(CH2pCOOCR=CH2、=CH(CH2pOCOCR=CH2または−OCOCH=CHCOO−〔Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子。φはフェニレン基。pは0〜4の整数。〕である。
【0011】
単量体(b):
CH2=CR1−G−(R2O)q−R3で表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
1:水素原子またはメチル基。
2:炭素原子数2〜4のアルキレン基、または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基。
q:1〜50の整数。
G:−COO(CH2r−または−COO(CH2t−NHCOO−〔rは0〜4の整数。tは1〜4の整数。〕。
3:水素原子、メチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはアリル基。
【0012】
単量体(c):
CH2=CR4−Uで表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
4:水素原子またはメチル基。
U:水中でイオン化し得る官能基を含有する有機基。
【0013】
単量体(c)は、下記単量体(c1)または下記単量体(c2)であることが好ましい。
【0014】
単量体(c1):
CH2=CR4−M−Q1−NR56またはCH2=CR4−M−Q1−N(O)R56で表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
4:水素原子またはメチル基。
M:−COO−または−CONH−。
1:炭素原子数2〜4のアルキレン基、または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基。
5、R6:それぞれ独立に、ベンジル基、炭素原子数1〜8のアルキル基または水素原子の一部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキル基。または、R5、R6および窒素原子がモルホリノ基、ピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよい。
【0015】
単量体(c2):
CH2=CR4−M−Q2−Vで表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
4:水素原子またはメチル基。
M:−COO−または−CONH−。
2:単結合、炭素原子数2〜4のアルキレン基、水素原子の一部または全部が水酸基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基、またはエーテル性の酸素原子を含む炭素4〜18のアルキレン基。
V:−COOH、−SO3Hまたは−P(O)(OH)3
【0016】
含フッ素共重合体(A)は、さらに下記単量体(d)に基づく重合単位を含み、単量体(a)に基づく重合単位の60〜97.9質量%、単量体(b)に基づく重合単位の1〜20質量%、単量体(c)に基づく重合単位の1〜20質量%および単量体(d)に基づく重合単位の0.1〜10質量%を含む含フッ素共重合体であることが好ましい。
【0017】
単量体(d):
単量体(b)、単量体(c1)および単量体(c2)を除く単量体であって、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、ウレタン結合、アルコキシシリル基、エポキシ基、N−メチロール基およびN−アルコキシメチル基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有し、ポリフルオロアルキル基(以下、Rf基と記す。)を有しない(メタ)アクリレート。
【0018】
含フッ素共重合体(A)は、下記重合開始剤(e)を用いて得られた含フッ素共重合体であることが好ましい。
【0019】
重合開始剤(e):
アゾ化合物またはアゾアミジン化合物であって、該化合物またはその分解物の、ラットまたはマウスにおける急性経口毒性が1000mg/kg以上であり、10時間半減期温度が30℃以上である化合物。
【0020】
本発明の化粧料は、本発明の化粧用粉体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の化粧用粉体は、撥水撥油性および安定性に優れる。
本発明の化粧料は、および化粧もち、使用時の感触が良好であり、安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<化粧用粉体>
本発明の化粧用粉体は、粉体表面に含フッ素共重合体(A)が付着した化粧用粉体である。含フッ素共重合体(A)は、粉体表面の一部に付着していてもよく、粉体の全面を被覆するように付着していてもよい。
【0023】
(粉体)
粉体としては、無機粉体、有機粉体、または、無機粉体と有機粉体との複合粉体が好ましい。
【0024】
無機粉体としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、雲母、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン、カーボンブラック、およびこれらの複合体等が挙げられる。
【0025】
有機粉体としては、ナイロン等のポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、その他の共重合体、セルロイド、アセチルセルロース、セルロース、キチン、キトサン、多糖類、タンパク質、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ、CIピグメントレッド、CIピグメントバイオレット、CIピグメントブルー、CIピグメントグリーン、CIピグメントブラウン、および糖が挙げられる。
【0026】
粉体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粉体の形状としては、板状、塊状、鱗片状、多孔性球状等が挙げられる。粉体は、表面に細孔を有していてもよい。
【0027】
(含フッ素共重合体(A))
含フッ素共重合体(A)は、含フッ素共重合体(A)(100質量%)中、単量体(a)に基づく重合単位の60〜98質量%、単量体(b)に基づく重合単位の1〜20質量%および単量体(c)に基づく重合単位の1〜30質量%を含む重合体であり;単量体(a)に基づく重合単位の70〜90質量%、単量体(b)に基づく重合単位の4〜20質量%および単量体(c)に基づく重合単位の6〜25質量%を含む重合体であることが好ましい。該含フッ素共重合体(A)は、粉体表面との吸着性に優れ、かつ撥水撥油性に優れる。
【0028】
含フッ素共重合体(A)は、さらに単量体(d)に基づく重合単位を含む含フッ素共重合体(A1)であることが好ましい。含フッ素共重合体(A1)は、撥水撥油性にさらに優れる。
含フッ素共重合体(A1)は、含フッ素共重合体(A1)(100質量%)中、単量体(a)に基づく重合単位の60〜97.9質量%、単量体(b)に基づく重合単位の1〜20質量%、単量体(c)に基づく重合単位の1〜20質量%および単量体(d)に基づく重合単位の0.1〜10質量%を含む重合体であり;単量体(a)に基づく重合単位の70〜89.8質量%、単量体(b)に基づく重合単位の4〜20質量%、単量体(c)に基づく重合単位の6〜25質量%および単量体(d)に基づく重合単位の0.2〜10質量%を含む重合体であることが好ましい。
【0029】
単量体(a):
単量体(a)は、(Z−Y)nXで表される化合物である。
Zは、炭素原子数1〜6のR基またはCm2m+1O(CFWCF2O)dCFK−〔mは1〜6の整数。dは1〜4の整数。W、Kはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3。〕で表される基である。
Zとしては、炭素原子数1〜6のR基が好ましく、F(CF22−、F(CF23−、F(CF24−、F(CF25−、F(CF26−、(CF32CF(CF22−がより好ましく、F(CF24−、F(CF25−、F(CF26−が特に好ましい。
【0030】
Yは、2価有機基または単結合である。「有機基」は炭素原子を含む基を意味する。
Yとしては、2価有機基が好ましく、−RM−T−RN−〔RM、RNはそれぞれ独立して、単結合、1個以上のエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜22の飽和または不飽和の炭化水素基。Tは単結合、−OCONH−、−CONH−、−SO2NH−、−SO2NR’−(R’は炭素原子数1〜6のアルキル基。)または−NHCONH−。〕で表される2価の基がより好ましい。「炭化水素基」は、「エーテル性の酸素原子を含む」等の記載がない限りは、炭素原子と水素原子のみからなる基を意味する。炭化水素基は、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基のいずれでもよく、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0031】
−RM−T−RN−で表される2価の基としては、炭素原子数1〜10のアルキレン基、−CH=CHCH2−、−(CH2CHR''O)jCH2CH2−〔jは1〜10の整数。R''は水素原子またはメチル基。〕、−C24OCONHC24−、−C24OCOOC24−または−COOC24−が好ましく、炭素原子数1〜10のアルキレン基がより好ましく、−CH2−、−CH2CH2−、−(CH211−または−CH2CH2CH(CH3)−が特に好ましい。
【0032】
nは、1または2である。
Xは、重合性不飽和基であって、nが1の場合は−CR=CH2、−COOCR=CH2、−OCOCR=CH2、−OCH2−φ−CR=CH2または−OCH=CH2であり、nが2の場合は=CH(CH2pCR=CH2、=CH(CH2pCOOCR=CH2、=CH(CH2pOCOCR=CH2または−OCOCH=CHCOO−〔Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子。φはフェニレン基。pは0〜4の整数。〕である。
Xとしては、−OCOCR=CH2または−OCOCH=CHCOO−が好ましく、溶媒に対する溶解性に優れ、乳化重合が容易に行えることから、−OCOCR=CH2がより好ましい。
Rとしては、重合性に優れることから、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等。)または炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0033】
単量体(a)としては、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメタクリレートが好ましい。
単量体(a)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
単量体(b):
単量体(b)は、CH2=CR1−G−(R2O)q−R3で表される化合物である。
1は、水素原子またはメチル基である。
2は、炭素原子数2〜4のアルキレン基、または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基である。R2としては、炭素原子数2〜4のアルキレン基が好ましい。
【0035】
qは1〜50の整数であり、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましい。qが2以上の場合、−(R2O)q−は、1種のアルキレン基から構成されていてもよく、炭素原子数の異なる複数のアルキレン基から構成されていてもよい。−(R2O)q−が炭素原子数の異なる複数のアルキレン基から構成される場合、−(R2O)q−はブロック状でもよくランダム状でもよい。
Gは、−COO(CH2r−または−COO(CH2t−NHCOO−〔rは0〜4の整数。tは1〜4の整数。〕である。Gとしては−COO(CH2r−〔rは0〜4の整数。〕が好ましい。
【0036】
3は、水素原子、メチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはアリル基である。R3としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。R3が(メタ)アクリロイル基である場合、含フッ素共重合体(A)が3次元の網目構造となりやすく、含フッ素共重合体(A)が粉体に強固に密着し、耐久性に優れる。
単量体(b)としては、R3が(メタ)アクリロイル基である化合物と、R3が水素原子である化合物との併用がより好ましい。
【0037】
単量体(b)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アクリロイルオキシポリオキシエチレングリコールメタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリ(オキシプロピレン−オキシブチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン−オキシブチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましく、
【0038】
ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、
ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
単量体(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
単量体(c):
単量体(c)は、CH2=CR4−Uで表される化合物である。
4は、水素原子またはメチル基である。
Uは、水中でイオン化し得る官能基を含有する有機基である。「水中でイオン化し得る官能基」は、pH7以上のアルカリ性領域またはpH7以下の酸性領域において、水中でイオン化し、電荷を発生する官能基を意味する。該官能基としては、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、硫酸基、アミノ基が挙げられる。
単量体(c)としては、単量体(c1)または単量体(c2)が好ましい。
【0040】
単量体(c1):
単量体(c1)は、CH2=CR4−M−Q1−NR56またはCH2=CR4−M−Q1−N(O)R56で表される化合物である。
4は、水素原子またはメチル基である。
Mは、−COO−(エステル結合)または−CONH−(アミド結合)である。Mとしては、−COO−が好ましい。
【0041】
1は、炭素原子数2〜4のアルキレン基、または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基である。Q1としては炭素原子数2〜4のアルキレン基が好ましい。
5、R6は、それぞれ独立に、ベンジル基、炭素原子数1〜8のアルキル基または水素原子の一部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキル基;または、R5、R6および窒素原子がモルホリノ基、ピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよい。R5、R6としては、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましい。
【0042】
単量体(c1)としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N,N−ジメチルアミノオキシドエチル(メタ)アクリレートが好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートがより好ましい。
単量体(c1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
単量体(c2):
単量体(c2)は、CH2=CR4−M−Q2−Vで表される化合物である。
4は、水素原子またはメチル基である。
Mは、−COO−または−CONH−である。
2は、単結合、炭素原子数2〜4のアルキレン基、水素原子の一部または全部が水酸基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基、またはエーテル性の酸素原子を含む炭素4〜18のアルキレン基である。
Vは、−COOH、−SO3Hまたは−P(O)(OH)3である。
単量体(c2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、下式(1)〜(3)に示すリン酸エステル系単量体、下式(4)、(5)に示すスルホン酸系単量体が好ましい。ただし、sは、4〜5の整数である。
単量体(c2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
【化1】

【0045】
単量体(d):
単量体(d)は、単量体(b)、単量体(c1)および単量体(c2)を除く単量体であって、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、ウレタン結合、アルコキシシリル基、エポキシ基、N−メチロール基およびN−アルコキシメチル基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有し、Rf基を有しない(メタ)アクリレートである。
単量体(d)としては、以下の化合物が好ましい。
【0046】
イソシアネート基を有する化合物:
2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレート。
【0047】
ブロックされたイソシアネート基を有する化合物:
2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアネートブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体。
【0048】
ウレタン結合を有する化合物:
トリアリルイソシアヌレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートのトリレンジイソシアネート付加物、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートのヘキサメチレンジイソシアネート付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのヘキサメチレンジイソシアネート付加物。
【0049】
アルコキシシリル基を有する化合物:
CH2=CR10−D−E−SiRabc〔Dは−OCO−、−COO−または単結合。Eは炭素原子数1〜4のアルキレン基。Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基。R10は水素原子またはメチル基。〕で表される化合物である。具体例としては、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシエチルシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を有する化合物:
グリシジル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノグリシジルエーテル(メタ)アクリレート。
【0051】
N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基を有する化合物:
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
【0052】
単量体(d)としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシエチルシランが好ましい。
単量体(d)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
他の単量体:
含フッ素共重合体(A)は、含フッ素共重合体(A)の粉体への密着性、接着性、摩擦に対する耐久性等を改良するために、さらに、単量体(a)〜(d)を除く単量体(以下、他の単量体と記す。)に基づく重合単位を含んでいてもよい。他の単量体に基づく重合単位の割合は、含フッ素共重合体(A)(100質量%)中、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0054】
他の単量体としては、エチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソブタン酸ビニル、イソデカン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、酢酸アリル、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−メチルマレイミド等が挙げられる。
他の単量体としては、造膜性や耐水性に優れることから、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニリデンが好ましい。
【0055】
含フッ素共重合体(A)は、公知の方法を用いて、溶媒または水中で上記各単量体の重合反応を行うことにより得られる。
溶媒としては、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。)、アルコール(イソプロピルアルコール等。)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等。)、エーテル(ジイソプロピルエーテル等。)、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素(パークロロエチレン、トリクロロ−1,1,1−エタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等。)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−ピロリドン−2、ブチロアセトン、ジメチルスルホキシド、グリコールエーテルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0056】
溶媒としては、後の工程における作業性に優れることから、比較的低沸点の溶媒または水と共沸混合物を作る溶媒が好ましく、アセトン、2−プロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルまたはこれらの混合溶媒が好ましい。
単量体の濃度は、溶媒と単量体との合計(100質量%)中、5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0057】
重合反応においては、重合開始剤を用いるのが好ましい。重合開始剤としては、ベンジルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、スクシニルパーオキシド、tert−ブチルパーピバレート等の過酸化物、アゾ化合物等が好ましい。
重合開始剤の使用量は、単量体の合計量(100質量部)に対して、0.1〜1.5質量部が好ましい。
【0058】
重合開始剤としては、重合性に優れ、安全性に優れることから、重合開始剤(e)が好ましい。
重合開始剤(e)は、アゾ化合物またはアゾアミジン化合物であって、該化合物またはその分解物の、ラットまたはマウスにおける急性経口毒性(以下、LD50と記す。)が1000mg/kg以上であり、10時間半減期温度が30℃以上である化合物である。
【0059】
重合開始剤(e)としては、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(LD50:1316mg/kg、10時間半減期温度:67℃)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(LD50:2369mg/kg、10時間半減期温度:65℃)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](LD50:2000mg/kg以上、10時間半減期温度:61℃)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)(LD50:2900mg/kg、10時間半減期温度:30℃)、1、1’−アゾビス(2−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(LD50:11800mg/kg以上、10時間半減期温度:88℃)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)(LD50:6000mg/kg、10時間半減期温度:51℃)、1、1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)(LD50:5000mg/kg以上、10時間半減期温度:61℃)、ジメチルアゾビスイソブチレート(LD50:2000mg/kg以上、10時間半減期温度:68℃)等が好ましく、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]がより好ましい。
【0060】
重合反応においては、含フッ素共重合体(A)の重合度(分子量)を調節するために、連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、アミノエタンチオール、メルカプトエタノール、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、四塩化炭素等が挙げられる。
連鎖移動剤の使用量は、単量体の合計量(100質量部)に対して、0.05〜1質量部が好ましい。
【0061】
重合反応における反応温度は、室温から反応混合物の沸点までの範囲が好ましく、重合開始剤を効率よく使う観点から、重合開始剤の半減期温度以上が好ましく、30〜90℃がより好ましい。
含フッ素共重合体(A)の分子量は、数平均分子量で1000以上が好ましい。
【0062】
含フッ素共重合体(A)にアミノ基が含まれる場合、貯蔵安定性を向上させるために、アミノ基をアミン塩化することが好ましい。アミン塩化としては、(i)酸を用いるアミン塩化、(ii)四級塩化が挙げられ、(i)が好ましく、解離定数または一次解離定数が10-5以上である酸を用いるアミン塩化がより好ましい。酸としては、塩酸、臭化水素酸、スルホン酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、乳酸等が好ましく、酢酸がより好ましい。(ii)においては、酸の代わりに、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ベンジルクロライド、トリチルリン酸、メチルp−トルエンスルホン酸等を用いる。
【0063】
含フッ素共重合体(A)にカルボキシル基、リン酸基、硫酸基が含まれる場合、貯蔵安定性を向上させるために、有機アミンを用いて塩化することが好ましい。有機アミンとしては、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。
溶媒を用いて重合反応を行った場合、重合反応後に溶媒を留去してもよい。たとえば、上記塩化を行った後、水を加えて減圧下にて溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0064】
含フッ素共重合体(A)の付着量は、粉体100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。付着量を0.1質量部以上とすることにより、撥水撥油性に優れる。付着量を50質量部以下とすることにより、化粧料としての使用感がよい。 含フッ素共重合体(A)の付着量は、粉体の比表面積に応じて適宜変更され得る。
【0065】
(化粧用粉体の製造)
化粧用粉体は、粉体表面を含フッ素共重合体(A)で処理することによりが得られる。
処理方法としては、公知の方法(たとえば、シリコーン、金属セッケン等で粉体を処理して粉体表面を疎水化をする方法。)等が挙げられる。
【0066】
具体的には、混合撹拌装置内で粉体を撹拌しながら、含フッ素共重合体(A)、または、含フッ素共重合体(A)を溶剤で分散または希釈した処理液を、噴霧または滴下により添加し、均一分散させた後、室温または加熱乾燥を行う方法が挙げられる。
混合撹拌装置としては、ヘンシェルミキサー、振動式ボールミル、回転式ボールミル、スーパーミキサー、V−ブレンダー等が挙げられる。
【0067】
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、ジクロロメタン、揮発性シリコーン、水等が挙げられる。
処理液が、含フッ素共重合体(A)を水性媒体に分散したものの場合、含フッ素共重合体(A)の平均粒子径は、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が最も好ましい。平均粒子径を10nm以下とすることにより、粉体表面をより効率的に被覆できるため、撥水撥油性等の性能に優れ、その耐久性にも優れる。
【0068】
水性媒体としては、重合反応において用いた溶媒が含まれるのが好ましく、取り扱い、安全衛生の観点から、水、または、水とプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合物がより好ましい。
表面処理は、粉体単独に行ってもよく、また、以下に説明する他の成分との混合物に行ってもよい。
【0069】
<化粧料>
本発明の化粧用粉体は、そのまま化粧料として用いてもよいく、他の成分を配合してもよい。
他の成分としては、以下のものが挙げられる。
【0070】
ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形または半固形油分。
スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセリド、トリグリセリド、シリコーン油等の流動油分。
パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤。
水溶性または油溶性ポリマー、界面活性剤。
無機または有機顔料、タール色素、天然色素等の色剤。
エタノール、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調節剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷寒剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、水等。
他の成分は、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で配合できる。
【0071】
本発明の化粧料としては、パウダーファンデーション、クリーム状ファンデーション、油性ファンデーション、両用ファンデーション、粉白粉(こなおしろい)、ほお紅、アイシャドウ、アイブロウ等のメイクアップ化粧品、ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー化粧品等が挙げられる。
化粧料中の化粧用粉体の量は、化粧料100質量%中、1〜100質量%が好ましく、1〜99質量%がより好ましく、5〜95質量%が特に好ましい。
【0072】
以上説明した本発明の化粧用粉体にあっては、粉体表面に含フッ素共重合体(A)が付着しているため、撥水撥油性および安定性に優れる。すなわち、含フッ素共重合体(A)は、加水分解等により影響を受けにくい高分子体であり、かつ、分子中に極性基を有しており、これが粉体と相互作用を示すために、含フッ素共重合体(A)の有する撥水撥油性を長期間にわたって付与し続け得る。
【0073】
そして、本発明の化粧料にあっては、撥水撥油性に優れる化粧用粉体を含むため、耐水性、耐皮脂性、耐油性に優れ、汚れ、流れ、化粧崩れ等を生じることがなく、化粧もちがよい。また、安定性に優れる化粧用粉体を含むため、効果の持続性に優れる。また、肌上での伸び、平滑感、付着性等においても優れているため、使用時の感触も良好である。
【実施例】
【0074】
実施例(例1、2)および比較例(例3〜5)により本発明を詳細に説明する。
各例における評価は以下のように行った。
(撥水性)
水の10mLを入れた20mLバイアル瓶に、小さじ一杯の粉体を静かに落とした。粉体の様子を観察し、5分後に沈降していなければ○、落とした直後は浮遊しているが5分後に沈降していた場合は△、落とした直後から沈降する場合は×と評価した。
【0075】
(撥油性)
ヘキサデカンの10mLを入れた20mLバイアル瓶に、小さじ一杯の粉体を静かに落とした。粉体の様子を観察し、5分後に沈降していなければ○、落とした直後は浮遊しているが5分後に沈降していた場合は△、落とした直後から沈降する場合は×と評価した。
【0076】
(安定性)
イオン交換水/エタノール=40/60(容量%)の混合液に炭酸ナトリウムを加えて調製された、pH8の弱アルカリエタノール水溶液に、粉体を加え、室温で、15分間振とうした後、24時間放置する。吸引濾過により粉体を回収し、粉体を真空乾燥した後、上述の撥水撥油性の評価を実施する。
【0077】
〔例1〕
1Lのガラス製反応容器に、C61324OCOC(CH3)=CH2(純度99.6%。以下、C6FMA(a)と記す。)の112.5g、CH2=C(CH3)COO(C24O)nH(nの平均値は8。以下、MAEO8(b)と記す。)の15g、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(以下、DEAEMA(c−1)と記す。)の22.5g、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと記す。)の450gおよび2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]の1.2gを仕込み、窒素置換を3回繰り返した。撹拌回転数350rpmにて65℃で16時間重合反応を行い、固形分濃度24.2質量%の淡黄色溶液を得た。
【0078】
該固形分濃度は、仕込みの単量体濃度とほぼ同じであり、重合率がほぼ100%であることが確認された。したがって、仕込みの単量体の割合と、含フッ素共重合体に含まれる各単量体に基づく重合単位の割合はほぼ同じとなり、C6FMA(a)に基づく重合単位は75質量%、MAEO8(b)に基づく重合単位は10質量%、DEAEMA(c−1)に基づく重合単位は15質量%であった。
【0079】
得られた淡黄色溶液の100gに水の180gおよび酢酸の1.76gを添加し、超音波を用いて15分間混合し、乳化分散した。減圧条件下にて65℃でMIBKを留去し、淡橙色透明な水分散液を得た後、イオン交換水を用いて固形分濃度が20質量%である含フッ素共重合体(1)水分散液を調製した。
【0080】
含フッ素共重合体(1)水分散液の1.8gにイオン交換水の58.2gを加え、粉体処理液とした。二酸化チタン(堺化学社製、商品名STR−60C。)の4.8gに粉体処理液を加え、均一になるまで充分に撹拌した後、さらに室温で15分間撹拌を続けた。内容物をテフロン(登録商標)シート上に広げ、60℃で充分に乾燥した後、乳鉢で粉砕して化粧用粉体を得た。得られた粉体の触感は良好であった。
得られた化粧用粉体について、撥水撥油性および安定性の評価を行った。結果を表1おおよび表2に示す。
【0081】
〔例2〕
1Lのガラス製反応容器に、C6FMA(a)(純度99.7%。)の154.1g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2−HEMA(b)と記す。)の25.9g、メタクリル酸(以下、MAA(c−2)と記す。)の16.0g、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸(式(5)で示される化合物。以下、AATBS(c−2)と記す。)の4.0g、アセトンの478.8g、メタノールの119.7gおよびジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(V−601。)の1.6gを仕込み、窒素置換を3回繰り返した。撹拌回転数350rpmにて65℃で20時間重合反応を行い、固形分濃度24.9質量%の淡黄色溶液を得た。
【0082】
該固形分濃度は、仕込みの単量体濃度とほぼ同じであり、重合率がほぼ100%であることが確認された。したがって、仕込みの単量体の割合と、含フッ素共重合体に含まれる各単量体に基づく重合単位の割合はほぼ同じとなり、C6FMA(a)に基づく重合単位は60質量%、2−HEMA(b)に基づく重合単位は13質量%、MAA(c−2)に基づく重合単位は8質量%、AATBS(c−2)に基づく重合単位は2質量%であった。
【0083】
50℃の温水の900gに22.1gのジエタノールアミンを加え、さらに得られた淡黄色重合溶液の750gを30分間で滴下した。滴下した後、そのまま60℃で30分間撹拌し、塩化を行った。減圧条件下にて85℃でアセトンおよびメタノールを留去し、淡橙色透明な水分散液を得た後、イオン交換水を用いて固形分濃度が20質量%である含フッ素共重合体(2)水分散液を調製した。
【0084】
含フッ素共重合体(1)水分散液を含フッ素共重合体(2)水分散液に変更した以外は、例1と同様にして化粧用粉体を得た。得られた粉体の触感は良好であった。
得られた化粧用粉体について、撥水撥油性および安定性の評価を行った。結果を表1おおよび表2に示す。
【0085】
〔例3(比較例)〕
81724OCOCH=CH2(純度90%。)の48g、ステアリルアクリレートの12g、イオン交換水の150g、アセトンの24g、ステアリルメルカプタンの0.06g、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムの1.8gおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの4.2gを50℃にて混合し、混合物を高圧ホモジナイザーで乳化した。乳化液を300mLガラス製反応器に移し、アゾビスイソブチルアミジン−2塩酸塩(和光純薬社製、商品名V−50。)の0.3gを添加した。窒素置換を2回繰り返し、重合を開始した。60℃で8時間撹拌して乳白色のポリマーエマルションを得た。エマルションの固形分濃度を測定したところ、24.5質量%であった。該エマルションにイオン交換水を加え、固形分濃度が20質量%である含フッ素共重合体(3)のエマルションを調製した。
【0086】
含フッ素共重合体(1)水分散液を含フッ素共重合体(3)のエマルションに変更した以外は、例1と同様にして化粧用粉体を得た。得られた粉体には、ややべとつき感があった。
得られた化粧用粉体について、撥水撥油性および安定性の評価を行った。結果を表1おおよび表2に示す。
【0087】
〔例4(比較例)〕
含フッ素共重合体(1)水分散液を、パーフルオロアルキルリン酸エステルエタノールアミン塩(固形分濃度15%、旭硝子社製、商品名アサヒガード−530。)の2.4gおよびイオン交換水57.6gの混合物に変更した以外は、例1と同様にして化粧用粉体を得た。得られた粉体の触感は良好であった。
得られた化粧用粉体について、撥水撥油性および安定性の評価を行った。結果を表1おおよび表2に示す。
【0088】
〔例5(比較例)〕
未処理の二酸化チタン(堺化学社製、商品名STR−60C。)について、撥水撥油性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の化粧用粉体は、汗、皮脂、他の化粧料の油分等によって化粧崩れが起こらないことが要求される化粧料に含まれる化粧用粉体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体表面に、下記単量体(a)に基づく重合単位の60〜98質量%、下記単量体(b)に基づく重合単位の1〜20質量%および下記単量体(c)に基づく重合単位の1〜30質量%を含む含フッ素共重合体(A)が付着した化粧用粉体。
単量体(a):
(Z−Y)nXで表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Z:炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基またはCm2m+1O(CFWCF2O)dCFK−〔mは1〜6の整数。dは1〜4の整数。W、Kはそれぞれ独立にフッ素原子または−CF3。〕で表される基。
Y:2価有機基または単結合。
n:1または2。
X:重合性不飽和基であって、nが1の場合は−CR=CH2、−COOCR=CH2、−OCOCR=CH2、−OCH2−φ−CR=CH2または−OCH=CH2であり、nが2の場合は=CH(CH2pCR=CH2、=CH(CH2pCOOCR=CH2、=CH(CH2pOCOCR=CH2または−OCOCH=CHCOO−〔Rは水素原子、メチル基またはハロゲン原子。φはフェニレン基。pは0〜4の整数。〕である。
単量体(b):
CH2=CR1−G−(R2O)q−R3で表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
1:水素原子またはメチル基。
2:炭素原子数2〜4のアルキレン基、または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基。
q:1〜50の整数。
G:−COO(CH2r−または−COO(CH2t−NHCOO−〔rは0〜4の整数。tは1〜4の整数。〕。
3:水素原子、メチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはアリル基。
単量体(c):
CH2=CR4−Uで表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
4:水素原子またはメチル基。
U:水中でイオン化し得る官能基を含有する有機基。
【請求項2】
前記単量体(c)が、下記単量体(c1)である、請求項1に記載の化粧用粉体。
単量体(c1):
CH2=CR4−M−Q1−NR56またはCH2=CR4−M−Q1−N(O)R56で表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
4:水素原子またはメチル基。
M:−COO−または−CONH−。
1:炭素原子数2〜4のアルキレン基、または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基。
5、R6:それぞれ独立に、ベンジル基、炭素原子数1〜8のアルキル基または水素原子の一部が水酸基で置換された炭素原子数2〜3のアルキル基。または、R5、R6および窒素原子がモルホリノ基、ピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよい。
【請求項3】
前記単量体(c)が、下記単量体(c2)である、請求項1に記載の化粧用粉体。
単量体(c2):
CH2=CR4−M−Q2−Vで表される化合物。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
4:水素原子またはメチル基。
M:−COO−または−CONH−。
2:単結合、炭素原子数2〜4のアルキレン基、水素原子の一部または全部が水酸基またはハロゲン原子で置換された炭素原子数2〜3のアルキレン基、またはエーテル性の酸素原子を含む炭素4〜18のアルキレン基。
V:−COOH、−SO3Hまたは−P(O)(OH)3
【請求項4】
前記含フッ素共重合体(A)が、さらに下記単量体(d)に基づく重合単位を含み、前記単量体(a)に基づく重合単位の60〜97.9質量%、前記単量体(b)に基づく重合単位の1〜20質量%、前記単量体(c)に基づく重合単位の1〜20質量%および下記単量体(d)に基づく重合単位の0.1〜10質量%を含む含フッ素共重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧用粉体。
単量体(d):
単量体(b)、単量体(c1)および単量体(c2)を除く単量体であって、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、ウレタン結合、アルコキシシリル基、エポキシ基、N−メチロール基およびN−アルコキシメチル基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を有し、ポリフルオロアルキル基を有しない(メタ)アクリレート。
【請求項5】
前記含フッ素共重合体(A)が、下記重合開始剤(e)を用いて得られた含フッ素共重合体である、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧用粉体。
重合開始剤(e):
アゾ化合物またはアゾアミジン化合物であって、該化合物またはその分解物の、ラットまたはマウスにおける急性経口毒性が1000mg/kg以上であり、10時間半減期温度が30℃以上である化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の化粧用粉体を含む化粧料。

【公開番号】特開2007−210939(P2007−210939A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32162(P2006−32162)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】